説明

燃料フィードユニット

燃料フィードユニットにおいて、電動モータ(2)と燃料ポンプ(3)との間に配置されたハウジング部分(4)が、当該ハウジング部分(4)の材料の熱膨張または膨潤を補償するための伸縮継ぎ目を有している。該伸縮継ぎ目は、燃料ポンプ(3)のインペラ(6)とハウジング部分(4,5)との間のギャップを特に一定に保持することを可能にする。これによって、特に乾式運転時における燃料ポンプ(3)のひっかかりが十分に回避される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に用いられる燃料フィードユニットであって、電動モータにより駆動される燃料ポンプと、該燃料ポンプの、2つのハウジング部分の間に配置された回転車もしくはインペラとが設けられており、該インペラが電動モータのシャフトに相対回動不能に取り付けられている形式のものに関する。
【0002】
このような形式の燃料フィードユニットは、現在の自動車においてしばしば使用され、実際の使用により知られている。燃料ポンプのハウジング部分は、たいてい金属または焼結セラミックスから製作されているか、またはシャフトのための軸受け装置として、プラスチック内に圧入された焼結ブシュを有している。ハウジング部分は特に小さな間隔を置いてインペラに対峙して位置していて、これによって燃料ポンプのギャップシールを形成している。しかし、電動モータの摩擦または熱による熱導入により、ハウジング部分およびインペラの膨張が生ぜしめられ、ひいてはハウジング部分とインペラとの間のギャップの減少が生ぜしめられてしまう。その結果、燃料ポンプにおける一層の摩擦が生じるようになり、このような摩擦により、最悪の場合には燃料ポンプのひっかかりが生ぜしめられてしまう。特に燃料フィードユニットの乾式運転時では、燃料ポンプが極めて短い時間で固着してしまう。
【0003】
本発明の根底を成す課題は、冒頭で述べた形式の燃料フィードユニットを改良して、特に乾式運転時における燃料ポンプのひっかかりが十分に回避されるような燃料フィードユニットを提供することである。
【0004】
この問題は、両ハウジング部分の少なくとも一方のハウジング部分が伸縮継ぎ目を有していることにより解決される。
【0005】
このような構成により、当該ハウジング部分は熱導入時または摩擦時に膨張することができる。ハウジング部分の形状変化は、1つの伸縮継ぎ目または複数の伸縮継ぎ目の相応する配置により吸収され、ひいてはシャフトの軸受け装置およびインペラから隔絶され得るので、この軸受け装置およびインペラに不都合な影響は与えられない。本発明によれば、ハウジング部分の熱膨張時でも、ハウジング部分とインペラとの間にシールギャップを十分に一定に保持することができる。これによって、それ以上の摩擦の発生は特に僅かに保持され、燃料ポンプのひっかかりが十分に回避される。したがって、本発明による燃料フィードユニットは、燃料ポンプがひっかかって固着することなしに、特に長い時間にわたって乾燥した状態で、つまり燃料なしで運転され得る。
【0006】
両ハウジング部分のうちの少なくとも一方のハウジング部分がプラスチックから製作されていて、かつ該プラスチックが、シャフトを直接に支承するための軸受けシェルを形成していると、本発明による燃料フィードユニットを特に廉価に製作することができる。オット燃料のための公知の燃料フィードユニットでは、シャフトの軸受け装置を含めてハウジング部分を完全にプラスチックから製作することはできなかった。なぜならば、電動モータを経由する熱導入に対して付加的に、燃料との接触時におけるプラスチックの膨潤による形状変化が、インペラに対するハウジング部分のシールを妨げてしまうからである。本発明による伸縮継ぎ目は膨潤によるプラスチックの形状変化を吸収し、ひいては、インペラに対するシールギャップおよびシャフトに対する支承ギャップが変えられてしまうことを阻止する。ハウジング部分としてプラスチックを使用することの別の利点は、電動モータにより発生させられた熱が特に伝達され難くなる点にある。このことは、燃料ポンプにおける摩擦の一層の低減をもたらす。
【0007】
本発明のさらに別の有利な改良形では、電動モータ寄りのハウジング部分が、シャフトに接近する方向に延びる半径方向の区分と、シャフトに対して平行にインペラから離れる方向に案内された軸方向の区分とを有している。このような構成により伸縮継ぎ目を適宜に配置することによって、軸方向で発生する形状変化をも、半径方向で発生する形状変化をも簡単に補償することができる。
【0008】
本発明のさらに別の有利な改良形では、前記伸縮継ぎ目が、インペラの近傍で前記軸方向の区分に配置されていて、シャフトから当該ハウジング部分を離隔するための離隔部として形成されている。このような構成により、電動モータ寄りのハウジング部分への熱導入を特に少なく保持することができる。
【0009】
本発明のさらに別の有利な改良形では、前記伸縮継ぎ目が、前記軸方向の区分のほぼ1/2の長さにわたって延びている。このような構成は、シャフトの軸受け装置の範囲における摩擦を一層減少させるために役立つ。
【0010】
本発明のさらに別の有利な改良形では、前記伸縮継ぎ目が、前記軸方向の区分に、前記半径方向の区分の全高にわたって延びている。このような構成は、シャフトの軸受け装置の範囲における摩擦を一層減少させるために役立つ。これにより、電動モータ寄りのハウジング部分の半径方向の区分は、シャフトの軸受け装置の範囲における増幅された摩擦を生ぜしめることなしに、当該半径方向の区分の平面内で膨張することができる。
【0011】
本発明のさらに別の有利な改良形では、前記伸縮継ぎ目が、前記半径方向および軸方向の両区分の互いに合流し合う角隅範囲に配置されている。このような構成により、前記区分のうち、一方の区分が、他方の区分の形状変化によって変形させられてしまうことを簡単に回避することができる。
【0012】
本発明のさらに別の有利な改良形では、前記伸縮継ぎ目が、電動モータ寄りのハウジング部分の、インペラとは反対の側に配置されている。このような構成により、ハウジング部分とインペラとの間のシールギャップへの影響付与を簡単に回避することができる。
【0013】
本発明のさらに別の有利な改良形では、前記伸縮継ぎ目が、前記軸方向の区分を巡って環状に延びる溝として形成されている。このような構成により、電動モータ寄りのハウジング部分を、軸方向で型抜き可能な射出成形型内で特に廉価に製作することができる。
【0014】
本発明のさらに別の有利な改良形では、前記軸方向の区分と前記半径方向の区分とが一体に製作されている。このような構成は、本発明による燃料フィードユニットの製作コストを一層低減するために役立つ。
【0015】
本発明によれば多数の実施形態が可能である。本発明の基本原理を一層明瞭にすべく、以下に、本発明の実施例を図面につき詳しく説明する。
【0016】
図1は、自動車に用いられる本発明による燃料フィードユニットを示す概略図であり、
図2は、図1に示した燃料フィードユニットの燃料ポンプの部分範囲IIの拡大図である。
【0017】
図1には、自動車の燃料タンク内に配置するために設けられた燃料フィードユニットが示されている。この燃料フィードユニットはハウジング1と、電動モータ2により駆動される燃料ポンプ3とを備えている。燃料ポンプ3はサイドチャンネルポンプとして形成されていて、2つのハウジング部分4,5の間に回転可能に配置された回転車、つまりインペラ6を有している。インペラ6は電動モータ2のシャフト7に装着固定されている。電動モータ2は、コイル8とシャフト7とを有するロータ9と、ハウジング1に結合された、マグネットシェルを備えたステータ10とを有している。電動モータ2には、ハウジング1の外側に配置された電気的なコンタクト11を介して電流を供給することができる。この燃料フィードユニットは、電動モータ2から遠い方のハウジング部分5に配置された、前記シャフト7を支持するボール13を備えたスラスト軸受け装置12と、電動モータ2寄りのハウジング部分4に設けられたラジアル軸受け装置14とを有している。
【0018】
インペラ6の駆動時では、燃料ポンプ3が吸込通路15を介して燃料を吸い込み、そして流出通路16を介してこの燃料を燃料フィードユニットのハウジング1内に圧送する。引き続き、燃料はステータ10とロータ9との間のギャップを通って電動モータ2を通流する。分かり易くするために、図面には燃料の流れが矢印で示されている。引き続き、燃料は逆止弁17を介して接続管片18に流入する。接続管片18には、自動車の内燃機関に接続された燃料管路(図示しない)を接続することができる。
【0019】
図2には、インペラ6と電動モータ2との間に配置されたハウジング部分4の、シャフト7の範囲に位置する部分範囲が拡大されて図示されている。燃料ポンプ3の、電動モータ2寄りのハウジング部分4は、シャフト7へ接近する方向に延びる半径方向の区分19と、シャフト7に対して平行に配置された軸方向の区分20とを有している。インペラ6を起点としてシャフト7に隣接して前記軸方向の区分20の半部(1/2長さ)にわたって、第1の伸縮継ぎ目21が延びている。軸方向の区分20の第2の半部には、この第2の半部に沿ってシャフト7のラジアル軸受け装置14が配置されている。 さらに、第2の伸縮継ぎ目22が設けられており、この第2の伸縮継ぎ目22は前記半径方向の区分19に配置された、前記軸方向の区分20を巡って環状に延びる溝として形成されている。
【0020】
乾式運転時、つまり燃料の圧送なしの運転時では、電動モータ2により発生させられた熱が、前記軸方向の区分20の、ラジアル軸受け装置14として形成された範囲を介して燃料ポンプ3内へ導入される。前記軸方向の区分20の第1の伸縮継ぎ目21では、極めて僅かな熱しか燃料ポンプ3へ伝達され得ない。なぜならば、この場合、ハウジング部分4がシャフト7に対して間隔を有しているからである。分かり易くするために、図面には熱流が矢印で示されている。熱は半径方向で軸方向の区分20を膨張させる恐れがある。乾式運転時、つまり燃料の圧送なしの運転時では、燃料ポンプ3によって発生させられた摩擦熱が、シャフト7に向けられた方向での半径方向の区分19の膨張を生ぜしめる。半径方向の区分19は両伸縮継ぎ目21,22によって、力をラジアル軸受け装置14に導入することなしに少しだけシャフト7に向かって膨張することができる。分かり易くするために、図面には、図1に示した燃料ポンプ3と電動モータ2との間に配置されたハウジング部分4の、温度増大時に発生する膨張が破線により示されている。
【0021】
以上、本発明をサイドチャンネルポンプにつき例示的に説明した。当然ながら、燃料ポンプ3は円周流ポンプまたは押しのけポンプ、たとえばいわゆる「G−ロータポンプ(G-Rotor-Pumpe)」であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】自動車に用いられる本発明による燃料フィードユニットを示す概略図である。
【図2】図1に示した燃料フィードユニットの燃料ポンプの部分範囲IIの拡大図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に用いられる燃料フィードユニットであって、電動モータにより駆動される燃料ポンプと、該燃料ポンプの、2つのハウジング部分の間に配置されたインペラとが設けられており、該インペラが電動モータのシャフトに相対回動不能に取り付けられている形式のものにおいて、両ハウジング部分(4,5)の少なくとも一方のハウジング部分が伸縮継ぎ目(21,22)を有していることを特徴とする燃料フィードユニット。
【請求項2】
両ハウジング部分(4,5)の少なくとも一方のハウジング部分がプラスチックから製作されており、該プラスチックが、シャフト(7)を直接に支承するための軸受けシェルを形成している、請求項1記載の燃料フィードユニット。
【請求項3】
電動モータ(2)寄りのハウジング部分(4)が、シャフト(7)に接近する方向に延びる半径方向の区分(19)と、シャフト(7)に対して平行にインペラ(6)から離れる方向に案内された軸方向の区分(20)とを有している、請求項1または2記載の燃料フィードユニット。
【請求項4】
前記伸縮継ぎ目(21)が、インペラ(6)の近傍で前記軸方向の区分(20)に配置されていて、シャフト(7)から当該ハウジング部分(4)を離隔するための離隔部として形成されている、請求項1から3でのいずれか1項記載の燃料フィードユニット。
【請求項5】
前記伸縮継ぎ目(21)が、前記軸方向の区分(20)のほぼ1/2にわたって延びている、請求項1から4までのいずれか1項記載の燃料フィードユニット。
【請求項6】
前記伸縮継ぎ目(21)が、前記軸方向の区分(20)に、前記半径方向の区分(19)の全高にわたって延びている、請求項1から5までのいずれか1項記載の燃料フィードユニット。
【請求項7】
前記伸縮継ぎ目(22)が、前記半径方向および軸方向の両区分(19,20)の互いに合流し合う角隅範囲に配置されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の燃料フィードユニット。
【請求項8】
前記伸縮継ぎ目(22)が、電動モータ(2)寄りのハウジング部分(4)の、インペラ(6)とは反対の側に配置されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の燃料フィードユニット。
【請求項9】
前記伸縮継ぎ目(22)が、前記軸方向の区分(20)を巡って環状に延びる溝として形成されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の燃料フィードユニット。
【請求項10】
前記軸方向の区分(20)と前記半径方向の区分(19)とが一体に製作されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の燃料フィードユニット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−505252(P2007−505252A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525802(P2006−525802)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051637
【国際公開番号】WO2005/026555
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】