説明

燃料供給量制御装置および船舶推進装置

【課題】船外機において、最良のエンジン始動性(短時間でのエンジン始動)を実現する。
【解決手段】クランク軸がスタータモータによって回転し始めてから燃料の燃焼によって安定して回転するまでのエンジン始動時において、気筒判別の前後で燃料供給量を独立に制御する。これにより、気筒判別の前後で燃料供給量がそれぞれ個別に決定されるため、気筒判別前に必要な燃料を供給するとともに、気筒判別後にも必要な燃料を供給することができる。その結果、最良のエンジン始動性を得るために必要な燃料量が気筒判別の前後で異なる場合であっても、最良のエンジン始動性を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船外機や船内外機などの船舶推進装置に搭載されたV型8気筒4サイクル方式のエンジンなど各種のエンジンを始動する際に適用するに好適な燃料供給量制御装置と、この燃料供給量制御装置を備えた船舶推進装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のエンジンを始動する際には、その始動性を高めることを目的として、気筒判別(気筒識別)する前と気筒判別した後で別個の燃料噴射パターンが採用されていた。
【0003】
すなわち、気筒判別する前は、各気筒が吸気、圧縮、膨張(爆発)、排気のいずれの行程にあるか不明であることから、スタータモータの回転によってクランキングし始めた直後に燃料を供給して、いつでも点火されれば爆発できる状態にするため、すべての気筒に一気に燃料噴射していた。その一例として、図5は、クランク角度を10°ずつ36等分し、第1〜34番目に検出歯を形成するとともに、第35、36番目に歯欠け部を形成したエンジンにおいて、クランク軸センサ信号が「7」のときに、第1気筒から第8気筒までの全気筒についてインジェクタを同時に駆動して燃料噴射する場合を示している。
【0004】
また、気筒判別した後は、各気筒が吸気、圧縮、膨張、排気のいずれの行程にあるか既に判明しているため、気筒ごとに最適なタイミングで燃料噴射していた。その一例として、図6は、上述したエンジンにおいて、第1気筒と第6気筒、第8気筒と第5気筒、第4気筒と第7気筒、第3気筒と第2気筒でそれぞれグループ気筒を構成し、グループ気筒ごとに圧縮および排気の2行程の途中でインジェクタを駆動して燃料噴射する場合を示している。
【0005】
そして、気筒判別の前後を問わず、各気筒がクランキングし始めてからエンジン始動が完了するまでの間は、同一の演算式を用いて燃料供給量が決定されていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−197700号公報(段落〔0019〕〔0020〕の欄)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、各気筒が吸気、圧縮、膨張、排気のいずれの行程にあるかは、気筒判別が行われてはじめて判明することから、最良のエンジン始動性(具体的には、短時間でのエンジン始動)を得るために必要な燃料供給量は気筒判別の前後で本来異なると考えられる。それにもかかわらず、気筒判別の前後を問わず燃料供給量(例えば、図5に示す気筒判別前の噴射パルス幅W1と、図6に示す気筒判別後の噴射パルス幅W2)が同一であったので、気筒判別の前後を通じて燃料供給量が最適であるとは言えない。そのため、最良のエンジン始動性を実現できないという課題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、最良のエンジン始動性を実現することが可能な燃料供給量制御装置および船舶推進装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、クランク軸がスタータモータによって回転し始めてから燃料の燃焼によって安定して回転するまでのエンジン始動時において燃料供給量を制御する燃料供給量制御装置であって、エンジン始動時において気筒判別の前後で燃料供給量を独立に制御する燃料制御手段を具備する燃料供給量制御装置としたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記燃料制御手段は、燃料供給量を算出するための演算式を気筒判別の前後で変えることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の構成に加え、前記燃料制御手段は、前記演算式に用いられる基本燃料量を気筒判別の前後で変えることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の構成に加え、前記燃料制御手段は、気筒判別前の燃料供給量を気筒判別後の燃料供給量より多くすることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の構成に加え、前記燃料制御手段は、気筒判別前に供給する燃料を1回で吸気管に噴射することを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の燃料供給量制御装置を備えた船舶推進装置としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、気筒判別の前後で燃料供給量がそれぞれ個別に決定されることから、気筒判別前に必要な燃料を供給するとともに、気筒判別後にも必要な燃料を供給することができる。その結果、最良のエンジン始動性を得るために必要な燃料量が気筒判別の前後で異なる場合であっても、最良のエンジン始動性を実現することが可能となる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、燃料供給量を算出する演算式を気筒判別の前後で変えることにより、気筒判別の前後で燃料供給量がそれぞれ個別に決定されることから、気筒判別前に必要な燃料を供給するとともに、気筒判別後にも必要な燃料を供給することができる。その結果、最良のエンジン始動性を得るために必要な燃料量が気筒判別の前後で異なる場合であっても、最良のエンジン始動性を実現することが可能となる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、燃料供給量を算出する演算式中の基本燃料量を気筒判別の前後で変えることにより、気筒判別の前後で燃料供給量がそれぞれ個別に決定されることから、気筒判別前に必要な燃料を供給するとともに、気筒判別後にも必要な燃料を供給することができる。その結果、最良のエンジン始動性を得るために必要な燃料量が気筒判別の前後で異なる場合であっても、最良のエンジン始動性を実現することが可能となる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、吸気バルブが開いて燃料がシリンダ内に供給される確率が高くなるため、最短時間でのエンジン始動を実現することができる。その結果、最良のエンジン始動性を実現することが可能となる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、燃料噴射回数を2回以上に分ける場合と比べて、燃料を効率よく噴射することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1乃至5に記載の発明と同じ効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
[発明の実施の形態1]
【0021】
図1乃至図4には、本発明の実施の形態1を示す。
【0022】
まず、構成を説明する。V型8気筒4サイクル方式のエンジン1は、船外機に搭載されるものであり、図3に示すように、8つの気筒が上下方向(図3紙面と直角な方向)に交互にV型に配置したシリンダ2を有しており、シリンダ2の外周には、シリンダ2の壁温を検出する壁温センサ27が取り付けられている。
【0023】
また、シリンダ2内には、図3に示すように、気筒ごとにピストン3が水平方向(図3上下方向)に摺動自在に設けられている。ピストン3の一方側(図3上側)には燃焼室7が形成されており、ピストン3の他方側(図3下側)にはコンロッド5を介してクランク軸4が回転自在に連結されている。さらに、クランク軸4には円盤状の検出歯ロータ6が同心状に固設されている。ここで、検出歯ロータ6は、クランク角度が10°ずつ36等分され、第1〜34番目にそれぞれ検出歯6aが形成されるとともに、第35、36番目にそれぞれ歯欠け部6bが形成されている。そして、検出歯ロータ6の近傍にはクランク軸センサ8が、検出歯6aおよび歯欠け部6bを検出しうるように取り付けられている。
【0024】
また、シリンダ2には、図3に示すように、吸気管9が燃焼室7に連通して接続されている。吸気管9には、吸気バルブ10が吸気ポート11を開閉しうるように取り付けられているとともに、インジェクタ12が吸気管9内に燃料噴射しうるように装着されている。また、吸気管9には、吸気圧を検出する吸気圧センサ23が取り付けられているとともに、吸気温を検出する吸気温センサ25が取り付けられている。
【0025】
さらに、シリンダ2には、図3に示すように、排気管13が燃焼室7に連通して接続されており、排気管13には排気バルブ15が排気ポート16を開閉しうるように取り付けられている。また、シリンダ2には点火プラグ17が燃焼室7に火花を飛ばせるように装着されており、点火プラグ17には点火コイル19が接続されている。
【0026】
また、エンジン1には、図3に示すように、燃料供給量制御装置18が付設されており、燃料供給量制御装置18はECU(エンジン制御ユニット)20を有している。ECU20には、イグニッションキー21、スタータモータ22、大気圧を検出する大気圧センサ26、前記点火コイル19、前記インジェクタ12、前記吸気圧センサ23、前記吸気温センサ25、前記壁温センサ27、前記クランク軸センサ8が接続されている。なお、ECU20は、気筒判別部20aおよび燃料制御部(燃料制御手段)20bを備えている。
【0027】
次に、作用について説明する。
【0028】
以上のような構成を有するエンジン1を始動する際には、図4に示す手順に従う。
【0029】
まず、エンジン1を始動する者(以下、操船者という。)は、イグニッションキー21をONにする(ステップS1)。
【0030】
次に、操船者は、スタータモータ22を回す(ステップS2)。すると、クランク軸4がスタータモータ22の回転に伴って回転し始め、これに伴って検出歯ロータ6がクランク軸4と同期的に回転し始める。
【0031】
その後、ECU20は、気筒判別を行う(ステップS3)。すなわち、ECU20は、クランク軸センサ8から出力される信号によって検出歯ロータ6の歯欠け部6bを検出し、これに基づき、各気筒の点火時期を認識するとともに、各気筒が吸気、圧縮、膨張、排気のいずれの行程にあるかを認識する。
【0032】
次に、ECU20は、膨張(爆発)行程において点火コイル19を駆動して点火プラグ17を点火するとともに、圧縮および排気の2行程の途中でインジェクタ12を駆動して燃料を吸気管9に噴射する(ステップS4)。このとき、ECU20は、気筒判別によって各気筒の点火時期を認識しているため、点火プラグ17の点火動作は円滑に行われる。また、ECU20は、気筒判別によって各気筒が吸気、圧縮、膨張、排気のいずれの行程にあるかを認識しているため、燃料噴射動作も円滑に行われる。すると、クランク軸4は、スタータモータ22の回転を止めても、燃料の燃焼によって所定の回転数(例えば、500〜600rpm)で安定して回転するようになる。
【0033】
ここで、エンジン1の始動が完了する(ステップS5)。
【0034】
そして、このようにエンジン1を始動する際、つまりエンジン始動時においては、以下に述べるように、気筒判別(ステップS3)の前後で異なる量の燃料を吸気管9内に噴射する。
【0035】
すなわち、ECU20の気筒判別部20aは、エンジン始動時のタイミングを気筒判別前(図4のステップS1からステップS3まで)と気筒判別後(図4のステップS3からステップS5まで)の2つのモードに分離し、気筒判別前を第1モードとするとともに、気筒判別後を第2モードとする。
【0036】
そして、第1モード(気筒判別前)においては、ECU20の燃料制御部20bは、吸気管9に燃料を1回で多量に噴射するように制御する。それには、インジェクタ12の駆動時間を長くすることにより、図1に示すように、気筒判別前の噴射パルス幅W1を広くする。具体的には、数1に示す演算式により、インジェクタ駆動時間T1を算出し、このインジェクタ駆動時間T1だけインジェクタ12を駆動して燃料を吐出する。ここで、数1に示すとおり、無駄時間T3(T3>0)を加算してインジェクタ駆動時間T1を算出しているので、インジェクタ12の応答遅れの大小と関係なく、インジェクタ駆動時間T1が実質的に負になる不具合を回避することができる。なお、インジェクタ駆動時間T1を算出するときに、インジェクタ12の耐久性を考慮して上限値(例えば、60ms)を定め、インジェクタ駆動時間T1がこの上限値を超えないようにすることも可能である。
【0037】
[数1]
T1=F1×K1×K2×K3×K4+T3
T1:インジェクタ駆動時間
F1:気筒未判別時基本燃料量(気筒判別前基本燃料量)
K1:始動時基本燃料量吸気圧補正係数
K2:吸気温補正係数
K3:始動時大気圧補正係数
K4:吐出量駆動時間変換係数
T3:無駄時間(インジェクタの応答遅れに対応した時間)
【0038】
ここで、気筒未判別時基本燃料量F1は、気筒内で燃料が気化されている状態に応じて適宜加減する。それには、壁温センサ27でシリンダ2の壁温を測定し、この壁温が所定の温度以上であるか否かを判定する。その結果、壁温が所定の温度以上である場合には、気筒内で燃料の気化が促進されていると考えられるので、気筒未判別時基本燃料量F1を少なめに設定する。他方、壁温が所定の温度に満たない場合には、気筒内で燃料の気化があまり促進されていないと考えられるので、気筒未判別時基本燃料量F1を多めに設定する。
【0039】
また、第2モード(気筒判別後)においては、ECU20の燃料制御部20bは、吸気管9に燃料を1回で少量だけ噴射するように制御する。それには、気筒判別する前に用いた演算式とは別個の演算式を用いて、インジェクタ12の駆動時間を短くすることにより、図2に示すように、気筒判別後の噴射パルス幅W2を気筒判別前の噴射パルス幅W1より狭くする。具体的には、数2に示す演算式により、インジェクタ駆動時間T2を算出し、このインジェクタ駆動時間T2だけインジェクタ12を駆動して燃料を吐出する。ここで、数2に示すとおり、無駄時間T3(T3>0)を加算してインジェクタ駆動時間T2を算出しているので、インジェクタ12の応答遅れの大小と関係なく、インジェクタ駆動時間T2が実質的に負になる不具合を回避することができる。なお、インジェクタ駆動時間T2を算出するときに、インジェクタ12の性能(信頼性、耐久性など)を考慮して上限値(例えば、60ms)を定め、インジェクタ駆動時間T2がこの上限値を超えないようにすることも可能である。
【0040】
[数2]
T2=F2×K1×K2×K3×K4+T3
T2:インジェクタ駆動時間
F2:始動時基本燃料量(気筒判別後基本燃料量)
K1:始動時基本燃料量吸気圧補正係数
K2:吸気温補正係数
K3:始動時大気圧補正係数
K4:吐出量駆動時間変換係数
T3:無駄時間(インジェクタの応答遅れに対応した時間)
【0041】
ここで、始動時基本燃料量F2は、気筒内で燃料が気化されている状態に応じて適宜加減する。それには、壁温センサ27でシリンダ2の壁温を測定し、この壁温が所定の温度以上であるか否かを判定する。その結果、壁温が所定の温度以上である場合には、気筒内で燃料の気化が促進されていると考えられるので、始動時基本燃料量F2を少なめに設定する。他方、壁温が所定の温度に満たない場合には、気筒内で燃料の気化があまり促進されていないと考えられるので、始動時基本燃料量F2を多めに設定する。
【0042】
そして、数1に示す演算式中の気筒未判別時基本燃料量F1は、数2に示す演算式中の始動時基本燃料量F2より大きくなるように設定されており、その他の因子(始動時基本燃料量吸気圧補正係数K1、吸気温補正係数K2、始動時大気圧補正係数K3、吐出量駆動時間変換係数K4、無駄時間T3)については、数1、数2で共通する。したがって、気筒判別前のインジェクタ駆動時間T1は気筒判別後のインジェクタ駆動時間T2より長くなり、この比率(T1/T2)は、気筒未判別時基本燃料量F1と始動時基本燃料量F2との比率(F1/F2)に等しくなる。例えば、T1/T2=5であれば、F1/F2=5となる。
【0043】
このように、気筒判別前の燃料供給量を気筒判別後の燃料供給量より多くすれば、吸気バルブ10が開いて燃料がシリンダ2内に供給される確率が高くなるため、最短時間でのエンジン始動を実現することができる。したがって、最良のエンジン始動性を実現することが可能となる。
【0044】
また、気筒判別前に供給する燃料を1回で吸気管9に噴射しているので、燃料噴射回数を2回以上に分ける場合と比べて、燃料を効率よく噴射することができる。
[発明のその他の実施の形態]
【0045】
なお、上述した実施の形態1では、インジェクタ駆動時間T1を適宜調整することにより、燃料噴射量を制御する場合について説明した。しかし、インジェクタ駆動時間T1以外の物理量を適宜調整して燃料噴射量を制御したり、或いは、燃料噴射量を直接制御したりすることも可能である。
【0046】
また、上述した実施の形態1では、気筒判別前の燃料噴射量を気筒判別後の燃料噴射量より多くする場合について説明したが、吸気圧、吸気温、大気圧その他の状況によっては、逆に、気筒判別後の燃料噴射量を気筒判別前の燃料噴射量より多くしても構わない。すなわち、気筒判別の前後において燃料噴射量を独立に制御することが肝要である。こうすることにより、気筒判別の前後において燃料供給量がそれぞれ個別に決定されることから、気筒判別前に必要な燃料を供給するとともに、気筒判別後にも必要な燃料を供給することができる。その結果、最良のエンジン始動性を得るために必要な燃料量が気筒判別の前後で異なる場合であっても、最良のエンジン始動性を実現することが可能となるのである。
【0047】
さらに、上述した実施の形態1では、最良のエンジン始動性を実現すべく、燃料噴射量の演算式を気筒判別の前後で異ならせることにより、気筒判別の前後いずれにおいても燃料噴射量を最適とする場合について説明した。しかし、燃料噴射量の演算式を異ならせる時点は気筒判別時に限るわけではなく、気筒判別時以外の時点を代用することもできる。
【0048】
また、上述した実施の形態1では、最良のエンジン始動性を実現すべく、エンジン始動時のタイミングを気筒判別の前と後の2つのモードに分離し、各モードにおいて燃料噴射量を独立に制御する場合について説明した。しかし、エンジン始動時のタイミングを3つ以上のモードに分離し、各モードにおいて燃料噴射量を独立に制御することも可能である。この場合、エンジン始動時の各モードで燃料供給量がそれぞれ個別に決定されるため、各モードで必要な燃料をそれぞれ供給することができる。その結果、最良のエンジン始動性を得るために必要な燃料量がモードごとに異なる場合であっても、最良のエンジン始動性を実現することが可能となる。
【0049】
また、上述した実施の形態1では、検出歯ロータ6の外周部に検出歯6aおよび歯欠け部6bを形成する場合について説明したが、検出歯6aおよび歯欠け部6bは、クランク軸4に取り付けられたフライホイール(図示せず)に設けても構わない。
【0050】
また、上述した実施の形態1では、燃料を吸気管9に噴射する燃料供給方式を備えたエンジン1について説明したが、これ以外の燃料供給方式(例えば、燃料を直接シリンダ2内に噴射する燃料供給方式、キャブレターによる燃料供給方式など)を備えたエンジン1に本発明を適用することもできる。
【0051】
また、上述した実施の形態1では、船外機に搭載されるエンジン1について説明したが、船外機以外の船舶推進装置(例えば、船内外機など)に搭載されるエンジン1に本発明を適用することもできる。
【0052】
また、上述した実施の形態1では、V型8気筒4サイクル方式のエンジン1について説明したが、エンジン1の種類(気筒数や気筒配置など)はこれに限るわけではない。例えば、直列4気筒4サイクル方式や単気筒2サイクル方式のエンジン1に本発明を適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、船外機や船内外機など各種の船舶推進装置に幅広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態1に係る気筒判別前(気筒未判別時)の燃料噴射パターンを示すタイミングチャートである。
【図2】同実施の形態1に係る気筒判別後の燃料噴射パターンを示すタイミングチャートである。
【図3】同実施の形態1に係るエンジンの構成図である。
【図4】同実施の形態1に係るエンジン始動時の動作を示す流れ図である。
【図5】従来の燃料供給量制御方法における気筒判別前(気筒未判別時)の燃料噴射パターンを例示するタイミングチャートである。
【図6】従来の燃料供給量制御方法における気筒判別後の燃料噴射パターンを例示するタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0055】
1……エンジン
2……シリンダ
3……ピストン
4……クランク軸
5……コンロッド
6……検出歯ロータ
6a……検出歯
6b……歯欠け部
7……燃焼室
8……クランク軸センサ
9……吸気管
10……吸気バルブ
11……吸気ポート
12……インジェクタ
13……排気管
15……排気バルブ
16……排気ポート
17……点火プラグ
18……燃料供給量制御装置
19……点火コイル
20……ECU
20a……気筒判別部
20b……燃料制御部(燃料制御手段)
21……イグニッションキー
22……スタータモータ
23……吸気圧センサ
25……吸気温センサ
26……大気圧センサ
27……壁温センサ
W1……気筒判別前の噴射パルス幅
W2……気筒判別後の噴射パルス幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸がスタータモータによって回転し始めてから燃料の燃焼によって安定して回転するまでのエンジン始動時において燃料供給量を制御する燃料供給量制御装置であって、
エンジン始動時において気筒判別の前後で燃料供給量を独立に制御する燃料制御手段を具備することを特徴とする燃料供給量制御装置。
【請求項2】
前記燃料制御手段は、燃料供給量を算出するための演算式を気筒判別の前後で変えることを特徴とする請求項1に記載の燃料供給量制御装置。
【請求項3】
前記燃料制御手段は、前記演算式に用いられる基本燃料量を気筒判別の前後で変えることを特徴とする請求項2に記載の燃料供給量制御装置。
【請求項4】
前記燃料制御手段は、気筒判別前の燃料供給量を気筒判別後の燃料供給量より多くすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の燃料供給量制御装置。
【請求項5】
前記燃料制御手段は、気筒判別前に供給する燃料を1回で吸気管に噴射することを特徴とする請求項4に記載の燃料供給量制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の燃料供給量制御装置を備えたことを特徴とする船舶推進装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−267306(P2008−267306A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−112848(P2007−112848)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)
【Fターム(参考)】