説明

燃料噴射装置用プレッシャリミッタ

【課題】プレッシャリミッタにおける弁体の摩耗を抑制する。
【解決手段】従来一体であったガイド部材を、弁体83に当接する円柱状のバルブガイド84と、スプリング82を受ける板状のスプリングガイド85とに分離して、それらを相対運動可能にする。これにより、バルブガイド84と弁体83の当接部に対してスプリングガイド85の振動の影響が及びにくくなり、弁体83の摩耗が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コモンレール内の圧力が所定値以上に上昇した際に開弁してコモンレール内の燃料を低圧部に逃がす燃料噴射装置用プレッシャリミッタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示された従来のプレッシャリミッタは、コモンレール内に連通する逃がし穴、逃がし穴の下流側に形成されたシート面、およびシート面の下流側に形成された摺動穴を有するシート部材を備えている。また、低圧部に接続されるスプリング室を形成するハウジングがシート部材に結合され、このスプリング室にスプリングが配置されている。
【0003】
そして、球状の弁体がシート面に接離して逃がし穴が開閉されるようになっている。弁体はガイド部材を介してスプリングにて閉弁向きに付勢されている。このガイド部材は、摺動穴に摺動自在に挿入されて弁体に当接する円柱状のバルブガイド部と、スプリングの一端側を受けるスプリングガイド部とが一体に形成されている。バルブガイド部の外周面には二面幅の切り欠き面が形成され、弁体が逃がし穴を開いた際に、摺動穴と切り欠き面との隙間を介して逃がし穴とスプリング室とが連通するようになっている。
【特許文献1】特開2002−31015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のプレッシャリミッタは、ガイド部材が振動することによりガイド部材と弁体との相対運動が生じ、ガイド部材と弁体との当接部において摩耗が発生する。そして、弁体はシート面に対して自由に回転するため、弁体の摩耗部がシート面に当接するとシール不良が発生するという問題があった。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、プレッシャリミッタにおける弁体の摩耗を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、コモンレール(2)内に連通する逃がし穴(800)、逃がし穴(800)の下流側に形成されたシート面(801)、およびシート面(801)の下流側に形成された摺動穴(802)を有するシート部材(80)と、シート面(801)に接離して逃がし穴(800)を開閉する弁体(83)と、摺動穴(802)に摺動自在に配置され、一端側が弁体(83)に当接する円柱状のバルブガイド(84)と、バルブガイド(84)の他端側に当接する板状のスプリングガイド(85)と、一端側がスプリングガイド(85)に当接し、スプリングガイド(85)およびバルブガイド(84)を介して弁体(83)をシート面(801)に向かって付勢するスプリング(82)と、シート部材(80)と結合されて、スプリング(82)を収容するとともに低圧部(3)に接続されるスプリング室(811)を形成するハウジング(81)とを備え、バルブガイド(84)の外周面に、バルブガイド(84)における弁体側の端部からバルブガイド(84)における軸方向中間部まで延びる切り欠き面(840)が形成され、弁体(83)が逃がし穴(800)を開いた際に、摺動穴(802)と切り欠き面(840)との隙間を介して逃がし穴(800)とスプリング室(811)とが連通するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
これによると、バルブガイド(84)とスプリングガイド(85)とを分離してそれらを相対運動させるようにしているため、バルブガイド(84)と弁体(83)の当接部に対してスプリングガイド(85)の振動の影響が及びにくくなり、弁体(83)の摩耗が抑制される。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の燃料噴射装置用プレッシャリミッタにおいて、切り欠き面(840)は、バルブガイド(84)の軸線に対して傾斜した平面であることを特徴とする。
【0009】
従来はバルブガイド部の切り欠き面(840)が二面幅であるため、摺動穴(802)と切り欠き面(840)との隙間を介して逃がし穴(800)とスプリング室(811)とが連通するとき、或いは逃がし穴(800)とスプリング室(811)との間が遮断されるときに、逃がし穴(800)とスプリング室(811)との連通面積が急激に変化する。したがって、車両に搭載される内燃機関の燃料噴射装置の場合、逃がし穴(800)とスプリング室(811)との間の開閉を繰り返すリンプホーム走行時には、コモンレール(2)内の圧力変化が大きくなって燃料噴射量の制御精度が低下し、ドライバビリティの低下を招くという問題があった。
【0010】
これに対し、請求項2の発明によると、摺動穴(802)と切り欠き面(840)との隙間を介して逃がし穴(800)とスプリング室(811)とが連通するとき、或いは逃がし穴(800)とスプリング室(811)との間が遮断されるときの、逃がし穴(800)とスプリング室(811)との連通面積の変化が小さくなるため、コモンレール(2)内の圧力変化が緩やかになり、燃料噴射量の制御精度の低下ひいてはドライバビリティの低下を回避することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の燃料噴射装置用プレッシャリミッタにおいて、バルブガイド(84)の外周面には、切り欠き面(840)におけるスプリングガイド側の端部からスプリングガイド側に向かって、かつバルブガイド(84)の軸線に対して傾斜して延びる燃料流出溝(841)が形成されていることを特徴とする。
【0012】
従来のプレッシャリミッタは、ガイド部材の往復動に伴いバルブガイド部が摺動穴(802)内で摺動する。この際、バルブガイド部の特定の部位が、摺動穴(802)のエッジ部などの高面圧部と常に摺動すると、その特定の部位の面荒れが進行しやすい。
【0013】
これに対し、請求項3の発明によると、燃料流出溝(841)からスプリング室(811)に流出する燃料によってバルブガイド(84)に回転運動が与えられるため、バルブガイド(84)は、摺動穴(802)のエッジ部などの高面圧部と摺動する部位が変化し、バルブガイド(84)の特定部位の面荒れ進行を抑制することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の燃料噴射装置用プレッシャリミッタにおいて、スプリングガイド(85)がハウジング(81)に当接することにより、スプリングガイド(85)の開弁向きの移動量が規制されるように構成されていることを特徴とする。
【0015】
従来のプレッシャリミッタは、開弁時のリフト量を規制する構成ではないため、スプリング(82)が過圧縮されてへたりが生じ、開弁圧が変化するという問題があった。これに対し、請求項4の発明によると、スプリングガイド(85)の移動量が規制されることによりスプリング(82)の過圧縮が防止され、開弁圧の変化が防止される。
【0016】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の燃料噴射装置用プレッシャリミッタにおいて、シート部材(80)は、逃がし穴(800)およびシート面(801)が形成された第1シート部材(80a)と、摺動穴(802)が形成された第2シート部材(80b)とに分割されていることを特徴とする。
【0017】
ところで、高圧化・小型化・閉弁圧アップという市場ニーズあり、それには、スプリング(82)のセット荷重低減によるスプリング体格増大の抑制を目的とするシート径の小径化と、閉弁圧アップのためのバルブガイド(84)の小径化が必要となる。このため、シート面(801)は「細穴の奥底」になり、高精度が要求されるシート面(801)の加工がさらに困難になる。
【0018】
これに対し、請求項5の発明によると、第1シート部材(80a)の表面にシート面(801)を配置して、シート面(801)の加工を容易にすることができる。
【0019】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0021】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は本発明の第1実施形態に係るプレッシャリミッタを用いた燃料噴射装置の全体構成図である。
【0022】
図1に示す燃料噴射装置は、車両に搭載される例えば4気筒のディーゼル機関(以下、エンジンという)1に適用され、高圧燃料を蓄えるコモンレール2と、燃料タンク3から汲み上げた燃料を加圧してコモンレール2に供給する燃料供給ポンプ4と、コモンレール2より供給される高圧燃料をエンジン1の燃焼室1aに噴射するインジェクタ5と、燃料噴射装置を電子制御する電子制御ユニット(以下ECUという)6とを備えている。
【0023】
コモンレール2内の圧力(以下、レール圧という)の目標値がECU6により設定され、コモンレール2は燃料供給ポンプ4から供給された高圧燃料を目標レール圧にて蓄える。このコモンレール2には、レール圧を検出してECU6に出力する圧力センサ7と、レール圧が予め設定された所定値を超えないように制限するプレッシャリミッタ8が取り付けられている。
【0024】
燃料供給ポンプ4は、エンジン1に駆動されて回転するカム軸9、このカム軸9に駆動されて燃料タンク3から燃料を汲み上げるフィードポンプ10、カム軸9の回転に同期してシリンダ11内を往復運動するプランジャ12、フィードポンプ10からシリンダ11内の加圧室13に吸入される燃料量を調量する電磁調量弁14などを有している。
【0025】
この燃料供給ポンプ4は、プランジャ12がシリンダ11内を上死点から下死点に向かって移動する際に、フィードポンプ10より送り出された燃料が電磁調量弁14で調量され、吸入弁15を押し開いて加圧室13に吸入される。その後、プランジャ12がシリンダ11内を下死点から上死点へ向かって移動する際に、プランジャ12によって加圧室13の燃料が加圧され、その加圧された燃料が、吐出弁16を押し開いてコモンレール2に圧送される。
【0026】
インジェクタ5は、エンジン1の気筒毎に搭載され、それぞれ高圧配管17を介してコモンレール2に接続されている。このインジェクタ5は、ECU6の指令に基づいて作動する電磁弁5aと、この電磁弁5aへの通電時に燃料を噴射するノズル5bとを備える。電磁弁5aは、コモンレール2の高圧燃料が印加される圧力室(図示せず)から低圧側に通じる低圧通路(図示せず)を開閉するもので、通電時に低圧通路を開放し、通電停止時に低圧通路を遮断する。
【0027】
ノズル5bは、噴孔を開閉するニードル(図示せず)を内蔵し、圧力室の燃料圧力がニードルを閉弁向き(噴孔を閉じる向き)に付勢している。従って、電磁弁5aへの通電により低圧通路が開放されて圧力室の燃料圧力が低下すると、ニードルがノズル5b内を開弁向きに移動して開弁する(噴孔を開く)ことにより、コモンレール2より供給された高圧燃料を噴孔より噴射する。一方、電磁弁5aへの通電停止により低圧通路が遮断されて、圧力室の燃料圧力が上昇すると、ニードルがノズル5b内を閉弁向きに移動して閉弁することにより、噴射が終了する。
【0028】
ECU6は、図示しないCPU、ROM、EEPROM、RAM等からなる周知のマイクロコンピュータを備え、マイクロコンピュータに記憶したプログラムに従って演算処理を行うものである。
【0029】
ECU6は、エンジン回転数を検出する回転数センサ18、アクセル開度(すなわちエンジン負荷)を検出するアクセル開度センサ(図示せず)、及びレール圧を検出する圧力センサ7等が接続され、これらのセンサで検出されたセンサ情報に基づいて、コモンレール2の目標レール圧と、エンジン1の運転状態に適した噴射時期及び噴射量等を演算し、その演算結果に従って、燃料供給ポンプ4の電磁調量弁14及びインジェクタ5の電磁弁5aを電子制御する。
【0030】
次に、プレッシャリミッタ8について説明する。図2は図1のプレッシャリミッタ8の閉弁状態を示す正面断面図、図3は図1のプレッシャリミッタ8の開弁状態を示す正面断面図である。図4(a)は図2のバルブガイドの正面図、図4(b)は図4(a)の下面図、図4(c)は図4(a)のA−A線に沿う断面図である。
【0031】
図2、図3に示すように、プレッシャリミッタ8は、シート部材80とハウジング81がかしめによって一体化されている。ハウジング81の外周面には雄ねじ810が形成されており、この雄ねじ810をコモンレール2(図1参照)の雌ねじ(図示せず)に螺合させることにより、シート部材80がコモンレール2内に臨む状態で、プレッシャリミッタ8がコモンレール2に固定される。
【0032】
ハウジング81の内部にはスプリング室811が形成されており、スプリング室811は低圧配管19(図1参照)を介して低圧部としての燃料タンク3(図1参照)に接続されている。また、スプリング室811には、後述する弁体を閉弁向きに付勢するスプリング82が配置されている。なお、このスプリング82は圧縮コイルスプリングである。
【0033】
シート部材80には、コモンレール2内に連通する逃がし穴800、この逃がし穴800の下流側に位置する円錐状のシート面801、このシート面801の下流側に位置する摺動穴802、およびこの摺動穴802の下流側に位置するスプリングガイド室803が形成されている。
【0034】
摺動穴802内には、シート面801に接離して逃がし穴800を開閉する球状の弁体83が挿入されると共に、一端側が弁体83に当接する円柱状のバルブガイド84が摺動自在に配置されている。弁体83にはレール圧が常時作用しており、弁体83はそのレール圧により逃がし穴800を開く向き(すなわち開弁向き)に付勢される。
【0035】
スプリングガイド室803には、円板状のスプリングガイド85が配置されている。このスプリングガイド85には、スプリングガイド室803とスプリング室811とを常時連通させる連通穴850が形成されている。
【0036】
スプリングガイド85は、一端側がバルブガイド84に当接し、他端側にスプリング82が当接している。そして、スプリング82の荷重は、スプリングガイド85およびバルブガイド84を介して弁体83に作用するようになっている。なお、スプリングガイド85の厚さにより、スプリング82のセット荷重を調整することができる。
【0037】
スプリングガイド室803の内径およびスプリングガイド85の外径は、スプリング室811の内径よりも大きく設定されている。そして、図3に示すように、スプリング82が圧縮される向き(すなわち開弁向き)にスプリングガイド85が所定量移動した際には、ハウジング81におけるシート部材80側の端面にスプリングガイド85が当接し、スプリングガイド85の移動量が規制されるようになっている。
【0038】
図4に示すように、バルブガイド84の外周面には切り欠き面840が形成されている。この切り欠き面840は、バルブガイド84の周方向に沿って等間隔に3つ配置されている。切り欠き面840は、バルブガイド84の軸線に対して傾斜した平面であると共に、バルブガイド84における弁体83(図2参照)側の端部からバルブガイド84における軸方向中間部まで延びている。より詳細には、切り欠き面840の形成位置から周方向に90度ずれた位置から見たときに、切り欠き面840はバルブガイド84の軸線に対して傾斜している。
【0039】
また、バルブガイド84におけるスプリングガイド85(図2参照)側の端面(すなわち、スプリングガイド85との当接面)は、球面になっている。バルブガイド84における弁体83側の端面(すなわち、弁体83との当接面)は、平面または円錐面になっている。
【0040】
そして、弁体83が逃がし穴800を閉じている閉弁時には、切り欠き面840全体が摺動穴802内に位置している(図2参照)。一方、弁体83が逃がし穴800を開いている開弁時には、切り欠き面840の一部が摺動穴802から露出し、摺動穴802と切り欠き面840との隙間を介して、逃がし穴800がスプリングガイド室803さらにはスプリング室811と連通するようになっている。
【0041】
次に、プレッシャリミッタ8の作動を説明する。まず、レール圧が所定値未満の場合、すなわち、レール圧がプレッシャリミッタ8の設定開弁圧未満の場合は、図2に示すように、弁体83はスプリング82に付勢されてシート面801に当接し、弁体83により逃がし穴800が閉じられる。
【0042】
一方、例えば燃料供給ポンプ4からコモンレール2に燃料が過剰に圧送されて、レール圧が所定値に達した場合、すなわち、レール圧がプレッシャリミッタ8の設定開弁圧に達した場合は、図3に示すように、弁体83、バルブガイド84、およびスプリングガイド85がスプリング82に抗して移動する。これにより、弁体83がシート面801から離れ、逃がし穴800が開かれる。また、バルブガイド84の切り欠き面840の一部が摺動穴802から露出し、摺動穴802と切り欠き面840との隙間を介して、逃がし穴800とスプリングガイド室803間が連通する。
【0043】
したがって、コモンレール2内の燃料が、逃がし穴800、摺動穴802と切り欠き面840との隙間、スプリングガイド室803、スプリング室811、および低圧配管19を介して燃料タンク3に逃がされる。このように、コモンレール2内の燃料が燃料タンク3に逃がされることにより、レール圧は所定値未満に調整される。
【0044】
本実施形態では、バルブガイド84とスプリングガイド85とを分離してそれらを相対運動させるようにしているため、バルブガイド84と弁体83の当接部に対してスプリングガイド85の振動の影響が及びにくくなり、弁体83の摩耗が抑制される。
【0045】
また、バルブガイド84におけるスプリングガイド85側の端面を球面にしているため、振動でスプリングガイド85が揺動してもバルブガイド84は揺動しない。したがって、バルブガイド84の揺動によるバルブガイド84と弁体83との摺動摩耗が防止される。
【0046】
さらに、切り欠き面840は、バルブガイド84の軸線に対して傾斜した平面であるため、摺動穴802と切り欠き面840との隙間の面積は、バルブガイド84の軸方向に沿って連続的に徐々に変化する。したがって、バルブガイド84の移動によって逃がし穴800とスプリングガイド室803との間が連通・遮断されるときに、逃がし穴800とスプリングガイド室803との連通面積は徐々に変化する。よって、そのときのレール圧の変化が緩やかになり、燃料噴射量の制御精度の低下ひいてはドライバビリティの低下を回避することができる。
【0047】
さらにまた、開弁向きへのスプリングガイド85の移動量がハウジング81により規制されるため、スプリング82の過圧縮が防止され、開弁圧の変化が防止される。
【0048】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。図5(a)は本発明の第2実施形態に係るプレッシャリミッタ8におけるバルブガイド84の正面図、図5(b)は図5(a)の下面図、図5(c)は図5(a)のB−B線に沿う断面図である。なお、本実施形態は、バルブガイド84の構成を一部変更したものである。その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0049】
図5に示すように、バルブガイド84の切り欠き面840は、バルブガイド84の軸線と平行な平面であると共に、バルブガイド84における弁体83(図2参照)側の端部からバルブガイド84における軸方向中間部まで延びている。
【0050】
また、バルブガイド84の外周面には、切り欠き面840におけるスプリングガイド85(図2参照)側の端部からスプリングガイド85側に向かって、かつバルブガイド84の軸線に対して傾斜して延びる燃料流出溝841が形成されている。より詳細には、切り欠き面840および燃料流出溝841の形成位置側から見たときに、燃料流出溝841の延び方向(すなわち、長手方向)はバルブガイド84の軸線に対して傾斜している。
【0051】
これによると、プレッシャリミッタ8が開弁してコモンレール2(図1参照)内の燃料が燃料タンク3(図1参照)に逃がされる際、燃料流出溝841からスプリングガイド室803(図2参照)に流出する燃料によってバルブガイド84に回転運動が与えられるため、バルブガイド84は、摺動穴802のエッジ部などの高面圧部と摺動する部位が変化し、バルブガイド84の特定部位の面荒れ進行を抑制することができる。
【0052】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。図6は本発明の第3実施形態に係るプレッシャリミッタ8の正面断面図である。なお、本実施形態は、シート部材80の構成を一部変更したものである。その他に関しては第1実施形態と同様であるため、異なる部分についてのみ説明する。
【0053】
図6に示すように、シート部材80は、逃がし穴800およびシート面801が形成された第1シート部材80aと、摺動穴802が形成された第2シート部材80bとに分割されている。これにより、シート面801は第1シート部材80aの表面に配置されるため、シート面801の加工が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプレッシャリミッタを用いた燃料噴射装置の全体構成図である。
【図2】図1のプレッシャリミッタ8の閉弁状態を示す正面断面図である。
【図3】図1のプレッシャリミッタ8の開弁状態を示す正面断面図である。
【図4】(a)は図2のバルブガイドの正面図、(b)は(a)の下面図、(c)は(a)のA−A線に沿う断面図である。
【図5】(a)は本発明の第2実施形態に係るプレッシャリミッタ8におけるバルブガイド84の正面図、(b)は(a)の下面図、(c)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係るプレッシャリミッタ8の正面断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 内燃機関
1a 燃焼室
2 コモンレール
3 燃料タンク(低圧部)
5 インジェクタ
80 シート部材
81 ハウジング
82 スプリング
83 弁体
84 バルブガイド
85 スプリングガイド
800 逃がし穴
801 シート面
802 摺動穴
811 スプリング室
840 切り欠き面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧燃料を蓄えるコモンレール(2)と、前記コモンレール(2)より供給される高圧燃料を内燃機関(1)の燃焼室(1a)に噴射するインジェクタ(5)とを備える燃料噴射装置に用いられ、前記コモンレール(2)内の圧力が所定値以上に上昇した際に開弁して前記コモンレール(2)内の燃料を低圧部(3)に逃がすプレッシャリミッタであって、
前記コモンレール(2)内に連通する逃がし穴(800)、前記逃がし穴(800)の下流側に形成されたシート面(801)、および前記シート面(801)の下流側に形成された摺動穴(802)を有するシート部材(80)と、
前記シート面(801)に接離して前記逃がし穴(800)を開閉する弁体(83)と、
前記摺動穴(802)に摺動自在に配置され、一端側が前記弁体(83)に当接する円柱状のバルブガイド(84)と、
前記バルブガイド(84)の他端側に当接する板状のスプリングガイド(85)と、
一端側が前記スプリングガイド(85)に当接し、前記スプリングガイド(85)および前記バルブガイド(84)を介して前記弁体(83)を前記シート面(801)に向かって付勢するスプリング(82)と、
前記シート部材(80)と結合されて、前記スプリング(82)を収容するとともに前記低圧部(3)に接続されるスプリング室(811)を形成するハウジング(81)とを備え、
前記バルブガイド(84)の外周面に、前記バルブガイド(84)における前記弁体側の端部から前記バルブガイド(84)における軸方向中間部まで延びる切り欠き面(840)が形成され、前記弁体(83)が前記逃がし穴(800)を開いた際に、前記摺動穴(802)と前記切り欠き面(840)との隙間を介して前記逃がし穴(800)と前記スプリング室(811)とが連通するように構成されていることを特徴とする燃料噴射装置用プレッシャリミッタ。
【請求項2】
前記切り欠き面(840)は、前記バルブガイド(84)の軸線に対して傾斜した平面であることを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射装置用プレッシャリミッタ。
【請求項3】
前記バルブガイド(84)の外周面には、前記切り欠き面(840)における前記スプリングガイド側の端部から前記スプリングガイド側に向かって、かつ前記バルブガイド(84)の軸線に対して傾斜して延びる燃料流出溝(841)が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料噴射装置用プレッシャリミッタ。
【請求項4】
前記スプリングガイド(85)が前記ハウジング(81)に当接することにより、前記スプリングガイド(85)の開弁向きの移動量が規制されるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の燃料噴射装置用プレッシャリミッタ。
【請求項5】
前記シート部材(80)は、前記逃がし穴(800)および前記シート面(801)が形成された第1シート部材(80a)と、前記摺動穴(802)が形成された第2シート部材(80b)とに分割されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の燃料噴射装置用プレッシャリミッタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−133382(P2010−133382A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−312135(P2008−312135)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】