燃料遮断弁
【課題】フロート室内に流入した燃料の排出性を向上することのできる燃料遮断弁を提供する。
【解決手段】燃料遮断弁10は、フロート室43、及び、そのフロート室43に連通口31を介して燃料タンクの外部と連通される接続通路46が設けられたケース12と、フロート室43内に昇降可能に設けられかつ連通口31を開閉する弁部49を有するフロート弁14とを備える。フロート室43の内周部とフロート弁14との対向面間には、フロート室43の上方空間部70と下方空間部71とを連絡する連絡通路部72が形成される。フロート室43の底壁部36に連通孔39,40が形成される。フロート弁14に、上方空間部70と下方空間部71とを連通する第1連通路66、及び、連絡通路部72と第1連通路66とを連通する第2連通路68が形成される。
【解決手段】燃料遮断弁10は、フロート室43、及び、そのフロート室43に連通口31を介して燃料タンクの外部と連通される接続通路46が設けられたケース12と、フロート室43内に昇降可能に設けられかつ連通口31を開閉する弁部49を有するフロート弁14とを備える。フロート室43の内周部とフロート弁14との対向面間には、フロート室43の上方空間部70と下方空間部71とを連絡する連絡通路部72が形成される。フロート室43の底壁部36に連通孔39,40が形成される。フロート弁14に、上方空間部70と下方空間部71とを連通する第1連通路66、及び、連絡通路部72と第1連通路66とを連通する第2連通路68が形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両の燃料タンクに設けられる燃料遮断弁に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料遮断弁は、自動車等の車両の燃料タンクの上部に設けられ、車両の通常時は、燃料タンクの外部(例えばキャニスタ)への通気を確保し、また、車両の傾斜や転倒等において燃料タンク内の燃料の外部への流出を遮断するものである。なお、燃料遮断弁は、フロートバルブ装置、フューエルカットオフバルブ、ロールオーバーバルブ等とも呼ばれている。
【0003】
燃料遮断弁の従来例(特許文献1参照)について説明する。図13は燃料遮断弁の開弁状態を示す断面図、図14は同じく閉弁状態を示す断面図である。
図14に示すように、燃料遮断弁101は、燃料タンク110の上部に設けられるもので、ケース102とフロート弁103とを備えている。ケース102には、フロート室107及び接続通路102bが設けられている。フロート室107は、燃料タンク110内に連通されている。また、接続通路102bは、フロート室107の上端部に連通口104aを介して連通されている。また、接続通路102bは、燃料タンク110の外部すなわちキャニスタに連通されている。また、フロート弁103は、フロート室107内に昇降可能に設けられており、下降時に連通口104aを開き(図13参照)、上昇時に連通口104aを閉じる(図14参照)。また、フロート室107の底壁部102dとフロート弁103との間には、バルブスプリング105が介装されている。バルブスプリング105は、フロート弁103の自重よりも小さいスプリング力で、フロート弁103の浮力を補助する。また、フロート室107の底壁部102dには、燃料タンク110内とフロート室107内とを連通する連通孔102aが形成されている。また、フロート弁103には、フロート室107の上壁部との対向面間に形成される上方空間部108(図13参照)と、フロート室107の底壁部102dとの対向面間に形成される下方空間部109(図14参照)とを連通する連通路103bが形成されている。
【0004】
前記燃料遮断弁101において、車両の通常時(図13参照)は、フロート弁103が下降位置にあり、連通口104aが開かれている。このため、燃料タンク110内の蒸発燃料は、連通孔102a、フロート室107及び連通路103b、連通口104a、接続通路102bを介して燃料タンク110の外部へ流出可能である。また、車両の横転時、旋回等において、燃料タンク110内の燃料が連通孔102aからフロート室107内に流入することにより、フロート弁103が浮力により上昇され、連通口104aが閉じられる(図14参照)。したがって、フロート室107と連通口104aとの連通が遮断されることにより、燃料タンク110の外部への燃料の流出が防止される。
【0005】
また、フロート弁103の上昇時において、燃料タンク110内の燃料は、連通孔102aからフロート室107内の下方空間部109に流入した後、フロート弁103の連通路103b、及び、フロート室107の内周部(詳しくは周壁面)とフロート弁103(詳しくは外周面)との対向面間の隙間112を通って、フロート室107内の上方空間部108に流入する。そして、車両が通常時へ戻ることによって、上方空間部108の燃料が、前記連通路103b及び前記隙間112を通って下方空間部109に流下する。下方空間部109に流下した燃料は、連通孔102aから燃料タンク110内へ流出(排出)される。これにともない、フロート弁103が下降することにより、連通口104aが開かれる(図13参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−194957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記燃料遮断弁101によると、フロート室107内の燃料の排出時において、フロート室107の内周部とフロート弁103との対向面間の隙間112に燃料が停滞しやすく、燃料の排出性が低いという問題点があった。これは、フロート弁103の径方向(図13において左右方向)のがたつきを防止するために、隙間112が狭められていることによるものと考えられる。
本発明が解決しようとする課題は、フロート室内に流入した燃料の排出性を向上することのできる燃料遮断弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、特許請求の範囲に記載された構成を要旨とする燃料遮断弁により解決することができる。
請求項1に記載された燃料遮断弁によると、フロート室の内周部とフロート弁との対向面間には、フロート室の上壁部とフロート弁との対向面間に形成される上方空間部と、フロート室の底壁部とフロート弁との対向面間に形成される下方空間部とを連絡する連絡通路部が形成され、フロート室の底壁部に、燃料タンク内と下方空間部とを連通する連通孔が形成され、フロート弁に、上方空間部と下方空間部とを連通する第1連通路が形成されかつ連絡通路部と第1連通路とを連通する第2連通路が形成されている。
したがって、フロート室内に流入した燃料の排出時において、上方空間部の燃料が、第1連通路及び連絡通路部を通って下方空間部に流下した後、連通孔から燃料タンク内へ流出(排出)される。このとき、連絡通路部に停滞しようとする燃料が第2連通路を介して第1連通路へ流れる。これによって、連絡通路部における燃料の停滞を防止して、フロート室内に流入した燃料の排出性を向上することができる。
【0009】
また、請求項2に記載された燃料遮断弁によると、フロート弁の第2連通路の上壁面は、第1連通路側から連絡通路部側に向かって上方へ傾斜する傾斜面に形成されている。したがって、第2連通路の連絡通路部側の開口面積が上方へ拡大される。これにより、燃料遮断弁が傾いて、第2連通路の連絡通路部側の開口が上向きになった際に、その開口の上側における連絡通路部の燃料が第2連通路に速やかに流入することができる。このことは、連絡通路部72における燃料の停滞の防止に有効である。
【0010】
また、請求項3に記載された燃料遮断弁によると、フロート室の底壁部の連通孔は、フロート弁の下面と対向する位置に配置されている。したがって、燃料タンク内から連通孔を介してフロート室内に急激に流入しようとする燃料が、フロート弁の下面に急激に衝突することにより、その燃料の流入を妨げることができる。このため、フロート室内への燃料の急激な流入を防止することができる。なお、燃料タンク内の蒸発燃料は、連通孔からフロート室へゆっくりと流入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる燃料遮断弁を示す分解斜視図である。
【図2】燃料遮断弁の開弁状態を示す断面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】図2のIV−IV線矢視断面図である。
【図5】図2のV−V線矢視断面図である。
【図6】燃料遮断弁の閉弁状態を示す断面図である。
【図7】リテーナの底壁部を示す上面図である。
【図8】フロート弁を示す断面図である。
【図9】フロート弁を示す上面図である。
【図10】フロート弁を示す下面図である。
【図11】燃料遮断弁の傾き状態における燃料の排出経路を示す説明図である。
【図12】フロート弁の第2連通路の変形例を示す断面図である。
【図13】従来例にかかる燃料遮断弁を開弁状態で示す断面図である。
【図14】燃料遮断弁を閉弁状態で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
[実施の形態]
本発明の一実施の形態について説明する。図1は燃料遮断弁を示す分解斜視図、図2は同じく開弁状態を示す断面図、図3は図2の要部拡大図、図4は図2のIV−IV線矢視断面図、図5は図2のV−V線矢視断面図、図6は燃料遮断弁を閉弁状態で示す断面図である。
図1に示すように、燃料遮断弁10は、ケース12とフロート弁14とバルブスプリング16とを備えている。なお、燃料遮断弁10は、前記従来例と同様、燃料タンク(図示省略)の上部(例えば上壁部)に設置される。
【0013】
前記ケース12は、ケース本体20とリテーナ22とカバー24とにより構成されている。以下、順に説明する。
ケース本体20を説明する。図2に示すように、ケース本体20は、中空円筒状の筒状壁部26、及び、筒状壁部26の上端開口部をその上端よりも一段低い位置において閉鎖する上壁部27を有している。筒状壁部26の上部には、上壁部27の下方付近において径方向に貫通する複数個の通気孔29が形成されている。なお、通気孔29は、筒状壁部26の周方向に所定の間隔で配置されている。
【0014】
前記上壁部27の中央部には、上下方向に貫通する連通口31が形成されている。連通口31の下端開口部にはバルブシート32が形成されている。また、上壁部27の外周部(図2において左側部)には、外側方に向けて突出する円管状の接続管部33が形成されている。接続管部33内の管路が接続管路34となっている。また、ケース本体20は、例えば樹脂製の一体成形品で形成されている。
【0015】
次に、リテーナ22を説明する。図1に示すように、リテーナ22は、円板状の底壁部36と、底壁部36の外周縁から立ち上がる円環状の側壁部37と、側壁部37から上方へかつ径方向外方へ延びる取っ手状部38とを有している。図7はリテーナの底壁部を示す上面図である。
図7に示すように、リテーナ22の底壁部36には、板厚方向(図7において紙面表裏方向)に貫通する複数個の内側の連通孔39、及び、複数個の外側の連通孔40が形成されている。両連通孔39,40は、同径をなす円形状で、底壁部36と同心状をなす内外二重の円周線39L,40L上に周方向に等間隔で配置されている。本実施の形態では、内側の連通孔39が8個形成され、また、外側の連通孔40が12個形成されている。また、底壁部36の中央部には、上方へ半球状に隆起する凸部41が同心状に形成されている(図1参照)。
【0016】
前記リテーナ22は、例えば金属製の板状材をプレス成形することにより一体形成されている。このため、前記両連通孔39,40は、例えばリテーナ22の底壁部36に対する打ち抜き加工によって形成されている。その打ち抜き加工は、リテーナ22のプレス加工と同時に行うとよいが、別工程で行ってもよい。また、前記凸部41の成形加工は、例えばリテーナ22のプレス加工、及び/又は、両連通孔39,40の打ち抜き加工と同時に行うとよいが、別工程で行ってもよい。なお、リテーナ22は、本明細書でいう「底壁部形成部材」に相当する。
【0017】
前記リテーナ22は、前記ケース本体20の筒状壁部26の下端部に側壁部37を嵌合するようにして装着されている(図2参照)。これにより、ケース本体20の筒状壁部26の下面開口部がリテーナ22の底壁部35で閉塞されることによって、ケース本体20内にフロート室43が形成されている。また、リテーナ22の底壁部36は、フロート室43の底壁部に相当するものであるから、「フロート室43の底壁部36」ともいう。また、取っ手状部38の径方向外方へ延びる上端部は、燃料タンクの上壁部の下面に対して溶着(例えば溶接)等により取付けられるようになっている。
【0018】
次に、カバー24を説明する。図1に示すように、カバー24は、例えば樹脂製の一体成形品で、円板状に形成されている。カバー24は、前記ケース本体20の筒状壁部26に装着されている(図2参照)。これにより、ケース本体20の筒状壁部26の上面開口部がカバー24で閉塞されることによって、ケース本体20の上端部内に連通室45が形成されている。連通室45は、前記連通口31(バルブシート32を含む)を介して前記フロート室43と連通されている。また、連通室45は、前記接続管部33の接続管路34と連通されている。連通室45と接続管路34とは、相互に連通する接続通路46を構成している。なお、接続管部33には、図示しないホース等の配管部材を介してキャニスタが接続されるようになっている。
【0019】
次に、フロート弁14を説明する。図8はフロート弁を示す断面図、図9は同じく上面図、図10は同じく下面図である。
図8に示すように、フロート弁14は、円柱状の弁本体48と、弁本体48の中央部上に突出された円錐状の弁部49とを同心状に有している。弁本体48の上面48aは、中央部側(弁部49側)から径方向外方に向かって下方へ緩やかに傾斜する傾斜面になっている。また、弁本体48の外周面には、軸方向(上下方向)に延びる複数本(本実施の形態では8本)のリブ部50が周方向に等間隔で形成されている(図1及び図9参照)。
【0020】
図8に示すように、前記弁本体48の下面中央部には、有天円柱状の中央空間部52が同心状に形成されている。中央空間部52の上端部は、前記弁部49付近に延びている。また、弁本体48の下面には、有天円環状の内外二重筒状をなす内側の環状空間部53及び外側の環状空間部54が同心状に形成されている。両環状空間部53,54は、弁本体48の高さの約半分程度の高さをもって形成されている。また、弁本体48における中央空間部52と内側の環状空間部53との間の筒状部分を小径筒部56という。また、内側の環状空間部53と外側の環状空間部54との間の筒状部分を中径筒部57という。また、外側の環状空間部54の外周側の筒状部分を大径筒部58という。
【0021】
前記中央空間部52の下端部と前記内側の環状空間部53の下部が連通されるように、前記小径筒部56の下面が前記中径筒部57及び前記大径筒部58の下面よりも上方位置に形成されている。また、中径筒部57の下面と大径筒部58の下面とは、同一平面をなしており、本明細書でいう「フロート弁の下面」に相当する。また、図8及び図10に示すように、小径筒部56の下端面には、径方向に貫通する複数個(本実施の形態では2個)の割溝状の連通溝部60が周方向に等間隔で形成されている。また、中径筒部57の下面には、径方向に貫通する複数個(本実施の形態では4個)の割溝状の連通溝部61が周方向に等間隔で形成されている。
【0022】
図8及び図10に示すように、前記大径筒部58の内周面には、軸方向に延びる複数個(本実施の形態では4個)の凹溝部62が周方向に等間隔で形成されている。また、大径筒部58の下面には、複数個(本実施の形態では4個)の長細状の支持突起63が周方向に等間隔で一体形成されている。支持突起63は、大径筒部58の径方向に延びており、内端部は大径筒部58の径方向の中央部に位置され、また、外端部は大径筒部58の径方向の外端部に位置されている。本実施の形態においては、支持突起63と前記リブ部50とが連続をなすように形成されている。
【0023】
図8に示すように、前記弁本体48には、上下方向に貫通する複数個(本実施の形態では4個)のストレート状の縦孔部65が周方向に等間隔で形成されている(図9参照)。縦孔部65の上端は弁本体48の上面48aに開口され、また、縦孔部65の下端面は前記外側の環状空間部54の天井面に開口されている。本実施の形態では、外側の環状空間部54において、凹溝部62の形成によって径方向の溝幅が拡幅された天井面に縦孔部65の下端面が開口されている(図10参照)。また、縦孔部65と外側の環状空間部54とは、相互に連通する第1連通路66を構成している。また、縦孔部65は、例えば横断面円形状に形成されている。
【0024】
図8に示すように、前記弁本体48の大径筒部58の外周面には、径方向内方へ延びる複数個(本実施の形態では4個)の横孔部からなる第2連通路68が周方向に等間隔で形成されている。第2連通路68の外端は、弁本体48の外周面における隣り合う前記リブ部50の相互間のうち、周方向に1つおきの相互間において開口されている(図5参照)。第2連通路68の内端は、前記第1連通路66の環状空間部54の上端部に開口されている。詳しくは、第2連通路68の内端は、前記凹溝部62の上端部における内周面(溝底面)に開口されている。また、第2連通路68は、例えば縦断面横長四角形状に形成されている(図1参照)。また、第2連通路68の下壁面は、径方向に延びる径方向平面68bで形成されている。
【0025】
図8に示すように、前記第2連通路68の上壁面は、内端側(第1連通路66の環状空間部54側)から外端側に向かって上方へ傾斜する所定の傾斜角θを有する傾斜面68aで形成されている。傾斜面68aの傾斜角θは、例えば約30°に設定されている。これにより、第2連通路68が縦断面台形形状とされている。また、本実施の形態では、第2連通路68と第1連通路66の縦孔部65とは同位相で形成されている(図5参照)。なお、第2連通路68と縦孔部65とは、同位相に限らず、異なる位相で形成してもよい。また、フロート弁14は、例えば樹脂製の一体成形品で形成されている。
【0026】
前記フロート弁14は、前記フロート室43内に昇降可能に収納されている(図2参照)。これとともに、フロート弁14のリブ部50が、フロート室43の周壁面すなわち筒状壁部26の内周面に対して摺接可能に当接又は近接されている(図4及び図5参照)。これにより、フロート弁14がフロート室43の内周面に沿って軸方向(上下方向)に案内されるため、フロート14の径方向のがたつきを防止することができる。
【0027】
図2に示すように、前記フロート弁14が収納された前記フロート室43内において、フロート室43の上壁部27(詳しくは下面)とフロート弁14(詳しくは弁本体48の上面)との対向面間に形成される空間部を上方空間部70という。また、フロート室43の底壁部36(詳しくは上面)とフロート弁14(詳しくは弁本体48の中径筒部57及び大径筒部58の下面)との対向面間に形成される空間部を下方空間部71という。さらに、フロート室43の内周部(詳しくは筒状壁部26の内周面)とフロート弁14(詳しくは弁本体48の外周面)との対向面間に形成される空間部を連絡通路部72という。連絡通路部72は、フロート弁14のリブ部50によって周方向に区画されている(図4参照)。また、連絡通路部72は、上方空間部70と下方空間部71とを連通している。また、フロート弁14の第1連通路66により、フロート室43内の上方空間部70と下方空間部71とが縦方向(上下方向)に連通されている。また、第2連通路68により、第1連通路66(詳しくは外側の環状空間部54)と連絡通路部72とが横方向(フロート弁14の径方向)に連通されている。
【0028】
次に、バルブスプリング16を説明する。図2に示すように、バルブスプリング16は、コイルスプリングからなり、前記リテーナ22と前記フロート弁14との間に介装されている。詳しくは、バルブスプリング16の上部は、前記フロート弁14の内側の環状空間部53内に嵌合されている。また、バルブスプリング16の下端部は、リテーナ22の凸部41に嵌合されている。
【0029】
前記フロート弁14は、車両の通常時(開弁時)は自重により下降し、前記支持突起63がフロート室43の底壁部36に当接した状態で支持される(図2参照)。このため、フロート弁14の下降時においても、フロート弁14(詳しくは、中径筒部57及び大径筒部58)の下面とリテーナ22の底壁部36の上面との間に必要な下方空間部71が確保される。また、バルブスプリング16のスプリング力は、車両の通常時においてはフロート弁14を上動させる力はないが、フロート室43内に燃料が流入したときには、フロート弁14に作用する浮力を補助する力として作用する。
【0030】
図3に示すように、前記リテーナ22の内側の連通孔39は、前記フロート弁14の中径筒部57の下面に対向している。これとともに、リテーナ22の外側の連通孔40は、フロート弁14の大径筒部58の下面に対向している。すなわち、リテーナ22の両連通孔39,40は、フロート弁14の下面において両環状空間部53,54と対向しない位置に配置されている。
【0031】
図2に示すように、前記燃料遮断弁10にはリリーフ弁74が内蔵されている。リリーフ弁74は、弁ハウジング75と弁体78とリリーフスプリング79とにより構成されている(図1参照)。弁ハウジング75は、前記ケース本体20の上壁部27の一側部(図2において左側部)に縦方向(上下方向)に延びる中空円筒状に一体形成されている。弁ハウジング75内には、前記連通室45と前記フロート室43(詳しくは上方空間部70)とを連通するリリーフ通路76が形成されている。また、弁ハウジング75の下端部には、径方向内方へフランジ状に突出する弁座77が形成されている。また、弁体78は、例えばボール状で、前記リリーフ通路76内に上下動可能に配置されている。弁体78は、下動により弁座77に着座し、また、上動により弁座77から離れる(離座する)。また、リリーフスプリング79は、コイルスプリングからなり、弁体78とカバー24との間に介装されている。リリーフスプリング79は、弁体78を常に閉弁方向すなわち下方に付勢している。
【0032】
次に、前記燃料遮断弁10の作動について説明する。
車両の通常時においては、燃料タンク内の燃料の液面は燃料遮断弁10よりも下方に位置する。このため、フロート弁14は自重によりフロート室43における下降位置に位置する(図2参照)。この状態では、フロート弁14の弁部49がケース12のバルブシート32から下方へ離れる(離座する)ことにより、連通口31が開かれた状態すなわち開弁状態にある。この開弁状態において、燃料タンク内の気層部に発生した蒸発燃料は、ケース12の両連通孔39,40から、フロート室43(詳しくは、下方空間部71、連絡通路部72及び上方空間部70)へ流入した後、連通口31から接続通路46(連通室45及び接続管路34)を通じて外部(キャニスタ)へ流出される。このとき、フロート弁14の第1連通路66及び第2連通路68にも蒸発燃料が流入する。
【0033】
また、車両の傾斜や転倒等により、燃料タンク内の燃料がフロート室43内に流入する。この場合、燃料タンク内の燃料は、前記蒸発燃料の流入経路と同様、ケース12の両連通孔39,40、フロート室43(詳しくは、下方空間部71、連絡通路部72及び上方空間部70)へ流入する。これとともに、フロート弁14の第1連通路66及び第2連通路68へも燃料が流入する。なお、このときの燃料の流れが図6に実線矢印で示されている。
【0034】
このようにして、フロート室43内に燃料が流入するにともない、フロート弁14がその浮力により上昇位置に上昇される。これにより、フロート弁14の弁部49がケース12のバルブシート32に着座することにより、連通口31が閉じられた状態すなわち閉弁状態となる(図6参照)。この閉弁状態では、フロート室43と連通口31との連通が遮断されるため、燃料タンク内の燃料の外部(キャニスタ)への流出が遮断すなわち阻止される。
【0035】
また、車両が車両の傾斜や転倒等から通常時に戻るときには、フロート室43内の燃料が、前記燃料の流入経路と逆方向の経路を辿って燃料タンク内へ排出される。すなわち、フロート室43内の上方空間部70の燃料は、第1連通路66及び連絡通路部72を通って、フロート室43内の下方空間部71に流下した後、両連通孔39,40から燃料タンク内へ流出(排出)される。これとともに、連絡通路部72に停滞しようとする燃料は、第2連通路68を介して第1連通路66へ流れることができる。なお、このときの燃料の流れが図3及び図6に点線矢印で示されている。
【0036】
また、内側の環状空間部53と外側の環状空間部54とが、中径筒部57の連通溝部61を介して連通されているため、外側の環状空間部54の燃料が連通溝部61を介して内側の環状空間部53へ流れることができる。さらに、中央空間部52と内側の環状空間部53とが連通されているため、内側の環状空間部53の燃料が中央空間部52へ流れることができる。このように、燃料が、外側の環状空間部54から内側の環状空間部53へ流れ、さらに内側の環状空間部53から中央空間部52へも流れやすくなっている。これにより、燃料の排出性を向上することができる。
【0037】
また、図11は燃料遮断弁の傾き状態における燃料の排出経路を示す説明図である。
前記第2連通路68の上壁面が、内端側(第1連通路66の環状空間部54側)から外端側に向かって上方へ傾斜する所定の傾斜角θを有する傾斜面68aで形成されている(図8参照)。したがって、例えば、図11に示すように、燃料遮断弁10が左下がりで右上がりの状態に傾いて、右側の第2連通路68の連絡通路部72側の開口が上向きになった際には、その開口の上側における連絡通路部72の燃料が第2連通路68に速やかに流入することができる(図11中、二点鎖線矢印参照)。
【0038】
前記のようにして、フロート室43内の燃料が燃料タンク内へ排出されるにともなって、フロート弁14が下降位置に下降し、フロート弁14の弁部49がケース12のバルブシート32から下方へ離れる(離座する)ことにより、連通口31が開かれた開弁状態に戻る(図2参照)。
【0039】
また、フロート室43の底壁部36の両連通孔39,40が、フロート弁14の中径筒部57及び大径筒部58の下面と対向する位置に配置されている(図3参照)。したがって、燃料タンク内から両連通孔39,40を介してフロート室43内の下方空間部71に急激に流入しようとする燃料(図3中、実線矢印参照)が、フロート弁14の中径筒部57及び大径筒部58の下面に急激に衝突することにより、その燃料の流入を妨げることができる。また、燃料がフロート弁14の中径筒部57及び大径筒部58の下面に急激に衝突することにより、フロート弁14が押し上げられる。このため、フロート弁14が開弁状態から閉弁状態になるまでの時間を短縮し、燃料タンクの外部への燃料の流出を効果的に防止することができる。なお、フロート弁14の下面に対する燃料の衝突が急激でない場合には、燃料タンク内の燃料が、フロート弁14の下面に軽く衝突しながら流れ方向を変えることにより、フロート室43の下方空間部71へ流入することができる。
【0040】
また、リリーフ弁74は、車両の通常時においては、リリーフスプリング79の付勢により弁体78が弁座77に着座しているため閉弁状態にある(図2参照)。そして、燃料タンク内の圧力が所定値に達した時には、リリーフスプリング79の付勢に抗して弁体78が弁座77から離れる(離座する)ことにより開弁する。これにより、連通口31を迂回するリリーフ通路76が開通される。このため、燃料タンク内の圧力が外部へ逃されることにより、燃料タンク内の圧力が所定値以上に上昇することが防止される。なお、燃料タンク内の圧力が所定値に低下すれば、弁体78はリリーフスプリング79の付勢力によって閉弁する。
【0041】
前記した燃料遮断弁10によると、フロート室43内に流入した燃料の排出時において、上方空間部70の燃料が、第1連通路66及び連絡通路部72を通って下方空間部71に流下した後、両連通孔39,40から燃料タンク内へ流出(排出)される。このとき、連絡通路部72に停滞しようとする燃料が第2連通路68を介して第1連通路66へ流れる(図3中、点線矢印参照)。これによって、連絡通路部72における燃料の停滞を防止して、フロート室43内に流入した燃料の排出性を向上することができる。
【0042】
また、フロート弁14の第2連通路68の上壁面は、第1連通路66側から連絡通路部72側に向かって上方へ傾斜する傾斜面68aに形成されている(図3及び図8参照)。したがって、第2連通路68の連絡通路部72側の開口面積が上方へ拡大される。これにより、フロート弁14が傾いて、第2連通路68の連絡通路部72側の開口が上向きになった際に、その開口の上側における連絡通路部72の燃料が第2連通路68に速やかに流入することができる(図11中、二点鎖線矢印参照)。このことは、連絡通路部72における燃料の停滞の防止に有効である。
【0043】
また、フロート室43の底壁部36の両連通孔39,40は、フロート弁14の中径筒部57及び大径筒部58の下面と対向する位置に配置されている(図3参照)。したがって、燃料タンク内から両連通孔39,40を介してフロート室43内に急激に流入しようとする燃料(図3中、実線矢印参照)が、フロート弁14の中径筒部57及び大径筒部58の下面に急激に衝突することにより、その燃料の流入を妨げることができる。このため、フロート室43内への燃料の急激な流入を防止することができる。
【0044】
また、前記実施の形態では、前記フロート弁14の第2連通路68の上壁面を傾斜面68aで形成することにより第2連通路68を縦断面台形形状としたが、その第2連通路68の縦断面形状は適宜変更することができる。例えば、図12に示すように、第2連通路68の上壁面を径方向に延びる径方向平面68a1で形成することにより第2連通路68を縦断面長方形状とすることもできる。また、第2連通路68の下壁面についても、径方向平面68bに代えて、傾斜面68aと平行又はほぼ平行な傾斜面で形成することにより第2連通路68を縦断面平行四辺形状とすることもできる。
【0045】
本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、フロート弁14の第1連通路66の形状、大きさ、配置位置は、特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。また、フロート弁14における外側の環状空間部54を省略し、フロート弁14を上下方向に貫通する縦孔部のみにより、第1連通路66を形成することもできる。また、フロート弁14の第2連通路68の形状、大きさ、配置位置は、特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。また、前記実施の形態では、リテーナ22に両連通孔39,40を形成したが、リテーナ22以外の底壁部形成部材に両連通孔39,40を形成することができる。また、リテーナ22の底壁部36には、フロート弁14の下面と対向しない位置、例えば中央空間部52、両環状空間部53,54の少なくとも1つの空間部に対向する位置に配置された連通孔を形成してもよい。また、内側の連通孔39及び外側の連通孔40のいずれか一方は省略することができる。
【符号の説明】
【0046】
10…燃料遮断弁
12…ケース
14…フロート弁
27…上壁部
31…連通口
36…底壁部
39,40…連通孔
43…フロート室
46…接続通路
49…弁部
66…第1連通路
68…第2連通路
68a…傾斜面(上壁面)
70…上方空間部
71…下方空間部
72…連絡通路部
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両の燃料タンクに設けられる燃料遮断弁に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料遮断弁は、自動車等の車両の燃料タンクの上部に設けられ、車両の通常時は、燃料タンクの外部(例えばキャニスタ)への通気を確保し、また、車両の傾斜や転倒等において燃料タンク内の燃料の外部への流出を遮断するものである。なお、燃料遮断弁は、フロートバルブ装置、フューエルカットオフバルブ、ロールオーバーバルブ等とも呼ばれている。
【0003】
燃料遮断弁の従来例(特許文献1参照)について説明する。図13は燃料遮断弁の開弁状態を示す断面図、図14は同じく閉弁状態を示す断面図である。
図14に示すように、燃料遮断弁101は、燃料タンク110の上部に設けられるもので、ケース102とフロート弁103とを備えている。ケース102には、フロート室107及び接続通路102bが設けられている。フロート室107は、燃料タンク110内に連通されている。また、接続通路102bは、フロート室107の上端部に連通口104aを介して連通されている。また、接続通路102bは、燃料タンク110の外部すなわちキャニスタに連通されている。また、フロート弁103は、フロート室107内に昇降可能に設けられており、下降時に連通口104aを開き(図13参照)、上昇時に連通口104aを閉じる(図14参照)。また、フロート室107の底壁部102dとフロート弁103との間には、バルブスプリング105が介装されている。バルブスプリング105は、フロート弁103の自重よりも小さいスプリング力で、フロート弁103の浮力を補助する。また、フロート室107の底壁部102dには、燃料タンク110内とフロート室107内とを連通する連通孔102aが形成されている。また、フロート弁103には、フロート室107の上壁部との対向面間に形成される上方空間部108(図13参照)と、フロート室107の底壁部102dとの対向面間に形成される下方空間部109(図14参照)とを連通する連通路103bが形成されている。
【0004】
前記燃料遮断弁101において、車両の通常時(図13参照)は、フロート弁103が下降位置にあり、連通口104aが開かれている。このため、燃料タンク110内の蒸発燃料は、連通孔102a、フロート室107及び連通路103b、連通口104a、接続通路102bを介して燃料タンク110の外部へ流出可能である。また、車両の横転時、旋回等において、燃料タンク110内の燃料が連通孔102aからフロート室107内に流入することにより、フロート弁103が浮力により上昇され、連通口104aが閉じられる(図14参照)。したがって、フロート室107と連通口104aとの連通が遮断されることにより、燃料タンク110の外部への燃料の流出が防止される。
【0005】
また、フロート弁103の上昇時において、燃料タンク110内の燃料は、連通孔102aからフロート室107内の下方空間部109に流入した後、フロート弁103の連通路103b、及び、フロート室107の内周部(詳しくは周壁面)とフロート弁103(詳しくは外周面)との対向面間の隙間112を通って、フロート室107内の上方空間部108に流入する。そして、車両が通常時へ戻ることによって、上方空間部108の燃料が、前記連通路103b及び前記隙間112を通って下方空間部109に流下する。下方空間部109に流下した燃料は、連通孔102aから燃料タンク110内へ流出(排出)される。これにともない、フロート弁103が下降することにより、連通口104aが開かれる(図13参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−194957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記燃料遮断弁101によると、フロート室107内の燃料の排出時において、フロート室107の内周部とフロート弁103との対向面間の隙間112に燃料が停滞しやすく、燃料の排出性が低いという問題点があった。これは、フロート弁103の径方向(図13において左右方向)のがたつきを防止するために、隙間112が狭められていることによるものと考えられる。
本発明が解決しようとする課題は、フロート室内に流入した燃料の排出性を向上することのできる燃料遮断弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、特許請求の範囲に記載された構成を要旨とする燃料遮断弁により解決することができる。
請求項1に記載された燃料遮断弁によると、フロート室の内周部とフロート弁との対向面間には、フロート室の上壁部とフロート弁との対向面間に形成される上方空間部と、フロート室の底壁部とフロート弁との対向面間に形成される下方空間部とを連絡する連絡通路部が形成され、フロート室の底壁部に、燃料タンク内と下方空間部とを連通する連通孔が形成され、フロート弁に、上方空間部と下方空間部とを連通する第1連通路が形成されかつ連絡通路部と第1連通路とを連通する第2連通路が形成されている。
したがって、フロート室内に流入した燃料の排出時において、上方空間部の燃料が、第1連通路及び連絡通路部を通って下方空間部に流下した後、連通孔から燃料タンク内へ流出(排出)される。このとき、連絡通路部に停滞しようとする燃料が第2連通路を介して第1連通路へ流れる。これによって、連絡通路部における燃料の停滞を防止して、フロート室内に流入した燃料の排出性を向上することができる。
【0009】
また、請求項2に記載された燃料遮断弁によると、フロート弁の第2連通路の上壁面は、第1連通路側から連絡通路部側に向かって上方へ傾斜する傾斜面に形成されている。したがって、第2連通路の連絡通路部側の開口面積が上方へ拡大される。これにより、燃料遮断弁が傾いて、第2連通路の連絡通路部側の開口が上向きになった際に、その開口の上側における連絡通路部の燃料が第2連通路に速やかに流入することができる。このことは、連絡通路部72における燃料の停滞の防止に有効である。
【0010】
また、請求項3に記載された燃料遮断弁によると、フロート室の底壁部の連通孔は、フロート弁の下面と対向する位置に配置されている。したがって、燃料タンク内から連通孔を介してフロート室内に急激に流入しようとする燃料が、フロート弁の下面に急激に衝突することにより、その燃料の流入を妨げることができる。このため、フロート室内への燃料の急激な流入を防止することができる。なお、燃料タンク内の蒸発燃料は、連通孔からフロート室へゆっくりと流入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる燃料遮断弁を示す分解斜視図である。
【図2】燃料遮断弁の開弁状態を示す断面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】図2のIV−IV線矢視断面図である。
【図5】図2のV−V線矢視断面図である。
【図6】燃料遮断弁の閉弁状態を示す断面図である。
【図7】リテーナの底壁部を示す上面図である。
【図8】フロート弁を示す断面図である。
【図9】フロート弁を示す上面図である。
【図10】フロート弁を示す下面図である。
【図11】燃料遮断弁の傾き状態における燃料の排出経路を示す説明図である。
【図12】フロート弁の第2連通路の変形例を示す断面図である。
【図13】従来例にかかる燃料遮断弁を開弁状態で示す断面図である。
【図14】燃料遮断弁を閉弁状態で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
[実施の形態]
本発明の一実施の形態について説明する。図1は燃料遮断弁を示す分解斜視図、図2は同じく開弁状態を示す断面図、図3は図2の要部拡大図、図4は図2のIV−IV線矢視断面図、図5は図2のV−V線矢視断面図、図6は燃料遮断弁を閉弁状態で示す断面図である。
図1に示すように、燃料遮断弁10は、ケース12とフロート弁14とバルブスプリング16とを備えている。なお、燃料遮断弁10は、前記従来例と同様、燃料タンク(図示省略)の上部(例えば上壁部)に設置される。
【0013】
前記ケース12は、ケース本体20とリテーナ22とカバー24とにより構成されている。以下、順に説明する。
ケース本体20を説明する。図2に示すように、ケース本体20は、中空円筒状の筒状壁部26、及び、筒状壁部26の上端開口部をその上端よりも一段低い位置において閉鎖する上壁部27を有している。筒状壁部26の上部には、上壁部27の下方付近において径方向に貫通する複数個の通気孔29が形成されている。なお、通気孔29は、筒状壁部26の周方向に所定の間隔で配置されている。
【0014】
前記上壁部27の中央部には、上下方向に貫通する連通口31が形成されている。連通口31の下端開口部にはバルブシート32が形成されている。また、上壁部27の外周部(図2において左側部)には、外側方に向けて突出する円管状の接続管部33が形成されている。接続管部33内の管路が接続管路34となっている。また、ケース本体20は、例えば樹脂製の一体成形品で形成されている。
【0015】
次に、リテーナ22を説明する。図1に示すように、リテーナ22は、円板状の底壁部36と、底壁部36の外周縁から立ち上がる円環状の側壁部37と、側壁部37から上方へかつ径方向外方へ延びる取っ手状部38とを有している。図7はリテーナの底壁部を示す上面図である。
図7に示すように、リテーナ22の底壁部36には、板厚方向(図7において紙面表裏方向)に貫通する複数個の内側の連通孔39、及び、複数個の外側の連通孔40が形成されている。両連通孔39,40は、同径をなす円形状で、底壁部36と同心状をなす内外二重の円周線39L,40L上に周方向に等間隔で配置されている。本実施の形態では、内側の連通孔39が8個形成され、また、外側の連通孔40が12個形成されている。また、底壁部36の中央部には、上方へ半球状に隆起する凸部41が同心状に形成されている(図1参照)。
【0016】
前記リテーナ22は、例えば金属製の板状材をプレス成形することにより一体形成されている。このため、前記両連通孔39,40は、例えばリテーナ22の底壁部36に対する打ち抜き加工によって形成されている。その打ち抜き加工は、リテーナ22のプレス加工と同時に行うとよいが、別工程で行ってもよい。また、前記凸部41の成形加工は、例えばリテーナ22のプレス加工、及び/又は、両連通孔39,40の打ち抜き加工と同時に行うとよいが、別工程で行ってもよい。なお、リテーナ22は、本明細書でいう「底壁部形成部材」に相当する。
【0017】
前記リテーナ22は、前記ケース本体20の筒状壁部26の下端部に側壁部37を嵌合するようにして装着されている(図2参照)。これにより、ケース本体20の筒状壁部26の下面開口部がリテーナ22の底壁部35で閉塞されることによって、ケース本体20内にフロート室43が形成されている。また、リテーナ22の底壁部36は、フロート室43の底壁部に相当するものであるから、「フロート室43の底壁部36」ともいう。また、取っ手状部38の径方向外方へ延びる上端部は、燃料タンクの上壁部の下面に対して溶着(例えば溶接)等により取付けられるようになっている。
【0018】
次に、カバー24を説明する。図1に示すように、カバー24は、例えば樹脂製の一体成形品で、円板状に形成されている。カバー24は、前記ケース本体20の筒状壁部26に装着されている(図2参照)。これにより、ケース本体20の筒状壁部26の上面開口部がカバー24で閉塞されることによって、ケース本体20の上端部内に連通室45が形成されている。連通室45は、前記連通口31(バルブシート32を含む)を介して前記フロート室43と連通されている。また、連通室45は、前記接続管部33の接続管路34と連通されている。連通室45と接続管路34とは、相互に連通する接続通路46を構成している。なお、接続管部33には、図示しないホース等の配管部材を介してキャニスタが接続されるようになっている。
【0019】
次に、フロート弁14を説明する。図8はフロート弁を示す断面図、図9は同じく上面図、図10は同じく下面図である。
図8に示すように、フロート弁14は、円柱状の弁本体48と、弁本体48の中央部上に突出された円錐状の弁部49とを同心状に有している。弁本体48の上面48aは、中央部側(弁部49側)から径方向外方に向かって下方へ緩やかに傾斜する傾斜面になっている。また、弁本体48の外周面には、軸方向(上下方向)に延びる複数本(本実施の形態では8本)のリブ部50が周方向に等間隔で形成されている(図1及び図9参照)。
【0020】
図8に示すように、前記弁本体48の下面中央部には、有天円柱状の中央空間部52が同心状に形成されている。中央空間部52の上端部は、前記弁部49付近に延びている。また、弁本体48の下面には、有天円環状の内外二重筒状をなす内側の環状空間部53及び外側の環状空間部54が同心状に形成されている。両環状空間部53,54は、弁本体48の高さの約半分程度の高さをもって形成されている。また、弁本体48における中央空間部52と内側の環状空間部53との間の筒状部分を小径筒部56という。また、内側の環状空間部53と外側の環状空間部54との間の筒状部分を中径筒部57という。また、外側の環状空間部54の外周側の筒状部分を大径筒部58という。
【0021】
前記中央空間部52の下端部と前記内側の環状空間部53の下部が連通されるように、前記小径筒部56の下面が前記中径筒部57及び前記大径筒部58の下面よりも上方位置に形成されている。また、中径筒部57の下面と大径筒部58の下面とは、同一平面をなしており、本明細書でいう「フロート弁の下面」に相当する。また、図8及び図10に示すように、小径筒部56の下端面には、径方向に貫通する複数個(本実施の形態では2個)の割溝状の連通溝部60が周方向に等間隔で形成されている。また、中径筒部57の下面には、径方向に貫通する複数個(本実施の形態では4個)の割溝状の連通溝部61が周方向に等間隔で形成されている。
【0022】
図8及び図10に示すように、前記大径筒部58の内周面には、軸方向に延びる複数個(本実施の形態では4個)の凹溝部62が周方向に等間隔で形成されている。また、大径筒部58の下面には、複数個(本実施の形態では4個)の長細状の支持突起63が周方向に等間隔で一体形成されている。支持突起63は、大径筒部58の径方向に延びており、内端部は大径筒部58の径方向の中央部に位置され、また、外端部は大径筒部58の径方向の外端部に位置されている。本実施の形態においては、支持突起63と前記リブ部50とが連続をなすように形成されている。
【0023】
図8に示すように、前記弁本体48には、上下方向に貫通する複数個(本実施の形態では4個)のストレート状の縦孔部65が周方向に等間隔で形成されている(図9参照)。縦孔部65の上端は弁本体48の上面48aに開口され、また、縦孔部65の下端面は前記外側の環状空間部54の天井面に開口されている。本実施の形態では、外側の環状空間部54において、凹溝部62の形成によって径方向の溝幅が拡幅された天井面に縦孔部65の下端面が開口されている(図10参照)。また、縦孔部65と外側の環状空間部54とは、相互に連通する第1連通路66を構成している。また、縦孔部65は、例えば横断面円形状に形成されている。
【0024】
図8に示すように、前記弁本体48の大径筒部58の外周面には、径方向内方へ延びる複数個(本実施の形態では4個)の横孔部からなる第2連通路68が周方向に等間隔で形成されている。第2連通路68の外端は、弁本体48の外周面における隣り合う前記リブ部50の相互間のうち、周方向に1つおきの相互間において開口されている(図5参照)。第2連通路68の内端は、前記第1連通路66の環状空間部54の上端部に開口されている。詳しくは、第2連通路68の内端は、前記凹溝部62の上端部における内周面(溝底面)に開口されている。また、第2連通路68は、例えば縦断面横長四角形状に形成されている(図1参照)。また、第2連通路68の下壁面は、径方向に延びる径方向平面68bで形成されている。
【0025】
図8に示すように、前記第2連通路68の上壁面は、内端側(第1連通路66の環状空間部54側)から外端側に向かって上方へ傾斜する所定の傾斜角θを有する傾斜面68aで形成されている。傾斜面68aの傾斜角θは、例えば約30°に設定されている。これにより、第2連通路68が縦断面台形形状とされている。また、本実施の形態では、第2連通路68と第1連通路66の縦孔部65とは同位相で形成されている(図5参照)。なお、第2連通路68と縦孔部65とは、同位相に限らず、異なる位相で形成してもよい。また、フロート弁14は、例えば樹脂製の一体成形品で形成されている。
【0026】
前記フロート弁14は、前記フロート室43内に昇降可能に収納されている(図2参照)。これとともに、フロート弁14のリブ部50が、フロート室43の周壁面すなわち筒状壁部26の内周面に対して摺接可能に当接又は近接されている(図4及び図5参照)。これにより、フロート弁14がフロート室43の内周面に沿って軸方向(上下方向)に案内されるため、フロート14の径方向のがたつきを防止することができる。
【0027】
図2に示すように、前記フロート弁14が収納された前記フロート室43内において、フロート室43の上壁部27(詳しくは下面)とフロート弁14(詳しくは弁本体48の上面)との対向面間に形成される空間部を上方空間部70という。また、フロート室43の底壁部36(詳しくは上面)とフロート弁14(詳しくは弁本体48の中径筒部57及び大径筒部58の下面)との対向面間に形成される空間部を下方空間部71という。さらに、フロート室43の内周部(詳しくは筒状壁部26の内周面)とフロート弁14(詳しくは弁本体48の外周面)との対向面間に形成される空間部を連絡通路部72という。連絡通路部72は、フロート弁14のリブ部50によって周方向に区画されている(図4参照)。また、連絡通路部72は、上方空間部70と下方空間部71とを連通している。また、フロート弁14の第1連通路66により、フロート室43内の上方空間部70と下方空間部71とが縦方向(上下方向)に連通されている。また、第2連通路68により、第1連通路66(詳しくは外側の環状空間部54)と連絡通路部72とが横方向(フロート弁14の径方向)に連通されている。
【0028】
次に、バルブスプリング16を説明する。図2に示すように、バルブスプリング16は、コイルスプリングからなり、前記リテーナ22と前記フロート弁14との間に介装されている。詳しくは、バルブスプリング16の上部は、前記フロート弁14の内側の環状空間部53内に嵌合されている。また、バルブスプリング16の下端部は、リテーナ22の凸部41に嵌合されている。
【0029】
前記フロート弁14は、車両の通常時(開弁時)は自重により下降し、前記支持突起63がフロート室43の底壁部36に当接した状態で支持される(図2参照)。このため、フロート弁14の下降時においても、フロート弁14(詳しくは、中径筒部57及び大径筒部58)の下面とリテーナ22の底壁部36の上面との間に必要な下方空間部71が確保される。また、バルブスプリング16のスプリング力は、車両の通常時においてはフロート弁14を上動させる力はないが、フロート室43内に燃料が流入したときには、フロート弁14に作用する浮力を補助する力として作用する。
【0030】
図3に示すように、前記リテーナ22の内側の連通孔39は、前記フロート弁14の中径筒部57の下面に対向している。これとともに、リテーナ22の外側の連通孔40は、フロート弁14の大径筒部58の下面に対向している。すなわち、リテーナ22の両連通孔39,40は、フロート弁14の下面において両環状空間部53,54と対向しない位置に配置されている。
【0031】
図2に示すように、前記燃料遮断弁10にはリリーフ弁74が内蔵されている。リリーフ弁74は、弁ハウジング75と弁体78とリリーフスプリング79とにより構成されている(図1参照)。弁ハウジング75は、前記ケース本体20の上壁部27の一側部(図2において左側部)に縦方向(上下方向)に延びる中空円筒状に一体形成されている。弁ハウジング75内には、前記連通室45と前記フロート室43(詳しくは上方空間部70)とを連通するリリーフ通路76が形成されている。また、弁ハウジング75の下端部には、径方向内方へフランジ状に突出する弁座77が形成されている。また、弁体78は、例えばボール状で、前記リリーフ通路76内に上下動可能に配置されている。弁体78は、下動により弁座77に着座し、また、上動により弁座77から離れる(離座する)。また、リリーフスプリング79は、コイルスプリングからなり、弁体78とカバー24との間に介装されている。リリーフスプリング79は、弁体78を常に閉弁方向すなわち下方に付勢している。
【0032】
次に、前記燃料遮断弁10の作動について説明する。
車両の通常時においては、燃料タンク内の燃料の液面は燃料遮断弁10よりも下方に位置する。このため、フロート弁14は自重によりフロート室43における下降位置に位置する(図2参照)。この状態では、フロート弁14の弁部49がケース12のバルブシート32から下方へ離れる(離座する)ことにより、連通口31が開かれた状態すなわち開弁状態にある。この開弁状態において、燃料タンク内の気層部に発生した蒸発燃料は、ケース12の両連通孔39,40から、フロート室43(詳しくは、下方空間部71、連絡通路部72及び上方空間部70)へ流入した後、連通口31から接続通路46(連通室45及び接続管路34)を通じて外部(キャニスタ)へ流出される。このとき、フロート弁14の第1連通路66及び第2連通路68にも蒸発燃料が流入する。
【0033】
また、車両の傾斜や転倒等により、燃料タンク内の燃料がフロート室43内に流入する。この場合、燃料タンク内の燃料は、前記蒸発燃料の流入経路と同様、ケース12の両連通孔39,40、フロート室43(詳しくは、下方空間部71、連絡通路部72及び上方空間部70)へ流入する。これとともに、フロート弁14の第1連通路66及び第2連通路68へも燃料が流入する。なお、このときの燃料の流れが図6に実線矢印で示されている。
【0034】
このようにして、フロート室43内に燃料が流入するにともない、フロート弁14がその浮力により上昇位置に上昇される。これにより、フロート弁14の弁部49がケース12のバルブシート32に着座することにより、連通口31が閉じられた状態すなわち閉弁状態となる(図6参照)。この閉弁状態では、フロート室43と連通口31との連通が遮断されるため、燃料タンク内の燃料の外部(キャニスタ)への流出が遮断すなわち阻止される。
【0035】
また、車両が車両の傾斜や転倒等から通常時に戻るときには、フロート室43内の燃料が、前記燃料の流入経路と逆方向の経路を辿って燃料タンク内へ排出される。すなわち、フロート室43内の上方空間部70の燃料は、第1連通路66及び連絡通路部72を通って、フロート室43内の下方空間部71に流下した後、両連通孔39,40から燃料タンク内へ流出(排出)される。これとともに、連絡通路部72に停滞しようとする燃料は、第2連通路68を介して第1連通路66へ流れることができる。なお、このときの燃料の流れが図3及び図6に点線矢印で示されている。
【0036】
また、内側の環状空間部53と外側の環状空間部54とが、中径筒部57の連通溝部61を介して連通されているため、外側の環状空間部54の燃料が連通溝部61を介して内側の環状空間部53へ流れることができる。さらに、中央空間部52と内側の環状空間部53とが連通されているため、内側の環状空間部53の燃料が中央空間部52へ流れることができる。このように、燃料が、外側の環状空間部54から内側の環状空間部53へ流れ、さらに内側の環状空間部53から中央空間部52へも流れやすくなっている。これにより、燃料の排出性を向上することができる。
【0037】
また、図11は燃料遮断弁の傾き状態における燃料の排出経路を示す説明図である。
前記第2連通路68の上壁面が、内端側(第1連通路66の環状空間部54側)から外端側に向かって上方へ傾斜する所定の傾斜角θを有する傾斜面68aで形成されている(図8参照)。したがって、例えば、図11に示すように、燃料遮断弁10が左下がりで右上がりの状態に傾いて、右側の第2連通路68の連絡通路部72側の開口が上向きになった際には、その開口の上側における連絡通路部72の燃料が第2連通路68に速やかに流入することができる(図11中、二点鎖線矢印参照)。
【0038】
前記のようにして、フロート室43内の燃料が燃料タンク内へ排出されるにともなって、フロート弁14が下降位置に下降し、フロート弁14の弁部49がケース12のバルブシート32から下方へ離れる(離座する)ことにより、連通口31が開かれた開弁状態に戻る(図2参照)。
【0039】
また、フロート室43の底壁部36の両連通孔39,40が、フロート弁14の中径筒部57及び大径筒部58の下面と対向する位置に配置されている(図3参照)。したがって、燃料タンク内から両連通孔39,40を介してフロート室43内の下方空間部71に急激に流入しようとする燃料(図3中、実線矢印参照)が、フロート弁14の中径筒部57及び大径筒部58の下面に急激に衝突することにより、その燃料の流入を妨げることができる。また、燃料がフロート弁14の中径筒部57及び大径筒部58の下面に急激に衝突することにより、フロート弁14が押し上げられる。このため、フロート弁14が開弁状態から閉弁状態になるまでの時間を短縮し、燃料タンクの外部への燃料の流出を効果的に防止することができる。なお、フロート弁14の下面に対する燃料の衝突が急激でない場合には、燃料タンク内の燃料が、フロート弁14の下面に軽く衝突しながら流れ方向を変えることにより、フロート室43の下方空間部71へ流入することができる。
【0040】
また、リリーフ弁74は、車両の通常時においては、リリーフスプリング79の付勢により弁体78が弁座77に着座しているため閉弁状態にある(図2参照)。そして、燃料タンク内の圧力が所定値に達した時には、リリーフスプリング79の付勢に抗して弁体78が弁座77から離れる(離座する)ことにより開弁する。これにより、連通口31を迂回するリリーフ通路76が開通される。このため、燃料タンク内の圧力が外部へ逃されることにより、燃料タンク内の圧力が所定値以上に上昇することが防止される。なお、燃料タンク内の圧力が所定値に低下すれば、弁体78はリリーフスプリング79の付勢力によって閉弁する。
【0041】
前記した燃料遮断弁10によると、フロート室43内に流入した燃料の排出時において、上方空間部70の燃料が、第1連通路66及び連絡通路部72を通って下方空間部71に流下した後、両連通孔39,40から燃料タンク内へ流出(排出)される。このとき、連絡通路部72に停滞しようとする燃料が第2連通路68を介して第1連通路66へ流れる(図3中、点線矢印参照)。これによって、連絡通路部72における燃料の停滞を防止して、フロート室43内に流入した燃料の排出性を向上することができる。
【0042】
また、フロート弁14の第2連通路68の上壁面は、第1連通路66側から連絡通路部72側に向かって上方へ傾斜する傾斜面68aに形成されている(図3及び図8参照)。したがって、第2連通路68の連絡通路部72側の開口面積が上方へ拡大される。これにより、フロート弁14が傾いて、第2連通路68の連絡通路部72側の開口が上向きになった際に、その開口の上側における連絡通路部72の燃料が第2連通路68に速やかに流入することができる(図11中、二点鎖線矢印参照)。このことは、連絡通路部72における燃料の停滞の防止に有効である。
【0043】
また、フロート室43の底壁部36の両連通孔39,40は、フロート弁14の中径筒部57及び大径筒部58の下面と対向する位置に配置されている(図3参照)。したがって、燃料タンク内から両連通孔39,40を介してフロート室43内に急激に流入しようとする燃料(図3中、実線矢印参照)が、フロート弁14の中径筒部57及び大径筒部58の下面に急激に衝突することにより、その燃料の流入を妨げることができる。このため、フロート室43内への燃料の急激な流入を防止することができる。
【0044】
また、前記実施の形態では、前記フロート弁14の第2連通路68の上壁面を傾斜面68aで形成することにより第2連通路68を縦断面台形形状としたが、その第2連通路68の縦断面形状は適宜変更することができる。例えば、図12に示すように、第2連通路68の上壁面を径方向に延びる径方向平面68a1で形成することにより第2連通路68を縦断面長方形状とすることもできる。また、第2連通路68の下壁面についても、径方向平面68bに代えて、傾斜面68aと平行又はほぼ平行な傾斜面で形成することにより第2連通路68を縦断面平行四辺形状とすることもできる。
【0045】
本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、フロート弁14の第1連通路66の形状、大きさ、配置位置は、特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。また、フロート弁14における外側の環状空間部54を省略し、フロート弁14を上下方向に貫通する縦孔部のみにより、第1連通路66を形成することもできる。また、フロート弁14の第2連通路68の形状、大きさ、配置位置は、特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。また、前記実施の形態では、リテーナ22に両連通孔39,40を形成したが、リテーナ22以外の底壁部形成部材に両連通孔39,40を形成することができる。また、リテーナ22の底壁部36には、フロート弁14の下面と対向しない位置、例えば中央空間部52、両環状空間部53,54の少なくとも1つの空間部に対向する位置に配置された連通孔を形成してもよい。また、内側の連通孔39及び外側の連通孔40のいずれか一方は省略することができる。
【符号の説明】
【0046】
10…燃料遮断弁
12…ケース
14…フロート弁
27…上壁部
31…連通口
36…底壁部
39,40…連通孔
43…フロート室
46…接続通路
49…弁部
66…第1連通路
68…第2連通路
68a…傾斜面(上壁面)
70…上方空間部
71…下方空間部
72…連絡通路部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内に連通するフロート室、及び、そのフロート室の上側に連通口を介して燃料タンクの外部と連通される接続通路が設けられたケースと、
前記フロート室内に昇降可能に設けられかつ前記連通口を開閉する弁部を有するフロート弁と
を備える燃料遮断弁であって、
前記フロート室の内周部と前記フロート弁との対向面間には、前記フロート室の上壁部と前記フロート弁との対向面間に形成される上方空間部と、前記フロート室の下壁部と前記フロート弁との対向面間に形成される下方空間部とを連絡する連絡通路部が形成され、
前記フロート室の底壁部に、前記燃料タンク内と前記下方空間部とを連通する連通孔が形成され、
前記フロート弁に、前記上方空間部と前記下方空間部とを連通する第1連通路が形成されかつ前記連絡通路部と前記第1連通路とを連通する第2連通路が形成されている
ことを特徴とする燃料遮断弁。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料遮断弁であって、
前記フロート弁の第2連通路の上壁面は、前記第1連通路側から前記連絡通路部側に向かって上方へ傾斜する傾斜面に形成されていることを特徴とする燃料遮断弁。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃料遮断弁であって、
前記フロート室の底壁部の連通孔は、前記フロート弁の下面と対向する位置に配置されていることを特徴とする燃料遮断弁。
【請求項1】
燃料タンク内に連通するフロート室、及び、そのフロート室の上側に連通口を介して燃料タンクの外部と連通される接続通路が設けられたケースと、
前記フロート室内に昇降可能に設けられかつ前記連通口を開閉する弁部を有するフロート弁と
を備える燃料遮断弁であって、
前記フロート室の内周部と前記フロート弁との対向面間には、前記フロート室の上壁部と前記フロート弁との対向面間に形成される上方空間部と、前記フロート室の下壁部と前記フロート弁との対向面間に形成される下方空間部とを連絡する連絡通路部が形成され、
前記フロート室の底壁部に、前記燃料タンク内と前記下方空間部とを連通する連通孔が形成され、
前記フロート弁に、前記上方空間部と前記下方空間部とを連通する第1連通路が形成されかつ前記連絡通路部と前記第1連通路とを連通する第2連通路が形成されている
ことを特徴とする燃料遮断弁。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料遮断弁であって、
前記フロート弁の第2連通路の上壁面は、前記第1連通路側から前記連絡通路部側に向かって上方へ傾斜する傾斜面に形成されていることを特徴とする燃料遮断弁。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の燃料遮断弁であって、
前記フロート室の底壁部の連通孔は、前記フロート弁の下面と対向する位置に配置されていることを特徴とする燃料遮断弁。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−6548(P2012−6548A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146161(P2010−146161)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】
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