説明

燃料電池のセルのガスケット成形用金型、燃料電池の製造方法、および燃料電池

【課題】簡単な構成で、各セルを構成する燃料電池構成部品とセパレータの厚さのバラツキに影響されず、締結時と同じ荷重を燃料電池構成部品に付与して均一な締め代のガスケットを、不要部を発生させることなく成形することができる燃料電池のセルのガスケット成形用金型を提供する。
【解決手段】ガスケット成形用金型1は、第1の金型11と第2の金型12とを含んでおり、燃料電池構成部品2に対して荷重を付与する荷重付与部15と、第1の金型11と第2の金型12により形成されるキャビティ13内に突出してガスケット6の内周側壁を成形する突出部17とを有しており、型締時にセパレータ3の表面のマニホールド孔3hの周囲との間に介在する弾性体7が突出部17の先端面17aに設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池のセルのガスケット成形用金型、燃料電池の製造方法、および燃料電池に関し、さらに詳しくは、複数を積層することにより燃料電池を構成するセルにおいて、各セル間で反応ガスや冷却媒体を流通させるマニホールドを構成するガスケットを成形するためのガスケット成形用金型、各セルのガスケットを成形する燃料電池の製造方法、および各セルにガスケットが成形された燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、燃料電池は、複数のセルを積層することにより構成されている。積層されたセルは、その積層方向端部にそれぞれエンドプレートが配設され、燃料電池構成部品に所定の荷重を付与した状態で両エンドプレートがテンション部材によって締結されている。図5に参照されるように、各セル104の燃料電池構成部品としては、電解質膜の両面に電極層を設けてなるMEA(Membrane Electrode Assembly:膜−電極アセンブリ)21aと、MEA21aの両側に配置されたガス拡散層21bと、ガス拡散層21bへガスをそれぞれ流通させる多孔体22とを含んでおり、これらの燃料電池構成部品2はセパレータ3により挟持されている。MEA21aとその両側に配置されたガス拡散層21bとにより構成される部材は、一般にMEGA21と呼ばれる。MEGA21のガス拡散層21bは、通気性を有する材料であり、一般に例えばカーボン繊維からなるカーボンペーパー、カーボンクロス、カーボン不織布等の多孔質シートやメッシュ状シートなどより構成されており、厚さ方向に荷重を付与することにより圧縮されるようその厚さが弾性変化する材質が採用されている。そして、燃料電池のなかには、たとえば特許文献1に開示されているように、各セルが燃料電池構成部品の一方の面にセパレータを積重して構成されており、複数のセルを積層することにより、燃料電池構成部品がそのセルのセパレータと隣接する他のセルのセパレータとの間で挟持されるよう構成されたものがある。
【0003】
各セルは、反応ガス(水素、空気等)や冷却媒体をそれぞれ分配・供給するためのマニホールドを有している。図5に示すように、セパレータ3の燃料電池構成部品2が積重される領域の周囲には、マニホールド孔3hが形成されている。セパレータ3は、所定形状の溝または孔が形成された中間プレート33をカソードプレートとアノードプレートのいずれかを構成する第1プレート31と第2プレート32の間に挟んでなる3層構造とすることにより、その内部に反応ガスや冷却媒体を流通させるための流路34が形成されている。セパレータ3内の各流路34は、所定のマニホールド孔3hに開口しており、所定のガスまたは冷却媒体が所定のマニホールド孔3hから供給され、他の対応する所定のマニホールド孔3hへと排出される。マニホールド孔3hのセパレータ3における燃料電池構成部品2が積重される領域側の部分(以下、セパレータ内側部分という、)の内周壁には、所定の流路34の導入口または排出口が開口している。
【0004】
各セル104には、マニホールド孔3hの周囲を取り囲み、且つ、燃料電池構成部品2の周囲をシールするようにガスケット106が一体に成形されている。ガスケット106は、図6に示すように、セパレータ3のマニホールド孔3hの周囲に立ち上がるように成形される基部161と、基部161の表面から燃料電池構成部品2の表面よりも図6における上方に突出してセル104が積層されたときに隣接する他のセル104のセパレータ3に当接されるように一体に成形されたリップ部162とを有しており、マニホールド105を構成している。
【0005】
上記特許文献1においてガスケットを成形するための金型は、その図12(b)に示されているように、下型にはセパレータをインサートしたときにそのマニホールド孔に嵌り込む突状部が形成されており、また、上型には、下型の突状部と対応する突状部が形成されると共に、ガスケットの成形材料の投入口が形成されている。そして、下型と上型の突状部内には、型閉じすることによってガスケットの材料を投入口からキャビティ内に導入するための通路が形成されるようになっている。この通路をキャビティに開口させるために、特許文献1では、突状部がセパレータのマニホールド孔を突き抜けるよう形成されている。このように構成された金型によって成形されるガスケットは、特許文献1の図5に示されているように、セパレータのマニホールド孔と同じ径でマニホールドが形成されることとなる。
【0006】
ところで、燃料電池においては、設定された発電性能を得るために、反応ガスや冷却媒体が確実に所定の流量で各セルに分配・供給される必要がある。そのため、各セルのセパレータのマニホールド孔に開口する流路の導入口または排出口をガスケットが塞ぐように成形することは勿論のこと、反応ガスまたは冷却媒体の流通を妨げ圧力損失が高くなるようにガスケットを成形することは許されない。そのため、ガスケットを成形するための従来の一般的なガスケット成形用金型101は、図5の(b)に示すように、上型111と、下型112とからなり、上型111のガスケット106の内周壁を成形する突出部117が、金型101にインサートされたセパレータ3の上面におけるマニホールド孔3hの周囲全体に当接して、キャビティ113内に射出充填されるガスケット106の材料がマニホールド孔3h内に流れ込むのを防ぐようにシールする構造となっていた。そのため、このような構造の金型101によって成形されたガスケット106は、内周壁の大きさがマニホールド孔3hの大きさよりも大きく、すなわち、内周壁がその全周にわたってマニホールド孔3hから退避するよう離れて成形されおり、したがって、セパレータ3の表面が露出していた。
【0007】
また、上述したように特にMEGA21のガス拡散層21bが一般に圧縮されることにより弾性的に圧縮されるものであり、燃料電池として組み立てたときには複数のセル4を積層してエンドプレートの間で所定の荷重が付与された状態で締結されている(この状態を締結時という)。そのため、図5の(b)に示したように、ガスケット成形用金型101に荷重付与部115を形成し、燃料電池構成部品2とセパレータ3を積層してガスケット106を成形する際には、燃料電池構成部品2に対して荷重付与部115が締結時と同じ荷重を付与し厚さをTaからTbに圧縮した状態(図5の(a)と(b)を参照)で、ガスケット106の材料をキャビティ113内に射出充填している。さらに、各セル104のガスケット106は、図6に示したように、燃料電池構成部品2の表面から一定の寸法で突出するよう成形されて、セル104を積層してエンドプレートの間で所定の荷重を付与した状態で締結されたときに、隣接するセル104のセパレータ3と接して押圧され潰される量(この潰される量を締め代という)がセル104によって異なることなく、一定の締め代Pであることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−123883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、各セルを構成する燃料電池構成部品とセパレータは、その厚さに関して公差の範囲でバラツキを有する状態で成形されており、したがって燃料電池構成部品とセパレータによってその厚さが異なる。これに対して、従来の一般的なガスケット成形用金型101は、図5の(b)に示すように、燃料電池構成部品2に荷重を付与する荷重付与部115と、ガスケット106の内周面を成形するための突出部117の先端面117aとの間の寸法Lが一定である。
【0010】
そのため、セルによって厚さが異なる燃料電池構成部品2とセパレータ3を上述した従来の一般的なガスケット成形用金型101にインサートして燃料電池構成部品2に締結時の荷重と同じ荷重が付与されるまで型締してガスケット6を成形する際に、図7に示すように、型締されたときの燃料電池構成部品2とセパレータ3の厚さTb1が設定された厚さTb(図5の(b)を参照)よりも厚い場合には、型閉じが不足してバリが生じるなどの問題や、ガスケット成形用金型101の突出部117がセパレータ3の上面のマニホールド孔3hの周囲に当接されず、ガスケット成形用金型101の突出部117とセパレータ3の上面のマニホールド孔3hの周囲との間からガスケット106の材料がマニホールド孔3h内に漏れ出して(図7の矢印を参照)、セパレータ3の流路34の導入口または排出口を塞ぐ原因となる不要部が成形される可能性があるという問題があった。さらに、不要部がマニホールド孔3h内の、特に流路34の導入口または排出口付近に成形されると、マニホールド孔3hからセパレータ3の流路34に流れる反応ガスまたは冷却媒体の流通を妨げて圧力損失が高くなったり、マニホールド孔3hの流路34の導入口または排出口を塞いだりして、発電性能に影響を及ぼすなどの問題があった。そして、この問題を解決するためには、ガスケット106の成形後に不要部を除去する工程が必要となり、工程数が増えて時間や手間がかかるという問題があった。
【0011】
また、このような問題を発生させないように、ガスケット成形用金型101にインサートされた燃料電池構成部品2に締結時の荷重よりも大きな荷重を付与するよう型締してガスケット106を成形すると、MEA21aの電解質膜がダメージを受けて電極層が短絡したり、クロスリークする可能性が発生するという問題がある。そして、このような問題が発生しなくとも、締結時の荷重よりも大きな荷重を付与してガスケット106を成形した場合、燃料電池として組み立てるべく複数のセル104を積層してエンドプレートの間で所定の荷重を付与した締結時には、図8に示すように、ガスケット106の成形時の荷重よりも締結時の荷重が小さい(少ない)ために、ガスケット106のリップ部162の締め代P1が設定された一定の締め代Pよりも小さくなり、ガスケット106のシール性が弱く、マニホールド105を流通する反応ガスや冷却媒体がリークする可能性があるという問題がある。
【0012】
一方、図9に示すように、型締されたときの燃料電池構成部品2とセパレータ3の厚さTb2が設定された厚さTbよりも薄い場合には、上型111の荷重付与部115と燃料電池構成部品2との間に隙間が生じると、多孔体22にガスケット106の材料が浸透してMEGA21が不良品となり、また、型締時に荷重付与部115による燃料電池構成部品2への荷重が感知されず突出部117がセパレータ3の表面におけるマニホールド孔3hの周囲に衝突して、セパレータ3の流路34の導入口または排出口を潰したり変形させる可能性があるという問題があった。そして、このような問題が発生しなくとも、締結時の荷重よりも小さな荷重しか付与できない状態でガスケット106を成形した場合、燃料電池として組み立てるべく複数のセル104を積層してエンドプレートの間で所定の荷重を付与した締結時には、図10に示すように、ガスケット106の成形時の荷重よりも締結時の荷重が大きいために、ガスケット106のリップ部162の締め代P2が設定された一定の締め代Pよりも大きくなり、ガスケット106にかかる荷重が過大となって破断し、マニホールド105を流通する反応ガスや冷却媒体がリークする可能性があるという問題がある。
【0013】
さらに、上記従来のガスケット成形用金型101にあっては、上型111の突出部117がセパレータ3の表面のマニホールド孔3hの周囲に当接してガスケット106の材料をシールする構造となっており、ガスケット106の内周壁がマニホールド孔3hの開口から外側に退避するよう離れて成形されてセパレータ3の表面が露出していた。しかしながら、図11に示すように、各セル104を積層した際にずれが生じた状態で荷重が掛けられることによって生じるモーメントなどにより、セパレータ3が変形することがある。このようにセパレータ3が変形すると、互いに隣接するセル104のセパレータ3が接触して短絡するという問題が発生することとなる。
【0014】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、各セルを構成する燃料電池構成部品とセパレータの厚さのバラツキに影響されず、締結時と同じ荷重を燃料電池構成部品に付与して均一な締め代のガスケットを成形することができ、しかも、セパレータの流路を塞いだり圧力損失が高くなる原因となる不要部を発生させることなくガスケットを成形することが可能な金型を提供することを目的とする。
また、本発明は、上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、各セルを構成する燃料電池構成部品とセパレータの厚さのバラツキに影響されず、締結時と同じ荷重を燃料電池構成部品に付与して均一な締め代のガスケットを成形することができ、しかも、セパレータの流路を塞いだり圧力損失が高くなる原因となる不要部を発生させることなく、また、セルを積層したときにそのずれなどによって互いに隣接するセルのセパレータが短絡しないようなガスケットを成形することが可能な燃料電池の製造方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は上述した問題に鑑みてなされたもので、簡単な構成で、各セルを構成する燃料電池構成部品とセパレータの厚さにバラツキがあっても、締結時と同じ荷重が燃料電池構成部品に付与されて、均一な締め代のガスケットが成形されており、且つ、セパレータの流路を塞いだり圧力損失が高くなる原因となる不要部を発生させることなく、しかも、各セルが積層され締結されたときに積層ずれなどによって互いに隣接するセルのセパレータが短絡しないように成形されたガスケットを有する燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の燃料電池のセルのガスケット成形用金型に係る発明は、上記目的を達成するため、積層されることによりセルの燃料電池構成部品を挟持するセパレータに形成されたマニホールド孔を互いに連通するためのマニホールドを構成するガスケットの成形用金型であって、燃料電池構成部品に対して荷重を付与する荷重付与部と、前記ガスケットの内周側壁を成形する突出部とを有しており、該突出部の先端面と前記セパレータの表面のマニホールド孔の周囲との間に介在される弾性体を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項2の燃料電池の製造方法に係る発明は、上記目的を達成するため、マニホールド孔が形成されたセパレータと燃料電池構成部品とを積重して金型内にインサートして前記セパレータのマニホールド孔の周囲にガスケットを成形してセルを構成し、該セルを積層することにより、前記燃料電池構成部品をセパレータ間で挟持すると共に隣接するセルのセパレータのマニホールド孔をガスケットにより互いに連通してマニホールドを構成する燃料電池の製造方法であって、前記金型に、燃料電池構成部品に対して荷重を付与する荷重付与部と、前記ガスケットの内周側壁を成形する突出部とを形成しておき、該金型を型閉じしたときに、インサートされた燃料電池構成部品に対して締結時に付与される荷重を前記荷重付与部によって付与するとともに、前記突出部の先端面と前記インサートされたセパレータの表面のマニホールド孔の周囲との間に弾性体を介在させ、前記金型のキャビティ内にガスケットの材料を射出充填することを特徴とするものである。
さらに、請求項3の燃料電池に係る発明は、上記目的を達成するため、複数のセルを積層してなり、各セルが、燃料電池構成部品と、セパレータと、締結時に隣接するセルのセパレータのマニホールド孔を互いに連通するマニホールドを構成するために成形されたガスケットとを備えている燃料電池であって、前記ガスケットが、燃料電池構成部品に対して荷重を付与された状態で成形されており、前記セパレータの表面のマニホールド孔の周囲に弾性体が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の燃料電池のセルのガスケット成形用金型に係る発明によれば、突出部の先端面と前記セパレータの表面のマニホールド孔の周囲との間に介在される弾性体を備えたことにより、燃料電池構成部品をインサートして型閉じし荷重付与部によって締結時と同じ荷重を付与することができることから、燃料電池構成部品の厚さにバラツキがあっても、突出部の先端面とセパレータの表面のマニホールド孔の周囲との間のバラツキにより異なる間隔を弾性体が吸収して確実にシールするため、この間からガスケットの材料がセパレータのマニホールド孔内に侵入するのを防止して、均一な締め代となるガスケットを成形することができる。
また、請求項2の燃料電池の製造方法に係る発明によれば、燃料電池構成部品に対して荷重を付与する荷重付与部と、ガスケットの内周側壁を成形する突出部とを金型に予め形成しておき、金型を型閉じしたときに、インサートされた燃料電池構成部品に対して締結時に付与される荷重を荷重付与部によって付与するとともに、前記突出部の先端面と前記インサートされたセパレータの表面のマニホールド孔の周囲との間に弾性体を介在させ、この状態で金型のキャビティ内にガスケットの材料を射出充填することにより、燃料電池構成部品の厚さにバラツキがあっても、突出部の先端面とセパレータの表面のマニホールド孔の周囲との間のバラツキにより異なる間隔を弾性体が吸収して確実にシールするため、この間からガスケットの材料がセパレータのマニホールド孔内に侵入するのを防止して、均一な締め代となるガスケットを成形することができる。
さらに、請求項3の燃料電池に係る発明によれば、セパレータの表面のマニホールド孔の周囲に弾性体が設けられると共に、燃料電池構成部品に対して荷重を付与された状態、特に締結時に付与される荷重を付与された状態でガスケットが成形されていることにより、ガスケットの成形時に、金型の突出部の先端面とセパレータの表面のマニホールド孔の周囲との間のバラツキにより異なる間隔を弾性体が吸収して確実にシールするため、この間からガスケットの材料がセパレータのマニホールド孔内に侵入するのを防止して、締め代が均一なガスケットを有しており、しかも、セルを積層したときにそのずれなどによって互いに隣接するセルのセパレータが短絡しないような構造の燃料電池のセルとすることができる。
【0017】
(発明の態様)
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(3)項が請求項2に相当し、(6)項が請求項3に相当する。
【0018】
(1) 積層されることによりセルの燃料電池構成部品を挟持するセパレータに形成されたマニホールド孔を互いに連通するためのマニホールドを構成するガスケットの成形用金型であって、
燃料電池構成部品に対して荷重を付与する荷重付与部と、前記ガスケットの内周側壁を成形する突出部とを有しており、
該突出部の先端面と前記セパレータの表面のマニホールド孔の周囲との間に介在される弾性体を備えたことを特徴とする燃料電池のセルのガスケット成形用金型。
【0019】
(1)項の発明では、突出部の先端面と前記セパレータの表面のマニホールド孔の周囲との間に介在される弾性体を備えたことにより、燃料電池構成部品をインサートして型閉じし荷重付与部によって締結時と同じ荷重を付与することができることから、燃料電池構成部品の厚さにバラツキがあっても、突出部の先端面とセパレータの表面のマニホールド孔の周囲との間のバラツキにより異なる間隔を弾性体が吸収して確実にシールするため、この間からガスケットの材料がセパレータのマニホールド孔内に侵入するのを防止することができる。したがって、各セルを構成する燃料電池構成部品とセパレータの厚さのバラツキに影響されず、締結時と同じ荷重を燃料電池構成部品に付与して均一な締め代のガスケットを成形することができ、しかも、セパレータの流路を塞いだり圧力損失が高くなる原因となる不要部を発生させることがない。
【0020】
(2) 前記弾性体を前記突出部の先端面に設けたことを特徴とする(1)項に記載の燃料電池のセルのガスケット成形用金型。
【0021】
(2)項の発明では、(1)項に記載の発明において、前記弾性体を前記突出部の先端面に設けたことにより、各セルを構成する燃料電池構成部品とセパレータの厚さのバラツキに影響されず、締結時と同じ荷重を燃料電池構成部品に付与して均一な締め代のガスケットを成形することが具現化ででき、しかも、セパレータの流路を塞いだり圧力損失が高くなる原因となる不要部を発生させることなくガスケットを成形することが具現化できる。
【0022】
(3) マニホールド孔が形成されたセパレータと燃料電池構成部品とを積重して金型内にインサートして前記セパレータのマニホールド孔の周囲にガスケットを成形してセルを構成し、該セルを積層することにより、前記燃料電池構成部品をセパレータ間で挟持すると共に隣接するセルのセパレータのマニホールド孔をガスケットにより互いに連通してマニホールドを構成する燃料電池の製造方法であって、
前記金型に、燃料電池構成部品に対して荷重を付与する荷重付与部と、前記ガスケットの内周側壁を成形する突出部とを形成しておき、
該金型を型閉じしたときに、インサートされた燃料電池構成部品に対して締結時に付与される荷重を前記荷重付与部によって付与するとともに、前記突出部の先端面と前記インサートされたセパレータの表面のマニホールド孔の周囲との間に弾性体を介在させ、
前記金型のキャビティ内にガスケットの材料を射出充填することを特徴とする燃料電池の製造方法。
【0023】
(3)項の発明では、燃料電池構成部品に対して荷重を付与する荷重付与部と、ガスケットの内周側壁を成形する突出部とを金型に予め形成しておき、燃料電池構成部品とセパレータをインサートして金型を型閉じしたときに突出部の先端面とインサートされたセパレータの表面のマニホールド孔の周囲との間に弾性体を介在させると共に、型閉じすることによって燃料電池構成部品に対して締結時に付与される荷重を荷重付与部によって付与し、この状態で金型のキャビティ内にガスケットの材料を射出充填する。これにより、燃料電池構成部品の厚さにバラツキがあっても、突出部の先端面とセパレータの表面のマニホールド孔の周囲との間のバラツキにより異なる間隔を弾性体が吸収して確実にシールすることができる。そのため、各セルを構成する燃料電池構成部品とセパレータの厚さのバラツキに影響されず、締結時と同じ荷重を燃料電池構成部品に付与して均一な締め代のガスケットを成形することができ、しかも、間からガスケットの材料がセパレータのマニホールド孔内に侵入するのを防止して、セパレータの流路を塞いだり圧力損失が高くなる原因となる不要部を発生させることなくガスケットを成形することができる。
【0024】
(4) 前記金型の突出部の先端面に弾性体を設けることを特徴とする(3)項に記載の燃料電池の製造方法。
【0025】
(4)項の発明では、(3)項に記載の発明において、金型の突出部の先端面に弾性体を設けることにより、突出部の先端面とセパレータの表面のマニホールド孔の周囲との間のバラツキにより異なる間隔を吸収して確実にシールすることが具現化できる。
【0026】
(5) 前記セパレータの表面のマニホールド孔の周囲に弾性体を設けることを特徴とする(3)項に記載の燃料電池の製造方法。
【0027】
(5)項の発明では、(3)項に記載の発明において、セパレータの表面のマニホールド孔の周囲に弾性体を設けることより、突出部の先端面とセパレータの表面のマニホールド孔の周囲との間のバラツキにより異なる間隔を吸収して確実にシールすることが具現化でき、しかも、セルを積層したときにそのずれなどによって互いに隣接するセルのセパレータが短絡するのを弾性体によって防止することができる。
【0028】
(6) 複数のセルを積層してなり、
各セルが、燃料電池構成部品と、セパレータと、締結時に隣接するセルのセパレータのマニホールド孔を互いに連通するマニホールドを構成するために成形されたガスケットとを備えている燃料電池であって、
前記ガスケットが、燃料電池構成部品に対して荷重を付与された状態で成形されており、
前記セパレータの表面のマニホールド孔の周囲に弾性体が設けられていることを特徴とする燃料電池。
【0029】
(6)項の発明では、セパレータの表面のマニホールド孔の周囲に弾性体が設けられており、燃料電池構成部品に対して荷重を付与された状態、特に締結時に付与される荷重を付与された状態でガスケットが成形されていることにより、金型の突出部の先端面とセパレータの表面のマニホールド孔の周囲との間のバラツキにより異なる間隔を弾性体が吸収して確実にシールされた状態でガスケットが成形されている。そのため、各セルを構成する燃料電池構成部品とセパレータの厚さにバラツキがあっても、金型の突出部の先端面とセパレータの表面との間からガスケットの材料がセパレータのマニホールド孔内に侵入するのを防止して、セパレータの流路を塞いだり圧力損失が高くなる原因となる不要部が発生することがなく、且つ、締め代が均一なガスケットを有しており、しかも、セルを積層したときにそのずれなどによって互いに隣接するセルのセパレータが短絡しないような構造の燃料電池のセルとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のガスケット成形用金型の要部を示す断面図である。
【図2】本発明のガスケット成形用金型により厚さが異なる燃料電池構成部品に対する対応を示した説明図である。
【図3】本発明の燃料電池のセルにガスケットを成形する状態を示した要部の断面図である。
【図4】本発明の燃料電池のセルをずれた状態で積層してセパレータのマニホールド孔から外側が変形した場合に、短絡が防止されることを示した説明図である。
【図5】一般的なセル(a)と、これにガスケットを成形するために金型内にインサートして燃料電池構成部品に荷重を付与した状態(b)を説明するために示した要部断面図である。
【図6】一般的なセルのガスケットとその締め代を説明するために示した要部断面図である。
【図7】燃料電池構成部品が設定された厚さよりも厚いために、型締されない状態の従来の金型を示す要部断面図である。
【図8】燃料電池構成部品が設定された厚さよりも厚いために、締結時にガスケットの締め代が小さくなることを説明するために示した要部断面図である。
【図9】燃料電池構成部品が設定された厚さよりも薄いために、ガスケット成形用金型の荷重付与部と燃料電池構成部品との間に隙間が生じ、あるいは、ガスケット成形用金型の突出部がセパレータの表面におけるマニホールド孔の周囲に衝突して、セパレータの流路の導入口または排出口を潰したり変形させた状態を説明するために示した要部断面図である。
【図10】燃料電池構成部品が設定された厚さよりも薄いために、締結時にガスケットの締め代が大きくなりガスケットにかかる荷重が過大となることを説明するために示した要部断面図である。
【図11】従来の燃料電池のセルをずれた状態で積層してセパレータのマニホールド孔から外側が変形した場合に、短絡することを示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
最初に、本発明の燃料電池のセルのガスケット成形用金型1の実施の一形態を、図1および図2に基づいて詳細に説明する。なお、図において同じ符号は、同様または相当する部分を示すものとする。
本発明の燃料電池のセルのガスケット成形用金型1は、概略、燃料電池構成部品2とセパレータ3とを含む複数のセル4を積層することにより構成される燃料電池において、各セル4のセパレータ3に形成されたマニホールド孔3hを互いに連通するマニホールド5を構成するガスケット6を成形するためのもので、第1の金型11と第2の金型12とを含んでおり、燃料電池構成部品2に対して荷重を付与する荷重付与部15と、第1の金型11と第2の金型12により形成されるキャビティ13内に突出してガスケット6の内周側壁を成形する突出部17とを有しており、型締時にセパレータ3の表面のマニホールド孔3hの周囲との間に介在する弾性体7が突出部17の先端面17aに設けられている。
【0032】
この実施の形態においては、燃料電池構成部品2としてMEGA21の両面に多孔体22が積層されており、この燃料電池構成部品2の一方の面にセパレータ3を積重することによりセル4が構成されている。MEGA21は、MEA21aの両面にガス拡散層21bがそれぞれ配置されてなるもので、MEA21aの外縁はガス拡散層21bおよび多孔体22の外縁から突出するように大きく形成されており、後にガスケット6が一体となるよう成形される。MEGA21のガス拡散層21bは、通気性を有する材料であり、一般に例えばカーボン繊維からなるカーボンペーパー、カーボンクロス、カーボン不織布等の多孔質シートやメッシュ状シートなどが採用され、厚さ方向に荷重を付与することにより圧縮されるようその厚さが変化する材質が採用されている。多孔体22の外側縁は、たとえばガスケット6の材料と同じ材料などが含浸されるなどして、ガスケット6の材料に対する目止めが施されている。そして、複数のセル4を積層することにより、このセル4のセパレータ3とこのセル4に隣接する他のセル4のセパレータ3との間で燃料電池構成部品2が挟持されるようになっている。燃料電池構成部品2は、セパレータ3の略中央に配置される。セパレータ3は、カソードプレート31とアノードプレート32との間に中間プレート33を挟んでなる三層構造で構成されており、セパレータ3の、燃料電池構成部品2が配置される周囲の領域には、マニホールド孔3hが形成されており、その内部には、各セル4に反応ガスや冷却媒体を流通させるための流路34を有している。すなわち、カソードプレート31とアノードプレート32の少なくとも一方の周縁には、マニホールド孔3hを構成する孔が形成されている。中間プレート33には、各セル4に反応ガスや冷却媒体を流通させるための流路34をセパレータ3の内部に形成するための溝または孔が設けられている。そして、中間プレート33の溝または孔の端部は、カソードプレート31とアノードプレート32のマニホールド孔3hを構成する各孔と対応して設けられており、したがって、各セル4に反応ガスや冷却媒体を流通させるための流路34は、所定のマニホールド孔3hの内周面のセパレータ内側部分に開口している。なお、セル4のセパレータ3は、カソードプレート31がそのセル4の多孔体22と接するように構成された実施の形態に限定されることはなく、アノードプレート32がそのセル4の多孔体22と接するように構成される場合も本発明に含まれる。
【0033】
ガスケット6は、燃料電池構成部品2の周囲の端面およびセパレータ3の表面に形成される基部61と基部61から連続して突出するリップ部62とからなるもので、リップ部62の先端の高さは燃料電池構成部品2の表面よりも図1における上方に突出するよう設定され、また、基部61の表面の高さは燃料電池構成部品21の表面よりも図1における下方に位置するよう設定されており、各セル4を積層してその積層方向に所定の荷重を掛けたときに、隣接する他のセル4のセパレータ3と接して押圧されるリップ部62を基部61が吸収するように構成されている。
【0034】
図1に示した実施の形態においては、第1の金型11が上型により構成されており、第2の金型12が下型により構成されている。上型11と下型12は相対的に近接・遠退することにより、開閉されると共に、型閉じしたときに所定の力で型締めされるように支持されている。そして、この実施の形態では、ガスケット6の材料をキャビティ13内に導入するためのゲートが上型11に形成されている。
【0035】
上型11の略中央には、MEGA21の両面に多孔体22を積層してなる燃料電池構成部品2の配置と対応して、荷重付与部15が形成されている。荷重付与部15の周囲には、セパレータ3の各マニホールド孔3hを取り囲むように成形するガスケット6の形状に応じてキャビティ面16が荷重付与部15と連続して形成されている。キャビティ面16の内部略中央にはガスケット6の内周壁面を成形するための突出部17が形成されている。
【0036】
突出部17は、型閉じすることにより荷重付与部15がインサートされた燃料電池構成部品2を締結時の荷重で加圧したときに、その下面(先端面)17aがセパレータ3の表面に達することがないような長さに形成されている。また、突出部17は、セパレータ3のマニホールド孔3hの形状と略相似形の断面形状で、マニホールド孔3hよりも大きく形成されている。
【0037】
弾性体7は、型閉じして荷重付与部15がインサートされた燃料電池構成部品2を締結時の荷重で加圧したときに、セパレータ3の表面に接してマニホールド孔3hの周囲を取り囲むように成形されている。そして、弾性体7は、図2に示すように、金型1内にインサートされる燃料電池構成部品2のバラツキのある厚さTに応じて、燃料電池構成部品2が設定された厚さの場合にセパレータ3の表面の位置Tに対しては勿論のこと、設定された厚さTよりも厚い場合セパレータ3の表面の位置に対して(図2に一点鎖線で示したT1の位置を参照)、また、設定された厚さTよりも薄い場合セパレータ3の表面の位置に対して(図2に二点鎖線で示したT2の位置を参照)、いずれの場合にもその先端が確実にセパレータ3の表面に当接して弾性変形し、ガスケット7の材料がマニホールド孔3h内に流れ込むのを阻止することができるような材質、たとえばガスケット6と同じ材料で成形されており、突出部17の先端面17aに接着剤などにより固着されている。
【0038】
下型12は、セパレータ3の形状に応じた凹部18が形成されており、この凹部18内には摺動部12aが図1においては昇降移動可能に設けられている。摺動部12aは、燃料電池構成部品2を積層した状態でインサートされたセパレータ3を支持し、図1に矢印で示したように、ガスケット6の材料を射出充填するときまでに上昇するよう駆動されて、型閉じされた状態の上型11の荷重付与部15に対して燃料電池構成部品2を押し付け、締結時の荷重と同じ荷重を燃料電池構成部品2に付与するものである。上型11と下型12の互いに対向する面の周縁には、シール部材19を収容する溝が形成されている。
【0039】
次に、本発明の燃料電池の製造方法を、上述したように構成された燃料電池のセルのガスケット成形用金型1を使用する場合によって、その作動とともに説明する。なお、図において同じ符号は、同様または相当する部分を示すものとする。
本発明の燃料電池の製造方法は、概略、マニホールド孔3hが形成されたセパレータ3と燃料電池構成部品2とを積層して金型1内にインサートしてセパレータ3のマニホールド孔3hの周囲にガスケット6を成形してセル4を構成し、複数のセル4を積層することにより、燃料電池構成部品2をセパレータ3,3間で挟持すると共に互いに隣接するセル4のセパレータ3のマニホールド孔3hをガスケット6により連通してマニホールド5を構成するもので、ガスケット成形用金型1に、燃料電池構成部品2に対して荷重を付与する荷重付与部15と、ガスケット6の内周側壁を成形する突出部17とを形成し、この実施の形態においては突出部17の先端面17aに弾性体7を設けておき、ガスケット成形用金型1を型閉じしたときに、インサートされた燃料電池構成部品2に対して締結時に付与される荷重を荷重付与部15によって付与するとともに、突出部17の先端面17aに設けられた弾性体7をインサートされたセパレータ3の表面のマニホールド孔3hの周囲に当接させてシールした状態で、ガスケット成形用金型1のキャビティ13内にガスケット6の材料を射出充填してガスケット6を成形するものである。
【0040】
ガスケット6を成形するに際しては、最初に、上型11と下型12を相対的に離間させて型開きさせた状態として、燃料電池構成部品2とセパレータ3とを積層して下型12の摺動部12a上にインサートし、その後、上型11と下型12を相対的に近接させて型閉じして、燃料電池構成部品2を荷重付与部15によって締結時に付与される荷重と同じ荷重で加圧し、突出部17の先端面17aに設けられた弾性体7をセパレータ3のマニホールド孔3hの周囲における表面に当接させた状態で、キャビティ13内にガスケット6の材料を射出充填してガスケット6を成形する。このとき、厚さにバラツキがある燃料電池構成部品2に対して締結時に付与される荷重と同じ荷重を荷重付与部15によって付与すると、突出部17の先端面17aとセパレータ3の表面との間の間隔が燃料電池構成部品2によって異なることとなる。しかしながら、本発明では、突出部17の先端面17aとセパレータ3の表面との間に弾性体7が介在されており、この異なる間隔に応じて弾性体7が弾性変形し、確実且つ適切にセパレータ3の表面に当接されて突出部17の先端面17aとの間をシールする。そのため、キャビティ13内に射出充填されたガスケット6の材料がセパレータ3のマニホールド孔3h内に入り込むことがなく、また、燃料電池構成部品2の厚さのバラツキに影響されることなく、締結時に付与される荷重と同じ荷重を付与された状態でガスケット6のリップ部62が基部61から均一な長さで突出するよう成形される。
【0041】
このようにして燃料電池構成部品2とセパレータ3を積層してガスケット6を成形してセル4を構成すると、このセル4を複数積層し、その積層方向端部にそれぞれエンドプレートを配設し、所定の設定された荷重を付与した状態で両エンドプレートをテンション部材によって締結する。各セル4は、ガスケット6のリップ部62がそれぞれ成形時と同じ荷重を受けて均一な長さで基部61から突出するよう成形されているために、燃料電池構成部品2の厚さのバラツキに影響されることなく、均一な締め代Pで潰されることとなる。
【0042】
次に、本発明の別の実施の形態を図3および図4に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態においては、上述した実施の形態と同様または相当する部分について同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみ説明することとする。
【0043】
この実施の形態における本発明の燃料電池のセル4のガスケット成形用金型1は、型閉じすることにより荷重付与部15がインサートされた燃料電池構成部品2を締結時の荷重で加圧したときに、突出部17の下面(先端面)17aがセパレータ3の表面に達することがなく、且つ、予めセパレータ3の表面のマニホールド孔3hの周囲に設けられた弾性体7に当接されるような長さに形成されている。
【0044】
そして、この実施の形態における本発明の燃料電池の製造方法は、セパレータ3の表面のマニホールド孔3hの周囲に弾性体7を予め設けておき、ガスケット成形用金型1を型閉じしたときに、インサートされた燃料電池構成部品2に対して締結時に付与される荷重を荷重付与部15によって付与するとともに、突出部17の先端面17aをセパレータ3に設けられた弾性体7に当接させてシールした状態で、ガスケット成形用金型1のキャビティ13内にガスケット6の材料を射出充填してガスケット6を成形するものである。
【0045】
ガスケット6を成形するに際しては、最初に、各セパレータ3の表面のマニホールド孔3hの周囲に弾性体7を予め設けておく。この弾性体7は、上述した実施の形態における弾性体7と同様に、型閉じして荷重付与部15がインサートされた燃料電池構成部品2を締結時の荷重で加圧したときに、ガスケット成形用金型1内にインサートされる燃料電池構成部品2のバラツキのある厚さに応じて、その先端が確実に上型11の突出部17に接し弾性変形して、ガスケット6の材料がマニホールド孔3h内に流れ込むのを阻止することができるような材質、たとえばガスケット6と同じ材料で成形されている。弾性体7は、セパレータ3の表面に直接成形してもよく、また、セパレータ3とは別に成形してセパレータ3の表面に接着剤などによって固着してもよい。
【0046】
次いで、上型11と下型12を相対的に離間させて型開きさせた状態として、燃料電池構成部品2とセパレータ3とを積層して下型12の摺動部12a上に載置し、その後、上型11と下型12を相対的に近接させて型閉じして、締結時に付与される荷重と同じ荷重で燃料電池構成部品2を荷重付与部15によって加圧し、突出部17の先端面17aをセパレータ3に設けられた弾性体7に当接させた状態で、キャビティ13内にガスケット6の材料を射出充填してガスケット6を成形する。このとき、厚さにバラツキがある燃料電池構成部品2に対して締結時に付与される荷重と同じ荷重を荷重付与部15によって付与すると、突出部17の先端面17aとセパレータ3の表面との間の間隔が燃料電池構成部品2によって異なることとなる。しかしながら、本発明では、突出部17の先端面17aとセパレータ3の表面との間に弾性体7が介在しており、この異なる間隔に応じて弾性体7が弾性変形し、確実且つ適切に上型11の突出部17の先端面17aに当接されてシールする。そのため、キャビティ13内に射出充填されたガスケット6の材料がセパレータ3のマニホールド孔3h内に入り込むことがなく、また、燃料電池構成部品2の厚さのバラツキに影響されることなく、締結時に付与される荷重と同じ荷重を付与された状態でガスケット6のリップ部62が基部61から均一な長さで突出するよう成形される。
【0047】
このようにして燃料電池構成部品2とセパレータ3を積層してガスケット6を成形してセル4を構成すると、このセル4を複数積層し、その積層方向端部にそれぞれエンドプレートを配設し、所定の設定された荷重を付与した状態で両エンドプレートをテンション部材によって締結する。各セル4は、ガスケット6のリップ部62がそれぞれ成形時と同じ荷重を受けて均一な長さで基部61から突出するよう成形されているために、燃料電池構成部品2の厚さのバラツキに影響されることなく、均一な締め代Pで潰されることとなる。また、本発明では、各セパレータ3のマニホールド孔3hの周囲における表面が弾性体7を設けることによって覆われているため、図4に示すように、各セル4を積層した際にずれが生じた状態で荷重が掛けられることによって生じるモーメントなどにより、セパレータ3が変形しても、互いに隣接するセル4のセパレータ3が互いに接触して短絡するのを確実に防止することが可能なセル4を製造することができる。
【0048】
次に、本発明の燃料電池を、上述したように構成された第2の実施の形態におけるガスケット成形用金型1を用いて、上述したように構成された第2の実施の形態における方法に従って製造されたものである場合により説明する。
本発明の燃料電池は、概略、複数のセル4を積層してなるもので、各セル4は、燃料電池構成部品2と、セパレータ3と、積層されたときに互いに隣接するセル4のセパレータ3のマニホールド孔3hを連通するマニホールド5を構成するために成形されたガスケット6とを備えており、ガスケット6が燃料電池構成部品2に対して荷重を付与された状態で成形されたものであり、セパレータ3の表面のマニホールド孔3hの周囲に弾性体7が設けられている。ガスケット6が成形されるときに燃料電池構成部品2に対して付与される荷重は、締結時に燃料電池構成部品2が付与される荷重と同じであることが望ましい。
【0049】
各セル4のセパレータ3の、ガスケット6を成形される側の表面であってマニホールド孔3hの周囲には、弾性体7がガスケット6を成形する前に予め設けられている。そのため、ガスケット6を成形するために、燃料電池構成部品2とセパレータ3とを積層してガスケット成形用金型1にインサートし型閉じして、締結時に付与される荷重と同じ荷重で燃料電池構成部品2を加圧すると、上型11の突出部17の先端面17aが弾性体7に当接する。そして、燃料電池構成部品2の厚さにバラツキが生じていることから燃料電池構成部品2によって異なる突出部17の先端面17aとセパレータ3の表面との間の間隔に応じて弾性体7が弾性変形し、確実且つ適切にセパレータ3の表面に当接されて突出部17の先端面17aとの間をシールする。そのため、ガスケット6の材料がマニホールド孔3h内に流れ込まないように確実にシールできる構造となる。また、厚さにバラツキがある燃料電池構成部品2に対して締結時に付与される荷重と同じ荷重を付与した状態でガスケット6のリップ部62が基部61から均一な長さで突出するよう成形されたものであるため、複数のセル4を積層して、その積層方向端部にそれぞれエンドプレートを配設し、所定の設定された荷重を付与した状態で両エンドプレートをテンション部材によって締結することにより燃料電池として組み立てたときに、燃料電池構成部品2の厚さのバラツキに影響されることなく、ガスケット6のリップ部62がそれぞれ均一な締め代Pで潰されるように構成されている。
【0050】
さらに、このようにガスケット6が成形されたセル4では、図4に示すように、積層時にずれが生じ隣接する他のセル4のセパレータ3にガスケット6のリップ部62が当接され荷重が掛けられることによって生じるモーメントにより、セパレータ3が変形する場合であっても、セパレータ3のマニホールド孔3hの周囲における表面が弾性体を設けることによって覆われているため、互いに隣接するセル4のセパレータ3が接触して短絡するのを確実に防止することが可能な構造となっている。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、燃料電池のセルのガスケットを成形するための金型に利用することができる。また、本発明は、燃料電池のセルにおいて、ガスケットを成形する方法に利用することができる。さらに、本発明は、ガスケットが成形された複数のセルを積層して所定の荷重を付与してエンドプレートを締結してなる燃料電池に利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1:燃料電池のセルのガスケット成形用金型、 2:燃料電池構成部品、 3:セパレータ、 3h:マニホールド孔、 3a:セパレータ内側、 3b:セパレータ外側、 4:セル、 5:マニホールド、 6:ガスケット、 11:上型(第1の金型)、 12:下型(第2の金型)、 13:キャビティ、 17:突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層されることによりセルの燃料電池構成部品を挟持するセパレータに形成されたマニホールド孔を互いに連通するためのマニホールドを構成するガスケットの成形用金型であって、
燃料電池構成部品に対して荷重を付与する荷重付与部と、前記ガスケットの内周側壁を成形する突出部とを有しており、
該突出部の先端面と前記セパレータの表面のマニホールド孔の周囲との間に介在される弾性体を備えたことを特徴とする燃料電池のセルのガスケット成形用金型。
【請求項2】
マニホールド孔が形成されたセパレータと燃料電池構成部品とを積重して金型内にインサートして前記セパレータのマニホールド孔の周囲にガスケットを成形してセルを構成し、該セルを積層することにより、前記燃料電池構成部品をセパレータ間で挟持すると共に隣接するセルのセパレータのマニホールド孔をガスケットにより互いに連通してマニホールドを構成する燃料電池の製造方法であって、
前記金型に、燃料電池構成部品に対して荷重を付与する荷重付与部と、前記ガスケットの内周側壁を成形する突出部とを形成しておき、
該金型を型閉じしたときに、インサートされた燃料電池構成部品に対して締結時に付与される荷重を前記荷重付与部によって付与するとともに、前記突出部の先端面と前記インサートされたセパレータの表面のマニホールド孔の周囲との間に弾性体を介在させ、
前記金型のキャビティ内にガスケットの材料を射出充填することを特徴とする燃料電池の製造方法。
【請求項3】
複数のセルを積層してなり、
各セルが、燃料電池構成部品と、セパレータと、締結時に隣接するセルのセパレータのマニホールド孔を互いに連通するマニホールドを構成するために成形されたガスケットとを備えている燃料電池であって、
前記ガスケットが、燃料電池構成部品に対して荷重を付与された状態で成形されており、
前記セパレータの表面のマニホールド孔の周囲に弾性体が設けられていることを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−177022(P2010−177022A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18053(P2009−18053)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】