説明

燃料電池搭載装置

【課題】電力を必要とする部位がアプリケーション構造内に分散して配置されている場合に、個々の部位毎に燃料電池の発電部を分散配置し、一つ一つの発電部の出力を小さく抑えた燃料電池搭載装置を提供する。
【解決手段】犬型ロボット91の各関節の近傍に発電部80a〜80jをそれぞれ配置し、各発電部80a〜80jがそれぞれの近傍に位置する駆動用モータに電力を供給する。全ての駆動用モータに一つの発電部から電力を供給する場合に比べ、発電部1個当たりに必要とされる出力を軽減することが可能となり、発電反応によって生じる熱や水の管理が容易となり、犬型ロボット91を安定して動作させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ロボット装置、多関節型ロボット、ノート型パソコン、携帯電話機、カメラ一体型VTR(ビデオテープレコーダ)、携帯情報端末機(PDA)等の電子機器の電源装置として燃料電池を搭載して使用するようにした燃料電池搭載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の、この種の燃料電池搭載装置としては、例えば、図6に示すような構成のものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この図6は、燃料として水素を用い、空気を酸化剤とする小型の固体高分子型燃料電池を携帯用の電源装置として使用するノート型パソコン1を示すものである。
【0003】
ノート型パソコン1は、上面にキーボード操作部2が配置されたパソコン本体3と、下面に液晶ディスプレイ4が装着された蓋体5とから構成されている。パソコン本体3と蓋体5は、背面側においてヒンジで回動自在且つ任意の位置で固定可能とされている。蓋体5を閉じてパソコン本体3に重ね合わせることにより、キーボード操作部2の上に液晶ディスプレイ4が重ねられて互いに覆われることになる。このパソコン本体3の側面に電池収納部6が設けられており、この電池収納部6に携帯用電源装置である燃料電池7が着脱自在に装着されて使用される。
【0004】
燃料電池7は、燃料(水素)と空気(酸素)を用いて発電を行う発電部8と、貯蔵した水素を一定量ずつ発電部8に供給する水素貯蔵ボンベ9と、空気を発電部8に供給する空気供給手段10と、発電部8の発電動作を制御する制御部11と、これらを一体的に収納する電池ケース12等を備えて構成されている。電池ケース12には、空気の吸気口13及び排気口14と、パソコン本体3及び燃料電池7を電気的に接続するための接続部15とが設けられている。そして、電池ケース12の吸気口13の内側に、空気供給手段10の一具体例を示すファンが配設されている。
【0005】
また、従来の、この種の燃料電池搭載装置としては、例えば、特開2002−59389号公報に記載されているようなものもある(特許文献2)。この特許文献2には、外部雰囲気を検知して検知信号を出力するセンサの検知信号に基づいて、アクチュエータ部によって複数の駆動部に、検知信号に対応する自律動作がそれぞれ行われるロボットとロボットのバッテリの充電器とからなる自律歩行ロボット装置が記載されている。
【0006】
この自律歩行ロボット装置は、ロボットのバッテリの充電時、アンテナ部からの充電要求信号により、充電器から送信される歩行誘導信号でアクチュエータが前足と後足を駆動し、ロボットは充電器に近づき、外界撮像センサがランドマークを検知し作成する周辺の環境地図により、前足、後足、口部、尾部が駆動され、ロボットは充電器に充電姿勢で配置され充電が行われる。充電終了時にアンテナ部から充電停止要求信号が送信され、充電器の動作が停止し、ロボットは充電器から離脱し、バッテリの充電が、疲れたロボットが充電器位置で休憩するアミューズメント動作として自然に行われ、対応者は充電中もアミューズメント享受が可能になる。
【0007】
【特許文献1】特開平9−213359号公報(第3−4頁、図1、図2)
【特許文献2】特開2002−59389号公報(第3−4頁、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来の燃料電池搭載装置においては、前者の場合、ノート型パソコン1には、キーボード操作部2等から入力される情報に基づいて所定の制御を行うためのマイクロコンピュータ等を備えた制御部が設けられており、これとは別に、燃料電池7においても別個独立に、発電部8等の制御を行うための制御部11が設けられていた。更に、ノート型パソコン1及び燃料電池7は、ともに制御部やモータ等の発熱する構成要素を含むことから、その発熱部分を冷却するためのファンやポンプ、クーラー等が別個独立に設けられていた。これらの構成要素、環境条件等については、後者の自律歩行ロボット装置の場合も同様である。
【0009】
そのため、1機の燃料電池搭載装置において、使用目的を共通にする同一部品が複数個設けられており、従って、部品点数が多くなるばかりでなく、装置全体が複雑なものとなり、不経済であるという課題があった。
【0010】
さらにまた、上述した燃料電池搭載装置において、一つの燃料電池から電子機器の各駆動部に電力を供給した場合には、特定の駆動部で消費される電力が急激に増大した際に当該燃料電池から供給できる電力量の上限を超えてしまうこともある。燃料電池から供給できる電力量の上限を超えてしまった場合には当該燃料電池の発電に不具合が生じ、この不具合によって燃料電池搭載装置全体の駆動を十分に行うことができない問題が生じる。特に、CPU(Central Processing Unit )を含む制御部はモータやアクチュエータ部に比べて負荷変動が大きい傾向にある。
【0011】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、電力を必要とする部位がアプリケーション構造内に分散して配置されている場合に、個々の部位毎に燃料電池の発電部を分散配置し、一つ一つの発電部の出力を小さく抑えて熱管理や水管理等が容易に行えるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかる燃料電池搭載装置は、燃料と空気を用いて発電可能な燃料電池と、燃料電池が搭載され、当該燃料電池から出力される電力によって動作される電子機器と、を備えたものであって、電子機器は電力を必要とする複数の駆動部を有し、燃料電池は複数の発電部を有し、複数の発電部が複数の駆動部への電力供給を分担するようにしたものである。
【0013】
本発明の燃料電池搭載装置では、各駆動部への電力供給が複数の発電部により分担されているので、各発電部における出力が小さくなり、当該各発電部の発電の際の負担が軽減される。このように各発電部の負担が軽減されることによって各発電部の温度や水の管理を容易に行うことが可能となり、安定して発電が行われる。さらに、このような燃料電池搭載装置は、前記複数の駆動部の所定の駆動部に電力を供給する電力供給手段を備えていても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明の燃料電池搭載装置によれば、各駆動部への電力供給を複数の発電部に分担させるようにしたので、各発電部における出力を小さくし、当該各発電部の発電の際の負担を軽減することができる。このように各発電部の負担を軽減することによって各発電部の温度や水の管理を容易に行うことが可能となり、安定して発電を行うことができる。さらに、このような燃料電池搭載装置によれば、負荷変動が異なる駆動部に安定して電力を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
[ 第1の実施の形態]
【0016】
図1乃至図3は、本発明の実施の例を示すものである。即ち、図1は本発明の燃料電池搭載装置の一実施例の概略構成を示す説明図、図2は本発明の燃料電池搭載装置に係る燃料電池の原理を説明するための説明図、図3は本発明の燃料電池搭載装置に係る燃料電池の一実施例を示す説明図である。
【0017】
本発明の一実施例を示す燃料電池搭載装置20は、電子ペットの犬型ロボット21を電子機器として用い、これに燃料電池システム22を搭載して構成したものである。犬型ロボット21は、略ドラム状をした胴体部23と、この胴体部23の前側上部に取り付けられた頭部24と、胴体部23の前側両側部に取り付けられた2本の前足部25と、胴体部23の後側両側部に取り付けられた2本の後足部26と、胴体部23の後側上部に取り付けられた尻尾部27とから構成されている。
【0018】
犬型ロボット21の頭部24には下方に突出された首部28が設けられており、この首部28が首関節により胴体部23に対してある所定の範囲内で上下方向及び左右方向に回動自在及び俯仰自在に取り付けられている。更に、首部28の下部には、顎関節によって顎部29が上下方向に俯仰自在に取り付けられている。そして、首部28の後側上部には、それぞれ耳関節によって一対の耳部30,30が略左右対称であって、回動自在に取り付けられている。
【0019】
また、一対の前足部25,25と一対の後足部26,26と尻尾部27とは、それぞれ一対の前足関節と一対の後足関節と尻尾関節とによってそれぞれ回動自在且つ俯仰自在に連結されている。更に、一対の前足部25,25は、それぞれ足上部32と足下部33とからなり、両者は前膝関節34によって回動自在且つ俯仰自在に連結されている。そして、足下部33の先端部に、足首関節によって前足部35が俯仰自在に取り付けられている。
【0020】
同様に、一対の後足部26,26は、それぞれ足上部36と足下部37とからなり、両者は後膝関節38によって回動自在且つ俯仰自在に連結されている。そして、足下部37の先端部に、足首関節によって後足部39が俯仰自在に取り付けられている。更に、尻尾部27は、尻尾関節によって胴体部23に対して回動自在に取り付けられている。
【0021】
前記各関節部が、電子機器の一実施例を示す犬型ロボット21の駆動部の一具体例を示している。これら各関節部には、それぞれの関節部を回動動作又は俯仰動作させるための1個又は2個の駆動モータがそれぞれ個別に取り付けられている。また、胴体部23内には、すべての駆動モータ、及び各種の検出センサ、音声認識装置その他の機構を駆動制御するためのマイクロコンピュータや記憶装置(RAM,ROM)等からなる電子機器用制御部が内蔵されている。この電子機器用制御部ですべての駆動モータを駆動制御することにより、犬型ロボット21に歩行運動をさせ、或いは「お手」「お座り」等の各種の動作を行わせることができる。
【0022】
また、燃料電池システム22は、上述した関節毎に設けられた関節の数と同数の発電部40と、すべての発電部40の発電動作を制御する燃料電池用制御部41と、すべての発電部40に対して燃料である燃料(水素、メタノール、メタン等)を供給する燃料供給手段42と、各発電部40に対して空気(酸素)を供給する空気供給手段43とから構成されている。また、発電反応に使用される燃料は、水素ガスの如き気体だけでなく、メタノールの如き液体を使用しても良いことは勿論である。尚、発電部40や制御部その他の発熱源を冷却するための冷却ファン等の補助機器等を設ける構成としてもよい。また、燃料電池システム22と電子機器とされる犬型ロボット21とで共用される共用部としては、燃料電池システム22の構成要素、及び電子機器である犬型ロボット21の構成要素であり、これら構成要素を共用することによって燃料電池搭載装置20の部品を低減することができる。また、共用部としては、例えば、上述した制御部その他の発熱源を冷却するための冷却ファン、ポンプ若しくはクーラー等の補助機器等、発電部40に燃料を供給する燃料供給手段、前記発電部に空気を供給する空気供給手段等の加熱に用いられるヒーター、電熱器等の補助機器、温度センサー、湿度センサー、ラジエータ、DC/DCコンバータ、その他共用可能なものであれば如何なるものでも良い。また、電子機器や燃料電池を収納する筐体の如き燃料電池搭載装置の構造部材を共用部としても良く、当該筐体の壁面部を利用して燃料電池の発電部を挟持する場合には、当該壁面部を共用部とすることもできる。さらにまた、スタック構造を有する発電部の締結部材を共用部としても良い。
【0023】
発電部である関節毎に設けられた関節の数と同数の発電部40(40a〜40j)は、対応する関節の近傍にそれぞれ配設されている。即ち、頭部24には、耳部30用の発電部40aと、顎部29用の発電部40bが配設されている。また、胴体部23には、首部28用の発電部40cと、前足部25用の発電部40dと、後足部26用の発電部40eと、尻尾部27用の発電部40fとが配設されている。
【0024】
更に、前足部25の足上部32には前膝関節34用の発電部40gが配設され、足下部33には前足部35用の発電部40hが配設されている。そして、後足部26の足上部36には後膝関節38用の発電部40iが配設され、足下部37には後足部39用の発電部40jが配設されている。これらの発電部40a〜40jは、燃料配管44によって燃料供給手段42に接続され、燃料が供給可能とされている。
【0025】
また、各発電部40a〜40jに対応して、胴体部23、頭部24及び前後の足部25,26におけるそれぞれの近傍には、空気供給手段43の一具体例を示す空気取入穴が設けられている。これらの空気取入穴から導入された空気が、各発電部40a〜40jにおいて水素と共に発電に供される。燃料供給手段42の一具体例としては、例えば、多量の水素を貯蔵することができる水素貯蔵ボンベ等を用いることができる。
【0026】
このような燃料電池システム22の、一般的な構成の概略を図2に示す。図2において、符号50は、燃料ガスが充填された燃料カートリッジであり、四角形をなす扁平の箱体によって構成されている。この燃料カートリッジ50の上面にベース基板51が載置され、その上面に発電部40と、冷却ファン52と、発電部40で生成された水を乾燥させる2個の乾燥ファン53と、燃料カートリッジ50から発電部40に向かう燃料の流量を調整して燃料供給口を開閉する2個の開閉弁54と、発電部40から取り出す電流値及び電圧値の変動を補整するレギュレータ55等が搭載されている。
【0027】
また、発電部40の上面には、発電部40の熱を外部に放出して冷却するための冷却フィン56が載置されている。そして、冷却フィン56には、制御部41を構成する複数の大規模半導体集積回路(LSI)及びその他の制御用部品と、温度センサ57と、湿度センサ58とが搭載されている。
【0028】
また、発電部40を構成する発電セルとしては、例えば、図3に示すような構成のものを適用することができる。図3に示す発電セル59は、両面に触媒層が設けられた高分子電解質膜電極接合体60と、この高分子電解質膜電極接合体60の一面側に配された空気側セパレータ61と、その他面側に配された燃料側セパレータ62と、空気側セパレータ61と高分子電解質膜電極接合体60の間に介在された空気側電極63と、燃料側セパレータ62と高分子電解質膜電極接合体60の間に介在された燃料側電極64とから構成されている。
【0029】
このような構成を有する発電セル59では、例えば、次のようにして発電動作が行われる。まず、燃料の水素ガスが燃料側セパレータ62に供給されると共に、酸化剤の空気が大気中から空気側セパレータ61に供給される。その結果、水素ガス(H2 )が高分子電解質膜電極接合体60の燃料側触媒に接触して電子(e- )が飛び出し、プロトン(H+ )が発生する(H2 →2H+ +2e- )。
【0030】
このプロトン(H+ )が高分子電解質膜電極接合体60を通り抜けて反対側の空気側電極63側に向かう。この空気側電極63側では、送られてきた空気中の酸素(O2 )が高分子電解質膜電極接合体60の空気側触媒の力でプロトン(H+ )及び仕事を終えて戻ってきた電子(e- )と反応することにより、水が生成される(O2 +4H+ +4e- →2H2 O)。
【0031】
この化学反応により発生する電子(e- )を電極63,64で集めることにより、発電セル59で電気を作り出すことができる。図1の実施例においては、このような発電部40が、電力を必要としている各関節部の近傍にそれぞれ設けられており、その関節部毎に必要に応じて電力が作られる。従って、1個の発電部で電気を作り、その電力をすべての関節部に供給する従来の方式に比べて、一つ一つの発電セルの出力を小さく抑えることがでるため、発電効率を高めることができる。
【0032】
しかも、1個の発電セルの出力が小さいために、各発電セルの熱管理や水管理を容易にすることができ、システム構成をよりシンプルなものとすることができる。更に、燃料電池システム22の構成要素の一部と犬型ロボット21の構成要素の一部、例えば、制御部を共用させることにより、燃料電池搭載装置20の全体の構成要素の無駄をなくして、構成の簡略化を図ることができる。
【0033】
尚、燃料電池システム22の構成要素のうち犬型ロボット21の構成要素として共用可能なものは、上述した制御部に限られるものではなく、例えば、冷却ファン52や乾燥ファンその他の構成要素において、燃料電池システム22と動物ロボット等において共に使用されている同種のものであれば、それを共用させることができるものである。
【0034】
本発明は上記実施の例に限定されるものではなく、上記実施例では、電子機器として犬型ロボットに適用した例について説明したが、他の形状、形式のロボットであって、それ自体が動く電子機器に適用できることは勿論のこと、それ自体は動くことがない電子機器、例えば、ノート型パソコン、携帯用電話機その他の電子機器に適用することができるものである。また、発電セルの構成についても、上述した実施例のものに限定されるものではない。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々に変更できるものである。
[ 第2の実施の形態]
【0035】
次に、図4を参照しながら、本発明にかかる燃料電池搭載装置の他の実施形態について説明する。なお、本実施形態にかかる燃料電池搭載装置90及び燃料電池搭載装置を構成する発電部80の構造は、第1の実施の形態で説明した燃料電池搭載装置20及び発電部40と略同様であることから詳細な説明は省略する。また、本実施形態にかかる燃料電池搭載装置90に搭載される燃料電池システム92の発電部は複数のMEAを積層してなるスタック構造を有する発電部に限定されるものではない。例えば、スタック構造を構成する各発電素子を分散して配置し、複数の発電素子で構成される発電素子の集合を発電部とすることもできる。本実施形態にかかる燃料電池搭載装置90は、主に電子機器とされる犬型ロボット91、犬型ロボット91の内部に複数配置された発電部80a〜80jからなる燃料電池システム92、燃料電池システム92の動作を制御する燃料電池用制御部81に電力を供給する二次電池100から構成されている。なお、本実施形態では、燃料電池システム92の燃料電池用制御部81と犬型ロボット91の制御部とを燃料電池システム92と犬型ロボット91の共用部としている。なお、燃料電池システム92及び犬型ロボット91の共用部は、制御部その他の発熱源を冷却するための冷却ファン、ポンプ若しくはクーラー等の補助機器等、発電部80に燃料を供給する燃料供給手段、前記発電部に空気を供給する空気供給手段等の加熱に用いられるヒーター、電熱器等の補助機器、温度センサー、湿度センサー、ラジエータ、DC/DCコンバータ、その他共用可能なものであれば如何なるものでも良い。また、電子機器や燃料電池を収納する筐体の如き燃料電池搭載装置の構造部材を共用部としても良く、当該筐体の壁面部を利用して燃料電池の発電部を挟持する場合には、当該壁面部を共用部とすることもできる。さらにまた、スタック構造を有する発電部の締結部材を共用部としても良いことは勿論である。
【0036】
犬型ロボット91は、第1の実施の形態で説明した犬型ロボット21と略同様の構成とされ、主に胴体部93、頭部94、首部98、顎部99、耳部70、2本の前足部95、2本の後足部96、尻尾部97の如き可動部及びこれらを自在に動かすための複数の関節部から構成されている。
【0037】
これら複数の関節部は可動部を動かすための駆動部であり、例えば、駆動用モータによって駆動される。なお、関節部は、当該関節部を動かすための駆動用モータも含むものとする。これら駆動用モータが各関節部を介して接続されている可動部を自在に動かす。関節部は、駆動用モータで発生した駆動力によって回転、又は俯仰され、当該関節に接続されている可動部を自在に回転、又は俯仰させることができる。例えば、可動部とされる一対の前足部25を一対の前足関節によって回動、且つ俯仰自在に動かすことができる。また、駆動用モータは各関節部に所要の個数設けることができる。
【0038】
発電部80a〜80jは、犬型ロボット91の各関節の近傍にそれぞれ配置されており、各発電部80a〜80jがそれぞれの発電部の近傍に位置する駆動用モータに電力を供給する。例えば、前膝関節74の近傍に配置される発電部80hは前膝関節74が備える駆動用モータに電力を供給する。前膝関節74の近傍に設けられる発電部80hと同様に、各関節の近傍に配置される発電部はそれぞれの関節が備える駆動用モータに電力を供給する。このように、電子機器とされる犬型ロボット91に燃料電池を構成する発電部80a〜80jを分散して配置し、一の発電部80から一の関節が備える駆動用モータに電力を供給することによって、各発電部80a〜80jの出力の負担を軽減することができる。なお、犬型ロボット91は各関節の近傍に個別に発電部80が配置されているが、発電部80の個数が関節の個数と同数でなくても勿論良い。また、複数の駆動用モータへの電力供給を複数の発電部で分担していれば良く、例えば、複数の発電部のうち一の発電部から複数の駆動用モータに電力を供給しても良い。さらに、電子機器の内部に発電部を内蔵する構造に限定されず、駆動部に供給される電力の不足を補うために外部から別途発電部を取り付けても良い。
【0039】
犬型ロボット91と、複数の発電部80a〜80jから構成される燃料電池システム92で構成される燃料電池搭載装置90によれば、電子機器とされる犬型ロボットが備える全ての駆動用モータに一つの発電部から電力を供給する場合に比べ、発電部1個当たりに必要とされる出力を軽減することが可能となる。発電部80a〜80jの出力が軽減されることによって各発電部の発電反応によって生じる熱量や水分量も低減することができる。したがって、発電反応によって生じる熱や水の管理が容易となり、発電部の温度や当該発電部の発電セルに含まれる水分量を管理しながら最適な環境で発電部に発電を行わせることができ、電子機器である犬型ロボット91を安定して動作させることが可能となる。
【0040】
さらに、犬型ロボット91は発電部80a〜80jが分散して配置されていることから、各発電部を個別に交換することが可能となり、不具合が生じた発電部を交換するだけで簡便に犬型ロボット91のメンテナンスを行うことができる。また、一の発電部から全ての駆動用モータの電力を供給する場合には、当該発電部に不具合が生じた際に全ての駆動用モータの駆動に不具合が生じることがあるが、犬型ロボット91の内部に分散して配置された複数の発電部80a〜80jによれば、一の発電部に不具合が生じた場合でも当該一の発電部から電力の供給を受けていた駆動用モータの駆動のみに不具合が生じ、他の駆動用モータは支障なく駆動されることになる。さらにまた、特定の発電部に不具合が生じた際には当該発電部のみを交換するこができ、犬型ロボット91のメンテナンスを簡便に行うことができる。また、犬型ロボットの可動部のうち不具合が生じた発電部を内蔵する可動部を交換することによるメンテナンスを行うことも可能である。
【0041】
胴体部93内には、すべての駆動用モータ、及び各種の検出センサ、音声認識装置その他の機構の駆動を制御するためのマイクロコンピュータや記憶装置(RAM,ROM)等からなる電子機器用制御部が内蔵されている。この電子機器用制御部は、上述した駆動用モータと同様に犬型ロボットに内蔵され、データや命令の処理を行うように駆動されることによって電子機器である犬型ロボットの動作を制御する制御部である。なお、本実施形態にかかる燃料電池搭載装置90は、燃料電池システム92の動作を制御する制御部81と電子機器用制御部を共用しているため、電子機器用制御部は図示していない。また、燃料電池の制御部と電子機器用制御部とを共用しない場合には、当該燃料電池の制御部を燃料電池から供給される電力で駆動することができる。
【0042】
電子機器用制御部と共用される制御部81は、犬型ロボットの制御部であるとともに上述した関節部に含まれる駆動用モータと同様に電力によって駆動される駆動部である。制御部81は、制御部81の近傍に設けられたリチウムイオン二次電池の如き二次電池100から電力が供給されて駆動される。本例の犬型ロボット91の如き電子機器が有する駆動部は、駆動用モータによって動かされる関節部の如き駆動部と、制御部81と共用される電子機器用制御部の如き駆動部とに分類される。駆動用モータと制御部81との負荷変動を比較すると、通常、マイクロコンピュータを含む制御部81の負荷変動は駆動用モータの負荷変動に比べて大きい傾向にある。具体的には、駆動用モータの如き駆動部は、駆動を開始するために必要な電力が供給されればそれ以後の負荷変動は殆どない。つまり、駆動用モータが駆動される時間を横軸にとり、縦軸に負荷の大きさを示した場合には、当該負荷の大きさは時間軸に対して略矩形状で推移することになる。
【0043】
一方、制御部81の負荷の大きさは、駆動される時間に対してパルス的に変動する傾向にある。具体的には、制御部81の負荷は変動幅が大きいだけでなく、時間軸に対して負荷が急峻に立ち上がり、且つ急峻に立ち下がる。このパルス的な負荷変動によって制御部81の駆動に必要とされる電力も大きく変動する。燃料電池を構成する発電部80は急激な負荷変動に追従して所要の電力を供給することは困難である場合が多く、制御部81が安定して駆動されないことによって電子機器を安定して駆動できないことがある。また、制御部81と別個に電子機器用制御部を設ける場合でも、当該電子機器用制御部を安定して駆動することが困難となる。
【0044】
そこで、燃料電池搭載装置90は、複数の発電部で電力供給を分担するだけでなく、電力を供給する電力源を駆動部の負荷変動に応じて使い分けている。特に、駆動用モータの如き駆動部には発電部80から電力を供給し、負荷変動が大きい傾向にある制御部81には急峻な負荷変動に追従して電力を供給することができる二次電池100から電力を供給している。二次電池100は繰り返し充電することによって電気エネルギーを蓄電することができる電力供給手段であり、発電部80d,80eから供給された電気エネルギーを蓄電し、当該電気エネルギーを電力として制御部81に供給する。このように電力を供給する電力源を負荷変動に応じて使い分けることによって、燃料電池搭載装置90全体の安定した駆動を可能とする。なお、電力供給手段は二次電池100に限定されず、キャパシター、マイクロタービン、一次電池や太陽電池の如き電池でも良く、これら電力供給手段を組み合わせたものでも良い。また、一つの発電部と、複数の電力供給手段とによって電力の供給を分担しても良い。
【0045】
また、燃料電池搭載装置90を構成する電子機器は、上述した犬型ロボット91に限定されるものでなく、例えば、汎用のロボット装置、その他のロボット装置及び多関節型ロボット、ノート型パソコン、携帯電話機、カメラ一体型VTR(ビデオテープレコーダ)、携帯情報端末機(PDA)の電源として燃料電池を用いた燃料電池搭載装置であれば如何なるものであっても良い。例えば、ノート型パソコンの如き電子機器の場合、CPUを含む電子機器用制御部に二次電池、又はキャパシターの如き電力供給手段から電力を供給し、データを書き込み、或いは読み込むためのメディアを駆動させるためのドライブ装置には燃料電池の発電部から電力を供給すれば良い。また、本発明にかかる燃料電池搭載装置は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更できることは勿論である。
[ 第3の実施の形態]
【0046】
次に、図5を参照しながら、本発明にかかる電力供給システムについて説明する。図5は、本実施形態にかかる電力供給システム110の構成図である。電力供給システム110は、複数の駆動部113に電力を供給する燃料電池111と、燃料電池111から電力が供給される駆動部113a,113bに比べて負荷変動が大きい駆動部113cに対して電力を供給する二次電池112とから構成されることを特徴とする。家庭で用いられる各種電気器具に電力を供給する際には、燃料電池111から電力が供給される電気器具に比べて負荷変動が大きい電気器具に対しては二次電池112から電力を供給する。例えば、照明器具の如き点灯時に高い電圧を必要とする電気器具には二次電池112から電力を供給して点灯させ、その他の負荷変動が小さい電気器具に対しては燃料電池111から電力を供給する。すなわち、駆動部113が照明器具に相当し、その他の電気器具が駆動部113a,113bに相当する。また、各種電気機器が駆動されていない場合には、燃料電池111から二次電池112を充電することもできることから、二次電池112は、電気エネルギーを蓄電した後所要の駆動部に電力を供給する電力供給手段とされる。このような電力供給システム110によれば、燃料電池と電力供給手段とを駆動部の負荷変動に応じて使い分けることによって、負荷変動が異なる様々な駆動部からなるシステムに対して安定して電力を供給することができる。
【0047】
また、本実施形態にかかる電力供給システム110は、家庭内で用いられる各種電気器具に電力を供給する場合に限定されず、負荷変動が異なる駆動部を有するシステムに対して電力を供給する場合に応用可能である。例えば、燃料電池を搭載した電気自動車の如き輸送装置において、当該輸送装置を動かすための駆動用モータに比べて負荷変動が大きい各種装置に二次電池の如き電力供給手段から電力を供給することによって、輸送装置全体を安定して動作させることも可能である。また、電力供給手段としては、二次電池に限定されず、キャパシターを用いることもできる。また、電力供給手段は、二次電池に限定されず、マイクロタービン、一次電池や太陽電池の如き電池、一次電池でも良く、さらにこれら電力供給手段を組み合わせたものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる燃料電池搭載装置を示す図であり、犬型ロボットに燃料電池システムを搭載した状態を示す説明図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態の燃料電池搭載装置に係る燃料電池システムの一実施例を示す説明図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態の燃料電池搭載装置に搭載される燃料電池の発電セルを示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態にかかる燃料電池搭載装置の構造図であり、犬型ロボットに燃料電池システムを搭載した状態を示す説明図である。
【図5】本発明の第3の実施形態にかかる電力供給システムの構成概略図である。
【図6】従来の燃料電池搭載装置の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1 ノート型パソコン
2 キーボード操作部
7,111 燃料電池
8 発電部
11 制御部
12 電池ケース
20,90 燃料電池搭載装置
21,91 犬型ロボット
22,92 燃料電池システム
40,80 発電部
52 冷却ファン
53 乾燥ファン
54 開閉弁
55 レギュレータ
56 冷却フィン
57 温度センサ
58 湿度センサ
100,112 二次電池
110 電力供給システム
113 駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料と空気を用いて発電可能な燃料電池と、
前記燃料電池が搭載され、当該燃料電池から出力される電力によって動作される電子機器と、を備えた燃料電池搭載装置であって、
前記電子機器は電力を必要とする複数の駆動部を有し、前記燃料電池は複数の発電部を有し、前記複数の発電部が前記複数の駆動部への電力供給を分担する
ことを特徴とする燃料電池搭載装置。
【請求項2】
前記複数の駆動部の所定の駆動部に電力を供給する電力供給手段を備える
ことを特徴とする請求項1記載の燃料電池搭載装置。
【請求項3】
前記電力供給手段は、一次電池、二次電池、キャパシター、マイクロタービン、若しくはこれらの組み合わせであること
を特徴とする請求項2記載の燃料電池搭載装置。
【請求項4】
前記複数の駆動部に電力を供給する電力源として、前記燃料電池と前記電力供給手段のいずれかを前記駆動部の負荷変動に応じて使い分けている
ことを特徴とする請求項2または3記載の燃料電池搭載装置。
【請求項5】
前記複数の駆動部のうち負荷変動が大きい駆動部に、前記電力供給手段から電力を供給している
ことを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の燃料電池搭載装置。
【請求項6】
前記駆動部が駆動されていない場合には、前記燃料電池から前記電力供給手段を充電する
ことを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載の燃料電池搭載装置。
【請求項7】
前記電子機器は、ロボット装置,コンピュータ,携帯電話又は携帯情報端末である
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の燃料電池搭載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−108725(P2008−108725A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261813(P2007−261813)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【分割の表示】特願2003−407339(P2003−407339)の分割
【原出願日】平成15年12月5日(2003.12.5)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】