説明

燃料電池車

【課題】水素の漏れ検知を容易に行うことができる燃料電池車を提供する。
【解決手段】下向きに開口する開口部40aを有し、平面視において燃料電池10の上部を覆うように配置されたガス不透過性材料からなるカバー部材40を備え、カバー部材40の内部空間の最上部に位置する張出部41e内に水素を検知する水素センサ5を設けた。張出部41eは、センタトンネル2に形成された開口10cから突出して形成され、開口10cの周縁部10c1において、シール部材Q1を挟んでカバー部材40がボルト締めされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素の漏れ検知が容易な燃料電池車に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池車では、車室内の床下(フロアパネル下)に燃料電池を配置したものが種々提案されている。例えば、センタトンネル内に燃料電池を収納して、その周辺を自然換気するように構成するとともに、センタトンネル内の燃料電池の上方に水素センサを配置する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−15613号公報(段落0032、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水素センサは、最も高い位置に設けることが合理的であるので、例えば燃料電池よりも上側に空間が必要となる。しかし、このような空間を含めた燃料電池を収納するセンタトンネルの成形が厳しく、複数のパネルを組み合わせた分割構造となっている。このため、水素センサの検知性能を確保するには、パネル同士の接合部分のシール性が重要になり、センタトンネルの工数が非常に多くかかるという問題があった。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、水素の漏れ検知を容易に行うことができる燃料電池車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、燃料電池を車両の床下に配置した燃料電池車において、下向きに開口し、平面視において前記燃料電池の上部を覆うように配置され、ガス不透過性材料からなるカバー部材を備え、前記カバー部材内の最上部に水素を検知する水素センサを設けたことを特徴とする。
【0007】
これによれば、燃料電池の上部をガス不透過性材料からなるカバー部材で覆うことにより、車両の床部に水素漏れに対するシール性を確保する必要がなくなるので、製造工程数の削減やコストの低減に寄与でき、水素漏れの検知を容易に行うことが可能になる。なお、カバー部材内の最上部とは、カバー部材の内側空間の最上部を意味している。
【0008】
つまり、燃料電池などからの漏れ水素は、ガス不透過性材料からなるカバー部材によって受け止められて、カバー部材よりも上側の床部に到達することがないので、床部に対して車外と車室内との間において高いシール性を確保する必要がなくなる。したがって、カバー部材内の最も高い位置に水素センサを設けることで、水素漏れを容易に検知することが可能になる。
【0009】
また、前記カバー部材は、車両の床部に取り付けられることを特徴とする。
【0010】
これによれば、カバー部材を車両の床部に取り付けて、燃料電池に対して仮留めの状態(着脱可能)とすることで、メンテナンス時に燃料電池を車両(車体)から取り外す際にカバー部材を車体に残したままにできるので、メンテナンス毎にカバー部材と車体との間でのシール性について考慮する必要がない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水素の漏れ検知を容易に行うことができる燃料電池車を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の燃料電池車の主要部を示す分解斜視図である。
【図2】燃料電池にカバー部材を取り付けた状態を示し、(a)は上方から見たときの平面図、(b)は側面図である。
【図3】本実施形態の燃料電池車のセンタトンネル内を側面から見たときの断面図である。
【図4】燃料電池およびその補機を示す斜視図である。
【図5】本実施形態の燃料電池車に搭載される燃料電池システムの一例を示す構成図である。
【図6】図3のA−A線における断面図である。
【図7】図3のB−B線における断面図である。
【図8】燃料電池を車体から取り外す際の動作を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図1〜図8を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の燃料電池車(以下、車両と略記する)Vは、上部がカバー部材40で覆われた燃料電池10および燃料電池補機ユニット20が、センタトンネル2内に収納されるように構成されている(図3参照)。なお、センタトンネル2は、運転席と助手席のシート3間(図2参照)において、フロアパネル(床部)1が車室内側に向けて突出し、前後方向に凸条に形成された部分である。
【0014】
センタトンネル2は、例えば、フロアパネル1を含めて鋼板をプレス成型によって形成したものであり、両側面を構成する略台形状の側面部10a,10aと、上面を構成する上面部10bとで構成されている。また、上面部10bは、前方から順に、燃料電池10の前方且つ燃料電池10の高さ方向の略中央に位置する水平面10b1、斜め上方に向かって延びる傾斜面10b2、燃料電池10の上部を覆う水平面10b3、略鉛直下方に延びる鉛直面10b4、および後方に向かって延びる水平面10b5が、互いに連続して形成されている。
【0015】
また、センタトンネル2の水平面10b3の後部には、矩形状の開口10cが床上(車室内)と床下(車外)とを貫通するようにして形成されている。この開口10cの周囲の周縁部10c1には、カバー部材40をセンタトンネル2に取り付けるためのボルトB3(図6参照)が挿通されるボルト挿通孔10eが複数個所に形成されている。
【0016】
また、燃料電池10および燃料電池補機ユニット20は、サブフレーム4上にボルト(図示)を介して固定され、その上部にプロテクタ30を取り付け、さらにその上部をカバー部材40で覆った状態において、サブフレーム4がフロアパネル1に固定されることによって、センタトンネル2内に収容されている。ちなみに、サブフレーム4は、例えば、車両の前後方向に延びる一対のフレーム4a(一方のみ図示)と、左右方向(車幅方向)に延びるフレーム4b,4c,4dとが井桁状に組まれて構成され、サブフレーム4が、フロアパネル1のフレーム1a,1aにボルト(図示せず)を介して着脱可能に固定されている。
【0017】
図2(a)に示すように、カバー部材40は、射出成型などで形成され、上方からの平面視において燃料電池10の上部の全体および燃料電池補機ユニット20の上部のほぼ全体を覆う形状を有している。また、カバー部材40は、図2(a)および(b)に示すように、前記側面部10a,10a(図1参照)に沿って形成された側板41a,41a、前記傾斜面10b2(図1参照)に沿って形成された斜板41b、前記水平面10b3(図1参照)に沿って形成された上板41c、前記鉛直面10b4(図1参照)に沿って形成された後板41d、および前記開口10c(図1参照)から上方に突出し、側面視において略台形状に形成された箱型の張出部41eが組み合わされて、鉛直方向(図示上下方向)の下向きに開口する開口部40a(図2(b)参照)を有する形状に構成されている。
【0018】
なお、カバー部材40は、水素を透過しないガス不透過性材料により形成されている。ガス不透過性材料としては、EVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体)、PVA(ポリビニルアルコール)、PP(ポリプロピレン)などの合成樹脂から適宜選択することができる。
【0019】
また、側板41aには、上下方向に間隔を空けて前後方向に延びる一対の突条のリブ41a1,41a2が形成されている。このリブ41a1,41a2は、側板41aの前端部から後端部にかけて形成され、前端部から略中央部まで上向きに傾斜して形成され、略中央部から後端部にかけて下向きに傾斜して形成されている(図2(b)参照)。このリブ41a1とリブ41a2とで挟まれた領域が通気路Lとして構成され、漏れ水素を積極的に後方へ通流できるようになっている。また、カバー部材40の後端の高さ(上下方向での位置)が前端の高さ(上下方向の位置)よりも寸法H分高くなるように構成されることで、漏れ水素をカバー部材40よりも後方へ自然換気し易くなる。
【0020】
また、カバー部材40の張出部41eの周囲には、カバー部材40をセンタトンネル2に固定するためのボルトB3(図6、図7参照)が挿通されるボルト挿通孔41fが、前記ボルト挿通孔10eと対応する位置に形成されている。
【0021】
図3に示すように、カバー部材40の上板41cの内壁面(天井部分)には、嵌合突起41gが下向きに形成されている。また、この嵌合突起41gは、左右方向に間隔を空けて一対設けられている(図1参照)。なお、嵌合突起41gは、プロテクタ30に形成された嵌合孔30sと対向する位置に形成されている。
【0022】
また、カバー部材40の後板41dの内面には、前方に突出する鍔部41hが形成されている。なお、鍔部41hは、後記するプロテクタ30の上面が当接するものであれば、複数の鍔部が分割して形成されて左右方向(紙面垂直方向)に間隔を空けて形成されたものであってもよく、あるいは左右方向に連続して形成されたものであってもよく、適宜選択することができる。
【0023】
また、カバー部材40の後板41dの外面には、後方へ突出する鍔部41iが車幅方向(左右方向)に延びて形成されている。すなわち、この鍔部41iは、張出部41eの周囲の周縁部41c1(図1参照)と同一面になるように形成されている。
【0024】
なお、図3に示すように、サブフレーム4には、燃料電池10の前方にコンタクタ6が載置され、サブフレーム4の着脱に応じて、燃料電池10などとともに着脱されるようになっている。なお、コンタクタ6は、後記するECU19の制御によって、燃料電池10と外部負荷(走行モータなど)とを接続、遮断する電磁開閉器である。
【0025】
また、センタトンネル2の前方は、走行モータやトランスミッションなどが収容されるモータルームMRと連通しており、車両Vの前方からの走行風(空気)、ラジエータファンによる風(空気)が、センタトンネル2の前方から後方へ流れるようになっている。
【0026】
図4に示すように、燃料電池10は、複数の単セル11が厚み方向に積層され、単セル11の積層方向(前後方向)の両端が一対の金属製のエンドプレート11a(一方のみ図示)で挟持されて構成されている。さらに積層された単セル11の上面、下面、左側面および右側面が金属板からなるサイドプレート11bによって覆われ、エンドプレート11aがサイドプレート11cによって図示しないヒンジ部を介して保持されている。
【0027】
各単セル11は、固体高分子からなる電解質膜がアノードとカソードとで挟持され、さらにその外側が、燃料ガス(水素、反応ガス)が流れるアノード流路2a及び酸化ガス(空気、反応ガス)が流れるカソード流路2bが形成された一対のセパレータによって挟まれて構成されている。
【0028】
また、燃料電池10は、一方(後方)のエンドプレート11aに、水素を導入する水素導入部、空気を導入する空気導入部、水素オフガスを導出する水素オフガス導出部、空気オフガスを導出する空気オフガス導出部を備え、これら水素導入部、空気導入部、水素オフガス導出部および空気オフガス導出部が、燃料電池補機ユニット20と接続されている。なお、図示していないが、前記セパレータには、燃料電池10を冷却する冷媒が通流する冷媒流路が形成され、この冷媒流路と、モータルームMR内の前端部に配置されたラジエータとの間で図示しない配管を介して冷媒が循環するように構成されている。
【0029】
例えば、図5に示す燃料電池システムF1では、燃料電池10のアノード流路2aの入口(水素導入部)が、高圧水素タンク12と、配管a1、遮断弁13、配管a2、エゼクタ14および配管a3を介して接続されている。アノード流路2aの出口(水素導出部)は、配管a4を介してエゼクタ14の戻りポートと接続されている。また、配管a4には、配管a5を介してパージ弁15と接続されている。
【0030】
なお、遮断弁13およびパージ弁15は、電磁作動式のものであり、ECU19によって適宜開閉制御される。また、パージ弁15は、例えば、定期的に開弁され、アノード循環系(配管a3,a4、アノード流路2a)に残留する不純物(窒素、生成水)を外部に排出するようになっている。
【0031】
また、燃料電池10のカソード流路2bの入口(空気導入部)は、エアコンプレッサ16と、配管c1、加湿器17、配管c2を介して接続されている。カソード流路2bの出口(空気導出部)は、配管c3、加湿器17、配管c4を介して背圧弁18と接続されている。
【0032】
エアコンプレッサ16は、モータで駆動され、カソードに圧縮した空気を送り込む機械式の過給器であり、ECU19によってモータの回転速度が制御される。加湿器17は、例えば、水透過性を有する複数の中空糸膜を束ねた中空糸膜束が収容され、各中空糸膜の内側と外側の一方にエアコンプレッサ16からの低湿潤な(乾燥した)空気が、他方に燃料電池10のカソードから排出された空気オフガスに含まれる水蒸気(高湿潤な空気)によって加湿されるようになっている。背圧弁18は、ECU19によってカソードに供給される空気の圧力(カソード圧)を制御する。例えば、アクセルペダルの踏み込み量(スロットル開度)に応じてカソード圧が制御される。
【0033】
なお、ECU19は、水素センサ5と接続され、例えば、水素センサ5から得られる検出値が所定の水素濃度を超えたと判断したときに、運転者に視覚的および/または聴覚的な警告を発したり、燃料電池10の発電を停止して車両Vを停止するように制御する。
【0034】
なお、水素センサ5は、カバー部材40内の最も高い位置である張出部41eに図示しないブラケットなどを介して取り付けられている。この水素センサ5は、燃料電池10自体、燃料電池10の周辺の配管の接続部分などからの水素漏れを検知するものであり、例えば、接触燃焼式や半導体式のセンサで構成されている。
【0035】
燃料電池補機ユニット20は、例えば、アルミニウム合金などの鋳物で形成された加湿器17(図4参照)のハウジング21が燃料電池補機ユニット20の外観をなしている。このハウジング21は、図4に示すように、加湿器17(図5参照)の中空糸膜束の主要部分が収納される下部ハウジング21a、加湿器17で加湿された空気を燃料電池10に導入する上部ハウジング21bなどを有している。
【0036】
下部ハウジング21aは、複数のブラケット21c,21c,21c(一部不図示)を介してサブフレーム4にボルト(不図示)を用いて固定されている。上部ハウジング21bの上端部には、後記するプロテクタ30をボルトB2で固定するためのボス21b1,21b1が左右に間隔を空けて形成されている。
【0037】
なお、ハウジング21は、加湿器17のハウジングに限定されるものではなく、例えば、加湿器17と背圧弁18の各ハウジングが組み合わされたものであってもよく、加湿器17、背圧弁18、エゼクタ14の各ハウジングが組み合わされたものであってもよく、あるいは加湿器17、背圧弁18、エゼクタ14、パージ弁15の各ハウジングが組み合わされたものであってもよい。
【0038】
図4に示すように、プロテクタ30は、燃料電池10を保護する補強部材であり、正面視または断面視において略コ字状に形成され、燃料電池10の後部の左側面および右側面の上側の一部と上面全体を覆うように形成されている。また、プロテクタ30は、燃料電池10よりも後方に延びて形成され、燃料電池補機ユニット20の前部を覆うように形成されている。このように、プロテクタ30の断面を略コ字状としたことにより、燃料電池10の上部から容易に組み付けることが可能になっている。
【0039】
プロテクタ30は、左プレート31と、右プレート32と、固定部材33とで構成されている。
【0040】
左プレート31は、断面L字型に形成された外パネル31aおよび内パネル31bと、複数のリブ31cとで構成され、燃料電池10および燃料電池補機ユニット20の左側の上面および側面に沿って配置されている。また、外パネル31aと内パネル31bとは所定の間隔を空けて配置され、リブ31cを介して外パネル31aと内パネル31bとが接合されている。
【0041】
また、隣り合うリブ31c,31cと外パネル31aと内パネル31bとで複数の中空部Sが形成され、各中空部Sは、プロテクタ30の前端から後端にかけて連通するように形成されている。なお、側面衝突によってプロテクタ30がシート3(例えば、シートバック)から荷重(シート荷重)を受けてプロテクタ30まで及んだときに、プロテクタ30の中空部Sが潰れることによって、シート荷重を吸収できるようになっている。
【0042】
また、外パネル31aの側面後端の下部には、ボルトB1が挿通される開口31eが形成され、内パネル31bには、開口31eと対向する位置にボルトB1のねじ部が挿通される挿通孔(不図示)が形成されている。これにより、ボルトB1を、開口31eから挿通孔を介して固定部材33のねじ孔(不図示)に螺着したときに、ボルトB1の頭部が中空部S内に収容されるようになっている。
【0043】
また、外パネル31aの上面には、ボルトB2が挿通される開口31fが形成され、内パネル31bには、開口31fと対向する位置にボルトB2のねじ部が挿通される挿通孔(不図示)が形成されている。これにより、ボルトB2を、開口31fから挿通孔を介してボス21b1に螺着したときに、ボルトB2の頭部が中空部S内に収容されるようになっている。
【0044】
また、内パネル31bの側面には、前後方向に延びる長孔(いわゆる、だるま穴)31i,31jが、前後方向に間隔を空けて貫通して形成されている。この長孔31i,31jは、燃料電池10のエンドプレート11aに固定されたスタッド51と、サイドプレート11cに固定されたスタッド52とに対応する位置に設けられている。また、長孔31i,31jの前端部分は、スタッド51,52のヘッド部が挿通可能な大きさで形成され、それよりも後方がスタッド51,52の軸部がスライド可能となる幅で形成されている。すなわち、スタッド51,52のヘッド部を長孔31i,31jの前端部に挿通した後、プロテクタ30を前方にスライドさせてスタッド51,52の軸部を長孔31i,31j内を摺動させることにより、プロテクタ30が燃料電池10に保持されるようになっている。
【0045】
なお、右プレート32についても、左プレート31と同様にしてほぼ対称に形成され、断面L字型の外パネル32aおよび内パネル32bと、複数のリブ32cとで構成されている。また、右プレート32は、左プレート31と上面の一部が重ねられることにより連結されている。このように、プロテクタ30をスライドさせて燃料電池10に係止されるようにしたことで、単セル11を積層したときの積層方向(前後方向)のバラツキを吸収することができ、プロテクタ30を燃料電池10に確実に保持できるようになる。
【0046】
このように形成されたプロテクタ30は、左右の側面において、両側からボルトB1,B1を用いて下部ハウジング20a1に後記する固定部材33を介して固定され、上面において、ボルトB2,B2を介して上部ハウジング20a2に固定される。このように、プロテクタ30は、鋳物などのハウジング21からなる高剛性の部分にボルトB1,B2を介して固定されるようになっている。
【0047】
前記したカバー部材40は、燃料電池10および燃料電池補機ユニット20の上方から被せるようにして配置される(図2参照)。このとき、図6に示すように、カバー部材40に形成された嵌合突起41gがプロテクタ30に形成された嵌合孔30sに嵌合するとともに、プロテクタ30の上面が鍔部41hに当接することにより(図3参照)、カバー部材40の前後方向の位置や高さが規定される。
【0048】
また、図6に示すように、カバー部材40の側面41aの下端は、内方(内側)に向かって下方に傾斜する鉤状の係合部41a3が形成されている。この係合部41a3は、プロテクタ30の左右両側の傾斜面からなる下端部31s(リブ31c)と係合することで、嵌合突起41gと嵌合孔30sとが嵌合した状態において、カバー部材40とプロテクタ30とが仮留めされる(着脱可能に保持される)。
【0049】
そして、カバー部材40をプロテクタ30に取り付けた(仮留めした)状態において、燃料電池10等を車両Vの下方からセンタトンネル2内に収容し(図3参照)、サブフレーム4をフロアパネル1に固定する。このとき、図7に示すように、カバー部材40の張出部41eがセンタトンネル2に形成された開口10cから突出するが、開口10cの周縁部10c1の下面(内面)は、カバー部材40の周縁部41c1の上面と、シール部材Q1を挟んでボルトB3、ナットNおよびワッシャWを用いて固定されるので、開口10cにおける車内と車外との間における気密性(シール性)が確保される。このように、開口10cから張出部41eを突出させる構成にしたとしても、ボルトB3やナットNなどでカバー部材40を確実に締めることにより、シールの状態を目視により容易に確認できる。
【0050】
すなわち、ボルトB3は、先端にナットNと螺合するねじ部b1と、基端にねじ部より大径の軸部b2とを有して構成されている。ボルトB3の軸部b2がワッシャWを介してカバー部材40のボルト挿通孔41fに挿通され、ねじ部b1がセンタトンネル2のボルト挿通孔10eに挿通され、ねじ部b1とナットNとが螺合することによって、カバー部材40がセンタトンネル2に固定される。
【0051】
なお、ボルトB3およびワッシャWは、カバー部材40をプロテクタ30に取り付ける前にボルト挿通孔41fに、ボルトB3のねじ部が上向きとなるように取り付けられる。また、シール部材Q1は、例えば四角枠状に形成され(図1参照)、張出部41eの周囲(周縁部41c1および鍔部41i)に、カバー部材40を取り付けた燃料電池10等とともにセンタトンネル2に収容する前に配設される。
【0052】
これにより、カバー部材40の張出部41eをセンタトンネル2に形成した開口10cから突出させる構成にしたとしても、シール部材Q1を挟んでボルトB3等で固定することにより、漏れ水素が開口10cを通って車室内に流入するのを防止できるようになっている。
【0053】
また、センタトンネル2内において、カバー部材40の先端部分には、シール部材Q2が設けられており、センタトンネル2の傾斜面10b2とカバー部材40の斜板41bとの間が密閉(シール)されるようになっている(図3参照)。これにより、燃料電池10の前方から、センタトンネル2の傾斜面10b2および水平面10b3と、カバー部材40の斜板41bおよび上板41cとの間の隙間R1に漏れ水素が溜らないようになっている。
【0054】
また、カバー部材40の側面に形成された上側のリブ41a1には、リブ41a1に沿ってシール部材Q3が設けられており、カバー部材40がセンタトンネル2内に収容されたときに、センタトンネル2とリブ41a1との間が密閉(シール)されるようになっている。これにより、漏れ水素がリブ41a1よりも上側の隙間R2内に流入しないようになっている。また、リブ41a1とリブ41a2とで前後方向に延びる通気路Lを形成したので、漏れ水素を通気路Lを介して後方へ積極的に導くことができ、車両Vの前部のモータルームMR内への流入を抑えることができる。その結果、カバー部材40を不必要に大きく形成しなくても換気能力が高められるので、カバー部材40の小型化が可能となる。
【0055】
なお、シール部材Q1〜Q3に用いられる材質としては、天然ゴムの他、シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴムなどの合成ゴムなどから適宜選択できる。
【0056】
また、プロテクタ30は、カバー部材40と仮留めされているので、図8に示すように、メンテナンス時など燃料電池10等を車両Vから取り外す際、燃料電池10等を下降させたときに、カバー部材40の側板41aが外側に撓み変形することで、プロテクタ30の左右両側の下端部31sとカバー部材40の係合部41a3との係合状態が解除され、燃料電池10等を車両V(車体)から取り外すことが可能になる。なお、このとき、プロテクタ30はカバー部材40との間で仮留めされ、カバー部材40はボルトB3およびナットNなどでセンタトンネル2に固定されているので、プロテクタ30とともに燃料電池10等を取り外したときに、カバー部材40がセンタトンネル2に残るようになっている。
【0057】
以上説明したように、本実施形態の燃料電池車Vによれば、燃料電池10をセンタトンネル2内(車両Vの床下)に配置するとともに、ガス不透過性材料で形成して下向きに開口するカバー部材40を、上方からの平面視において燃料電池10の上部全体を覆うように配置したので(図2(a)参照)、燃料電池10などから水素漏れが発生したとしても、カバー部材40によって車室内への水素の流入を防止でき、センタトンネル2のパネル同士の接合部分のシール性を高精度なものとする必要がなくなる。このように、車両Vのセンタトンネル2(床部)とは独立したカバー部材40によって燃料電池10を覆うので、センタトンネル2(床部)の製造工数の削減やコストの低減が可能になる。よって、水素センサ5を収容する部分(張出部41e)を含めてカバー部材40で一体に覆うので、水素漏れの検知が容易になる。
【0058】
また、本実施形態によれば、カバー部材40が車両Vのセンタトンネル2(床部)に取り付けられているので、メンテナンス時などにおいて燃料電池10等を車両Vから脱着する毎に、カバー部材40とセンタトンネル2とのシール性を考慮する必要がなくなるので、取扱性を向上できる。
【0059】
なお、本実施形態では、センタトンネル2に開口10cを形成して、カバー部材40の張出部41eを開口10cから突出させる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、開口10cを設けずに、カバー部材40の外形状に沿ってセンタトンネル2を構成したものでもよい。これによっても、センタトンネル2の気密性(シール性)を高精度なものとする必要がない。
【0060】
なお、本実施形態では、プロテクタ30を燃料電池10および燃料電池補機ユニット20に固定した場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、燃料電池10や燃料電池補機ユニット20にプロテクタ30をボルトB1,B2を用いて固定せずに、プロテクタ30をカバー部材40に仮留めのまま保持させる構成であってもよい。この場合には、メンテナンス時に燃料電池10を車両Vから降ろしたときに、プロテクタ30がカバー部材40、つまりセンタトンネル2側(車体側)に残るようになる。
【符号の説明】
【0061】
1 フロアパネル
2 センタトンネル
3 シート
4 サブフレーム
5 水素センサ
10 燃料電池
10c 開口
20 燃料電池補機ユニット
30 プロテクタ
30s 嵌合孔
40 カバー部材
41a 側板
41b 斜板
41c 上板
41d 後板
41e 張出部
41f ボルト挿通孔
41a1,41a2 リブ
41g 嵌合突起
L 通気路
Q1〜Q3 シール部材
V 燃料電池車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池を車両の床下に配置した燃料電池車において、
下向きに開口し、平面視において前記燃料電池の上部を覆うように配置され、ガス不透過性材料からなるカバー部材を備え、
前記カバー部材内の最上部に水素を検知する水素センサを設けたことを特徴とする燃料電池車。
【請求項2】
前記カバー部材は、車両の床部に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−79347(P2011−79347A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230705(P2009−230705)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】