燃焼条件推定装置および方法
【課題】運転中の燃焼装置の負荷に応じた最適な燃焼条件を容易に推定できるようにする。
【解決手段】燃焼条件推定装置1の記憶部14により、予め燃焼装置から取得した計測データに基づき生成された、ボイラ2の運転状態を元にボイラ2から排出されるCOおよびO2を推定する推定モデルと、その運転状態を元にボイラ2の運転効率を推定する推定モデルとを記憶しておき、最適条件推定手段12により、これら推定モデルから生成した評価指標に基づき、ボイラ2での最適燃焼条件7を推定する。
【解決手段】燃焼条件推定装置1の記憶部14により、予め燃焼装置から取得した計測データに基づき生成された、ボイラ2の運転状態を元にボイラ2から排出されるCOおよびO2を推定する推定モデルと、その運転状態を元にボイラ2の運転効率を推定する推定モデルとを記憶しておき、最適条件推定手段12により、これら推定モデルから生成した評価指標に基づき、ボイラ2での最適燃焼条件7を推定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼制御技術に関し、特にボイラなどの燃焼装置から得られた計測データに基づき、その燃焼装置における最適燃焼条件を推定する燃焼条件推定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラなどの燃焼装置での燃焼状態を制御する燃焼制御装置において、燃料と空気とを混合させて燃焼させた際に発生するCOなどの有害な排出ガスの削減は、近年の環境問題への対応のため重要な課題となっている。一方、省エネルギーの観点からは、少ない燃料で効率よく運転して所望の熱量を得る必要もある。
【0003】
通常、ボイラの燃焼条件は、燃料と空気との混合比すなわち空燃比(燃料に対する空気の質量比)により制御できる。また、従来より、この燃焼条件については、供給するO2の濃度と排出ガスに含まれるCOやCO2の濃度との関係を利用することで、CO濃度を抑制できる燃焼条件が得られることがわかっている。
【0004】
図13は、一般的なボイラでの燃焼特性を示すグラフであり、横軸は空燃比を示し、縦軸は排出ガス中のCO2およびO2の濃度を示している(例えば、非特許文献1など参照)。このグラフにおいて、特性91は排出ガス中のCO2濃度であり、空燃比を上昇させて一定の燃料(重油)に対する空気の量を増やしていくと、そのCO2濃度が低下する傾向にあり、CO濃度もこれに準ずる。なお、特性92で示されるO2濃度は、空燃比の上昇に応じてその濃度も上昇する。また、運転効率(ボイラ効率)は、一定の燃料に対する空気の量すなわちO2の供給量を増やしていくと、ある空燃比を頂点として上昇から下降に転じている。したがって、CO2濃度やCO濃度が基準値以下であってかつ運転効率が良好な空燃比が最適な燃焼条件となる。
【0005】
なお、出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を出願時までに発見するには至らなかった。
【特許文献1】特開2002−183111号公報
【特許文献2】特許第2632117号公報
【非特許文献1】海老原熊雄、「熱管理技術講義」、昭和54年4月25日発行、丸善株式会社、pp.108-111
【非特許文献2】西川,三宮,茨木、「岩波講座情報科学-19 最適化」、1982年9月10日発行、岩波書店、pp.162-171
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、燃焼装置の燃焼特性は、その負荷に応じて変動する。例えば、ボイラの場合、必要とする蒸気の流量や供給する水の温度などのボイラ負荷に応じて燃焼特性が変動する。この際、排出ガス中のCOおよびCO2は、同一空燃比であっても、ボイラ負荷が大きくなるに連れて、その濃度が上昇する。
【0007】
従来、このようなボイラなどの燃焼装置では、オペレータ操作により所望の空燃比を設定する機能を有しているが、前述した負荷変動に対する安全を見込んで、負荷変動が生じた場合でもCO濃度を基準値以下に抑制できるように空燃比を高めに設定するものとなっていた。このため、CO濃度は抑制できるものの運転効率が悪く、結果として多くの燃料を無駄に使用し、CO2排出量も多くなるという問題点があった。
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、運転中の燃焼装置の負荷に応じた最適な燃焼条件を容易に推定できる燃焼条件推定装置および方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明にかかる燃焼条件推定装置は、燃料を空気と混合して燃焼させる燃焼装置からその運転状態を示す計測データを取得し、燃焼装置への燃料と空気の供給量を示す最適燃焼条件を計測データに基づいて推定する燃焼条件推定装置であって、予め燃焼装置から取得した計測データに基づき生成された、燃焼装置の排出ガスに含まれるCOについて任意の燃焼条件に応じたCO濃度を推定するCO濃度推定モデルと、燃焼装置の排出ガスに含まれるO2について任意の燃焼条件に応じたO2濃度を推定するO2濃度推定モデルと、燃焼装置の運転効率について任意の燃焼条件に応じた運転効率を推定する運転効率推定モデルとを記憶する記憶手段と、これらCO濃度推定モデル、O2濃度推定モデル、および運転効率推定モデルから生成した評価指標に基づき燃焼装置における所望の最適燃焼条件を推定する最適条件推定手段とを備えている。
【0009】
この際、推定モデルごとに、予め燃焼装置からの計測データを元にして生成した、当該推定モデルの入力パラメータおよび出力パラメータからなる複数の組を、当該推定モデルの推定モデル生成用データベースとして記憶するデータベース部と、推定モデル用データベースの各組から当該推定モデルを生成する推定モデル生成手段とをさらに備えてもよい。
【0010】
また、各推定モデルは、計測データのうち、燃焼装置に供給される燃料の状態を示す燃料状態量と、燃料装置に供給される空気の状態を示す空気状態量と、燃焼装置の動作状態を示す動作状態量と、燃焼装置にかかる負荷の状態を示す負荷状態量とから、CO濃度、O2濃度、および運転効率をそれそれ推定するモデルから構成してもよい。
【0011】
また、本発明にかかる燃焼条件推定方法は、燃料を空気と混合して燃焼させる燃焼装置からその運転状態を示す計測データを取得し、燃焼装置への燃料と空気の供給量を示す最適燃焼条件を計測データに基づいて推定する処理装置で用いられる燃焼条件推定方法であって、予め燃焼装置から取得した計測データに基づき生成された、燃焼装置の排出ガスに含まれるCOについて任意の燃焼条件に応じたCO濃度を推定するCO濃度推定モデルと、燃焼装置の排出ガスに含まれるO2について任意の燃焼条件に応じたO2濃度を推定するO2濃度推定モデルと、燃焼装置の運転効率について任意の燃焼条件に応じた運転効率を推定する運転効率推定モデルとを記憶部で記憶するステップと、これらCO濃度推定モデル、O2濃度推定モデル、および運転効率推定モデルから生成した評価指標に基づき燃焼装置における所望の最適燃焼条件を推定する最適条件推定ステップとを備えている。
【0012】
この際、推定モデルごとに、予め燃焼装置からの計測データを元にして生成した、当該推定モデルの入力パラメータおよび出力パラメータからなる複数の組を、当該推定モデルの推定モデル生成用データベースとしてデータベース部で記憶するステップと、推定モデル用データベースの各組から当該推定モデルを生成するステップとをさらに備えてもよい。
【0013】
また、各推定モデルは、計測データのうち、燃焼装置に供給される燃料の状態を示す燃料状態量と、燃料装置に供給される空気の状態を示す空気状態量と、燃焼装置の動作状態を示す動作状態量と、燃焼装置にかかる負荷の状態を示す負荷状態量とから、CO濃度、O2濃度、および運転効率をそれそれ推定するモデルから構成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、予め燃焼装置から取得した計測データに基づき生成された、燃焼装置の運転状態を元にその燃焼装置から排出されるCOおよびO2を推定する推定モデルと、その運転状態を元に燃焼装置の運転効率を推定する推定モデルとを記憶部に記憶しておき、最適条件推定手段により、これら推定モデルから生成した評価指標に基づき、燃焼装置での最適燃焼条件を推定するようにしたので、運転中の燃焼装置の負荷に応じた最適な燃焼条件を容易に推定できる。
【0015】
これにより、燃焼装置からの排出ガス発生を抑制するために、過剰に供給していた空気を少なくすることができ、余分な空気を燃焼装置へ供給する必要がなくなる。その結果、単位燃料当たりの発生蒸気量すなわち運転効率を向上させることができ、燃焼時間の短縮、およびCO2排出量の削減が可能となる。
また、一般的には、燃焼装置へ供給する空気量の削減によりCOの濃度が上昇する傾向があるものの、本実施の形態によれば、燃焼条件変更によるCO濃度の変化を適切に予測できることから、例えばCO濃度が基準値以下となる範囲内で運転効率の改善を行うなど、CO濃度の抑制と運転効率の改善を並行して実現することができ、環境問題と省エネルギーとを両立させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置の構成を示すブロック図である。
この燃焼条件推定装置1は、ボイラ2などの燃焼装置から、各種計測器やセンサからなる計測システム3で得られた計測データ5に基づいて、ボイラ2に供給する燃料流量および空気流量、あるいはこれら流量のいずれか一方と空燃比とで示される最適な燃焼条件7を推定する装置である。
【0017】
本実施の形態にかかる燃焼条件推定装置1は、予め燃焼装置から取得した計測データに基づき生成された、計測データ5が示す運転状態を元にボイラ2から排出されるCOおよびO2を推定する推定モデルと、その運転状態を元にボイラ2の運転効率を推定する推定モデルと記憶部に記憶しておき、これら推定モデルから生成した評価指標に基づき、ボイラ2での最適燃焼条件7を推定するものである。
【0018】
[燃焼条件推定装置]
次に、図1〜図3を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置の構成について詳細に説明する。図2は、推定モデル生成手段の構成を示すブロック図である。図3は、最適条件推定手段の構成を示すブロック図である。
この燃焼条件推定装置1は、全体としてコンピュータなどの情報処理装置からなり、推定モデル生成手段11、最適条件推定手段12、データベース部13、記憶部14、および計測データ取得部15を備えている。
【0019】
このうち、推定モデル生成手段11、最適条件推定手段12、および計測データ取得部15については、情報処理部で実現してもよく、所定の情報処理を行う専用の論理回路で実現してもよい。情報処理部は、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有し、記憶部14に格納されているプログラム(図示せず)を読み込んで実行することにより、上記ハードウェアとプログラムとを協働させて各種機能手段を実現する。
【0020】
またデータベース部13は、ハードディスクやメモリなどからなり、情報処理部での処理に用いる各種データを記憶する記憶装置である。このデータベース部13で記憶する主なデータとしては、CO濃度推定モデル用データベース13A、O2濃度推定モデル用データベース13B、および運転効率推定モデル用データベース13Cがある。
これらデータベースは、後述するように、予めボイラ2から取得された計測データに基づき生成された、当該推定モデルでの入力パラメータと出力パラメータとからなる複数の組から構成されており、各推定モデルの生成に先だって予め計測データ取得部15により生成してデータベース部13に格納しておく。
【0021】
記憶部14は、ハードディスクやメモリなどからなり、情報処理部での処理に用いる各種データやプログラムを記憶する記憶装置であり、データベース部13と同一の記憶装置で構成してもよい。この記憶部14で記憶する主なデータとしては、CO濃度推定モデルf1(14A)、O2濃度推定モデルf2(14B)、および運転効率推定モデルf3(14C)がある。
これら推定モデルは、ボイラ2の排出ガスに含まれるCOやO2、およびボイラ2の運転効率について任意の燃焼条件に応じたCO濃度、O2濃度、および運転効率をそれぞれ推定するモデルである。これら推定モデルは、最適燃焼条件7の推定に先立って予め推定モデル生成手段11により生成して記憶部14に格納しておく。
【0022】
推定モデル生成手段11は、データベース部13のCO濃度推定モデル用データベース13A、O2濃度推定モデル用データベース13B、および運転効率推定モデル用データベース13Cをそれぞれ参照して、CO濃度推定モデルf1(14A)、O2濃度推定モデルf2(14B)、および運転効率推定モデルf3(14C)を生成する機能を有している。これら推定モデルは、計測データ5のうちのいずれか複数を入力パラメータとして、それぞれの値を推定する関数式やデータ集合などからなる公知の相関モデルである。
【0023】
推定モデル生成手段11は、CO濃度推定モデル生成手段11A、O2濃度推定モデル生成手段11B、および運転効率推定モデル生成手段11Cを備えている。
CO濃度推定モデル生成手段11Aは、計測データ5に基づいてデータベース部13のCO濃度推定モデル用データベース13Aを参照し、当該計測データ5が示す運転状態を元に任意の燃焼条件でボイラ2から排出されるCOを推定するためのCO濃度推定モデルf1(14A)を生成する機能を有している。
【0024】
O2濃度推定モデル生成手段11Bは、計測データ5に基づいてデータベース部13のO2濃度推定モデル用データベース13Bを参照し、当該計測データ5が示す運転状態を元に任意の燃焼条件でボイラ2から排出されるO2を推定するためのO2濃度推定モデルf2(14B)を生成する機能を有している。
運転効率推定モデル生成手段11Cは、計測データ5に基づいてデータベース部13の運転効率推定モデル用データベース13Cを参照し、当該計測データ5が示す運転状態におけるボイラ2の運転効率を推定するための運転効率推定モデルf3(14C)を生成する機能を有している。
【0025】
これら推定モデルは、それぞれの推定モデル生成手段11により、当該推定モデルに対応するデータベースの入力パラメータと出力パラメータとからなる各組に基づいて、例えばRSM−S(Response Surface Method by Spline:多変数スプラインによる応答曲面法/例えば特許文献1など参照)などの推論モデル生成手法により生成される。
【0026】
計測データ取得部15は、ボイラ2などの燃焼装置から、各種計測器やセンサからなる計測システム3を介して、ボイラ2の運転状態を示す各種計測データ5を取得する機能と、これら計測データ5から各推定モデルごとにその入力パラメータと出力パラメータとの組を抽出して各モデル生成用データベース13A〜13Cを生成する機能と、最適燃焼条件7の推定動作時には、新たに取得した計測データ5を最適条件推定手段12へ出力する機能とを有している。
各モデル生成用データベースを生成する際、計測データ取得部15は計測データ5のうち、例えば燃料状態量5A、空気状態量5B、動作状態量5C、および負荷状態量5Dから各モデル生成用データベースを生成する。
【0027】
燃料状態量5Aは、ボイラ2へ供給される燃料の燃料流量Qfなど、燃料の状態を示す計測データである。
空気状態量5Bは、ボイラ2へ供給される空気の空気流量Qaや空気湿度Hなど、空気の状態を示す計測データである。
動作状態量5Cは、ボイラ2の炉内温度Tやボイラ2へ供給されて蒸気となる水の給水温度Twなど、ボイラ2の動作状態を示す計測データである。
負荷状態量5Dは、ボイラ2から負荷側へ供給される蒸気の蒸気温度Ts、蒸気圧力Ps、蒸気流量Qs、CO濃度Cco、およびO2濃度など、ボイラ2にかかる負荷の状態を示す計測データである。
【0028】
最適条件推定手段12は、評価指標生成手段12A、最適条件探索手段12B、および探索条件取得手段12Cを備えている。
評価指標生成手段12Aは、記憶部14から推定モデル生成手段11で生成されたCO濃度推定モデルf1、O2濃度推定モデルf2、および運転効率推定モデルf3を取得し、計測データ取得部15からの計測データ5に基づいて、これら推定モデルf1,f2,f3を合成した評価指標16すなわちD=g(f1,f2,f3)を生成する機能を有している。
【0029】
この評価指標16としては、例えば多目的最適化問題でのPareto最適解の探索において広く用いられている重みパラメータ法やリグレット関数、例えば最適化したいCO濃度、O2濃度、あるいは運転効率の各項目における理想値との距離を示す距離関数などを用いた公知の評価手法を適用できる(非特許文献2など参照)。
【0030】
最適条件探索手段12Bは、計測データ取得部15で新たに取得された計測データ5や所定の探索条件6に基づいて、評価指標生成手段12Aで生成された評価指標16から最適燃焼条件7を探索して出力する機能を有している。この最適条件探索処理については、例えば非線形計画問題において広く用いられている制約条件付きのNewton法や準Newton法などの公知の手法を適用できる。
【0031】
探索条件取得手段12Cは、予め設定入力された探索条件6を取得して、評価指標生成手段12Aおよび最適条件探索手段12Bへ出力する機能を有している。
この探索条件6の主な条件としては、最適化希望条件および探索制約条件がある。最適化希望条件は、例えば「COがx以下の範囲のもとでO2を最小化させ運転効率を最大化させる」など、いずれの推定モデルを重視させるかを指示する条件である。探索制約条件は、「燃料流量50〜60%で空気流量50〜100%の範囲」など、最適条件を探索する範囲を指示する条件である。
【0032】
[計測システム]
次に、図4を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置で用いられる計測システムについて説明する。図4は、本発明の第1の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置1で用いられる計測システム3の構成例を示す計装図である。
この計測システム3は、ボイラ2およびその周辺に設置された各種計測器やセンサから構成されている。
【0033】
ボイラ2は、炉21に供給された重油、軽油、石炭、ガスなどの燃料22と空気23とを混合させて燃焼させ、その熱でボイラ2に供給された水24を加熱し、蒸気25を生成して負荷側に供給するとともに、燃焼により発生した排出ガス26を炉21の外部へ排出する燃焼装置である。負荷側のシステムでは、この蒸気25を発電用タービンの駆動や、ビル設備の空調などに用いる。
【0034】
計測システム3は、主な計測器およびセンサとして、燃料流量計30、空気流量計31、空気湿度計32、給水温度計33、炉内温度計34、蒸気温度計35、蒸気圧力計36、蒸気流量計37、COセンサ38、およびO2センサ39を有している。
燃料流量計30は、炉21へ供給される燃料22の流量Qfを計測する流量計である。空気流量計31は、炉21へ供給される空気23の流量Qaを計測する流量計である。空気湿度計32は、炉21へ供給される空気23の湿度Hを計測する湿度センサである。
【0035】
給水温度計33は、ボイラ2へ供給される水24の流量Qwを計測する流量計である。炉内温度計34は、炉21内の温度Tを計測する温度計である。蒸気温度計35は、ボイラ2から負荷側へ供給される蒸気25の温度Tsを計測する温度計である。蒸気圧力計36は、ボイラ2から負荷側へ供給される蒸気25の圧力Psを計測する圧力計である。蒸気流量計37は、ボイラ2から負荷側へ供給される蒸気25の流量Qsを計測する流量計である。
COセンサ38は、炉21の外部へ排出される排出ガス26に含まれるCOの濃度Ccoを検出するセンサである。O2センサ39は、排出ガス26に含まれるO2の濃度Co2を検出するセンサである。
【0036】
これら計測器やセンサで取得された計測データ5のうち、燃料流量Qfは、燃料状態量5Aとして燃焼条件推定装置1へ出力され、空気流量Qaおよび空気湿度Hは、空気状態量5Bとして燃焼条件推定装置1へ出力される。また、給水温度Twおよび炉内温度Tは、動作状態量5Cとして燃焼条件推定装置1へ出力され、蒸気温度Ts、蒸気圧力Ps、および蒸気流量Qsは、負荷状態量5Dとして燃焼条件推定装置1へ出力される。
【0037】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図5を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置の動作について説明する。図5は、本発明の第1の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置での燃焼条件推定処理を示すフローチャートである。
燃焼条件推定装置1は、新たな計測データ5の入力、オペレータからの指示、あるいは所定間隔ごとに、情報処理部により、図5の燃焼条件推定処理を実行する。ここでは、CO濃度推定モデルf1(14A)、O2濃度推定モデルf2(14B)、および運転効率推定モデルf3(14C)が、推定モデル生成手段11に予め生成されて、記憶部14に格納されているものとする。
【0038】
情報処理部は、まず、計測データ取得部15により、運転中のボイラ2から計測システム3を介して新たな計測データ5を取得し、最適条件推定手段12へ出力する(ステップ100)。
次に、情報処理部は、最適条件推定手段12の評価指標生成手段12Aにより、記憶部14からCO濃度推定モデルf1、O2濃度推定モデルf2、および運転効率推定モデルf3を取得し(ステップ101)、計測データ取得部15からの新たな計測データ5に基づいてこれら推定モデルf1,f2,f3を合成し、評価指標(評価関数)16すなわちD=g(f1,f2,f3)を生成する(ステップ102)。
【0039】
続いて、最適条件探索手段12Bにより、計測データ取得部15からの新たな計測データ5と探索条件取得手段12Cからの探索条件6に基づいて燃料流量および空気流量を変化させ、評価指標生成手段12Aで生成された評価指標16から、その最大値または最小値からなる最適値Doptを探索する(ステップ103)。
そして、最適条件探索手段12Bにより、得られた最適値Doptに対応する燃料流量Qf’および空気流量Qa’あるいはこれら一方の流量とこれら流量比すなわち空燃比を、計測データ5で示されるボイラ2の運転状態に対する最適燃焼条件7として出力し(ステップ104)、一連の燃焼条件推定処理を終了する。
【0040】
このように、本実施の形態では、燃焼条件推定装置1の記憶部14により、予め燃焼装置から取得した計測データに基づき生成された、ボイラ2の運転状態を元にそのボイラ2から排出されるCOおよびO2を推定する推定モデルと、その運転状態を元にボイラ2の運転効率を推定する推定モデルとを記憶しておき、最適条件推定手段12により、これら推定モデルから生成した評価指標に基づき、ボイラ2での最適燃焼条件7を推定するようにしたので、燃焼装置で負荷変動が生じた場合でも最適な燃焼条件を容易に推定できる。
【0041】
これにより、燃焼装置からの排出ガス発生を抑制するために、過剰に供給していた空気を少なくすることができ、余分な空気を燃焼装置へ供給する必要がなくなる。その結果、単位燃料当たりの発生蒸気量すなわち運転効率を向上させることができ、燃焼時間の短縮、およびCO2排出量の削減が可能となる。
【0042】
また、一般的には、燃焼装置へ供給する空気量の削減により有害な排出ガスであるCOの濃度が上昇する傾向があるものの、本実施の形態によれば、燃焼条件変更によるCO濃度の変化を適切に予測できることから、例えばCO濃度が基準値以下となる範囲内で運転効率の改善を行うなど、CO濃度の抑制と運転効率の改善を並行して実現することができ、環境問題と省エネルギーとを両立させることが可能となる。
【0043】
[第2の実施の形態]
次に、図6を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置について説明する。図6は、本発明の第2の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置で用いられる推定モデルの生成処理を示すフローチャートである。
燃焼条件推定装置1は、オペレータからの指示、あるいは所定間隔ごとに、情報処理部により、図6の推定モデル生成処理を実行する。ここでは、CO濃度推定モデル用データベース13A、O2濃度推定モデル用データベース13B、および運転効率推定モデル用データベース13Cが、計測データ取得部15により生成されて、データベース部13に格納されているものとする。
【0044】
情報処理部は、まず、推定モデル生成手段11のCO濃度推定モデル生成手段11Aにより、データベース部13からCO濃度推定モデル用データベース13Aを取得し、このCO濃度推定モデル用データベース13Aを構成する、入力パラメータと出力パラメータとからなる各組を用いて、CO濃度推定モデルf1(14A)を生成する(ステップ110)。
次に、推定モデル生成手段11のO2濃度推定モデル生成手段11Bにより、データベース部13からO2濃度推定モデル用データベース13Bを取得し、このO2濃度推定モデル用データベース13Bを構成する、入力パラメータと出力パラメータとからなる各組を用いて、O2濃度推定モデルf2(14B)を生成する(ステップ111)。
【0045】
続いて、推定モデル生成手段11の運転効率推定モデル生成手段11Cにより、データベース部13から運転効率推定モデル用データベース13Cを取得し、この運転効率推定モデル用データベース13Cを構成する、入力パラメータと出力パラメータとからなる各組を用いて、運転効率推定モデルf3(14C)を生成する(ステップ112)。
そして、推定モデル生成手段11は、このようにして、生成したCO濃度推定モデルf1(14A)、O2濃度推定モデルf2(14B)、および運転効率推定モデルf3(14C)を記憶部14に格納し、一連の推定モデル生成処理を終了する。
【0046】
これら推定モデルを生成する際、推定モデル生成手段11では、公知の推論モデル生成手法、例えば前述のRSM−Sのほか、TCBM(Topological Case-Based Modeling:位相事例ベースモデリング/例えば特許文献2など参照)、重回帰モデル、さらにはニューラルネットワークなどの推論モデル生成手法を利用する。
特に、ボイラ2には多くの運転状態が存在するため、特定の運転状態について離散的に計測データを取得し、上記RSM−Sなどの推論モデル生成手法を適用して計測データを補間することにより、高い精度のモデルを生成できる。
【0047】
図7〜図9は、CO濃度推定モデルf1(14A)、O2濃度推定モデルf2(14B)、および運転効率推定モデルf3(14C)の生成例を示す説明図である。これら図において、X,Y軸は、燃料流量Qfと空燃比の逆数(燃料流量/空気流量)を示し、Z軸はそれぞれCO濃度、O2濃度、および運転効率を示している。
前述した燃焼条件推定処理では、それぞれの推定モデル用データベースのデータ群から計測データ5に対応するデータが選択され、これらデータから所望の推定モデルとして応答曲面モデルが生成される。
【0048】
なお、本実施の形態では、推定モデル生成処理が、燃焼条件推定処理とは別個に、燃焼条件推定処理に先立って行われる場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、燃焼条件推定処理と並行して、推定モデル生成処理を順次行うようにしてもよく、各推定モデルに対して現在のボイラ2の振る舞いをリアルタイムで学習させることにより、推定精度を向上させることができる。
【0049】
また、推定モデルの生成に用いる具体的な入出力パラメータとしては、前述の図2で示したとおりであるが、これらパラメータのうち他のパラメータから推定可能なパラメータがある。図10は、推定モデルの具体的な生成処理過程例を示す説明図である。
一般に、ボイラの運転効率(ボイラ効率)は、次の式(1)で求められる。この際、蒸気流量Qsが必要となる。
【0050】
【数1】
【0051】
この際、蒸気流量Qsについて要因分析を行ったところ、この蒸気Qsについては他の計測データから推定可能なことがわかった。以下では、蒸気流量Qsとして他の計測データから推定したものを用いる場合について説明する。
【0052】
推定モデル生成手段11のCO濃度推定モデル生成手段11Aでは、具体的な計測データとして燃料流量Qf、空気流量Qa、炉内温度T、および蒸気圧力Psを入力パラメータとし、データベース部13のCO濃度推定モデル用データベース13Aを参照し、その出力パラメータとしてCO濃度推定モデルf1(14A)を得る。
また、O2濃度推定モデル生成手段11Bでは、具体的な計測データとして燃料流量Qf、空気流量Qa、および空気湿度Hを入力パラメータとして、データベース部13のO2濃度推定モデル用データベース13Bを参照し、その出力パラメータとしてO2濃度推定モデルf2(14B)を得る。
【0053】
一方、運転効率推定モデル生成手段11Cでは、まず、具体的な計測データとして燃料流量Qf(燃料状態量)、蒸気圧力Ps(負荷状態量)、炉内温度T(動作状態量)、および空気湿度H(空気状態量)を入力パラメータとし、データベース部13の蒸気流量推定モデル13Dを参照し、その出力パラメータとして蒸気流量Qs’を得る。
そして、具体的な計測データとして燃料流量Qf、蒸気圧力Ps、炉内温度T、および蒸気流量推定モデル13Dから得た蒸気流量Qs’を入力パラメータとし、データベース部13のCO濃度推定モデル用データベース13Aを参照し、その出力パラメータとして運転効率推定モデルf3(14C)を得る。
【0054】
このように、計測データ5として得られる燃料状態量、負荷状態量、動作状態量、および空気状態量から蒸気流量Qs’を推定する蒸気流量推定モデル13Dをデータベース部13に予め記憶しておき、運転効率推定モデルを生成する際、計測データ5に基づき蒸気流量推定モデル13Dを参照して蒸気流量Qs’を得るようにしたので、蒸気流量Qsを計測する必要がなくなり、計測データ5のデータ量を削減できるとともに、計測システム3の構成を簡素化できる。
【0055】
なお、ここでは、蒸気流量Qsを他の計測データから推定する場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、他の計測データに適用してもよく、同様の作用効果が得られる。
また、蒸気流量推定モデル13Dについても、前述と同様に公知の推論モデル生成手法を適用して生成すればよい。
【0056】
[第3の実施の形態]
次に、図11および図12を参照して、本発明の第3の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置について説明する。図11は、本発明の第3の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置でのデータベース生成処理を示すフローチャートである。図12は、本発明の第2の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置で用いられる各データベースの生成過程を示す説明図である。
【0057】
本実施の形態では、情報処理部の計測データ取得部15に、CO濃度推定モデル用データベース生成手段15A、O2濃度推定モデル用データベース生成手段15B、および運転効率推定モデル用データベース生成手段15Cを設け、推定モデル生成手段11で計測データ5からCO濃度推定モデルf1、O2濃度推定モデルf2、および運転効率推定モデルf3を生成するのに用いるCO濃度推定モデル用データベース13A、O2濃度推定モデル用データベース13B、および運転効率推定モデル用データベース13Cの生成処理について説明する。
【0058】
まず、計測データ取得部15により、ボイラ2から各種運転状態でボイラを運転して、各推定モデルの入力パラメータおよび出力パラメータとなる計測データを取得する(ステップ120)。この際、推定モデルの入力パラメータについては、公知のデータマイニング手法で、推定対象ここではCO、O2、および運転効率と相関の大きい要因として予め特定しておく。
【0059】
次に、これら入力パラメータおよび出力パラメータの組から、CO濃度推定モデル用データベース13A、O2濃度推定モデル用データベース13B、および運転効率推定モデル用データベース13Cを生成する。
【0060】
具体的には、CO濃度推定モデル用データベース生成手段15Aで、燃料流量Qf(燃料状態量)、空気流量Qa(空気状態量)、炉内温度T(動作状態量)、および蒸気圧力Ps(負荷状態量)を入力パラメータとするとともに、CO濃度Ccoを出力パラメータとして、CO濃度推定モデル用データベース13Aを生成する(ステップ121)。
また、O2濃度推定モデル用データベース生成手段15Bで、燃料流量Qf(燃料状態量)、空気流量Qa(空気状態量)、および空気湿度H(空気状態量)を入力パラメータとするとともに、O2濃度Co2を出力パラメータとして、O2濃度推定モデル用データベース13Bを生成する(ステップ122)。
【0061】
また、運転効率推定モデル用データベース生成手段15Cで、燃料流量Qf(燃料状態量)、蒸気温度Ts(負荷状態量)、給水温度Tw(動作状態量)、および蒸気流量Qs(負荷状態量)を入力パラメータとするとともに、運転効率Eを出力パラメータとして、運転効率推定モデル用データベース13Cを生成する(ステップ123)。
そして、これらCO濃度推定モデル用データベース13A、O2濃度推定モデル用データベース13B、および運転効率推定モデル用データベース13Cをデータベース部13に格納し(ステップ124)、一連のデータベース生成処理を終了する。
【0062】
なお、前述した各実施の形態では、燃焼条件推定装置1の情報処理部により、各推定モデルさらには推定モデル用データベースを生成する場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、他の情報処理装置に本実施の形態を適用して、これら推定モデルさらには推定モデル用データベースを生成してもよい。
また、各推定モデル用データベースの生成に用いる計測データ5については、前述の図12の各入力パラメータに限定されるものではなく、ボイラ2の運転状態を示す、燃料状態量、空気状態量、動作状態量、負荷状態量の各パラメータについて、いずれか1つ以上、またはすべての状態量のパラメータを任意に選択して用いればよい。
【0063】
なお、前述した各実施の形態では、最適燃焼条件を推定する対象としてボイラを例に説明したが、これに限定されるものではなく、ボイラと同様に燃料を空気と混合して燃焼させる燃焼装置であれば、各実施の形態を適用でき、同様の作用効果が得られる。
また、各実施の形態にかかる燃焼条件推定装置1に、推定で得られた最適燃焼条件7に基づきボイラ2を制御するための制御信号を出力する制御部を設けることにより燃焼制御装置を構成してもよく、リアルタイムでボイラ2などの燃焼装置の燃焼条件を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置で用いられる推定モデル生成手段の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置で用いられる最適条件推定手段の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置で用いられる計測システム3の構成例を示す計装図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置での燃焼条件推定処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置で用いられる推定モデル生成処理を示すフローチャートである。
【図7】CO濃度推定モデル用データベースの生成例を示す説明図である。
【図8】O2濃度推定モデル用データベースの生成例を示す説明図である。
【図9】運転効率推定モデル用データベースの生成例を示す説明図である。
【図10】推定モデルの具体的な生成過程例を示す説明図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置でのデータベース生成処理を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第3の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置で用いられる各データベースの生成過程を示す説明図である。
【図13】一般的なボイラでの燃焼特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0065】
1…燃焼条件推定装置、11…推定モデル生成手段、11A…CO濃度推定モデル生成手段、11B…O2濃度推定モデル生成手段、11C…運転効率推定モデル生成手段、12…最適条件推定手段、12A…評価指標生成手段、12B…最適条件探索手段、12C…探索条件取得手段、13…データベース部、13A…CO濃度推定モデル用データベース、13B…O2濃度推定モデル用データベース、13C…運転効率推定モデル用データベース、14…記憶部、14A…CO濃度推定モデル、14B…O2濃度推定モデル、14C…運転効率推定モデル、15…計測データ取得部、15A…CO濃度推定モデル用データベース生成手段、15B…O2濃度推定モデル用データベース生成手段、15C…運転効率推定モデル用データベース生成手段、16…評価指標、2…ボイラ、21…炉、22…燃料、23…空気、24…水、25…蒸気、26…排出ガス、3…計測システム、30…燃料流量計、31…空気流量計、32…空気湿度計、33…給水温度計、34…炉内温度計、35…蒸気温度計、36…蒸気圧力計、37…蒸気流量計、38…COセンサ、39…O2センサ、5…計測データ、5A…燃料状態量、5B…空気状態量、5C…動作状態量、5D…負荷状態量、6…探索条件、7…最適燃焼条件。
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼制御技術に関し、特にボイラなどの燃焼装置から得られた計測データに基づき、その燃焼装置における最適燃焼条件を推定する燃焼条件推定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラなどの燃焼装置での燃焼状態を制御する燃焼制御装置において、燃料と空気とを混合させて燃焼させた際に発生するCOなどの有害な排出ガスの削減は、近年の環境問題への対応のため重要な課題となっている。一方、省エネルギーの観点からは、少ない燃料で効率よく運転して所望の熱量を得る必要もある。
【0003】
通常、ボイラの燃焼条件は、燃料と空気との混合比すなわち空燃比(燃料に対する空気の質量比)により制御できる。また、従来より、この燃焼条件については、供給するO2の濃度と排出ガスに含まれるCOやCO2の濃度との関係を利用することで、CO濃度を抑制できる燃焼条件が得られることがわかっている。
【0004】
図13は、一般的なボイラでの燃焼特性を示すグラフであり、横軸は空燃比を示し、縦軸は排出ガス中のCO2およびO2の濃度を示している(例えば、非特許文献1など参照)。このグラフにおいて、特性91は排出ガス中のCO2濃度であり、空燃比を上昇させて一定の燃料(重油)に対する空気の量を増やしていくと、そのCO2濃度が低下する傾向にあり、CO濃度もこれに準ずる。なお、特性92で示されるO2濃度は、空燃比の上昇に応じてその濃度も上昇する。また、運転効率(ボイラ効率)は、一定の燃料に対する空気の量すなわちO2の供給量を増やしていくと、ある空燃比を頂点として上昇から下降に転じている。したがって、CO2濃度やCO濃度が基準値以下であってかつ運転効率が良好な空燃比が最適な燃焼条件となる。
【0005】
なお、出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を出願時までに発見するには至らなかった。
【特許文献1】特開2002−183111号公報
【特許文献2】特許第2632117号公報
【非特許文献1】海老原熊雄、「熱管理技術講義」、昭和54年4月25日発行、丸善株式会社、pp.108-111
【非特許文献2】西川,三宮,茨木、「岩波講座情報科学-19 最適化」、1982年9月10日発行、岩波書店、pp.162-171
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、燃焼装置の燃焼特性は、その負荷に応じて変動する。例えば、ボイラの場合、必要とする蒸気の流量や供給する水の温度などのボイラ負荷に応じて燃焼特性が変動する。この際、排出ガス中のCOおよびCO2は、同一空燃比であっても、ボイラ負荷が大きくなるに連れて、その濃度が上昇する。
【0007】
従来、このようなボイラなどの燃焼装置では、オペレータ操作により所望の空燃比を設定する機能を有しているが、前述した負荷変動に対する安全を見込んで、負荷変動が生じた場合でもCO濃度を基準値以下に抑制できるように空燃比を高めに設定するものとなっていた。このため、CO濃度は抑制できるものの運転効率が悪く、結果として多くの燃料を無駄に使用し、CO2排出量も多くなるという問題点があった。
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、運転中の燃焼装置の負荷に応じた最適な燃焼条件を容易に推定できる燃焼条件推定装置および方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明にかかる燃焼条件推定装置は、燃料を空気と混合して燃焼させる燃焼装置からその運転状態を示す計測データを取得し、燃焼装置への燃料と空気の供給量を示す最適燃焼条件を計測データに基づいて推定する燃焼条件推定装置であって、予め燃焼装置から取得した計測データに基づき生成された、燃焼装置の排出ガスに含まれるCOについて任意の燃焼条件に応じたCO濃度を推定するCO濃度推定モデルと、燃焼装置の排出ガスに含まれるO2について任意の燃焼条件に応じたO2濃度を推定するO2濃度推定モデルと、燃焼装置の運転効率について任意の燃焼条件に応じた運転効率を推定する運転効率推定モデルとを記憶する記憶手段と、これらCO濃度推定モデル、O2濃度推定モデル、および運転効率推定モデルから生成した評価指標に基づき燃焼装置における所望の最適燃焼条件を推定する最適条件推定手段とを備えている。
【0009】
この際、推定モデルごとに、予め燃焼装置からの計測データを元にして生成した、当該推定モデルの入力パラメータおよび出力パラメータからなる複数の組を、当該推定モデルの推定モデル生成用データベースとして記憶するデータベース部と、推定モデル用データベースの各組から当該推定モデルを生成する推定モデル生成手段とをさらに備えてもよい。
【0010】
また、各推定モデルは、計測データのうち、燃焼装置に供給される燃料の状態を示す燃料状態量と、燃料装置に供給される空気の状態を示す空気状態量と、燃焼装置の動作状態を示す動作状態量と、燃焼装置にかかる負荷の状態を示す負荷状態量とから、CO濃度、O2濃度、および運転効率をそれそれ推定するモデルから構成してもよい。
【0011】
また、本発明にかかる燃焼条件推定方法は、燃料を空気と混合して燃焼させる燃焼装置からその運転状態を示す計測データを取得し、燃焼装置への燃料と空気の供給量を示す最適燃焼条件を計測データに基づいて推定する処理装置で用いられる燃焼条件推定方法であって、予め燃焼装置から取得した計測データに基づき生成された、燃焼装置の排出ガスに含まれるCOについて任意の燃焼条件に応じたCO濃度を推定するCO濃度推定モデルと、燃焼装置の排出ガスに含まれるO2について任意の燃焼条件に応じたO2濃度を推定するO2濃度推定モデルと、燃焼装置の運転効率について任意の燃焼条件に応じた運転効率を推定する運転効率推定モデルとを記憶部で記憶するステップと、これらCO濃度推定モデル、O2濃度推定モデル、および運転効率推定モデルから生成した評価指標に基づき燃焼装置における所望の最適燃焼条件を推定する最適条件推定ステップとを備えている。
【0012】
この際、推定モデルごとに、予め燃焼装置からの計測データを元にして生成した、当該推定モデルの入力パラメータおよび出力パラメータからなる複数の組を、当該推定モデルの推定モデル生成用データベースとしてデータベース部で記憶するステップと、推定モデル用データベースの各組から当該推定モデルを生成するステップとをさらに備えてもよい。
【0013】
また、各推定モデルは、計測データのうち、燃焼装置に供給される燃料の状態を示す燃料状態量と、燃料装置に供給される空気の状態を示す空気状態量と、燃焼装置の動作状態を示す動作状態量と、燃焼装置にかかる負荷の状態を示す負荷状態量とから、CO濃度、O2濃度、および運転効率をそれそれ推定するモデルから構成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、予め燃焼装置から取得した計測データに基づき生成された、燃焼装置の運転状態を元にその燃焼装置から排出されるCOおよびO2を推定する推定モデルと、その運転状態を元に燃焼装置の運転効率を推定する推定モデルとを記憶部に記憶しておき、最適条件推定手段により、これら推定モデルから生成した評価指標に基づき、燃焼装置での最適燃焼条件を推定するようにしたので、運転中の燃焼装置の負荷に応じた最適な燃焼条件を容易に推定できる。
【0015】
これにより、燃焼装置からの排出ガス発生を抑制するために、過剰に供給していた空気を少なくすることができ、余分な空気を燃焼装置へ供給する必要がなくなる。その結果、単位燃料当たりの発生蒸気量すなわち運転効率を向上させることができ、燃焼時間の短縮、およびCO2排出量の削減が可能となる。
また、一般的には、燃焼装置へ供給する空気量の削減によりCOの濃度が上昇する傾向があるものの、本実施の形態によれば、燃焼条件変更によるCO濃度の変化を適切に予測できることから、例えばCO濃度が基準値以下となる範囲内で運転効率の改善を行うなど、CO濃度の抑制と運転効率の改善を並行して実現することができ、環境問題と省エネルギーとを両立させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置について説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置の構成を示すブロック図である。
この燃焼条件推定装置1は、ボイラ2などの燃焼装置から、各種計測器やセンサからなる計測システム3で得られた計測データ5に基づいて、ボイラ2に供給する燃料流量および空気流量、あるいはこれら流量のいずれか一方と空燃比とで示される最適な燃焼条件7を推定する装置である。
【0017】
本実施の形態にかかる燃焼条件推定装置1は、予め燃焼装置から取得した計測データに基づき生成された、計測データ5が示す運転状態を元にボイラ2から排出されるCOおよびO2を推定する推定モデルと、その運転状態を元にボイラ2の運転効率を推定する推定モデルと記憶部に記憶しておき、これら推定モデルから生成した評価指標に基づき、ボイラ2での最適燃焼条件7を推定するものである。
【0018】
[燃焼条件推定装置]
次に、図1〜図3を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置の構成について詳細に説明する。図2は、推定モデル生成手段の構成を示すブロック図である。図3は、最適条件推定手段の構成を示すブロック図である。
この燃焼条件推定装置1は、全体としてコンピュータなどの情報処理装置からなり、推定モデル生成手段11、最適条件推定手段12、データベース部13、記憶部14、および計測データ取得部15を備えている。
【0019】
このうち、推定モデル生成手段11、最適条件推定手段12、および計測データ取得部15については、情報処理部で実現してもよく、所定の情報処理を行う専用の論理回路で実現してもよい。情報処理部は、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有し、記憶部14に格納されているプログラム(図示せず)を読み込んで実行することにより、上記ハードウェアとプログラムとを協働させて各種機能手段を実現する。
【0020】
またデータベース部13は、ハードディスクやメモリなどからなり、情報処理部での処理に用いる各種データを記憶する記憶装置である。このデータベース部13で記憶する主なデータとしては、CO濃度推定モデル用データベース13A、O2濃度推定モデル用データベース13B、および運転効率推定モデル用データベース13Cがある。
これらデータベースは、後述するように、予めボイラ2から取得された計測データに基づき生成された、当該推定モデルでの入力パラメータと出力パラメータとからなる複数の組から構成されており、各推定モデルの生成に先だって予め計測データ取得部15により生成してデータベース部13に格納しておく。
【0021】
記憶部14は、ハードディスクやメモリなどからなり、情報処理部での処理に用いる各種データやプログラムを記憶する記憶装置であり、データベース部13と同一の記憶装置で構成してもよい。この記憶部14で記憶する主なデータとしては、CO濃度推定モデルf1(14A)、O2濃度推定モデルf2(14B)、および運転効率推定モデルf3(14C)がある。
これら推定モデルは、ボイラ2の排出ガスに含まれるCOやO2、およびボイラ2の運転効率について任意の燃焼条件に応じたCO濃度、O2濃度、および運転効率をそれぞれ推定するモデルである。これら推定モデルは、最適燃焼条件7の推定に先立って予め推定モデル生成手段11により生成して記憶部14に格納しておく。
【0022】
推定モデル生成手段11は、データベース部13のCO濃度推定モデル用データベース13A、O2濃度推定モデル用データベース13B、および運転効率推定モデル用データベース13Cをそれぞれ参照して、CO濃度推定モデルf1(14A)、O2濃度推定モデルf2(14B)、および運転効率推定モデルf3(14C)を生成する機能を有している。これら推定モデルは、計測データ5のうちのいずれか複数を入力パラメータとして、それぞれの値を推定する関数式やデータ集合などからなる公知の相関モデルである。
【0023】
推定モデル生成手段11は、CO濃度推定モデル生成手段11A、O2濃度推定モデル生成手段11B、および運転効率推定モデル生成手段11Cを備えている。
CO濃度推定モデル生成手段11Aは、計測データ5に基づいてデータベース部13のCO濃度推定モデル用データベース13Aを参照し、当該計測データ5が示す運転状態を元に任意の燃焼条件でボイラ2から排出されるCOを推定するためのCO濃度推定モデルf1(14A)を生成する機能を有している。
【0024】
O2濃度推定モデル生成手段11Bは、計測データ5に基づいてデータベース部13のO2濃度推定モデル用データベース13Bを参照し、当該計測データ5が示す運転状態を元に任意の燃焼条件でボイラ2から排出されるO2を推定するためのO2濃度推定モデルf2(14B)を生成する機能を有している。
運転効率推定モデル生成手段11Cは、計測データ5に基づいてデータベース部13の運転効率推定モデル用データベース13Cを参照し、当該計測データ5が示す運転状態におけるボイラ2の運転効率を推定するための運転効率推定モデルf3(14C)を生成する機能を有している。
【0025】
これら推定モデルは、それぞれの推定モデル生成手段11により、当該推定モデルに対応するデータベースの入力パラメータと出力パラメータとからなる各組に基づいて、例えばRSM−S(Response Surface Method by Spline:多変数スプラインによる応答曲面法/例えば特許文献1など参照)などの推論モデル生成手法により生成される。
【0026】
計測データ取得部15は、ボイラ2などの燃焼装置から、各種計測器やセンサからなる計測システム3を介して、ボイラ2の運転状態を示す各種計測データ5を取得する機能と、これら計測データ5から各推定モデルごとにその入力パラメータと出力パラメータとの組を抽出して各モデル生成用データベース13A〜13Cを生成する機能と、最適燃焼条件7の推定動作時には、新たに取得した計測データ5を最適条件推定手段12へ出力する機能とを有している。
各モデル生成用データベースを生成する際、計測データ取得部15は計測データ5のうち、例えば燃料状態量5A、空気状態量5B、動作状態量5C、および負荷状態量5Dから各モデル生成用データベースを生成する。
【0027】
燃料状態量5Aは、ボイラ2へ供給される燃料の燃料流量Qfなど、燃料の状態を示す計測データである。
空気状態量5Bは、ボイラ2へ供給される空気の空気流量Qaや空気湿度Hなど、空気の状態を示す計測データである。
動作状態量5Cは、ボイラ2の炉内温度Tやボイラ2へ供給されて蒸気となる水の給水温度Twなど、ボイラ2の動作状態を示す計測データである。
負荷状態量5Dは、ボイラ2から負荷側へ供給される蒸気の蒸気温度Ts、蒸気圧力Ps、蒸気流量Qs、CO濃度Cco、およびO2濃度など、ボイラ2にかかる負荷の状態を示す計測データである。
【0028】
最適条件推定手段12は、評価指標生成手段12A、最適条件探索手段12B、および探索条件取得手段12Cを備えている。
評価指標生成手段12Aは、記憶部14から推定モデル生成手段11で生成されたCO濃度推定モデルf1、O2濃度推定モデルf2、および運転効率推定モデルf3を取得し、計測データ取得部15からの計測データ5に基づいて、これら推定モデルf1,f2,f3を合成した評価指標16すなわちD=g(f1,f2,f3)を生成する機能を有している。
【0029】
この評価指標16としては、例えば多目的最適化問題でのPareto最適解の探索において広く用いられている重みパラメータ法やリグレット関数、例えば最適化したいCO濃度、O2濃度、あるいは運転効率の各項目における理想値との距離を示す距離関数などを用いた公知の評価手法を適用できる(非特許文献2など参照)。
【0030】
最適条件探索手段12Bは、計測データ取得部15で新たに取得された計測データ5や所定の探索条件6に基づいて、評価指標生成手段12Aで生成された評価指標16から最適燃焼条件7を探索して出力する機能を有している。この最適条件探索処理については、例えば非線形計画問題において広く用いられている制約条件付きのNewton法や準Newton法などの公知の手法を適用できる。
【0031】
探索条件取得手段12Cは、予め設定入力された探索条件6を取得して、評価指標生成手段12Aおよび最適条件探索手段12Bへ出力する機能を有している。
この探索条件6の主な条件としては、最適化希望条件および探索制約条件がある。最適化希望条件は、例えば「COがx以下の範囲のもとでO2を最小化させ運転効率を最大化させる」など、いずれの推定モデルを重視させるかを指示する条件である。探索制約条件は、「燃料流量50〜60%で空気流量50〜100%の範囲」など、最適条件を探索する範囲を指示する条件である。
【0032】
[計測システム]
次に、図4を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置で用いられる計測システムについて説明する。図4は、本発明の第1の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置1で用いられる計測システム3の構成例を示す計装図である。
この計測システム3は、ボイラ2およびその周辺に設置された各種計測器やセンサから構成されている。
【0033】
ボイラ2は、炉21に供給された重油、軽油、石炭、ガスなどの燃料22と空気23とを混合させて燃焼させ、その熱でボイラ2に供給された水24を加熱し、蒸気25を生成して負荷側に供給するとともに、燃焼により発生した排出ガス26を炉21の外部へ排出する燃焼装置である。負荷側のシステムでは、この蒸気25を発電用タービンの駆動や、ビル設備の空調などに用いる。
【0034】
計測システム3は、主な計測器およびセンサとして、燃料流量計30、空気流量計31、空気湿度計32、給水温度計33、炉内温度計34、蒸気温度計35、蒸気圧力計36、蒸気流量計37、COセンサ38、およびO2センサ39を有している。
燃料流量計30は、炉21へ供給される燃料22の流量Qfを計測する流量計である。空気流量計31は、炉21へ供給される空気23の流量Qaを計測する流量計である。空気湿度計32は、炉21へ供給される空気23の湿度Hを計測する湿度センサである。
【0035】
給水温度計33は、ボイラ2へ供給される水24の流量Qwを計測する流量計である。炉内温度計34は、炉21内の温度Tを計測する温度計である。蒸気温度計35は、ボイラ2から負荷側へ供給される蒸気25の温度Tsを計測する温度計である。蒸気圧力計36は、ボイラ2から負荷側へ供給される蒸気25の圧力Psを計測する圧力計である。蒸気流量計37は、ボイラ2から負荷側へ供給される蒸気25の流量Qsを計測する流量計である。
COセンサ38は、炉21の外部へ排出される排出ガス26に含まれるCOの濃度Ccoを検出するセンサである。O2センサ39は、排出ガス26に含まれるO2の濃度Co2を検出するセンサである。
【0036】
これら計測器やセンサで取得された計測データ5のうち、燃料流量Qfは、燃料状態量5Aとして燃焼条件推定装置1へ出力され、空気流量Qaおよび空気湿度Hは、空気状態量5Bとして燃焼条件推定装置1へ出力される。また、給水温度Twおよび炉内温度Tは、動作状態量5Cとして燃焼条件推定装置1へ出力され、蒸気温度Ts、蒸気圧力Ps、および蒸気流量Qsは、負荷状態量5Dとして燃焼条件推定装置1へ出力される。
【0037】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図5を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置の動作について説明する。図5は、本発明の第1の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置での燃焼条件推定処理を示すフローチャートである。
燃焼条件推定装置1は、新たな計測データ5の入力、オペレータからの指示、あるいは所定間隔ごとに、情報処理部により、図5の燃焼条件推定処理を実行する。ここでは、CO濃度推定モデルf1(14A)、O2濃度推定モデルf2(14B)、および運転効率推定モデルf3(14C)が、推定モデル生成手段11に予め生成されて、記憶部14に格納されているものとする。
【0038】
情報処理部は、まず、計測データ取得部15により、運転中のボイラ2から計測システム3を介して新たな計測データ5を取得し、最適条件推定手段12へ出力する(ステップ100)。
次に、情報処理部は、最適条件推定手段12の評価指標生成手段12Aにより、記憶部14からCO濃度推定モデルf1、O2濃度推定モデルf2、および運転効率推定モデルf3を取得し(ステップ101)、計測データ取得部15からの新たな計測データ5に基づいてこれら推定モデルf1,f2,f3を合成し、評価指標(評価関数)16すなわちD=g(f1,f2,f3)を生成する(ステップ102)。
【0039】
続いて、最適条件探索手段12Bにより、計測データ取得部15からの新たな計測データ5と探索条件取得手段12Cからの探索条件6に基づいて燃料流量および空気流量を変化させ、評価指標生成手段12Aで生成された評価指標16から、その最大値または最小値からなる最適値Doptを探索する(ステップ103)。
そして、最適条件探索手段12Bにより、得られた最適値Doptに対応する燃料流量Qf’および空気流量Qa’あるいはこれら一方の流量とこれら流量比すなわち空燃比を、計測データ5で示されるボイラ2の運転状態に対する最適燃焼条件7として出力し(ステップ104)、一連の燃焼条件推定処理を終了する。
【0040】
このように、本実施の形態では、燃焼条件推定装置1の記憶部14により、予め燃焼装置から取得した計測データに基づき生成された、ボイラ2の運転状態を元にそのボイラ2から排出されるCOおよびO2を推定する推定モデルと、その運転状態を元にボイラ2の運転効率を推定する推定モデルとを記憶しておき、最適条件推定手段12により、これら推定モデルから生成した評価指標に基づき、ボイラ2での最適燃焼条件7を推定するようにしたので、燃焼装置で負荷変動が生じた場合でも最適な燃焼条件を容易に推定できる。
【0041】
これにより、燃焼装置からの排出ガス発生を抑制するために、過剰に供給していた空気を少なくすることができ、余分な空気を燃焼装置へ供給する必要がなくなる。その結果、単位燃料当たりの発生蒸気量すなわち運転効率を向上させることができ、燃焼時間の短縮、およびCO2排出量の削減が可能となる。
【0042】
また、一般的には、燃焼装置へ供給する空気量の削減により有害な排出ガスであるCOの濃度が上昇する傾向があるものの、本実施の形態によれば、燃焼条件変更によるCO濃度の変化を適切に予測できることから、例えばCO濃度が基準値以下となる範囲内で運転効率の改善を行うなど、CO濃度の抑制と運転効率の改善を並行して実現することができ、環境問題と省エネルギーとを両立させることが可能となる。
【0043】
[第2の実施の形態]
次に、図6を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置について説明する。図6は、本発明の第2の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置で用いられる推定モデルの生成処理を示すフローチャートである。
燃焼条件推定装置1は、オペレータからの指示、あるいは所定間隔ごとに、情報処理部により、図6の推定モデル生成処理を実行する。ここでは、CO濃度推定モデル用データベース13A、O2濃度推定モデル用データベース13B、および運転効率推定モデル用データベース13Cが、計測データ取得部15により生成されて、データベース部13に格納されているものとする。
【0044】
情報処理部は、まず、推定モデル生成手段11のCO濃度推定モデル生成手段11Aにより、データベース部13からCO濃度推定モデル用データベース13Aを取得し、このCO濃度推定モデル用データベース13Aを構成する、入力パラメータと出力パラメータとからなる各組を用いて、CO濃度推定モデルf1(14A)を生成する(ステップ110)。
次に、推定モデル生成手段11のO2濃度推定モデル生成手段11Bにより、データベース部13からO2濃度推定モデル用データベース13Bを取得し、このO2濃度推定モデル用データベース13Bを構成する、入力パラメータと出力パラメータとからなる各組を用いて、O2濃度推定モデルf2(14B)を生成する(ステップ111)。
【0045】
続いて、推定モデル生成手段11の運転効率推定モデル生成手段11Cにより、データベース部13から運転効率推定モデル用データベース13Cを取得し、この運転効率推定モデル用データベース13Cを構成する、入力パラメータと出力パラメータとからなる各組を用いて、運転効率推定モデルf3(14C)を生成する(ステップ112)。
そして、推定モデル生成手段11は、このようにして、生成したCO濃度推定モデルf1(14A)、O2濃度推定モデルf2(14B)、および運転効率推定モデルf3(14C)を記憶部14に格納し、一連の推定モデル生成処理を終了する。
【0046】
これら推定モデルを生成する際、推定モデル生成手段11では、公知の推論モデル生成手法、例えば前述のRSM−Sのほか、TCBM(Topological Case-Based Modeling:位相事例ベースモデリング/例えば特許文献2など参照)、重回帰モデル、さらにはニューラルネットワークなどの推論モデル生成手法を利用する。
特に、ボイラ2には多くの運転状態が存在するため、特定の運転状態について離散的に計測データを取得し、上記RSM−Sなどの推論モデル生成手法を適用して計測データを補間することにより、高い精度のモデルを生成できる。
【0047】
図7〜図9は、CO濃度推定モデルf1(14A)、O2濃度推定モデルf2(14B)、および運転効率推定モデルf3(14C)の生成例を示す説明図である。これら図において、X,Y軸は、燃料流量Qfと空燃比の逆数(燃料流量/空気流量)を示し、Z軸はそれぞれCO濃度、O2濃度、および運転効率を示している。
前述した燃焼条件推定処理では、それぞれの推定モデル用データベースのデータ群から計測データ5に対応するデータが選択され、これらデータから所望の推定モデルとして応答曲面モデルが生成される。
【0048】
なお、本実施の形態では、推定モデル生成処理が、燃焼条件推定処理とは別個に、燃焼条件推定処理に先立って行われる場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、燃焼条件推定処理と並行して、推定モデル生成処理を順次行うようにしてもよく、各推定モデルに対して現在のボイラ2の振る舞いをリアルタイムで学習させることにより、推定精度を向上させることができる。
【0049】
また、推定モデルの生成に用いる具体的な入出力パラメータとしては、前述の図2で示したとおりであるが、これらパラメータのうち他のパラメータから推定可能なパラメータがある。図10は、推定モデルの具体的な生成処理過程例を示す説明図である。
一般に、ボイラの運転効率(ボイラ効率)は、次の式(1)で求められる。この際、蒸気流量Qsが必要となる。
【0050】
【数1】
【0051】
この際、蒸気流量Qsについて要因分析を行ったところ、この蒸気Qsについては他の計測データから推定可能なことがわかった。以下では、蒸気流量Qsとして他の計測データから推定したものを用いる場合について説明する。
【0052】
推定モデル生成手段11のCO濃度推定モデル生成手段11Aでは、具体的な計測データとして燃料流量Qf、空気流量Qa、炉内温度T、および蒸気圧力Psを入力パラメータとし、データベース部13のCO濃度推定モデル用データベース13Aを参照し、その出力パラメータとしてCO濃度推定モデルf1(14A)を得る。
また、O2濃度推定モデル生成手段11Bでは、具体的な計測データとして燃料流量Qf、空気流量Qa、および空気湿度Hを入力パラメータとして、データベース部13のO2濃度推定モデル用データベース13Bを参照し、その出力パラメータとしてO2濃度推定モデルf2(14B)を得る。
【0053】
一方、運転効率推定モデル生成手段11Cでは、まず、具体的な計測データとして燃料流量Qf(燃料状態量)、蒸気圧力Ps(負荷状態量)、炉内温度T(動作状態量)、および空気湿度H(空気状態量)を入力パラメータとし、データベース部13の蒸気流量推定モデル13Dを参照し、その出力パラメータとして蒸気流量Qs’を得る。
そして、具体的な計測データとして燃料流量Qf、蒸気圧力Ps、炉内温度T、および蒸気流量推定モデル13Dから得た蒸気流量Qs’を入力パラメータとし、データベース部13のCO濃度推定モデル用データベース13Aを参照し、その出力パラメータとして運転効率推定モデルf3(14C)を得る。
【0054】
このように、計測データ5として得られる燃料状態量、負荷状態量、動作状態量、および空気状態量から蒸気流量Qs’を推定する蒸気流量推定モデル13Dをデータベース部13に予め記憶しておき、運転効率推定モデルを生成する際、計測データ5に基づき蒸気流量推定モデル13Dを参照して蒸気流量Qs’を得るようにしたので、蒸気流量Qsを計測する必要がなくなり、計測データ5のデータ量を削減できるとともに、計測システム3の構成を簡素化できる。
【0055】
なお、ここでは、蒸気流量Qsを他の計測データから推定する場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、他の計測データに適用してもよく、同様の作用効果が得られる。
また、蒸気流量推定モデル13Dについても、前述と同様に公知の推論モデル生成手法を適用して生成すればよい。
【0056】
[第3の実施の形態]
次に、図11および図12を参照して、本発明の第3の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置について説明する。図11は、本発明の第3の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置でのデータベース生成処理を示すフローチャートである。図12は、本発明の第2の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置で用いられる各データベースの生成過程を示す説明図である。
【0057】
本実施の形態では、情報処理部の計測データ取得部15に、CO濃度推定モデル用データベース生成手段15A、O2濃度推定モデル用データベース生成手段15B、および運転効率推定モデル用データベース生成手段15Cを設け、推定モデル生成手段11で計測データ5からCO濃度推定モデルf1、O2濃度推定モデルf2、および運転効率推定モデルf3を生成するのに用いるCO濃度推定モデル用データベース13A、O2濃度推定モデル用データベース13B、および運転効率推定モデル用データベース13Cの生成処理について説明する。
【0058】
まず、計測データ取得部15により、ボイラ2から各種運転状態でボイラを運転して、各推定モデルの入力パラメータおよび出力パラメータとなる計測データを取得する(ステップ120)。この際、推定モデルの入力パラメータについては、公知のデータマイニング手法で、推定対象ここではCO、O2、および運転効率と相関の大きい要因として予め特定しておく。
【0059】
次に、これら入力パラメータおよび出力パラメータの組から、CO濃度推定モデル用データベース13A、O2濃度推定モデル用データベース13B、および運転効率推定モデル用データベース13Cを生成する。
【0060】
具体的には、CO濃度推定モデル用データベース生成手段15Aで、燃料流量Qf(燃料状態量)、空気流量Qa(空気状態量)、炉内温度T(動作状態量)、および蒸気圧力Ps(負荷状態量)を入力パラメータとするとともに、CO濃度Ccoを出力パラメータとして、CO濃度推定モデル用データベース13Aを生成する(ステップ121)。
また、O2濃度推定モデル用データベース生成手段15Bで、燃料流量Qf(燃料状態量)、空気流量Qa(空気状態量)、および空気湿度H(空気状態量)を入力パラメータとするとともに、O2濃度Co2を出力パラメータとして、O2濃度推定モデル用データベース13Bを生成する(ステップ122)。
【0061】
また、運転効率推定モデル用データベース生成手段15Cで、燃料流量Qf(燃料状態量)、蒸気温度Ts(負荷状態量)、給水温度Tw(動作状態量)、および蒸気流量Qs(負荷状態量)を入力パラメータとするとともに、運転効率Eを出力パラメータとして、運転効率推定モデル用データベース13Cを生成する(ステップ123)。
そして、これらCO濃度推定モデル用データベース13A、O2濃度推定モデル用データベース13B、および運転効率推定モデル用データベース13Cをデータベース部13に格納し(ステップ124)、一連のデータベース生成処理を終了する。
【0062】
なお、前述した各実施の形態では、燃焼条件推定装置1の情報処理部により、各推定モデルさらには推定モデル用データベースを生成する場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、他の情報処理装置に本実施の形態を適用して、これら推定モデルさらには推定モデル用データベースを生成してもよい。
また、各推定モデル用データベースの生成に用いる計測データ5については、前述の図12の各入力パラメータに限定されるものではなく、ボイラ2の運転状態を示す、燃料状態量、空気状態量、動作状態量、負荷状態量の各パラメータについて、いずれか1つ以上、またはすべての状態量のパラメータを任意に選択して用いればよい。
【0063】
なお、前述した各実施の形態では、最適燃焼条件を推定する対象としてボイラを例に説明したが、これに限定されるものではなく、ボイラと同様に燃料を空気と混合して燃焼させる燃焼装置であれば、各実施の形態を適用でき、同様の作用効果が得られる。
また、各実施の形態にかかる燃焼条件推定装置1に、推定で得られた最適燃焼条件7に基づきボイラ2を制御するための制御信号を出力する制御部を設けることにより燃焼制御装置を構成してもよく、リアルタイムでボイラ2などの燃焼装置の燃焼条件を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置で用いられる推定モデル生成手段の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置で用いられる最適条件推定手段の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置で用いられる計測システム3の構成例を示す計装図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置での燃焼条件推定処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置で用いられる推定モデル生成処理を示すフローチャートである。
【図7】CO濃度推定モデル用データベースの生成例を示す説明図である。
【図8】O2濃度推定モデル用データベースの生成例を示す説明図である。
【図9】運転効率推定モデル用データベースの生成例を示す説明図である。
【図10】推定モデルの具体的な生成過程例を示す説明図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置でのデータベース生成処理を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第3の実施の形態にかかる燃焼条件推定装置で用いられる各データベースの生成過程を示す説明図である。
【図13】一般的なボイラでの燃焼特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0065】
1…燃焼条件推定装置、11…推定モデル生成手段、11A…CO濃度推定モデル生成手段、11B…O2濃度推定モデル生成手段、11C…運転効率推定モデル生成手段、12…最適条件推定手段、12A…評価指標生成手段、12B…最適条件探索手段、12C…探索条件取得手段、13…データベース部、13A…CO濃度推定モデル用データベース、13B…O2濃度推定モデル用データベース、13C…運転効率推定モデル用データベース、14…記憶部、14A…CO濃度推定モデル、14B…O2濃度推定モデル、14C…運転効率推定モデル、15…計測データ取得部、15A…CO濃度推定モデル用データベース生成手段、15B…O2濃度推定モデル用データベース生成手段、15C…運転効率推定モデル用データベース生成手段、16…評価指標、2…ボイラ、21…炉、22…燃料、23…空気、24…水、25…蒸気、26…排出ガス、3…計測システム、30…燃料流量計、31…空気流量計、32…空気湿度計、33…給水温度計、34…炉内温度計、35…蒸気温度計、36…蒸気圧力計、37…蒸気流量計、38…COセンサ、39…O2センサ、5…計測データ、5A…燃料状態量、5B…空気状態量、5C…動作状態量、5D…負荷状態量、6…探索条件、7…最適燃焼条件。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を空気と混合して燃焼させる燃焼装置からその運転状態を示す計測データを取得し、前記燃焼装置への燃料と空気の供給量を示す最適燃焼条件を前記計測データに基づいて推定する燃焼条件推定装置であって、
予め前記燃焼装置から取得した計測データに基づき生成された、前記燃焼装置の排出ガスに含まれるCOについて任意の燃焼条件に応じたCO濃度を推定するCO濃度推定モデルと、前記燃焼装置の排出ガスに含まれるO2について任意の燃焼条件に応じたO2濃度を推定するO2濃度推定モデルと、前記燃焼装置の運転効率について任意の燃焼条件に応じた運転効率を推定する運転効率推定モデルとを記憶する記憶手段と、
これらCO濃度推定モデル、O2濃度推定モデル、および運転効率推定モデルから生成した評価指標に基づき前記燃焼装置における所望の最適燃焼条件を推定する最適条件推定手段と
を備えることを特徴とする燃焼条件推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼条件推定装置において、
前記推定モデルごとに、予め前記燃焼装置からの計測データを元にして生成した、当該推定モデルの入力パラメータおよび出力パラメータからなる複数の組を、当該推定モデルの推定モデル生成用データベースとして記憶するデータベース部と、
前記推定モデル用データベースの各組から当該推定モデルを生成する推定モデル生成手段と
をさらに備えることを特徴とする燃焼条件推定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の燃焼条件推定装置において、
前記各推定モデルは、前記計測データのうち、前記燃焼装置に供給される燃料の状態を示す燃料状態量と、前記燃料装置に供給される空気の状態を示す空気状態量と、前記燃焼装置の動作状態を示す動作状態量と、前記燃焼装置にかかる負荷の状態を示す負荷状態量とから、CO濃度、O2濃度、および運転効率をそれそれ推定するモデルからなることを特徴とする燃焼条件推定装置。
【請求項4】
燃料を空気と混合して燃焼させる燃焼装置からその運転状態を示す計測データを取得し、前記燃焼装置への燃料と空気の供給量を示す最適燃焼条件を前記計測データに基づいて推定する処理装置で用いられる燃焼条件推定方法であって、
予め前記燃焼装置から取得した計測データに基づき生成された、前記燃焼装置の排出ガスに含まれるCOについて任意の燃焼条件に応じたCO濃度を推定するCO濃度推定モデルと、前記燃焼装置の排出ガスに含まれるO2について任意の燃焼条件に応じたO2濃度を推定するO2濃度推定モデルと、前記燃焼装置の運転効率について任意の燃焼条件に応じた運転効率を推定する運転効率推定モデルとを記憶部で記憶するステップと、
これらCO濃度推定モデル、O2濃度推定モデル、および運転効率推定モデルから生成した評価指標に基づき前記燃焼装置における所望の最適燃焼条件を推定する最適条件推定ステップと
を備えることを特徴とする燃焼条件推定方法。
【請求項5】
請求項4に記載の燃焼条件推定方法において、
前記推定モデルごとに、予め前記燃焼装置からの計測データを元にして生成した、当該推定モデルの入力パラメータおよび出力パラメータからなる複数の組を、当該推定モデルの推定モデル生成用データベースとしてデータベース部で記憶するステップと、
前記推定モデル用データベースの各組から当該推定モデルを生成する推定モデル生成ステップと
をさらに備えることを特徴とする燃焼条件推定方法。
【請求項6】
請求項4に記載の燃焼条件推定方法において、
前記各推定モデルは、前記計測データのうち、前記燃焼装置に供給される燃料の状態を示す燃料状態量と、前記燃料装置に供給される空気の状態を示す空気状態量と、前記燃焼装置の動作状態を示す動作状態量と、前記燃焼装置にかかる負荷の状態を示す負荷状態量とから、CO濃度、O2濃度、および運転効率をそれそれ推定するモデルからなることを特徴とする燃焼条件推定方法。
【請求項1】
燃料を空気と混合して燃焼させる燃焼装置からその運転状態を示す計測データを取得し、前記燃焼装置への燃料と空気の供給量を示す最適燃焼条件を前記計測データに基づいて推定する燃焼条件推定装置であって、
予め前記燃焼装置から取得した計測データに基づき生成された、前記燃焼装置の排出ガスに含まれるCOについて任意の燃焼条件に応じたCO濃度を推定するCO濃度推定モデルと、前記燃焼装置の排出ガスに含まれるO2について任意の燃焼条件に応じたO2濃度を推定するO2濃度推定モデルと、前記燃焼装置の運転効率について任意の燃焼条件に応じた運転効率を推定する運転効率推定モデルとを記憶する記憶手段と、
これらCO濃度推定モデル、O2濃度推定モデル、および運転効率推定モデルから生成した評価指標に基づき前記燃焼装置における所望の最適燃焼条件を推定する最適条件推定手段と
を備えることを特徴とする燃焼条件推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼条件推定装置において、
前記推定モデルごとに、予め前記燃焼装置からの計測データを元にして生成した、当該推定モデルの入力パラメータおよび出力パラメータからなる複数の組を、当該推定モデルの推定モデル生成用データベースとして記憶するデータベース部と、
前記推定モデル用データベースの各組から当該推定モデルを生成する推定モデル生成手段と
をさらに備えることを特徴とする燃焼条件推定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の燃焼条件推定装置において、
前記各推定モデルは、前記計測データのうち、前記燃焼装置に供給される燃料の状態を示す燃料状態量と、前記燃料装置に供給される空気の状態を示す空気状態量と、前記燃焼装置の動作状態を示す動作状態量と、前記燃焼装置にかかる負荷の状態を示す負荷状態量とから、CO濃度、O2濃度、および運転効率をそれそれ推定するモデルからなることを特徴とする燃焼条件推定装置。
【請求項4】
燃料を空気と混合して燃焼させる燃焼装置からその運転状態を示す計測データを取得し、前記燃焼装置への燃料と空気の供給量を示す最適燃焼条件を前記計測データに基づいて推定する処理装置で用いられる燃焼条件推定方法であって、
予め前記燃焼装置から取得した計測データに基づき生成された、前記燃焼装置の排出ガスに含まれるCOについて任意の燃焼条件に応じたCO濃度を推定するCO濃度推定モデルと、前記燃焼装置の排出ガスに含まれるO2について任意の燃焼条件に応じたO2濃度を推定するO2濃度推定モデルと、前記燃焼装置の運転効率について任意の燃焼条件に応じた運転効率を推定する運転効率推定モデルとを記憶部で記憶するステップと、
これらCO濃度推定モデル、O2濃度推定モデル、および運転効率推定モデルから生成した評価指標に基づき前記燃焼装置における所望の最適燃焼条件を推定する最適条件推定ステップと
を備えることを特徴とする燃焼条件推定方法。
【請求項5】
請求項4に記載の燃焼条件推定方法において、
前記推定モデルごとに、予め前記燃焼装置からの計測データを元にして生成した、当該推定モデルの入力パラメータおよび出力パラメータからなる複数の組を、当該推定モデルの推定モデル生成用データベースとしてデータベース部で記憶するステップと、
前記推定モデル用データベースの各組から当該推定モデルを生成する推定モデル生成ステップと
をさらに備えることを特徴とする燃焼条件推定方法。
【請求項6】
請求項4に記載の燃焼条件推定方法において、
前記各推定モデルは、前記計測データのうち、前記燃焼装置に供給される燃料の状態を示す燃料状態量と、前記燃料装置に供給される空気の状態を示す空気状態量と、前記燃焼装置の動作状態を示す動作状態量と、前記燃焼装置にかかる負荷の状態を示す負荷状態量とから、CO濃度、O2濃度、および運転効率をそれそれ推定するモデルからなることを特徴とする燃焼条件推定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−132902(P2006−132902A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325258(P2004−325258)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【出願人】(591178012)財団法人地球環境産業技術研究機構 (153)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【出願人】(591178012)財団法人地球環境産業技術研究機構 (153)
【Fターム(参考)】
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