説明

片面金属張積層板、片面金属張積層板の製造方法

【課題】従来の片面金属張積層板の製造方法では、スジ状の歪みが発生し、接合品質が低下するという課題がある。
【解決手段】熱可塑性接着剤を介して、絶縁性フィルムと、導電性フィルムとが接着形成された片面金属張積層板の製造方法であって、前記熱可塑性接着剤付きの絶縁性フィルムを加熱された金属性ローラーに沿わせるとともに、前記導電性フィルムを加熱された弾性ローラーに沿わせた状態で、前記絶縁性フィルムと前記導電性フィルムとを前記金属性ローラーと前記弾性ローラーとの間に導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片面金属張積層板、片面金属張積層板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、1対以上のローラーで、絶縁性フィルムをゴムローラーに沿わせ、次いで導電性フィルムを前記絶縁性フィルムに合わせて熱圧着する片面金属張積層板の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−79946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の製造方法では、導電性フィルムの厚みが薄い場合には、加熱された金属性ローラーに接触した時の熱膨張を解放できないことがある。また、表面が平滑な導電性フィルムの場合には、加熱された金属性ローラーの表面に貼り付いてしまい、熱膨張を解放できなくなる。これにより、絶縁性フィルムおよび導電性フィルムにスジ状の歪みが発生し、絶縁性フィルムと導電性フィルムとの接合品質が低下してしまう、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる片面金属張積層板の製造方法は、熱可塑性接着剤を介して、絶縁性フィルムと、導電性フィルムとが接着形成された片面金属張積層板の製造方法であって、前記熱可塑性接着剤付きの絶縁性フィルムを加熱された金属性ローラーに沿わせるとともに、前記導電性フィルムを加熱された弾性ローラーに沿わせた状態で、前記絶縁性フィルムと前記導電性フィルムとを前記金属性ローラーと前記弾性ローラーとの間に導入することを特徴とする。
【0007】
この適用例の製造方法では、熱可塑性接着剤付きの絶縁性フィルムを加熱された金属性ローラーに沿わせ、導電性フィルムを加熱された弾性ローラーに沿わせた状態で、金属性ローラーと弾性ローラー間に導入することで、ローラーに接触したときの絶縁性フィルム及び、導電性フィルムの熱膨張を解放することができ、スジ状の歪みの発生を防止し、接合品質を向上させることができる。特に、導電性フィルムは、応力が緩和されながら弾性ローラーに倣って搬送されるため、金属性ローラーと弾性ローラーとの間に導入されるまでに皺等の発生を解消させることができる。
【0008】
[適用例2]本適用例にかかる片面金属張積層板は、上記の片面金属張積層板の製造方法により製造されたことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、絶縁性フィルムと導電性フィルムとの接合品質が高い片面金属張積層板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】片面金属張積層板の構成を示す断面図。
【図2】片面金属張積層板の製造方法を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、片面金属張積層板の構成について説明する。図1は、片面金属張積層板の構成を示す断面図である。図1に示すように、片面金属張積層板6は、導電性フィルム2と、絶縁性フィルム8とが、熱可塑性接着剤7を介して、互いに接着されたものである。
【0012】
次に、片面金属張積層板の製造方法について説明する。図2は、片面金属張積層板の製造方法を示す模式図である。本実施形態における片面金属張積層板の製造方法は、熱可塑性接着剤を介して、絶縁性フィルムと、導電性フィルムとが接着形成された片面金属張積層板の製造方法であって、熱可塑性接着剤付きの絶縁性フィルムを加熱された金属性ローラーに沿わせるとともに、導電性フィルムを加熱された弾性ローラーに沿わせた状態で、絶縁性フィルムと導電性フィルムとを金属性ローラーと弾性ローラー間に導入するものである。以下、具体的に説明する。
【0013】
図2に示すように、熱可塑性接着剤付きの絶縁性フィルム1(7,8)を加熱された金属性ローラー3に沿わせ、また、導電性フィルム2を加熱された弾性ローラー4に沿わせて、金属性ローラー3と弾性ローラー4との間に導入して熱圧着し、片面金属張積層板6を製造する。熱可塑性接着剤付きの絶縁性フィルム1は、例えば、ポリイミドフィルムであり、その厚みは、20〜60μmの範囲が好ましく、30〜50μmの範囲がより好ましい。導電性フィルム2は、例えば、銅箔であり、その厚みは、5〜18μmの範囲が好ましく、8〜10μmがより好ましい。
【0014】
金属性ローラー3の表面温度は、250〜400℃の範囲であるのが好ましく、弾性ローラー4の表面温度は、100〜300℃の範囲が好ましい。本実施形態では、熱可塑性接着剤付きの絶縁性フィルム1及び導電性フィルム2は、金属性ローラー3と弾性ローラー4間での熱圧着前に、金属性ローラー3および弾性ローラー4に沿って搬送されることにより、両ローラーに接触したときに生じる熱膨張による寸法変化が解放されている必要がある。以下、かかる工程を熱膨張解放工程と言う。
【0015】
熱圧着温度が、250℃よりも低い場合には、熱可塑性接着剤付きの絶縁性フィルム1と導電性フィルム2とが全く接着しないか、または接着したとしても、両者の積層体は剥離しやすいものとなり実用に耐えない。また、熱膨張解放工程が無い場合には、加熱された両ローラーに接触した瞬間に、熱可塑性接着剤付きの絶縁性フィルム1および導電性フィルム2に急激な熱膨張による歪みが生じ、片面金属張積層板6の外観が悪化するとともに、回路を形成した時にショートや断線の原因となり、実用に耐えない。急激な熱膨張による歪みを防ぐために、巻き出し部の張力を増加させる場合には、片面金属張積層板6の長手方向に平行にスジ状の歪みが生じ、張力を減少させる場合には、片面金属張積層板6の幅方向に平行にスジ状の歪みが発生し、接合品質が良好な片面金属張積層板6を製造することができなくなる。
【0016】
そこで、熱膨張解放工程により、熱膨張による寸法変化が解放された熱可塑性接着剤付きの絶縁性フィルム1および導電性フィルム2は、加熱された金属性ローラー3と加熱された弾性ローラー4間での熱圧着時に歪みが生じることはない。金属性ローラー3および弾性ローラー4の加熱温度は、熱可塑性接着剤付きの絶縁性フィルム1および導電性フィルム2の材質、熱膨張係数、厚みを考慮して設定する必要がある。例えば、ポリイミド系の熱可塑性接着剤付きのポリイミドフィルムを使用する場合は、金属性ローラー3の加熱温度は、250〜350℃程度の温度が好ましい。また、電気分解法により製造された厚さ8〜10μmの銅箔を使用する場合には、弾性ローラー4の加熱温度は、150〜250℃程度の温度が好ましい。
【0017】
本実施形態において使用する金属性ローラー3および弾性ローラー4の直径は、それぞれ15〜45cmの範囲が好ましく、両者の直径は、ほぼ同じであるのが好ましい。熱膨張解放工程において、熱可塑性接着剤層付き絶縁性フィルム1と金属性ローラー3と接触角度θ1および導電性フィルム2と弾性ローラー4との接触角度θ2は、金属性ローラー3と弾性ローラー4との接点を基準にして30〜350°の範囲が好ましく、180〜270°の範囲がより好ましい。また、接触角度θ1とθ2が同じであってもよい。この接触角度θ1およびθ2は、ガイドローラー5の位置で調整することができる。
【0018】
熱可塑性接着剤付きの絶縁性フィルム1は、金属性ローラー3に接した時に発生する熱膨張が、金属性ローラー3上を滑り寸法が増大することで熱膨張を開放し、無緊張状態となる。本実施形態においては、金属性ローラー3の直径とその回転速度、熱可塑性接着剤付きの絶縁性フィルム1と金属性ローラー3との接触角度θ1などを調整することにより、金属性ローラー3と弾性ローラー4間での加熱圧着に至るまでに、熱可塑性接着剤付きの絶縁性フィルム1を、無緊張状態にする。同様に導電性フィルム2も金属性ローラー3と弾性ローラー4間での加熱圧着に至るまでに、無緊張状態にする。
【0019】
金属性ローラー3と弾性ローラー4間で熱可塑性接着剤付きの絶縁性フィルム1および導電性フィルム2に加えられる圧力は、加圧部位で実質的に変形が生じないローラー同士の組み合わせである場合には、線圧換算で5kg/cm以上であることが十分な接着力を発現させる上で好ましい。圧力の上限は特に限定されるものではないが、線圧換算で200kg/cmを超えないことが望ましい。なお、ここでの線圧とは、各ローラーに付与した力(圧着加重)をローラーの有効幅で除した値である。
【0020】
本実施形態により、外観が良好で接着力および寸法安定性に優れる片面金属張積層板6を得るためには、両ローラー間を通過させて熱圧着するときに、ローラーの回転速度を、その外周の線速度に換算して30m/分以下とすることが好ましい。下限は特に限定されるものではないが、回転速度が低すぎると生産効率の低下を招くため、0.1m/分より低くしないことが望ましい。以上の工程を経ることにより、片面金属張積層板6が形成される。
【0021】
従って、上記実施形態によれば以下に示す効果が得られる。
【0022】
加熱された弾性ローラーに導電性フィルムを沿わせながら搬送させるので、熱膨張によるスジ状の歪みの発生がなく、外観が良好で、十分な接着強度を有した片面金属張積層板6が提供される。
【符号の説明】
【0023】
1…熱可塑性接着剤付きの絶縁性フィルム、2…導電性フィルム、3…金属性ローラー、4…弾性ローラー、5…ガイドローラー、6…片面金属張積層板、7…熱可塑性接着剤、8…絶縁性フィルム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性接着剤を介して、絶縁性フィルムと、導電性フィルムとが接着形成された片面金属張積層板の製造方法であって、
前記熱可塑性接着剤付きの絶縁性フィルムを加熱された金属性ローラーに沿わせるとともに、前記導電性フィルムを加熱された弾性ローラーに沿わせた状態で、
前記絶縁性フィルムと前記導電性フィルムとを前記金属性ローラーと前記弾性ローラーとの間に導入することを特徴とする片面金属張積層板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の片面金属張積層板の製造方法により製造されたことを特徴とする片面金属張積層板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−61616(P2012−61616A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205233(P2010−205233)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】