説明

物の棚卸しと位置確認システム

無線通信を使って位置確認あるいは棚卸しする物(2)に関連付けた、いくつかの個別の識別装置(1)ならびに無線通信規格IEEE 802.15.4に従った無線トランスミッタを介して、該当する識別装置(1)内に、物(2)のバーコード(21)値を保存する少なくとも一つのイニシャライザ(開始装置)(3)から成るシステム。また識別装置(1)は、ショッピングセンターや空港など管理する施設ごとに配分された、いくつかの送受信アンテナステーション(4)によって位置確認も可能である。識別装置(1)は、固定手段(11)によって物(2)や商品に固定することができるケースから成り、その内部にはトランスミッタ(12)、一つのメモリ(13)、一つの電池(14)、その他がある。イニシャライザ(3)は、ケースに無線トランスミッタ(31)、マイクロコントローラ(32)、バーコードリーダ(33)、その他を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線を使ったデータ通信による、物の棚卸しならびに/あるいは位置確認システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在のところ、ショッピングセンターでの商品管理や、物流センターでの物品取扱管理、空港での荷物の管理は、バーコードによる識別によって行われているのが一般的である。このバーコードは、製品の種類や、各梱包されたパック、あるいは物を表す唯一の数値コードを表しており、バーコードリーダ(スキャナー)がその数値をコンピューターに入力して、接続された適切な管理を行う遠隔コンピュータの既存データベースにしたがって該当製品あるいは物を識別している。
【0003】
しかしながらこの識別システムは、物流管理や空港でのスーツケースの積み込みなど、回転の速い物や商品の棚卸し、出入り管理を行うのに、もっともふさわしいシステムとは言えない。なぜなら物を識別するのに一つ一つ物やスーツケースに付けられたバーコードを読むリーダ(スキャナー)をもった人間が一人必要であり、自動的に遠くからそれを実施することができないからである。
【0004】
もう一つ考慮すべき問題は、この物のセキュリティである。例えばショッピングセンターの多くは盗難・万引防止警報として物理的な装置を使用している。これは出口にある電磁走査パネルに対応した電子回路を内蔵しているプラスチック製のケースである。この装置は、商品が着いた時点で付けられ、支払いを受けるときに外される販売作業のプロセスに組み込まれている。これにより装置を付けられた物がいつ入り、いつ出たかはわかるが、施設の中でどのような状況にあるのかは分からない。この仕組みは盗難・万引警報の利用に限られ、識別や位置確認には役に立たない。
【0005】
また製品や商品識別の際問題になるのが、ショッピングセンターの異なった区画での棚卸しで、通常以下のようなプロセスのどちらかが行われる:
− 数時間ショッピングセンターの特定区画を閉鎖し、複数の従業員がピストル型バーコードリーダを使って棚卸しを行う。
− 企業が外部人員と契約し通常の営業時間外に棚卸しを行う。
【0006】
どちらの場合も、企業にとって棚卸しをする追加費用はかなりのものとなり、販売や通過過程にある商品は一時停止の状態とならざるを得ない。
【0007】
空港の場合、動いている旅客のスーツケースの在庫や位置確認が簡単にできる識別手段はない。定期的に空港の「ハンドリング」つまり物流責任者が、引き取られていないスーツケースをチェックしバーコードを読んで、その情報を該当する航空会社へ知らせている。航空機に積んだり降ろしたりする際スーツケースのチェックは行われるが、それらの一つが紛失した場合、位置を確認する有効なシステムは存在しない。
【0008】
一方、ふさわしい無線トランスミッタによって読み取りが容易なプログラムされたチップあるいはプログラム可能なチップに基づく無線RFID(電波方式認識)はよく知られている。これは盗難・万引防止警報に類似した形式で、RFIDチップ上の読み取りアンテナを適用したものである。これらのチップは、バーコードとRFIDコードが一致しているデータベースを使用して予(あらかじ)めプログラムされていなければならない。しかしながら、これらのチップには2つの大きな欠点がある:1)これらのチップの読み取りは、平均0.5メートルを超えると信頼性が低くなるか全くなくなってしまう。2)簡単に付けられるので誰でも取り扱える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の物の棚卸しと位置確認システムは、無線による遠隔読み取り技術を使用した棚卸しあるいは位置確認の識別操作の改善を目指したいくつかの技術特徴を示している。これにより施設の特定区画を閉鎖したり、商品の移動プロセスを止めたりすることなく、現行のバーコード識別システムに完全に一致した識別が可能である。
【0010】
実際本システムが意図したのは、距離をおいても容易に使用できる現行のバーコードに保存された情報を扱うことであった。これは、物やスーツケース、製品に関連づけた識別装置を使用することにより達成され、メモリに保存されたデータと添付されたバーコード自体にあるデータの無線による遠距離通信を可能にしている。これらの識別装置は、関連づけた物の読み取り内容記録と位置確認に無線通信規格IEEE 802.15.4通信モジュールを使用している。これにより、いくつかの読み取り装置つまりイニシャライザ(開始装置)によって、また管理区域を、識別装置と関連づけた物の位置確認が簡単にできる連続した作用域に分割するステーション網によって、管理が可能である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このため識別装置は、取り外しできる固定手段を使って、識別する物や商品に固定できるケースでできている。このケースには、無線通信規格IEEE 802.15.4に従った無線トランスミッタと保存メモリ、その電源用電池またはバッテリがあり、外部表示器を使って実施状態を表示する。このトランスミッタは省エネタイプなので、電池(例えばリチウム電池)は数年の寿命がある。
【0012】
システムはこの識別装置を機能させるために、一つのケース内部に無線通信規格IEEE 802.15.4に従った無線トランスミッタ、保存メモリを備えたマイクロコントローラ、バーコードリーダ、表示画面、電源をもつ、少なくとも一つのイニシャライザを加えている。イニシャライザは、物や商品に伴うあるいは付けられた従来のバーコードデータを識別装置のメモリに記録することができる。このデータ記録は無線通信で行われる。こうして識別装置は、光学リーダでバーコードを直接読み取られる必要はなく、無線を通して物や商品のバーコードが持つ同じ識別を供給することができる。イニシャライザの電源は再充電できる電池、起動装置を使用していない時に普通の電気網に接続できる充電器が利用できる。
【0013】
空港やショッピングセンターは、物や商品の棚卸しあるいは位置確認をしたい区域によって分配されたステーションから成る既存あるいは新たに設置した従来の送受信アンテナをもつステーション網を利用することができる。このステーション網は、さまざまな識別装置の読み取りができ、一つのアンテナ(固定式でも携帯型でも)は、その範囲(通常およそ30メートル半径内)にある識別装置をすぐさま読むことができる。ショッピングセンターや空港の該当面積をカーバするこのステーション網によって、物やスーツケースが見つかる範囲を簡単に定めることができる。つまり物やスーツケースの各識別装置は、例えばWi−Fiタイプのような、もっとも近いステーションの送受信アンテナに接続されるので、施設やその作業範囲が広くても、(例えば、より範囲の限られた手持ちのイニシャライザを使用して)見つかる境界域が小さくなり捜索が容易になる。
【0014】
各識別装置のメモリに保存された識別コードは、その物や商品のバーコードに一致しているので、異なったコードタイプがあるために複製したデータベースを使用する必要もなく、同じデータベースをこれまで使用してきたように棚卸しや追跡に利用することができる。
【0015】
この識別装置は、異なった製品への再利用を考えた簡単な仕組みで、電子管理プログラムつまりソフトウエアは、充電量が下がった時レシーバーにタイミングのよいメッセージを送る電池充電センサーを備えている。使用する固定方法は関連付ける物や商品次第である。例えばショッピングセンターの場合、商品の支払いの際にふさわしいツールを使ってのみはずせるセキュリティ対策クリップやその類似品が使用できる。空港や物流センターでの固定方法は、交換可能なセキュリティ対策留め具が考えられる。
【0016】
識別装置の電池の省エネを目的に、装置の電気回路には2つのスイッチが組み込まれている。そのうちの一つは、在庫管理を行う物に装置を固定するためにクリップを付けるときに、例えば金属製クリップの磁気効果、あるいはマイクロスイッチ上の圧力、その他の技術的に可能な仕組みを利用して閉じる。もう一つのスイッチは、直接または間接的に起動装置からの送信無線の信号を受けると閉じる。電池は、わずかに同時に2つのスイッチが閉じた時だけ回路に電気を供給する。
【0017】
イニシャライザは、始動と操作を司(つかさど)る制御装置から成り、画面に情報を表示するだけでなく、行った操作の確認として、例えば音や光での表示機能を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
これまでの説明を補完するものとして、また発明の特徴をよく理解してもらうために、本発明の特徴をよく表すものの、それに限定されない、以下のような一組の図を本説明文に添付する:
【図1】さまざまな物や商品の位置確認を可能にするアンテナ網によるシステムの機能を表す略図。
【図2】イニシャライザのブロックを表す略図。
【図3】イニシャライザを遠近法で表した図。
【図4】識別装置ブロックを表す略図。
【図5】留め具で識別装置を付けたスーツケースの例を表した図。
【図6】セキュリティクリップで識別装置を付けた衣服の例を表した図。
【実施例】
【0019】
このシステムは、関連図からも分かるように基本的にプログラミング可能で、識別したい物(2)または製品に一つずつ付けられる無線通信による単一の識別装置(1)と、その識別装置(1)をプログラミングするために、物(2)または製品が、システムならびに互換性のある送受信アンテナをもつステーション(4)網の管理下に入った時に、ラベル(22)あるいは類似の方法で付けられた、その物(2)または製品を表す同じバーコード(21)値を持つ、少なくとも一つのイニシャライザ(開始装置)(3)から成っている。これらのステーション(4)は、希望するロケーション管理または棚卸し(在庫)管理を必要とする面積あるいは区域ごとに分配されている。
【0020】
各識別装置(1)は、一時的に物(2)または商品に付ける取り外し可能な固定手段(11)と電子回路が内部にあり、外側がケースになっている。5図のように、スーツケースの取っ手に固定する固定手段(11)として、交換可能なセキュリティ留め具が考えられる。6図に示したように他の固定手段(11)の例として、衣類の盗難・万引システムと組み合わせたセキュリティクリップが考えられる。
【0021】
4図に示したように識別装置(1)内部の電子回路は、無線通信規格IEEE 802.15.に従った無線トランスミッタ(12)、データ保存メモリ(13)、数年の寿命がある電池(14)または電源バッテリ、もっとも近いステーション(4)に低バッテリー(充電量が少ない状態)を知らせる充電センサー(15)から成っている。
【0022】
識別装置の(1)の電池(14)の省エネのために、電気回路は2つの電気供給スイッチ(16a、16b)を備えている。一つのスイッチ(16a)は、金属クリップの磁気効果や、機械的あるいはそれに類似した圧力を利用して、クリップや留め具などの固定手段(11)に関連付けられている。もう一つのスイッチ(16b)は、直接または間接的にイニシャライザ(3)からの送信無線信号を受けると閉じる。電池(4)は、わずかに2つのスイッチ(16a、16b)が同時に閉じたときにだけ電気を供給する。
【0023】
図2と3に示したようにイニシャライザ(3)は、作業者が簡単に扱える手持ちのケース状になっており、内部には物(2)に付いているラベル(22)から事前に読み込んだ、またはその表面に書かれた使用中のバーコード(21)値を、識別装置(1)のメモリ(13)にアップロードする電子回路がある。このためイニシャライザ(3)は電子回路に、データ保存メモリを備えたマイクロコントローラー(32)に接続されバーコードリーダ(33)と連携した、無線通信規格IEEE 802.15.4に従ったトランスミッタ(31)を備えている。このトランスミッタ(31)を使ってバーコードリーダ(33)は、プログラムしたい識別装置(1)へ送るコード(21)数値を簡単に読み取ることができる。イニシャライザ(3)には表示画面(34)があり、そこでバーコード(21)と/あるいは識別装置(1)内に保存されている値を読むことができる。これは送信の確認または識別装置(1)チェックをするためで、制御装置(35)を使ってこれらの操作と始動が可能である。イニシャライザ(3)は、また作業の確認として音声(36)または類似の通知機能がある。イニシャライザ(3)は電源(37)を備えている。
【0024】
空港やショッピングセンターの区域ごとに分けられた送受信アンテナを備えたいくつかのステーション(4)が、物(2)やスーツケース、製品の識別装置(1)が最も近いステーション(4)のアンテナと接続される作用範囲を決める。つまり物(2)は、その通信するステーション(4)のアンテナによって、その位置が推定される。ある物(2)の位置確認は、例えば一つのスーツケースは、ステーション(4)のアンテナが、装置(1)の内部メモリ(13)に保存されているコードを知るために、その範囲内にある装置(1)に、そのコードが物(2)そのものに付いているバーコード(21)あるいは管理システム下に入った時に与えられたものと一致するかどうかを照合するだけでよい。最も近いところでの位置確認が、限定された範囲のイニシャライザ(3)を使って行われる。
【0025】
この発明の性質を十分述べ、また主たる実用化についても述べた後、記述要素の材料、形式、大きさ、配置を変更するかもしれないことは明らかであるが、そうであっても以下に請求する発明の本質的な特徴の変更はない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信によって物(2)や商品に関連付けられたいくつかの単一識別装置(1)と、その識別装置(1)内にデータを保存する少なくとも一つのイニシャライザ(3)から成る以下の特徴をもった物や商品の棚卸しならびに位置確認システム:
− 識別装置(1)は、物(2)や商品に取り外し可能な固定手段(11)によって固定できる一つのケースと、そのケース内部に一つの無線通信規格IEEE 802.15.4に従った無線トランスミッタ(12)、一つの保存メモリ(13)、電池(14)または電源バッテリ1個、少なくとも一つあるいは省エネの独立した2つのスイッチ(16a、16b)、一つの電池(14)充電センサー(15)から成っている。
− イニシャライザ(3)は、一つのケース内に、一つの無線通信規格IEEE 802.15.4に従ったトランスミッタ(31)、保存メモリを備えた一つのマイクロコントローラ(32)、一つのバーコードリーダ(33)、一つの表示画面(34)、一つの電源から成り、イニシャライザ(3)が、識別装置(1)のメモリ(13)内に、無線通信によって遠隔から照合できるよう、事前にバーコードリーダ(33)を使って読み込んだ物(2)や商品のバーコードデータ(21)を保存できる方式である。
− 互換性のある送受信アンテナを備えたステーション(4)網は、物(2)や商品の棚卸しあるいは位置確認をしたい区域ごとに分けられ、装置に最も近いステーション(4)のアンテナのメモリ(13)読み込みによって、近くの物(2)や商品の識別装置(1)のおおよその位置を知ることができる。
【請求項2】
請求項1のシステムは、2つのスイッチが同時に閉じられた場合のみ電気供給をするよう、1つのスイッチ(16a)は固定手段(11)に関連づけられ、その固定手段(11)が閉じられるか、物あるいは製品上に固定された時に作動し、一方もう1つのスイッチ(16b)は直接または間接的にイニシャライザ(3)からの無線信号を関知することを特徴とする。
【請求項3】
請求項1のシステムは、セキュリティクリップまたはそれに類似した物が固定手段(11)であることを特徴とする。
【請求項4】
請求項1のシステムは、交換可能なセキュリティ留め具が固定手段(11)であることを特徴とする。
【請求項5】
請求項1のシステムはイニシャライザ(3)がいくつかの操作ならびに始動制御装置(35)から成ることを特徴とする。
【請求項6】
請求項1のシステムは、イニシャライザ(3)が操作実施確認の音声(36)、光、または類似の通知手段をもつことを特徴とする。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−506474(P2010−506474A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530906(P2009−530906)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際出願番号】PCT/ES2007/000556
【国際公開番号】WO2008/040829
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(509096038)
【Fターム(参考)】