説明

物品搬送設備

【課題】走行台車による物品を搬送する速度の低下を避けながらも省エネルギー化を図ることができる物品搬送設備を提供する。
【解決手段】制御手段が、複数の物品移載箇所の間で物品を搬送する物品搬送作業を行わせるべく複数台の走行台車のうちから選択した作業用走行台車を、目標の物品移載箇所まで搬送用速度で走行させる搬送処理を実行するとともに、作業用走行台車と搬送処理における目標の物品移載箇所との間に、非作業用走行台車が存在する場合は、当該非作業用走行台車を、搬送用速度よりも低速の追い出し用速度で走行させて作業用走行台車の走行方向で目標の物品移載箇所よりも前方まで追い出す追い出し処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の受け取り又は受け渡しを行う物品移載箇所を複数経由する形態で走行経路に沿って走行する複数台の走行台車と、前記複数台の走行台車の走行を制御する制御手段とが設けられ、前記制御手段が、前記複数の物品移載箇所の間で物品を搬送する物品搬送作業を行わせるべく前記複数台の走行台車のうちから選択した作業用走行台車を、前記複数の物品移載箇所のうち走行目標として設定された目標の物品移載箇所まで搬送用速度で走行させる搬送処理を実行するように構成されている物品搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる物品搬送設備は、複数の物品移載箇所を経由するように複数台の走行台車を走行経路に沿って走行させて物品を搬送するものであり、複数台の走行台車のうちから搬送作業を担う走行台車として選択した作業用走行台車を目標の物品移載箇所まで搬送用速度で走行させて、その目標の物品移載箇所に対応して設けられた荷受台等から物品を受け取る又は荷受台等に物品を受け渡すように構成されている。
【0003】
そして、作業用走行台車を目標の物品移載箇所まで搬送用速度で走行させるときに、作業用走行台車の目標の物品移載箇所と作業用走行台車との間に、作業用走行台車として選択されていない非作業用走行台車が存在する場合は、作業用走行台車の走行の邪魔にならないように、作業用走行台車を目標の物品移載箇所よりも前方まで追い出す必要がある。そこで、従来では、非作業用走行台車を、搬送用速度で走行させて作業用走行台車の走行方向で目標の物品移載箇所よりも前方まで追い出すようにしていた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−339568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、物品搬送設備の搬送処理能力の低下を避けながらも省エネルギー化を図ることが望まれている。追い出し処理により追い出される非作業用走行台車は、物品の搬送に直接には関与しないが、この追い出し処理を実行しないようにして省エネルギー化を図ると、搬送処理により走行する作業用走行台車の走行の邪魔になるため、結果的に搬送処理能力が低下してしまう。
【0006】
本発明は、上記実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、設備の搬送処理能力の低下を避けながらも省エネルギー化を図ることができる物品搬送設備を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる物品搬送設備は、物品の受け取り又は受け渡しを行う物品移載箇所を複数経由する形態で走行経路に沿って走行する複数台の走行台車と、前記複数台の走行台車の走行を制御する制御手段とが設けられ、前記制御手段が、前記複数の物品移載箇所の間で物品を搬送する物品搬送作業を行わせるべく前記複数台の走行台車のうちから選択した作業用走行台車を、前記複数の物品移載箇所のうち走行目標として設定された目標の物品移載箇所まで搬送用速度で走行させる搬送処理を実行するように構成されているものであって、
その第1特徴構成は、前記制御手段が、前記作業用走行台車と前記搬送処理における目標の物品移載箇所との間に、前記作業用走行台車として選択されていない非作業用走行台車が存在する場合は、当該非作業用走行台車を、前記搬送用速度よりも低速の追い出し用速度で走行させて前記作業用走行台車の走行方向で前記目標の物品移載箇所よりも前方まで追い出す追い出し処理を実行するように構成されている点にある。
【0008】
すなわち、制御手段が搬送処理を実行することで、複数台の走行台車のうちから作業用走行台車が選択され、当該作業用走行台車は搬送用速度で目標の物品移載箇所まで走行する。そして、このように作業用走行台車を走行させるときに、作業用走行台車と搬送処理における目標の物品移載箇所との間に、非作業用走行台車が存在する場合は、制御手段が追い出し処理を実行することで、当該非作業用走行台車は、搬送用速度よりも低速の追い出し用速度で走行させて作業用走行台車の走行方向で目標の物品移載箇所よりも前方に追い出される。このように、非作業用走行台車を追い出すことで、非作業用走行台車が作業用走行台車の走行の邪魔にならなくなり、作業用走行台車を目標の物品移載箇所に走行させることができる。
【0009】
つまり、搬送処理により作業用走行台車を走行させる場合、この作業用走行台車の走行速度を減速させると、走行台車による物品の搬送する速度が低下する。これに対して、追い出し処理により非作業用走行台車を走行させる場合、この非作業用走行台車は物品の搬送には直接に係わっていないため、走行速度を低下させても作業用走行台車の走行の邪魔をしない限り設備の搬送処理能力は低下しない。また、非作業用走行速度の走行速度を低下させることにより省エネルギー化を図ることができる
【0010】
このように、搬送処理により作業用走行台車を走行させるときは、通常の搬送用速度で走行させ、追い出し処理により非作業用走行台車を走行させるときは、搬送用速度より低速の追い出し用速度で走行させることで、設備の搬送処理能力の低下を避けながらも省エネルギー化を図ることができる。
【0011】
従って、設備の搬送処理能力の低下を避けながらも走行台車の走行速度を低下させて省エネルギー化を図ることができる物品搬送設備を提供することができるに至った。
【0012】
本発明にかかる物品搬送設備の第2特徴構成は、第1特徴構成において、前記搬送用速度として、受け取り用速度とこの受け取り用速度より低速の受け渡し用速度とが設定され、前記制御手段が、前記搬送処理として、物品の受け取りを行う前記物品移載箇所を前記目標の物品移載箇所として物品を保持しない状態の前記作業用走行台車を前記受け取り用速度で走行させる空搬送処理と、物品の受け渡しを行う前記物品移載箇所を前記目標の物品移載箇所として物品を保持した状態の前記作業用走行台車を前記受け渡し用速度で走行させる実搬送処理とを実行するように構成され、且つ、前記実搬送処理にて走行させる前記作業用走行台車の前記目標物品移載箇所と当該作業用走行台車との間に前記非作業用走行台車が存在する場合に、前記追い出し処理として、当該非作業用走行台車を前記受け取り用速度より低速の追い出し用速度で走行させて当該作業用走行台車の走行方向で当該目標の物品移載箇所よりも前方まで追い出すように構成されている点にある。
【0013】
すなわち、空搬送処理により物品を保持しない状態の作業用走行台車を走行させるときは、受け取り用速度で走行させ、実搬送処理により物品を保持する状態の作業用走行台車を走行させるときは、受け取り用速度より低速の受け渡し用速度で走行させており、搬送処理においては、物品を保持しない状態の作業用走行台車の走行速度が、物品を保持する状態の作業用走行台車の走行速度より高速に設定されている。
【0014】
つまり、物品を保持しない状態の作業用走行台車の走行は、物品の荷重が掛からない分、物品を保持する状態の作業用走行台車の走行に比べて走行負荷が小さいため、物品を保持しない状態の作業用走行台車の走行速度を高速にすることで設備の搬送処理能力を向上させることができながら、物品を保持する状態の作業用走行台車の走行速度を高速にした場合に比べて省エネルギー化を図ることができる。
【0015】
また、追い出し処理により物品を保持しない状態の非作業用走行台車を走行させるときは、当該非作業用走行台車は物品を保持しない状態ではあるものの、空搬送処理により物品を保持しない状態の作業用走行台車が走行する搬送用速度としての受け取り用速度より低速で走行させることで、省エネルギー化を図ることができる。
【0016】
本発明にかかる物品搬送設備の第3特徴構成は、第2特徴構成において、前記追い出し用速度が、前記受け渡し用速度と同速度に設定されている点にある。
【0017】
すなわち、追い出し処理により走行する非作業用走行台車の走行速度を、搬送速度である受け取り用速度より低速の受け渡し用速度と同速度とすることで、省エネルギー化を図ることができ、また、追い出し処理により走行する非作業用走行台車の走行速度は、当該非作業用走行台車を追い出す実搬送処理により走行する作業用走行台車と同速度であるので、実搬送処理により走行する作業用走行台車の走行の邪魔をしない。
【0018】
そして、空搬送処理及び実搬送処理の搬送処理と追い出し処理とを実行するのに、走行台車を走行させる速度としては、受け取り用速度と受け渡し用速度(追い出し用速度)との2種類の速度でよいため、制御手段による制御の簡素化を図ることができる。
【0019】
本発明にかかる物品搬送設備の第4特徴構成は、第1又は第2特徴構成において、前記制御手段が、前記非作業用走行台車を前記追い出し処理にて走行させる場合に、当該非作業用走行台車から前記作業用走行台車の距離に基づいて前記追い出し用速度を変更設定可能に構成されている点にある。
【0020】
追い出し処理にて非作業用走行台車を走行させる場合、搬送処理にて走行させる作業用走行台車との距離が短いときは、作業用走行台車の搬送用速度より遅い速度で走行すると、作業用走行台車が目標の移載対象箇所に走行するまでに、作業用走行台車が非作業用走行台車に追いついてしまい、作業用走行台車の走行の邪魔をしてしまうが、搬送処理にて走行される作業用走行台車との距離が長いときは、作業用走行台車の搬送用速度より遅い速度で走行しても、作業用走行台車が目標の移載対象箇所に走行するまでに、非作業用走行台車が目標の移載対象箇所より下流側に走行できる場合は、作業用走行台車の走行を邪魔しない。
【0021】
すなわち、非作業用走行台車を追い出し処理にて走行させる場合に、当該非作業用走行台から作業用走行台車の距離に基づいて追い出し用速度を変更設定可能とすることにより、作業用走行台車の走行の邪魔とならない範囲で、追い出し処理にて走行させる非作業用走行台車の走行速度をできるだけ低速にすることができ、より省エネルギー化を図ることができる。
【0022】
本発明にかかる物品搬送設備の第5特徴構成は、第1〜第4特徴構成のいずれか1つにおいて、前記走行経路が、ループ状に形成されている点にある。
【0023】
すなわち、走行経路をループ状に形成することで、複数台の走行台車を同じ方向に周回走行させて物品の搬送を行うことができ、走行経路を有端状に形成して走行台車を往復走行させる場合に比べて、複数の物品移載箇所に対して複数の走行台車にて効率よく物品を搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】物品搬送設備の概略図
【図2】制御ブロック図
【図3】速度曲線を示す図
【図4】制御手段の処理内容を示すフローチャート
【図5】搬送処理及び追い出し処理を示す作用図
【図6】搬送処理及び追い出し処理を示す作用図
【図7】搬送処理及び追い出し処理を示す作用図
【図8】搬送処理及び追い出し処理を示す作用図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の物品搬送設備の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、物品搬送設備には、物品の受け取り又は受け渡しを行う物品移載箇所Pを複数経由する形態で走行経路Lに沿って走行する複数台の走行台車1が設けられている。そして、走行経路Lは、ループ状に形成されており、複数台の走行台車1として3台の走行台車1が、ループ状の走行経路Lに沿って同じ方向(図1において反時計回りとなる方向)に周回走行するように設けられている。
【0026】
また、物品搬送設備には、走行台車1との間で物品を移載するステーション2が走行経路Lに隣接する状態で設けられており、このステーション2に対応して物品移載箇所Pが設定されている。つまり、物品移載箇所Pは、この物品移載箇所Pに走行台車1が停止した状態でステーション2との間で物品の受け取り又は受け渡しを行うように走行経路L上に設定されている。
【0027】
そして、ステーション2として、走行台車1が物品を受け取る受け取り用のステーション2(走行経路L側を指す矢印を示したステーション2)と、走行台車1が物品を受け渡す受け渡し用のステーション2(走行経路Lとは反対側を指す矢印を示したステーション2)とが設けられている。
【0028】
走行経路Lに沿ってガイドレール3が敷設されており、走行台車1の夫々は、ガイドレール3に案内されて走行経路Lに沿って走行する有軌道式に構成されている。図示は省略するが、走行台車1の夫々には、物品移載箇所Pに停止した状態において、ステーション2と自己との間で物品を移載するコンベア装置やフォーク装置等の移載装置が設けられている。つまり、走行台車1の夫々は、物品移載箇所Pに停止した状態において移載装置を作動させることで、受け取り用のステーション2から自己に物品を移載して物品を受け取る、又は、自己から受け渡し用のステーション2に物品を移載して物品を受け渡すことができるように構成されている。
【0029】
図1及び図2に示すように、物品搬送設備には、複数台の走行台車1の走行や移載等の作動を制御する制御手段Hが設けられており、この制御手段Hは、地上側に設けられた中央コントローラ5と、複数台の走行台車1の夫々に設けられた走行制御用コントローラ6とで構成されている。これら中央コントローラ5と走行制御用コントローラ6とは、双方向の無線通信により各種の制御情報が授受可能に構成されている。
【0030】
そして、制御手段Hは、複数の物品移載箇所Pの間で物品を搬送する物品搬送作業を行わせるべく作業用走行台車1aを複数台の走行台車1のうちから選択し、その選択した作業用走行台車1aを、複数の物品移載箇所Pのうち走行目標として設定された目標の物品移載箇所Pまで搬送用速度で走行させ且つ目標の物品移載箇所Pに対応して設けられたステーション2との間で物品の移載作業を行う搬送処理を実行するように構成されている。ちなみに、作業用走行台車1aとして選択されていない走行台車1は、非作業用走行台車1bとして物品移載箇所Pに停止している。
【0031】
つまり、制御手段Hによる搬送処理は、中央コントローラ5にて、搬送作業情報に基づいて複数台の走行台車1から選択した作業用走行台車1aに対して搬送作業情報が送信される。搬送作業情報を受信した作業用走行台車1aの走行制御用コントローラ6にて、受信した搬送作業情報に基づいて目標の物品移載箇所Pまで予め設定された搬送用速度で走行し、目標の物品移載箇所Pにおいて移載作業(ステーション2から物品を受け取る作業又はステーション2に物品を受け渡す作業)を実行するべく、当該作業用走行台車1aの作動が制御される。
【0032】
そして、作業用走行台車1aの走行制御用コントローラ6は、移載作業が完了した時点で、中央コントローラ5に対して移載完了情報を送信するように構成されている。これにより、中央コントローラ5は、受信した移載完了情報に基づいて、各走行台車1について、搬送処理により搬送作業中である作業用走行台車1aか、搬送処理による搬送作業が終了して待機中である非作業用走行台車1bかについて、認識することができるように構成されている。
【0033】
次に、制御手段Hが実行する搬送処理について説明を加える。
中央コントローラ5は、上位の管理コンピュータから搬送作業単位の情報として搬送作業情報が与えられ、この搬送作業情報には、移載対象箇所4,8から物品を受け取る搬送作業を行うための搬送作業情報には、搬送対象の物品を受け取る物品移載箇所Pを示す目標物品移載箇所情報が含まれており、移載対象箇所4,8に物品を受け渡す搬送作業を行うための搬送作業情報には、搬送対象の物品を受け渡す物品移載箇所Pを示す目標物品移載箇所情報が含まれている。
【0034】
また、図3に示すように、搬送用速度として、速度曲線aの走行速度で走行する受け取り用速度とこの受け取り用速度より低速の速度曲線bの走行速度で走行する受け渡し用速度とが予め設定されており、走行制御用コントローラ6には、受け取り用速度に対応する速度曲線aの速度パターンと、受け渡し用速度に対応する速度曲線bの速度パターンとが記憶されている。ちなみに、速度曲線aの目標加減速度は0.1G、目標走行速度が200m/minに設定されており、速度曲線bの目標加減速度は、0.05G、目標走行速度が160m/minに設定されている。尚、走行経路Lが曲線となっている経路部分においては目標走行速度を減速させるが、詳細な説明は省略する。
【0035】
制御手段Hは、搬送処理として、物品の受け取りを行う物品移載箇所Pを目標の物品移載箇所Pとして物品を保持しない状態の作業用走行台車1aを受け取り用速度で走行させ、当該目標の物品移載箇所Pに対応して設けられたステーション2から物品を受け取る空搬送処理と、物品の受け渡しを行う物品移載箇所Pを目標の物品移載箇所Pとして物品を保持した状態の作業用走行台車1aを受け渡し用速度で走行させ、当該目標の物品移載箇所Pに対応して設けられたステーション2に物品を受け渡す実搬送処理とを実行するように構成されている。
【0036】
つまり、空搬送処理では、中央コントローラ5は、上位の管理コンピュータから与えられた搬送作業情報が、搬送対象の物品を受け取る物品移載箇所Pを示す目標物品移載箇所情報が含まれているものであると、目標の物品移載箇所P及びその物品移載箇所Pに対して走行経路Lの上流側で最も近くに位置する非作業用走行台車1bを作業用走行台車1aとして選択し、当該作業用走行台車1aに対して搬送作業情報を送信する。そして、搬送作業情報を受信した作業用走行台車1aに設けられた走行制御用コントローラ6にて、受信した搬送作業情報に基づいて目標の物品移載箇所Pまで予め設定された受け取り用速度で走行し、当該目標の物品移載箇所Pに対応するステーション2から物品を受け取る移載作業を実行するべく、作業用走行台車1aの作動が制御される。
【0037】
また、実搬送処理では、中央コントローラ5は、上位の管理コンピュータから与えられた搬送作業情報が、搬送対象の物品を受け渡す物品移載箇所Pを示す目標物品移載箇所情報が含まれているものであると、当該搬送対象の物品を保持した状態の作業用走行台車1a(空搬送処理で選択した走行台車1)を選択し、当該作業用走行台車1aに対して搬送作業情報を送信する。そして、搬送作業情報を受信した作業用走行台車1aに設けられた走行制御用コントローラ6にて、受信した搬送作業情報に基づいて目標の物品移載箇所Pまで予め設定された受け渡し用速度で走行し、当該目標の物品移載箇所Pに対応するステーション2に物品を受け渡す移載作業を実行するべく、作業用走行台車1aの作動が制御される。
【0038】
次に、制御手段Hが実行する追い出し処理について説明する。
制御手段Hは、作業用走行台車1aと搬送処理における目標の物品移載箇所Pとの間に、作業用走行台車1aとして選択されていない非作業用走行台車1bが存在する場合は、当該非作業用走行台車1bを、搬送用速度よりも低速の追い出し用速度で走行させて作業用走行台車1aの走行方向で目標の物品移載箇所Pよりも前方まで追い出す追い出し処理を実行するように構成されている。
【0039】
具体的には、実搬送処理にて走行させる作業用走行台車1aの目標物品移載箇所Pと当該作業用走行台車1aとの間に非作業用走行台車1bが存在する場合に、追い出し処理として、当該非作業用走行台車1bを受け取り用速度より低速の追い出し用速度で走行させて当該作業用走行台車1aの走行方向で当該目標の物品移載箇所Pよりも前方まで追い出すように構成されている。そして、追い出し処理における追い出し用速度は、実搬送処理における受け渡し用速度と同速度に設定されている。
ちなみに、空搬送処理では、目標の物品移載箇所Pに非作業用走行台車1bが停止している場合はその非作業用走行台車1b、当該非作業用走行台車1bが存在しない場合は、目標の物品移載箇所Pに対して走行経路Lの上流側で最も近くに位置する非作業用走行台車1bを作業用走行台車1aとして選択するため、通常、空搬送処理にて走行させる作業用走行台車1aの目標の物品移載箇所Pと当該作業用走行台車1aとの間に非作業用走行台車1bは存在しないようになっている。
【0040】
つまり、追い出し処理では、中央コントローラ5は、実搬送処理にて走行させる作業用走行台車1aの目標の物品移載箇所Pと当該作業用走行台車1aとの間に非作業用走行台車1bが存在すると認識していると、作業用走行台車1aに対して搬送作業情報を送信するとともに当該非作業用走行台車1bに対して追い出し情報を送信する。そして、追い出し情報を受信した非作業用走行台車1bに設けられた走行制御用コントローラ6にて、受信した追い出し情報に基づいて目標の物品移載箇所Pまで予め設定された追い出し用速度(受け渡し用速度と同速度)で走行させるべく、非作業用走行台車1bの走行が制御される。ちなみに、追い出し情報には、非作業用走行台車1bの目標の物品移載箇所Pとして、作業用走行台車1aの目標の物品移載箇所Pの次の物品移載箇所Pをこの物品移載箇所Pを示す目標物品移載箇所情報が含まれている。
【0041】
次に、図5〜図8に基づいて、制御装置Hによる搬送処理及び追い出し処理について具体例を挙げて説明する。尚、具体例を挙げて説明するにあたり、図5〜図8に示すように、複数のステーション2について、右上のステーション2から反時計回りに順に2a,2b,2c…の符号を付して説明し、物品移載箇所Pについても、右上の物品移載箇所Pから反時計回りに順にPa,Pb,Pc…の符号を付して説明する。
【0042】
図5及び図6に示すように、非作業用走行台車1bが、物品移載箇所Pa,Pb,Pgに停止している状態で、搬送対象の物品を受け取る物品移載箇所Pが物品移載箇所Pcであり、搬送対象の物品を受け渡す物品移載箇所Pが物品移載箇所Pfであるときは、制御手段Hにて空搬送処理が実行されることにより、目標の物品移載箇所Pcに対して走行経路Lの上流側に最も近くの非作業用走行台車1bである物品移載箇所Pbに停止している非作業用走行台車1bが作業用走行台車1aとして選択され、図7に示すように、その非作業用走行台車1bが、物品移載箇所Pcまで速度曲線aのような高速の受け取り用速度で走行し、ステーション2cから物品を受け取る。
【0043】
その後、制御手段Hにて実搬送処理が実行されることで、物品移載箇所Pcに停止している作業用走行台車1aが選択され、図8に示すように、当該作業用走行台車1aが、物品移載箇所Pfまで速度曲線bのような低速の受け渡し用速度で走行してステーション2fに物品を受け渡す。このとき、実搬送処理にて走行させる作業用走行台車1aの目標の物品移載箇所Pと当該作業用走行台車1aとの間に非作業用走行台車1bが位置しており、追い出し対象の非作業用走行台車1bが存在するので、制御手段Hにて実搬送処理と平行して追い出し処理が実行され、このように制御手段Hにて追い出し処理が実行されることで、実搬送処理にて走行させる作業用走行台車1aの目標の物品移載箇所Pと当該作業用走行台車1aとの間に存在する非作業用走行台車1bが、作業用走行台車1aの走行の開始と同時又は略同時に走行を開始して、物品移載箇所Pgまで受け渡し用速度で走行する。
【0044】
また、図4に示すように、制御手段Hにて実搬送処理が実行されるときに、実搬送処理にて走行させる作業用走行台車1aの目標の物品移載箇所Pと当該作業用走行台車1aとの間に追い出し対象の非作業用走行台車1bが存在しない場合は、追い出し処理は実行されず実搬送処理のみが実行される。
【0045】
ちなみに、実搬送処理にて走行させる作業用走行台車1aの目標の物品移載箇所Pと当該作業用走行台車1aとの間に、その間に位置する物品移載箇所P又は当該目標の物品移載箇所Pと同じ物品移載箇所Pを目標の物品移載箇所Pとする作業用走行台車1aが存在する場合は、その作業用走行台車1aの実搬送処理が終了して非作業用走行台車1bとなった当該非作業用走行台車1bに対して追い出し処理が実行される。
【0046】
また、実搬送処理にて走行させる作業用走行台車1aの目標の物品移載箇所Pと当該作業用走行台車1aとの間に、追い出し対象の非作業用走行台車1bが2台存在する場合は、作業用走行台車1aに近い非作業用走行台車1bに対して、作業用走行台車1aの目標の物品移載箇所Pの次の物品移載箇所Pを目標の物品移載箇所Pとして追い出し処理が実行され、作業用走行台車1bから遠い非作業用走行台車1bに対して、作業用走行台車1aの目標の物品移載箇所Pの次の次の物品移載箇所Pを目標の物品移載箇所Pとして追い出し処理が実行される。
【0047】
また、追い出し処理により追い出される非作業用走行台車1bの目標の物品移載箇所Pに別の非作業用走行台車1bが存在する場合は、その別の非作業用走行台車1bに対して、当該目標の物品移載箇所Pの次の物品移載箇所Pを目標の物品移載箇所Pとして追い出し処理が実行される。
【0048】
このように、物品を受け取るために物品を保持しない走行台車1を目標の物品移載箇所Pに走行させるときは、高速の受け取り用速度で走行させ、物品を受け渡すために物品を保持する走行台車1を目標の物品移載箇所Pに走行させるときは、低速の受け渡し用速度で走行させるようになっている。そして、物品を保持しない走行台車1を追い出すために目標の物品移載箇所Pまで走行させるときは、物品を保持していないにも関らず低速の受け渡し用速度と同速度の追い出し用速度で走行させて不必要な高速走行を避けるようになっている。このように、物品を保持していないものの物品の搬送には直接関係のない走行台車1を走行させるときは、低速の受け渡し用速度と同速度の追い出し用速度で走行させることで、省エネルギー化が図られている。
【0049】
〔別実施形態〕
(1) 上記実施形態では、搬送用速度として、受け取り用速度とこの受け取り用速度より低速の受け渡し用速度とを設定し、空搬送処理では作業用走行台車1aを受け取り用速度で走行させ、実搬送処理では作業用走行台車1aを受け渡し用速度で走行させて、空搬送処理での作業用走行台車1aの走行速度と実搬送処理での作業用走行台車1aの走行速度とを異なる走行速度に設定したが、空搬送処理での作業用走行台車1aの走行速度と実搬送処理での作業用走行台車1aの走行速度とを同じ走行速度に設定してもよい。
【0050】
この場合、追い出し用速度として、搬送用速度と同速度の高速追い出し用速度と、搬送用速度より低速の低速追い出し用速度とを設定し、非作業用走行台車1bを追い出し処理にて走行させる場合に、非作業用走行台車1bから作業用走行台車1aの距離が近い場合は非作業用走行台車1bを高速追い出し用速度で走行させ、非作業用走行台車1bから作業用走行台車1aの距離が遠い場合は非作業用走行台車1bを低速追い出し用速度で走行させるように、非作業用走行台車1bから作業用走行台車1aの距離に基づいて追い出し用速度を変更設定可能に構成してもよい。
【0051】
また、搬送用速度として、受け取り用速度とこの受け取り用速度より低速の受け渡し用速度とを設定した場合でも、追い出し用速度として、受け渡し用速度と同速度の高速追い出し用速度と、受け渡し用速度より低速の低速追い出し用速度とを設定し、非作業用走行台車1bを追い出し処理にて走行させる場合に、非作業用走行台車1bから作業用走行台車1aの距離が近い場合は非作業用走行台車1bを高速追い出し用速度で走行させ、非作業用走行台車1bから作業用走行台車1aの距離が遠い場合は非作業用走行台車1bを低速追い出し用速度で走行させるように、非作業用走行台車1bから作業用走行台車1aの距離に基づいて追い出し用速度を変更設定可能に構成してもよい。
【0052】
(2) 上記実施形態では、追い出し用速度を、受け渡し用速度を同速度に設定したが、追い出し用速度を、受け取り用速度より低速で且つ受け渡し用速度より高速に設定してもよい。
【0053】
(3) 上記実施形態では、走行経路Lを、ループ状に形成して無端形状としたが、走行経路Lを、一直線状に形成する等により有端形状としてもよい。
【0054】
(4) 上記実施形態では、非作業用走行台車1bを物品移載箇所Pに停止させたが、例えば、隣接する物品移載箇所Pの間に設定された待機用の待機箇所に停止させる等、非作業用走行台車1bを物品移載箇所P以外に停止させてもよい。
【0055】
(5) 上記実施形態では、追い出し処理として、実搬送処理による作業用走行台車1aの走行の開始と同時又は略同時に非作業用走行台車1bの走行を開始させたが、追い出し処理として、実搬送処理により走行する作業用走行台車1aとの距離が設定距離となったときに作業用走行台車1bの走行を開始させるようにしてもよい。
【0056】
説明を加えると、設定距離として、追い出し処理にて非作業用走行台車1bの走行を開始して追い出し用速度における目標走行速度まで加速する間に、実搬送処理にて受け取り用速度(追い出し用速度と同じ速度)における目標走行速度で走行している作業用走行台車1aに追いつかれない距離を設定する。このような設定距離を設定しておくことで、追い出し処理として、実搬送処理により走行する作業用走行台車1aとの距離が設定距離となったときに作業用走行台車1bの走行を開始させても、非作業用走行台車1bが作業用走行台車1aに追い付かれないため、非作業用走行台車1bが作業用走行台車1aの走行の邪魔にならない。よって、実搬送処理により走行する作業用走行台車1aとの距離が設定距離以下となったときに追い出し処理により走行する非作業用走行台車1bの走行を開始させることにより、非作業用走行台車1bの走行の開始を遅らせることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 走行台車
1a 作業用走行台車
1b 非作業用走行台車
H 制御手段
L 走行経路
P 物品移載箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品の受け取り又は受け渡しを行う物品移載箇所を複数経由する形態で走行経路に沿って走行する複数台の走行台車と、
前記複数台の走行台車の走行を制御する制御手段とが設けられ、
前記制御手段が、前記複数の物品移載箇所の間で物品を搬送する物品搬送作業を行わせるべく前記複数台の走行台車のうちから選択した作業用走行台車を、前記複数の物品移載箇所のうち走行目標として設定された目標の物品移載箇所まで搬送用速度で走行させる搬送処理を実行するように構成されている物品搬送設備であって、
前記制御手段が、前記作業用走行台車と前記搬送処理における目標の物品移載箇所との間に、前記作業用走行台車として選択されていない非作業用走行台車が存在する場合は、当該非作業用走行台車を、前記搬送用速度よりも低速の追い出し用速度で走行させて前記作業用走行台車の走行方向で前記目標の物品移載箇所よりも前方まで追い出す追い出し処理を実行するように構成されている物品搬送設備。
【請求項2】
前記搬送用速度として、受け取り用速度とこの受け取り用速度より低速の受け渡し用速度とが設定され、
前記制御手段が、
前記搬送処理として、物品の受け取りを行う前記物品移載箇所を前記目標の物品移載箇所として物品を保持しない状態の前記作業用走行台車を前記受け取り用速度で走行させる空搬送処理と、物品の受け渡しを行う前記物品移載箇所を前記目標の物品移載箇所として物品を保持した状態の前記作業用走行台車を前記受け渡し用速度で走行させる実搬送処理とを実行するように構成され、
且つ、前記実搬送処理にて走行させる前記作業用走行台車の前記目標物品移載箇所と当該作業用走行台車との間に前記非作業用走行台車が存在する場合に、前記追い出し処理として、当該非作業用走行台車を前記受け取り用速度より低速の追い出し用速度で走行させて当該作業用走行台車の走行方向で当該目標の物品移載箇所よりも前方まで追い出すように構成されている請求項1記載の物品搬送設備。
【請求項3】
前記追い出し用速度が、前記受け渡し用速度と同速度に設定されている請求項2記載の物品搬送設備。
【請求項4】
前記制御手段が、前記非作業用走行台車を前記追い出し処理にて走行させる場合に、当該非作業用走行台車から前記作業用走行台車の距離に基づいて前記追い出し用速度を変更設定可能に構成されている請求項1又は2記載の物品搬送設備。
【請求項5】
前記走行経路が、ループ状に形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の物品搬送設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−192060(P2011−192060A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58140(P2010−58140)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】