説明

物品移動管理システム及び物品移動管理方法

【課題】物品の移動方向を検知する、検知精度の高い物品移動管理システム及び物品移動管理方法を提供する。
【解決手段】物品移動管理システム及び物品移動管理方法は、微妙な調整技術等を必要とせずに、物品40の移動方向に対して所定の間隔を置いて直列に少なくとも2箇所に配置されたアンテナ11、12、13、14による、所定の検知時間における、物品40に付されたRFIDタグ41の読取り回数を比較することにより、物品40の移動方向を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品に付されたRFIDタグの読取り回数を比較することによる、物品移動管理システム及び物品移動管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アパレル販売店の商品倉庫などのように、出入口が一つしかない場所においては、商品にRFID(Radio Frequency Identifier)タグ等を付したうえで、出入口に商品が通過したことを検知するセンサを設置して、商品の入出庫を管理していた。
【0003】
また、タグ等を付し得ない人間の移動を出入口で管理する方法(例えば特許文献1)も知られている。特許文献1に記載の発明は、コンビニエンスストアの出入り口に、内外2組のセンサを直列設置して、それらのセンサの示す状態遷移順序により、来客の入店、退店数を管理するものである。
【特許文献1】特開2004−133583号公報(段落0025〜0027、図2、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のような、入退店管理システムにおいては、単指向性アンテナの読取る順番により、入退店を検知する。そして、アンテナ方向の設定には微妙な調整技術を要し、また、電波干渉などの専門知識も必要になってくる。つまり、方向のわずかなずれや不具合によって、検知精度が低くなるという問題がある。
そこで、本発明は、物品の移動方向を検知する、検知精度の高い物品移動管理システム及び物品移動管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明に係る物品移動管理システム及び物品移動管理方法は、物品の移動方向に対して所定の間隔を置いて直列に少なくとも2箇所にアンテナを設置し、所定の検知時間における、各アンテナによるRFIDタグの読取り回数を比較することにより、移動方向を検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、アンテナ方向の設定についての微妙な調整技術や電波干渉などの専門知識を要することなく、物品の移動方向を検知する、検知精度の高い物品移動管理システム及び物品移動管理方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下「本実施形態」という)に係る物品移動管理システム及び物品移動管理方法を、図面に沿って詳細に説明する。
【0008】
本実施形態については、処理手順(フローチャート)の選択によって、以降、第1の実施形態及び第2の実施形態に分けて説明する。
第1の実施形態においては、検知を1回行うことにより、入庫・出庫・未定のいずれかを検知する。第2の実施形態においては、未定の判断を回避すべく、入庫・出庫のいずれかが検知されるまで、検知を繰り返す。
第1の実施形態では図10のフローチャートを適用するのに代えて、第2の実施形態は、図11のフローチャートを適用する。そして、第1の実施形態のデータベースは、再検知用データベース109を有しないが、第2の実施形態のデータベースは、再検知用データベース109を有する。また、第1の実施形態のプログラムも、第2の実施形態のプログラムも入庫・出庫検知プログラム105を有するが、その内容は、それぞれ図10、図11のフローチャートに応じた内容となる。前記以外は、両者は同様でよい。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る物品移動管理システム及び物品移動管理方法の全体構成図である。
物品40には、個々の物品40に一対一に対応したタグID(タグに固有の識別子)を埋め込んだRFIDタグ41が付されている。当該タグは、RFID技術によって読取り可能である。
物品40が倉庫等(図示せず)から出て行く(図1の矢印の方向が「出庫」の方向とする)、あるいは、倉庫等へ入って行く通路の、倉庫等の内側に近い位置にポール1、2が、遠い位置にポール3、4が、通路を挟んで設置されている。ポール1、2には各々アンテナ11、12が相互に対向するように設置されており、アンテナ11、12は、受信機21に接続されている。受信機21は、受信機ステーション31に接続されている。アンテナ11、12、13、14は水平面無指向性アンテナである。
同様に、ポール3、4には各々アンテナ13、14が相互に対向するように設置されており、アンテナ13、14は、受信機22に接続されている。受信機22は、受信機ステーション32に接続されている。そして、受信機ステーション31、受信機ステーション32は、上位機器33に接続されている。受信機ステーション31、受信機ステーション32、及び上位機器33は、特許請求の範囲に記載のコンピュータに相当する。また、上位機器33は、特許請求の範囲に記載の検知装置にも相当する。
ちなみに、作動周波数がUHF帯のRFIDタグ41の場合、一般的にRFIDタグ41がアンテナ11、12、13、14から5m以内にあれば、アンテナ11、12、13、14によりタグIDが読取られる。つまり、5mが読取り可能距離(範囲)となる。なお、距離は例示である。
【0010】
図2は、本実施形態に係る受信機ステーション31、32の構成図である。受信機ステーション31、32は、受信機21、22がRFIDタグ41を読取った回数をカウントする機能を有する。なお、受信機ステーション31、受信機ステーション32は同じ構成でよい。
受信機ステーション31(32)は、CPU(制御装置)51、主記憶装置52、外部記憶装置53、モニタ54、キーボード55及びマウス56から構成される。これらは、バスを介して相互に接続されている。主記憶装置52には、読取り制御プログラム100、タグ読取りプログラム101及び読取り数カウントプログラム102がロードされ、CPU51により実行される。外部記憶装置53には、RFIDタグ読取り回数データベース103が格納されている。
【0011】
図3は、本実施形態に係る上位機器33の構成図である。上位機器33は、受信機ステーション31によるRFIDタグ読取り回数と、受信機ステーション32によるRFIDタグ読取り回数とを比較し、入出庫を検知する機能を有する。
上位機器33は、CPU(制御装置)61、主記憶装置62、外部記憶装置63、モニタ64、キーボード65及びマウス66から構成される。これらは、バスを介して相互に接続されている。主記憶装置62には、タグ読取り数比較プログラム104、入庫・出庫検知プログラム105がロードされ、CPU61により実行される。外部記憶装置63には、入庫・出庫状況データベース106、1回目読取り回数比較データベース107、2回目読取り回数比較データベース108及び再検知用データベース109が格納されている。
【0012】
図4(a)は、本実施形態の原理を説明する説明図である。図4(b)は、物品40の位置と、その位置における単位時間当たりのRFIDタグ41の読取り回数との関係を示した図である。
図4(a)に示すように、RFIDタグ41を付した物品40の通路の両側にアンテナ11、12、13、14が設置されている。そしてそれぞれのアンテナは、RFIDタグ41を読取るための電波を同じ電界強度で、単位時間あたり同じ回数だけ間欠的に発している。
物品40は、図の左から右の方向にほぼ等速度で移動するものとする。
物品40が、点P1まで進むと、アンテナ11、12によってRFIDタグ41が読取り可能となり、点P2まで進むと、アンテナ13、14によっても読取り可能となる。さらに、物品40が、点P3まで進むと、アンテナ11、12では読取りが不可能になり、点P4まで進むとアンテナ13、14でも読取りが不可能になる。
【0013】
一般に、電界強度が低下すると、読取り確率は低下する。
具体的には、物品40が点P1を通過してしばらくは、アンテナ11、12との交信状態が漸次安定度を増しつつあるため、アンテナ11、12による読取り回数は増加している。物品40がアンテナ11、12に充分接近すると、交信状態は完全に安定し、読取り回数はほぼ一定で安定している。やがて、物品40が点P3の手前にさしかかると、交信状態が漸次安定さを欠き始め、読取り回数が減少し、物品40が点P3に到達すると読取り回数は0となる。
【0014】
同様に、物品40が点P2を通過してしばらくは、アンテナ13、14との交信状態が漸次安定度を増しつつあるため、アンテナ13、14による読取り回数は増加している。物品40がアンテナ13、14に充分接近すると、交信状態は完全に安定し、読取り回数はほぼ一定で安定している。やがて、物品40が点P4の手前にさしかかると、交信状態が漸次安定さを欠き始め、読取り回数が減少し、物品40が点P4に到達すると読取り回数は0となる。
従って、アンテナ11、12による単位時間あたりの読取り回数のグラフ、及びアンテナ13、14による単位時間あたりの読取り回数のグラフは、図4(b)に示すように、いずれも相互にほぼ相似な、台形に近い形状になる。そして、アンテナ13、14による単位時間あたりの読取り回数のグラフが時間的に後(図の右側)にずれることが知られている。
【0015】
物品40が点P1に達した時刻から、物品40が点P4に達する時刻までの時間帯を半分に分け、前半(「1回目」と後記する場合がある)及び後半(「2回目」と後記する場合がある)とする。すると、物品40が図の左から右の方向に移動(出庫)している場合は、前半には、アンテナ11、12による読取り回数がアンテナ13、14による読取り回数よりも多くなり、後半には、アンテナ13、14による読取り回数がアンテナ11、12による読取り回数よりも多くなる。
以下に説明する物品40の移動(入出庫)の検知には、当該原理が応用されている。
【0016】
図5は、本実施形態に係るRFIDタグ読取り回数データベース103の一例を示す図である。RFIDタグ読取り回数データベース103は、受信機ステーション31(32)の外部記憶装置53に記憶されている(図2参照)。
読取ったRFIDタグ41のタグIDが、RFIDタグID欄400に記憶されている。読取ったRFIDタグ41のタグIDに関連付けて、読取り回数が読取り回数欄401に記憶されている。
ちなみに、当該RFIDタグ読取り回数データベース103の第1行目のデータ(レコード)は、所定の時間内にアンテナ11、12(13、14)が、RFIDタグIDが“10000”であるRFIDタグ41を読取った回数が80回であることを示している。
【0017】
図6(a)は、本実施形態に係る1回目読取り回数比較データベース107の一例を示す図である。1回目読取り回数比較データベース107は、上位機器33の外部記憶装置63に記憶されている(図3参照)。
読取ったRFIDタグ41のタグIDが、RFIDタグID欄402に記憶されている。読取ったRFIDタグ41のタグIDに関連付けて、アンテナ11、12による読取り回数が受信機ステーション31読取り回数欄403に、アンテナ13、14による読取り回数が受信機ステーション32読取り回数欄404に記憶されている。
ちなみに、当該1回目読取り回数比較データベース107の第1行目のデータ(レコード)は、1回目の読取りにおいて、RFIDタグIDが“10000”であるRFIDタグ41を、アンテナ11、12は80回、アンテナ13、14は34回読取ったことを示している。
【0018】
図6(b)は、本実施形態に係る2回目読取り回数比較データベース108の一例を示す図である。2回目読取り回数比較データベース108は、上位機器33の外部記憶装置63に記憶されている(図3参照)。
読取ったRFIDタグ41のタグIDが、RFIDタグID欄405に記憶されている。読取ったRFIDタグ41のタグIDに関連付けて、アンテナ11、12による読取り回数が受信機ステーション31読取り回数欄406に、アンテナ13、14による読取り回数が受信機ステーション32読取り回数欄407に記憶されている。
ちなみに、当該2回目読取り回数比較データベース108の第1行目のデータ(レコード)は、2回目の読取りにおいて、RFIDタグIDが“10000”であるRFIDタグ41を、アンテナ11、12は20回、アンテナ13、14は70回読取ったことを示している。
【0019】
図6(c)は、本実施形態に係る再検知用データベース109の一例を示す図である。再検知用データベース109は、上位機器33の外部記憶装置63に記憶されている(図3参照)。
ここにおいては、1回目の読取り回数と2回目の読取り回数が合計されて記憶されている。読取ったRFIDタグ41のタグIDが、RFIDタグID欄410に記憶されている。読取ったRFIDタグ41のタグIDに関連付けて、1回目及び2回目にアンテナ11、12が読取った回数が受信機ステーション31合計欄411に、1回目及び2回目にアンテナ13、14が読取った回数が受信機ステーション32合計欄412に記憶されている。
ちなみに、当該再検知用データベース109の第1行目のデータ(レコード)は、1回目及び2回目の通算で、RFIDタグIDが“10000”であるRFIDタグ41を、アンテナ11、12は100回、アンテナ13、14は104回読取ったことを示している。すなわち、411の値=403の値+406の値、412の値=404の値+407の値となっている。
【0020】
図7(a)は、本実施形態に係るタグ読取り数比較プログラム104が1回目の読取り回数を比較する際の、比較結果とそれに対応して立てる状態フラグとの対応関係を示した図である。アンテナ11、12による読取り回数とアンテナ13、14による読取り回数の大小関係が、1回目比較結果欄300に、1回目比較結果に対応して立てる状態フラグが、状態フラグ欄301に定義されている。
ちなみに、図7(a)の第1行目は、アンテナ11、12による読取り回数が、アンテナ13、14による読取り回数より多い場合は、状態フラグ“A”が立てられることを示している。
【0021】
図7(b)は、本実施形態に係るタグ読取り数比較プログラム104が2回目の読取り回数を比較する際の、比較結果とそれに対応して立てる状態フラグとの対応関係を示した図である。アンテナ11、12による読取り回数とアンテナ13、14による読取り回数の大小関係が、2回目比較結果欄302に、2回目比較結果に対応して立てる状態フラグが、状態フラグ欄303に定義されている。
ちなみに、図7(b)の第1行目は、アンテナ11、12による読取り回数が、アンテナ13、14による読取り回数より多い場合は、状態フラグ“a”が立てられることを示している。
【0022】
図7(c)は、本実施形態に係る入庫・出庫検知プログラム105が入庫・出庫・未定を判断する際の、状態フラグの組み合わせと、当該判断との対応関係を示した図である。1回目比較結果に対応して立てる状態フラグが1回目状態フラグ欄304に、2回目比較結果に対応して立てる状態フラグが2回目状態フラグ欄305に、1回目フラグ欄のフラグと2回目フラグ欄のフラグの組み合わせに対応して行われる入庫・出庫・未定の判断(「入庫」、「出庫」又は「未定」)が入庫・出庫・未定の判断欄306に定義されている。
ちなみに、図7(c)の第2行目は、1回目状態フラグが“A”であってかつ2回目状態フラグが“b”である場合は、入庫・出庫・未定の判断は、“出庫”であることを、第4行目は、1回目状態フラグが“B”であってかつ2回目状態フラグが“a”である場合は、入庫・出庫・未定の判断は、“入庫”であることをしめしている。その他の場合は、入庫・出庫・未定の判断は、“未定”とする。“未定”と判断される確率は極めて小さい。
【0023】
図8は、本実施形態に係る入庫・出庫状況データベース106の一例を示す図である。入庫・出庫状況データベース106は、上位機器33の外部記憶装置63に記憶されている(図3参照)。
入庫・出庫検知プログラム105が入庫・出庫・未定を判断した結果がここに記憶される。具体的には、読取ったRFIDタグ41のIDが、RFIDタグID欄408に、入庫・出庫・未定の状況が、状況欄409に、読取ったRFIDタグ41のIDに関連付けて記憶されている。
ちなみに、図8の第1行目は、RFIDタグIDが“10000”であるRFIDタグ41を付した物品40が、“出庫”したことを示している。
【0024】
図9は、受信機ステーション31(32)によるRFIDタグ41の読取り回数のカウント手順を示すフローチャートである。
以下の手順(ステップS201〜ステップS207)は、受信機ステーション31及び受信機ステーション32の両者において同様の処理が同時に行われるものとする。そして、以下では代表として、受信機ステーション31の処理を説明していく。
【0025】
図9の処理を開始する以前の前提として、CPU51は、主記憶装置52において読取り制御プログラム100を実行し、アンテナ11、12、13、14に対しては読取り電波を発信するように常時命令を出しており、受信機21、22に対してはアンテナ11、12、13、14からの読取り信号を受信するように常時命令を出している(図4(a)参照)。
【0026】
物品40に付したRFIDタグ41がアンテナ11、12によって読取り可能になると(物品40が図4(a)の点P1に到達すると)、CPU51は、主記憶装置52においてタグ読取りプログラム101を実行する。アンテナ11、12は、RFIDタグ41のタグIDの読取りを開始する(ステップS201)。
【0027】
CPU51は、設定された検知時間のカウントを開始する(ステップS202)。
検知時間とは、RFIDタグ41の読取り回数をカウントする、ある時間的長さを有する期間を意味する。検知時間は、図4(a)において、物品40が点P1に到達してから点P4に到達するまでに要する時間であり、物品40の移動速度、電界強度、及びアンテナ11、12とアンテナ13、14との間の距離を勘案して設定する。例えば、物品40の移動速度が速いほど検知時間は短く設定され、アンテナ11、12とアンテナ13、14との間の距離が短いほど検知時間は短く設定される。
なお、物品40の移動速度を検知し、検知した移動速度に応じて動的に検知時間を設定するようにしてもよいが、本実施形態では、検知時間は、物品40の平均的な移動速度での固定的なものとする。
【0028】
CPU51は、主記憶装置52において読取り数カウントプログラム102を実行し、設定された検知時間の半分の時間が経過するまで、RFIDタグ41のタグIDの読取り回数をカウントする(ステップS203)。
読取り回数401は、外部記憶装置53のRFIDタグ読取り回数データベース103の中で、読取ったRFIDタグIDと関連付けて記憶される(図5)。
【0029】
設定された検知時間の半分の時間が経過した際、CPU51は、RFIDタグ読取り回数データベース103から、RFIDタグID欄400に記憶されているタグIDとそれに関連付けて記憶されている読取り回数欄401の読取り回数を読み出し、上位機器33に転送する(ステップS204)。
転送された読取り回数は、上位機器33により、外部記憶装置63の1回目読取り回数比較データベース107に記憶される(図6(a))。
図5におけるRFIDタグID欄400は、図6(a)におけるRFIDタグID欄402に対応している。図5における読取り回数欄401は、図6(a)における受信機ステーション31読取り回数欄403(受信機ステーション32から転送される場合は、受信機ステーション32読取り回数欄404)に対応している。
【0030】
CPU51は、RFIDタグ読取り回数データベース103の読取り回数欄401の値を一旦“0”に戻す(ステップS205)。そして、CPU51は再び、主記憶装置52において読取り数カウントプログラム102を実行し、設定された検知時間の全ての時間が経過するまで、RFIDタグ41の読取り回数をカウントする(ステップS206)。
読取り回数401は、外部記憶装置53のRFIDタグ読取り回数データベース103の中で、読取ったRFIDタグID400と関連付けて記憶される(図5)。
【0031】
設定された検知時間の全ての時間が経過した際、CPU51は、RFIDタグ読取り回数データベース103から、RFIDタグID欄400に記憶されているタグIDとそれに関連付けて記憶されている読取り回数欄401の読取り回数を読み出し、上位機器33に転送する(ステップS207)。
転送され読取り回数は、上位機器33により、外部記憶装置63の2回目読取り回数比較データベース108に記憶される(図6(b))。
図5におけるRFIDタグID欄400は、図6(b)におけるRFIDタグID欄405に対応している。図5における読取り回数欄401は、図6(b)における受信機ステーション31読取り回数欄406(受信機ステーション32から転送される場合は、受信機ステーション32読取り回数欄407)に対応している。
以上で、受信機ステーション31(32)によるRFIDタグ41の読取り回数のカウント手順は終了し、以下は、上位機器33における処理となる。
【0032】
図10は、本実施形態(第1の実施形態)に係る上位機器33による入庫・出庫・未定の検知手順を示すフローチャートである。
CPU61は、主記憶装置62のタグ読取り数比較プログラム104を実行し、外部記憶装置63に記憶されている1回目読取り回数比較データベース107(図6(a))を読み出す。そして、RFIDタグID402ごとに、それに関連付けて記憶されている、受信機ステーション31読取り回数403の値と、受信機ステーション32読取り回数404の値とを比較する。すなわち、検知時間の前半半分(1回目)におけるタグID読取り回数を比較する(ステップS208)。
【0033】
比較結果は、図7(a)の1回目比較結果300に示すように、アンテナ11、12による読取り回数(すなわち、受信機ステーション31読取り回数403の値)が多い場合、アンテナ13、14による読取り回数(すなわち、受信機ステーション32読取り回数404の値)が多い場合、または、両者の読取り回数が同じ場合、の3通りとなる。そして、それぞれの比較結果に対応した状態フラグ301“A”、“B”及び“C”が定義されている。CPU61は、当該定義に従い、主記憶装置62のなかに、1回目の状態フラグ301として、“A”、“B”又は“C”を立て、記憶する。
【0034】
同様に、CPU61は、主記憶装置62のタグ読取り数比較プログラム104を実行し、外部記憶装置63に記憶されている2回目読取り回数比較データベース108(図6(b))を読み出す。そして、RFIDタグID405ごとに、それに関連付けて記憶されている、受信機ステーション31読取り回数406の値と、受信機ステーション32読取り回数407の値とを比較する。すなわち、検知時間の後半半分(2回目)におけるタグID読取り回数を比較する(ステップS209)。
【0035】
比較結果は、図7(b)の2回目比較結果302に示すように、アンテナ11、12による読取り回数(すなわち、受信機ステーション31読取り回数406の値)が多い場合、アンテナ13、14による読取り回数(すなわち、受信機ステーション32読取り回数407の値)が多い場合、または、両者の読取り回数が同じ場合、の3通りとなる。そして、それぞれの比較結果に対応した状態フラグ303“a”、“b”及び“c”が定義されている。CPU61は、当該定義に従い、主記憶装置62のなかに、2回目の状態フラグ303として、“a”、“b”又は“c”を立て、記憶する。
【0036】
CPU61は、主記憶装置62の入庫・出庫検知プログラム105を実行し、主記憶装置62に記憶されている1回目の状態フラグ301、及び2回目の状態フラグ303を読み出す。そして、入庫・出庫・未定の検知を行う(ステップS210)。
入庫・出庫・未定の検知は、1回目の状態フラグ301と2回目の状態フラグ303との組み合わせに対して、1つの入庫・出庫・未定の判断を与えることにより行う。この判断は、図7(c)の定義に従って行われる。例えば、図7(c)において、1回目状態フラグが“A”であり、かつ、2回目状態フラグが“b”の場合、入庫・出庫・未定の判断306は“出庫”となる(2行目)。1回目状態フラグが“B”であり、かつ、2回目状態フラグが“a”の場合、入庫・出庫・未定の判断306は“入庫”となる(4行目)。それら以外の組み合わせの場合は、入庫・出庫・未定の判断306は“未定”となる。
【0037】
ステップS211で、CPU61は、外部記憶装置63の入庫・出庫状況データベース106に、入庫・出庫・未定の判断306を記憶する。図8は、入庫・出庫状況データベース106の一例である。RFIDタグID欄408には、ステップS210で入庫・出庫・未定を検知したRFIDタグ41のタグIDが記憶され、状況欄409には、入庫・出庫・未定を検知したRFIDタグ41のタグIDに関連付けて入庫・出庫・未定の判断306が記憶される(ステップS211)。これにより、全ての手順は終了する。
【0038】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、ステップS210で、入庫・出庫・未定の判断306を、“未定”の場合も含めて入庫・出庫状況データベース106に記憶する。
以下では、第1の実施形態の他に、さらに処理手順を継続し、“未定”の判断を回避する第2の実施形態を説明する。第2の実施形態では、図10のフローチャートに代わって、図11のフローチャートが適用される。
【0039】
図11は、本実施形態(第2の実施形態)に係る上位機器33による入庫・出庫の検知手順を示すフローチャートである。ステップS208及びステップS209についての説明は、第1の実施形態にて説明したものと同じである。
ステップS220においても、ステップS210と同様に入庫・出庫・未定の検知が行われる。しかしながら、第2の実施形態においては、当該検知結果に応じてそれ以降の処理が異なる。
【0040】
すなわち、ステップS220において、未定以外と検知した場合(ステップS220“未定以外”)は、ステップS225に進み、入庫・出庫の判断306を入庫・出庫状況データベース106に記憶して、全ての手順が終了する。未定と検知した場合(ステップS220“未定”)は、ステップS221以降に進み、入庫又は出庫が検知できるまで検知を繰り返す。
【0041】
ステップS221において、受信機ステーション31、32ごとに、既に読取った読取り回数の和を計算する。
具体的には、CPU61は、外部記憶装置63の1回目読取り回数比較データベース107から、受信機ステーション31読取り回数403及び受信機ステーション32読取り回数404を読み出す。また、2回目読取り回数比較データベース108から、受信機ステーション31読取り回数406及び受信機ステーション32読取り回数407を読み出す。
そして、対応するRFIDタグIDごとに、受信機ステーション31読取り回数403の値と受信機ステーション31読取り回数406の値との和、及び受信機ステーション32読取り回数404の値と受信機ステーション32読取り回数407の値との和を計算する。そして、CPU61は、計算結果を、外部記憶装置63の再検知用データベース109に記憶する。この時点で、再検知用データベース109には、1回目の読取り回数と2回目の読取り回数の和が記憶される。
【0042】
図6(c)は、再検知用データベース109の一例である。受信機ステーション31合計欄411には、RFIDタグID410ごとに関連付けて、受信機ステーション31読取り回数403の値と受信機ステーション31読取り回数406の値との和が、受信機ステーション32合計欄412には、RFIDタグID410ごとに関連付けて、受信機ステーション32読取り回数404の値と受信機ステーション32読取り回数407の値との和が記憶されている。
【0043】
次に、受信機ステーション31と受信機ステーション32は、ステップS201からステップS207までの手順を繰り返す(ステップS222)。
ステップS201からステップS207までの手順が繰り返されるとは、1回目、2回目に続き、3回目、4回目の読取り回数のカウントを、アンテナ11、12及びアンテナ13、14のそれぞれについて繰り返すことを意味する。また、3回目及び4回目の検知時間の長さは、1回目及び2回目の検知時間の長さと同じである。
【0044】
ステップS201からステップS207までの手順が繰り返された後には、1回目読取り回数データベース107には、3回目の読取り回数が、2回目読取り回数データベース108には、4回目の読取り回数が記憶されていることになる。
【0045】
ステップS223において、受信機ステーション31、32ごとに、最新の2回分の読取り回数の和を計算する。
具体的には、CPU61は、外部記憶装置63の1回目読取り回数比較データベース107から、受信機ステーション31読取り回数403及び受信機ステーション32読取り回数404を読み出す(3回目の読取り回数を読み出している)。また、2回目読取り回数比較データベース108から、受信機ステーション31読取り回数406及び受信機ステーション32読取り回数407を読み出す(4回目の読取り回数を読み出している)。
そして、対応するRFIDタグIDごとに、受信機ステーション31読取り回数403の値と受信機ステーション31読取り回数406の値との和(以下「和1」という)、及び受信機ステーション32読取り回数404の値と受信機ステーション32読取り回数407の値との和(以下「和2」という)を計算する(受信機ステーションごとに、3回目の読取り回数と4回目の読取り回数との和を計算していることになる)。
【0046】
CPU61は、和1と、再検知用データベース109の受信機ステーション31合計411の値を比較する(以下「再比較1」という)。また、 和2と、再検知用データベース109の受信機ステーション32合計412の値を比較する(以下「再比較2」という)。受信機ステーションごとに、1回目の読取り回数と2回目の読取り回数の和と、3回目の読取り回数と4回目の読取り回数の和とを比較していることになる。
【0047】
ステップS224において、CPU61は、再比較1及び再比較2の結果の組み合わせに応じて、以下のように入庫・出庫の再検知を行う。
具体的には、再比較1において、受信機ステーション31合計411の値が、和1よりも大きく、かつ、再比較2において、受信機ステーション32合計412の値が、和2よりも小さい場合(時間の経過とともに、アンテナ11、12による読取り回数は減少し、アンテナ13、14による読取り回数は増加する場合)は、出庫となる。
再比較1において、受信機ステーション31合計411の値が、和1よりも小さく、かつ、再比較2において、受信機ステーション32合計412の値が、和2よりも大きい場合(時間の経過とともに、アンテナ11、12による読取り回数は増加し、アンテナ13、14による読取り回数は減少する場合)は、入庫となる。
上記以外の場合は、“未定”となる。
【0048】
ステップS224において、“未定”以外と判断された場合は、ステップS225に進む(ステップS224“未定以外”)。
ステップS224において、“未定”と判断される確率は、極めて小さい。しかしながら、“未定”と判断された場合は、ステップS221に戻り(ステップS224“未定”)、再度ステップS221〜ステップS224の手順を繰り返す。ステップS221〜ステップS224は“出庫”または“入庫”の判断がなされるまで繰り返す。
【0049】
ステップS224“未定”の後、ステップS221に進んだ場合、受信機ステーション31、32ごとに、既に読取った読取り回数の和を計算する。
この場合の「既に読取った読取り回数の和」とは、1回目、2回目、3回目及び4回目の読取り回数を意味する。
すなわち、3回目及び4回目の読取りによっても、ステップS224で“未定”と検知される場合は、1回目、2回目、3回目及び4回目の読取り回数の和を計算する。さらに、5回目及び6回目の読取りによっても、ステップS224で“未定”と検知される場合は、1回目、2回目、3回目、4回目、5回目及び6回目の読取り回数の和を計算する。
【0050】
以降、“未定”の検知がなされる限り、1回目から、直前の入庫・出庫の再検知(ステップS224)において比較した最終のN回目までの読取り回数の和を計算する(再検知用データベース109の値と直前の入庫・出庫の再検知(ステップS224)を行うためにその直前のステップS223で計算した和とをさらに合計し、当該合計値(N回目までの累積値)が、再検知用データベース109に上書き記憶される)。
【0051】
ステップS225で、CPU61は、外部記憶装置63の入庫・出庫状況データベース106に、入庫・出庫の検知結果を記憶する。そして全ての手順が終了する。
【0052】
本実施形態においては、受信機ステーション31、受信機ステーション32及び上位機器33を別個のハードウエア上のものとして構成したが、本発明の他の実施形態は、これらの全部または一部が、同一のハードウエア上に構成されているものであってもよい。
また、本実施形態においては、1つの組には、アンテナが対向する形で2つ属する構成とした。しかしながら、1つの組に属するアンテナ数は2に限定されることはなく、1であっても、3であっても(例えば物品の移動方向に対し、左右上に設置)、4であっても(例えば物品の移動方向に対し、左右上下に設置)、それ以外の数でもよい。
なお、物品40の通過方向にアンテナ11、12、13、14を直列に配置したが、この配置により単位時間当たりの読取り回数にアンテナ位置に対応したピークが(2箇所)できるような場合、そのピーク間の時間(アンテナ間の距離に相当)に基づいて、検知時間を設定するようにしてもよい(図4参照)。ちなみに、物品40の移動速度が速くなるとピーク間の時間は短くなり、物品40の移動速度が遅くなるとピーク間の時間は長くなることから、1つの物品40の通過ごとに、ピーク間の時間に基づいて検知時間を動的に変化させてもよい。同様に、アンテナ位置に対応した立ち上がり点と立下り点ができるような場合は、それらの間の時間に基づいて、検知時間を設定するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施形態に係る物品移動管理システム及び物品移動管理方法の全体構成図である。
【図2】本実施形態に係る受信機ステーションの構成図である。
【図3】本実施形態に係る上位機器の構成図である。
【図4】(a)は、本実施形態の原理を説明する説明図である。(b)は、物品の位置と、その位置における単位時間当たりのRFIDタグの読取り回数との関係を示した図である。
【図5】本実施形態に係るRFIDタグ読取り回数データベースの一例を示す図である。
【図6】(a)は、本実施形態に係る1回目読取り回数比較データベースの一例を示す図である。(b)は、本実施形態に係る2回目読取り回数比較データベースの一例を示す図である。(c)は、本実施形態に係る再検知用データベースの一例を示す図である。
【図7】(a)は、本実施形態に係るタグ読取り数比較プログラムが1回目の読取り回数を比較する際の、比較結果とそれに対応して立てる状態フラグとの対応関係を示した図である。(b)は、本実施形態に係るタグ読取り数比較プログラムが2回目の読取り回数を比較する際の、比較結果とそれに対応して立てる状態フラグとの対応関係を示した図である。(c)は、実施形態に係る入庫・出庫検知プログラムが入庫・出庫・未定を判断する際の、状態フラグの組み合わせと、当該判断との対応関係を示した図である。
【図8】本実施形態に係る入庫・出庫状況データベースの一例を示す図である。
【図9】本実施形態に係る受信機ステーションによるRFIDタグの読取り回数のカウント手順を示すフローチャートである。
【図10】本実施形態(第1の実施形態)に係る上位機器による入庫・出庫・未定 の検知手順を示すフローチャートである。
【図11】本実施形態(第2の実施形態)に係る上位機器による入庫・出庫の検知手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
1,2,3,4 ポール
11,12,13,14 アンテナ
21,22 受信機
31,32 受信機ステーション
33 上位機器
40 物品
41 RFIDタグ
100 読取り制御プログラム
101 タグ読取りプログラム
102 読取り数カウントプログラム
103 RFIDタグ読取り回数データベース
104 タグ読取り数比較プログラム
105 入庫・出庫検知プログラム
106 入庫・出庫状況データベース
107 1回目読取り回数比較データベース
108 2回目読取り回数比較データベース
109 再検知用データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナを介して物品に付されたRFIDタグの情報を読取ることにより前記物品の移動方向を検知する物品移動管理システムであって、
前記物品の移動方向に対して所定の間隔を置いて直列に少なくとも2箇所に設置される前記アンテナと、
前記間隔および前記物品の移動速度の少なくとも一方を考慮した所定の検知時間内における各アンテナによる読取り回数を、読取られた前記RFIDタグのタグIDに関連づけてカウントする受信機ステーションと、
前記検知時間内における前記アンテナごとの読取り回数を、前記受信機ステーションから受け取り、アンテナごとの読取り回数に基づいて物品の移動方向の検知を行う検知装置を有し、
前記検知装置が、前記検知時間の前半における前記アンテナによる読取り回数をアンテナ間で比較し、前記検知時間の後半における前記アンテナによる読取り回数をアンテナ間で比較し、両者の比較結果の組み合わせに対応して、物品の移動方向を検知する、
ことを特徴とする物品移動管理システム。
【請求項2】
前記物品の移動方向の検知において、移動方向が未定であることが検知された場合は、さらに前記検知装置が、
前記アンテナによる過去の累積検知時間における累積読取り回数と、前記アンテナによる、直近の過去の検知時間に続き長さが検知時間に等しい時間における読取り回数とを、アンテナごとに比較し、両者の比較結果の組み合わせに応じて、未定以外の物品の移動方向が検知されるまで検知を繰り返す、
ことを特徴とする請求項1に記載の物品移動管理システム。
【請求項3】
コンピュータがアンテナを介して物品に付されたRFIDタグの情報を読取ることにより前記物品の移動方向を検知する物品移動管理方法であって、
前記コンピュータは、
前記物品の移動方向に対して所定の間隔を置いて直列に少なくとも2箇所に設置されるアンテナを介して、前記RFIDタグの情報を読取り、
前記間隔および前記物品の移動速度の少なくとも一方を考慮した所定の検知時間内における各アンテナによる読取り回数を、読取られた前記RFIDタグのタグIDに関連づけてアンテナごとにカウントし、
前記検知時間の前半における前記アンテナによる読取り回数をアンテナ間で比較し、前記検知時間の後半における前記アンテナによる読取り回数をアンテナ間で比較し、両者の比較結果の組み合わせに対応して、物品の移動方向を検知する、
ことを特徴とする物品移動管理方法。
【請求項4】
前記移動方向が未定であることが検知された場合に、前記コンピュータは、
前記アンテナによる過去の累積検知時間における累積読取り回数と、前記アンテナによる、直近の過去の検知時間に続き長さが検知時間に等しい時間における読取り回数とを、アンテナごとに比較し、両者の比較結果の組み合わせに応じて、未定以外の物品の移動方向が検知されるまで検知を行う、
ことを特徴とする請求項3に記載の物品移動管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−7157(P2009−7157A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172547(P2007−172547)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】