説明

特に黒色腫の処置のためのヘテロ環式有機化合物

本発明は、ある種の化合物が、MAPキナーゼシグナル伝達経路において機能するチロシンおよびセリン/スレオニンキナーゼおよびキナーゼ様タンパク質、例えばRAFキナーゼ、セリン/スレオニンキナーゼを阻害するとの発見に関し、これらの化合物を含む組成物、およびチロシンおよびセリン/スレオニンキナーゼおよびキナーゼ類似物依存性疾患、例えば血管形成、癌および心肥大を処置するためのこれらを使用する方法に関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
要約
本発明は、ある種の化合物が、MAPキナーゼシグナル伝達経路において機能するチロシンおよびセリン/スレオニンキナーゼおよびキナーゼ様タンパク質、例えばRAFキナーゼ、セリン/スレオニンキナーゼを阻害し、制御しおよび/または調節するとの発見に関し、これらの化合物を含む組成物、およびチロシンおよびセリン/スレオニンキナーゼおよびキナーゼ類似物(kinase-like)依存性疾患、例えば血管形成、癌および心肥大の処置のためにそれらを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
細胞は、それらの細胞外環境の種々の様相を、種々のシグナル伝達経路を使用することにより核に伝達している。これらのシグナルの多くはタンパク質キナーゼにより伝達され、それはホスフェート基の伝達を通して種々の因子を活性化する。適当なキナーゼ活性の阻害によるシグナル伝達の妨害は、bcr−ablキナーゼの阻害剤であり、そのメシレート塩として商品名GLEEVEC(米国で)またはGLIVECの下に市販されているイマチニブにおいて証明されている通り、臨床的利点を有し得る。
【0003】
MAPキナーゼシグナル伝達経路は、当分野で、増殖因子がそれらの増殖のためのシグナルを、細胞外環境から細胞核に伝達するための経路の一つとして知られている。増殖因子は、細胞表面上に位置する経膜受容体を活性化し、それが次いでカスケードを開始し、それによりRASが活性化され、そしてRAFキナーゼが膜に招集され、その場所でそれが活性化し、続いてMEKキナーゼを活性化し、それが次いでERKキナーゼを活性化する。活性化ERKキナーゼは核に移動でき、そこで、それは種々の遺伝子転写因子を活性化する。この経路の異常は、遺伝子転写変化、細胞増殖に至り得て、アポトーシスを負に制御し、増殖性および血管新生シグナルを伝達することにより腫瘍発現(tumorogenicity)に関与する。RAFキナーゼ阻害剤は、MAPキナーゼシグナル伝達経路を介したシグナル伝達を遮断することが示されている。
【0004】
RAFキナーゼファミリーは、RAF−1としても既知のC−RAF、B−RAFおよびA−RAFの3メンバーを有することが知られている。B−RAFキナーゼが、試験した黒色腫細胞株の59%を含むヒト癌において、数種の体細胞点突然変異の一つにより一般的に活性化されることが報告されている。Davies, H. et al, Nature 417, 949-954 (2002)参照。本発明は、RAFキナーゼファミリーの1種以上のメンバーを効率的に阻害する化合物のクラスの発見に関する。
【0005】
本化合物のRAFキナーゼ阻害特性は、それらを、異常MAPキナーゼシグナル伝達経路により特徴付けられる増殖性疾患、特にRAFキナーゼの過剰発現またはRAFキナーゼの活性化変異により特徴付けられる多くの癌、例えば変異したB−RAFを有する黒色腫、とりわけ変異したB−RAFがV599E変異体である黒色腫の治療のための治療剤として有用とする。本発明はまた、本化合物での、異常MAPキナーゼシグナル伝達経路により特徴付けられる他の状態、特にB−RAFが変異している状態、例えば変異したB−RAFを有する良性母斑(Nevi moles)の処置方法も提供する。
【発明の開示】
【0006】
記載
本発明の第一の局面は、医薬として使用するための式(I)
【化1】

〔式中、
、A、A、Aの各々は、独立してNまたはC−Rから選択され、ここで、RはHまたはCの置換基部分であり、そして、A、AおよびAの少なくとも1個はNであり;
XはN−H、置換アミノ、OまたはSから選択される架橋部分であり;
は芳香環の置換基であり、そしてnは0〜4の整数であり;
YおよびDは、独立してO、S、CH、NH、R置換C、またはR置換Nから選択され、
はYおよびDを含む環の置換基であり、そしてrは0から環の有効原子価の最大数までの整数であり;
はヒドロカルビルおよびヘテロ環から選択される部分であり;
TはH、ハロゲン、O−R、S−R、SO−RSO−R、SO−N(R)、SO−N10およびSO−ハロゲンから選択され、ここで、Rは水素、置換または非置換脂肪族、シクロ脂肪族、ヘテロシクリルまたはアリールから選択され;そしてRは置換または非置換脂肪族、シクロ脂肪族、またはアリールであり、そしてNおよびR10は、一体となって、窒素Nを含む4、5、6、7または8員ヘテロ環式環であり;そしてpは0〜5の整数である。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩、エステルまたはプロドラッグを提供する。
【0007】
本発明の第二の局面は、式(I)
【化2】

〔式中、
、A、A、Aの各々は、独立して、NまたはC−Rから選択され、ここで、RはHまたはCの置換基部分であり、そして、A、AおよびAの少なくとも1個はNであり;
XはN−H、置換アミノ、OまたはSから選択される架橋部分であり;
は芳香環の置換基であり、そしてnは0〜4の整数であり;
YおよびDは、独立してO、S、CH、NH、R置換C、またはR置換Nから選択され、
はYおよびDを含む環の置換基であり、そしてrは0から環の有効原子価の最大数までの整数であり;
はヒドロカルビルおよびヘテロ環から選択される部分であり;
TはH、ハロゲン、O−R、S−R、SO−RSO−R、SO−N(R)、SO−NR10およびSO−ハロゲンから選択され、ここで、Rは水素、置換または非置換脂肪族、シクロ脂肪族、ヘテロシクリルまたはアリールから選択され;そしてRは置換または非置換脂肪族、シクロ脂肪族、またはアリールであり、そしてNR10は含窒素ヘテロ環式環であり;そしてpは0〜5の整数である。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩、エステルまたはプロドラッグを提供し、
ここで、該化合物は:
【化3】

ではない。
【0008】
好ましくはRが存在し(nは0ではない)、そして、独立してハロゲン、低級アルキル、ハロ−低級アルキル、カルボキシ、エステル化カルボキシ、ヒドロキシ、エーテル化またはエステル化ヒドロキシ、低級アルコキシ、フェニル、置換フェニル、低級アルカノイル、置換または非置換アミン、アミノ、一または二置換アミノ、アミジノ、ウレイド、メルカプト、N−ヒドロキシ−アミジノ、グアニジノ、アミジノ−低級アルキル、スルホ、スルファモイル、カルバモイル、シアノ、シアノ−低級アルキル、アゾ(N=N=N)およびニトロから独立して選択される。
【0009】
(複数個存在するときは、各Rが独立して)は、好ましくはOH、O−アルキル、SH、S−アルキル、ハロゲン、置換または非置換アミン、CFおよびC−Cアルキルから選択される。最も好ましくはnが1である。
【0010】
は、好ましくは置換または非置換脂肪族、脂環式、または芳香族部分、例えばシクロアルキル、ヘテロシクリルアルキル、フェニル、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、オキサゾール、チアゾール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピリジル、インドール、イソインドール、インダゾール、プリン、インドリジジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、プテリジン、キノリジジンから選択される。好ましくはRは芳香族である。特にRは置換または非置換フェニル、イミダゾリル、ピロリル、オキサゾリルおよびイソオキサゾリルから選択され、とりわけRはフェニルまたは置換フェニルであり、ここで、該置換基は低級アルキル(C−C)、ハロゲン、OH、低級アルコキシ、NH、SH、S−アルキル、SO−アルキル、SO−アルキル、NH−アルキル、N−ジアルキル、カルボキシルまたはCFを含む。
【0011】
故に、好ましくはX−R−(T)
【化4】

である。
Tは、好ましくはハロゲン、O−アルキル、O−アルキル−ハロゲン、SO−R、SO−NHR、SO−NR10およびSO−ハロゲン(ここで、ハロゲンは好ましくは塩素である)から選択し得る。
【0012】
およびRは、好ましくは独立して、低級アルキル、とりわけC、C、CまたはCアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロlアルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、低級アルコキシ、とりわけメトキシまたはエトキシ、低級アルカノイル、カルボキシ、アミノ、一または二置換アミノ、環状基、例えばフェニル、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、オキサゾール、チアゾール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピリジル、インドール、イソインドール、インダゾール、プリン、インドリジジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、ピペリジル、プテリジン、キノリジジン、ピペラジニル、ピロリジン、モルホリニルおよびチオモルホリニルから選択し得る。
【0013】
好ましくはRおよびRは、置換または非置換アルキルまたは置換または非置換アリールである。特にRは直鎖または分枝鎖アルキル、シクロアルキル、直鎖または分枝鎖ハロ−アルキル、アルコキシ、カルボキシアルキル、またはアルキルアミノであり得る。
【0014】
最も好ましくは、Rはフェニルであり、そしてTは架橋基Xに対してパラ位に位置する。
【0015】
TがO−Rであり、そしてRがフェニルであるとき、好ましくはTは架橋基Xに対してメタ位に位置する。
好ましくはpは1である。
【0016】
特に好ましくはTは式(i)から(x):
【化5】

(式中、qは1〜4の整数であり、そしてsは0〜4の整数である)
から選択される部分である。
【0017】
好ましくはAおよびAがNであり、そしてAおよびAがC−Rである。AおよびAがC−Hであるのが、とりわけ好ましい。
【0018】
好ましくはXがN−Hである。
好ましくはRがOHである。
好ましくはYがCHである。好ましくはDがCHである。
【0019】
好ましくは各RおよびR(存在するとき)は、各々、水素、ハロゲン、低級脂肪族(とりわけ低級アルキル)、ハロ−低級アルキル、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、ヒドロキシ、エーテル化またはエステル化ヒドロキシ、低級アルコキシ、所望により置換されていてよい脂環式基または所望により置換されていてよい芳香族基、低級アルカノイルオキシ、低級アルカノイル、アミノ、一または二置換アミノ、アミジノ、ウレイド、メルカプト、N−ヒドロキシ−アミジノ、グアニジノ、アミジノ−低級アルキル、スルホ、スルファモイル、カルバモイル、シアノ、シアノ−低級アルキル、アゾ(N=N=N)およびニトロから独立して選択される。最も好ましくはrが0である。しかしながら、rが0ではないとき、好ましくはR(複数個存在するときは、それぞれのR)は、独立して、好ましくはOH、O−アルキル、SH、S−アルキル、ハロゲン、CFおよびC−Cアルキルから選択される。
【0020】
本発明の好ましい態様において、式(I).II
【化6】

の部分は、テトラヒドロキノリン部分であり、ここで、好ましくはr=0である。好ましくはn=1である。好ましくはRがOHであり、従って、該部分はヒドロキシテトラヒドロキノリン、最も具体的に1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−5−オール(式(I.III):
【化7】

である。
【0021】
好ましい化合物は、式(II)、(III)および(IV):
【化8】

の化合物を含み、好ましくは、XがNHであり、Rがフェニルであり、nが1であり、および/またはpが1である。
【0022】
他の好ましい化合物は、式(V):
【化9】

を有し、好ましくはAおよびAがNであり、そして、AおよびAがC−Rである。
【0023】
さらに好ましい化合物は、式(VI)、(VII)および(VIII):
【化10】

を有し、好ましくはnが1である。
【0024】
なおさらに好ましい化合物は、式(IX)
【化11】

を有する。
【0025】
式(VI)から(IX)の化合物について、好ましくはpが1であり、そしてXがNHである。
【0026】
他の好ましい化合物は:
式(X)
【化12】

〔式中、GがR、NHRまたはNR10であり、そして好ましくはXがNHである〕;
式(XI);
【化13】

および式(XII)
【化14】

の化合物を含む。
【0027】
好ましくは、式(XII)の化合物において、TがO−Rである。
好ましくは、化合物(XI)および(XII)において、XがNHである。
【0028】
本発明の第三の局面は、式:
【化15】

の化合物の製造方法であって、以下の反応スキームを含む方法を提供する:
【化16】

〔工程2はオプションであり、実施するとき、T’はTの前駆体であり、そしてR1’はRの前駆体であるかまたはRであり、そしてX、R、R、TおよびPは上記の通りである。〕。
【0029】
好ましくはXがNHである。
好ましくはRがフェニルである。
好ましくはpが1である。
好ましくはR1’がOHである。
【0030】
一つの好ましい態様において、TがSO−Gであり、ここで、GがR、NHRまたはNR10であり、そしてRおよびR10が、本発明の第一の局面において定義した通りである。
【0031】
他の好ましい態様において、TがO−Rであり、ここで、Rが、本発明の第一の局面において定義した通りである。
【0032】
好ましくは後者の態様においてX−R−(T)
【化17】

である。
【0033】
本発明の他の局面は、
、A、AおよびAがNまたはCRであり、ここで、A、AおよびAの少なくとも1個がNであり;
XがN−R、OまたはSであり;
がOH、−O−アルキル、−SH、−S−アルキル、ハロゲン、置換または非置換アミン、−CFまたは−C−C−アルキルであり;
YがO、S、CRまたはNRであり;
DがO、S、CRまたはNRであり;
がアルキル、脂環式(alicycle)、ヘテロ環、脂肪芳香族性(aliaromatic)、ヘテロ(hetereo)芳香族性であり、これら全て置換されていてもされていなくてもよく;
TがH、−SO−NH−Rまたは−SO−Rであり;
がH、アルキルまたはアリールであり、これは置換されていてもされていなくてもよく;
がHまたはアルキル(alky)またはC(O)−O−C−Phであり;
nが0−4である;
式(I)の化合物またはその互変異性体、またはその塩である。
【0034】
具体的に好ましいのは、、
およびAがNであり;
およびAがCHであり;
YがCHまたは−NH−C(O)−O−C−PhのようなNRであり;
XがNHであり;
DがCHであり;
がOH、Cl、MeまたはFであり;
がフェニル、イミダゾリル、ピロリル、オキサゾリルまたはイソキサゾール(isoxzole)であり、ここで、フェニルは、非置換であるか、または1個、2個または3個の−OMe基、Cl、CF、−SMe、OH、−O−[CH]−ピリジン、−O−[CH]−Clまたは−O−[CH]−モルホリノで置換されていてよく;そして
がH、CNMe、COH、−Nピペリジニル(pipeidinyl)、Me、Me(t−ブチル)、CCOOHまたはエチル(イソプロピル)であり;
がHであり;
nが0または1である;
式(I)の化合物またはその互変異性体、またはその塩である。
【0035】
より一般的に、本明細書の文脈の範囲内で、式(IからXII)の化合物を記載するためにここで使用する一般的用語は、特記しない限り、以下の意味を有する。
【0036】
ヒドロカルビルは、好ましくは最大20個の炭素原子、とりわけ最大12個の炭素原子を有するとして定義し得る。ヒドロカルビル基は、直鎖または分枝鎖脂肪族、例えばアルキル、アルケニルまたはアルキニルであってよく;それらは脂環式(すなわち脂肪族−環状)、例えばシクロアルキルであってよく;それらは芳香族、例えばフェニルであってよい。ヒドロカルビル基は、脂肪族、脂環式および芳香族部分から選択される2個以上の部分の組合せ、例えば少なくとも1個のアルキル基と芳香族基の組合せを含んでよい。いくつかの例では、ヒドロカルビル基は、所望により1個以上の鎖内ヘテロ原子、例えば−O−で中断されていてよく、故に、例えば、エーテル結合を形成する。
【0037】
一または二置換アミノ部分は、アミノが所望によりヒドロカルビル部分で置換されていてよいと定義してよく、該ヒドロカルビル部分は、例えば、低級アルキル、とりわけC、C、CまたはCアルキル、シクロアルキル、とりわけシクロヘキシル、アルキル−カルボキシ、カルボキシ、低級アルカノイル、とりわけアセチル、炭素環式基、例えばシクロヘキシルまたはフェニル、ヘテロ環式基から選択され;ここで、該ヒドロカルビル部分は、非置換であるか、または、例えば低級アルキル(C、C、C、C、C、CまたはC)、ハロゲン、OH、低級アルコキシ、NH、SH、S−アルキル、SO−アルキル、SO−アルキル、NH−アルキル、N−ジアルキル、カルボキシル、CFで置換されており、ここで、アルキルは、0−3回O、S、Nで中断されている、所望により置換されていてよい分枝鎖、非分枝鎖または環状C1−6であり得る。
【0038】
ここで使用する用語メルカプトは、一般構造−S−R(式中、Rは、ここに記載のH、アルキル、炭素環式(carbocylic)基およびヘテロ環式基から選択される)の部分を規定する。
【0039】
ここで使用する用語グアニジノは、一般構造−NHR−C(NH)NHの部分および、特に、水素がアルキル、例えばメチルまたはエチルで置換されているその誘導体を規定する。
【0040】
ここで使用する用語アミジノは、一般構造−C(NH)NHの部分および、特に、水素がアルキル、例えばメチルまたはエチルで置換されているその誘導体を規定する。
【0041】
アルキルは、好ましくは最大20個、より好ましくは最大12個の炭素原子を有し、直鎖であるかまたは1回以上分枝しており;好ましいのは、低級アルキル、とりわけ好ましいのは、C−C−アルキル、特にメチル、エチルまたはi−プロピルまたはt−ブチルである。ここで、アルキルは、1個以上の置換基で置換されていてよい。非置換アルキル、好ましくは低級アルキルが、とりわけ好ましい。
【0042】
アルキルは、所望により、1個以上の鎖内ヘテロ原子、例えば−O−で中断されていてよく、故に、例えば、エーテル結合を形成する。
【0043】
置換アルキルは、直前に定義したアルキル、とりわけ低級アルキル、好ましくはメチルであり;ここで、主としてハロゲン、とりわけフッ素、アミノ、N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、N−低級アルカノイルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、およびフェニル−低級アルコキシカルボニルから成る群から選択される、1個以上、とりわけ3個までの置換基が存在し得る。トリフルオロメチルがとりわけ好ましい。一つの化合物のクラスは、アルキルがヘテロ環式環、例えばピラジン環で置換されている置換アルキルを含み、故に、アルキレン−het基、すなわち−CH−Hetを形成し、該アルキル基は、ヘテロ環と第二部分の間のリンカーとして有効に働く。
【0044】
用語“低級”は、アルキル、アルコキシ、アルキルアミン、アルキルチオなどのような置換基に関するとき、最大7個(7個を含む)、とりわけ1個から最大4個(4個を含む)の炭素原子を有するラジカルを意味し、当該ラジカルは非分枝であるか、1個所以上分枝している。
【0045】
低級アルキル、低級アルコキシ、モノ−またはジ−低級アルキルアミノ、低級アルキルチオおよびアルキル部分を含む他の置換基のアルキル部分は、とりわけC−Cアルキル、例えばn−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−プロピル、イソプロピル、メチルまたはエチルである。このようなアルキル置換基は、特記しない限り、非置換であるか、ハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、低級アルコキシ、C、C、C、CまたはCシクロアルキル、アミノ、またはモノ−またはジ−低級アルキルアミノで置換されている。
【0046】
ハロ−低級アルキル、ハロ−低級アルキルオキシ、ハロ−低級アルキルチオなどは、アルキル部分がハロゲンで一乃至完全に置換されているアルキル部分を有する、置換基を意味する。ハロ−低級アルキル、ハロ−低級アルキルオキシ、ハロ−低級アルキルチオなどは、置換低級アルキル、置換低級アルコキシ、置換低級アルキルチオなどに含まれる。
【0047】
置換アルキル、ヒドロキシ−低級アルキル、とりわけ2−ヒドロキシエチル、および/またはハロ−低級アルキルに対応する部分の中で、とりわけトリフルオロメチルまたは2,2,2−トリフルオロエチルが好ましい。
【0048】
脂環式基は、とりわけ3個、4個、5個、6個または7個の環内炭素原子を含み、非芳香族性であるが、飽和でも不飽和でもよい炭素環式基である。好ましい脂環式基は、シクロアルキル基を含み、それは好ましくはC−C10−シクロアルキル、とりわけシクロプロピル、ジメチルシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルであり、シクロアルキルは非置換であるか、1個以上、とりわけ1個、2個または3個の置換基で置換されている。
【0049】
芳香族基は、ヘテロ環または炭素環であり、該ラジカルの芳香環炭素原子に位置する結合を介して結合している(または所望により連結基、例えば−O−または−CH−を介して結合している)。好ましくは、芳香族基は炭素環式であり、16個を超えない炭素原子の環系を有し、好ましくは単、二または三環式であり、完全にまたは一部置換されていてよく、例えば少なくとも2個の置換基で置換されていてよい。好ましくは、芳香族基は、フェニル、ナフチル、インデニル、アズレニルおよびアントリルから選択され、好ましくは各場合非置換であるか、または低級アルキル、とりわけメチル、エチルまたはn−プロピル、ハロ(とりわけフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)、ハロ−低級アルキル(とりわけトリフルオロメチル)、ヒドロキシ、低級アルコキシ(とりわけメトキシ)、ハロ−低級アルコキシ(とりわけ2,2,2−トリフルオロエトキシ)、アミノ−低級アルコキシ(とりわけ2−アミノ−エトキシ)、低級アルキル(とりわけメチルまたはエチル)カルバモイル、N−(ヒドロキシ−低級アルキル)−カルバモイル(とりわけN−(2−ヒドロキシエチル)−カルバモイル)および/またはスルファモイル置換アリール、とりわけ対応する置換または非置換フェニルで置換されている。
【0050】
置換芳香族基は、一般に、1−5個、好ましくは1個または2個の置換基で置換されている芳香族基である。適当な置換基は、アミノ、モノ−またはジ−低級アルキル置換アミノ(ここで、低級アルキル置換基は非置換でも、アルキル基について上記の置換基でさらに置換されていてもよい)、ハロゲン、低級アルキル、置換低級アルキル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、置換低級アルコキシ、ニトロ、シアノ、メルカプト、低級アルキルチオ、ハロ−低級アルキルチオ、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリールアルキル、低級アルカノイル、カルバモイル、およびN−モノ−またはN,N−ジ−低級アルキル置換カルバモイルから選択され、これに限定されず、ここで、低級アルキル置換基は、非置換であるか、またはさらに置換されていてもよい。
【0051】
ヘテロ環は、16個以下の環員を有する芳香環または環系、好ましくは5〜7員の環である。ヘテロ環はまた、3〜10員非芳香環または環系を含み、好ましくは5または6員非芳香環であり、これは、完全にまたは一部飽和されていてもよい。各場合、環は窒素、酸素および硫黄から成る群から選択される1個、2個または3個のヘテロ原子を含み得る。ヘテロ環は、非置換であるか、または1個以上、とりわけ1〜3個、例えば1個の、同一または異なる置換基で置換されている。ヘテロ環上の重要な置換基は、ハロゲン、例えば、フッ素または塩素;モノ−またはジ−低級アルキル置換アミノ(ここで、アルキル基は非置換であるか、またはハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、低級アルコキシ、C−Cシクロアルキル、ヘテロ環式ラジカルまたはヘテロアリールラジカルで置換されている);低級アルキル、例えばメチルまたはエチル;ハロ−低級アルキル、例えばトリフルオロメチル;低級アルコキシ、例えばメトキシまたはエトキシ;ハロ−低級アルコキシ、例えば、トリフルオロメトキシ;低級アルキルチオ、例えばメチルメルカプト、ハロ−低級アルキルチオ、例えばトリフルオロメチルチオ、ヘテロアリールラジカル、ヘテロアリール−低級アルキレン、ヘテロ環式ラジカルまたはヘテロ環式−低級アルキレンから成る群から選択されるものである。
【0052】
ヘテロ環は、とりわけ、オキシラニル、アジリニル、1,2−オキサチオラニル、イミダゾリル、チエニル、フリル、テトラヒドロフリル、ピラニル、チオピラニル、チアントレニル、イソベンゾフラニル、ベンゾフラニル、クロメニル、2H−ピロリル、ピロリル、ピロリニル、ピロリジニル、イミダゾリル、イミダゾリジニル、ベンゾイミダゾリル、ピラゾリル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラノイル、チアゾリル、イソチアゾリル、ジチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピペリジル、とりわけピペリジン−1−イル、ピペラジニル、とりわけピペラジン−1−イル、ピリダジニル、モルホリニル、とりわけモルホリノ、チオモルホリニル、とりわけチオモルホリノ、インドーリジニル、イソインドリル、3H−インドリル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、クマリル、インダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、プリニル、4H−キノリジニル、イソキノリル、キノリル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、デカヒドロキノリル、オクタヒドロイソキノリル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ジベンゾチオフェニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリル、キナゾリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、β−カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ペリミジニル、フェナントロリニル、フラザニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、クロメニル、イソクロマニルおよびクロマニルから成る群から選択されるラジカルであり、これらのラジカルの各々は、非置換であるか、または低級アルキル、とりわけメチルまたはtert−ブチル、低級アルコキシ、とりわけメトキシ、およびハロ、とりわけブロモまたはクロロから成る群から選択される1〜2個のラジカルで置換されている。非置換ヘテロシクリル、とりわけピペリジル、ピペラジニル、チオモルホリノまたはモルホリノが好ましい。
【0053】
ハロゲンは、とりわけフッ素、塩素、臭素またはヨウ素、特にフッ素、塩素または臭素、特にフッ素である。
【0054】
シクロアルキルは、好ましくはC−C10−シクロアルキル、とりわけシクロプロピル、ジメチルシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルであり、シクロアルキルは、非置換であるか、または1個以上、とりわけ1〜3個の置換基で置換されている。
【0055】
ヘテロシクリルアルキルは、1個以上の環内ヘテロ原子を含む以外シクロアルキルの通りであり、ピペリジル、ピペラジニル、ピロリジン、モルホリニルにより例示され得る。
【0056】
エステル化カルボキシは、とりわけ低級アルコキシカルボニル、例えばtert−ブトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、メトキシカルボニルまたはエトキシカルボニル、フェニル−低級アルコキシカルボニル、またはフェニルオキシカルボニルである。
【0057】
アルカノイルは、1級アルキルカルボニル、とりわけ低級アルカノイル、例えばアセチルである。特に、アルカノイル基は、置換基、例えばCO−Rで置換されていてよい。
【0058】
複数表現での化合物、塩などの記載は、常に1個の化合物、1個の塩などを含むと理解すべきである。
【0059】
本明細書および特許請求の範囲を通して、用語“含む”および“包含する”およびその語尾変化、例えば“含み”および“含んで”は、“含むが、限定されない”ことを意味し、他の部分、付加物、要素、整数または工程を除外することを意図しない(そして除外しない)。
【0060】
全ての不斉炭素原子は、(R)−、(S)−または(R,S)−立体配置、好ましくは(R)−または(S)−立体配置で存在できる。何らかの不飽和を有するラジカルは、cis−、trans−または(cis、trans)形態で存在する。本化合物は、故に、異性体混合物としてまたは純粋異性体として、好ましくはエナンチオマー−純粋ジアステレオマーとして存在できる。
本発明は、開示の化合物の可能性のある互変異性体にも関する。
【0061】
立体異性混合物、例えばジアステレオマー混合物は、それらの対応する異性体に、適当な分離方法により、それ自体既知の方法で分割できる。ジアステレオマー混合物は、例えばそれらの個々のジアステレオマーに、分別結晶、クロマトグラフィー、溶媒分配、および類似の方法で分割できる。この分割は、出発化合物または式Iもしくは式IIからXIIの化合物の各々のレベルで行い得る。エナンチオマーは、例えばエナンチオマー−純粋キラル酸との塩形成によるジアステレオマー塩の形成を介して、またはキラルリガンドのクロマトグラフ支持体を使用したクロマトグラフィー、例えばHPLCにより、分割できる。
【0062】
塩は、とりわけ式(I)の化合物の薬学的に許容される酸付加塩である。このような塩は、例えば、塩基性窒素原子を有する式(I)の化合物と、好ましくは有機または無機酸との酸付加塩として、とりわけ薬学的に許容される塩として形成される。適当な無機酸は、例えば、ハロゲン化水素酸、例えば塩酸;硫酸;またはリン酸である。適当な有機酸は、例えば、カルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸またはスルファミン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、グリコール酸、乳酸、2−ヒドロキシ酪酸、グルコン酸、グルコースモノカルボン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルカル酸、ガラクタル酸、アミノ酸、例えばグルタミン酸、アスパラギン酸、N−メチルグリシン、アセチルアミノ酢酸、N−アセチルアスパラギン、N−アセチルシステイン、ピルビン酸、アセト酢酸、ホスホセリン、2−または3−グリセロリン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、サリチル酸、1−または3−ヒドロキシナフチル−2−カルボン酸、3,4,5−トリメトキシ安息香酸、2−フェノキシ安息香酸、2−アセトキシ安息香酸、4−アミノサリチル酸、フタル酸、フェニル酢酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸、メタン−またはエタン−スルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレンスルホン酸、N−シクロヘキシルスルファミン酸、N−メチル−、N−エチル−またはN−プロピル−スルファミン酸、または他の有機プロトン酸、例えばアスコルビン酸である。
【0063】
単離および精製目的で、薬学的に許容されない塩、例えばピクリン酸塩または過塩素酸塩を使用することも可能である。薬学的に許容される塩または遊離化合物のみが(所望により医薬組成物の形で)治療的に使用され、それゆえ、これらが好ましい。
【0064】
遊離形および、中間体として、例えば新規化合物の精製にまたはそれらの同定のために使用される塩を含むそれらの塩の形の新規化合物の間の密接な関係から、前記および後記で遊離化合物に対する全ての言及はまた、適当であり、好都合である限り、対応する塩も含むと理解すべきである。
【0065】
本発明の化合物は、シグナル伝達に関与するチロシンおよびセリン/スレオニンキナーゼおよびキナーゼ様タンパク質を阻害し、制御しおよび/または調節し、本化合物を含む組成物は、哺乳動物におけるチロシンおよびセリン/スレオニンキナーゼおよびキナーゼ類似物依存性疾患、例えば血管形成、癌、腫瘍増殖、アテローム性動脈硬化症、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、炎症性疾患、神経外傷性疾患、慢性神経変性、疼痛、偏頭痛または心肥大などの処置に有用であることが判明した。
【0066】
具体的に、本発明の化合物は、IKK、PDGF−R、Kdr、c−Src、Her−1、Her−2、c−Kit、c−Abl、Ins−r、Tek、Flt−1、Flt−3、Flt−4、c−AbiおよびFGFR−1、Eph受容体(例えばEphB4)、CDK1、CDK2およびRETを、10マイクロモルで>70%阻害で阻害する。さらに具体的に、本化合物は、変異体を含むRAFキナーゼファミリーを、1−1000nMの範囲のIC50値で阻害する。
【0067】
典型的に、患者は、MAPキナーゼ経路を介した過剰なシグナル伝達により特徴付けられる疾患に罹患している哺乳動物、一般にヒトである。これは、ウェスタンブロット分析または免疫組織化学のような方法により、経路のメンバーに対する特異的抗体の活性化状態により測定できる。このような方法は当業者に既知である。
【0068】
一般に、MAPキナーゼシグナル伝達経路を介した過剰なシグナル伝達により特徴付けられる疾患は、増殖性疾患、特に上昇したRAFキナーゼ活性により特徴付けられる癌、例えば野生型B−またはC−RAFキナーゼを過剰発現する、または活性化変異RAFキナーゼ、例えば変異B−RAFキナーゼを発現する癌である。変異したRAFキナーゼが検出されている癌は、黒色腫、結腸直腸癌、卵巣癌、神経膠腫、腺癌、サルコーマ、乳癌および肝臓癌を含む。変異したB−RAFキナーゼは、とりわけ多くの黒色腫で優勢である。
【0069】
本発明によって、疾患組織サンプルを患者から、例えば、生検または切除の結果として採り、試験して、該組織が変異RAFキナーゼ、例えば変異B−RAFキナーゼを産生するか、または野生型RAFキナーゼ、例えば野生型B−またはC−RAFキナーゼを過剰発現するか否かを決定する。該試験が、変異RAFキナーゼが産生されているかまたはRAFキナーゼが該疾患組織で過剰産生されていることを示すならば、該患者を、有効RAF阻害量のここに記載のRAF阻害化合物の投与により処置する。
【0070】
しかしながら、カスケード中の他のキナーゼが、該経路における過剰シグナル伝達の原因であるならば、RAFキナーゼ阻害化合物でMAPキナーゼシグナル伝達経路を下方制御することも可能である。故に、本発明は、さらに、RAFキナーゼの活性化変異または過剰発現以外の理由が原因のMAPキナーゼシグナル伝達経路における過剰なシグナル伝達により特徴付けられる疾患の処置に関する。
【0071】
組織サンプルを、一般的に当分野で既知の方法により試験する。例えば、B−RAF変異を、アレル特異的PCR、DHPLC、質量分析により検出し、野生型B−またはC−RAFの過剰発現を、免疫組織化学、免疫蛍光、またはウェスタンブロット分析により検出する。B−RAF変異の特に検出方法は、ポリメラーゼ連鎖反応を基礎にした方法である。同様の方法を使用して、カスケード中の他のキナーゼが変異しているかまたは過剰発現しているか否かを決定できる。
【0072】
本発明の特に重要な局面は、黒色腫の処置方法であって、(a)患者からの黒色腫組織を試験して、該黒色腫組織が変異RAFキナーゼを発現するかまたは野生型RAFキナーゼを過剰発現するか否かを決定し、そして、(b)該黒色腫組織が野生型RAFキナーゼを過剰発現するか、または活性化変異B−RAFキナーゼを発現することが判明したならば、該患者を、有効RAFキナーゼ阻害量のここに記載のRAF阻害化合物で処置することを含む、方法に関する。
【0073】
この態様の重要な局面は、黒色腫の処置方法であって、(a)患者からの黒色腫組織を試験して、該黒色腫組織がB−RAFキナーゼまたはC−RAFキナーゼ活性を過剰発現するか否かを決定し、そして(b)該黒色腫組織がB−RAFキナーゼまたはC−RAFキナーゼ活性を過剰発現することが判明したならば、該患者を、有効RAFキナーゼ阻害量のここに記載のRAF阻害化合物で処置することを含む、方法に関する。
【0074】
この態様の他の重要な局面は、黒色腫の処置方法であって、(a)患者からの黒色腫組織を試験して、該黒色腫組織が変異B−RAFキナーゼを発現するか否かを決定し、そして(b)該黒色腫組織が変異B−RAFキナーゼを発現することが判明したならば、該患者を、有効RAFキナーゼ阻害量のここに記載のRAF阻害化合物で処置することを含む、方法に関する。
【0075】
一般に、B−RAFキナーゼ変異は、引用したDaviesらの文献に記載のものの一つである。これらの変異は表1に要約する。
【0076】
故に、本発明は、特には、患者からの組織サンプルにおけるB−RAFキナーゼ遺伝子またはタンパク質の変異を検出し、そして、患者を、有効B−RAFキナーゼ阻害化合物、とりわけ、ここに記載の化合物で処置することを含む、活性化変異B−RAFキナーゼにより特徴付けられる疾患の処置方法に関する。
【0077】
故に、本発明は、さらに、黒色腫の処置に使用するための、(例えば式IからXIIの)化合物に関する。より具体的に、本発明は、活性化変異B−RAFキナーゼにより特徴付けられる疾患の処置に使用するための化合物に関する。
【表1】

【0078】
さらに、本発明は、黒色腫の処置に使用するための医薬の製造における、(例えば式IからXIIの)化合物の使用を提供する。より具体的に、本発明は、活性化変異B−RAFキナーゼにより特徴付けられる疾患の処置に視由生するための医薬の製造における、化合物の使用を提供する。
【0079】
本発明の重要な局面は、変異B−RAFキナーゼが表1に記載の変異、とりわけV599E変異を示す場合を含む。
【0080】
本発明の特に重要な局面は、疾患が黒色腫であり、そして変異B−RAFキナーゼが表1に記載の変異、とりわけV599E変異を示す場合を含む。
【0081】
従って、本発明は、患者からの組織サンプルにおける、変異B−RAFキナーゼにより特徴付けられる疾患の処置方法であって、B−RAFキナーゼ遺伝子におけるG1388A、G1388T、G1394C、G1394A、G1394T、G1403C、G1403A、G1753A、T1782G、G1783C、C1786G、T1787G、T1796AおよびTG1796−97ATから選択される変異、またはRAFキナーゼタンパク質における対応する変異を検出し、該患者を、ここに記載の有効B−RAFキナーゼ阻害化合物で処置することを含む、方法を含む。
【0082】
本発明は、さらに、式(I)の化合物、またはより具体的に式(II)から(XII)の化合物のいずれか1個とRAFキナーゼを接触させることを含む、RAFキナーゼの阻害方法に関する。好ましくは、RAFキナーゼはB−またはC−RAFキナーゼ、または変異RAFキナーゼ、とりわけ変異B−RAFキナーゼ、特にV599E変異体である。RAFキナーゼは、単離されていても細胞環境中にあってもよい。
【0083】
式(I)の化合物、およびより具体的に式(II)から(XII)の化合物は、上記の通り、価値ある薬理学的特性を有する。
【0084】
本発明の化合物は、単独で、または、他の抗癌剤、例えば腫瘍血管形成を阻害する化合物、例えば、プロテアーゼ阻害剤、上皮細胞増殖因子受容体キナーゼ阻害剤、血管内皮細胞増殖因子受容体キナーゼ阻害剤など;細胞毒性剤、例えばプリンおよびピリミジン類似体代謝拮抗剤のような代謝拮抗剤;微小管安定化剤および抗有糸分裂アルカロイドのような有糸分裂阻害剤;白金配位錯体;抗腫瘍抗生物質;アルキル化剤、例えば窒素マスタードおよびニトロソウレア;内分泌剤、例えばアドレノコルチコステロイド、アンドロゲン、抗アンドロゲン、エストロゲン、抗エストロゲン、アロマターゼ阻害剤、ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニストおよびソマトスタチンアナログおよび過剰発現されているおよび/または他の方法で腫瘍細胞中で上方制御されている特異的代謝経路に関与する酵素または受容体を標的とする化合物、例えばATPおよびGTPホスホジエステラーゼ阻害剤、タンパク質キナーゼ阻害剤、例えばセリン、スレオニンおよびチロシンキナーゼ阻害剤、例えば、Abelsonタンパク質チロシンキナーゼおよび種々の増殖因子、それらの受容体およびキナーゼ阻害剤、例えば、上皮細胞増殖因子受容体キナーゼ阻害剤、血管内皮細胞増殖因子受容体キナーゼ阻害剤、線維芽細胞増殖因子阻害剤、インシュリン様増殖因子受容体阻害剤および血小板由来増殖因子受容体キナーゼ阻害剤など;メチオニンアミノペプチダーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、例えば、シクロオキシゲナーゼ−1または−2阻害剤、およびヒストンデアセチラーゼ阻害剤と組み合わせて投与してよい。
【0085】
本発明の化合物はまた放射線療法、免疫療法、外科的処置またはそれらの組合せと投与してもよい。腫瘍寛解後の患者の状態を維持するための処置または、例えば危険な患者における場合の科学予防的処置でさえ可能である。
【0086】
本発明の化合物は、ヒトの(予防的および、好ましくは、治療的)処置だけではなく、例えば商業的に有用な動物、例えば齧歯類、例えばマウス、ウサギまたはラット、またはモルモットのような他の温血動物の処置への使用も意図する。
【0087】
一般に、本発明はまたRAFキナーゼ活性の阻害における、式(I)の化合物の使用、およびより具体的に式(II)から(XII)の化合物の使用にも関する。
【0088】
本発明の化合物は、好ましくは医薬組成物中の活性成分として投与する。異常MAPキナーゼシグナル伝達経路により特徴付けられる疾患、とりわけ、腫瘍疾患、最も具体的に黒色腫を有する温血動物、とりわけヒトまたは商業的に有用な哺乳動物に投与するのに適した、式(I)の化合物、または塩形成基が存在するときその薬学的に許容される塩を、RAFキナーゼ、特に変異RAFキナーゼの阻害に有効な量で、少なくとも1種の薬学的に許容される担体と共に含む、医薬組成物が好ましい。
【0089】
また、処置を必要とする、とりわけ腫瘍疾患および他の増殖性疾患を有する、温血動物、とりわけヒトまたは商業的に有用な哺乳動物におけるこのような疾患の予防的またはとりわけ治療的処置のための、活性成分として新規式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩を、記載の疾患に対して予防的またはとりわけ治療的に有効な量で含む、医薬組成物も好ましい。
【0090】
医薬組成物は、約1%から約95%活性成分を含み、1回投与形態である投与形態は、好ましくは約20%から約90%活性成分を含み、1回投与形態ではない投与形態は、好ましくは約5%から約20%活性成分を含む。単位投与形態は、例えば、糖衣錠、錠剤、アンプル、バイアル、坐薬またはカプセルである。他の投与形態は、例えば、軟膏、クリーム、ペースト、フォーム、チンキ、リップスティック、液滴、スプレー、分散などである。例は、約0.05gから約1.0gの活性成分を含むカプセルである。
【0091】
本発明の医薬組成物は、個々にそれ自体既知の複数工程を用いて、例えば慣用の混合、造粒、糖衣、溶解または凍結乾燥工程の手段により製造する。
【0092】
活性成分の溶液に加えて、また懸濁液または分散、とりわけ等張性水性溶液、分散または懸濁液を好ましくは使用し、それは、例えば、活性成分を単独で、または担体、例えばマンニトールと共に含む凍結乾燥組成物の場合、使用前に調製できる。本医薬組成物は滅菌してよくおよび/または賦形剤、例えば防腐剤、安定化剤、湿潤剤および/または乳化剤、可溶化剤、浸透圧調整用塩および/または緩衝剤を含んでよく、それ自体既知の方法で、例えば慣用の溶解または凍結乾燥法の手段により製造する。記載の溶液または懸濁液は、増粘物質、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルピロリドンまたはゼラチン、または可溶化剤、例えばTween 80[ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート;ICI Americas, Inc, USAの商標]を含み得る。
【0093】
油中懸濁液は、油性成分として注射目的で慣用的な植物油、合成油または半合成油を含む。このようなものとして、とりわけ、酸成分として8〜22個、とりわけ12〜22個の炭素原子を有する長鎖脂肪酸を含む液体脂肪酸エステル、例えばラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸または対応する不飽和酸、例えばオレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、ブラシジン酸またはリノール酸を、所望により抗酸化剤、例えばビタミンE、β−カロテンまたは3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエンの添加と共に含むものを特記し得る。これらの脂肪酸エステルのアルコール要素は、最大6個の炭素原子を有し、一価または多価、例えば一価、二価または3価アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールまたはペンタノールまたはそれらの異性体だけでなく、とりわけグリコールおよびグリセロールである。特記し得る脂肪酸エステルの例は:エチルオレエート、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、“Labrafil M 2375”(Gattefosse, Parisのポリオキシエチレングリセロールトリオレエート)、“Labrafil M 1944 CS”(杏仁油の加アルコール分解により製造した不飽和ポリグリコール化グリセリドであり、グリセリドおよびポリエチレングリコールエステルから成る;Gattefosse, France)、“Labrasol”(TCMの加アルコール分解により製造した飽和ポリグリコール化グリセリドであり、グリセリドおよびポリエチレングリコールエステルから成る;Gattefosse, France)および/または“Miglyol 812”(Huels AG, GermanyのCからC12の鎖長を有する飽和脂肪酸のトリグリセリド)だけでなく、とりわけ植物油、例えば綿実油、アーモンド油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油、ダイズ油、およびとりわけ、落花生油である。
【0094】
注射用組成物の製造は、慣用の方法で滅菌条件下に行い、これはまたそれらの、例えばアンプルまたはバイアルへの充填および容器の密封にも適用される。
【0095】
経口投与用医薬組成物は、例えば、活性成分と1種以上の固体担体を合わせ、適当であれば得られた混合物を造粒し、望むならば、該混合物または顆粒を、適当であればさらなる賦形剤を添加後に、錠剤または糖衣錠コアに加工することにより得ることができる。
【0096】
適当な担体は、とりわけ増量剤、例えば糖、例えばラクトース、サッカロース、マンニトールまたはソルビトール、セルロース製剤および/またはリン酸カルシウム、例えばリン酸三カルシウムまたはリン酸水素カルシウム、また結合剤、例えばデンプン、例えばコーン、小麦、米またはジャガイモデンプン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよび/またはポリビニルピロリドン、および/または、望むならば、崩壊剤、例えば上記デンプン、またカルボキシメチルデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、アルギン酸またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムである。さらなる賦形剤は、とりわけ流動調節剤および平滑剤、例えばケイ酸、タルク、ステアリン酸またはその塩、例えばステアリン酸マグネシウムまたはカルシウム、および/またはポリエチレングリコール、またはその誘導体である。
【0097】
糖衣錠コアは、所望により腸溶性の、コーティングを施し得て、とりわけ、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタンを含み得る濃縮糖溶液、または適当な有機溶媒または溶媒混合物中のコーティング溶液、または、腸溶性コーティングのために、適当なセルロース製剤、例えば酢酸フタル酸セルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートの溶液を使用する。着色剤または色素を、例えば同定目的でまたは活性成分の異なる量を示すために、錠剤または糖衣錠コーティングに添加してよい。
【0098】
経口投与用医薬組成物はまた硬ゼラチンカプセルおよびゼラチンと可塑剤、例えばグリセロールまたはソルビトールから成る軟密封カプセルである。硬ゼラチンカプセルは、例えば、増量剤、例えばコーンデンプン、結合剤および/または流動促進剤、例えばタルクまたはステアリン酸マグネシウム、および所望により安定化剤と混合した顆粒の形の活性成分を含み得る。軟カプセルにおいて、活性成分は、好ましくは適当な液体賦形剤、例えば脂肪油、パラフィン油または液体ポリエチレングリコールまたはエチレングリコールまたはプロピレングリコールの脂肪酸エステルに溶解または懸濁させ、それは同様に、例えばポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル・タイプのような安定化剤および崩壊剤を添加することが可能である。
【0099】
適当な直腸投与可能医薬組成物は、例えば、活性成分と坐薬基剤から成る坐薬である。適当な坐薬基剤は、例えば、天然または合成トリグリセリド、パラフィン炭化水素、ポリエチレングリコールまたは高級アルカノールである。
【0100】
非経腸投与について、とりわけ、水可溶性形、例えば水可溶性塩の形の活性成分の水性溶液、または、増粘剤、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールおよび/またはデキストラン、および、望むならば、安定化剤を含む水性注射用懸濁液が適する。活性成分、所望により賦形剤と共に、凍結乾燥の形でもあり得て、適当な溶媒の添加により、非経腸投与前に溶液とし得る。
【0101】
例えば、非経腸のために使用する溶液は、輸液溶液としても使用できる。
【0102】
好ましい防腐剤は、例えば、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、または殺菌剤、例えばソルビン酸または安息香酸である。
【0103】
本発明は、とりわけ異常MAPキナーゼシグナル伝達経路、とりわけRAFキナーゼの阻害に応答する疾患、とりわけ対応する腫瘍疾患を処置する工程または方法に関する。式(I)の化合物は、それ自体で、または医薬組成物の形で、好ましくは記載の疾患に対する有効量で、そのような処置を必要とする温血動物、例えばヒトに、予防的にまたは治療的に投与でき、本化合物はとりわけ医薬組成物の形で使用する。約70kgの体重の場合、1日量約0.1gから約5g、好ましくは約0.5gから約2gの本発明の化合物を投与する。
【0104】
各特定の場合の好ましい投与量、組成物および医薬製剤(医薬)の製造は、上記である。
本発明の化合物は、好ましくは、以下の例示的反応スキームに従い製造し、該方法の各個々の工程は、当業者には一般的な観点で既知である。
【0105】
本発明の方法を示す一般的スキームは上記である。上記スキームのより具体的なバリエーションを以下に示す(スキームG):
【化18】

【0106】
R基の例は、以下のスキーム1および2に示す通り、硫黄を含む基である:
【化19】

【0107】
スキーム1の反応の特定の例を以下に示す:
【化20】

【0108】
本発明に従う第三のスキームを以下に示す:
【化21】

【0109】
反応スキーム3の特定の例を以下のスキーム4に示す。
【化22】

【実施例】
【0110】
製造方法を、ここで、1−{2−[3−(3−クロロ−プロポキシ)−フェニルアミノ]−ピリミジン−4−イル}−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−5−オールおよび種々の1−{2−[3−(スルホニル、スルファニルおよびスルホンアミノ)−フェニルアミノ]−ピリミジン−4−イル}−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−5−オール誘導体の具体的製造を参照して説明する。
融点試験および質量分光学評価の結果も示す。
【0111】
1−{2−[3−(3−クロロ−プロポキシ)−フェニルアミノ]−ピリミジン−4−イル}−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−5−オール
中間体合成:
[3−(3−クロロ−プロポキシ)−フェニル]−(4−クロロ−ピリミジン−2−イル)−アミン:
【化23】

【0112】
22.98g(161.64mmol)2−メチルスルファニル−ピリミジン−4−オールの90mL DMEU溶液の100℃への加熱は透明溶液をもたらす。ここで、30g(161.64mmol)3−(3−クロロ−プロポキシ)−フェニルアミンを添加する。100℃での加熱を15時間続ける。反応混合物の10mLフラクションを水性重炭酸ナトリウムに注ぎ、酢酸エチルで抽出する。溶媒蒸発後、褐色油状物を10mL DMEUに溶解し、35mL POClを添加する。反応混合物を70℃で2時間加熱後、それを水性ビカーボネート溶液に注意深く注ぐ。酢酸エチルでの抽出、続くシリカフラッシュクロマトグラフィー(溶離剤:ヘキサン:酢酸エチル1:1)により、1.60g(収率約50%)の表題化合物を褐色油状物として得る。
1H NMR:(DMSO d6, 400 MHz):10.03 (s, 1H), 8.45 (d, 1H), 7.44 (t, 1H), 7.29 (dd, 1H), 7.21 (t, 1H), 6.97 (d, 1H), 6.61 (dd, 1H), 4.07 (t, 2H), 3.80 (t, 2H), 2.18 (quint, 2H)。
【0113】
1−{2−[3−(3−クロロ−プロポキシ)−フェニルアミノ]−ピリミジン−4−イル}−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−5−オール:
【化24】

【0114】
200mg(0.617mmol)[3−(3−クロロ−プロポキシ)−フェニル]−(4−クロロ−ピリミジン−2−イル)−アミンおよび100mg(0.617mmol)3−(3−クロロ−プロポキシ)−フェニルアミンを、そのまま(neat)で100℃で20分で加熱する。超音波の助けを借りて、得られる樹脂を酢酸エチルおよび水性重炭酸ナトリウムの混合物に溶解する。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させる。溶離剤としてジクロロメタン/酢酸エチル(10:1)を使用したシリカクロマトグラフィーにより、160mg(収率58%)の表題化合物を黄色泡状物として得る。
1H NMR (DMSO d6, 400 MHz):9.43 (s, 1H), 9.13 (s, br, 1H), 7.91 (d, 1H), 7.47 (m, 1H), 7.17 (d, 1H), 7.04 (t, 1H), 6.90 (t, 1H), 6.72 (d, 1H), 6.51 (d, 1H), 6.42 - 6.38 (m, 2H), 3.96 (t, 2H), 3.88 (dd, 2H), 3.71 (t, 2H), 2.53 (t, 2H), 2.09 (quint, 2H), 1.78 (m, 2H)。
MS:ES+:411 1塩素原子について(M+1)アイソトープパターン。
【0115】
1−{2−[3−(スルホニル、スルファニルおよびスルホンアミノ)−フェニルアミノ]−ピリミジン−4−イル}−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−5−オール誘導体
中間体合成:
【化25】

【0116】
(4−クロロ−ピリミジン−2−イル)−フェニル−アミン
2−フェニルアミノ−ピリミジン−4−オール(1.309g、7mmol)を35mLのアセトニトリルに懸濁し、3.5mL(14mmol)のジオキサン中の4m塩酸溶液(Aldrich)および1.6mL(17.5mmol)オキシ塩化リンで、窒素下、室温で処理する。混合物を還流下3時間撹拌し、冷却し、酢酸エチルで希釈する。得られる溶液を飽和重炭酸ナトリウム溶液および塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させる。残渣を、酢酸エチル/ヘキサン2:8を使用したシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーにより精製する。表題化合物を86%収率(1.5g)で得る:m.p. 134−135℃;MS(ES+)m/z(M+H)+1 206。
【0117】
4−(4−クロロ−ピリミジン−2−イルアミノ)−ベンゼンスルホニルクロライド
3.2mL(48mmol)クロロスルホン酸を、窒素下0℃に冷却する。これに、(4−クロロ−ピリミジン−2−イル)−フェニル−アミン(1.15g、5.6mmol)を、撹拌下少しずつ添加する。添加完了後、混合物を15分、0℃、2時間、室温および15分、60℃で撹拌する。黄色溶液を冷却し、100gのクラッシュアイスにゆっくり添加する。氷が完全に溶けた後、固体を濾取し、水で洗浄し、真空下乾燥させる。表題化合物を74%収率(1.26g)で得る:m.p. 192−195℃;MS(ES+)m/z(M+H)+1 300(MS溶液をメタノール中に構築したため、対応するメチルスルホネート)。
【0118】
【化26】

【0119】
N−シクロヘキシル−4−[4−(5−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−ベンゼンスルホンアミド
560mg(1.5mmol)4−(4−クロロ−ピリミジン−2−イルアミノ)−N−シクロヘキシル−ベンゼンスルホンアミドおよび225mg(1.52mmol)1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−5−オールの混合物を、溶媒無しで、油浴中、15分、200℃で加熱する。褐色粘性混合物を最初に室温に、次いでドライアイスで冷却し、固化物質を粉砕する。この固体を5%クエン酸溶液と撹拌し、濾過し、飽和重炭酸ナトリウム溶液に再懸濁し、再び濾過し、最後に水で洗浄する。この物質を酢酸エチル/ヘキサン8:2を使用するシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーに付す。純粋フラクションを溜め、蒸発させ、メタノール中で数分撹拌し、濾過し、トルエンおよびジイソプロピルエーテルの混合物に再懸濁し、再び濾過し、真空下乾燥させる。表題化合物を20%収率(150mg)で得る:m.p. 236−238℃;MS(ES+)m/z(M+H)+1 480。
【0120】
出発物質4−(4−クロロ−ピリミジン−2−イルアミノ)−N−シクロヘキシル−ベンゼンスルホンアミド
600mg(2mmol)4−(4−クロロ−ピリミジン−2−イルアミノ)−ベンゼンスルホニルクロライドを60mLのジクロロメタンに懸濁し、室温で0.57mL(5mmol)シクロヘキシルアミンで処理する。全ての物質がゆっくり溶液に溶け、約15分撹拌後、微小針状結晶が現れ始める。撹拌を合計2時間続け、次いで混合物をジクロロメタンで希釈し、5%クエン酸および塩水で洗浄する。有機相を乾燥させ(NaSO)、蒸発させる。表題化合物を99%収率(706mg)で得る:m.p. 202−204℃;MS(ES+)m/z(M+H)+1 367。
【0121】
以下の実施例を、N−シクロヘキシル−4−[4−(5−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−ベンゼンスルホンアミドについて上記のものに準じたシーケンスを使用して合成する:
【化27】

【表2】

【0122】
(3−クロロフェニル)−[4−(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミンヒドロクロライド:
【化28】

【0123】
2−(3−クロロ−フェニルアミノ)−ピリミジン−4−オール
2−メチルスルファニル−ピリミジン−4−オール(568mg、4mmol)および3−クロロnアニリン(0.47mL、4mL)を混合し、30分、170℃で加熱する。得られる溶液を冷却し、0.1m塩酸でトリチュレートし、濾過し、水で洗浄し、真空下乾燥させる。表題化合物を59%収率(520mg)で得る:m.p. 250−252℃;MS(ES+)m/z(M+H)+1 222。
【0124】
(3−クロロ−フェニル)−(4−クロロ−ピリミジン−2−イル)−アミン
2−(3−クロロ−フェニルアミノ)−ピリミジン−4−オール(444mg、2mmol)を、6mL オキシ塩化リンに室温で少しずつ添加する。混合物を70℃で1時間加熱し、冷却し、過剰のオキシ塩化リンを減圧下蒸発させる。残渣を酢酸エチルに溶解し、飽和炭酸ナトリウム溶液および塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させる。表題化合物を91%収率(440mg)で得る:m.p. 112−114℃;MS(ES+)m/z(M+H)+1 240,242。
【0125】
(3−クロロ−フェニル)−[4−(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミンヒドロクロライド
(3−クロロ−フェニル)−(4−クロロ−ピリミジン−2−イル)−アミン(360mg、1.5mmol)の1mLのジオキサン溶液を223mg(1.5mmol)1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−5−オールで処理する。混合物を2時間、80℃、次いで18時間、100℃で加熱する。溶媒を蒸発させ、残渣を、酢酸エチル/ヘキサン1:1に懸濁させ、数分撹拌し、濾過した。表題化合物を29%収率(150mg)で得る:m.p. 250−252℃;MS(ES+)m/z(M+H)+1 353。
【0126】
以下の実施例を、(3−クロロフェニル)−[4−(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−ピリミジン−2−イル]−アミンヒドロクロライドについて上記のものに準じたシーケンスを使用して合成する。表中の化合物を遊離塩基として単離する。
【化29】

【表3】

【0127】
1−[2−(4−メタンスルホニル−フェニルアミノ)−ピリミジン−4−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−5−オール(1−[2−(4−メチルスルファニル−フェニルアミノ)−ピリミジン−4−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−5−オールの酸化産物)
【化30】

【0128】
1−[2−(4−メチルスルファニル−フェニルアミノ)−ピリミジン−4−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−5−オール(364mg、1mmol)を10mLのジクロロメタンに0℃で懸濁する。m−クロロ過安息香酸(FLUKA 25800、590mg、2.4mmol)を添加し、混合物を0℃で45分撹拌する。100mgのNaSOを添加し、反応混合物を次いでジクロロメタンおよび水に分配する。有機層を分離し、飽和重炭酸ナトリウム、水および塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、蒸発させる。粗物質を最初に酢酸エチルを使用したシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー、次いで、0.5%TFA含有アセトニトリル/水勾配を使用した逆相カラムのMPLCで精製する。表題化合物を6%収率(25mg)で得る:m.p. 242−245℃;MS(ES+)m/z(M+H)+1 353。
【0129】
本発明の範囲内のさらなる化合物は以下である:
1−[2−(3,4,5−トリメトキシ−フェニルアミノ)−ピリミジン−4−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−5−オール
4−[4−(5−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−ベンゼンスルホンアミド
1−[2−(3,4,5−トリメトキシ−フェニルアミノ)−ピリミジン−4−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−6−オール
1−[2−(3,5−ジメトキシ−フェニルアミノ)−ピリミジン−4−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−5−オール
1−[2−(3,4,5−トリメトキシ−フェニルアミノ)−ピリミジン−4−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−7−オール
4−[4−(6−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−N−(2−ヒドロキシ−エチル)−ベンゼンスルホンアミド
{4−[4−(5−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−ベンゼンスルホニルアミノ}−酢酸
1−[2−(3,5−ジメトキシ−フェニルアミノ)−ピリミジン−4−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−6−オール
4−[4−(6−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−ベンゼンスルホンアミド
4−[4−(5−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−N−(2−ヒドロキシ−エチル)−3−メチル−ベンゼンスルホンアミド
1−[2−(3−クロロ−フェニルアミノ)−ピリミジン−4−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−5−オール
[4−(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−ピリミジン−2−イル]−(3,4,5−トリメトキシ−フェニル)−アミン
1−[2−(4−メタンスルホニル−フェニルアミノ)−ピリミジン−4−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−7−オール
1−[2−(4−メチルスルファニル−フェニルアミノ)−ピリミジン−4−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−5−オール
1−(2−フェニルアミノ−ピリミジン−4−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−5−オール
1−[2−(3−ヒドロキシ−フェニルアミノ)−ピリミジン−4−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−5−オール
4−[4−(5−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−3−メチル−N−(3−メチル−ブチル)−ベンゼンスルホンアミド
4−[4−(5−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−N−ピリジン−4−イルメチル−ベンゼンスルホンアミド
1−{2−[3−(2−イミダゾール−1−イル−エトキシ)−フェニルアミノ]−ピリミジン−4−イル}−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−5−オール
1−{2−[3−(3−クロロ−プロポキシ)−フェニルアミノ]−ピリミジン−4−イル}−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−6−オール
4−[4−(5−クロロ−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−ベンゼンスルホンアミド
1−{2−[3−(3−モルホリン−4−イル−プロポキシ)−フェニルアミノ]−ピリミジン−4−イル}−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−5−オール
4−[4−(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−ベンゼンスルホンアミド
4−[4−(6−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−N−(3−メチル−ブチル)−ベンゼンスルホンアミド
[4−(6−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−ピリミジン−2−イル]−(3,4,5−トリメトキシ−フェニル)−アミン
1−{2−[3−(3−クロロ−プロポキシ)−フェニルアミノ]−ピリミジン−4−イル}−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−7−オール
[4−(7−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−ピリミジン−2−イル]−(3,4,5−トリメトキシ−フェニル)−アミン
4−[4−(6−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−ベンゼンスルホンアミド
[4−(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−ピリミジン−2−イル]−(2,3−ジメトキシ−ベンジル)−アミン
4−[4−(5−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−6−メチル−ピリミジン−2−イルアミノ]−ベンゼンスルホンアミド
3−[4−(3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−フェノール
4−[4−(6−フルオロ−2−メチル−3,4−ジヒドロ−2H−キノリン−1−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ]−N−(3−メチル−ブチル)−ベンゼンスルホンアミド
1−[2−(3,4,5−トリメトキシ−フェニルアミノ)−ピリミジン−4−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−8−オール
[1−(2−フェニルアミノ−ピリミジン−4−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−3−イル]−カルバミン酸ベンジルエステル
1−[2−(4−トリフルオロメチル−フェニルアミノ)−ピリミジン−4−イル]−1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリン−5−オール
【0130】
乾燥充填カプセル
各々上記の式(I)の化合物の1種を活性成分として0.25g含む5000個のカプセルを、以下の通り製造する:
【表4】

【0131】
製造法
記載の物質を粉砕し、0.6mmメッシュサイズを篩過させる。混合物の0.33g分を、カプセル充填機を使用してゼラチンカプセルに入れる。
【0132】
軟カプセル
各々上記の式(I)の化合物の1種を活性成分として0.05g含む5000個の軟ゼラチンカプセルを、以下の通り製造する:
【表5】

【0133】
製造法
活性成分を粉砕し、PEG 400(約380−420のMrを有するポリエチレングリコール、Fluka, Switzerland)およびTween(登録商標)80(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、Atlas Chem. Ind. Inc., USA、Fluka, Switzerlandから供給)に懸濁し、粉砕機で約1−3μmの粒径まで挽く。混合物の0.43g分を、次いで、カプセル充填機を使用して軟ゼラチンカプセルに充填する。
【0134】
均等物
本発明は、現在最も実際的で好ましい態様と見なされるものに関連して記載しているが、本発明は、開示の態様に限定されるものではなく、むしろ逆に、添付の特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれる種々の改変および同等な処理を包含すると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬として使用するための、式(I)
【化1】

〔式中、
、A、A、Aの各々は、独立してNまたはC−Rから選択され、ここで、RはHまたはCの置換基部分であり、A、AおよびAの少なくとも1個はNであり;
XはN−H、置換アミノ、OまたはSから選択される架橋部分であり;
は芳香環の置換基であり、そしてnは0〜4の整数であり;
YおよびDは、独立してO、S、CH、NH、R置換C、またはR置換Nから選択され、
は、YおよびDを含む環の置換基であり、そしてrは0から環の有効原子価の最大数までの整数であり;
はヒドロカルビルおよびヘテロ環から選択される部分であり;
TはH、ハロゲン、O−R、S−R、SO−RSO−R、SO−N(R)、SO−NR10およびSO−ハロゲンから選択され、ここで、Rは水素、置換または非置換アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリルまたはアリールから選択され;そしてRは置換または非置換アルキル、シクロアルキル、またはアリールであり、そしてNR10は含窒素ヘテロ環式環であり;そしてpは0〜5の整数である。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩、エステルまたはプロドラッグ。
【請求項2】
式(I)
【化2】

〔式中、
、A、A、Aの各々は、独立してNまたはC−Rから選択され、ここで、RはHまたはCの置換基部分であり、A、AおよびAの少なくとも1個はNであり;
XはN−H、置換アミノ、OまたはSから選択される架橋部分であり;
は芳香環の置換基であり、そしてnは0〜4の整数であり;
YおよびDは、O、S、CH、NH、R置換C、またはR置換Nから独立して選択され、
はYおよびDを含む環の置換基であり、そしてrは0から環の有効原子価の最大数までの整数であり;
はヒドロカルビルおよびヘテロ環から選択される部分であり;
TはH、ハロゲン、O−R、S−R、SO−RSO−R、SO−N(R)、SO−NR10およびSO−ハロゲンから選択され、ここで、Rは水素、置換または非置換アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリルまたはアリールから選択され;そしてRは置換または非置換アルキル、シクロアルキル、またはアリールであり、そしてNR10は含窒素ヘテロ環式環であり;そしてpは0〜5の整数である。
ここで、化合物は:
【化3】

ではない。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩、エステルまたはプロドラッグ。
【請求項3】
およびAがNであり、そしてAおよびAがC−Rである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
およびAがC−Hである、請求項1、2または3に記載の化合物。
【請求項5】
XがN−Hである、請求項1から4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
(複数個存在するときは、各Rが独立して)はOH、O−アルキル、SH、S−アルキル、ハロゲン、置換または非置換アミン、CFおよびC−Cアルキルから選択される、請求項1から5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
がOHである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
nが1である、請求項1から7のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
YがCHである、請求項1から8のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
DがCHである、請求項1から9のいずれかに記載の化合物。
【請求項11】
が置換または非置換脂肪族、脂環式、または芳香族部分から選択される、請求項1から10のいずれかに記載の化合物。
【請求項12】
が芳香族である、請求項1から11のいずれかに記載の化合物。
【請求項13】
が置換または非置換フェニル、イミダゾリル、ピロリル、オキサゾリルおよびイソオキサゾリルから選択される、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
がフェニルである、請求項12に記載の化合物。
【請求項15】
pが1である、請求項1から14のいずれかに記載の化合物。
【請求項16】
pが1であり、そしてTが架橋基Xに対してパラ位に位置する、請求項14に記載の化合物。
【請求項17】
Tがハロゲン、O−アルキル、O−アルキル−ハロゲン、SO−R、SO−NHR、SO−NR10およびSO−ハロゲンから選択される、請求項1から16のいずれかに記載の化合物。
【請求項18】
ハロゲンが塩素である、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
が置換または非置換アルキルまたは置換または非置換アリールである、請求項17に記載の化合物。
【請求項20】
が直鎖または分枝鎖アルキル、シクロアルキル、直鎖または分枝鎖ハロ−アルキル、アルコキシ、カルボキシアルキル、またはアルキルアミノである、請求項17に記載の化合物。
【請求項21】
Tが式(i)から(x):
【化4】

〔式中、qは1から4の整数であり、そしてsは0〜4の整数である。〕
から選択される部分である、請求項17に記載の化合物。
【請求項22】
rが0である、請求項1から21のいずれかに記載の化合物。
【請求項23】
式(II)、(III)および(IV):
【化5】

の化合物から選択される、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項24】
XがNHである、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
がフェニルである、請求項23または24に記載の化合物。
【請求項26】
nが1である、請求項23、24または25に記載の化合物。
【請求項27】
pが1である、請求項23、24、25または26に記載の化合物。
【請求項28】
式(V):
【化6】

である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項29】
およびAがNであり、そしてAおよびAがC−Rである、請求項28に記載の化合物。
【請求項30】
式(VI)、(VII)および(VIII):
【化7】

の化合物から選択される、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項31】
nが1である、請求項30に記載の化合物。
【請求項32】
式(IX)
【化8】

の化合物である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項33】
pが1である、請求項30、31または32に記載の化合物。
【請求項34】
XがNHである、請求項30、31、32または33に記載の化合物。
【請求項35】
式(X)
【化9】

〔式中、GはR、NHRまたはNR10である。〕
の化合物である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項36】
XがNHである、請求項35に記載の化合物。
【請求項37】
式(XI)
【化10】

の化合物である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項38】
式(XII)
【化11】

の化合物である、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項39】
TがO−Rである、請求項38に記載の化合物。
【請求項40】
XがNHである、請求項37、38または39に記載の化合物。
【請求項41】
1種以上のチロシンおよびセリン/スレオニンキナーゼおよびキナーゼ類似物(kinase-like)依存性疾患の処置に使用するための、請求項1から40のいずれかに記載の化合物。
【請求項42】
温血動物におけるIKK、PDGF−R、Kdr、c−Src、Her−1、Her−2、c−Kit、c−Abl、Ins−r、Tek、Flt−1、Flt−3、Flt−4、c−AbiおよびFGFR−1、Eph受容体(例えばEphB4)、CDK1、CDK2およびRET活性の阻害に使用するための、請求項1から40のいずれかに記載の化合物。
【請求項43】
温血動物におけるRAFキナーゼ活性阻害に使用するための、請求項42に記載の化合物。
【請求項44】
該疾患が、血管形成、癌、腫瘍増殖、アテローム性動脈硬化症、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、炎症性疾患、神経外傷性疾患、慢性神経変性、疼痛、偏頭痛または心肥大の1種以上から選択される、請求項41に記載の化合物。
【請求項45】
黒色腫の処置に使用するための、請求項1から44のいずれかに記載の化合物。
【請求項46】
活性化変異B−RAFキナーゼにより特徴付けられる疾患の処置に使用するための、請求項1から45のいずれかに記載の化合物。
【請求項47】
チロシンおよびセリン/スレオニンキナーゼおよびキナーゼ類似物依存性疾患の処置用医薬の製造のための、請求項1から40のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項48】
血管形成、癌、腫瘍増殖、アテローム性動脈硬化症、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、炎症性疾患、神経外傷性疾患、慢性神経変性、疼痛、偏頭痛または心肥大の処置用医薬の製造のための、請求項1から40のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項49】
黒色腫の処置用医薬の製造のための、請求項1から40のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項50】
活性化変異B−RAFキナーゼにより特徴付けられる疾患の処置用医薬の製造のための、請求項1から40のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項51】
該化合物を単独で投与する、請求項47から50のいずれかに記載の使用。
【請求項52】
該化合物を少なくとも1種の他の抗癌剤と組み合わせて投与する、請求項47から50のいずれかに記載の化合物。
【請求項53】
該少なくとも1種の他の抗癌剤が、プロテアーゼ阻害剤、上皮細胞増殖因子受容体キナーゼ阻害剤、血管内皮細胞増殖因子受容体キナーゼ阻害剤、細胞毒性剤、有糸分裂阻害剤、白金配位錯体、抗腫瘍抗生物質、アルキル化剤、内分泌剤、アンドロゲン、抗アンドロゲン、エストロゲン、抗エストロゲン、アロマターゼ阻害剤、ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニストおよびソマトスタチンアナログ、ならびに過剰発現されているおよび/または他の方法で腫瘍細胞中で上方制御されている特異的代謝経路に関与する酵素または受容体を標的とする化合物、タンパク質キナーゼ阻害剤、スレオニンおよびチロシンキナーゼ阻害剤、上皮細胞増殖因子受容体キナーゼ阻害剤、血管内皮細胞増殖因子受容体キナーゼ阻害剤、線維芽細胞増殖因子阻害剤、インシュリン様増殖因子受容体阻害剤、血小板由来増殖因子受容体キナーゼ阻害剤、メチオニンアミノペプチダーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、およびヒストンデアセチラーゼ阻害剤から選択される、請求項52に記載の使用。
【請求項54】
請求項1から40のいずれかに記載の化合物を含む、医薬組成物。
【請求項55】
約1%から約95%の請求項1から40のいずれかに記載の化合物を含む、請求項54に記載の医薬組成物。
【請求項56】
約20%から約90%の請求項1から40のいずれかに記載の化合物を含む、請求項54または55に記載の医薬組成物。
【請求項57】
約5%から約20%活性成分を含む、請求項54、55または56に記載の医薬組成物。
【請求項58】
注射により投与するための、請求項54から57のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項59】
請求項1から40のいずれかに記載の化合物の溶液、懸濁液または分散物を含む、請求項58に記載の医薬組成物。
【請求項60】
さらに担体を含む、請求項58または59に記載の医薬組成物。
【請求項61】
該担体がマンニトールを含む、請求項60に記載の医薬組成物。
【請求項62】
油中懸濁液を含む、請求項59、60または61に記載の医薬組成物。
【請求項63】
経口投与用の、請求項54から57のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項64】
さらに固体担体を含む、請求項63に記載の医薬組成物。
【請求項65】
さらにゼラチンおよび可塑剤を含む、請求項64に記載の医薬組成物。
【請求項66】
直腸投与用の、請求項54から57のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項67】
さらに坐薬基剤を含む、請求項66に記載の医薬組成物。
【請求項68】
請求項1から40のいずれかに記載の化合物および少なくとも1種の抗癌剤を含む、医薬組成物。
【請求項69】
請求項1から40のいずれかに記載の化合物と少なくとも1種の抗癌剤の組合せ。
【請求項70】
抗癌剤がプロテアーゼ阻害剤、上皮細胞増殖因子受容体キナーゼ阻害剤、血管内皮細胞増殖因子受容体キナーゼ阻害剤、細胞毒性剤、有糸分裂阻害剤、白金配位錯体、抗腫瘍抗生物質、アルキル化剤、内分泌剤、アンドロゲン、抗アンドロゲン、エストロゲン、抗エストロゲン、アロマターゼ阻害剤、ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニストおよびソマトスタチンアナログ、ならびに過剰発現されているおよび/または他の方法で腫瘍細胞中で上方制御されている特異的代謝経路に関与する酵素または受容体を標的とする化合物、タンパク質キナーゼ阻害剤、スレオニンおよびチロシンキナーゼ阻害剤、上皮細胞増殖因子受容体キナーゼ阻害剤、血管内皮細胞増殖因子受容体キナーゼ阻害剤、線維芽細胞増殖因子阻害剤、インシュリン様増殖因子受容体阻害剤、血小板由来増殖因子受容体キナーゼ阻害剤、メチオニンアミノペプチダーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、およびヒストンデアセチラーゼ阻害剤から選択される、請求項68に記載の医薬組成物または請求項69に記載の組合せ。
【請求項71】
温血動物、例えばヒトに、治療的有効量の請求項1から40のいずれかに記載の化合物を投与することを含む、チロシン、セリン/スレオニンキナーゼまたはキナーゼ類似物依存性疾患の処置方法。
【請求項72】
同時にまたは別の時点で1種以上の抗癌剤を投与することをさらに含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
黒色腫の処置方法であって、
(a)患者からの黒色腫組織を試験して、該黒色腫組織が変異RAFキナーゼを発現するかまたは野生型RAFキナーゼを過剰発現するか否かを決定し、そして
(b)該黒色腫が野生型RAFキナーゼを過剰発現するか、または活性化変異B−RAFキナーゼを発現することが判明したならば、該患者を、有効RAFキナーゼ阻害量の請求項1から40のいずれかに記載のRAF阻害化合物で処置する
ことを含む、方法。
【請求項74】
黒色腫の処置方法であって、
(a)患者からの黒色腫組織を試験して、該黒色腫組織がB−RAFキナーゼまたはC−RAFキナーゼ活性を過剰発現するか否かを決定し、そして
(b)該黒色腫組織がB−RAFキナーゼまたはC−RAFキナーゼ活性を過剰発現することが判明したならば、該患者を、有効RAFキナーゼ阻害量の請求項1から40のいずれかに記載のRAF阻害化合物で処置する
ことを含む、方法。
【請求項75】
黒色腫の処置方法であって、
(a)患者からの黒色腫組織を試験して、該黒色腫組織が変異B−RAFキナーゼまたはC−RAFキナーゼ活性を発現するか否かを決定し、そして
(b)該黒色腫組織が変異B−RAFキナーゼを発現することが判明したならば、該患者を、有効RAFキナーゼ阻害量の請求項1から40のいずれかに記載のRAF阻害化合物で処置する
ことを含む、方法。
【請求項76】
患者からの組織サンプルにおけるB−RAFキナーゼ遺伝子またはタンパク質の変異を検出し、そして、患者を、有効B−RAFキナーゼ阻害量の請求項1から40のいずれかに記載の化合物で処置することを含む、活性化変異B−RAFキナーゼにより特徴付けられる疾患の処置方法。
【請求項77】
MAPキナーゼシグナル伝達経路を介する過剰なシグナル伝達により特徴付けられる疾患を有する患者の処置方法であって、該患者に有効RAFキナーゼ阻害量の請求項1から40のいずれかに記載の化合物を投与することを含む、方法。
【請求項78】

【化12】

の化合物の製造方法であって、以下の反応スキームを含む、方法:
【化13】

〔工程2はオプションであり、実施するとき、T’はTの前駆体であり、そしてR1’はRの前駆体であるかまたはRであり、そしてX、R、R、TおよびPは請求項1に定義の通りである。〕。
【請求項79】
XがNHである、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
がフェニルである、請求項78または79に記載の方法。
【請求項81】
pが1である、請求項78、79または80に記載の方法。
【請求項82】
1’がOHである、請求項78から81のいずれかに記載の方法。
【請求項83】
TがSO−Gであり、ここで、GがR、NHRまたはNR10であり、そしてRおよびR10が請求項1に定義の通りである、請求項78から82のいずれかに記載の方法。
【請求項84】
TがO−Rであり、ここで、Rが請求項1で定義の通りである、請求項78から83のいずれかに記載の方法。
【請求項85】
X−R−(T)
【化14】

である、請求項84に記載の方法。

【公表番号】特表2009−530288(P2009−530288A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500458(P2009−500458)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/006424
【国際公開番号】WO2007/109045
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】