説明

現像ローラ、現像装置及び画像形成装置

【課題】スジ状の不要パターンを発生させることがなく、かつ経年変化による性能劣化もない現像ローラを提供する。
【解決手段】本発明に係る現像ローラは、円柱状のマグネットローラと、前記マグネットローラを収容する円筒状のスリーブと、を備え、前記スリーブの表面には複数の分断された微小凹部が形成され、前記微小凹部は、前記スリーブの軸方向及び周方向の双方に対して分散されて配置されている、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像ローラ、現像装置、及び画像形成装置に係り、特に、トナーを感光体に搬送して感光体にトナー像を現像する現像ローラ、現像装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタ、複合機(MFP(Multi-Functional Peripheral))等の画像形成装置では、現像ローラを具備する現像装置によって、感光ドラム上の静電潜像を現像する電子写真方式が用いられている。
【0003】
現像ローラの表面領域のうち、感光ドラムと対向する領域を現像領域と呼んでいる。現像装置は、攪拌した現像剤(2成分現像剤の場合は、トナーと磁性体粒子)を現像ローラの表面に付着させて現像領域まで搬送する。トナーは攪拌によって帯電しており、現像領域における現像ローラと感光ドラムの電位差によって現像ローラから感光ドラムに引き付けられる。そして、感光ドラムの静電潜像をトナー画像として現像する。
【0004】
現像剤を現像ローラの表面に付着させて現像領域に搬送するためには、現像ローラの表面に摩擦抵抗が必要とされる。このため、現像ローラの表面は完全に滑らかな状態ではなく、小さな凹凸部を形成するための表面処理が施されている。
【0005】
現像ローラの表面処理として従来からよく知られているものとして、サンドブラスト処理とナーリング処理(或いはローレット処理)とがある。
【0006】
サンドブラスト処理によって加工された表面は、ざらざらした粗面となっており、高い摩擦抵抗を示す。しかしながら、長時間使用していると、現像剤によって表面が削られ、表面の粗さは徐々に低下する。この結果、摩擦抵抗が低下し、安定に現像剤を搬送することができなくなってくる。
【0007】
一方、ナーリング処理は、特許文献1等に開示されているように、現像ローラの表面に、現像ローラの軸に平行する多数の溝を形成する処理である。各溝の長さは、現像ローラの軸方向の長さとほぼ同程度である。表面に形成された多数の溝によって現像剤に対する高い摩擦抵抗が発生する。また、サンドブラスト処理に比べると深い凹部を形成することができるため、長時間使用しても摩擦抵抗の低下はそれ程発生しない。
【特許文献1】米国特許第6925277号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ナーリング処理された現像ローラで現像処理を行うと、現像されたトナー画像上に、各溝に対応したスジ状の不要パターンが発生するという問題がある。このスジ状の不要パターンは、背景が青空のように広く一様な領域で目立ってくる。
【0009】
サンドブラスト処理による現像ローラではこのようなスジ状の不要パターンは発生しないが、経年変化による性能劣化という問題がある。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、スジ状の不要パターンを発生させることがなく、かつ経年変化による性能劣化もない現像ローラ、現像装置、及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係る現像ローラは、円柱状のマグネットローラと、前記マグネットローラを収容する円筒状のスリーブと、を備え、前記スリーブの表面には複数の分断された微小凹部が形成され、前記微小凹部は、前記スリーブの軸方向及び周方向の双方に対して分散されて配置されている、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る現像装置は、現像剤を攪拌する攪拌部と、攪拌された前記現像剤をその表面に付着させ、感光体と対向する位置まで搬送する現像ローラと、前記現像ローラに付着した前記現像剤の厚みを規制するドクタブレードと、を具備し、前記現像ローラは、円柱状のマグネットローラと、前記マグネットローラを収容する円筒状のスリーブと、を備え、前記スリーブの表面には複数の分断された微小凹部が形成され、前記微小凹部は、前記スリーブの軸方向及び周方向の双方に対して分散されて配置されている、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る画像形成装置は、感光体ドラムと、前記感光体ドラムに光を照射して前記感光体ドラムの表面に静電潜像を形成する露光装置と、前記静電潜像にトナーを付着させ、トナー像を現像する現像装置と、現像されたトナー像を用紙に転写する転写装置と、用紙に転写されたトナー像を定着する定着装置と、を具備し、前記現像装置は、現像剤を攪拌する攪拌部と、攪拌された前記現像剤をその表面に付着させ、感光体と対向する位置まで搬送する現像ローラと、前記現像ローラに付着した前記現像剤の厚みを規制するドクタブレードと、を有し、前記現像ローラは、円柱状のマグネットローラと、前記マグネットローラを収容する円筒状のスリーブと、を備え、前記スリーブの表面には複数の分断された微小凹部が形成され、前記微小凹部は、前記スリーブの軸方向及び周方向の双方に対して分散されて配置されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る現像ローラ、現像装置、及び画像形成装置によれば、スジ状の不要パターンを発生させることがなく、かつ経年変化による性能劣化を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る現像ローラ、現像装置、及び画像形成装置の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0016】
(1)画像形成装置
図1は、本実施形態に係る画像形成装置1の典型例としての複写機(或いはMFP)の外観例を示す図である。
【0017】
画像形成装置1は、読取部2、画像形成部3、給紙部4等を有している。
【0018】
読取部2では、原稿台に載置された原稿やADF(Auto Document Feederに入力された原稿を光学的に読み取って画像データを生成している。画像形成部3では、給紙部4から供給される用紙に電子写真方式を用いて画像データを印刷している。また、画像形成部3には、ユーザが各種の操作を行うコントロールパネル5や、各種情報を表示する表示パネル6が設けられている。
【0019】
図2は、画像形成部3の内部構成例を示す模式的な断面図である。
【0020】
画像形成部3は、中央部近傍に図示矢印方向に回転する感光体ドラム10を有している。感光体ドラム10の周囲には、帯電装置11、露光装置20、現像装置30、転写装置40、除電装置50、及びクリーナ60が回転の上流から下流に向けて順に配設されている。
【0021】
帯電装置11によって、感光体ドラム10の表面は所定の電位に一様に帯電される。露光装置20は、画像データの強度に応じて変調されたレーザ光を感光体ドラム10の表面に照射する。レーザ光が照射されるとその部分の電位が低下し、感光体ドラム10の表面に静電潜像が形成される。
【0022】
現像装置30は、現像剤を感光体ドラム10の表面に付着させ、静電潜像を現像している。本実施形態では、現像剤として、トナーと磁性体粒子とで構成される2成分現像剤を用いている。現像剤の中のトナーによって静電潜像を現像し、感光体ドラム10の表面にトナー画像を形成している。
【0023】
一方、給紙部4からは用紙が転写位置(感光体ドラム10と転写装置40とが対向する位置)に向けて搬送されており、転写装置40によって感光体ドラム10上のトナー画像が用紙に転写される。
【0024】
トナー画像が転写された用紙は転写装置40の下流側にある定着装置70に搬送され、ここで加熱、加圧されてトナー画像が用紙に定着される。定着処理の終了した用紙は排紙装置80によって外部に排出される。
【0025】
なお、用紙への転写が終わった感光体ドラム10は、除電装置50によって表面電荷が除去され、また、クリーナ60によって表面に残留しているトナーが除去される。
【0026】
以上の処理を繰り返すことにより、連続した印刷を行うことができる。
【0027】
(2)現像装置
図3は、現像装置30の細部構成例を示す模式的な断面図であり、現像装置30に対向する感光体ドラム10も併せて示している。
【0028】
現像装置30は、現像ローラ31、攪拌部34、及びドクタブレード37を主要な構成部として具備している。
【0029】
現像ローラ31は、円柱状のマグネットローラ32と、このマグネットローラ32を収容する円筒状のスリーブ33とを有している。
【0030】
マグネットローラ32は、軸方向に延びた5極のマグネットを有しており、夫々のマグネットの極は、つかみ極N3(N極)、ブレード規制極S2(S極)、現像極N1(N極)、搬送極S1(S極)、及び剥離極N2(N極)と呼ばれている。マグネットローラ32は回転することなく固定されている。
【0031】
一方、スリーブ33は、軸方向の端部に設けられている駆動機構(図示せず)によって図中の矢印方向に回転する。スリーブ33は、例えばアルミニウム素管で形成され、その周表面には後述するパターンの微小凹部が多数形成されている。
【0032】
攪拌部34は、2本のオーガ35、36を有しており、オーガ35とオーガ36との間には隔壁34aが設けられている。オーガ35、36の周囲の空間には図示しない搬送機構によって搬送された現像剤が充填されている。
【0033】
隔壁34aは軸方向の両端部において開口しており、オーガ35、36の周囲の現像剤は、オーガ35、36の回転によって攪拌されながら軸方向に循環する。
【0034】
前述したように本実施形態に係る現像剤は、トナーとキャリア(磁性体粒子)とからなる2成分現像剤であり、攪拌時の摩擦によって生じる静電気によりトナーとキャリアは静電結合している。
【0035】
攪拌された現像剤の流れは概略次の通りである。
【0036】
現像剤(静電結合したトナーとキャリア)は、つかみ極N3とキャリアとの間に働く磁力によってつかみ極N3近傍のスリーブ33に付着する。
【0037】
付着した現像剤は、スリーブ33の回転により、つかみ極N3に隣接するブレード規制極S2の位置に搬送される。ブレード規制極S2に対向する位置にはドクタブレード37が設けられている。現像剤がドクタブレード37とスリーブ37の間隙を通過することにより、現像剤の厚みが規制され、ドクタブレード37を通りすぎたスリーブ37の表面には所望の均一な厚みの現像剤の層が形成される。この現像剤の層では、キャリアが数珠(じゅず)繋ぎされた現像剤ブラシが形成されている。
【0038】
層状に整形された現像剤は、スリーブ33の回転により、さらにブレード規制極S2から現像極N1の位置まで搬送され、やがて現像領域(スリーブ33と感光体ドラム10とが対向している領域)に達する。
【0039】
スリーブ33には、図示しない印加手段により、所定の電位が印加されている。現像領域では、スリーブ33の電位と感光体ドラム10の静電潜像上の電位との差によって電界が発生している。トナーは帯電しているため、トナーにはこの電界による電気力が働く。この電気力によってトナーは感光体ドラム10の静電潜像上に引き付けられ、静電潜像を現像する。
【0040】
スリーブ33に残留したトナーとキャリアは、引き続きスリーブ33の回転により、現像極N1の位置から搬送極S1の位置に搬送され、さらに剥離極N2の位置まで搬送される。剥離極N2とつかみ極N3とは同じN極であるため、キャリアに対してスリーブ33の表面から剥離させる力が働く。この力によって、キャリア及びキャリアに静電結合している残留トナーはスリーブ33の表面から剥離されて攪拌部34に戻る。
【0041】
(3)現像ローラ(第1の実施形態)
上述したように、現像剤はつかみ極N3の位置でスリーブ33に引き付けられ、その後つかみ極N3の位置からブレード規制極S2の位置へ、さらに現像極N1の位置(現像領域)へとスリーブ33の表面に付着して搬送される。
【0042】
このとき、スリーブ33の表面が完全に滑らかな状態であると、現像剤はスリーブ33の表面から離れてしまい、安定した量の現像剤を現像位置まで搬送することができない。
【0043】
そこで、従来から、スリーブの表面には適宜の摩擦抵抗を発生させるための表面処理が施されている。
【0044】
スリーブの表面処理として従来からよく知られているものとして、サンドブラスト処理とナーリング処理とがある。
【0045】
図4(a)は、サンドブラスト処理によって表面処理されたスリーブを有する従来の現像ローラ100の外観例を示す図である。
【0046】
前述したように、サンドブラスト処理によって加工された表面は、ざらざらした粗面となっており、高い摩擦抵抗を示す。しかしながら、長時間使用していると、現像剤によって表面が削られ、表面の粗さは徐々に低下する。この結果、摩擦抵抗が低下し、安定に現像剤を付着して搬送することができなくなってくる。
【0047】
一方、図4(b)は、ナーリング処理(スリーブの表面に、現像ローラの軸に平行する多数の溝を形成する処理)によって加工されたスリーブを有する従来の現像ローラ101の外観例を示す図である。各溝の長さは、図4(b)に示したように、現像ローラの軸方向の長さとほぼ同程度である。
【0048】
ナーリング処理の加工方法としては、例えばアルミニウム素管に金型を押し付けて溝を形成する方法や、エッチング処理によって溝を形成する方法等がある。
【0049】
表面に形成された多数の溝によって現像剤に対する高い摩擦抵抗が発生する。また、サンドブラスト処理のような凸部がなく、またサンドブラスト処理に比べると深い凹部を形成することができるため、長時間使用しても摩擦抵抗の低下はそれ程発生しない。
【0050】
しかしながら、ナーリング処理された現像ローラで現像処理を行うと、現像されたトナー画像上に、各溝に対応したスジ状の不要パターンが発生するという問題がある。このスジ状の不要パターンは、背景が青空のように広く一様な領域で目立ってくる。
【0051】
一般に、人間の目は、離散した点よりも連続した直線の方をより容易に視認することができる。直線の濃度が非常に薄い場合であっても、その直線がある程度の範囲で連続している場合は直線の存在を肉眼で比較的容易に識別することができる。また、直線が等間隔で周期的に配列されているような場合には、さらに容易に線の存在を識別できる。
【0052】
そこで、本実施形態では、現像剤の搬送能力を維持しつつも、可能なかぎり連続性や周期性を排除したパターンをスリーブ上に形成するようにし、人間の目に対して識別困難となるようにしている。
【0053】
図5(a)は、本実施形態に係る現像ローラ31の外観例を示す図であり、図5(b)はスリーブ33の表面に形成されるパターンの拡大図である。本実施形態では、スリーブ33の外径を約23.5mmとし、軸方向の長さを約312mmとしている。
【0054】
図6(a)は、図5(b)のパターンをより詳細に示した図である。図6(a)の横方向はスリーブ33の長手方向(軸方向)に対応しており、縦方向はスリーブ33の円周を展開した0度から360度の範囲に対応している。
【0055】
図6(a)に示したように、本実施形態に係るスリーブ33には、多数の分断された微小凹部が形成されており、各微小凹部は、前記スリーブの軸方向及び周方向の双方に対して分散されて配置されている。
【0056】
より具体的には、スリーブ33の表面全体を、軸方向約0.20mm、周方向約0.21mm(周方向の角度1度が約0.21mmに相当する)のマス目(図6(b)参照)で仮想的に分割し、互いに離隔されたマス目の位置に微小凹部を形成している。ある微小凹部と、軸方向及び周方向に隣接する微小凹部との間にはそれぞれマス目1つ分の以上の平坦領域が設けられており、図6の例では、それぞれマス目5つ分の平坦領域が設けられている。
【0057】
また、マス目36個(軸方向6個、周方向6個)で構成される区分領域では、その内部の微小凹部の配置は2次元的にランダムに配置されている。このため、図6(a)からわかるように、スリーブ33全体としても軸方向や周方向に対して連続性や周期性が感じられず、微小凹部がスリーブ33全体にランダムに配置されている印象を受ける。
【0058】
このため、仮に図6(a)のパターンが感光体ドラム10の表面に不要パターンとして転写されたとしても、その不要パターンには連続性や周期性が存在しないため、肉眼での視認は非常に困難となる。
【0059】
なお、本実施形態では、微小凹部の開口は、マス目1つ分とほぼ同じ形状(方形)とほぼ同じ大きさとしているが必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、微小凹部の開口形状を円形としてもよい。
【0060】
微小凹部は、例えばエッチング処理によって形成することができる。アルミニウム素管に対して、インクジェット装置等でマスキング用のインクを印刷し、固化させる。その後、このアルミニウム素管をエッチング溶液に浸漬する。或いは、このアルミニウム素管にエッチング溶液を塗布する。これらの処理によってマスキングされていない領域が溶融し、微小凹部が形成される。その後、マスキング用のインクの除去処理を行って図6(a)等に示すパターンを有するスリーブ33が生成される。
【0061】
図7は、スリーブ33の横断面図である。微小凹部の深さは、現像剤の搬送能力の観点と微小凹部の加工容易性の観点とから、50μm〜100μmの範囲が好ましい。
【0062】
(4)効果確認試験
本実施形態に係る現像ローラ31の効果を確認するため、従来例に係るスリーブ形状の現像ローラと比較する効果確認試験を実施した。
【0063】
図8、図9(a)、図9(b)、図10(a)、及び図10(b)にその試験結果を示す。
【0064】
図8は、ナーリング処理された従来例に係る現像ローラを用いて印刷した画像の状態と、本実施形態に係る現像ローラを用いて印刷した画像の状態とをそれぞれ視認判断した結果を示す表である。
【0065】
従来例の現像ローラとしては、図4(b)に示したように軸方向に平行な複数の溝を設けたスリーブを製作し、溝の数は60本とした。また、溝の幅は、約0.2mmとした。
【0066】
溝の深さとして、30μm、50μm、及び70μmの3種類のスリーブを製作して試験を行った。なお、溝はエッチング処理によって形成した。
【0067】
試験の結果、従来例に係る現像ローラでは、溝の深さが30μm、50μm、及び70μmのいずれのケースでも、溝の痕跡が画像に現れ、画像の状態としては不良であると判断した。
【0068】
一方、本実施形態に係る現像ローラ31は、スリーブ33のパターンとして図6のパターンを用いた。なお、マス目の大きさ(この場合、微小凹部の大きさに対応する)として、0.2*0.2mm、0.3*0.3mm、0.4*0.4mm、及び0.5*0.5mmの4種類のスリーブ33を製作して試験に用いた。
【0069】
なお、微小凹部は、従来例と同様にエッチング処理によって形成した。また、微小凹部の深さは、いずれも50μm〜90μmの範囲であった。
【0070】
試験の結果、4種類のスリーブ33の総てにおいて、スリーブ33のパターンに対応する不要痕跡等は現れず、良好な状態の画像が得られた。
【0071】
図9(a)、図9(b)、図10(a)、及び図10(b)は、サンドブラスト処理された従来例に係る現像ローラと本実施形態に係る現像ローラ31との比較試験した結果を示す図である。
【0072】
図9(a)は、本実施形態に係る現像ローラ31を用いて、印字枚数に対する微小凹部の深さの変化を確認した結果を示すグラフである。印字枚数が増えても(使用時間が長くなっても)微小凹部の深さは初期状態と比べてほとんど変化しなかった。なお、グラフには250,000枚までの結果を図示しているが、引き続き500,000枚まで印刷しても微小凹部の深さの変化はほとんど見られなかった。
【0073】
図9(b)は、図9(a)と同様に本実施形態に係る現像ローラ31を用いて、印字枚数に対する現像剤の搬送量の変化を確認した結果を示すグラフである。印字枚数が増えても(使用時間が長くなっても)初期状態と比べてほとんど変化しなかった。なお、引き続き500,000枚まで印刷しても現像剤の搬送量の変化はほとんど見られなかった。
【0074】
これに対して、サンドブラスト処理した従来例に係る現像ローラでは、図10(a)に示したように、使用時間が400時間を越えた時点(印字枚数840,000枚に対応)で現像剤の搬送不良が発生した。このとき、表面粗さRzは初期状態に対して1/4以下にまで低下していた。
【0075】
また、図10(b)に示したように、使用時間が400時間を越えた時点で、現像剤の搬送量は、初期状態(約55mg/cm)から1/2以下(約20mg/cm)にまで低下した。
【0076】
以上の試験から、本実施形態に係る現像ローラ31は、画質の観点からはナーリング処理された従来の現像ローラよりも優れ、寿命の観点からはサンドブラスト処理された従来の現像ローラよりも優れていることが確認された。
【0077】
(5)その他の実施形態
図11(a)及び図11(b)は、第2の実施形態に係る現像ローラ31aのスリーブ33aのパターン例を示す図である。第1の実施形態に係るスリーブ31では、微小凹部の大きさと形状をマス目とほぼ同じ大きさと形状にしている。これに対して、第2の実施形態に係るスリーブ31aでは、微小凹部の形状を軸方向に長い長方形としている。図11(a)及び図11(b)に示す具体例では、軸方向に繋がった3つのマス目で1つの微小凹部を形成している。
【0078】
第2の実施形態に係るスリーブ31aにおいても、ある微小凹部と、軸方向及び周方向に隣接する微小凹部との間にはそれぞれマス目1つ分の以上の平坦領域が設けられている。図11(a)に示した具体例では、軸方向に対してはマス目6つ分の平坦領域が設けられており、周方向に対してはマス目2つ分の平坦領域が設けられている。
【0079】
このように第2の実施形態においても、微小凹部は軸方向と周方向に対して分断されて非連続な形状となっている。このため、仮に図11(a)のパターンが感光体ドラム10の表面に不要パターンとして転写されたとしても、その不要パターンには連続性が存在しないため、第1の実施形態と同様に、肉眼による視認は非常に困難となる。
【0080】
図12及び図13は、第3の実施形態に係る現像ローラ31bのスリーブ33bのパターン例を示す図である。第1の実施形態に係るスリーブ31では、微小凹部の大きさと形状をマス目とほぼ同じ大きさと形状にしている。これに対して、第3の実施形態に係るスリーブ31bでは、微小凹部の形状と配置は第1の実施形態と同じにしつつも、微小凹部の大きさを第1の実施形態よりも大きくしている。図12及び図13に示す具体例では、微小凹部の大きさを約0.25*約0.25mmとし、マス目の大きさ(約0.2*約0.2mm)よりも縦横それぞれ0.05mmだけ大きくしている。
【0081】
この結果、図13に示したように、軸方向及び周方向に延びるマス目格子の直線(図13における破線)に対して、微小凹部の縦横の縁はそれぞれ0.05mmだけ変位することになる。別言すれば、軸方向に並んだある一行の微小凹部と、隣の行の微小凹部とは0.05mmだけオーバラップするような配列となっている。同様に、周方向に並んだある一列の微小凹部と、隣の列の微小凹部とは0.05mmだけオーバラップするような配列となっている。
【0082】
このような配置にすることにより、隣接する行又は列に配置される各微小凹部の縁がマス目格子の直線から交互にずれて配置されることなり、パターン全体を見たときの連続性や周期性がより一層低減される。この結果、仮に図12のパターンが感光体ドラム10の表面に不要パターンとして転写されたとしても、第1の実施形態と同等、或いはより一層、肉眼による視認は非常に困難となる。
【0083】
以上説明してきたように、上記各実施形態に係る現像ローラ31、31a、31b、現像装置30、及び画像形成装置1によれば、従来のナーリング処理されたスリーブのようにスジ状の不要パターンを発生させることがなく、かつサンドブラスト処理されたスリーブのように経年変化によって性能劣化することもない。
【0084】
なお、本発明は上記の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の外観例を示す斜視図。
【図2】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の構成例を示す断面図。
【図3】本発明の一実施形態に係る現像装置の構成例を示す断面図。
【図4】従来例に係る現像ローラの外観例を示す図。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る現像ローラの外観例を示す図。
【図6】第1の実施形態に係る現像ローラのスリーブのパターン例を示す図。
【図7】第1の実施形態に係る現像ローラのスリーブの横断面図。
【図8】ナーリング処理された従来例に係る現像ローラを用いて印刷した画像の状態と、第1の実施形態に係る現像ローラを用いて印刷した画像の状態とをそれぞれ視認判断した結果を示す表。
【図9】第1の実施形態に係る現像ローラの微小凹部の深さの経時変化及び現像剤の搬送量の経時変化をそれぞれ試験した結果を示すグラフ。
【図10】サンドブラスト処理した従来例に係る現像ローラの微小凹部の深さの経時変化及び現像剤の搬送量の経時変化とをそれぞれ試験した結果を示すグラフ。
【図11】第2の実施形態に係る現像ローラのスリーブのパターン例を示す図。
【図12】第3の実施形態に係る現像ローラのスリーブのパターン例を示す第1図。
【図13】第3の実施形態に係る現像ローラのスリーブのパターン例を示す第2図。
【符号の説明】
【0086】
1 画像形成装置
2 読取部
3 画像形成部
4 給紙部
11 帯電装置
20 露光装置
30 現像装置
31 現像ローラ
32 マグネットローラ
33 スリーブ
34 攪拌部
35 オーガ
36 オーガ
40 転写装置
50 除電装置
60 クリーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状のマグネットローラと、
前記マグネットローラを収容する円筒状のスリーブと、
を備え、
前記スリーブの表面には複数の分断された微小凹部(が形成され、前記微小凹部は、前記スリーブの軸方向及び周方向の双方に対して分散されて配置されている、
ことを特徴とする現像ローラ。
【請求項2】
前記微小凹部の開口形状は略方形である、
ことを特徴とする請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項3】
前記微小凹部の開口形状は略円形である、
ことを特徴とする請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項4】
前記微小凹部は、
前記スリーブの表面を軸方向及び周方向に仮想的な方形微小マス目で分割し、
前記微小凹部の開口は、少なくともその周方向の大きさを前記微小マス目と略同じ大きさに形成し、
前記微小凹部の開口と軸方向に隣接する微小凹部の開口との間に1マス目以上の平坦部を設ける一方、前記微小凹部の開口と周方向に隣接する微小凹部の開口との間にも1マス目以上の平坦部を設けるように前記微小凹部を配置する、
ことを特徴とする、
請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項5】
前記微小凹部は、
軸方向に並ぶ総ての前記微小凹部の軸方向の縁が1つの直線の上に載ることがないように、一部の前記軸方向の縁を前記直線から変位させ、
周方向に並ぶ総ての前記微小凹部の周方向の縁が1つの円周線の上に載ることがないように、一部の前記軸方向の縁を前記円周線から変位させる、
ように形成され、配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項6】
前記微小凹部は、エッチング処理によって形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の現像ローラ。
【請求項7】
現像剤を攪拌する攪拌部と、
攪拌された前記現像剤をその表面に付着させ、感光体と対向する位置まで搬送する現像ローラと、
前記現像ローラに付着した前記現像剤の厚みを規制するドクタブレードと、
を具備し、
前記現像ローラは、
円柱状のマグネットローラと、
前記マグネットローラを収容する円筒状のスリーブと、
を備え、
前記スリーブの表面には複数の分断された微小凹部が形成され、前記微小凹部は、前記スリーブの軸方向及び周方向の双方に対して分散されて配置されている、
ことを特徴とする現像装置。
【請求項8】
前記微小凹部の開口形状は略方形である、
ことを特徴とする請求項7に記載の現像装置。
【請求項9】
前記微小凹部の開口形状は略円形である、
ことを特徴とする請求項7に記載の現像装置。
【請求項10】
前記微小凹部は、
前記スリーブの表面を軸方向及び周方向に仮想的な方形微小マス目で分割し、
前記微小凹部の開口は、少なくともその周方向の大きさを前記微小マス目と略同じ大きさに形成し、
前記微小凹部の開口と軸方向に隣接する微小凹部の開口との間に1マス目以上の平坦部を設ける一方、前記微小凹部の開口と周方向に隣接する微小凹部の開口との間にも1マス目以上の平坦部を設けるように前記微小凹部を配置する、
ことを特徴とする、
請求項7に記載の現像装置。
【請求項11】
前記微小凹部は、
軸方向に並ぶ総ての前記微小凹部の軸方向の縁が1つの直線の上に載ることがないように、一部の前記軸方向の縁を前記直線から変位させ、
周方向に並ぶ総ての前記微小凹部の周方向の縁が1つの円周線の上に載ることがないように、一部の前記軸方向の縁を前記円周線から変位させる、
ように形成され、配置される、
ことを特徴とする請求項7に記載の現像装置。
【請求項12】
前記微小凹部は、エッチング処理によって形成される、
ことを特徴とする請求項7に記載の現像装置。
【請求項13】
感光体ドラムと、
前記感光体ドラムに光を照射して前記感光体ドラムの表面に静電潜像を形成する露光装置と、
前記静電潜像にトナーを付着させ、トナー像を現像する現像装置と、
現像されたトナー像を用紙に転写する転写装置と、
用紙に転写されたトナー像を定着する定着装置と、
を具備し、
前記現像装置は、
現像剤を攪拌する攪拌部と、
攪拌された前記現像剤をその表面に付着させ、感光体と対向する位置まで搬送する現像ローラと、
前記現像ローラに付着した前記現像剤の厚みを規制するドクタブレードと、
を有し、
前記現像ローラは、
円柱状のマグネットローラと、
前記マグネットローラを収容する円筒状のスリーブと、
を備え、
前記スリーブの表面には複数の分断された微小凹部が形成され、前記微小凹部は、前記スリーブの軸方向及び周方向の双方に対して分散されて配置されている、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
前記微小凹部の開口形状は略方形である、
ことを特徴とする請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記微小凹部の開口形状は略円形である、
ことを特徴とする請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記微小凹部は、
前記スリーブの表面を軸方向及び周方向に仮想的な方形微小マス目で分割し、
前記微小凹部の開口は、少なくともその周方向の大きさを前記微小マス目と略同じ大きさに形成し、
前記微小凹部の開口と軸方向に隣接する微小凹部の開口との間に1マス目以上の平坦部を設ける一方、前記微小凹部の開口と周方向に隣接する微小凹部の開口との間にも1マス目以上の平坦部を設けるように前記微小凹部を配置する、
ことを特徴とする、
請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記微小凹部は、
軸方向に並ぶ総ての前記微小凹部の軸方向の縁が1つの直線の上に載ることがないように、一部の前記軸方向の縁を前記直線から変位させ、
周方向に並ぶ総ての前記微小凹部の周方向の縁が1つの円周線の上に載ることがないように、一部の前記軸方向の縁を前記円周線から変位させる、
ように形成され、配置される、
ことを特徴とする請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項18】
前記微小凹部は、エッチング処理によって形成される、
ことを特徴とする請求項13に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−48168(P2009−48168A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132237(P2008−132237)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】