説明

現像ローラの製造方法

【課題】
長期の使用によっても樹脂表面層が破断しにくい現像ローラを提供する。
【解決手段】
導電性軸体、ゴム弾性層およびポリウレタン樹脂を含有する膜厚が5μm以上20μm以下の樹脂表面層を有する現像ローラの製造方法であって、
(1)ゴム弾性層の表面に、体積平均粒子径が50〜400nmの金属酸化物の粒子を0.10mg/cm以上1.00mg/cm以下の密度で付着させる工程と、(2)該粒子を付着させた該ゴム弾性層の表面に、樹脂表面層の原料組成物を含む塗料を塗工し、硬化させて該樹脂表面層を形成する工程とを有することを特徴とする現像ローラの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を採用した装置に組み込まれ、感光体に接触させて使用される現像ローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ等の電子写真用画像形成装置の現像装置においては、トナー容器内のトナーがトナー供給ローラ及びトナー量規制部材によって現像ローラ上に均一に塗布され、感光体と現像ローラとの接触部でトナーによる現像が行われる。ここで用いられる現像ローラの構成として、特許文献1には、ゴム弾性層とその周りにトナーの帯電性向上やトナーフィルミング防止のために樹脂層を被覆した構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−145758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載されているような、ゴム弾性層とポリウレタン樹脂からなる樹脂表面層とを積層してなる現像ローラは、トナー量規制部材との繰り返しの摺擦によって表面層が破断することがあった。
そこで、本発明は長期の使用によっても樹脂表面層が破断しにくい現像ローラの製造方法の提供に向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
現像ローラの樹脂表面層の破断は、高硬度のゴム弾性層と低硬度の樹脂表面層とを組み合せた場合に特に顕著に認められた。このことから、当該破断は、ゴム弾性層と樹脂表面層との界面近傍で生じる応力に起因していると考えられる。そこで本発明者らは、ゴム弾性層と樹脂表面層との界面近傍のみで樹脂表面層の硬度を上げ、ローラ全体としては低硬度に保持することできる構成を得るべく検討を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る現像ローラの製造方法は、導電性軸体、ゴム弾性層およびポリウレタン樹脂を含有する膜厚が5μm以上20μm以下の樹脂表面層を有する現像ローラの製造方法であって、
(1)ゴム弾性層の表面に、体積平均粒子径が50〜400nmの金属酸化物の粒子を0.10mg/cm以上1.00mg/cm以下の密度で付着させる工程と、(2)該粒子を付着させた該ゴム弾性層の表面に、樹脂表面層の原料組成物を含む塗料を塗工し、硬化させて該樹脂表面層を形成する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、現像ローラ全体としての硬度上昇を抑えつつ、ゴム弾性層上に形成した樹脂表面層の破断を防止することができる。その結果として、トナーが固着しにくく、かつ、耐久性にも優れた現像ローラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る現像ローラの一例を示す断面図である。
【図2】本発明に係る現像ローラの浸漬塗工の一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明に係る現像ローラのリング塗工の一例を示す概略構成図である。
【図4】金属酸化物の粒子の付着方法の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明においては、ゴム弾性層(以降、単に「弾性層」ともいう)の上に金属酸化物の粒子が付着される。これによって弾性層との界面近傍におけるポリウレタン樹脂を含有する樹脂表面層(以降、単に「表面層」ともいう)が補強される。この金属酸化物粒子は弾性層との付着性がよく、塗工する際に脱落せず、表面層側への拡散を抑制することができる。金属酸化物としては、特に限定されないが、酸化鉄、酸化銅、酸化鉛、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタンなどが挙げられる。
この金属酸化物粒子の体積平均粒子径は、50〜400nmである。粒子の体積平均粒子径を50nm以上にすることで、金属酸化物が弾性層表面で過度に凝集することを防ぎ、金属酸化物の脱落を防止できる。また、粒子の体積平均粒子径を400nm以下にすることで、弾性層側の界面近傍での表面層の強度を向上させることができ、表面層の破断を防止することができる。
【0009】
またこの金属酸化物粒子は、0.10mg/cm以上1.00mg/cm以下の密度で付着させる。金属酸化物の付着量を0.10mg/cm以上にすることで、弾性層との界面近傍での表面層の強度を向上させることができ、表面層の破断を防止することができる。また、金属酸化物の付着量を1.00mg/cm以下にすることで、ローラ硬度を低硬度に抑えることができ、トナーの固着に起因する画像弊害を抑制することができる。さらに、金属酸化物の中でも、酸化チタンもしくは酸化亜鉛を用いることが好ましい。酸化チタンや酸化亜鉛はポリウレタン樹脂との親和性が高いため、金属酸化物粒子の脱落を防止できると考えられる。
【0010】
表面層の膜厚をD(μm)としたときに、弾性層と表面層の界面から0.1×D(μm)以下の範囲の表面層中に金属酸化物粒子の全てが存在していることが好ましい。金属酸化物粒子の全てをこの範囲に存在させることで、ローラ硬度を低硬度に抑えることができ、トナーの固着に起因する画像弊害を抑制することができる。
また酸化チタンの中でも、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウムのうち一種又は二種以上を含む層で被覆したものが特に好ましい。これらの被覆によって金属酸化物粒子とポリウレタン樹脂との親和性がより良好になり、金属酸化物粒子が凝集せずに弾性層との界面近傍に均一に存在させることができる。
【0011】
金属酸化物粒子の付着方法は、特に制限されないが、下記(1)、(2)または(3)の方法が具体例として挙げられる。
(1)金属酸化物粒子をスポンジや布等に染み込ませてローラと摺擦させ付着させる方法、
(2)ローラを回転させながら金属酸化物粒子を振りかける方法、
(3)金属酸化物を台の上に敷き詰めて、そこにローラに押し付ける方法。
これらの中でも、金属酸化物を含ませたスポンジローラを弾性層に当接して回転駆動することが好ましい。この方法によれば、一定の当接圧で金属酸化物粒子を弾性層の上に付着させることができ、弾性層上に均一に金属酸化物粒子を付着させることができると考えられる。
【0012】
スポンジローラの材質としては、ポリウレタン樹脂の発泡体からなるものが好ましい。ここで、スポンジローラとしては、発泡セル数が40〜120個/25mmのものが好適に用いられる。そして、このスポンジローラの、弾性層を有するローラに対する侵入量は、0.5〜2.0mmとすることが好ましい。さらに、スポンジローラの回転方向は弾性層を有するローラと同方向で、その回転速度は弾性層を有するローラの16〜128%が好ましい。
【0013】
本発明において、弾性層の上にはポリウレタン樹脂を含有する樹脂表面層の原料組成物を含む塗料を塗工し、硬化させて表面層が形成される。この表面層の膜厚は5μm以上20μm以下である。表面層の膜厚を5μm以上にすることで、ローラ硬度を低硬度に抑えることができ、トナーの固着に起因する画像弊害を抑制することができる。また、表面層の膜厚を20μm以下にすることで、ローラの摺擦により生じる応力の及ぶ範囲を金属酸化物が存在する範囲に限定することができ、表面層の破断を防止することができる。
【0014】
図1は、本発明の製造方法によって得られる現像ローラの一例である。現像ローラ1は、導電性軸体2と、この導電性軸体の外周に設けられた一層以上の弾性層3と、この弾性層の表面に付着させた金属酸化物の粒子4、ポリウレタン樹脂を含有する表面層5から構成される。導電性軸体2は、現像ローラの電極及び支持部材として機能するもので、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼の如き金属または合金;クロム、又はニッケルで鍍金処理した鉄;導電性を有する合成樹脂の如き導電性の材質で構成される。さらに、金属製の導電性軸体に酸化処理などの防錆処理を行ったものであってもよい。導電性軸体の形状は円柱状が好ましいが、円筒状であってもよく、必要に応じて表面にプライマー処理を行ってもよい。これらの円柱や円筒の大きさは限定されないが、例えば、外径4〜10mm程度、長さ240〜340mm程度である。弾性層は、感光体表面に形成された静電潜像にトナーを過不足なく供給することができるように、適切なニップ幅とニップ圧をもって感光体に押圧されるような硬度や弾性を、現像ローラに付与するものである。
【0015】
本発明においては1層もしくは複数層設けることができる弾性層としては、従来から導電性ゴムローラに用いられている種々のゴム材を用いることができ、具体的には以下のものが挙げられる。エチレン―プロピレン―ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル―ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)スチレン―ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、NBRの水素化物、ウレタンゴム等。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、シリコーンゴムは柔軟性に富み、且つ、圧縮永久歪が小さい為、好ましい。シリコーンゴムとしては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルトリフルオロプロピルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリフェニルビニルシロキサンや、これらのポリシロキサンの共重合体を挙げることができる。弾性層の厚みは限定されないが、例えば、2.0〜6.0mm程度である。
【0016】
弾性層には、その他、上記組成の機能を阻害しない範囲で、必要に応じて架橋剤、可塑剤、充填剤、増量剤、加硫剤、加硫助剤、架橋助剤、酸化防止剤、老化防止剤、加工助剤の如き各種添加剤を含有させることができる。非導電性充填剤としては、シリカ、石英粉末、及び炭酸カルシウムを挙げることができる。架橋剤としては、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、及びジクミルパーオキサイドが挙げられる。
表面層に用いられるポリウレタン樹脂としてはエーテル系ポリウレタン、エステル系ポリウレタン、アクリル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタンが挙げられる。これらの中でも、トナーとの摩擦力によってトナーに負極性の電荷を付与しやすいポリエーテルポリウレタン樹脂が好ましい。
【0017】
ポリエーテルポリウレタン樹脂は公知のポリエーテルポリオールとイソシアネート化合物との反応により得ることができる。ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが挙げられる。また、これらのポリオール成分は必要に応じて予め2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)のようなイソシアネートにより鎖延長したプレポリマーとしてもよい。これらのポリオール成分と反応させるイソシアネート化合物としては特に限定されず、以下のものが挙げられる。エチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の如き脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサン1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネートの如き脂環族ポリイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の如き芳香族ポリイソシアネート、及びこれらの変性物や共重合物、そのブロック体。
【0018】
現像ローラとして表面粗度が必要な場合は、ポリウレタン樹脂の分散液中に粗さ制御のための微粒子を添加してもよい。この微粒子の体積平均粒径は3〜20μmであることが好ましい。また、ポリウレタン樹脂の分散液中に添加する微粒子の量は、表面層の樹脂固形分100質量部に対し、1〜50質量部であることが好ましい。粗さ制御用微粒子としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂の微粒子を用いることができる。
【0019】
上記表面層は導電剤を含有することが好ましい。導電剤としては、トナーに対する摩擦帯電性と表面の付着性を最適なバランスに制御することができるという理由により、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ケッチェンブラック、アセチレンブラックの如き導電性カーボンブラック;SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MTの如きゴム用カーボンブラックを挙げることができる。その他、酸化処理を施したカラーインク用カーボンブラック、熱分解カーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックは、表面層中に10〜30質量%含有されることが好ましい。
表面層には、その他、機能を阻害しない範囲で、架橋剤、可塑剤、充填剤、増量剤、加硫剤、加硫助剤、架橋助剤、酸化防止剤、老化防止剤、加工助剤、レベリング剤を含有させることができる。
【0020】
本発明の現像ローラの製造方法においては、導電性軸体上に形成された弾性層の最外層の上に金属酸化物粒子を付着させ、次いでポリウレタン樹脂を含有する表面層を形成する。
導電性軸体上に弾性層を形成する方法としては、型成形法、押出成形法、射出成形法、塗工成形法を挙げることができる。弾性層の表面は、表面層との密着性向上の為、表面研磨や、コロナ処理、フレーム処理、エキシマ処理の表面改質方法によって改質することもできる。
【0021】
表面層は、ポリウレタン樹脂を含有する分散液を塗工して形成される。塗工方法としては、浸漬塗工、リング塗工、スプレー塗工又はロールコートを採用することができる。浸漬塗工で塗膜形成を行う場合、一例として、図2のような塗布装置を用いることができる。図2の塗布装置には、現像ローラの外径よりわずかに大きな内径を有し、ローラを軸方向に浸漬可能な深さを有する円筒形の浸漬槽6が備えられている。浸漬槽の上縁外周には環状の液受け部が設けられており、攪拌タンク8と接続されている。また浸漬槽6底部は撹拌タンクと接続されている。
撹拌タンク中の塗料は、液送ポンプ7によって浸漬槽6の底部に送り込まれる。浸漬槽の上端部からは、塗料がオーバーフローし、浸漬槽6の上縁外周の液受け部を介して撹拌タンクに戻る。弾性層3を設けた導電性軸体2は昇降装置9に垂直に固定され、浸漬槽6中に浸漬し、引き上げることでその表面上に塗膜が形成される。塗膜の形成後、ローラを昇降装置9から取り外し、樹脂塗膜を乾燥後、加熱硬化して、表面層を形成する。加熱硬化は、温度120〜180℃の環境下、60〜300分間程度行うことが好ましい。
【0022】
リング塗工で塗膜形成を行う場合、一例として、図3のような塗布装置を用いることができる。図3の塗布装置は、塗布液貯蔵タンク10、シリンジポンプ11、リング塗布ヘッド12及び導電性軸体の支持部等で構成されている。塗布液は塗布液貯蔵タンク10に入れられてスターラーで攪拌されながら、適量の塗布液がシリンジポンプ11によって1箇所の液供給口からリング塗布ヘッド12内に供給される。塗布液は、リング塗布ヘッド12内で合流し周方向に分配するための液分配室を有するリング塗布ヘッド12内に充填される。弾性層3を設けた導電性軸体2を垂直状態に支持し、この弾性層3を設けた導電性軸体2の外径に対して0.4mm〜0.8mmの間隔をなす距離に全周に亘って開口されたスリット状の吐出口がくるようにリング塗布ヘッド12を配置する。リング塗布ヘッド12を弾性層上端部から下端部へ、一定の速度で垂直移動させると同時に、一定の吐出速度で弾性層3の全周に対して均一に塗布液を吐出させる。その後、室温で30分程度風乾し、更に熱風循環乾燥機中で温度140℃〜180℃の環境下、60〜80分乾燥し硬化させることが好ましい。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。実施例中の各物性値等は以下の方法で測定した。
〔1.体積平均粒子径の測定〕
金属酸化物粒子及び樹脂粒子について、粒度分布測定装置(商品名:UPA−UT151;日機装株式会社製)を用い、多点法にて3回測定し、平均値を体積平均粒子径とした。
〔2.金属酸化物粒子の付着量〕
弾性層に金属酸化物粒子を付着させる前後の重量変化をM(mg)とした。さらに、導電性軸体を含む弾性層の外径をレーザ測長機(東京精密株式会社製、PULCOMopto60B―600)で求めた値から算出した弾性層全体の表面積をS(cm)とした。以上の結果からM÷Sにより求めた値を付着量とした。
【0024】
〔3.金属酸化物粒子の存在領域の測定〕
現像ローラの軸方向をカミソリでカットして、弾性層と表面層を含む切片を蒲鉾状に切り出し、ミクロトーム(商品名:ライカRM2265、ライカ社製)で表面層を0.25μmずつ切り出した。この薄片試料について透過型電子顕微鏡(商品名:H−7500、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて金属酸化物が存在するか否かを確認して、金属酸化物粒子の存在領域を求めた。
〔4.膜厚の測定〕
現像ローラの軸方向3箇所を等間隔にカミソリでカットして、弾性層と表面層を含む切片を蒲鉾状に切り出し、その断面をデジタルマイクロスコープ(商品名:VHX―600、株式会社キーエンス製)で観察し、3点平均で膜厚を算出した。
【0025】
〔5.ローラ硬度の測定〕
弾性層を有するローラの硬度は日本ゴム協会標準規格SRIS0101に準拠したAsker−C硬度型スプリング式ゴム硬度計(高分子計器(株)社製)を用いて測定した。測定位置は軸方向中心部と、軸方向両端部から内側に各30mmの位置の3点を周方向に角度90°刻みで合計12点に関して、ローラ軸方向に測定し、その平均値をAsk−C硬度とした。
〔6.ローラ最表面硬度の測定〕
弾性層を有するローラ及び現像ローラの最表面硬度はマイクロゴム硬度計MD−1タイプA(高分子計器社製)を用いて測定した。測定位置は軸方向中心部と、軸方向両端部から内側に各30mmの位置の3点を周方向に角度90°刻みで合計12点に関して、ローラ軸方向に測定し、その平均値をMD−1硬度とした。
【0026】
(金属酸化物1の製造)
酸化鉄をゲル化し湿式ジェットミル(商品名:ナノメーカーLSU―2010P14;アドバンスト・ナノ・テクノロジィ株式会社製)により粉砕圧力100MPaの条件で粉砕処理し、湿式粉砕した。そして、湿式粉砕後のスラリーをディスク式スプレードライヤー(商品名:CS−100;大川原化工機株式会社製)を用いて、ディスク周速約200m/secの条件下、また、入り口熱風温度280℃及び出口熱風温度180℃にて噴霧乾燥した。さらに、多分割分級装置(商品名:エルボージェット分級機;日鉄鉱業株式会社製)で粗粉を除去して金属酸化物1を得た。
(金属酸化物2〜10、及び18〜19の製造)
金属酸化物の種類または粉砕圧力を表1の条件に変更した以外は金属酸化物1と同様にして金属酸化物2〜10及び18〜19を得た。
【0027】
(金属酸化物11)
酸化チタン粉末300gと水700gとを混合し、ガラスビーズミル(ビーズ径:3φ)で10分間解砕した後、硫酸アルミニウム47.5g(酸化チタン粉末に対しAl換算で0.5%)を加え十分に混合した。得られた混合スラリーをスプレードライヤー(入口温度:200℃)中に噴霧して表面処理と乾燥を行い、表面がアルミナで被覆された金属酸化物11を得た。
(金属酸化物12〜17)
金属酸化物の被覆処理剤として、硫酸アルミニウムの代わりに表1の物を用いた以外は金属酸化物11の場合と同様にして金属酸化物12〜17を得た。
【0028】
(実施例1)
〔1.弾性層の形成〕
外径16mm、長さ280mmのSUS304製の導電性軸体にプライマ−(商品名:DY35−051、東レ・ダウコーニング株式会社製)を塗布し、内径16mmの円筒状金型内に同心となるように設置した。弾性層の原料として下記の材料を混合した付加型シリコーンゴム組成物を調製した。
液状シリコーンゴム材料(商品名:KE−1950−35、信越化学工業株式会社製):100.0質量部、
カーボンブラック(商品名:トーカブラック#7360SB、東海カーボン株式会社製):35.0質量部、
耐熱性付与剤としてのシリカ粉体:0.2質量部、
白金触媒:0.1質量部。
この組成物を金型内に注入し、温度130℃で20分加熱成型した後、金型を温度50℃まで冷却し、導電性軸体と一体となった弾性層を金型から取り出した。次に導電性軸体と一体となった弾性層を温度200℃で2時間加熱して硬化反応を完結させ、厚み4mmの弾性層を有するローラを製造した。得られたローラのAsk−C硬度は68.5であり、MD−1硬度は52.3であった。
【0029】
〔2.金属酸化物粒子の付着〕
キヤノン株式会社製レーザービームプリンタLBP5500用カートリッジを分解し、現像装置の分離、現像装置内のトナー除去、現像ローラ除去を行った。次に現像装置の現像剤容器内に金属酸化物1の粒子を充填し、現像ローラの位置に弾性層を有するローラを装着し、金属酸化物付着用改造現像装置を用意した。このローラの回転駆動速度を120rpmとした。改造現像装置内の現像剤供給ローラとしては、芯金上にポリウレタン樹脂の発泡体を配置したスポンジローラ13で、発泡セル数が80個/25mmのものを使用した。また、このスポンジローラ13の現像ローラに対する侵入量は1.5mmで、回転方向は図4の方向、回転速度は現像ローラの64%に設定した。この条件で金属酸化物の粒子をスポンジローラに付着させ、弾性層を有するローラに当接してローラを10秒間回転駆動することにより、金属酸化物1が付着した弾性層を有するローラを製造した。金属酸化物の付着量は0.50mg/cmであった。
【0030】
〔3.表面層の形成〕
次に表面層の材料として、下記の材料をメチルエチルケトン(MEK)溶媒中で段階的に混合して、窒素雰囲気下温度80℃にて3時間反応させて、ポリウレタンポリオールプレポリマーを得た。
・ポリテトラメチレングリコール(商品名:PolyTHF、BASF製):100質量部、
・イソシアネート(商品名:ミリオネートMT(MDI)、日本ポリウレタン工業株式会社製):14.0質量部。
上記ポリウレタンポリオールプレポリマー100質量部とイソシアネート(商品名:コロネート4191、日本ポリウレタン株式会社製)41.8質量部を加えて、[NCO]/[OH]の値は1.1となるようにした。さらに、カーボンブラック(商品名:MA100、三菱化学株式会社製)を適量添加して抵抗値を調整した。上記原料混合液に有機溶剤を加え固形分25質量%に調整したものにポリウレタン樹脂粒子(商品名:アートパールC400(φ14μm)、根上工業株式会社製)20質量部を加え、ボールミルで攪拌分散したものを表面層の原料液とした。
金属酸化物を付着させた弾性層を有するローラ上に浸漬塗工することにより膜厚13μmとなるように塗布し、温度80℃のオーブンで15分乾燥後、温度140℃のオーブンで2時間硬化し、現像ローラを得た。
【0031】
〔4.破断評価〕
このようにして得られた現像ローラをキヤノン株式会社製レーザービームプリンタLBP5500用ブラックカートリッジに装填し、LBP5500本体に装填し、印字率が0.2%の画像を公称寿命よりも多い70000枚出力した。出力途中でトナーがなくなった場合、現像ローラを別のブラックカートリッジに装填して再び使用した。
50000枚、60000枚、70000枚出力した直後に、ベタ白画像を出力し、画像評価した。その際、画像不良が見られた場合、透過型電子顕微鏡により現像ローラを観察し、現像ローラの表面にめくれ、ヒビなどがある場合、破断に起因する画像不良と判断した。以下の基準で破断評価(A〜D)を行った。
A:70000枚まで表面層の破断に起因する画像不良は見られない。
B:60000枚までは表面層の破断に起因する画像不良は見られないが、70000枚までに表面層の破断に起因する画像不良が見られる。
C:50000枚までは表面層の破断に起因する画像不良は見られないが、60000枚までに表面層の破断に起因する画像不良が見られる
D:50000枚までに表面層の破断に起因する画像不良は見られる。
【0032】
〔5.画像評価〕
破断評価と同様に、50000枚、60000枚、70000枚出力した後に、ベタ白画像を出力し、以下の方法でかぶり値を測定した。
かぶり値は、反射濃度計TC−6DS/A(商品名、東京電色技術センター社製)を用いて、画像形成前の転写紙の反射濃度と、ベタ白画像形成後の転写紙の反射濃度を測定し、反射濃度の増加分を現像ローラのかぶり値とした。その際、かぶり値が3.0を超えた場合、透過型電子顕微鏡により現像ローラを観察し、現像ローラの表面にトナーの固着があるかを判断した。通常、かぶり値が3.0とは、目視でも画像上に「かぶり」を認識できるレベルである。以下の基準で画像評価(A〜D)を行った。
A:70000枚までトナーの固着が認められない。
B:60000枚まではトナーの固着が認められないが、70000枚までに固着が見られる。
C:50000枚まではトナーの固着が認められないが、60000枚までに固着が見られる。
D:50000枚までにトナーの固着が見られる。
【0033】
(実施例2)
金属酸化物1を金属酸化物2に変更した以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。
(実施例3)
塗工方法をリング塗工に変更した以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。
(実施例4〜57)
金属酸化物の種類、現像ローラに対するスポンジローラの侵入量、現像ローラの回転速度に対するスポンジローラの回転速度及び膜厚を表2または表3の値とし、その他の条件は実施例1と同様にして、現像ローラを得た。
【0034】
(実施例58)
金属酸化物8を使用し、塗工方法をリング塗工に変更した以外は実施例3と同様にして現像ローラを得た。
(実施例59〜67)
金属酸化物の種類を表4のものに変更した以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。
(実施例68)
金属酸化物の種類を変更した以外は実施例3と同様にして現像ローラを得た。
【0035】
(実施例69)
金属酸化物の種類を変更し、付着方法として、台上に敷き詰めた樹脂粒子にローラを手動で5周回転させ付着させる方法に変更した以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。
(実施例70)
金属酸化物の種類を変更し、付着方法として上記スポンジローラを除いた金属酸化物付着用ローラを10秒間回転駆動させながら金属酸化物を振りかける方法に変更した以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。
【0036】
(比較例1〜24)
金属酸化物の種類、現像ローラに対するスポンジローラの侵入量、現像ローラの回転速度に対するスポンジローラの回転速度及び膜厚を表5の値とし、その他の条件は実施例1と同様にして、現像ローラを得た。
(比較例25)
体積平均粒子径300nmのスチレン―アクリル樹脂粒子(商品名:FS−104;日本ペイント、以下、樹脂粒子1という。)を準備した。金属酸化物1の粒子を樹脂粒子1に変更した以外は実施例1と同様にして現像ローラを得た。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
【表4】

【0041】
【表5】

【0042】
実施例1〜58の結果に示したとおり、本発明によれば、表面層の破断を防止でき、トナーの固着に起因する画像弊害を抑制できた。
さらに、実施例1、2、12及び39の結果に示したとおり、金属酸化物が酸化チタンまたは酸化亜鉛であることで表面層の破断をより効果的に抑えられた。
また、実施例12、39、59及び60の結果に示したとおり、表面層の膜厚をD(μm)としたときに、弾性層と表面層の界面から表面層側の0.1×D(μm)以下の範囲に存在していることにより、トナーの固着に起因する画像弊害を効果的に抑制できた。
【0043】
さらに実施例12及び61〜67の結果に示したとおり、金属酸化物がアルミニウム、ケイ素、ジルコニウムのうちの一種又は二種以上を含む層で被覆した酸化チタンであることで、トナーの固着に起因する画像弊害を効果的に抑制できた。
また、実施例12、69及び70の結果に示したとおり、金属酸化物をスポンジローラによる摺擦で付着させることで、表面層の破断をより効果的に防止できた。
【符号の説明】
【0044】
1 現像ローラ
2 導電性軸体
3 弾性層
4 金属酸化物の粒子
5 表面層
6 浸漬槽
7 液送ポンプ
8 攪拌タンク
9 昇降装置
10 塗布液貯蔵タンク
11 シリンジポンプ
12 リング塗布ヘッド
13 スポンジローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性軸体、ゴム弾性層およびポリウレタン樹脂を含有する膜厚が5μm以上20μm以下の樹脂表面層を有する現像ローラの製造方法であって、
(1)ゴム弾性層の表面に、体積平均粒子径が50〜400nmの金属酸化物の粒子を0.10mg/cm以上1.00mg/cm以下の密度で付着させる工程と、
(2)該粒子を付着させた該ゴム弾性層の表面に、樹脂表面層の原料組成物を含む塗料を塗工し、硬化させて該樹脂表面層を形成する工程と、
を有することを特徴とする現像ローラの製造方法。
【請求項2】
前記樹脂表面層の膜厚をD(μm)としたときに、前記粒子の全てが、前記ゴム弾性層と前記樹脂表面層の界面から0.1×D(μm)以下の範囲の樹脂表面層の中に存在している請求項1に記載の現像ローラの製造方法。
【請求項3】
前記粒子が、酸化チタンまたは酸化亜鉛からなる請求項1または2に記載の現像ローラの製造方法。
【請求項4】
前記粒子が、アルミニウム、ケイ素およびジルコニウムから選ばれる少なくとも1つを含む層で被覆された酸化チタンの粒子である請求項1〜3のいずれかに記載の現像ローラの製造方法。
【請求項5】
前記工程(1)が、前記粒子を付着させたスポンジローラを前記ゴム弾性層に当接して回転駆動させて前記ゴム弾性層の上に前記粒子を付着させる工程を含む請求項1〜4のいずれかに記載の現像ローラの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−247341(P2010−247341A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96155(P2009−96155)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】