説明

現像ローラー、現像装置及び画像形成装置

【課題】原料の特性のばらつきによる物性の変動が小さく、かつ適度な導電性と柔軟性を兼備し、カラー画像であっても高品位の画像を得ることができる現像ローラーを提供すること。更に、カラー画像であっても高品位の画像を得ることができる現像装置や、画像形成装置を提供すること。
【解決手段】軸芯体1と、該軸芯体の周囲に設けられた弾性層2と、該弾性層2上に設けられた樹脂層3とを有する現像ローラーにおいて、樹脂層3が、窒素原子を有する結着樹脂、カーボンブラック及び特定のフタロシアニン系金属化合物を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の電子写真方式を用いた画像形成装置に用いられる現像ローラー、これを用いた現像装置、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置による画像形成は次のように行われている。まず、回転可能な感光体を一様に帯電し、その表面に露光により静電潜像を形成する。静電潜像が形成された感光体に、現像装置により現像剤を供給して静電潜像を現像しトナー像を形成する。更に、感光体上のトナー像を転写材上に転写し、転写材上のトナーを加熱、加圧等により定着して画像形成が完了する。一方、トナー転写後の感光体表面に残留するトナーを除去し、次の画像形成に備え、待機する。
【0003】
このような画像形成装置の現像装置には、非磁性一成分接触方式等が採用されている。かかる現像装置としては、現像剤を収納する現像剤容器の開口を閉塞し、且つ、一部を容器外に露出するように現像ローラーが配置され、現像剤容器内で現像ローラーに当接して設けられるトナー供給ローラーによって現像ローラー表面上に現像剤を供給する。ついで現像ブレードにより余剰分を除去して現像ローラー上に現像剤を薄膜状に形成すると同時に、摩擦によりトナー粒子に正または負の電荷を与える。さらに、現像ローラーの回転に伴い正または負に帯電した現像剤を、露出部の現像領域に搬送し、ここにおいて対向して設けられる感光体表面の静電潜像に付着させ現像を行う。
【0004】
このような画像形成装置において、感光体の帯電、トナーの搬送、授受を行うため、103〜1010Ωの半導電性領域において、目的にあった導電性(電気抵抗)を有し、トナーの授受を容易にするため適度な弾性を有する弾性ローラーが用いられている。現像ローラーについても、均一な品質の画像形成を達成するために、その上に均一にトナー膜を形成する必要があり、電気抵抗を半導電領域で精度よくコントロールすることの要請に対し、種々の対策が行われている。例えば、カーボンブラックの特性(吸油量、表面積、粒子径)を選択することにより電気抵抗の安定化を図った現像ローラーが報告されている(特許文献1)。しかし、この現像ローラーにおいては、樹脂成分の官能基価や分子量等の製造ロット毎の違いによる特性のバラツキにより、カーボンブラックの分散性が一定とならず、安定した電気的物性が得られない場合がある。
【0005】
近年、カラー画像形成装置の進展により、グラフィックパターン等、所謂ベタ画像(ソリッド画像)のカラー画像においても、さらなる画像の均一性、画像濃度の高濃度化が求められている。
【0006】
高画質カラー画像に対する要求に対し、現像ローラー上の現像剤量を規制する現像ブレードにバイアスを印加する現像装置が提案されている(特許文献2)。また、現像ローラー表面に中心金属として、アルミニウム、錫、鉄および銅のいずれかを有する金属フタロシアニン化合物を含有することにより現像剤帯電性能の向上を図ることが報告されている(特許文献3)。
【0007】
しかし、現像ブレードにバイアスを印加して画像形成を行う場合、使用する現像ローラーによっては、現像ネガゴースト(画像の上流側パターンで現像ローラーの周期で画像濃度が低下する現象)が発生したり、現像ブレードに印加したバイアスが現像ローラー上にリーク(ブレードバイアスリーク)することによる画像不良が発生する場合があった。現像ネガゴーストは、現像ローラーの電気抵抗が高い場合に発生する傾向があり、ブレードバイアスリークは現像ローラー中に分散されている導電剤の分散が不十分であったり、現像ローラーの電気抵抗が低い場合に発生する傾向がある。すなわち、現像ブレードにバイアスを印加する画像形成プロセスにおいては、現像ローラーの電気抵抗を非常に高精度にコントロールする必要があると同時に、電気抵抗の高精度な均一性が求められる。更に、現像ブレードにバイアスを印加しない場合と比較して、現像ローラー上へのトナーの融着が発生しやすくなり、より柔軟な現像ローラーが求められる。
【0008】
また、特許文献3に記載される現像ローラーおいては原材料の特性のバラツキに大きく影響を受け、安定した電気的物性が得られない場合がある。
【特許文献1】特許2801724号公報
【特許文献2】特開2000−112212号公報
【特許文献3】特開2001−242698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、原料の特性のばらつきによる物性の変動が小さく、かつ適度な導電性と柔軟性を兼備し、カラー画像であっても高品位の画像を得ることができる現像ローラーを提供することにある。更に、カラー画像であっても高品位の画像を得ることができる現像装置や、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、特定の金属フタロシアニン系化合物とカーボンブラックとを窒素原子を含有する結着樹脂に分散させた樹脂層を表面に設けることにより、現像ローラーに高精度に均一で適度な導電性を付与することができることの知見を得た。この現像ローラーは現像ブレードにバイアスを印加するカラー画像形成装置にも好適に使用することができることを見い出した。かかる知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、軸芯体と、該軸芯体の周囲に設けられた弾性層と、該弾性層上に設けられた樹脂層とを有する現像ローラーにおいて、樹脂層が、窒素原子を有する結着樹脂、カーボンブラック及び一般式(I)
【化1】

[式中、Mは金属原子を示し、X1からX4は、独立して窒素原子又はC−R(Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1から12のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素原子数6から12の芳香族炭化水素基を示す。)を示し、Y1からY8は、独立して、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1から12のアルキル基を示し、Y1とY2、Y3とY4、Y5とY6、及びY7とY8が相互に連結したものは除く。]で表わされる金属化合物を含有することを特徴とする現像ローラーに関する。
【0012】
また、本発明は、軸芯体と、該軸芯体の周囲に設けられた弾性層と、該弾性層上に設けられた樹脂層とを有する現像ローラーにおいて、樹脂層が、窒素原子を有する結着樹脂、カーボンブラック及び一般式(II)
【化2】

(式中、Mは亜鉛原子を示し、Y1からY16は、独立して水素原子、ハロゲン原子又は置換基を示す。)で表わされる金属化合物を含有することを特徴とする現像ローラーに関する。
【0013】
また、本発明は、現像剤を表面に担持する現像ローラーと、現像ローラー上の現像剤量を制御する現像ブレードと、該現像ブレードのバイアス印加手段とを有する現像装置において、上記現像ローラーを用いたことを特徴とする現像装置に関する。
【0014】
また、本発明は、静電潜像を担持する感光体と、該感光体上の静電潜像を現像する現像装置を有する画像形成装置において、請求項9記載の現像装置を用いたことを特徴とする画像形成装置に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の現像ローラーは、原料の特性のばらつきによる物性の変動が小さく、かつ適度な導電性と柔軟性を兼備し、特にカラー画像であっても高品位の画像を得ることができる。更に、本発明の現像ローラーや画像形成装置は、カラー画像であっても高品位の画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の現像ローラーの一例として、図1に示すように、軸芯体1と、該軸芯体の周囲に設けられた弾性層2と、該弾性層上に設けられた樹脂層3とを有する。
【0017】
上記軸芯体は、周囲に設けられる弾性層、樹脂層を支持し、良好な導電性を有しこれらの層の電極として機能するものである。軸芯体の材質としては、例えば、アルミニウムや鉄、SUS、導電性樹脂などを挙げることができる。軸芯体の形状としては、円柱状、円筒状等で、具体的には、外径4〜10mmの円筒状を例示することができる。
【0018】
上記弾性層は、現像ローラーに導電性と弾性とを付与するものであり、一層であっても二層以上で構成されていてもよい。弾性層の電気抵抗値は103〜1010Ωcmが好ましく、104〜108Ωcmがより好ましい。弾性層の硬度はASKER−C硬度25〜60°が好ましい。
【0019】
ここで、電気抵抗値は後述の測定方法により測定した値を採用することができる。また、ASKER−C硬度は、日本ゴム協会標準規格SRIS0101に準拠したアスカーC型スプリング式ゴム硬度計(高分子計器(株)社製)を用いて測定する。常温常湿(23℃、55%RH)の環境中に12時間以上放置したローラーに対して、上記硬度計を10Nの力で当接させてから30秒後の測定値を採用することができる。
【0020】
上記弾性層は、ゴム、エラストマー、あるいはその他樹脂を基材とし、上記抵抗領域を有するように調整を図り導電剤を含有する。
【0021】
上記弾性層の基材としては、具体的には、ポリウレタン、天然ゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、シリコーンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、低硬度でかつ高反発弾性という特異な特性を有するシリコーンゴムは、特に好ましい。
【0022】
上記弾性層の電気抵抗を調整するために用いられる導電剤としては電子導電性材料や、イオン導電性材料いずれでもよい。電子導電性材料としては、具体的に、ケッチェンブラックEC、アセチレンブラック等の導電性カーボン、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン、酸化処理等を施したカラ−(インク)用カーボン等のカーボンブラック、銅、銀、ゲルマニウム等の金属及び金属酸化物等を挙げることができる。イオン導電性材料としては、具体的に、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機物質、変性脂肪族ジメチルアンモニウムエトサルフェート、ステアリルアンモニウムアセテート等有機物質を挙げることができる。これらは適宜組み合わせて使用することができる。これらのうち、少量で導電性を制御できることからカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックの含有量としては、例えば、基材100重量部に対して0.5〜50重量部を挙げることができ、1〜30重量部の範囲が好適である。
【0023】
このような弾性層には、その他必要に応じて架橋剤、可塑剤、発泡剤、整泡剤、充填剤、増量剤、加硫剤、加硫助剤、架橋助剤、酸化防止剤、老化防止剤、加工助剤等の各種添加剤を含有させることができる。非導電性充填剤としては、例えば、シリカ、石英粉末、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム等を挙げることができる。架橋剤としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド等を挙げることができる。
【0024】
上記弾性層の厚さとしては、例えば、1mm〜6mmを挙げることができる。
【0025】
上記樹脂層は窒素原子を有する結着樹脂、カーボンブラック及び一般式(I)で表される金属化合物又は一般式(II)で表される金属化合物を含有する。
【0026】
上記窒素原子を有する結着樹脂としては、後述するカーボンブラック及び一般式(I)又は(II)で表される金属化合物のバインダーとして機能する。結着樹脂が窒素元素を含有していることにより、一般式(I)、一般式(II)で示される金属化合物がこの窒素元素に配位し、結着樹脂の物性(ウレタン樹脂の場合、イソシアネートのNCO%、ポリオールの水酸基価等)のバラツキを抑制することができる。このため、カーボンブラックを特性が安定した結着樹脂に分散させることができ、カーボンブラックの分散性の変化を低減させ均一に分散させることができ、結果として現像ローラーの電気抵抗の安定性を向上させることができる。
【0027】
かかる結着樹脂としては、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、イミド樹脂、メラミン樹脂等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、低硬度で耐磨耗性に優れることから、ウレタン樹脂が好ましく、更にトナーの帯電を考慮するとポリエーテルポリウレタン樹脂がより好ましい。
【0028】
上記ポリエーテルポリウレタン樹脂としては、ポリエーテルポリオールとイソシアネート化合物との反応により得られるものを挙げることができる。かかるポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を挙げることができる。また、これらのポリオール成分は必要に応じて予め2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、1,4ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等のイソシアネートにより鎖延長したプレポリマーとしてもよい。
【0029】
これらのポリオール成分と反応させるイソシアネート化合物としては、エチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサン1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等の芳香族ポリイソシアネートを挙げることができる。これらは、変性物や共重合物、そのブロック体として用いてもよい。
【0030】
上記樹脂層に用いるカーボンブラックは、樹脂層の電気抵抗を調整するものである。かかるカーボンブラックとしては、具体的には、上記弾性層に用いる導電剤として例示したカーボンブラックと同様のものを挙げることができる。カーボンブラックのpHとしては2.5〜5.0の範囲が好ましい。カーボンブラックの含有量としては、現像ローラーが後述する電気抵抗値を有する量に調整することができる。具体的には、結着樹脂100質量部に対して5質量部〜50質量部の範囲を挙げることができる。カーボンブラックの含有量が5質量部以上であれば、樹脂層に所望の電気抵抗値を付与することができ、50質量部以下であれば、樹脂層が高硬度になることを抑制し、現像ローラー上へのトナーの融着の発生を抑制することができる。
【0031】
上記樹脂層に用いる一般式(I)又は一般式(II)で表される金属化合物は、窒素原子を含有する結着樹脂に、カーボンブラックと共に含有されることにより、上述のようにカーボンブラックを結着樹脂中に均一に分散させる機能に加え、現像ロ−ラーの電気抵抗を低減させる機能を有する。そのメカニズムの詳細は不明であるが、これらの金属化合物は、カーボンブラックと結着樹脂の界面抵抗を低下させ、カーボンブラックと結着樹脂の親和性(濡れ性)を高め、電気抵抗を低減させると考えられる。
【0032】
一般式(I)で表される金属化合物としては、式中、Mが示す金属原子として、コバルト、クロム、ニッケル、マンガン、マグネシウム、亜鉛が、カーボンブラックへの吸着性の観点から、好ましい。これらのうち、特にカーボンブラックへの吸着性に優れ、環境への影響が小さい亜鉛が好ましい。
【0033】
一般式(I)中、X1からX4は、独立して、窒素原子又はC−R(Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1から12のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素原子数6から12の芳香族炭化水素基を示す。)を示す。X1からX4が示すC−RのRが示す炭素原子数1から12のアルキル基は鎖状であっても、分枝状であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等を挙げることができる。Rが示す炭素原子数6から12の芳香族炭化水素基は具体的には、フェニル基、ナフチル基、ジフェニル基、インデン基等を挙げることができる。
【0034】
同式中、Y1からY8は、独立して、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1から12のアルキル基を示し、鎖状、分枝状いずれであってもよく、上記X1からX4が示すC1からC12のアルキル基と同様のものを具体的に例示することができる。更に、Y1からY8としては、Y1とY2、Y3とY4、Y5とY6、及びY7とY8が相互に連結したものは除かれる。
【0035】
これらのX1からX4が示すC−RのRが示す炭素原子数1から12のアルキル基、炭素原子数6から12の芳香族炭化水素基、Y1からY8が示す炭素原子数6から12の芳香族炭化水素基に導入される置換基としては、例えば、カルボン酸基、スルフォン酸基や、芳香族系基、脂肪族基、エーテル基又はアルコール基等を挙げることができる。顔料との吸着性や軸配位子の取り込みに障害とならないものが好ましく、例えば、アミンそれ自体が配位子となり得る官能基や、顔料との吸着面に立体障害となるような側鎖を持つものは好ましくない。
【0036】
一般式(I)で表される金属化合物としては、中心金属として亜鉛を有するテトラフェニルポルフィン構造の化合物が、カーボンブラックへの吸着性に優れ、より強い立体障害によりカーボンブラックの再凝集を抑制することから、好ましい。
【0037】
一般式(II)で表される金属化合物は、亜鉛フタロシアニンの基本骨格を有するものである。式(II)中、Y1からY16が示す置換基としては、上記一般式(I)中X1からX4が示すC−RのRや、Y1からY8が示す炭素原子数1から12のアルキル基に導入される置換基と同様の置換基を具体的に挙げることができる。また、顔料の吸着や軸配位子の取り込みに対して障害となるもの、例えば、アミン等それ自体が配位子となり得る官能基や、顔料との吸着面に立体障害となる側鎖を有するものは、除かれる。
【0038】
一般式(II)の中心金属としては、亜鉛である必要がある。亜鉛以外の金属(例えば、銅、鉄、アルミニウム、錫等)の場合には、カーボンブラックの結着樹脂への均一な分散性向上効果が得られない。
【0039】
一般式(II)で表される金属化合物としては、結着樹脂との相溶性の観点から亜鉛フタロシアニンが好ましい。
【0040】
一般式(I)又は一般式(II)で表される金属化合物の樹脂層中の含有量としては、樹脂層に含有されるカーボンブラック100質量部に対して0.5質量部以上、5.0質量部以下が好ましい。一般式(I)又は一般式(II)で表される金属化合物の含有量がこの範囲であると、現像ローラーに適度な電気抵抗を付与することができ、カーボンブラックを結着樹脂中に均一に分散させることができる。
【0041】
樹脂層中におけるこれらの金属化合物の有無は、蛍光X線分析、直接導入法GCMSによる質量分析等により確認することができる。
【0042】
また、上記樹脂層はスチレン−(4−ビニルピリジン)共重合体を含有することが、カーボンブラックと結着樹脂との親和性を向上させ、更に分散性を向上させ得ることから、好ましい。スチレン−(4−ビニルピリジン)共重合体の分子量は、重量平均分子量(Mw)は2000以上、10万以下が、結着樹脂との相溶性、安定性の観点から好ましい。スチレン−(4−ビニルピリジン)共重合体の含有量としては、結着樹脂に対して0.1質量%以上、10質量%以下が好ましい。
【0043】
上記樹脂層には、上記組成の機能を阻害しない範囲で、必要に応じて、上記樹脂以外の樹脂、カーボンブラック以外の導電剤、充填剤、増量剤、加硫剤、架橋剤、加硫助剤、架橋助剤、酸化防止剤、老化防止剤、加工助剤等の各種添加剤を含有させることができる。
【0044】
上記樹脂層は、厚さが3μm〜25μmであることが好ましい。樹脂層の厚さがこの範囲であれば、高品位な画像形成を長期に亘って得ることができる。
【0045】
本発明の現像ローラーの電気抵抗としては、100Vの直流電圧印加時において105Ω・cm以上107Ω・cm以下の範囲にあることが好ましい。現像ローラーの電気抵抗が105Ω・cm以上であれば、現像ブレードにバイアスを印加した場合でもブレードバイアスリークの発生を抑制することができ、107Ω・cm以下であれば、現像ネガゴーストの発生を抑制することができる。また、電気抵抗値の最大値Rmaxと最小値Rminの比が3.0以下であることが好ましい。電気抵抗値の最大値Rmaxと最小値Rminとの比は、最大値Rmaxを最小値Rminで除して求めることができる。電気抵抗値の最大値と最小値の比は現像ローラーの抵抗値のバラツキの指標となるものであり、カラー画像であっても、高品位な画像を得るために、3.0以下であることが好ましい。
【0046】
ここで、上記電気抵抗値は、図2に示す電気抵抗測定装置を用いて測定した測定値を採用することができる。現像ローラー6を軸芯体の両端にそれぞれ4.9Nの荷重をかけて直径50mmの金属ドラム60に当接させて設置する。金属ドラム60を表面速度50mm/secで回転させ、現像ローラー6を従動回転させる。金属ドラム60とグランドとの間に現像ローラーの電気抵抗に対して2桁以上電気抵抗が低い既知の電気抵抗を有する抵抗器Rを接続する。高圧電源HVから現像ローラーの軸芯体に+50Vの電圧を印加し、抵抗器Rの両端の電位差をデジタルマルチメーターDMM(FLUKE社製 189TRUE RMS MULTIMETER)を用いて計測する。電位差の計測値と抵抗器Rの電気抵抗から、現像ローラーを介して金属ドラムに流れた電流を計算により求め、その電流と印加電圧50Vから計算することにより現像ローラーの電気抵抗値を求める。デジタルマルチメーターでの測定は、電圧印加2秒後から3秒間サンプリングを行い、その平均値から計算される値を現像ローラーの抵抗値Raveとする。また、電圧印加2秒後から3秒間の測定データで抵抗の最も高いデータを最大値Rmaxとし、抵抗の最も低いデータを最小値Rminとする。
【0047】
また、本発明の現像ローラーの表面粗さとしては、JIS B0601における算術平均粗さRaが0.1μm〜2.0μmの範囲であることが好ましい。このような表面粗さを有する現像ローラーにおいて、トナーの保持、搬送、授受を良好にすると共に、融着を抑制することができる。このような表面粗さを付与するために、上記樹脂層に粗し粒子を含有させることができる。粗し粒子の材質としては、例えば、EPDM、NBR、SBR、CR、シリコーンゴム等のゴム、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド系等の熱可塑性エラストマー(TPE)、PMMA粒子、ウレタン樹脂粒子、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ナフタレン樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂、ジビニルベンゼン重合体、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリアクリロニトリル樹脂等を挙げることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、樹脂層中で均一に分散し、低硬度であるウレタン樹脂粒子が好ましい。
【0048】
本発明の現像ローラーとしては、材質の異なる複数層からなる弾性層を有するものであっても、また、軸芯体と弾性層間あるいは弾性層と樹脂層間に、例えば易帯電性、耐摩擦性等種々の機能を有する機能層を有するものであってもよい。
【0049】
本発明の現像ローラーの製造方法としては、以下の方法を挙げることができる。上記弾性層を構成する未硬化ゴム成分、導電剤、及び必要に応じてその他の成分等を含有する組成物(未硬化ゴム組成物という。)を調製する。未硬化ゴム組成物の調製には、ロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー等の装置を用いて導電剤等を分散することができる。この未硬化ゴム組成物を用いて押出成形法、型成形法、射出成形法、塗工成形法などの方法によって、導電性軸芯体上に未硬化物を形成し、加熱、電子線照射等により硬化して、弾性層を成形する。上層の表面層との密着性を向上させ剥離を抑制するために、表面を研磨したり、コロナ処理、フレーム処理、エキシマ処理等の表面改質方法にて改質することもできる。
【0050】
弾性層の成形後、樹脂層を成形する。樹脂層の成形方法としては、上記結着樹脂の未硬化樹脂組成物、又はこれらの結着樹脂を構成するモノマー若しくはプレポリマー組成物と、カーボンブラック、必要に応じてその他の成分の樹脂層材料を含有する組成物(未硬化樹脂組成物という。)を調製する。未硬化樹脂組成物の調製方法としては、樹脂材料を適当な有機溶剤に溶解させた樹脂、あるいはモノマー若しくはプレポリマー溶液中にカーボンブラック等を添加し、サンドグラインダー、サンドミル、ボールミル等の装置を用いて分散することができる。得られた未硬化樹脂組成物を用いて押出成形法、型成形法、射出成形法等を使用して形成、硬化することもできるが、塗工成形法により、弾性層上に塗膜を形成し、硬化する方法を好ましい方法として挙げることができる。
【0051】
塗工成形法としては、スプレー、浸漬、ロールコート等を使用することができ、上記弾性層上に、塗膜を形成した後、これを乾燥して溶媒を除去し加熱硬化する方法を使用することができる。具体的には、硬化は加熱、電子線照射等いずれの方法であってもよく、加熱による場合は、硬化反応が完結する温度と時間を適宜選択する。例えばMEKオキシムブロックタイプの2液硬化型ポリウレタン樹脂の場合、140℃〜160℃、1時間〜3時間等とすることができる。
【0052】
上記塗膜形成に浸漬塗工を使用する場合、図3の概略構成図に示すように、浸漬槽上端から塗料をオーバーフローさせる特開昭57−5047号公報に記載されるような塗布装置を用いることが、簡便で、生産安定性に優れることから好ましい。
【0053】
図3に示す浸漬型塗布装置には、浸漬槽25が設けられる。浸漬槽は弾性層が形成されたローラー29の外径よりわずかに大きな内径と、ローラー29の軸方向長より長い深さを備えた円筒形を有し、軸方向を垂直方向にして設置される。その上端部外周には環状の液受け部30が設けられ、液受け部はその底面に接続される管31により、攪拌タンク27に接続される。一方、浸漬槽25の底部は管32を介して塗布液を循環させる液送ポンプ26に接続され、更に、液送ポンプ26と攪拌タンク27が管34によって接続される。攪拌タンクには内部に収納する塗布液を攪拌するための攪拌翼が設けられる。
【0054】
この塗布装置には、浸漬槽の上部において昇降板28を浸漬槽の軸方向に昇降させる昇降装置36が設けられ、昇降板28に懸架されるローラー29を浸漬槽中に進入、後退可能となっている。
【0055】
このような塗布装置を用いて弾性層上に樹脂層を成形するには、液送ポンプ26を駆動し、攪拌タンク27に収納する塗布液を管32、34を通って浸漬槽25に供給する。昇降装置36を駆動させ昇降板28を降下させ、ローラー29を塗布液が充填された浸漬槽に進入させる。ローラーの進入により浸漬槽の上端から溢れ出た塗布液は液受け部30に受けられ、管31を通って攪拌タンク27に戻される。その後、昇降装置を駆動して昇降板を上昇させ、ローラー29を所定の速度で浸漬槽から後退させ、弾性層上に塗布膜を形成する。この間、攪拌タンク内で攪拌翼を回転させ、塗布液を攪拌して含有物の沈降を抑制し、塗布液の均一性を維持する。
【0056】
塗膜の形成後、ローラーを昇降板28から取り外し、塗膜を乾燥硬化して、樹脂層を成形して本発明の現像ローラーを得る。
【0057】
本発明の現像装置は、現像剤を表面に担持する現像ローラーと、現像ローラー上の現像剤量を制御する現像ブレードと、該現像ブレードのバイアス印加手段とを有する現像装置において、上記現像ローラーを用いたことを特徴とする。その一例として、図4に示すタンデム方式のカラー画像形成装置に適用した現像装置10を挙げることができる。現像装置には、一成分トナーとして非磁性トナーの現像剤を収容した現像剤容器8と、現像剤容器の開口を閉塞するように設置され、現像剤容器から露出した部分で感光体5と対向するように現像ローラー6が設けられる。現像剤容器内には、現像ローラーに現像剤を塗布すると同時に現像ローラー上に現像に使用されずに残留する現像剤を掻き取る現像剤塗布ローラー7と、現像ローラー上の現像剤を薄膜状に形成すると共に、摩擦帯電する現像ブレード9とが設けられる。現像ブレード9に高精度に制御された一定電圧のバイアスを印加するバイアス印加手段である現像ブレードバイアス電源18aと、現像ローラーに高精度に制御された一定電圧のバイアスを印加する現像ローラーバイアス電源18bとが設けられる。現像剤塗布ローラーとしては、例えば、軸芯体上に発泡スポンジ体や、ポリウレタンフォームを設けたものや、レーヨン、ポリアミド等の繊維を植毛したファーブラシ構造のものなどが、現像後の現像ローラー上の残留トナーの除去を容易にすることから好ましい。この現像剤塗布ローラー7の現像ローラーに対する当接幅としては、1〜8mmが好ましく、また、現像ローラーに対してその当接部において相対速度をもたせることが好ましい。
【0058】
本発明の画像形成装置は、静電潜像を担持する感光体と、該感光体上の静電潜像を現像する現像装置を有する画像形成装置において、上記現像装置を用いたことを特徴とする。本発明の画像形成装置の一例として上記現像装置を用いた、図4に示すタンデム方式のカラー画像形成装置を挙げることができる。図4に示すタンデム方式カラー画像形成装置には、イエロートナー、マゼンダトナー、シアントナー、ブラックトナーなど各色トナー毎に設けられる画像形成ユニットa〜dが設けられる。各画像形成ユニットには、それぞれ矢印方向に回転する静電潜像担持体としての感光体5が設けられる。各感光体の周囲には、感光体を一様に帯電するための帯電装置12、一様に帯電処理した感光体にレーザービーム11を照射して静電潜像を形成する露光手段、静電潜像を形成した感光体に現像剤を供給し静電潜像を現像する上記現像装置10が設けられる。一方、給紙ローラー23により供給される紙等の転写材22を搬送する搬送ベルト20が駆動ローラー16、従動ローラー21、テンションローラー19に懸架されて設けられる。搬送ベルトには搬送ローラー24を介して搬送ベルトバイアス電源18cが印加され、転写材22を表面に静電気的に付着させて搬送するようになっている。
【0059】
各画像形成ユニットには、可視化した感光体上のトナー像を、搬送ベルト20によって搬送される転写材22に転写するための電荷を印加する転写バイアス電源18dが転写ローラー17に接続される。転写バイアス電源は転写材の裏面に転写ローラー17を介して印加され、画像形成ユニットに同期して可動される搬送ベルトによって搬送される転写材上に各画像形成ユニットにおいて形成される各色のトナー像が順次重畳して転写されるようになっている。
【0060】
更に、カラー電子写真画像形成装置には、搬送ベルト20に付着する転写材を剥離する剥離装置、転写材上に重畳転写したトナー像を加熱などにより定着する定着装置15、画像形成された転写材を装置外に排出する搬送装置(図示せず)が設けられる。
【0061】
一方、各画像形成ユニットには各感光体上に転写されずに残存する転写残現像剤を除去し表面をクリーニングするクリーニングブレード14を有するクリーニング装置13が設けられ、その他感光体から掻き取られた現像剤を収納する廃現像剤容器等が設けられる。クリーニングされた感光体は画像形成可能状態とされて待機するようになっている。
【0062】
上記現像装置10における現像プロセスを以下に説明する。回転可能に支持された現像剤塗布ローラー7により現像ローラー上に現像剤が塗布される。現像ローラー上に塗布された現像剤は、現像ローラーの回転により現像ブレード9と摺擦される。ここで、現像ブレードに印加された現像ブレードバイアス電源18aにより現像ローラー上のトナーは現像ローラー上に均一にコートされる。現像ローラーは感光体5と回転しながら接触し、感光体5上に形成された静電潜像を現像ローラーの現像剤により現像することにより画像が形成される。ここで、現像ブレードに印加されるバイアスの極性は、トナーの帯電極性と同極性であり、その電圧としては現像バイアスよりも数十Vから数百V高い電圧とすることができる。
【0063】
上記現像装置は、感光ドラム、クリーニングブレード、廃トナー収容容器、帯電装置等から適宜選択される各部材と一体化したオールインワンプロセスカートリッジとして設け、画像形成装置に着脱自在として用いることもできる。
【実施例】
【0064】
以下に、本発明の現像ローラー、電子写真プロセスカートリッジ、電子写真画像形成装置を具体的に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。以下、特に明記しない限り、「部」は「質量部」を示す。
【0065】
[実施例1]
[弾性層の作製]
軸芯体として、外径8mmのSUS製円筒状外周にニッケルメッキを施し、更にプライマー(DY35−051:東レダウコーニングシリコーン社製)を塗布、焼付けしたものを用いた。軸芯体を内径16mmの円筒状金型内に同心となるように設置した。液状シリコーンゴム(SE6724A/B:東レダウコーニングシリコーン社製)100質量部に対し、カーボンブラック(トーカブラック#7360SB:東海カーボン社製)35質量部、耐熱性付与剤としてシリカ粉体0.2質量部、白金触媒0.1質量部を混合した付加型シリコーンゴム組成物を調製した。付加型シリコーンゴム組成物を上記軸芯体を設置した金型内のキャビティに注入した。続いて、金型を150℃、15分間加熱し、付加型シリコーンゴムを加硫硬化し、脱型した。その後、更に200℃、2時間加熱し硬化反応を完結させ、弾性層を軸芯体1の外周に作製した。得られた弾性層の表面を研磨し、10点平均粗さRzjis(JIS B−0601−2001に準ずる)8.0μmの弾性層を得た。
【0066】
[ポリオレフィンポリオールの調製]
ポリテトラメチレングリコール(PTG1000SN:保土谷化学社製)100質量部に、イソシアネート化合物(ミリオネートMT:日本ポリウレタン工業社製)20質量部をMEK溶媒中で段階的に混合し、窒素雰囲気下80℃にて7時間反応させて、水酸基価17のポリエーテルポリオール(ロット1)を得た。同様の方法で、イソシアネート化合物の添加量を変化させ水酸基価20(ロット2)、水酸基価23(ロット3)のポリエーテルポリオールを作製した。
【0067】
[イソシアネートの調製]
窒素雰囲気下、数平均分子量500のポリプロピレングリコール100質量部に対し、粗製MDI57質量部を90℃で2時間加熱反応させた後、ブチルセロソルブを固形分70%になるように加え、固形分当たりのNCO%が5.0%のイソシアネート化合物を得た。その後、反応物温度50℃の条件下、MEKオキシム22質量部を滴下し、ブロックポリイソシアネートAを得た。
【0068】
[樹脂層の調製]
上記各ポリエーテルポリオールに対し、各々ブロックポリイソシアネートAをNCO/OH基比が1.4になるように混合し、結着樹脂固形分100質量部に対し、カーボンブラック(スペシャルブラックS−160:デグサ社製、Ph=4.5)20質量部、亜鉛フタロシアニン0.5質量部を混合し、総固形分比30質量%になるようにMEKに溶解、混合し、サンドミルにて均一に分散し、3種の樹脂層成形用塗工液を調製した。
【0069】
得られた3種の樹脂層形成用塗工液を用い、図3に示す浸漬型塗布装置を用いて弾性層上にそれぞれ塗膜を形成し乾燥後、150℃にて2時間加熱処理し、厚さ20μmの樹脂層を調製し、現像ローラーを得た。
【0070】
[電気抵抗の測定]
得られた現像ローラーの電気抵抗を、図2に示す電気抵抗測定装置を用いて測定した。結果を表1、図5に示すグラフに示す。使用した3種の樹脂層成形用塗工液間での電気抵抗のバラツキは小さく、ローラー個体内での電気抵抗のバラツキも小さかった。
【0071】
[表面硬度の測定]
得られた現像ローラーの表面硬度を、マイクロゴム硬度計MD−1(高分子計器社製)を用い、気温25℃、相対湿度50%RH環境下で測定した。測定点は、現像ローラーの中央部、現像ローラー両端部からそれぞれ20mm中央部側の、合計3点とした。3点の平均値を表面硬度とした。結果を表1に示す。表面硬度は小さく抑えられていた。
【0072】
[画像評価]
(1)ブレードバイアスリークによる画像不良
得られた現像ローラーを、キヤノン製プリンターLBP5500の現像ブレードとして、厚さ100μmのリン青銅ブレードを用い、この現像ブレードにブレードバイアスを印加できるように改造した装置(改造機という。)に組み込んだ。30℃/80%Rhの環境で、ブレードバイアスを現像バイアスに対して−50Vから−400Vの間で変更し画像を出力し、ブレードバイアスリークによる画像不良の発生の有無を観察し、以下の基準により評価した。ブレードバイアスリークによる画像不良が全く認められない場合を○、多少でも認められる場合を△、明らかに認められ画像形成装置に使用できない場合を×とした。結果を表2に示す。
(2)現像ネガゴースト
また、15℃/10%Rhの環境で、ブレードバイアスを現像バイアスに対して−200Vとして、画像を出力し、現像ネガゴーストの発生の有無を観察し、以下の基準により評価した。現像ネガゴーストが全く認められない場合を○、多少でも認められる場合を△、明らかに認められ画像形成装置に使用できない場合を×とした。結果を表2に示す。
(3)カブリ評価
得られた現像ローラーを改造機に組み込み、15℃/10%Rhの環境で印字率が1%の画像を20000枚出力した後、カブリの測定を行った。カブリの測定は、白ベタ画像出力中にプリンターを停止し、感光体上に付着したトナーをテープではがし取り、カブリ測定用反射測定機(REFLECTMETER:東京電色(株))により、画像白地部分の白色度を測定した。測定値と転写紙の白色度との差をカブリ濃度とした。結果を表3に示す。尚、一般的にカブリ濃度が3.0を超えるものは画像不良として画像への影響が認められる。
【0073】
[実施例2]
亜鉛フタロシアニン0.5質量部に替えて、Zn(5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン)(以下ZnTPPと略す)0.5質量部を用いた他は、実施例1と同様にして、現像ローラーを作製し、電気抵抗、表面硬度を測定し、画像評価を行った。結果を表1〜3に示す。
【0074】
[実施例3]
テトラヒドロフラン250mlを1リットル反応容器に仕込み、テトラヒドロフランの温度を68℃にした。次に、スチレン70g、4−ビニルピリジン3g、2,2−アゾイソブチロニトリル6.15g、テトラヒドロフラン80mlの混合溶液を作製し、混合溶液を反応容器内に2時間かけて滴下した。滴下後、68℃で4時間還流させた。これを室温に冷却し、メタノール1リットルを加えた。析出した結晶を濾過し、メタノール洗浄、水洗を行った。得られた粉体を温度30℃で24時間減圧乾燥させ、スチレン−(4−ビニルピリジン)共重合体Aを得た。得られたスチレン−(4−ビニルピリジン)共重合体Aは、IRスペクトル、元素分析及び分子量測定を行ったところ、スチレン/4−ビニルピリジン共重合質量比が96/4であり、数平均分子量(Mn)が2040であり、重量平均分子量(Mw)が4470であった。
【0075】
スチレン−(4−ビニルピリジン)共重合体A2.0質量部を用いた他は実施例1と同様にして、現像ローラーを作製し、電気抵抗、表面硬度を測定し、画像評価を行った。結果を表1〜3に示す。
【0076】
[実施例4]
亜鉛フタロシアニンの添加量を0.5質量部に替えて0.1質量部を用いた他は、実施例1と同様にして、現像ローラーを作製し、電気抵抗、表面硬度を測定し、画像評価を行った。結果を表1〜3に示す。
【0077】
[実施例5]
亜鉛フタロシアニンの添加量を0.5質量部に替えて1質量部を用いた他は、実施例1と同様にして、現像ローラーを作製し、電気抵抗、表面硬度を測定し、画像評価を行った。結果を表1〜3に示す。
【0078】
[比較例1]
亜鉛フタロシアニンを使用しない他は実施例1と同様にして、現像ローラーを作製し、電気抵抗、表面硬度を測定し、画像評価を行った。結果を表1〜3に示す。
【0079】
[比較例2]
亜鉛フタロシアニン0.5質量部に替えて銅フタロシアニン0.5質量部を用いた他は、実施例1と同様にして、現像ローラーを作製し、電気抵抗、表面硬度を測定し、画像評価を行った。結果を表1〜3に示す。
【0080】
[比較例3]
亜鉛フタロシアニン0.5質量部に替えて錫フタロシアニン0.5質量部を用い、カーボンブラックの使用量を20質量部に替えて25質量部にした他は、実施例1と同様にして、現像ローラーを作製し、電気抵抗、表面硬度を測定し、画像評価を行った。結果を表1〜3に示す。
【0081】
[実施例6]
メトキシメチル化率27(ロット1)、メトキシメチル化率30(ロット2)、メトキシメチル化率33(ロット3)の3種の一メトキシメチル化6−ナイロン(平均分子量20000)を準備した。N−メトキシメチル化6−ナイロン100質量部に対し、カーボンブラック(MA−77:三菱化学社製、Ph=2.5)15質量部、亜鉛フタロシアニン0.4質量部を混合し、総固形分比20質量%になるようにメタノールに溶解、混合し、サンドミルにて均一に分散し、3種の樹脂層形成用分散液を調製した。
【0082】
得られた樹脂層形成用分散液に、N−メトキシメチル化6−ナイロン100質量部に対して1質量部のクエン酸を添加、攪拌して、樹脂層形成用塗工液を得た。樹脂層形成用塗工液としてこの塗工液を用いた他は、実施例1と同様にして塗膜を形成し、乾燥後、105℃で1時間加熱処理し、厚さ15μmの樹脂層を調製し、現像ローラーを得た。得られた現像ローラーについて、実施例1と同様に、電気抵抗、表面硬度を測定し、画像評価を行った。結果を表1〜3に示す。
【0083】
[実施例7]
亜鉛フタロシアニン0.5質量部に替えて、ZnTPP0.5質量部を用いた他は、実施例6と同様にして、現像ローラーを作製し、電気抵抗、表面硬度を測定し、画像評価を行った。結果を表1〜3に示す。
【0084】
[比較例4]
亜鉛フタロシアニンを使用しない他は実施例6と同様にして、現像ローラーを作製し、電気抵抗、表面硬度を測定し、画像評価を行った。結果を表1〜3に示す。
【0085】
[比較例5]
亜鉛フタロシアニン0.5質量部に替えてアルミニウムフタロシアニン0.5質量部を用いた他は、実施例6と同様にして、現像ローラーを作製し、電気抵抗、表面硬度を測定し、画像評価を行った。結果を表1〜3に示す。
【0086】
[比較例6]
亜鉛フタロシアニン0.5質量部に替えて鉄フタロシアニン0.5質量部を用い、カーボンブラックの使用量を20質量部に替えて25質量部にした他は、実施例6と同様にして、現像ローラーを作製し、電気抵抗、表面硬度を測定し、画像評価を行った。結果を表1〜3に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
【表3】

【0090】
結果からも、本発明の現像ローラーにおいて、原材料ロット間の電気抵抗のバラツキ及びローラー個体内での電気抵抗のバラツキも抑制され、表面硬度は低い。これを用いた画像形成において、高い耐リーク性を有し、現像ネガゴーストの発生は認められず、カブリ濃度が3.0以下であり、良好な画像形成が可能であることが明らかである。これに対し、総ての比較例で、原材料ロット間の電気抵抗のバラツキ及びローラー個体内での電気抵抗のバラツキが大きい。比較例1、2、4、6では表面硬度は使用した何れの原材料ロットにおいても高く、カブリも認められる。耐リーク性は相対的に低く、現像ネガゴーストの発生も認められる。比較例3では、表面硬度は使用した何れの原材料ロットにおいても低く、カブリは殆んど認められない。一方、現像ネガゴーストの発生も認められないものの、耐リーク性は相対的に低い。比較例5では、表面硬度は使用した何れの原材料ロットにおいても低く、カブリは殆んど認められない。一方、耐リーク性は相対的に低く、現像ネガゴーストの発生も認められる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の現像ローラーの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の現像ローラーの電気抵抗測定装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の現像ローラーの製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図4】本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図5】本発明の現像ローラーの実施例、比較例の電気抵抗を示す図である。
【符号の説明】
【0092】
1 軸芯体
2 弾性層
3 樹脂層
5 感光体
6 現像ローラー
7 現像剤塗布ローラー
8 現像剤容器
9 現像ブレード
10 現像装置
11 レーザービーム
12 帯電装置
13 クリーニング装置
14 クリーニングブレード
15 定着装置
16 駆動ローラー
17 転写ローラー
18a 現像ブレードバイアス電源
18b 現像ローラーバイアス電源
18c 搬送ベルトバイアス電源
18d 転写バイアス電源
19 テンションローラー
20 搬送ベルト
21 従動ローラー
22 転写材
23 給紙ローラー
24 搬送ローラー
25 浸漬槽
26 液送ポンプ
27 攪拌タンク
28 昇降板
29 ローラー
60 金属ドラム
a〜d 画像形成ユニット
R 抵抗器
HV 高圧電源
DMM デジタルマルチメーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体と、該軸芯体の周囲に設けられた弾性層と、該弾性層上に設けられた樹脂層とを有する現像ローラーにおいて、樹脂層が、窒素原子を有する結着樹脂、カーボンブラック及び一般式(I)
【化1】

[式中、Mは金属原子を示し、X1からX4は、独立して窒素原子又はC−R(Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1から12のアルキル基又は置換基を有していてもよい炭素原子数6から12の芳香族炭化水素基を示す。)を示し、Y1からY8は、独立して、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素原子数1から12のアルキル基を示し、Y1とY2、Y3とY4、Y5とY6、及びY7とY8が相互に連結したものは除く。]で表わされる金属化合物を含有することを特徴とする現像ローラー。
【請求項2】
一般式(1)中、Mが亜鉛を示すことを特徴とする請求項1記載の現像ローラー。
【請求項3】
軸芯体と、該軸芯体の周囲に設けられた弾性層と、該弾性層上に設けられた樹脂層とを有する現像ローラーにおいて、樹脂層が、窒素原子を有する結着樹脂、カーボンブラック及び一般式(II)
【化2】

(式中、Mは亜鉛原子を示し、Y1からY16は、独立して水素原子、ハロゲン原子又は置換基を示す。)で表わされる金属化合物を含有することを特徴とする現像ローラー。
【請求項4】
結着樹脂がポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の現像ローラー。
【請求項5】
ポリウレタン樹脂がポリエーテルポリウレタンを含有することを特徴とする請求項4記載の現像ローラー。
【請求項6】
樹脂層が、カーボンブラック100質量部に対し、一般式(I)または一般式(II)で表わされる金属化合物を0.5質量部以上、5.0質量部以下の範囲で含有することを特徴とする請求項1から5のいずれか記載の現像ローラー。
【請求項7】
樹脂層がスチレン−(4−ビニルピリジン)共重合体を含有することを特徴とする請求項1から6のいずれか記載の現像ローラー。
【請求項8】
電気抵抗値Raveが1×106から1×107Ωの範囲であり、電気抵抗値の最大値Rmaxと最小値Rminとの比が3.0以下であることを特徴とする請求項1から7のいずれか記載の現像ローラー。
【請求項9】
現像剤を表面に担持する現像ローラーと、現像ローラー上の現像剤量を制御する現像ブレードと、該現像ブレードのバイアス印加手段とを有する現像装置において、請求項1から請求項8のいずれか記載の現像ローラーを用いたことを特徴とする現像装置。
【請求項10】
静電潜像を担持する感光体と、該感光体上の静電潜像を現像する現像装置を有する画像形成装置において、請求項9記載の現像装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−107552(P2008−107552A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289989(P2006−289989)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】