説明

現像ロール

【課題】トナー帯電性、耐トナーフィルミング性等に優れ、長期に渡って良好な画像を得ることができる現像ロールを提供する。
【解決手段】軸体1と、その外周に形成されるベースゴム層2と、上記ベースゴム層2の外周に直接もしくは他の層(中間層3等)を介して形成される表層4とを備えた現像ロールであって、上記表層4が、下記の(A)〜(D)成分を含有し、(A)〜(C)成分の重量割合が、下記の式(α)および(β)に示す範囲に設定された、樹脂組成物によって形成されている。(A)アミノ樹脂。(B)ジイソシアネート。(C)ガラス転移温度(Tg)が0℃以下の樹脂。(D)導電剤。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、プリンター等の電子写真装置に用いられる現像ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真複写機に用いられる現像ロールとしては、軸体の外周にベースゴム層が形成され、その外周に中間層(例えば、軟化剤移行防止層や抵抗調整層)が形成され、さらにその外周に表層が形成された構造のものが用いられている。上記表層用材料としては、例えば、ポリカーボネート系,エーテル系のウレタン樹脂や、アクリル樹脂等の塗料用バインダーが主成分として用いられ、この溶剤溶液中に、導電性付与のため、導電性カーボンブラック(電子導電剤)を分散させたものが用いられている(特許文献1および2参照)。
【特許文献1】特開2003−3032公報
【特許文献2】特開2002−363426公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、電子写真複写機等における消費電力の抑制や高速印刷等を目的とし、その印刷に用いられるトナーの低融点化が進められている。しかしながら、このような低融点トナーは、現像ロールや、他の規制部材の押圧による摩擦熱で融解しやすい。したがって、上記トナーの融解に起因するロール汚れ(フィルミング)が生じ易い。また、高湿度環境においては、水分の影響により、トナー自体の帯電性が落ちる傾向があり、逆に、低湿度環境下では、トナー自体の帯電性が上昇するため、あらゆる環境で、現像ロールのトナー搬送性を一定に保たなければならないといった要請がある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、トナー帯電性、耐トナーフィルミング性等に優れ、長期に渡って安定して良好な画像を得ることができる現像ロールの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明の現像ロールは、軸体と、その外周に形成されるベースゴム層と、上記ベースゴム層の外周に直接もしくは他の層を介して形成される表層とを備えた現像ロールであって、上記表層が、下記の(A)〜(D)成分を含有し、(A)〜(C)成分の重量割合が、下記の式(α)および(β)に示す範囲に設定された、樹脂組成物によって形成されているという構成をとる。
(A)アミノ樹脂。
(B)ジイソシアネート。
(C)ガラス転移温度(Tg)が0℃以下の樹脂。
(D)導電剤。
【数1】

【数2】

【0006】
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、現像ロールにおける表層材料として、耐トナーフィルミング性等に優れるアミノ樹脂を使用することを検討したが、アミノ樹脂のみでは架橋が密(3次元架橋)になって割れやすいことから、ガラス転移点が0℃以下の樹脂(結晶化度を上げないよう合成等した樹脂)を配合して架橋密度を下げ、さらに、ジイソシアネートを配合して、ウレタン結合により可とう性を発現させることを想起した。そして、耐久使用前後でのトナー帯電性の大きな変化を抑え、現像ロールのトナー搬送性を一定に保つことにより、長期に渡って安定して良好な画像を得る観点から、上記表層材料の各成分の割合に関して各種実験を重ねた結果、上記式(α)および(β)に示す範囲を満たすよう上記各成分を配合すれば、所期の目的が達成できることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明の現像ロールは、その表層が、アミノ樹脂と、ジイソシアネートと、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下の樹脂と、導電剤とを含有し、かつこれらの割合が特定の範囲に設定された樹脂組成物によって形成されている。そのため、本発明の現像ロールは、低融点トナーに対する耐トナーフィルミング性に優れ、また、耐久使用によりトナー帯電性が大きく低下することがなく、現像ロールのトナー搬送性が一定に保たれ、長期に渡って安定して良好な画像を得ることができる。さらに、表層の可とう性向上により、ロール表面の耐久性(耐割れ性)にも優れるようになる。そのため、本発明の現像ロールは、フルカラーLBP(レーザービームプリンター)やフルカラーMFP(マルチファンクションプリンター)等の、低融点トナー使用の電子写真装置に組み込んだ場合であっても、長期にわたり、画像不具合(かぶり、がさつき等)のない良好な複写画像を得ることができるようになる。
【0008】
特に、上記の、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下の樹脂が、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン変性ウレタン樹脂およびシリコーン変性アクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1つであると、トナー帯電性がさらに向上し、より良好な複写画像を得ることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
本発明の現像ロールは、例えば、図1に示すように、軸体1の外周面に沿ってベースゴム層2が形成され、その外周面に中間層3が形成され、さらにその外周面に表層4が形成されて、構成されている。そして、本発明の現像ロールでは、上記表層4が、特定の樹脂組成物によって形成されていることが最大の特徴である。
【0011】
上記軸体1は特に制限するものではなく、例えば金属製の中実体からなる芯金や、内部を中空にくり抜いた金属製の円筒体等が用いられる。そして、その材料としては、ステンレス、アルミニウム、鉄にメッキを施したもの等があげられる。また、必要に応じ軸体1上に接着剤、プライマー等を塗布することができる。なお、接着剤、プライマー等は必要に応じて導電化してもよい。
【0012】
上記軸体1の外周に形成されるベースゴム層2の形成材料としては、特に制限はなく、例えば、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリウレタン系エラストマー等があげられる。なかでも、低硬度でへたりが少ないという点から、シリコーンゴムが特に好ましい。なお、ベースゴム層2形成材料としてシリコーンゴムを用いた場合には、ベースゴム層2外周面を、コロナ放電、プラズマ放電等により活性化させる工程や、さらにその後、プライマーを塗布する工程を行ってもよい。
【0013】
上記ベースゴム層2形成材料には、導電剤を適宜に添加してもよい。上記導電剤としては、従来から用いられているカーボンブラック、グラファイト、チタン酸カリウム、酸化鉄、c−TiO2 、c−ZnO、c−SnO2 、イオン導電剤(四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤等)等があげられる。なお、上記「c−」は、導電性を有するという意味である。
【0014】
上記ベースゴム層2の外周に形成される中間層3の形成材料としては、特に制限はなく、例えばアクリロニトリル−ブタジエンゴム(ニトリルゴム)(以下「NBR」と略す)、水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム(水素化ニトリルゴム)(以下「H−NBR」と略す)、ポリウレタン系エラストマー、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)等があげられる。なかでも、接着性およびコーティング液の安定性の点から、H−NBRが特に好ましい。
【0015】
上記中間層3形成材料には、導電剤、硫黄等の加硫剤、グアニジン、チアゾール、スルフェンアミド、ジチオカルバミン酸塩、チウラム等の加硫促進剤、ステアリン酸、亜鉛華(ZnO)、軟化剤等を適宜に添加してもよい。なお、導電剤としては、前記と同様のものが用いられる。
【0016】
上記中間層3の外周に形成される表層4の形成材料としては、特定の樹脂組成物、すなわち、下記の(A)〜(D)成分を含有し、(A)〜(C)成分の重量割合が、下記の式(α)および(β)に示す範囲に設定された、樹脂組成物が用いられる。
(A)アミノ樹脂。
(B)ジイソシアネート。
(C)ガラス転移温度(Tg)が0℃以下の樹脂。
(D)導電剤。
【0017】
【数3】

【0018】
【数4】

【0019】
すなわち、上記式(α)に関し、仮に、(A)/〔(A)+(C)〕<0.3であれば、アミノ樹脂〔(A)成分〕の割合が少なすぎ、所望の耐トナーフィルミング性やトナー帯電性が得られないからであり、逆に、0.5≦(A)/〔(A)+(C)〕であれば、耐久使用後の現像ロールのトナー帯電性低下が著しく、トナー搬送性を一定に保つことができなくなるからである。そして、本発明では、(A)/〔(A)+(C)〕は、好ましくは、0.5>(A)/〔(A)+(C)〕≧0.4の関係を満たすことである。
【0020】
また、上記式(β)に関し、仮に、〔(A)+(B)〕/〔(A)+(B)+(C)〕<0.3であれば、含窒素化合物であるアミノ樹脂やジイソシアネートの割合が少なすぎ、所望の帯電性が得られなくなるからであり、逆に、〔(A)+(B)〕/〔(A)+(B)+(C)〕≧0.6であれば、耐久使用後の現像ロールのトナー帯電性低下が著しく、トナー搬送性を一定に保つことができなくなるからである。そして、〔(A)+(B)〕/〔(A)+(B)+(C)〕は、好ましくは、0.6>〔(A)+(B)〕/〔(A)+(B)+(C)〕≧0.5の範囲内である。
【0021】
上記アミノ樹脂〔(A)成分〕は、ユリア,メラミン,ベンゾグアナミン,アニリン等のアミノ基(−NH2 )を持った化合物にホルムアルデヒドを付加縮合反応させて得られる熱可塑性樹脂の総称であり、具体的には、ユリア樹脂,メラミン樹脂,メチロールメラミン樹脂,ベンゾグアナミン樹脂,アニリン樹脂,アセトグアナミン樹脂,ホルムグアナミン樹脂,メチロールグアナミン樹脂等があげられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。なかでも、トナー帯電性に優れる点で、メラミン樹脂が好適に用いられる。また、上記アミノ樹脂〔(A)成分〕の分子量は、200〜4,000の範囲が好ましく、特に好ましくは300〜2,500の範囲である。
【0022】
上記(A)成分のアミノ樹脂とともに用いられるジイソシアネート〔(B)成分〕としては、特に限定されるものではなく、例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、3,3′−ビトリレン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートウレチジンジオン(2,4−TDIの二量体)、1,5−ナフチレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、カルボジイミド変性MDI、オルトトルイジンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル等があげられる。そして、これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。
【0023】
上記(A)および(B)成分とともに用いられる前記(C)成分の樹脂には、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下の樹脂が用いられる。好ましくは、ガラス転移温度(Tg)が−5〜−40℃の範囲内の樹脂である。なお、上記ガラス転移温度(Tg)は、DSC(示差走査熱量測定)または動的粘弾性のtanδピークにより測定される値である。そして、上記(C)成分のようなガラス転移温度の樹脂は、例えば、樹脂の合成や変性等を適宜行うことにより、結晶化度を上げないようにし、得ることができる。
【0024】
そして、上記(C)成分の樹脂としては、そのガラス転移温度が上記範囲内のものであれば特に限定はないが、なかでも、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン変性ウレタン樹脂およびシリコーン変性アクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1つであると、より良好な複写画像を得ることができるようになるため、好ましい。特に、シリコーン変性ウレタン樹脂やシリコーン変性アクリル樹脂といった、シリコーン変性タイプを用いると、トナー離型性、トナー帯電性等の性能上、より好ましい。上記のようなシリコーン変性ウレタン樹脂やシリコーン変性アクリル樹脂において、そのシリコーン変性率は、好ましくは、5〜50重量%の範囲内である。
【0025】
上記(A)〜(C)成分とともに用いられる導電剤〔(D)成分〕としては、特に限定されるものではなく、例えば、カーボンブラック、グラファイト、チタン酸カリウム、酸化鉄、c−TiO2 、c−ZnO、c−SnO2 等といった電子導電剤や、第四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤、金属イオン、ポリエチレンオキサイド(PEO)等といったイオン導電剤が用いられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。なお、上記「c−」は、導電性を有するという意味である。
【0026】
上記導電剤〔(D)成分〕の配合量は、上記(A)〜(C)成分の総量100重量部(以下、「部」と略す)に対して0.1〜30部の範囲に設定することが好ましい。より好ましくは、1〜20部の範囲内である。すなわち、上記導電剤が0.1部未満であると、ロールの電気抵抗を、現像ロールとして要求される値まで下げることが困難となり、逆に30部を超えると、表層の伸び特性の低下や、導電剤のブルーム等を生じるようになるからである。
【0027】
なお、上記表層4形成用の樹脂組成物には、上記(A)〜(D)成分に加え、必要に応じて、安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、補強剤、滑剤、離型剤、染料、顔料、難燃剤、オイル等を適宜に添加することも可能である。
【0028】
本発明の現像ロールは、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、まず、前記ベースゴム層2用の各成分をニーダーやロール等の混練機を用いて混練し、ベースゴム層2形成材料(組成物)を調製する。また、前記中間層3用の各成分を有機溶剤に配合して溶解することにより中間層3形成用のコーティング液を調製する。さらに、前記(A)〜(D)成分の特定量を有機溶剤に配合して溶解し、表層4形成用のコーティング液を調製する。
【0029】
上記中間層3および表層4形成用のコーティング液を調製する際に用いられる有機溶剤としては、特に限定するものではないが、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、アセトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン等があげられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いられる。
【0030】
なお、上記中間層3および表層4形成用のコーティング液としては、有機溶剤を除く配合成分の割合が、コーティング液全体の20重量%程度の濃度となるよう設定することが好ましい。
【0031】
つぎに、図2に示すように、軸体(芯金)1を準備し、その外周面に必要に応じて接着剤、プライマー等を塗布した後、下蓋5を外嵌した円筒型6内に上記軸体1をセットする。そして、前記ベースゴム層2形成材料を注型等した後、上記円筒型6に上蓋7を外嵌する。ついで、上記ロール型全体を加熱して上記ベースゴム層2形成材料を架橋し(150〜220℃×30分)、ベースゴム層2を形成する。続いて、このベースゴム層2が形成された軸体1を脱型し、必要に応じ反応を完結させる(200℃×4時間)。ついで、必要に応じロール表面にコロナ放電処理を行う。さらに必要に応じロール表面にカップリング剤の塗布を行う。そして、上記ベースゴム層2の外周に中間層3形成用のコーティング液を塗布した後、乾燥および加熱処理(例えば、120〜200℃×20〜90分)を行うことにより、ベースゴム層2の外周に中間層3を形成する。さらに、上記中間層3の外周に表層4形成用のコーティング液を塗布した後、乾燥および加熱処理(例えば、120〜200℃×20〜90分)を行うことにより、表層4を形成する。これにより、目的とする三層構造の現像ロール(図1参照)を作製することができる。
【0032】
なお、上記コーティング液の塗布方法は、特に制限するものではなく、例えば、ディッピング法、スプレーコーティング法、ロールコート法等があげられる。
【0033】
この現像ロールにおいて、ベースゴム層2の厚みは、0.5〜10mmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは3〜6mmである。また、中間層の厚みは、1〜90μmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは3〜50μmである。そして、表層の厚みは3〜100μmの範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは5〜50μmである。
【0034】
なお、本発明の現像ロールの一例として、図1に示すような三層構造のものをあげたが、本発明はこれに限定されるものでなく、例えば、中間層3を形成せず、ベースゴム層2と表層4との二層構造のものとしてもよい。また、例えば、ベースゴム層2と中間層3との間に軟化剤移行防止層介在させたりすることにより、四層以上の数の層が形成されるようにしてもよい。ただし、その表層となる層が、必ず、本発明の特徴である、前記特定の樹脂組成物によって形成されていなければならない。
【0035】
このようにして得られる本発明の現像ロールは、一般的な電子写真装置にも適用することが可能であるが、特に、フルカラーLBPやフルカラーMFP等の低融点トナーを使用した電子写真装置用の現像ロールとして好適に用いることができる。そして、本発明の現像ロールをフルカラーLBPやフルカラーMFP等の電子写真装置に組み込むことにより、長期にわたり良好な複写画像を得ることができるようになる。
【0036】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0037】
まず、実施例および比較例に先立ち、現像ロールの表層用材料として、下記に示す材料を準備した。
【0038】
〔メラミン樹脂a(A成分)〕
スーパーベッカミンP−138、大日本インキ化学工業社製
【0039】
〔メラミン樹脂b(A成分)〕
サイメル325、三井サイテック社製
【0040】
〔メラミン樹脂c(A成分)〕
スーパーベッカミンL−145、大日本インキ化学工業社製
【0041】
〔ジイソシアネートa(B成分)〕
コロネートL、日本ポリウレタン社製
【0042】
〔ジイソシアネートb(B成分)〕
バーノックDN955、大日本インキ化学工業社製
【0043】
〔Si変性ウレタン樹脂a(C成分)〕
X−22−2756(Tg=−30℃のシリコーン変性ウレタン樹脂、変性率:15重量%)、信越化学工業社製
【0044】
〔Si変性アクリル樹脂a(C成分)〕
下記の一般式(1)で表される繰り返し単位から構成された、Tg=−20℃のシリコーン変性アクリル樹脂(変性率:50重量%)
【0045】
【化1】

【0046】
〔Si変性アクリル樹脂b〕
X−24−798A(Tg=40℃のシリコーン変性アクリル樹脂、変性率:30重量%)、信越化学工業社製
【0047】
〔アクリル樹脂a〕
パラクロンW−197C(Tg=17℃の、エチルアクリレート/メチルメタクリレートの二元合成アクリル樹脂)、根上工業社製
【0048】
〔導電剤a(D成分)〕
デンカブラックHS−100、電気化学工業社製
【0049】
〔導電剤b(D成分)〕
パストランTYPE−IV 4410B、三井金属鉱業社製
【0050】
〔導電剤c(D成分)〕
テトラブチルアンモニウムハイドロゲンサルフェート(TBAHS)、(C4 9)4 NHSO4 、和光純薬工業社製
【0051】
〔分散剤〕
ソルパースS24000、ゼネカ社製
【0052】
〔実施例1〜4、比較例1〜5〕
まず、下記の表1および表2に示す各成分を、同表に示す割合で配合し、これを有機溶剤(MEK)に配合し溶解してなる、20重量%濃度のコーティング液(表層形成材料)を調製した。なお、同表に、A成分とC成分との合計量に対するA成分の割合(重量%)と、バインダー〔導電剤,分散剤,溶剤を除く、各成分の総和〕中の、A成分(アミノ樹脂)とB成分(ジイソシアネート)との合計量(重量%)とを示した。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
つぎに、中間層形成材料の調製を行った。すなわち、H−NBR(アクリロニトリル量50重量%、ヨウ素価23mg/100mg)100部と、ステアリン酸0.5部と、亜鉛華(ZnO)5部と、カーボンブラック(デンカブラックHS−100、電気化学工業社製)40部と、架橋促進剤BZを1部と、架橋促進剤CZを2部と、硫黄1部とを混合し、これを有機溶剤(MEK)に溶解することにより、20重量%濃度のコーティング液(中間層形成材料)を調製した。
【0056】
そして、上記調製により得られた各層の形成材料を用い、現像ロールの作製を行った。すなわち、軸体となる芯金(直径10mm、SUS304製)をセットした金型内に、ベースゴム層用材料として導電性シリコーンゴム(信越化学社製、X−34−264 A/B)を充填した後、所定の条件で加熱架橋を行った。その後、脱型して、軸体の外周面に沿ってベースゴム層が形成されたベースロールを作製した。ついで、上記ベースロールの外周面に、上記調製の中間層形成材料(コーティング液)を塗布し、200℃×30分の条件で加熱架橋を行い、中間層を形成した。さらに、上記中間層の外周面に沿って上記調製の表層形成材料(コーティング液)を塗布し、200℃×30分の条件で加熱架橋を行い、表層を形成した。このようにして、ベースゴム層の外周面に中間層が形成され、さらにその外周面に表層が形成された三層構造の現像ロールを作製した。なお、ベースゴム層の厚みが5mmであり、中間層の厚みが10μmであり、表層の厚みが5μmであった。
【0057】
このようにして得られた各現像ロールについて、下記の基準に従い、各特性の比較評価および測定を行った。これらの結果を後記の表3および表4に併せて示した。
【0058】
〔表層弾性率〕
現像ロールの表層用材料を用いて、JIS K712に準じて、引張弾性率(MPa)を測定した。なお、引張速度は、毎分10±2.0mmとした。
【0059】
〔表層の破断伸び〕
現像ロールの表層用材料を用いて、JIS K712に準じて、破断伸び(%)を測定した。
【0060】
〔トナー帯電性〕
32.5℃×85%RH雰囲気中において、現像ロールの帯電量(−μC/g)を、リコー社製のCX−3000(ブラックトナー使用)により測定した。この測定は、初期(未使用)の現像ロールと、3000枚複写使用後(3K後)の現像ロールとの、それぞれに対して行った。そして、得られた値により、初期に対する耐久使用後のトナー帯電性の低下度合〔(3K後トナー帯電量/初期トナー帯電量)×100〕も算出した。
【0061】
〔耐久画像特性〕
上記3000枚複写使用後(3K後)の現像ロールによって黒べた画像の画出しを実施した。そして、初期の現像ロールによって画出しを実施したときに比べ濃度が明らかに薄くなったものを×、濃度むらがみられるようになったものを△、濃度に変化がみられなかったものを○と評価した。
【0062】
【表3】

【0063】
【表4】

【0064】
上記表の結果から、実施例品はいずれも、その表層が、所望の弾性および破断伸びを有し、初期,耐久使用後ともにトナー帯電性が高く、耐久使用による画像濃度の低下もみられなかった。このことから、実施例品の使用により、長期に渡って安定して良好な複写画像が得られるようになることがわかる。
【0065】
これに対し、比較例品はいずれも、表層形成材料のバインダー中のA成分とB成分の合計量の割合や、A成分とC成分との合計量に対するA成分の割合が、本発明に規定する範囲内にないため、初期のトナー帯電性が悪かったり、また、初期のトナー帯電性が良好であっても、初期に対する耐久使用後のトナー帯電性の低下度合が顕著であったりした。そして、耐久使用による画像濃度の低下も顕著であったため、実施例品のように長期に渡って安定して良好な複写画像を得ることができなかった。なお、比較例4品は、表層形成材料中のシリコーン変性アクリル樹脂のTgが0℃以上であるため、表層弾性率は高かったが、表層の破断伸びは逆に小さくなり、耐久使用により、表層の割れや、複写画像にかぶりがみられることがあった。比較例5品は、表層形成材料中にジイソシアネートを含有せず、表層弾性率は低く、逆に表層の破断伸びは大きい。そして、初期のトナー帯電性が、実施例・比較例のなかで最も悪く、初期に対する耐久使用後のトナー帯電性の低下度合も、実施例・比較例のなかで最も大きかった。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の現像ロールの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の現像ロールの製法の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0067】
1 軸体
2 ベースゴム層
3 中間層
4 表層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、その外周に形成されるベースゴム層と、上記ベースゴム層の外周に直接もしくは他の層を介して形成される表層とを備えた現像ロールであって、上記表層が、下記の(A)〜(D)成分を含有し、(A)〜(C)成分の重量割合が、下記の式(α)および(β)に示す範囲に設定された、樹脂組成物によって形成されていることを特徴とする現像ロール。
(A)アミノ樹脂。
(B)ジイソシアネート。
(C)ガラス転移温度(Tg)が0℃以下の樹脂。
(D)導電剤。
【数1】

【数2】

【請求項2】
上記(C)成分の樹脂が、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン変性ウレタン樹脂およびシリコーン変性アクリル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1つである請求項1記載の現像ロール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−158216(P2008−158216A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346343(P2006−346343)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】