説明

現像剤搬送スクリュー

【課題】 現像剤搬送スクリューの製作容易化によるコスト低減。
【解決手段】 半径方向への2分割型抜きを行った際に、型合わせ面(型分割面)が平面となるスクリュー歯の軸直角断面形状の提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真画像形成装置に用いられる現像剤搬送スクリュー、及び、このスクリューを成型するための型に関する。
【背景技術】
【0002】
前記電子写真画像形成装置では、電子写真画像形成プロセスが用いられている。前記電子写真画像形成プロセスには、現像プロセス、帯電プロセス、転写プロセス等がある。ここで、現像プロセスとは、トナーを用いて現像ローラでもって電子写真感光体に形成された静電潜像を現像するプロセスのことである。
【0003】
この現像プロセスにおいて、現像ローラと電子写真感光体の間に電界が形成されることにより、帯電したトナーが現像ローラから電子写真感光体に移動する。そのため、現像の状態はトナーが有する帯電量に大きく影響される。
【0004】
前記現像プロセスの一つとして、従来から、トナーとキャリアを用いる二成分現像系がある。この二成分現像系においては、トナーとキャリアを混合して接触、摩擦させることによりトナーが帯電する。ここで、二成分現像系においてはトナーとキャリアの混合比(質量比)を安定化する必要がある。
【0005】
なぜなら、トナーとキャリアの質量比(T/C比)が高すぎるとキャリアと接触しない未帯電、逆極性などの余剰トナーが発生する。そのために、かぶり発生、トナー飛散などがおきることがある。一方、T/C比が過小のときはトナーとキャリアの組み合わせによってはチャージアップと言われる帯電量過大状態が発生する。そのために現像濃度が極端に低下することがある。
【0006】
そこで、二成分現像系においては、現像器とトナー容器を分離し、現像器内のT/C比を一定に制御するためにATR(Auto Toner Replenishment)システムが用いられている。このATRとは、現像器のT/C比をセンシングして必要なトナーをトナー容器から定量的に現像器に供給するものである。
【0007】
ATRシステムでは、現像器内のT/C比を例えば8%±2%に維持することが要求される。そして、これを実現するためには高感度のT/C比センサーによるセンシングとトナー容器からのトナーの安定した定量吐出の機構が設けられている。
【0008】
T/C比センサーとしては現像剤の透磁率の変化を検出するインダクタンス方式、現像剤の剤面の反射濃度を検出する光学式センサなどが用いられる。
【0009】
トナー定量吐出の構成としては、例えば、トナーの定量吐出の円筒形のチャンバーと、チャンバー内に配置されたスクリューとを用いて、スクリュー回転時の押しのけ容積分のトナーを軸方向に送るものがある。この構成では、軸流コンベア方式によるトナーの移送機構をもちいてスクリューの回転数を制御することでトナーの現像器への吐出量を制御している。
【0010】
ここで現像器を一つの系とみれば、前記ATRは、系全体としてのT/C比を一定に制御するものである。そして、現像領域でのT/C比を一定にし、現像を安定化するためには、更に、キャリアとトナーの混合攪拌による帯電、現像ローラへの搬送、未現像剤の回収の機能が必要となる。
【0011】
この現像器内での現像剤(トナー+キャリア)の攪拌および供給、回収を行う構成としては現像スリーブと平行な軸をもつ2本のスクリューをもちいて現像剤を現像容器内で循環させる構成が用いられる。
【0012】
即ち、電子写真画像形成装置における二成分現像器ではトナーの現像器への供給、現像器内での現像剤(トナー+キャリア)の循環の手段として現像剤搬送スクリューが多く用いられている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平08−286587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前記現像剤搬送用スクリューはそのほとんどが樹脂の一体成型あるいは金属回転軸を軸心に有するインサート成型で製作される。その他の製作方法としては切削、転造などがある。しかし、切削、転造などは、スクリューの全長がその外径に対して大きいことによる加工曲がりなどの強度上の問題や、生産性、コストの問題がある。従って、これらの加工方法は量産には不向きである。
【0014】
一方、樹脂によりスクリューを成型する場合、スクリュー形状部はその半径方向に型を抜く必要がある。しかし、従来のスクリューの歯型(直線歯型)では図1に示すように、スクリュー軸に平行なある面に対するスクリュー歯面の法線方向がスクリュー半径によって変化する。そのためにアンダーカットを避けて二方向に抜くためには型の分割面が曲面となる。そのため型の製作が困難であった。その結果、従来のスクリューの成型におけるスクリュー部の型構成は3方向分割(120°)あるいはスライドを使用した4方向分割(90°)がもちいられていた。
【0015】
しかしながら、これらの3分割型や4分割型による成型は、2分割型での成型に比較してサイクルタイムが増加するという不都合がある。
【0016】
そこで、本発明の目的は、2分割型によって滑らかな形状(軸を含む平面における螺旋形状の断面形状が一定である)の現像剤搬送スクリューを成型することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
そこで、上記課題を解決するために本出願にかかる発明においては、
軸と、前記軸の周囲に形成されたらせん形状と、を有し、前記軸を中心に回転することによって前記軸の方向に現像剤を搬送する現像剤搬送スクリューにおいて、
Z(r)=kln(ro/r)
ここでz(r):半径rにおけるらせん断面形状の高さ。(z(ro)=0)
ro:らせんの外半径
r:半径(0<r≦ro)
k:定数
の関数で表されることを特徴とする。
【0018】
(説明)
本発明における構成の現像剤搬送装置においてはスクリューの軸を含む断面におけるスクリューの断面形状が図1に示すように
Z(r)=kln(ro/r) …(1)
となっている。
ここでz(r):半径rにおけるらせん断面形状の高さ。(z(ro)=0)
ro:らせんの外半径
r:半径(0<r≦ro)
k:定数
の関数で表される。スクリューの軸をZ軸とした円筒座標系(r,θ,z)においてθ=θ0におけるスクリュー面の法線ベクトルのスクリュー軸に平行な任意の面への投影(例えばyz面への投影である法線ベクトルのx成分であるn)を半径rによらずに一定にすることができる。
【0019】
即ち、上記nが正と負(アンダーカット部)になる部分で型を分割すれば型の分割面は半径rによらなくなる。そのため、分割面は平面となり、二分割金型の製作が容易になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、2分割型によって滑らかな形状(軸を含む平面における螺旋形状の断面形状が一定である)の現像剤搬送スクリューの成型が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
初めに、本発明の実施の形態にしたがって構成される電子写真画像形成装置について図を用いて説明する。
【0022】
(画像形成装置全体の概要説明)
図2は本発明の実施の形態における電子写真方式の画像形成装置の断面図である。
【0023】
この画像形成装置の画像形成部には、像担体である感光体ドラム2を備えた4つのプロセスカートリッジ1(1Y、1M、1C、1K(イエロー、マゼンダ、シアン、ブラック各色))が設けられている。また、前記画像形成部には、このカートリッジ1の上方に各色に対応した露光手段51(51Y、51M、51C、51K)がおのおの配置されている。
【0024】
前記画像形成部の下方には、記録媒体52を供給する給紙部、中間転写ベルト54a、2次転写ローラ54dが設けられている。ここで、中間転写ベルト54aは、感光体ドラム2上に形成された各色のトナー像をその上に重ね合わせて転写してフルカラー像を形成するものである。また、2次転写ローラ54dは、中間転写ベルト54a上のトナー像を記録媒体に転写するものである。
【0025】
さらに画像形成装置本体100には、記録媒体52に転写されたトナー像を加圧および加熱により溶融させて記録媒体の繊維に固着する定着手段56、記録媒体を画像形成装置外へ排出する排出手段が設けられている。
【0026】
(画像形成装置本体の各部の説明)
次に上記画像形成装置の各部の構成について説明する。
【0027】
(給紙部)
給紙部53は記録媒体52を収納し、印刷時に画像形成部へ記録媒体52を所定の時間間隔で供給する。
【0028】
(プロセスカートリッジ)
プロセスカートリッジ1は、感光体ドラム2のまわりに帯電手段と現像手段を有している。このカートリッジ1は装置本体100に対して取り外しが可能である。そして、たとえば感光体ドラム2が耐久により劣化した際にはユーザーが容易に交換できる。
【0029】
図3に示すように感光体ドラム2の一端にはドラムフランジ2bが固定され、他端には非駆動フランジ2dが固定されている。感光体ドラム2の軸にはドラム軸2aが貫通しており、ドラムフランジ2bに設けられた回り止め(不図示)されている。これにより、ドラム軸2aとドラムフランジ2bは一体回転する。
【0030】
ドラム軸2aの非駆動フランジ2d側の端部は軸受2eに回転可能に支持されている。そして、軸受2eは軸受ケース2cを介してカートリッジ1のフレーム1aに固定されている。
【0031】
(帯電手段)
前記帯電手段は接触帯電方法が用いられている。図9に示すように、本発明の実施の形態においては帯電ローラ3aを用いる。帯電ローラ3aは芯金3bの両端部をそれぞれ軸受部材(不図示)により回転自在に保持されている。そして、帯電ローラ3aは、圧縮コイルバネ3dにより感光体ドラム2の断面中心方向に付勢されている。その結果、帯電ローラ3aは感光体ドラム2に対して所定の圧で圧接している。
【0032】
(露光手段)
本発明の実施の形態においては、レーザー露光手段を用いて感光体ドラム2に静電潜像を形成している。
【0033】
即ち、装置本体100から画像信号が送出されると、この画像信号に対応して変調されたレーザー光Lが、感光体ドラム2の一様に帯電された表面に走査する。これにより感光体ドラム2が露光する。これにより、感光体ドラム2上に画像情報に対応した静電潜像が形成される。
【0034】
(現像装置)
以下、図9を用いて現像装置4の説明をする。現像装置4は、2成分接触現像装置(2成分磁気ブラシ現像装置)である。そして、を現像剤担持体としての現像スリーブ4aの内部にはマグネットローラー4bが設けられている。現像スリーブ4a上には、キヤリアとトナーからなる現像剤が保持されている。この現像スリーブ4aの鉛直下部位には所定のクリアランスを保って規制ブレード4cが設けられている。そして、現像スリーブ4aの矢印方向への回転に伴い、現像スリーブ4a上に現像剤の薄層が形成される。
【0035】
図3に示すように、現像スリーブ4aはその両端にジャーナル部4a1が設けられている。そして、ジャーナル部4a1にコロ状スペーサー4kが回転可能に設けられている。そして、スペーサー4kが感光体ドラム2と接触するように付勢手段(不図示)により支持されている。そのため、現像スリーブ4aと感光ドラム2間のクリアランスは所定の値に維持されている。また本実施の形態における現像スリーブ4aの回転方向は感光体ドラム2の回転方向と逆(カウンター現像)である。
【0036】
本実施の形態で用いた現像剤は平均粒径6μmの負帯電用トナーと平均粒径35μmの磁性キャリアの混合剤である。そして、現像剤中のトナーのキャリアに対する質量比は8%としている。
【0037】
図9、図3に示すように、現像剤収納部4hには、その両端部の受渡し部を除いて隔壁4dが設けられている。そして、この隔壁4dの両側に現像剤搬送スクリュー80,81が配置されている。
【0038】
図3において、トナー補給容器5から供給されたトナーTは、スクリュー81の右端部に落下する。そして、トナーTは、隔壁4dのスクリュー81側の溝に沿って図3において左側へ攪拌されながら搬送される。そして図3において隔壁4dの左側の切りかき部(隔壁4dに切り欠きが設けられている)でスクリュー80に受け渡される。そして、次に、隔壁4dのスクリュー80側の溝に沿って図3において右側へ攪拌されながら搬送される。次に、図3において隔壁4dの右側の切りかき部において、トナーTはスクリュー81に受け渡される。これによりトナーTは循環を繰り返す。
【0039】
(現像手段)
ここで感光体ドラム2に形成された静電潜像を2成分磁気ブラシ法によりトナー像化する現像工程について図9に基づいて説明する。
【0040】
まず、現像スリーブ4aの回転に伴い、現像剤収納部4hからマグネットローラー4bの磁極(現像極)の作用により現像剤が現像スリーブ4aの表面にくみ上げられる。次に、現像スリーブ4a上の現像剤は現像スリーブ4aの外径部と規制ブレード4c間の間隙部を通過する。これによって現像剤が一様に薄層化される。さらにこの現像剤が感光体ドラム2の表面と現像スリーブ4aの表面が最も接近する現像領域に入ってくる。するとマグネットローラー4bの磁極(現像極)の作用により、現像剤の穂立ちが形成される。この現像領域においてトナーTがキャリア表面から前記静電潜像の明電位部に移動する。これによって感光体ドラム2にトナー像が現像される。
【0041】
前記現像領域を通過した現像剤(キャリアおよび未現像トナー)は現像スリーブ4aの回転に伴い現像剤収納部4h内に再び入る。そして、マグネットローラー4bの磁極(搬送極)と対向板金の磁界の作用により現像スリーブ4aから剥離する。そして、現像剤は、現像剤収納部4h内で現像剤が循環している現像剤循環部に戻される。
【0042】
現像スリーブ4aには、高圧電源(不図示)から現像バイアスが印加される。本実施の形態では感光体ドラム2の基体に対して、現像バイアスは、DC:−200〜−650VにVp−p:1.8KV f:2KHzのAC電圧を重畳したものである。
【0043】
現像によりトナーが消費されると、現像剤中のトナー濃度(質量%)が低下する。トナー濃度が低い場合には現像領域中のトナー量が不足する。そのため、現像バイアスをあげても現像濃度が得られなくなる。そして、極端にトナー濃度が低下した際には、トナーが過剰に帯電してキャリアから剥離しなくなる。そのため、現像しにくい状態になる(チャージアップ)。
【0044】
一方トナー濃度が高くなると、帯電量の少ないトナーが発生し、かぶりやトナー飛散をおこす。さらには、トナーが帯電部を汚染して帯電不良を引き起こす。
【0045】
そこで本実施の形態では、現像剤中のトナー濃度を8%±2%(質量%)に維持するためにスクリュー81の外周に近接した部位にトナー濃度センサー4gを設けて前記現像剤循環部でのトナー濃度を検出している。
【0046】
濃度センサー4gは、キャリアが常磁性体であることを利用して、透磁率の変化を検出している。これにより単位体積中のキャリア量からトナー濃度を検知する。
【0047】
そして、装置本体100に設けられたコントローラーが濃度センサー4gによってトナー濃度の低下を検知する。すると、前記コントローラーはトナー補給ユニット5にトナー補給動作の要求を送出する。そして、補給ユニット5より所定量のトナーが現像装置4に供給される。
【0048】
(トナー補給ユニット)
現像装置4の上部に位置するトナー補給ユニット5について説明する。
【0049】
補給ユニット5は、装置本体100の前面から、装置本体100のフレームに設けられたガイドレール(不図示)に沿って挿入される。そして、補給ユニット5の有するトナー吐出口が現像装置4の有するトナー受け口1bに対向した位置で挿入ロック(不図示)により係止される。こうしてトナーの供給路が構成される。
【0050】
補給ユニット5には印字率5%で10000枚の印字が可能な量のトナーが収納されている。そして、このトナーは攪拌羽根(不図示)によってある時間間隔で攪拌される。補給ユニット5の下部のトナー定量スクリュー(不図示)は装置本体100より継ぎ手を介して駆動される。そして、ATR制御によりトナーの供給要求がかかると、前記定量スクリューが供給量に応じた回転数の分、回転する。そして、所定量のトナーを前記トナー吐出口へ搬送する。搬送されたトナーは受け口1bを通過して、現像装置4内へ落下する。
【0051】
(転写手段)
図2に示す転写手段である中間転写ユニット54は、感光ドラム2から順にトナー像を1次転写して4つのトナー像を重ねた後、一括して記録媒体52に2次転写する。
【0052】
中間転写ユニット54は矢印方向に感光体ドラム2の周速度と略同速度で走行する中間転写ベルト54aを具備している。この中間転写ベルトは駆動ローラー54b、2次転写対向ローラー54g、従動ローラー54cの3本のローラー間に張架される。
【0053】
中間転写ベルト54a内には転写ローラ54f(54fY、54fM、54fC、54fK)が各色用の感光体ドラム2と対向する位置に配置されている。そして、ローラ54fは、中間転写ベルト54aを挟んで感光体ドラム2の中心方向へ加圧されている。
【0054】
ローラ54fには高圧電源よりおのおの転写電圧が印加される。そして、感光体ドラム2上のトナー像が順次、中間転写ベルト54a上に1次転写される。
【0055】
2次転写部には、2次転写ローラ54dが2次転写対向ローラ54gと中間転写ベルト54aを挟んで配置されている。そして、記録媒体52が2次転写部に突入すると所定の転写バイアスが2次転写ローラ54dに印加される。これにより、中間転写ベルト54a上のトナー像は記録媒体52に2次転写される。
【0056】
2次転写された記録媒体52は、2次転写ローラ54dと中間転写ベルト54aの接線方向の駆動力により、定着器56にむけて搬送される。
【0057】
一方、2次転写部での転写残トナーは、クリーニングユニット55のブレード55aによって中間転写ベルト54aより剥離される。
【0058】
(定着部)
本実施の形態における定着部56ではローラー定着構成をもちいて記録媒体52上のトナー像を加熱溶融して記録媒体に固着させる。
【0059】
(定着動作)
転写されたトナー像を記録媒体52上側として記録媒体52が定着部56に搬入される。そして、定着ローラ56aと加圧ローラ56b間のニップに挟持搬送されて加熱、加圧を受ける。これにより、トナーが記録媒体52に溶融固着して排出される。
【0060】
(排紙部)
定着部56を通過した後の記録媒体52は搬送ローラ53h、FD排紙ローラ53jによって搬送される。そして、記録媒体52は、装置本体100上部から排出されてFDトレー57に積載される。
【0061】
〔実施例の詳細な説明〕
本発明の実施例にかかる現像剤搬送スクリュー80(81)についてより詳細に説明する。
【0062】
(現像剤搬送スクリュー)
現像剤搬送スクリュー80について図4をもとに説明する。
【0063】
スクリュー80はステンレス製の軸84を中心としてこの周りにABS樹脂のスクリュー形状部82,83をインサート成型によって一体的に成型される。
【0064】
軸84はその両端の樹脂非被覆部を現像装置4内に設けられた軸受けにより回転可能に支持される。そして、図4の右端部より駆動機構(不図示)により駆動が伝達される。
【0065】
スクリュー80が現像剤中で回転駆動されると、らせん形状である主スクリュー部83は現像剤より軸方向の推力を受ける。しかし、スクリュー80は現像装置4に対して軸方向の運動を拘束されている。そのため、この反作用として現像剤はスクリュー80の推力と反対方向へ移送される。
【0066】
例えば、本実施例においては主スクリュー83のねじれ方向がLH(left hand)であり、軸の回転方向が駆動側(左端)よりみてCCW(counterclockwise)である。そのため、推力が図中右側へ発生する結果、現像剤は左方向へ移動する。
【0067】
尚、左側へ移動した現像剤は、循環のため、図3において左側の切り欠きよりスクリュー81側のチャンバーへ送出される。しかし、左端部と容器の壁面間で現像剤が圧縮されるとスクリュー駆動トルクが増大してしまう。そのため、これを回避する目的でスクリュー80において主スクリュー83とねじれ方向が逆である返しスクリュー82を設けている。
【0068】
(スクリュー歯形)
スクリューの歯形について図5、図6を用いて説明する。
【0069】
図5aに示すようにスクリューの軸をZ軸としたo−XYZ座標系および、円筒座標系(r、θ、z)をとる。
ここでp:スクリューのピッチ、ro:スクリュー外径とする。
【0070】
最初に直線歯形のスクリューの図5bについて以下の手順により面S1、S2の外向き法線のx成分を求める。
【0071】
【数1】

【0072】
(1−6)式より、面S1の外向き法線のx成分はθ=ξを基準として±π/2の範囲で正になるため、この範囲でアンダーカットが生じない。また面S2も同様に(2−6)式より、θ=−ξを基準として±π/2の範囲でアンダーカットが生じない。そこでこの外向き法線のx成分が0になる境界で成型のための型を分割すれば2方向(今の例ではxの±方向)にアンダーカットを発生しない型抜きが理論上可能である。しかし、(1−6)、(2−6)式から明らかなように、境界の位置を与えるξが半径rの関数であるために、型の分割面が曲面となり金型製作は実際困難であった。
【0073】
そこで本発明においては2分割型抜きの際に型の分割面が平面になるようにスクリュー歯形を次のように決定した。
【0074】
【数2】

【0075】
本実施例においては外径φ14,(軸径φ6),ピッチ20のスクリューにおいてξ=45°とした。この結果歯の1つの面S1に対してその裏面をS2とすると、図8aに示すように+x軸方向に抜く型のS1面の範囲は+ξ(=+45°)−90°≦θ≦+ξ(=+45°)+90°である。従って、S1面を分割する為の分割面F1はθ=+ξ−90°=+ξ+90°上にある。また、+x軸方向に抜く型のS2面の範囲は−ξ(=−45°)−90°≦θξ≦−ξ(=−45°)+90°となった。従って、S2面を分割する為の分割面F2はθ=−ξ−90°=−ξ+90°上にある。ξは0≦ξ<π/2の範囲をとれるが、30°より小さい範囲では歯先に対して歯元が極端に太くなり、スクリューによる現像剤搬送効率が落ちる。またξが大きくなると、図8aで示すように軸部のアンダーカットを逃がす必要から、軸径が細くなり強度が低下する。
【0076】
図7に本実施例におけるスクリュー80と、スクリュー80を成型するための型85の図を示す。図から明らかなように型85の分割面(F1(F2(不図示)))は全て平面で構成されている。そのため、機械加工が容易であり、2分割による型割がはじめて可能になった。
【0077】
本実施例によれば、成型する際のサイクルタイムを減少させることにより、コストの減少を図ることができる。
また、本実施例によれば、現像剤搬送スクリューを成型するための型の複雑化を抑制することができる。
また、本実施例によれば、現像剤搬送スクリューの設計自由度を向上させることにある。
また、本実施例によれば、型製作の容易化による型製作費の低減が図れる。
また、本実施例によれば、複数個取り型による生産性の向上が図れる。
また、本実施例によれば、成型部品の精度を向上させることができる。
【0078】
(機能上の利点)
次に本実施例に係るスクリュー80の機能上の利点について説明する。
【0079】
従来の直線歯形断面(図6a)に対して、本実施例の歯形断面(図6b)を有する現像剤スクリューは現像剤の攪拌能が高い。
【0080】
ここで、現像装置4内における現像剤の攪拌搬送時に現像剤はスクリュー歯面より周方向(円筒座標系上θ方向)、および歯形断面の法線方向(R−Z面内)からの作用を受ける。
【0081】
そして、直線歯型断面(図6a)の断面稜線(直線)に対して、本実施例の歯形断面は歯肉側に凹の曲線稜を有している。この凹曲線により前述の現像剤が歯面より受ける作用の法線方向成分が変化する。そのため現像剤の流動方向が変化する。本実施例の現像剤攪拌状態の観察によると、現像剤は歯面根元(軸側)から歯先へ向かって流動する。しかし、歯先付近でspilling break(くずれ破砕波)現象を発生する。これにより、現像剤の流動方向の反転を発生する。
【0082】
これにより、順方向と反転方向の現像剤流動の界面で十分な攪拌と混合が行われる。そのため、混合状態の均一性(攪拌能)、帯電付与性能の面で、本実施例のスクリュー80は、従来の現像剤搬送スクリューよりも優位である。即ち、本実施例によれば、現像剤の攪拌能の向上、現像剤混合状態の均一化と帯電付与効率の向上を図ることができる。
【0083】
以上を証明する1つの指標として本実施例の現像剤スクリューを用いた際のトナー比電荷量の立ち上がり時間(0〜飽和帯電量の60%に到達する時間)は従来の直線歯型スクリューの約85%であった。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明における現像剤搬送スクリューの歯形断面形状図。
【図2】本発明における画像形成装置本体の断面図。
【図3】本発明における現像装置の断面図。
【図4】本発明における現像剤搬送スクリューの外観図。
【図5】スクリュー面形状を説明する図。
【図6】スクリューの歯形断面形状。
【図7】本発明におけるスクリューの二分割型割による成型の概略図。
【図8】本発明におけるスクリューの二分割型割の分割面を与える図。
【図9】本発明におけるプロセスカートリッジの断面図。
【符号の説明】
【0085】
1 プロセスカートリッジ
1Y,1M,1C,1K (YMCK各色)プロセスカートリッジ
2 感光体ドラム
3 帯電ローラー
4 現像装置
5 トナー補給装置(従来形)
51Y,51M,51C,51K 露光手段
52 記録媒体
53 記録媒体搬送機構
54 中間転写ユニット
55 クリーニングユニット
56 定着器
57 FD排紙トレー
80 現像剤搬送スクリューA
81 現像剤搬送スクリューB
82 返しスクリュー
83 主スクリュー
83a 主スクリュープロファイル
83b 主スクリュー外半径
84 スクリュー軸
85 二分割型
85a ベース
85b コマ
90 スクリュープロファイル(従来形)
100 画像形成装置本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸と、前記軸の周囲に形成されたらせん形状と、を有し、前記軸を中心に回転することによって前記軸の方向に現像剤を搬送する現像剤搬送スクリューにおいて、
前記らせん形状部の(前記軸を含む平面における)断面形状が
Z(r)=kln(ro/r)
ここでz(r):半径rにおけるらせん断面形状の高さ。(z(ro)=0)ro:らせん外半径
r:半径(0<r≦ro)
k:定数
の関数で表されることを特徴とする現像剤搬送スクリュー。
【請求項2】
軸と、前記軸の周囲に形成されたらせん形状と、を有し、前記軸を中心に回転することによって前記軸の方向に現像剤を搬送する現像剤搬送スクリューを成型するための型において、
前記らせん形状部を成型するための(前記軸を成型する軸型の中心を含む平面における)らせん形状部型の断面形状が
Z(r)=kln(ro/r)
ここでz(r):半径rにおけるらせん断面形状部型の高さ。(z(ro)=0)ro:らせん外半径
r:半径(0<r≦ro)
k:定数
の関数で表されることを特徴とする型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−227598(P2006−227598A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−4719(P2006−4719)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】