説明

現像装置および画像形成装置

【課題】 帯電装置で発生するオゾンによるシール部材の劣化を防止することで、シール部材としての機能を、長期に亘り維持することができる現像装置およびこれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】 シール部材31は、現像装置の開口部30に一方端が支持され、他方端が感光体ドラム16表面に当接するように設けられる。シール部材31の表面に、オゾンを分解する触媒(白金ナノコロイド)を含むコーティング層を設けることによって、シール部材31を劣化させるオゾンをコーティング層によって分解する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置に備えられる現像装置および、これを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリなどの電子写真方式の画像形成装置においては、像担持体として表面に光導電性物質を含む感光層を形成した感光体を用い、帯電装置によって感光体表面に電荷を付与して均一に帯電させた後、種々の作像プロセスにて画像情報に対応する静電潜像を形成し、この静電潜像を、現像装置から供給されるトナーを含む現像剤により現像して可視像とし、この可視像を紙などの記録材に転写した後、定着ローラによって加熱および加圧して、記録材に定着させることにより、記録紙上に画像が形成される。
【0003】
現像装置は、感光体に対向する位置に開口部を設け、開口を介して感光体へとトナーを供給している。このような構成上、開口部と感光体との隙間からトナーが漏れ出してしまうため、トナーの漏れ出し防止する必要がある。トナーの漏れ出しを防ぐ構成として、開口部に一方端が支持され、他方端が感光体に当接するように設けたシール部材が用いられる。
【0004】
シール部材を構成する材料としては、感光体との接触領域において、シール性能を良くするため、適度な弾性とすべり性を有し、耐摩耗性の高い材料が好ましい。たとえば、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどからなる樹脂材料を使用することが多い。
【0005】
しかしながら、これらの材料は、たとえば下記化学式で示すポリウレタンの構造からわかるように、炭素と酸素との二重結合(C=O)を有しており、この二重結合にコロナ放電方式の帯電装置で発生するオゾンが作用して、シール部材に亀裂、硬化、塑性変形等の劣化が生じるため、長期に亘りシール性能を維持することが困難である。
【0006】
【化1】

【0007】
帯電装置で発生するオゾンを除去する手段として、たとえばオゾンによるLEDプリントヘッドの劣化を防止するために、LEDプリントヘッドと感光体との間に送風する送風手段と、送風が帯電手段の内部および現像手段の内部に入ることを遮断する遮断部材を備える画像形成装置がある(特許文献1参照)。
【0008】
また、オゾンを分解する手段として、たとえば、現像スリーブ表面を、活性炭素繊維(ACF)を含有させた合成樹脂で構成した現像装置がある(特許文献2参照)。
【0009】
また、分散媒体と、金属ナノコロイドを含み、金属担持体(炭素系材料、セラミックス、金属酸化物系材料、金属系材料または有機高分子系材料)に、金属ナノコロイド粒子を担持させ、過酸化水素の分解など安定した触媒活性を示す金属担持体がある(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−164135号公報
【特許文献2】特開2005−249838号公報
【特許文献3】特開2005−169333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1では、送風ファンなどの送風手段を設けるため、部品点数が多く、装置が大型化すること、送風によって遮蔽部材が一部変形することが懸念される。また、特許文献2では、活性炭素繊維が合成樹脂中に含有されているため、活性炭素繊維がオゾンと直接接触する機会が少なく、したがって、オゾンを吸着、分解する効率が低い。しかも、活性炭素繊維に吸着されるオゾンの量は限られており、長期に亘るオゾンの吸着、分解という性能を維持することは困難である。特許文献3では、画像形成装置の帯電装置で発生するオゾンを分解することは何ら開示されていない。
【0012】
本発明の目的は、帯電装置で発生するオゾンによるシール部材の劣化を防止することで、シール部材としての機能を、長期に亘り維持することができる現像装置およびこれを備えた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、感光体に形成された静電潜像を、トナーを含む現像剤によって現像する現像装置において、
前記現像剤を収容する現像槽と、
前記現像槽に収容された現像剤を担持して搬送し、前記感光体にトナーを供給する現像ローラと、
前記感光体の表面にトナーを供給するための開口部に一方端が支持され、他方端が前記感光体に当接するように設けられるシール部材とを備え、
前記シール部材の表面の少なくとも一部に、白金ナノコロイドを含むコーティング層を設けることを特徴とする現像装置である。
【0014】
また本発明は、前記シール部材は、矩形状のシート部材で構成され、前記シート部材の長手方向が前記感光体の回転軸と平行となるように設けられることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記コーティング層は、前記シール部材の前記感光体に対向する表面に設けられることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記コーティング層の厚さは、20nm以上50nm以下であることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記シール部材の表面の少なくとも一部に、白金ナノコロイドとフッ素樹脂またはシリコーン樹脂とを含む樹脂コーティング層を設けることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記樹脂コーティング層に含まれる白金ナノコロイドの含有量は、2mg/cm以上25mg/cm以下であることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記シール部材の厚さは、0.05mm以上0.3mm以下であることを特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記現像装置を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、感光体に形成された静電潜像を、トナーを含む現像剤によって現像する現像装置において、前記感光体の表面にトナーを供給するための開口部に一方端が支持され、他方端が前記感光体に当接するように設けられるシール部材とを備え、前記シール部材の表面の少なくとも一部に、白金ナノコロイドを含むコーティング層を設ける。
【0022】
シール部材の表面に、オゾンを分解する触媒(白金ナノコロイド)を含むコーティング層を設けることによって、シール部材を劣化させるオゾンをコーティング層によって分解し、オゾンによるシール部材の劣化を防止する。オゾンによる劣化を防止することで、感光体とシール部材との接触面の均一性を保持することができ、シール部材としての機能を、長期に亘り維持することが可能となる。
【0023】
また本発明によれば、前記シール部材は、矩形状のシート部材で構成され、前記シート部材の長手方向が前記感光体の回転軸と平行となるように設けられる。
シール部材として、簡単な構造で高いシール性能を実現することができる。
【0024】
また本発明によれば、前記コーティング層は、前記シール部材の前記感光体に対向する表面に設けられる。
【0025】
帯電器で発生したオゾンは、主にシール部材の感光体に対向する側の表面に接触するので、オゾンが接触しやすい表面にコーティング層を設けることで、白金ナノコロイドとオゾンとの接触機会を増加させ、オゾンの分解を促進させることができる。
【0026】
また本発明によれば、前記コーティング層の厚さを、20nm以上50nm以下とすることで、効率よくオゾン分解効果が発揮される。
【0027】
また本発明によれば、前記シール部材の表面の少なくとも一部に、白金ナノコロイドとフッ素樹脂またはシリコーン樹脂とを含む樹脂コーティング層を設ける。
【0028】
表面自由エネルギーの低いフッ素樹脂またはシリコーン樹脂を含む樹脂コーティング層を設けることで、飛散したトナーが付着しにくくなり、シール部材へのトナーの融着、固着を防止することができる。また、樹脂コーティング層が白金ナノコロイドを含有することで、シール部材表面に導電性を持たせることができ、トナーの静電気力による付着を抑制する効果もある。
【0029】
また本発明によれば、前記樹脂コーティング層に含まれる白金ナノコロイドの含有量を、2mg/cm以上25mg/cm以下とすることで、効率よくオゾン分解効果が発揮される。
【0030】
また本発明によれば、前記シール部材の厚さを、0.05mm以上0.3mm以下とすることで、感光体に対する適度な接触圧を実現できる。
【0031】
また本発明によれば、上記の現像装置を備えることにより、トナー飛散による画像形成装置内の汚れ、帯電装置のトナー汚れ、光学系光路のトナー汚れをも防止して、長期に亘り高品位の画像形成を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の一形態である画像形成装置40の構成を示す概略図である。
【図2】第1画像形成ユニット1の構成を示す概略図である。
【図3】現像装置19の構成を示す概略図である。
【図4】シール部材31の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、本発明の実施の一形態である画像形成装置40の構成を示す概略図である。なお、図1に示す画像形成装置40は一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0034】
画像形成装置40は、4つの画像形成ユニット1〜4として、イエロートナー像を形成するための第1画像形成ユニット1と、マゼンタトナー像を形成するための第2画像形成ユニット2と、シアントナー像を形成するための第3画像形成ユニット3と、黒トナー像を形成するための第4画像形成ユニット4とを含む。
【0035】
4つの画像形成ユニット1〜4の上方には、無端ベルトで構成される中間転写ベルト5が配設されている。中間転写ベルト5は、2つの支持ローラ6に掛け渡され、矢印Rにて示す方向に回転可能に構成される。
【0036】
中間転写ベルト5を挟んで、2つの支持ローラ6のうち一方の支持ローラ6に対向するように2次転写ローラ8が設けられる。以降、2次転写ローラ8が配置されている2次転写位置を起点として、中間転写ベルト5の回転方向の上流、下流を規定する。
【0037】
4つの画像形成ユニット1〜4は、中間転写ベルト5の回転方向Rの上流側から下流側に向かって、イエロー色の画像情報に対応するトナー像を形成する第1画像形成ユニット1、マゼンタ色の画像情報に対応するトナー像を形成する第2画像形成ユニット2、シアン色の画像情報に対応するトナー像を形成する第3画像形成ユニット3、黒色の画像情報に対応するトナー像を形成する第4画像形成ユニット4の順に配置される。
【0038】
中間転写ベルト5の内側には、各画像形成ユニット1〜4で形成された単色トナー像を中間転写ベルト5に転写する1次転写ローラ7が、中間転写ベルト5を挟んで、各画像形成ユニット1〜4の感光体に対向するように設けられる。各画像形成ユニット1〜4で形成された単色トナー像は、中間転写ベルト5上に重ね合うように転写され、1つのカラートナー画像を形成する。
【0039】
2次転写ローラ8より中間転写ベルト5の回転方向Rの下流側には、中間転写ベルト5の表面をクリーニングするためのベルトクリーニングユニット10が設けられる。ベルトクリーニングユニット10は、中間転写ベルト5に接触配置されるベルトクリーニングブラシ11と、ベルトクリーニングブレード12とを有している。ベルトクリーニングブレード12は、ベルトクリーニングブラシ11より、中間転写ベルト5の回転方向Rの下流側に配置される。2次転写後、記録媒体に転写されないまま中間転写ベルト5上に残ったトナーは、ベルトクリーニングユニット10にて取り除かれる。
【0040】
4つの画像形成ユニット1〜4の下方には、記録媒体を収容するトレイ14が配設されている。トレイ14内の記録媒体は、複数の給紙ローラ13により、矢印Pで示す搬送方向に沿って2次転写ローラ8が中間転写ベルト5に対向する2次転写位置まで搬送される。
【0041】
2次転写ローラ8よりも、記録媒体の搬送方向Pの下流側には、記録媒体に2次転写されたカラートナー像を、記録媒体に定着するための定着ユニット15が設けられる。そして、定着ユニット15よりも、記録媒体の搬送方向Pの下流側には、カラートナー像が定着された記録媒体を、画像形成装置40から排出する排紙ローラ13aが設けられる。
【0042】
図2は、第1画像形成ユニット1の構成を示す概略図である。
第2画像形成ユニット2、第3画像形成ユニット3、および第4画像形成ユニット4の構成は、第1画像形成ユニット1と実質的に同じ構成である。したがって、第1画像形成ユニット1を代表例として説明し、第2画像形成ユニット2、第3画像形成ユニット3、および第4画像形成ユニット4の詳細な説明は省略する。
【0043】
第1画像形成ユニット1は、像担持体である円柱状または円筒状の感光体ドラム16と、感光体ドラム16の周囲に設けられ、感光体ドラム16の表面を帯電させる帯電器17、感光体ドラム16上に静電潜像を書き込む露光器18、感光体ドラム16に書き込まれた静電潜像を現像して可視化する現像装置19および一次転写後に感光体ドラム16上に残留するトナーを含む残留物を除去する感光体ドラムクリーナ20とを含む。
【0044】
帯電器17は、本実施形態では、非接触型帯電器であり、たとえばグリッド電極を有するスコロトロン帯電器によって実現され、コロナ放電を行って感光体ドラム16の感光層表面を所定の電位に帯電させる。帯電器17は、コロトロン帯電器によって実現されてもよい。
【0045】
露光器18は、たとえば、レーザ露光器からなり、画像情報に応じてレーザ走査による感光体ドラム16表面の露光を行い、帯電器17によって帯電された感光体ドラム16の表面電位を変化させることで、画像情報に応じた静電潜像を形成する。露光器18としては、LEDアレイ装置などを用いることもできる。
【0046】
現像装置19は、現像槽27内部に現像剤を収容し、現像剤に含まれるトナーによって、感光体ドラム16表面の静電潜像を現像して、トナー像を形成する。また、現像装置19は、感光体ドラム16表面の静電潜像を現像する際に生じる飛散現像剤を受け止める現像剤受け部27aを備えている。
【0047】
現像装置19で用いられる現像剤には、トナーおよびキャリアからなる2成分現像剤と、キャリアを含まずトナーのみを含む1成分現像剤がある。本実施形態では、現像装置19は、現像槽27の内部空間に2成分現像剤を収容し、2成分現像剤に対応した構成を有する。
【0048】
感光体ドラムクリーナ20は、クリーニングブレード21と、クリーナハウジング22と、シール23とを備えている。
【0049】
クリーニングブレード21は、感光体ドラム16の回転方向Rdに対してカウンタ方向に圧接配置され、感光体ドラム16表面の残留物を掻き取るものである。クリーナハウジング22は、掻き取られた残留物を収容するもので、クリーニングブレード21は、クリーナハウジング22に取り付けられる。シール23は、クリーナハウジング22内部を封止するもので、クリーニングブレード21よりも感光体ドラム16の回転方向Rd上流側において、一端がクリーナハウジング22に固定されると共に、他端が感光体ドラム16に接触配置されている。
【0050】
図3は、現像装置19の構成を示す概略図である。
現像装置19の構成は、使用する現像剤の種類、現像方法などに応じて多岐にわたるため、本実施形態では、2成分現像剤(以下、単に「現像剤」と呼ぶ)を用いたカラー対応の現像装置19であり、図1に示したように、画像形成装置40内で複数の画像形成ユニットが配置される、いわゆるタンデム式画像形成装置に用いられる現像装置である。
【0051】
現像装置19の現像槽27には、感光体ドラム16の外周面に臨む位置に、感光体ドラム16の外周面に向かって開放する開口部30が形成されている。現像槽27内部には、開口部30の開口を通して感光体ドラム16の外周面を臨むように現像ローラ24が設けられる。現像ローラ24は、その外周面に現像剤を担持して搬送することによって、感光体ドラム16に現像剤中のトナーを供給し、感光体ドラム16上の静電潜像を現像する。現像ローラ24は、感光体ドラム16の外周面から間隔(現像ギャップ)をあけて配置される。
【0052】
現像ローラ24は、多極に着磁された円筒状の多極着磁部材25と、多極着磁部材25に回転自在に外嵌された非磁性のスリーブ26からなる。多極着磁部材25は、軸線方向両端部が、現像槽27の両側壁に非回転に支持される。
【0053】
多極着磁部材25には、周方向における複数の位置に、複数の磁極が離隔して配置される。多極着磁部材25の磁極は、たとえば断面形状が長方形状の棒磁石を、多極着磁部材25の周方向における複数の位置に、放射状に配置することによって形成される。本実施形態では、多極着磁部材25には、5つの磁極、具体的には3つのN極N1,N2,N3と、2つのS極S1,S2とが配置される。
【0054】
磁極N1は、感光体ドラム16と対向する位置に配置される。スリーブ26の回転軸を回転中心として、磁極S1は、磁極N1からスリーブ26の回転方向Raの上流側に、たとえば59°角変位した位置に配置され、磁極N2は、磁極N1からスリーブ26の回転方向Raの上流側に、たとえば117°角変位した位置に配置され、磁極N3は、磁極N1からスリーブ26の回転方向Raの上流側に、たとえば224°角変位した位置に配置され、磁極S2は、磁極N1からスリーブ26の回転方向Raの上流側に、たとえば282°角変位した位置にそれぞれ配置される。
【0055】
N極の磁束密度を正(プラス(+))とし、S極の磁束密度を負(マイナス(−))とすると、磁極N1による磁束密度のピーク値は、たとえば、110mTであり、磁極S1による磁束密度のピーク値は、たとえば、−78mTであり、磁極N2による磁束密度のピーク値は、たとえば、56mTであり、磁極N3による磁束密度のピーク値は、たとえば42mTであり、磁極S2による磁束密度のピーク値は、たとえば、−80mTである。
【0056】
現像槽27の開口部30の近傍、かつ現像ローラ24の感光体ドラム16を臨む部分よりもスリーブ26の回転方向Raの上流側であって、汲み上げ磁極N2よりもスリーブ26の回転方向Raの下流側の部分に対向する位置には、現像ローラ24の外周面に担持される現像剤層の厚みを規制して、現像剤の静電潜像への搬送量を規制する層厚規制部材28が設けられる。層厚規制部材28は、現像ローラ24の外周面に対して、所定の間隔(ドクターギャップ)を隔てて配置されている。
【0057】
現像槽27の内部にあって、現像ローラ24に臨む位置には、現像槽27内部の現像剤を撹拌、および循環させるとともに、現像ローラ24へと現像剤を供給する撹拌部材29が、回転可能に設けられる。
【0058】
開口部30に一方端が支持され、他方端が感光体ドラム16表面に当接するようにシール部材31が設けられる。本実施形態では、シール部材31は、矩形状のシート部材で構成され、シート部材の長手方向が感光体ドラム16の回転軸と平行となるように設けられる。シール部材31は、たとえば一方端を両面テープなどで開口部30の外表面に接着することにより固定支持される。
【0059】
シール部材31は、耐摩耗性と適度な弾性とを有する材料で構成され、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどが用いられ、たとえば厚さ0.1mmのポリウレタンシートが用いられる。
【0060】
シール部材31の厚さとしては、0.05mm以上0.3mm以下とすることで、感光体ドラム16に対する適度な接触圧を実現できるので好ましいが、より好ましくは、0.1mm以上0.2mm以下である。シール部材31の厚さが0.05mm未満では、シール部材31と感光体ドラム16の接触圧が低すぎて、シール性が劣るため、現像槽27からのトナーの飛散を防止し難い。シール部材31の厚さが0.3mm以上では、接触圧が高すぎるため、感光体ドラム16に付着した異物などを強く摺擦してしまい、感光体ドラム16表面に傷を発生させる可能性がある。
【0061】
シール部材31は、他方端が感光体ドラム16に接触しており、スリーブ26の回転によって巻き上げられるトナーが機内や感光体ドラム16表面へ飛散、付着しないようにする機能を有している。このシール部材31は、図3に示すように、他方端が回転する感光体ドラム16の周面に接触するように取り付けられているため、帯電器17で発生したオゾンが、感光体ドラム16の回転によって、その外周面に沿って現像装置19へと運ばれ、シール部材31がオゾンと接触することになる。シール部材31がポリウレタンなどの樹脂材料で構成されていることから、オゾンとの接触により亀裂、硬化、塑性変形等の劣化が生じる。オゾンによって劣化したシール部材31は、感光体ドラム16との接触面が不均一になり、シール性能が低下する。シール性能の低下により、現像槽27から飛散したトナーが、シール部材31をすり抜けて、感光体ドラム16に付着したり、機内または帯電器17に付着して帯電不良を起こしたりし、かぶりなど印刷画像の画質劣化を引き起こす要因となる。
【0062】
したがって、本発明では、シール部材31の表面に、オゾンを分解する触媒(白金ナノコロイド)を含むコーティング層を設けることによって、シール部材31を劣化させるオゾンをコーティング層によって分解し、感光体ドラム16との接触面の均一性を保持することで、シール部材31としての機能を、長期に亘り維持することが可能となる。
【0063】
図4は、シール部材31の一例を示す側面図である。シール部材31の一方面には、白金ナノコロイドで構成されるコーティング層32が設けられ、他方面には、フッ素樹脂またはシリコーン樹脂に白金ナノコロイドを分散させた樹脂コーティング層33が設けられる。
【0064】
本実施形態のシール部材31は、その表面に白金ナノコロイドを含むコーティング層32が設けられる。このコーティング層32は、含まれる白金ナノコロイドのオゾン分解作用により、帯電器17で発生したオゾンを分解する。
【0065】
白金ナノコロイドの触媒反応によるオゾンの分解は、Pt−O+O→Pt−O+Oで表わされる第1反応と、Pt−O+O→Pt−O+2Oで表わされる第2反応との連鎖反応による。
【0066】
白金ナノコロイドは、分解反応の触媒として働くため、第1反応および第2反応により損失することがなく、酸化チタンなどの光触媒に比べ励起エネルギーが不要で、劣化に強く、長期に亘るオゾン分解能を維持することができる。
【0067】
さらに、白金ナノコロイドは、粒径が1〜5nmのナノ微粒子であるので、表面積が大きく、高い分解効率を達成できる。
【0068】
コーティング層32は、シール部材31の表面の少なくとも一部に設ければ、オゾン分解効果が発揮され、劣化を防止することができるが、たとえば、基体となるシール部材31の両面、または、感光体ドラム16に対向する側の表面に設けることが好ましい。帯電器17で発生したオゾンは、主にシール部材31の感光体ドラム16に対向する側の表面に接触するので、オゾンが接触しやすい表面にコーティング層32を設けることで、白金ナノコロイドとオゾンとの接触機会を増加させ、オゾンの分解を促進させることができる。
【0069】
コーティング層32をシール部材31表面に形成する方法には、特に制限はなく、コーティング層32を形成させるシール部材31と白金ナノコロイド分散液を接触させることで達成できる。白金ナノコロイド分散液に、シール部材31を接触させてもよいし、シール部材31に白金ナノコロイド分散液を噴霧してもよい。
【0070】
分散液を接触または噴霧等の方法により、シール部材31に白金ナノコロイド分散液を付着させた後に、白金ナノコロイドの分散媒を除去する。分散媒は、白金ナノコロイド粒子が凝集しないような条件で乾燥させて除去することが望ましい。
【0071】
形成したコーティング層32の厚さは、20nm以上50nm以下であることが好ましい。コーティング層32の厚さをこのような範囲内とすることで、効率よくオゾン分解効果が発揮される。コーティング層32の厚さが20nm未満であると、オゾンと白金ナノコロイドとの接触機会が少なく、オゾン分解効果が充分に発揮できない。コーティング層32の厚さが50nmより大きくしたとしても、オゾン分解効果は増加しないため、50nmを上限とする。
【0072】
また、白金ナノコロイドは、燃焼法または沈殿法によって製造できる。燃焼法は、白金イオン溶液を、水素ガス中またはリンなどに添加し、燃焼させることで還元反応させて白金微粒子を得て、その粒子を媒体中に投入することで、白金ナノ微粒子を含むコロイドを得る方法である。媒体は、必要に応じてコロイドを安定化させるために、保護コロイド形成剤を含んでいてもよい。ここで、保護コロイド形成剤とは、コロイド粒子の分散安定性を保持するために、コロイド液に含有されているもので、コロイド粒子表面に付着して、保護コロイドを形成する物質のことである。このような保護コロイド形成剤としては、たとえばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチンなどの水溶性高分子物質、界面活性剤、高分子キレート化剤などが挙げられる。
【0073】
沈殿法は、白金イオン溶液に還元剤を添加し、白金イオンを還元することによって白金ナノコロイドを得る方法で、たとえば特開2001−79383号公報、特開2001−122723号公報などに開示されている。
【0074】
白金ナノコロイド分散液の濃度は、コロイド粒子の分散安定性の面から、通常1000〜2000ppmの範囲が好ましい。
【0075】
上記のコーティング層32は、実質的に白金ナノコロイドのみで構成されるコーティング層であるが、シール部材31の現像槽27の内部空間に臨む側の表面に設ける場合は、白金ナノコロイドとフッ素樹脂またはシリコーン樹脂とを含む樹脂コーティング層33を設けることが好ましい。
【0076】
フッ素樹脂またはシリコーン樹脂をバインダー樹脂として、白金ナノコロイドが一部露出するように、樹脂コーティング層33を形成する。
【0077】
シール部材31の現像槽27の内部空間に臨む側の表面には、現像槽27内部のスリーブ26の回転によって巻き上げられて飛散したトナーが滞留しやすく、また、感光体ドラム16表面と接触する部分で発生する摩擦熱などで滞留したトナーがシール部材31に融着、固着してしまう場合がある。
【0078】
シール部材31の現像槽27の内部空間に臨む側の表面に、表面自由エネルギーの低いフッ素樹脂またはシリコーン樹脂を含む樹脂コーティング層33を設けることで、飛散したトナーが付着しにくくなり、シール部材31へのトナーの融着、固着を防止する効果が得られる。また、樹脂コーティング層33が白金ナノコロイドを含有することで、シール部材31表面に導電性を持たせることができ、トナーの静電気力による付着を抑制する効果もある。さらには、現像槽27内部にまで侵入したオゾンを、樹脂コーティング層の白金ナノコロイドによって分解する効果もある。
【0079】
このような樹脂コーティング層33の白金ナノコロイドの含有量は、2mg/cm以上、25mg/cm以下とする。樹脂コーティング層33中の白金ナノコロイドの含有量をこのような範囲内とすることで、効率よくオゾン分解効果が発揮される。
【0080】
白金ナノコロイドの含有量が、2mg/cm未満であれば、白金ナノコロイドのオゾン分解効果が十分に発揮されず、25mg/cmより多いと、樹脂中に白金ナノコロイドが安定に分散できず、一部凝集がみられ、樹脂によるトナー付着防止効果と、白金ナノコロイドによるオゾン分解効果を両立することが困難となる。
樹脂コーティング層33は、以下のように設けることができる。
【0081】
たとえば、1次粒子径が0.1μmのPTFE(平均分子量10000)と、1次粒子径が3nmの白金ナノ粒子を、PTFEに対して白金ナノ粒子の濃度が所定の量(2〜25mg/cm)となるように混合攪拌してコーティング液を作製し、このコーティング液をスプレー法にて塗布する。
【0082】
また、コーティング層32および樹脂コーティング層33は、感光体ドラム16とシール部材31とが接触する部分には、設けない方が好ましい。コーティング層32および樹脂コーティング層33は、白金ナノコロイドを含むことで導電性を有するため、感光体ドラム16に接触すると感光体ドラム16からの電荷のリークが生じてしまうためである。
【実施例】
【0083】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらによって限定されるものではない。
【0084】
(実施例1)
厚さ0.1mmのウレタン樹脂からなるシール部材31(バンドー化学株式会社製)に、白金ナノコロイド濃度が2000ppmの白金ナノコロイド分散液(日本板硝子株式会社製)を、コーティング層32の厚さが25nmとなるように、スプレー法により全面被覆し、乾燥機を用いて、40℃で2日間乾燥させ、実施例1のシール部材を作製した。
【0085】
(実施例2)
ウレタン樹脂の厚さを0.3mmとし、感光体ドラムと接触する部分以外に、コーティング層32の厚さが40nmとなるように被覆したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2のシール部材を作製した。
【0086】
(実施例3)
ウレタン樹脂の厚さを0.05mmとし、コーティング層32の厚さが20nmとなるように被覆した以外は、実施例1と同様にして、実施例3のシール部材を作製した。
【0087】
(実施例4)
コーティング層32の厚さを40nmとし、シール部材31の感光体ドラム16と対向する側の表面のみを被覆した以外は、実施例1と同様にして、実施例4のシール部材を作製した。
【0088】
(実施例5)
コーティング層32を一方の表面に形成し、他方の表面に、フッ素樹脂に対して白金ナノコロイドの含有量が15mg/cmとなるコーティング液をスプレー法により全面被覆して樹脂コーティング層33を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5のシール部材を作製した。
【0089】
樹脂コーティング層33を形成するためのコーティング液は、トルエン溶媒30重量部にフッ素樹脂を2重量部、白金ナノコロイド分散液を10重量部溶解、分散させた。
【0090】
(実施例6)
ウレタン樹脂の厚さを0.3mmとし、フッ素樹脂の代わりにシリコーン樹脂を用い、白金ナノコロイドの含有量が2mg/cmとなるコーティング液を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、実施例6のシール部材を作製した。
【0091】
樹脂コーティング層33を形成するためのコーティング液は、トルエン溶媒30重量部にフッ素樹脂を1.2重量部、白金ナノコロイド分散液を1.3重量部溶解、分散させた。
【0092】
(実施例7)
白金ナノコロイドの含有量が25mg/cmとなるコーティング液を用いたこと以外は、実施例6と同様にして、実施例7のシール部材を作製した。
【0093】
樹脂コーティング層33を形成するためのコーティング液は、トルエン溶媒30重量部にフッ素樹脂を1.2重量部、白金ナノコロイド分散液を26重量部溶解、分散させた。
【0094】
(実施例8)
コーティング層32の厚さを10nmとしたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例8のシール部材を作製した。
【0095】
(実施例9)
樹脂コーティング層33の厚さを50nmとし、白金ナノコロイドの含有量が30mg/cmとなるコーティング液を用いたこと以外は、実施例6と同様にして、実施例9のシール部材を作製した。
【0096】
(比較例)
コーティング層を設けず、厚さ0.1mmのウレタン樹脂からなるシール部材を比較例とした。
【0097】
(コーティング層厚さ)
シール部材31を粗切断し、エポキシ樹脂に包埋後、Reichert社製ULTRACUT−N型ミクロトームにより、50〜60nmの厚さの極薄切片を作製し、支持膜を張ったメッシュに積載した。続いて5分間程度のRuO4蒸気染色を施した後、TEMにより膜断面を観察し、コーティング層32の厚さを計測した。
【0098】
TEM観察の条件は、以下のとおりである。
・TEM :電界放出形透過電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、HF2000)
・加速電圧:125kV
【0099】
基体となるウレタン樹脂と、白金ナノコロイド、フッ素樹脂、シリコーン樹脂は、それぞれ構造が異なるため、TEM観察では異なる像が得られる。したがって、TEM観察を行うことにより、塗膜層の厚みが計測可能である。
【0100】
(連続プリントテスト)
図1に示す構成の画像形成装置を用いて、実施例1〜9および比較例の100,000(以下「100k」という)枚連続プリントテストを行った。
【0101】
連続プリントテストは、4つの画像形成ユニット1〜4のうち、画像形成ユニット1のみを用いておこなった。なお、画像形成装置の現像条件は、感光体ドラムの周速が400mm/秒、現像ローラの周速が560mm/秒、感光体ドラムと現像ローラとのギャップが0.42mm、現像ローラと規制ブレードとのギャップが0.40mmとなるように設定し、ベタ画像における紙上のトナー付着量が0.5mg/cm、非画像部におけるトナー付着量が最も少なくなるような条件に、感光体ドラムの表面電位および現像バイアスをそれぞれ調整した。試験紙として、A4サイズの電子写真用紙(マルチレシーバー、シャープドキュメントシステム株式会社製)を使用した。
【0102】
印刷したベタ画像(100%濃度)は、1辺3cmとし、100k枚印刷終了時に、非画像部でのトナーかぶりと、現像槽およびその周辺のトナー飛散を目視にて評価した。
【0103】
かぶりについては、非画像部(0%濃度)の濃度を次の手順によって算出した。白度計(日本電色工業社製:Z−Σ90 COLOR MEASURING SYSTEM)を用いて、予めプリント前の紙の白色度を測定した。次に、印刷後の用紙の非画像部における白色度を、白度計を用いて測定し、印刷前の白色度との差を求めた。この差をかぶり濃度とした。かぶりの評価基準は以下のとおりである。
【0104】
肉眼ではほとんどかぶりが確認できない状態である濃度差0.5未満を◎、かぶりが肉眼でもやや確認できる状態のである濃度差0.5以上0.8未満を〇、かぶりが肉眼で明確に確認できる濃度差0.8以上1.2未満を△、濃度差1.2以上を×とした。
【0105】
トナー飛散の評価基準は以下のとおりである。
目視でほとんど確認できない状態を○、若干の飛散は確認されるが、画像への影響がみられない状態を△、現像槽周辺への飛散によりトナーの堆積が確認され、汚れやかぶりなど画像への影響がある状態を×とした。
【0106】
【表1】

【0107】
実施例1〜7のシール部材31を用いた連続プリントテストにおいては、100k枚後もかぶり、トナー飛散が少なく、高精彩な画像が得られることが分かった。
【0108】
また、実施例8および実施例9のシール部材31を用いた連続プリントテストにおいては、多少のかぶりまたはトナー飛散はみられたものの、総合的には、問題ない画像が得られる結果となった。
【符号の説明】
【0109】
19 現像装置
24 現像ローラ
25 多極着磁部材
26 スリーブ
27 現像槽
30 開口部
31 シール部材
32 コーティング層
33 樹脂コーティング層
40 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体に形成された静電潜像を、トナーを含む現像剤によって現像する現像装置において、
前記現像剤を収容する現像槽と、
前記現像槽に収容された現像剤を担持して搬送し、前記感光体にトナーを供給する現像ローラと、
前記感光体の表面にトナーを供給するための開口部に一方端が支持され、他方端が前記感光体に当接するように設けられるシール部材とを備え、
前記シール部材の表面の少なくとも一部に、白金ナノコロイドを含むコーティング層を設けることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記シール部材は、矩形状のシート部材で構成され、前記シート部材の長手方向が前記感光体の回転軸と平行となるように設けられることを特徴とする請求項1記載の現像装置。
【請求項3】
前記コーティング層は、前記シール部材の前記感光体に対向する表面に設けられることを特徴とする請求項1または2記載の現像装置。
【請求項4】
前記コーティング層の厚さは、20nm以上50nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の現像装置。
【請求項5】
前記シール部材の表面の少なくとも一部に、白金ナノコロイドとフッ素樹脂またはシリコーン樹脂とを含む樹脂コーティング層を設けることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の現像装置。
【請求項6】
前記樹脂コーティング層に含まれる白金ナノコロイドの含有量は、2mg/cm以上25mg/cm以下であることを特徴とする請求項5記載の現像装置。
【請求項7】
前記シール部材の厚さは、0.05mm以上0.3mm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の現像装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の現像装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−176038(P2010−176038A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20997(P2009−20997)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】