説明

現像装置および画像形成装置

【課題】高湿条件下においても、トナー帯電量の低下を抑えることができ、さらに、長期に亘って現像槽の内壁へのトナー付着防止効果が得られる現像装置およびそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】トナーと磁性キャリアとを含む2成分現像剤が搬送される搬送路を備えた現像槽と、該搬送路に設けられ、前記2成分現像剤を撹拌しながら所定方向へ搬送する搬送部材とを備えた現像装置において、前記現像槽は、ポリエーテルエステルアミド成分を含む樹脂組成物で形成されていることを特徴とする現像装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に備えられ、トナーと磁性キャリアとを含む2成分現像剤を取り扱う現像装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機、プリンタおよびファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置として、像担持体(例えば感光体)の表面に静電潜像を形成し、現像装置によって前記静電潜像に対してトナーを供給して前記静電潜像を現像し、該現像によって形成されるトナー像を用紙等のシートに転写し定着させるように構成したものが知られている。
【0003】
近年、カラー化や高画質化に対応した画像形成装置では、トナーの帯電安定性に優れる2成分現像剤(以下では、単に「2成分現像剤」と称すこともある)がよく使用されている。2成分現像剤はトナーとキャリアとを主成分とし、それらを現像装置内で撹拌するとトナーとキャリアとが摩擦し、この摩擦によって適正に帯電したトナーが得られる。帯電したトナーは、2成分現像剤担持部材(例えば現像ローラ)の表面に供給される。2成分現像剤担持部材のトナーは、現像に供される際に、静電的吸引力によって、像担持体に形成されている静電潜像に移動する。これにより像担持体上にトナー像が形成される。
【0004】
このような従来の画像形成装置においては、2成分現像剤が現像装置内で攪拌や搬送される際に、キャリアとの摩擦により帯電したトナーが現像槽の内壁に静電力で付着、堆積する問題があった。例えば、現像槽の内壁に堆積したトナーは、画像形成装置の動作開始時(もしくは不定時)に突然落下して、2成分現像剤中のトナー濃度が局所的に著しく高くなることがある。このことは、トナー飛散やカブリの原因となり得る。
【0005】
現像槽の内壁にトナーが静電力で付着する問題に対して、例えば下記特許文献1においては、現像槽の内壁表面にシロキサン系界面活性剤からなる帯電防止層を設けた現像装置が開示されている。
【特許文献1】特開平7−295375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、帯電防止層を設けた現像槽を2成分現像方式の現像装置として使用すると、現像槽と2成分現像剤(特にキャリア)との摩擦により、現像槽表面の帯電防止層が剥がれ、長期間の使用によって帯電防止効果が低下するといった課題があった。
【0007】
また、現像槽を形成する樹脂中に導電性カーボンブラックを分散させることによって、現像槽の帯電を抑え、付着トナー量を減らす方法も知られているが、導電性カーボンブラックは吸湿性が高いために、前記現像槽を高湿条件下で使用すると、トナーやキャリアの電荷がリークして、トナーの帯電量が低下するといった問題があった。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑みなられたものであり、高湿条件下においても、トナー帯電量の低下を抑えることができる現像装置およびそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本発明は、長期に亘って現像槽の内壁へのトナー付着防止効果が得られる現像装置およびそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決し、前記目的を達成するため、トナーと磁性キャリアとを含む2成分現像剤が搬送される搬送路を備えた現像槽と、該搬送路に設けられ、前記2成分現像剤を撹拌しながら所定方向へ搬送する搬送部材とを備えた現像装置において、前記現像槽がポリエーテルエステルアミド成分を含む樹脂組成物で形成されていることを特徴とする現像装置を提供する。
【0011】
この発明にあっては、前記現像槽を形成する樹脂中に、吸湿性の低いポリエーテルエステルアミド成分が含まれる。このため、高湿環境下においても、トナーやキャリアからの電荷のリークを抑えることができ、これによりトナー帯電量の低下を防止できる。
【0012】
また、前記課題を解決し、前記目的を達成するための本発明に係る現像装置は、前記現像槽が、ポリエーテルエステルアミド成分を含むポリスチレン、または、ポリエーテルエステルアミド成分を含むアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体で形成されていることを特徴とする。
【0013】
この発明にあっては、ポリスチレンおよびアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体は、ポリエーテルエステルアミドとの相溶性に優れ、均一な分散が可能となる。このことから、前記現像槽に対して安定したトナー付着防止効果を与えることができる。
【0014】
また、前記課題を解決し、前記目的を達成するための本発明に係る現像装置は、前記搬送部材が、ポリエーテルエステルアミド成分を含む樹脂組成物で形成されていることを特徴とする。
【0015】
この発明にあっては、前記搬送部材を形成する樹脂中に、吸湿性の低いポリエーテルエステルアミド成分が含まれる。このため、前記搬送部材とトナーとの摩擦帯電を抑えることができるとともに、高湿環境下においても、トナーやキャリアからの電荷のリークを抑えることができ、これによりトナー帯電量の低下を防止できる。
【0016】
また、前記課題を解決し、前記目的を達成するための本発明に係る現像装置は、前記搬送部材が、ポリエーテルエステルアミド成分を含むポリスチレン、または、ポリエーテルエステルアミド成分を含むアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体で形成されていることを特徴とする。
【0017】
この発明にあっては、ポリスチレンおよびアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体は、ポリエーテルエステルアミドとの相溶性に優れ、均一な分散が可能となる。このことから、前記搬送部材に対して安定したトナー付着防止効果を与えることができる。
【0018】
また、前記課題を解決し、前記目的を達成するための本発明に係る現像装置は、前記ポリエーテルエステルアミド成分が、両末端にカルボキシル基を有する数平均分子量500〜5,000のポリアミドと数平均分子量1,600〜3,000のビスフェノール類のエチレンオキシド付加物とから誘導され、相対粘度が0.5〜4.0(0.5重量%m−クレゾール溶液、25℃)のポリエーテルエステルアミドであることを特徴とする。
【0019】
この発明にあっては、前記現像槽および/または前記搬送部材を形成する樹脂を耐熱性及び帯電防止性に優れるものにすることができる。このため、機械的強度に優れ、長期に亘って安定した帯電防止性を得ることができる。
【0020】
また、前記課題を解決し、前記目的を達成するための本発明に係る画像形成装置は、電子写真方式の画像形成装置であって、前記本発明に係る現像装置を備えた画像形成装置である。
【0021】
この発明にあっては、前記現像槽を形成する樹脂中に、吸湿性の低いポリエーテルエステルアミド成分が含まれる。このため、高湿環境下においても、トナー帯電量の低下を防止でき、これにより安定した画像を得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る現像装置および画像形成装置によれば、現像槽を形成する樹脂中に、吸湿性の低いポリエーテルエステルアミド成分が含まれるため、高湿環境下においても、トナーやキャリアからの電荷のリークを抑えることができ、これによりトナー帯電量の低下を防止できる。
【0023】
さらに、本発明に係る現像装置および画像形成装置によれば、前記現像槽を、ポリエーテルエステルアミド成分を含むポリスチレン、または、ポリエーテルエステルアミド成分を含むアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体で形成することで、長期に亘って現像槽の内壁へのトナー付着防止効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の一実施形態に係る現像装置を以下に説明するが、まず、その現像装置を説明する前に、その現像装置が備えられている画像形成装置について説明する。
【0025】
(画像形成装置の全体構成)
図1は、本実施の形態に係る現像装置2を備えた画像形成装置100の内部構成を示す模式図である。
【0026】
図1に示す画像形成装置100は、本実施の形態では、電子写真方式のプリンタとされており、外部から伝達される画像データに応じて、記録用紙や記録媒体等の所定のシートに多色または単色の画像を形成するものである。なお、画像形成装置100の上方に原稿の画像を読み取る原稿読取装置(例えば、スキャナー)を備えてもよい。
【0027】
図1に示す画像形成装置100では、黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)および黄(Y)の色成分毎の画像データが取り扱われ、黒画像、シアン画像、マゼンタ画像、黄画像が形成されて各々の色成分の画像を重畳することによってカラー画像が形成されるようになっている。
【0028】
詳しくは、この画像形成装置100においては、各色成分の画像が形成されるように、現像装置2(2a,2b,2c,2d)、像担持体(ここでは感光体ドラム)3(3a,3b,3c,3d)、帯電器5(5a,5b,5c,5d)、クリーナユニット4(4a,4b,4c,3d)がそれぞれ設けられている。なお、前記した符号のうち末尾a〜dについては、aが黒画像形成用の部材、bがシアン画像形成用の部材、cがマゼンタ画像形成用の部材、dが黄画像形成用の部材であることを示している。以下の説明では、末尾a〜dを省略することがある。
【0029】
画像形成装置100には、現像装置2と感光体ドラム3と帯電器5とクリーナユニット4とを1つずつ含む4つの画像形成ステーション(画像形成部)が4色の色成分に対応してそれぞれ設けられている。また、画像形成装置100には、露光ユニット1、定着ユニット12、シート搬送路S、給紙トレイ10、手差しトレイ20および排紙トレイ15がさらに備えられている。
【0030】
帯電器5は、感光体ドラム3の表面を所定の電位に均一に帯電させるものである。帯電器5としては、図1に示すような接触ローラ型の帯電器の他、接触ブラシ型の帯電器、或いは非接触チャージャー型の帯電器などが使用されることもある。
【0031】
露光ユニット1は、帯電された感光体ドラム3の表面を、入力された画像データに応じて露光することにより、該感光体ドラム3の表面に画像データに応じた静電潜像を形成する機能を有するものである。詳しくは、露光ユニット1は、図1に示すように、レーザ照射部1aおよび反射ミラー1bを備えたレーザスキャニングユニット(LSU)とされている。但し、レーザスキャニングユニット以外に、ELやLED等の発光素子をアレイ状に並べた書込みユニット(例えば、書込みヘッドを含むもの)を露光ユニット1とすることもできる。
【0032】
現像装置2(2a,2b,2c,2d)は、それぞれ、感光体ドラム3(3a,3b,3c,3d)上に形成された静電潜像を4色(K,C,M,Y)のトナー(粉体状のトナー)により顕像化(現像)するものである。現像装置2(2a,2b,2c,2d)は、トナー収容槽101(101a、101b、101c、101d)、トナー移送機構102(102a、102b、102c、102d)、現像槽111(111a、111b、111c、111d)を備えている。トナー収容槽(以下、トナーホッパーという)101は、現像槽111よりも上方に配され、未使用トナーを貯蔵する。現像装置2は、トナーホッパー101から現像槽111へトナー移送機構102を介してトナーが供給されるようになっている。この現像装置2については、のちほど詳しく説明する。
【0033】
クリーナユニット4は、現像および画像転写工程後に感光体ドラム3の表面に残留しているトナーを除去し、回収するものである。
【0034】
感光体ドラム3(3a,3b,3c,3d)の上方には中間転写ベルトユニット8が配置されている。この中間転写ベルトユニット8は、中間転写ローラ6(6a,6b,6c,6d)、中間転写ベルト7、中間転写ベルト駆動ローラ71、中間転写ベルト従動ローラ72、中間転写ベルトテンション機構73、および中間転写ベルトクリーニングユニット9を備えている。
【0035】
中間転写ローラ6、中間転写ベルト駆動ローラ71、中間転写ベルト従動ローラ72、中間転写ベルトテンション機構73は、中間転写ベルト7を張架し、回転駆動されることにより図1の矢印B方向に中間転写ベルト7を回転(表面移動)させるようになっている。
【0036】
中間転写ローラ6は、中間転写ベルト7の内側に設けられており、中間転写ベルトユニット8の中間転写ベルトテンション機構73における中間転写ローラ取付部に回転可能に支持されている。中間転写ローラ6には感光体ドラム3のトナー像を中間転写ベルト7上に転写するための転写バイアスが印加されるようになっている。
【0037】
中間転写ベルト7は、各感光体ドラム3(3a,3b,3c,3d)に接触するように設けられている。中間転写ベルト7上には、感光体ドラム3に形成された各色成分のトナー像が順次重ねて転写されることにより、カラーのトナー像(多色トナー像)を形成するように構成されている。中間転写ベルト7は、厚さが例えば100μm〜150μm程度のフィルムを用いて無端状に形成されている。
【0038】
感光体ドラム3から中間転写ベルト7へのトナー像の転写は、中間転写ベルト7の裏側(すなわち、中間転写ベルト7の感光体ドラム3とは反対側)に接触している中間転写ローラ6によって行われる。中間転写ローラ6には、トナー像を中間転写ベルト7に転写するために高電圧の転写バイアス、すなわち、トナーの帯電極性(例えばマイナス電極)とは逆極性(例えばプラス電極)の高電圧が印加される。
【0039】
中間転写ローラ6は、直径が例えば8mm〜10mmの金属(より具体的にはステンレススチール)からなる回転軸をベースとして形成され、その表面が導電性の弾性材(例えばEPDM、発泡ウレタン等の材料からなるもの)により覆われたローラとされている。この導電性の弾性材により、中間転写ローラ6は中間転写ベルト7に対して均一に高電圧を印加できるようになっている。本実施の形態では、転写電極としてローラ形状のもの(中間転写ローラ6)を使用しているが、それに限定されるものではなく、ブラシ形状のものなども用いることも可能である。
【0040】
前述したように各感光体ドラム3(3a,3b,3c,3d)上の静電潜像は、それぞれ、対応する色成分に応じたトナーにより顕像化されてそれぞれトナー像となり、これらトナー像は中間転写ベルト7上に重ね合わされて積層される。このように積層された各色のトナー像は、中間転写ベルト7の回転(表面移動)によって、シート搬送路Sを搬送されてきたシートと中間転写ベルト7との接触位置(転写部)に移動し、この位置に配置されているシート転写用転写ローラ11によってシート上に転写される。この場合、中間転写ベルト7と転写ローラ11とは所定ニップで互いに圧接されるとともに、転写ローラ11にはトナー像を用紙に転写させるための転写バイアスが印加される。この転写バイアスは、トナーの帯電極性(例えばマイナス電極)とは逆極性(例えばプラス電極)の高電圧である。
【0041】
前記ニップを定常的に得るために、転写ローラ11もしくは中間転写ベルト駆動ローラ71の何れか一方は金属等の硬質材料から形成されたものとし、他方は弾性ローラ等の軟質材料(弾性ゴムローラまたは発泡性樹脂ローラ等)から形成されたものとすることができる。
【0042】
ところで、中間転写ベルト7と感光体ドラム3との接触により中間転写ベルト7に付着したトナー、および中間転写ベルト7からシートへのトナー像の転写の際に転写されずに中間転写ベルト7上に残存したトナーは、次工程でトナーの混色を発生させる原因となる。
【0043】
このため、中間転写ベルトクリーニングユニット9は、該残存トナーが除去され回収されるように構成されている。例えば、中間転写ベルトクリーニングユニット9には、クリーニング部材として中間転写ベルト7に接触するクリーニングブレード91が備えられている。中間転写ベルト7におけるクリーニングブレード91に接触している部分は、裏側(すなわち、中間転写ベルト7のクリーニングブレード91とは反対側)から中間転写ベルト従動ローラ72にて支持されている。
【0044】
給紙トレイ10は、画像形成に使用するシートを予め収納しておくためのものであり、画像形成部および露光ユニット1の下側に設けられている。一方、排紙トレイ15は、画像形成装置100の上部に設けられており、印刷済みのシートをフェイスダウンで載置するためのものである。また、手差しトレイ20は、少数枚の印字を行う場合等に使用されるものである。
【0045】
また、画像形成装置100には、給紙トレイ10のシートおよび手差しトレイ20のシートを転写部や定着ユニット12を経由させて排紙トレイ15に案内するためのシート搬送路Sが設けられている。なお、転写部は中間転写ベルト駆動ローラ71と転写ローラ11との間に位置する。
【0046】
さらに、シート搬送路Sには、前記した転写ローラ11、定着ユニット12に加え、ピックアップローラ16(16a,16b)、レジストローラ14、搬送ローラ25(25a〜25h)が配設されている。
【0047】
搬送ローラ25a〜25hは、例えば、シートの搬送を促進・補助するための小型のローラとされており、シート搬送路Sに沿って設けられている。ピックアップローラ16aは、給紙トレイ10のシート搬送方向下流側端部に備えられ、給紙トレイ10からシートを1枚ずつシート搬送路Sに供給する呼び込みローラである。ピックアップローラ16bは、手差しトレイ20の近傍に備えられ、手差しトレイ20からシートを1枚ずつシート搬送路Sに供給する呼び込みローラである。また、レジストローラ14は、シート搬送路Sを搬送されているシートを一旦保持し、中間転写ベルト7上のトナー像の先端とシートの先端とを合わせるタイミングでシートを転写部に搬送するものである。
【0048】
定着ユニット12は、ヒートローラ81および加圧ローラ82を備え、これらヒートローラ81および加圧ローラ82はシートを挟んで回転するようになっている。ヒートローラ81は、少なくとも定着動作が行われる際に、所定の定着温度となるように制御部(図示せず)によって温度制御される。この制御部は温度検出器(図示せず)からの検出信号に基づいてヒートローラ81の温度を制御するように構成されている。ヒートローラ81は、加圧ローラ82とともにシートを熱圧着することにより、シートに転写されている各色トナー像を溶融・混合・圧接させ、シートに対して熱定着させるものである。なお、多色トナー像(各色トナー像)が定着されて搬送ローラ25b,25cにてシート搬送路Sを通過したシートは、該多色トナーを下側に向けた状態で排紙トレイ15上に排出される。また、両面印字を行う場合には、多色トナー像(各色トナー像)が定着されたシートは、排紙トレイ15上へ排出される前に搬送ローラ(排出ローラ)25cで前後が逆になるように反転搬送され、シート搬送路Sの反転排紙経路を経て、搬送ローラ25g,25hで再びレジストローラ14のシート搬送方向上流側に搬送される。
【0049】
次に、シート搬送路Sによるシート搬送動作について説明する。画像形成装置100では、印字動作を行うにあたり、予めシートを収納する給紙トレイ10、または少数枚の印字を行う場合等に使用される手差しトレイ20にそれぞれ配置されたピックアップローラ16a,16bによってトレイ10またはトレイ20の最上位のシートを1枚ずつシート搬送路Sに供給する。
【0050】
そして、片面印字の場合には、先ず、給紙トレイ10から搬送されるシートが、シート搬送路S中の搬送ローラ25aによってレジストローラ14まで搬送され、レジストローラ14によって中間転写ベルト7上の積層されたトナー像と同期をとって転写部に搬送される。転写部ではシート上にトナー像が転写され、さらに、このトナー像が定着ユニット12にてシート上に定着される。次いで、シートは、搬送ローラ25bを経て搬送ローラ(排出ローラ)25cから排紙トレイ15上に排出される。また、手差しトレイ20から搬送されるシートは、複数の搬送ローラ25(25f,25e,25d)によってレジストローラ14まで搬送される。それ以降は給紙トレイ10から供給されるシートと同様の経過を経て排紙トレイ15に排出される。
【0051】
一方、両面印字の場合には、前記したように片面印字が終了し、定着ユニット12を通過したシートは、後端が排出ローラ25cにてチャックされる。次に、シートは、排出ローラ25cが逆回転することによって搬送ローラ25g,25hに導かれ、レジストローラ14を経て裏面印字が行われた後に、排紙トレイ15に排出される。
【0052】
(現像装置の構成)
次に、画像形成装置100に備えられる現像装置2の詳細について説明する。図2は、本発明の実施形態に係る現像装置2の概略断面図である。図3は、図2に示す現像装置2の(A−A’)矢指図であり、図4は、図2に示す現像装置2の(B−B’)矢指図である。
【0053】
図2および図1に示すように、現像装置2は、感光体ドラム3と対向するように配置された2成分現像剤担持部材(ここでは現像ローラ)114を有し、現像ローラ114の外周部にローラ軸回りに回転自在に設けられた現像スリーブ114aの回転によって該現像スリーブ114a表面に担持される図示しない2成分現像剤中のトナーを感光体ドラム3の表面に供給して、感光体ドラム3の表面に形成された静電潜像を顕像化(現像)するようになっている。
【0054】
図2から図4に示すように、現像装置2は、本実施の形態では、前記した現像ローラ114、現像槽111の他、トナー補給口117を有する現像槽カバー115、層厚規制用ブレード116、第1搬送部材112a、第2搬送部材112bおよび仕切り壁(ここでは仕切り板)113を備えている。
【0055】
現像槽111は、トナーおよび磁性キャリアを主成分とする2成分現像剤を収容する槽である。この現像槽111には、現像ローラ114、第1搬送部材112a、第2搬送部材112bが配設されている。なお、本実施形態のキャリアは、磁性を有する磁性キャリアとされている。
【0056】
現像ローラ114は、現像スリーブ114a内に複数の磁極を有する固定マグネットローラ(図示省略)を内包するようになっている。この固定マグネットローラは、ローラ軸方向に沿って延びる棒状のマグネット(図示省略)を備えている。そして、現像ローラ114は、現像槽111に収容される2成分現像剤を現像スリーブ114aの表面に汲み上げて担持し、該表面に担持している2成分現像剤に含まれるトナーを感光体ドラム3に供給するようになっている。また、現像ローラ114の表面の感光体ドラム3と対向する現像領域を基準にしてローラ回転方向(図2中B方向)上流側には層厚規制用ブレード(以下、ドクターブレードという)116が配されている。
【0057】
本実施の形態では、図2に示すように、現像槽111の上側に設けられた現像槽カバー115は、現像槽111に対して着脱可能とされている。この現像槽カバー115には、現像槽111に未使用のトナーを補給するためのトナー補給口117が形成されている。なお、図3に示すように、トナー補給口117より、第1搬送部材112aの回転方向A上流側には電磁石118が備えられている。
【0058】
そして、現像装置2は、図1に示すトナーホッパー101のトナーがトナー移送機構102およびトナー補給口117を介して現像槽111に移送され、これにより現像槽111にトナーが補給されるようになっている。
【0059】
さらに、本実施の形態では、第1搬送部材112aおよび第2搬送部材112bは、図2から図4に示すように、現像槽111において2成分現像剤を撹拌および搬送するための螺旋状の搬送羽根112a’,112b’を有するスクリューオーガとされており、モータ等の駆動手段(図示せず)によって回転軸112a”,112b”が軸線回りに回転駆動されることで、2成分現像剤を撹拌すると共に回転軸方向に沿って搬送するようになっている。
【0060】
また、第1搬送部材112aおよび第2搬送部材112bは、互いの周面同士が仕切り板113を介して対向するように且つ互いの軸同士が平行になるように並設され、互いに逆方向に回転するように設定されている。そして、第1搬送部材112aは、軸方向(回転軸方向)に沿う一方側(図3に示すX方向)に2成分現像剤を搬送し、第2搬送部材112bは、軸方向(回転軸方向)に沿う他方側(図3に示すX方向とは逆のY方向)に2成分現像剤を搬送するように設定されている。
【0061】
現像槽111には、第1搬送部材112aと第2搬送部材112bとの間に仕切り板113が配設されている。仕切り板113は、第1および第2搬送部材112a,112bの各軸方向(各回転軸方向)に平行に延設されている。現像槽111の内側は、図3に示すように、仕切り板113によって、第1搬送部材112aが配されている第1搬送路Pと、第2搬送部材112bが配されている第2搬送路Qとに区画されている。
【0062】
仕切り板113は、第1搬送部材112aおよび第2搬送部材112bの各軸方向の両端部において、現像槽111の内側の壁面から離間して配置されている(図3参照)。これにより、現像槽111には、第1搬送部材112aおよび第2搬送部材112bの各軸方向の両端部付近において、第1搬送路Pと第2搬送路Qとを連通する連通路が形成されている。以下の説明では、X方向下流側に形成されている連通路を第1連通路a、Y方向下流側に形成されている連通路を第2連通路bと称する。
【0063】
また、本実施の形態では、トナー補給口117は、図3に示すように、平面から視て、第1搬送路P内の領域に対応する位置であって且つ第2連通路bよりもX方向下流側に対応する位置に形成されている。かかる構成によれば、第1搬送路Pにおいて、第2連通路bよりもX方向下流側でトナーを補給することができる。
【0064】
以上説明した現像装置2では、現像動作を行うにあたり、現像槽111において、第1搬送部材112aおよび第2搬送部材112bは、モータ等の駆動手段(図示せず)によって回転駆動し、2成分現像剤を搬送する。具体的には、現像槽111内に収容される2成分現像剤は、第1搬送路Pにおいて、第1搬送部材112aによって撹拌されながらX方向へ搬送され、第1連通路aに到達する。第1連通路aに到達した2成分現像剤は、第1連通路aを通過して第2搬送路Qへ搬送され、さらに、第2搬送路Qにおいて、第2搬送部材112bによって、撹拌されながらY方向へ搬送され、第2連通路bに到達する。そして、第2連通路bに到達した2成分現像剤は、第2連通路bを通過して再び第1搬送路Pへ搬送される。こうして、第1搬送部材112aと第2搬送部材112bとは、仕切り板113を間にして2成分現像剤を互いに逆方向に撹拌しながら搬送している。
【0065】
このようにして、2成分現像剤は、現像槽111において、第1搬送路Pと第1連通路aと第2搬送路Qと第2連通路bとをこの順序にて循環移動する。そして、2成分現像剤は、第2搬送路Qで搬送されている間に、現像ローラ114の現像スリーブ114aの回転にてその表面に担持されて汲み上げられ、汲み上げられた2成分現像剤中のトナーが感光体ドラム3へと移動し、これにより現像に供されて順次消費されていく。
【0066】
一方、このように消費されるトナーを補うべく、未使用のトナーがトナー補給口117から第1搬送路Pへ補給される。補給されたトナーは第1搬送路Pにおいて従前より存在する2成分現像剤と混合撹拌される。
【0067】
<樹脂組成物>
本発明に係る現像装置に備えられる現像槽あるいは搬送部材に使用される樹脂組成物は、ポリエーテルエステルアミドを熱可塑性樹脂とともに、押し出し機、ブラベンダー、ニーダーおよびバンバリーミキサー等の各種混合機を用いて混練することによって得ることができる。混練方法については特に限定されるものではないが、マスターバッチまたはマスターペレットと言われる方法が、分散性良く、永久帯電防止性、機械的強度に優れることから好ましい。
【0068】
<ポリエーテルエステルアミド>
本発明に係る現像装置に適用できる樹脂組成物に使用されるポリエーテルエステルアミド(A)としては、例えば、特開平7−10989号公報に記載のポリエーテルエステルアミド、すなわち、両末端にカルボキシル基を有する数平均分子量500〜5,000のポリアミド(a1)と、数平均分子量1,600〜3,000のビスフェノール類のエチレンオキシド付加物(a2)から誘導され、相対粘度が0.5〜4.0(0.5重量%m−クレゾール溶液、25℃)であるポリエーテルエステルアミド(A);並びに該(A)5〜40重量部と、熱可塑性樹脂(B)95〜60重量部とからなる樹脂組成物;並びに該(A)とアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属のハロゲン化物(D)からなり、(A)と(D)および必要により(B)および/または(C)の合計重量に対して0.01重量%〜5重量%の(D)を含む樹脂組成物を使用できる。
【0069】
両末端にカルボキシル基を有するポリアミド(a1)は、(1)ラクタム開環重合体、(2)アミノカルボン酸の重縮合体もしくは(3)ジカルボン酸とジアミンの重縮合体である。
【0070】
(1)のラクタムとしては、カプロラクタム、エナントラクタム、ラウロラクタム、ウンデカノラクタム等を挙げることができる。(2)のアミノカルボン酸としては、ω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナント酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノペルゴン酸、ω−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等を挙げることができる。(3)のジカルボン酸としては、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジ酸、ドデカンジ酸、イソフタル酸等を挙げることができ、またジアミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン等を挙げることができる。前記アミド形成性モノマーとして例示したものは2種以上を併用してもよい。これらのうち好ましいものは、カプロラクタム、12−アミノドデカン酸およびアジピン酸−ヘキサメチレンジアミンであり、特に好ましいものはカプロラクタムである。
【0071】
(a1)は、炭素数4〜20のジカルボン酸成分を分子量調整剤として使用し、これの存在下に前記アミド形成性モノマーを常法により開環重合あるいは重縮合させることによって得ることができる。炭素数4〜20のジカルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジ酸、ドデカンジ酸等の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキシル−4,4−ジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;3−スルホイソフタル酸ナトリウム、3−スルホイソフタル酸カリウム等の3−スルホイソフタル酸アルカリ金属塩などを挙げることができる。これらのうち好ましいものは脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸および3−スルホイソフタル酸アルカリ金属塩であり、特に好ましいものはアジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸および3−スルホイソフタル酸ナトリウムである。
【0072】
前記(a1)の数平均分子量は、通常500〜5,000、好ましくは500〜3,000である。数平均分子量が500未満ではポリエーテルエステルアミド自体の耐熱性が低下し、5,000を超えると反応性が低下するためポリエーテルエステルアミド製造時に多大な時間を要する。
【0073】
ビスフェノール類のエチレンオキシド付加物(a2)のビスフェノール類としては、ビスフェノールA(4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパン)、ビスフェノールF(4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン)、ビスフェノールS(4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン)および4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタン等を挙げることができ、これらのうちビスフェノールAが好ましい。(a2)はこれらのビスフェノール類にエチレンオキシドを常法により付加させることにより得ることができる。また、エチレンオキシドと共に他のアルキレンオキシド(プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、1,4−ブチレンオキシド等)を併用することもできるが、他のアルキレンオキシドの量はエチレンオキシドの量に基づいて通常10重量%以下である。
【0074】
前記(a2)の数平均分子量は、通常1,600〜3,000であり、特にエチレンオキシド付加モル数が32〜60のものを使用することが好ましい。数平均分子量が1,600未満では、帯電防止性が不十分となり、3,000を超えると反応性が低下するためポリエーテルエステルアミド製造時に多大な時間を要する。
【0075】
(a2)は、前記(a1)と(a2)との合計重量に基づいて20重量%〜80重量%の範囲で用いることができる。(a2)の量が20重量%未満ではポリエーテルエステルアミド(A)の帯電防止性が劣り、80重量%を超えると(A)の耐熱性が低下するために好ましくない。
【0076】
<ポリエーテルエステルアミドの製法>
ポリエーテルエステルアミド(A)の製法としては、次の第1製法または第2製法を例示できるが、それに限定されるものではない。
【0077】
第1製法:アミド形成性モノマーおよびジカルボン酸を反応させて(a1)を形成せしめ、これに(a2)を加えて、高温、減圧下で重合反応を行う方法。
【0078】
第2製法:アミド形成性モノマーおよびジカルボン酸と(a2)を同時に反応槽に仕込み、水の存在下または非存在下に、高温で加圧反応させることによって中間体として(a1)を生成させ、その後減圧下で(a1)と(a2)との重合反応を行う方法。
【0079】
また、前記の重合反応には、公知のエステル化触媒が通常使用される。該触媒としては、例えば三酸化アンチモンなどのアンチモン系触媒、モノブチルスズオキシドなどのスズ系触媒、テトラブチルチタネートなどのチタン系触媒、テトラブチルジルコネートなどのジルコニウム系触媒、酢酸亜鉛などの酢酸金属塩系触媒などを挙げることができる。触媒の使用量は、(a1)と(a2)との合計重量に対して通常0.1重量%〜5重量%である。
【0080】
(A)の相対粘度は通常0.5〜4.0(0.5重量%m−クレゾール溶液、25℃)、好ましくは0.6〜3.0である。相対粘度が0.5未満では耐熱性が悪く、4.0を超えると成形性が低下する。
【0081】
<熱可塑性樹脂>
本発明に係る現像装置に適用できる樹脂組成物において熱可塑性樹脂(B)としては、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、スチレン/アクリロニトリル共重合体(SAN樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン共重合体(MBS樹脂)およびスチレン/メタクリル酸メチル/アクリロニトリル共重合体等の熱可塑性樹脂が使用できるが、中でも、ポリスチレンとアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)が、耐熱性に優れ、相溶性が良く機械的強度が高いので好ましい。
【0082】
本発明に係る現像装置に適用できる樹脂組成物において、(A)と(B)との重量比は、通常(5〜40):(95〜60)、好ましくは(10〜35):(90〜65)である。(A)の比率が5未満では帯電防止効果が不十分となり、40を超えると樹脂物性を阻害することがある。
【0083】
本発明に係る現像装置に適用できる樹脂組成物において、(A)と(B)との相溶性を更に良くする目的でカルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基およびポリアルキレンオキシド基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する変性ビニル系重合体(C)を含有させても良い。該(C)としては、例えば特開平3−258850号公報に記載の重合体を挙げることができる。また、例えば特開平6−345927号公報に記載のスルホン酸(塩)基を有する変性ビニル系重合体、ポリオレフィン部分と芳香族ビニル系重合体部分を有するブロック重合体なども使用できる。
【0084】
(C)の使用量は、(A)と(B)との合計重量に対して通常0.1重量%〜15重量%、好ましくは1重量%〜10重量%である。(C)の量が0.1重量%未満では十分な相溶性向上効果が十分発現せず、15重量%を超えると樹脂物性が低下する。
【0085】
帯電防止効果を更に向上させる目的で、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる金属塩(D)を含有させてもよい。該(D)としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化マグネシウムなどを挙げることができる。これらのうち特に好ましいものは、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムである。(D)の使用量は、(A)、(B)および(C)の合計重量に対して通常0.01重量%〜5重量%、好ましくは0.05重量%〜3重量%である。0.01重量%未満では効果が発現せず、5重量%を超えると樹脂表面に析出し樹脂の外観を損ねる。
【0086】
(D)を添加する方法については特に限定はないが、組成物中へ効果的に分散させるためには、ポリエーテルエステルアミド(A)中に予め分散させておくことが好ましい。(A)中へ(D)を分散させる場合、(A)の重合時に(D)を予め添加し分散させる方法が特に好ましい。
【0087】
本発明に係る現像装置に適用できる樹脂組成物に非イオン性、アニオン性、カチオン性もしくは両性の界面活性剤を含有させ、帯電防止性を一層向上させてもよい。これらのうち好ましいものはアニオン性界面活性剤であり、特に好ましいものはアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩である。
【実施例】
【0088】
<実施例の現像槽>
(工程1)
3Lステンレス製オートクレーブに、ε−カプロラクタム105部(重量部、以下同じ)、アジピン酸17.1部、「イルガノックス(登録商標)1010」(酸化防止剤、チバガイギー社製)0.3部および水6部を仕込み、窒素置換後、220℃で加圧密閉下4時間加熱攪拌し、両末端にカルボキシル基を有する数平均分子量1,000、酸価110のポリアミドオリゴマーを117部得た。次に数平均分子量2,000のビスフェノールAエチレンオキサイド付加物225部および酢酸ジルコニル0.5部を加え、245℃、1mmHg以下の減圧下の条件で5時間重合し、粘稠なポリマーを得た。このポリマーをベルト上にストランド状で取り出し、ペレタイズして、ポリエーテルエステルアミドを得た。このものの相対粘度は2.15(0.5重量%m−クレゾール溶液、25℃)であった。
【0089】
ε−カプロラクタムの残基 28.5重量%
ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物の残基 67.0重量%
アジピン酸の残基 4.5重量%
(工程2)
次に、ポリブタジエンラテックス40部の存在下でメタクリル酸メチル72重量%、スチレン24重量%、2−ヒドロキシエチルメタクリレート4重量%からなる単量体混合物60部を乳化重合した。得られたグラフト共重合体ラテックスを、硫酸で凝固し苛性ソーダで中和、洗浄、濾過、乾燥し、変性ビニル系重合体を得た。
【0090】
(工程3)
次に、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)45重量部に、前記工程1で得られたポリエーテルエステルアミド45重量部と、前記工程2で得られた変性ビニル系樹脂10重量部を加え、ヘンシェルミキサにて3分間ブレンドした後、ベント付き2軸押出機にて、240℃、30rpm、滞留時間5分の条件で溶融混練してマスターバッチを得た。
【0091】
(工程4)
前記工程3で得られたマスターバッチ100重量部に、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)150重量部を加え、ヘンシェルミキサにて3分間ブレンドした後、ベント付き2軸押出機にて、240℃、30rpm、滞留時間5分の条件で溶融混練して得られた樹脂組成物を射出成型により成型することにより、本実施例の現像槽を製造した。
【0092】
<比較例1の現像槽>
前記した樹脂組成物の代わりに、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)を、射出成型により成型することにより、比較例1の現像槽を製造した。
【0093】
<比較例2の現像槽>
前記した樹脂組成物の代わりに、カーボンブラック10重量部を、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)100重量部を加え、ヘンシェルミキサにて3分間ブレンドした後、ベント付き2軸押出機にて、240℃、30rpm、滞留時間5分の条件で溶融混練して得られた樹脂組成物を、射出成型により成型することにより、比較例2の現像槽を製造した。
【0094】
<コートキャリア>
実施例および比較例で製造した現像槽に収容する現像剤のキャリアを、次に示す方法により作製した。
【0095】
フェライト原料として、酸化鉄50mol%、酸化マンガン35mol%、酸化マグネシウム14.5mol%、および酸化ストロンチウム0.5mol%(KDK社製)をボールミルで4時間粉砕し、得られたスラリーをスプレードライヤーにて乾燥し、得られた真球状の粒子をロータリーキルンにて930℃で2時間仮焼した。得られた仮焼粉を、湿式粉砕機(粉砕媒体としてスチールボール使用)により平均粒子径2μm以下にまで微粉砕した。このスラリーにPVA(ポリビニルアルコール)を2重量%添加し、スプレードライヤーにより造粒、乾燥し、電気炉にて、温度1100℃、酸素濃度0体積%で4時間、本焼成を行った。その後、解砕、分級を行うことによって、体積平均粒子径が38μm、体積抵抗率が1×109Ω・cmのフェライト成分からなるコア粒子を得た。
【0096】
次に、コア粒子を被覆するコート層形成ための被覆用塗液は、シリコーン樹脂(東芝シリコン社製)100重量部をトルエン1000重量部に溶解することで調製した。調製した被覆用塗液を、スプレー被覆装置によりフェライト成分からなるコア粒子に被覆した。この後、トルエンを完全に蒸発除去することでコートキャリアを作製した。コートキャリアは、体積平均粒子径が40μm、コート層の被覆率100%、体積抵抗率が2×1011Ω・cmであった。
【0097】
<トナー>
実施例および比較例で製造した現像槽に収容する現像剤のトナーを、以下に示す方法で作製した。
【0098】
トナー材料を下記する。
【0099】
・バインダー樹脂(ビスフェノールAプロピレンオキサイド、テレフタル酸又は無水トリメリット酸を単量体として重縮合して得られるポリエステル樹脂:ガラス転移温度60℃、軟化温度115℃:藤倉化成工業社製)
100重量部
・着色剤(C.I.ピグメント・ブルー15:3) 5重量部
・帯電制御剤(ホウ素化合物:日本カーリット社製LR−147)
2重量部
・離型剤(マイクロクリスタリンワックス:日本精鑞社製HNP−9)
3重量部
以上のトナー材料をヘンシェルミキサにて10分間混合した後、混練分散処理装置(三井鉱山社製:ニーディックスMOS140−800)で溶融混練分散処理した。その混練物をカッティングミルで粗粉砕した後、ジェット式粉砕機(日本ニューマチック工業社製:IDS−2型)によって微粉砕した。この微粉砕物を、風力分級機(日本ニューマチック工業社製:MP−250型)を用いて分級することによって、体積平均粒径が6.5μmの着色樹脂粒子を得た。
【0100】
得られた着色樹脂粒子100重量部に、個数平均粒径が7nmのヘキサメチルジシラザンで表面を処理したシリカ粒子(デグサ社製)1重量部を加えて、攪拌羽根の先端速度を15m/秒に設定した気流混合機(三井鉱山社製:ヘンシェルミキサ)で2分間攪拌することによって負帯電性のトナーを作製した。
【0101】
<二成分現像剤>
こうして得られたトナーおよびコートキャリアについて、トナー6重量部とコートキャリア94重量部とをナウタ(登録商標)ミキサ(商品名:VL−0、ホソカワミクロン社製)に投入し、20分間攪拌混合することによって二成分現像剤を作製した。
【0102】
<画像評価>
作製した実施例および比較例の現像槽を用いて、温度20℃、湿度65%の環境条件下、並びに、温度35℃、湿度85%の高湿環境下で5K(5000)枚連続プリントテストを行った。試験用の画像形成装置として、図1に示す画像形成装置を使用し、現像条件として、感光体の周速を400mm/秒、現像ローラの周速560mm/秒、感光体と現像ローラのギャップを0.42mm、現像ローラと規制ブレードのギャップを0.5mmとなるように設定し、ベタ画像(100%濃度)における紙上のトナー付着量が0.5mg/cm2、非画像部におけるトナー付着量が最も少なくなる条件に、感光体の表面電位および現像バイアスをそれぞれ調整した。試験紙として、A4サイズの電子写真用紙(マルチレシーバー:シャープドキュメントシステム社製)を使用した。
【0103】
紙の上に記録されるプリント画像のカバレージ(画像比率)が6%となるテキスト画像のプリントテストをそれぞれ5K(5000)枚行った。
【0104】
画像評価は、トナー帯電量、画像濃度、カブリ濃度を測定することで行った。これら各値の測定法を下記する。
【0105】
トナー帯電量は、吸引式小型帯電量測定装置(トレックジャパン社製:210HS−2A)を用いて測定した。
【0106】
画像濃度については、次のように評価した。すなわち、一辺が3cmのベタ画像(100%濃度)をプリントし、プリント部分の画像濃度を反射濃度計(マクベス社製:RD918)を用いて測定した。画像濃度が1.35以上(紙の繊維がトナーで完全に覆われた状態)を良好とし、1.25以上1.35未満を良、1.25未満(紙の繊維がトナーで不完全に覆われた状態)を不良とした。
【0107】
カブリ濃度については、非画像部(0%濃度)の濃度を次の手順により算出した。すなわち、白度計(日本電色工業社製:Z−Σ90 COLOR MEASURING SYSTEM)を用いて、予めプリント前の紙の白色度を測定しておき、プリント後の紙の非画像部における白色度を、白度計を用いて測定し、プリント前の白色度との差を求めた。この差をカブリ濃度とした。この操作を1枚のプリント画像において上下左右均等に12点、計10枚のプリント画像について測定し、カブリ濃度の最大値を求めた。
【0108】
カブリ濃度が0.5未満(肉眼ではカブリがほとんど見えない状態)を良好、0.5以上0.8未満を良、0.8以上(肉眼ではカブリが明確に見える状態)を不良とした。
【0109】
<結果>
プリントテストの結果を表1に示す。
【0110】
【表1】

実施例1に示すように、ポリエーテルエステルアミド成分を含む現像槽を用いた連続プリントテストにおいては、20℃65%の環境条件下、並びに、35℃85%の高湿環境下において、トナーの帯電量は安定しており、画像濃度が高く、カブリのない画像が得られた。
【0111】
よって、吸湿性の低いポリエーテルエステルアミド成分が含まれる樹脂で形成した現像槽を用いることで、高湿環境下においても、トナー帯電量の低下を防止でき、安定した画像を得ることができることが分かった。
【0112】
これに対し、比較例1に示すように、ポリエーテルエステルアミド成分を含まない樹脂組成物で成型した現像槽を用いた連続プリントテストにおいては、20℃65%の環境条件下において、現像槽内にトナーの付着が見られ、カブリ濃度不良が発生した。
【0113】
また、比較例2に示すように、カーボンブラックを含む樹脂組成物で成型した現像槽を用いた連続プリントテストにおいては、35℃85%の高湿環境下において、トナーの帯電量の低下が見られ、カブリ濃度不良が発生した。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の現像装置および画像形成装置は、電子写真方式の複合機,複写機,プリンタ,ファクシミリに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の実施形態に係る現像装置を備えた画像形成装置の内部構成を示す模式図である。
【図2】図1の画像形成装置における現像装置2の概略断面図である。
【図3】図2に示す現像装置2の(A−A’)矢指図である。
【図4】図2に示す現像装置2の(B−B’)矢指図である。
【符号の説明】
【0116】
2 現像装置
100 画像形成装置
111 現像槽
112a 第1搬送部材
112b 第2搬送部材
113 仕切り部材
114 現像ローラ(2成分現像剤担持部材の一例)
115 現像槽カバー
116 層厚規制用ブレード
117 トナー補給口
a 第1連通路
b 第2連通路
P 第1搬送路
Q 第2搬送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーと磁性キャリアとを含む2成分現像剤が搬送される搬送路を備えた現像槽と、該搬送路に設けられ、前記2成分現像剤を撹拌しながら所定方向へ搬送する搬送部材とを備えた現像装置において、
前記現像槽は、ポリエーテルエステルアミド成分を含む樹脂組成物で形成されていることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記現像槽は、ポリエーテルエステルアミド成分を含むポリスチレン、または、ポリエーテルエステルアミド成分を含むアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記搬送部材は、ポリエーテルエステルアミド成分を含む樹脂組成物で形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記搬送部材は、ポリエーテルエステルアミド成分を含むポリスチレン、または、ポリエーテルエステルアミド成分を含むアクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体で形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項5】
前記ポリエーテルエステルアミド成分は、両末端にカルボキシル基を有する数平均分子量500〜5,000のポリアミドと数平均分子量1,600〜3,000のビスフェノール類のエチレンオキシド付加物とから誘導され、相対粘度が0.5〜4.0(0.5重量%m−クレゾール溶液、25℃)のポリエーテルエステルアミドであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項6】
電子写真方式の画像形成装置であって、請求項1から5のいずれか1項に記載の現像装置を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−20235(P2010−20235A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182862(P2008−182862)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】