説明

現像装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】磁気シール部材のシール性能を簡便且つ低コストで向上できる現像装置及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】現像ローラ25の両端部にはハウジング20と現像ローラ25との隙間からの現像剤漏出を防止するための磁気シール部材33a、33bが配設されている。磁気シール部材33a、33bは内周面に多数のN極及びS極を所定のピッチ幅pで交互に着磁したものであり、N極及びS極のピッチ幅pを1mm以上3mm以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置及びそれに用いる現像装置に関し、特に、磁性を有する現像剤を用いる現像装置からの現像剤の漏出を防止する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コピー機、プリンタ、FAX等の電子写真方式を用いる画像形成装置においては、主に粉末の現像剤が使用され、感光体ドラム等の像担持体上に形成された静電潜像を現像剤によって可視化し、そのトナー像を記録媒体上に転写した後、定着処理を行うプロセスが一般的である。
【0003】
現像剤は、トナーと磁性キャリア(以下、単にキャリアともいう)から成る二成分現像剤と、磁性を帯びたトナーのみから成る一成分現像剤とに大別され、規制ブレード(現像剤規制部材)により現像ローラ(現像剤担持体)に担持された現像剤の摩擦帯電を促進させる。規制ブレードとしては、磁性部材のみで構成されるものや、非磁性部材をベースとし、現像ローラに対向する部分(現像剤規制部)に磁性部材を配置した構成が知られている。
【0004】
このような規制ブレードを用いた現像装置においては、現像ローラの回転に伴い現像剤規制部に供給された現像剤のうち、一部は規制ブレードを通過して現像ローラ上に現像剤薄層を形成するが、残りの大部分の現像剤は規制ブレードに乗り上げて現像装置内へ戻される。このとき、現像剤が現像ローラ及び規制ブレードの長手方向両端部へ向かう傾向がある。従って、この部分における現像装置からの現像剤の漏出を防止する必要があった。
【0005】
従来、現像装置の長手方向両端部に磁気シール部材を設けて現像剤の漏出を防止する方法が提案されている。これは、現像剤担持体内に配置された固定マグネット体と磁気シール部材との間の磁界によって磁気シール部材と現像ローラとの間に形成される磁気ブラシを用いて現像剤の漏出を防止するものである。
【0006】
例えば特許文献1には、現像ローラの周方向にNS極を多磁極に着磁した磁気シール部材を設けた現像装置が開示されている。また、特許文献2には、NS極を多磁極に着磁した複数の磁気シール部材を、磁気シール部材間において異磁極が対向するように現像ローラの両端部に隣接して配置した現像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−133750号公報
【特許文献2】特開2004−354864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、二成分現像剤中のトナーとキャリアとの混合性を高めるとともに現像装置内の現像剤を円滑に循環させて攪拌スクリューの駆動トルクを低下させるために、円形度若しくは見かけ嵩密度(AD)の高い球形キャリアを用いる場合がある。このようなキャリアを使用すると、現像剤担持体上の磁気ブラシが緻密且つ均一に形成できるため、画像の高画質化も可能となる。しかし、円形度の高いキャリアを用いた場合、キャリア同士の付着性が弱くなるため現像装置からの現像剤の漏出が起こりやすくなる。
【0009】
そこで、現像剤の漏出を防止するために磁気シール部材のシール性能を高める必要が生じる。シール性能を高める方法としては、磁気シール部材に着磁された各磁極の磁力を強くする方法が考えられるが、磁気シール部材のコストが高くなるという不都合があった。また、特許文献2のように磁気シール部材を複数設けた場合、部品点数や組み立て工数が増加するため、組み立て作業性が低下するとともにコスト面においても不利であった。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑み、磁気シール部材のシール性能を簡便且つ低コストで向上できる現像装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、磁性を有する現像剤を収納する筐体と、該筐体に回転自在に支持され内部に固定された磁石部材によって現像剤を担持する現像剤担持体と、該現像剤担持体の長手方向両端部の外周面に沿って所定の間隔を隔てて配置され、前記現像剤担持体との対向面に複数のN極及びS極が前記現像剤担持体の周方向に交互に着磁された磁気シール部材と、を備えた現像装置において、前記磁気シール部材のN極及びS極のピッチ幅が1mm以上3mm以下であることを特徴としている。
【0012】
また本発明は、上記構成の現像装置において、前記磁気シール部材のN極及びS極の磁束密度が400G以上800G以下であることを特徴としている。
【0013】
また本発明は、上記構成の現像装置において、前記現像剤がトナーと磁性キャリアとを含む二成分現像剤であり、磁性キャリアの円形度が0.93以上であることを特徴としている。
【0014】
また本発明は、上記構成の現像装置において、前記磁性キャリアが球状フェライト粒子から成るキャリア心材を樹脂液で被覆したコーティングフェライトキャリアであり、磁性キャリアの見掛け嵩密度が2.35以上であることを特徴としている。
【0015】
また本発明は、上記構成の現像装置において、前記磁気シール部材と前記現像剤担持体の外周面との間隔が0.2mm以上1mm以下であることを特徴としている。
【0016】
また本発明は、上記構成の現像装置において、前記現像剤担持体の軸方向における前記磁気シール部材と前記磁石部材との距離が1mm以下であることを特徴としている。
【0017】
また本発明は、上記構成の現像装置を備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1の構成によれば、磁気シール部材に着磁されるN極及びS極に強い磁力が不要になり、比較的小さな磁束密度に着磁された磁石を用いて良好なシール性を維持可能となる。そして、円形度の高いキャリアを使用する場合であっても現像剤の漏れを効果的に防止することができる。
【0019】
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成の現像装置において、磁気シール部材のN極及びS極の磁束密度を400G以上800G以下とすることにより、低コストで良好なシール性を有するシール構造となる。
【0020】
また、本発明の第3の構成によれば、上記第1又は第2の構成の現像装置において、現像剤がトナーと磁性キャリアとを含む二成分現像剤であり、磁性キャリアの円形度を0.93以上とすることにより、現像剤の漏れを生じさせることなく、現像装置内のトナーとキャリアとの混合性を高めるとともに現像剤を円滑に循環させて攪拌駆動トルクを低下させることができ、現像剤担持体上の磁気ブラシを緻密且つ均一に形成できる。
【0021】
また、本発明の第4の構成によれば、上記第3の構成の現像装置において、磁性キャリアが球状フェライト粒子から成るキャリア心材を樹脂液で被覆したコーティングフェライトキャリアの場合、磁性キャリアの見掛け嵩密度を2.35以上とすることにより、円形度が0.93以上の球形キャリアを容易に調製できる。
【0022】
また、本発明の第5の構成によれば、上記第1乃至第4のいずれかの構成の現像装置において、磁気シール部材と現像剤担持体の外周面との間隔を0.2mm以上1mm以下とすることにより、磁気シール部材上に保持された現像剤が磁気シール部材と現像剤担持体の隙間を十分に埋めることができ、シール性能をより向上させることができる。
【0023】
また、本発明の第6の構成によれば、上記第1又乃至第5のいずれかの構成の現像装置において、現像剤担持体の軸方向における磁気シール部材と磁石部材との距離を1mm以下とすることにより、磁石部材と磁気シール部材との間のN−S順磁界を強めることができ、シール性能をより向上させることができる。
【0024】
また、本発明の第7の構成によれば、上記第1乃至第6のいずれかの構成の現像装置を搭載することにより、簡易な構成で現像装置からの現像剤の漏出を長期間に亘って防止できる画像形成装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の現像装置を備えた画像形成装置の概略断面図
【図2】本発明の現像装置の平面図及び正面図
【図3】本発明の現像装置の側面断面図
【図4】図3における現像ローラ周辺の拡大図
【図5】磁気シール部材を平板状に伸ばした状態を示す斜視図
【図6】磁気シール部材を構成する磁極のピッチ幅と磁気シール部材に保持される現像剤との関係を示す平面図
【図7】現像ローラ及び磁気シール部材間のギャップと磁気シール部材に保持される現像剤との関係を示す側面図
【図8】現像ローラ内の固定マグネット体と磁気シール部材との軸方向の距離と、磁気シール部材に保持される現像剤との関係を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の現像装置を備えた画像形成装置の概略断面図である。画像形成装置(例えばモノクロプリンタ)100では、コピー動作を行う場合、装置本体内の画像形成部9において、不図示のパーソナルコンピューター(PC)から送信された原稿画像データに基づく静電潜像が形成され、現像装置4により静電潜像にトナーが付着されてトナー像が形成される。この現像装置4へのトナーの供給はトナーコンテナ5から行われる。そして、このような画像形成装置100では、感光体ドラム1を図1において時計回りに回転させながら、感光体ドラム1に対する画像形成プロセスが実行される。
【0027】
画像形成部9には、感光体ドラム1の回転方向(時計回り)に沿って、帯電装置2、露光ユニット3、現像装置4、転写ローラ6、クリーニング装置7、及び除電装置(図示せず)が配設されている。感光体ドラム1は、例えばアルミドラムに感光層が積層されたものであり、帯電装置2により表面を均一に帯電させるようになっている。そして、後述する露光ユニット3からのレーザビームを受けた表面に、帯電を減衰させた静電潜像を形成する。なお、上記の感光層は、特に限定するものではないが、例えば耐久性に優れるアモルファスシリコン(a−Si)等が好ましい。
【0028】
帯電装置(帯電チャージャー)2は、感光体ドラム1の表面を均一に帯電させるものである。例えば帯電装置2は、細いワイヤー等を電極として高電圧を印加することにより放電するコロナ放電装置が用いられる。なお、コロナ放電装置に代えて、帯電ローラに代表される帯電部材を感光体表面に接触させた状態で電圧を印加する接触式の帯電装置を用いても良い。露光ユニット3は、画像データに基づいて光ビーム(例えばレーザビーム)を感光体ドラム1に照射し、感光体ドラム1の表面に静電潜像を形成する。
【0029】
現像装置4は、感光体ドラム1の静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成させるものである。なお、本実施形態ではトナーと磁性キャリアとから構成される二成分現像剤(以下、単に現像剤ともいう)が現像装置4に収容されている。また、現像装置4の詳細については後述する。クリーニング装置7は、感光体ドラム1の長手方向(紙面方向)に線接触するクリーニングローラやブレード材等を備えており、トナー像が用紙に移行(転写)された後に、感光体ドラム1の表面に残ったトナー(残留トナー)を除去する。
【0030】
上記のようにトナー像が形成された感光体ドラム1に向けて、用紙収容部10から用紙が用紙搬送路11及びレジストローラ対13を経由して所定のタイミングで画像形成部9に搬送される。転写ローラ6は、感光体ドラム1表面に形成されたトナー像を乱さずに、用紙搬送路11を搬送されてくる用紙に移行(転写)する。その後、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、クリーニング装置7により感光体ドラム1表面の残留トナーが除去され、除電装置により残留電荷がキャンセルされる。
【0031】
そして、トナー像が転写された用紙は感光体ドラム1から分離され、定着装置8に搬送されて加熱及び加圧されることで用紙にトナー像が定着される。定着装置8を通過した用紙は、排出ローラ対14を通過して用紙排出部15に排出される。
【0032】
図2(a)、(b)は、現像装置の平面図及び正面図であり、図3は、現像装置の側面断面図である。なお、図2(a)では便宜上、上面カバーを取り外して内部が見える状態を表現している。図2及び図3に示すように、ハウジング20内はハウジング20と一体形成された仕切壁20aによって、第1貯留室21と第2貯留室22とに区画されている。そして、この第1貯留室21には第1攪拌スクリュー23が、第2貯留室22には第2攪拌スクリュー24が配設されている。
【0033】
第1攪拌スクリュー23、第2攪拌スクリュー24は、それぞれ支軸(回転軸)の周囲に螺旋羽を設けた構成になっており、互いに平行な状態でハウジング20に回転可能に軸支されている。なお、図2(a)に示すように、第1攪拌スクリュー23、第2攪拌スクリュー24の軸方向であるハウジング20の長手方向の両端部においては仕切壁20aが存在せず、第1攪拌スクリュー23、第2攪拌スクリュー24間での現像剤の受け渡しが可能となっている。これにより、第1攪拌スクリュー23は、第1貯留室21内の現像剤を攪拌しながら矢印P方向へと搬送して第2貯留室22に搬送し、第2攪拌スクリュー24は、第2貯留室22に搬送されてきた現像剤を攪拌しながら矢印Q方向へと搬送して現像ローラ25に供給する。
【0034】
現像ローラ25は、感光体ドラム1(図1参照)の回転に応じて回転することで、感光体ドラム1の感光層にトナーを供給する。現像ローラ25の内部には複数の磁極を有する永久磁石から成る固定マグネット体27が固定されている。この固定マグネット体27の磁力により現像ローラ25の表面に現像剤を付着(担持)させて磁気ブラシを形成する。現像ローラ25は、第1攪拌スクリュー23、第2攪拌スクリュー24と平行な状態で、ハウジング20に回転可能に軸支されている。第1攪拌スクリュー23、第2攪拌スクリュー24、及び現像ローラ25は、モータ(図示せず)により回転駆動される。
【0035】
規制ブレード29は、その長手方向(図2の左右方向)が最大現像幅よりも大きく形成されており、現像ローラ25と所定の間隔を隔てて配置されることにより、感光体ドラム1に供給するトナー量を規制する規制部30を形成する。規制ブレード29の材質としては、磁性体或いは非磁性体のSUS(ステンレス)等が用いられる。なお、非磁性体の規制ブレード29に永久磁石を装着して磁性を付与しても良い。
【0036】
第2攪拌スクリュー24に対向する第2貯留室22の底面には、ハウジング20内に貯留される現像剤中のトナー濃度を検知するトナー濃度センサ(図示せず)が設けられている。このトナー濃度センサの検知結果に応じて、トナーコンテナ5(図1参照)に貯留されたトナーがハウジング20の上部に設けられたトナー供給口20bを介してハウジング20内に供給される。
【0037】
現像ローラ25の回転軸にはDSコロ31a、31bが回転自在に外挿されている。DSコロ31a、31bは、感光体ドラム1の外周面の両端部に当接することにより現像ローラ25と感光体ドラム1との距離を厳密に規制している。DSコロ31a、31bにはベアリングが内蔵されており、感光体ドラム1に従動して回転することでドラム表面の摩耗を防止できるようになっている。また、現像ローラ25の両端部にはハウジング20と現像ローラ25との隙間からの現像剤の漏出を防止するための磁気シール部材33a、33bが配設されている。
【0038】
図4は、図3における現像ローラ周辺の拡大図である。図4を用いて現像ローラ25上のトナー量の規制方法を詳細に説明する。図4に示すように、固定マグネット体27は、N極27a、27cと、S極27b、27d、27eから成る5つの磁極27a〜27eを有している。規制ブレード29には固定マグネット体27のN極(規制極)27aが対向するため、規制ブレード29の先端にはS極が誘起され、規制部30に引き合う方向の磁界が発生する。
【0039】
この磁界により、規制ブレード29と現像ローラ25との間にキャリアとトナーとが連なった磁気ブラシが形成され、磁気ブラシが規制部30を通過することにより所望の高さに層規制される。一方、磁気ブラシの形成に用いられなかった現像剤は規制ブレード29の上流側(右側)の側面に沿って滞留する。その後、現像ローラ25が反時計方向に回転して磁気ブラシが感光体ドラム1に対向する位置に移動すると、S極(主極)27bにより磁界が付与されるため、磁気ブラシは感光体ドラム1の表面に接触して静電潜像を現像する。
【0040】
さらに現像ローラ25が反時計方向に回転すると、今度はN極27cにより引き合う磁界が付与されて、磁気ブラシと共にトナー像の形成に使われなかったトナーがハウジング20内に回収される。さらに、S極27d、27eにより反発する磁界が付与されるため、磁気ブラシはハウジング20内で現像ローラ25から離脱する。そして、第2攪拌スクリュー24により攪拌、搬送された後、S極27eの磁界により再び現像ローラ25上に磁気ブラシが形成される。
【0041】
現像ローラ25の両端部を囲むハウジング20には、それぞれ磁気シール部材33a、33bが配置されている。なお、図4では磁気シール部材33aのみを図示している。磁気シール部材33a、33bは、図4に示すように、現像ローラ25と非接触の状態、即ち、現像ローラ25の外周面と所定の間隔を隔てた状態で現像ローラ25の両端部に配設される。また、磁気シール部材33a、33bは、現像ローラ25を挟んで感光体ドラム1の反対側に配設されている。
【0042】
図5は、磁気シール部材を平板状に伸ばした状態を示す斜視図である。以下、磁気シール部材33aの構成について説明するが、磁気シール部材33bについても全く同様であるため説明を省略する。図5に示すように、磁気シール部材33aは内周面に多数のN極及びS極を所定のピッチ幅pで交互に着磁したものであり、磁極パターンにより発生する磁力線に沿って磁気ブラシを形成することにより現像剤のシール性を向上させている。磁気シール部材33aの材質としては、例えば、所定の磁束密度に着磁された異方性のゴム磁石や、ネオジウム系の磁石が使用される。
【0043】
磁気シール部材33aの長さLは、図4に示すように規制ブレード29から現像ローラ25の下方まで磁気シール部材33aを円弧状に配置できるように、現像ローラ25の直径に応じて決定される。また、磁気シール部材33aの幅W、厚みtについても、それぞれ現像装置4の仕様に応じて決定すれば良い。
【0044】
次に、本発明の現像装置に用いられる二成分現像剤について説明する。二成分現像剤は、トナーとキャリアとを含有するものである。二成分現像剤におけるトナーとキャリアとの重量比(T/C)は、キャリア100重量部に対してトナー5〜20重量部が好ましく、8〜15重量部がより好ましい。
【0045】
トナーはトナー母粒子に外添剤を添加したものである。トナー母粒子は、結着樹脂および着色剤を含有するものである。トナー母粒子には、必要に応じて離型剤、電荷制御剤、磁性粉等を含有させてもよい。トナー母粒子の重量平均粒子径は、5〜12μmが好ましく、6〜10μmがより好ましい。トナー母粒子の重量平均粒子径は、粒度分布測定装置(例えば、コールター社製、マルチサイザーII型)によって測定する。トナー母粒子は、粉砕分級法、溶融造粒法、スプレー造粒法、重合法等の公知の方法で製造される。
【0046】
外添剤としては、シリカ、酸化チタン、アルミナ等の無機酸化物、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸等が挙げられる。外添剤の量は、トナー母粒子100重量部に対して、通常0.1〜5重量部である。
【0047】
キャリアとしては、磁性体の粒子、または結着樹脂中に磁性体を分散させた樹脂粒子が挙げられる。磁性体としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性体金属、これらの合金、あるいは希土類を含有する合金類、ヘマタイト、マグネタイト、マンガン−亜鉛系フェライト、ニッケル−亜鉛系フェライト、マンガン−マグネシウム系フェライト、リチウム系フェライトなどのソフトフェライト、銅−亜鉛系フェライト等の鉄系酸化物、これらの混合物が挙げられる。
【0048】
結着樹脂としては、例えば、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、これらの混合物等が挙げられる。磁性体の粒子は、焼結法、アトマイズ法等の公知の方法によって製造される。キャリアは、その表面に、コート樹脂からなる被覆層を有していてもよい。
【0049】
ここで、二成分現像剤中のトナーとキャリアとの混合性を高めるとともに現像装置内の現像剤を円滑に循環させて攪拌スクリュー23、24の駆動トルクを低下させるために、円形度が0.93以上の球形キャリアを用いる場合がある。このようなキャリアを使用すると、現像ローラ25上の磁気ブラシが緻密且つ均一に形成できるため、画像の高画質化も可能となる。
【0050】
また、円形度に代えて見掛け嵩密度により球形キャリアを規定しても良い。例えば、球状フェライト粒子から成るキャリア心材を樹脂液で被覆した後、加熱処理を行ったコーティングフェライトキャリアの場合、円形度を0.93以上としたときの見掛け嵩密度(AD)は2.35以上となる。
【0051】
しかし、円形度若しくは見掛け嵩密度の高いキャリアを用いた場合、キャリア同士の付着性が弱くなるためハウジング20からの現像剤の漏出が起こりやすくなる。そこで、磁気シール部材33aのシール性能を高める必要が生じる。
【0052】
図6は、磁気シール部材を構成する磁極のピッチ幅pと磁気シール部材に保持される現像剤との関係を示す平面図である。多数のN極及びS極を交互に着磁した磁気シール部材33aでは、N極及びS極の境界に発生するN−S順磁界に沿って現像剤の磁気ブラシが形成される。そのため、図6(a)のように磁極のピッチ幅pが広い場合は磁気シール部材33a上に保持される現像剤Dに隙間が生じ、この隙間をすり抜けて現像剤漏れが発生する。
【0053】
一方、図6(b)のように磁極のピッチ幅pが狭い場合はN−S順磁界の間隔も狭くなり、磁気シール部材33a上に保持される現像剤Dが重なり合うため隙間が埋められる。現像剤Dの重なりによって隙間を無くすためにはピッチ幅pを3mm以下とする必要がある。また、ピッチ幅pを1mm未満にすると、現像剤Dの隙間は埋められるが、N極及びS極が小さくなるため、発生するN−S順磁界も小さくなる。その結果、磁気シール部材33a上に保持される現像剤Dの高さ(図6の紙面方向)が低くなってしまい、現像ローラ25と現像剤Dとの間に隙間が生じて現像剤漏れが発生する。
【0054】
そこで、本発明においては、N極及びS極のピッチ幅pを1mm以上3mm以下としている。この構成により、磁気シール部材33aに着磁されるN極及びS極に強い磁力が不要になり、400〜800Gという比較的小さな磁束密度に着磁されたゴム磁石等を用いて良好なシール性を維持可能となる。そして、円形度の高いキャリアを使用する場合であっても現像剤の漏れを効果的に防止することができる。
【0055】
図7は、現像ローラ及び磁気シール部材間のギャップと磁気シール部材に保持される現像剤との関係を示す側面図である。図7(a)のように現像ローラ25と磁気シール部材33aとのギャップdが広い場合、磁気シール部材33a上に保持される現像剤Dと現像ローラ25との隙間から現像剤が漏れ易くなる。一方、図7(b)のように現像ローラ25と磁気シール部材33aとのギャップdが狭い場合、磁気シール部材33a上に保持される現像剤Dがギャップdを埋めるため現像剤が漏れにくくなる。
【0056】
従って、ギャップdを狭くすることで、現像剤の漏れをより効果的に防止することができる。具体的には、N極及びS極のピッチ幅pや磁束密度の強さにもよるが、磁気シール部材33a上に保持される現像剤Dがギャップdを隙間無く埋めるためにはギャップdを1mm以下とすることが好ましい。また、現像ローラ25の寸法公差や取り付け誤差等を考慮してギャップdを0.2mm以上とすることが好ましい。
【0057】
図8は、現像ローラ内の固定マグネット体と磁気シール部材との軸方向の距離と、磁気シール部材に保持される現像剤との関係を示す平面図である。磁気シール部材33a上に保持される現像剤Dは、磁気シール部材33aを構成するN極及びS極の境界に発生するN−S順磁界だけでなく、固定マグネット体27と磁気シール部材33aとの間に発生するN−S順磁界の影響を受ける。
【0058】
即ち、図8(a)のように固定マグネット体27と磁気シール部材33aとの軸方向の距離rが広い場合、固定マグネット体27と磁気シール部材33aとの間の磁界が弱くなるため現像剤Dの保持幅が小さくなり、現像剤Dの隙間から現像剤が漏れ易くなる。一方、図8(b)のように軸方向の距離rが狭い場合、現像剤Dの保持量が増加して現像剤Dの保持幅も広がるため現像剤が漏れにくくなる。
【0059】
従って、軸方向の距離rを狭くすることで、現像剤の漏れをより効果的に防止することができる。具体的には、NS極のピッチ幅pや磁束密度の強さにもよるが、距離rを1mm以下とすることが好ましい。また、磁気シール部材33aと固定マグネット体27とが軸方向にオーバーラップしても良いが、磁気シール部材33aが現像ローラ25の現像領域にかかると現像ローラ25上のトナー薄層の形成に影響を及ぼすため、磁気シール部材33aを現像領域にかからない範囲に配置する必要がある。
【0060】
その他本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、本発明は図2に示したような現像装置に限定されるものではなく、磁気ローラ(現像剤担持体)及び現像ローラを備え、磁気ローラ上にキャリアを残したまま現像ローラ上にトナーのみを転移させてトナー薄層を形成し、交流電界によって感光体上の静電潜像にトナーを付着させる方式の現像装置における、磁気ローラ両端部のシール構造にも全く同様に適用できる。また、トナーとキャリアとを含む二成分現像剤を用いる現像装置に限らず、磁性一成分現像剤を用いる現像装置のシール構造にも適用できるのはもちろんである。
【実施例1】
【0061】
N極及びS極が交互に着磁された磁気シール部材を用いた場合の、磁極のピッチ幅p、現像ローラと磁気シール部材とのギャップd、現像ローラの軸方向における固定マグネット体と磁気シール部材との距離r、及び磁極の磁束密度ρと、現像剤の漏れとの関係について調査した。
【0062】
試験方法としては、図5に示したような磁気シール部材33a、33bを、p、d、r、ρの各パラメータのうちいずれかを変化させて図3に示した現像装置4に装着し、現像装置4を駆動させたときの現像ローラ25両端部からの現像剤の漏れを目視により観察した。磁気シール部材の寸法は長さ50mm、幅6mm、厚み1mmとし、現像剤としては、平均粒径6.8μm、比重1.2の正帯電トナーと、個数平均粒径35μm、円形度0.95、見掛け嵩密度2.35のコーティングフェライトキャリアとから成る二成分現像剤を用い、キャリアに対するトナーの混合比率(T/C)を9重量%とした。結果を表1〜表4に示す。表中、現像剤の漏れが認められない場合を○、漏れが認められた場合を×とした。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
【表4】

【0067】
表1から明らかなように、磁極のピッチ幅pを1mm〜3mmとすることで、円形度0.95、見掛け嵩密度2.35の球形キャリアを用いた場合にも、磁束密度ρが700Gの磁気シール部材を用いて現像剤の漏れを防止できることが確認された。また、表2及び表3に示すように、磁極のピッチ幅pが3mmの場合、現像ローラと磁気シール部材とのギャップd、或いは現像ローラの軸方向における固定マグネット体と磁気シール部材との距離rが1mmを超えると現像剤の漏れが発生した。また、表4に示すように、磁束密度ρが400Gを下回った場合は現像剤の漏れが発生した。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、磁性を有する現像剤を用いる現像装置のシール機構に利用可能であり、内周面に複数のN極及びS極が交互に着磁された磁気シール部材のN極及びS極のピッチ幅を1mm以上3mm以下としたものである。これにより、円形度の高いキャリアを使用する場合であっても、比較的小さな磁束密度に着磁された磁気シール部材を用いて現像剤の漏れを効果的に防止できる現像装置を提供することができる。
【0069】
また、本発明の現像装置を搭載することにより、簡易な構成で現像剤の漏出を長期間に亘って防止可能なメンテナンスフリーの画像形成装置を提供できる。
【符号の説明】
【0070】
4 現像装置
9 画像形成部
20 ハウジング(筐体)
23 第1攪拌スクリュー
24 第2攪拌スクリュー
25 現像ローラ(現像剤担持体)
27 固定マグネット体(磁石部材)
29 規制ブレード
33a、33b 磁気シール部材
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性を有する現像剤を収納する筐体と、
該筐体に回転自在に支持され内部に固定された磁石部材によって現像剤を担持する現像剤担持体と、
該現像剤担持体の長手方向両端部の外周面に沿って所定の間隔を隔てて配置され、前記現像剤担持体との対向面に複数のN極及びS極が前記現像剤担持体の周方向に交互に着磁された磁気シール部材と、
を備えた現像装置において、
前記磁気シール部材のN極及びS極のピッチ幅が1mm以上3mm以下であることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記磁気シール部材のN極及びS極の磁束密度が400G以上800G以下であることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記現像剤がトナーと磁性キャリアとを含む二成分現像剤であり、磁性キャリアの円形度が0.93以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記磁性キャリアが球状フェライト粒子から成るキャリア心材を樹脂液で被覆したコーティングフェライトキャリアであり、磁性キャリアの見掛け嵩密度が2.35以上であることを特徴とする請求項3に記載の現像装置。
【請求項5】
前記磁気シール部材と前記現像剤担持体の外周面との間隔が0.2mm以上1mm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の現像装置。
【請求項6】
前記現像剤担持体の軸方向における前記磁気シール部材と前記磁石部材との距離が1mm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の現像装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の現像装置を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−8163(P2011−8163A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153687(P2009−153687)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】