説明

現像装置及び画像形成装置

【課題】像保持体に向けて磁界を形成する磁極による磁力を低下させることなく、現像体を小型化する。
【解決手段】磁極96は、感光体22Yに向けてスリーブ92の法線方向の磁界の強さが最大となる方向s1を含む方向に磁界を形成する。磁極98は、上方に向けてスリーブ92の法線方向の磁界の強さが最大となる方向n1を含む方向に磁界を形成する。磁極100は、下方に向けてスリーブ92の法線方向の磁界の強さが最大となる方向n2を含む方向に磁界を形成する。方向n1と方向n2とがなす角度θ1は、磁極96を挟んで180度未満になるようにされている。現像剤剥離供給部材78は、現像室88へ供給された現像剤を現像ロール72に対して供給するとともに、現像ロール72が潜像を現像した後に現像ロール72の表面に残留して搬送される現像剤を現像ロール72から剥離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、現像剤保持体に接触又は近接して対向配置された状態で該現像剤保持体の回転方向と同一方向に回転する現像剤供給兼剥離用回転部材を設けた二成分現像装置を開示する。また、特許文献2は、マグネットローラに設けられた現像磁極から現像剤汲上げ磁極にいたる間に、マグネットローラを内包する非磁性の円筒体の外表面に現像剤剥取り領域が設けられ、円筒体の回転中心と平行な軸芯周りに回転する回転部材が現像剤剥取り領域に相対するように設けられた現像装置を開示する。また、特許文献3は、現像剤担持体表面の現像済み現像剤の自重落下位置に対応する磁石体の一部に磁束密度をほぼ零にする無磁極部分を設けるとともに、無磁極部分に対応する現像剤担持体表面を軽圧接して現像済み現像剤を剥離・落下させる弾性を有する非磁性の剥離部材を、現像剤攪拌部材の上方に配設した現像装置を開示する。
【0003】
【特許文献1】特開平08−062983号公報
【特許文献2】特開2006−227116号公報
【特許文献3】特開平04−343376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、像保持体に向けて磁界を形成する磁極による磁力を低下させることなく、現像体を小型化することができる現像装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1に係る本発明は、非磁性のトナー及び磁性のキャリアを含む現像剤を収容する現像剤収容部と、この現像剤収容部が収容する現像剤を像保持体に向けて搬送する現像体と、前記現像剤収容部が収容する現像剤を前記現像体に向けて供給する現像剤供給手段と、前記現像体が搬送する現像剤を前記現像体から剥離する現像剤剥離手段とを有し、前記現像体は、像保持体に対向して回転する非磁性の回転部材と、この回転部材内に配置された磁石部材とを具備し、前記磁石部材は、像保持体に向けて前記回転部材の法線方向に磁界を形成する第1の磁極と、この第1の磁極とは極性が異なり、前記第1の磁極よりも前記回転部材の回転方向上流側に配置された第2の磁極と、前記第1の磁極とは極性が異なり、前記第1の磁極よりも前記回転部材の回転方向下流側に配置された第3の磁極とからなる3つの磁極のみを外面側に具備し、前記第2の磁極及び前記第3の磁極は、前記回転部材の法線方向の磁界の強さが最大となる方向それぞれが前記第1の磁極を挟んで形成する角度が180度未満であり、前記現像剤剥離手段は、前記第3の磁極よりも前記回転部材の回転方向下流側、且つ前記第2の磁極よりも前記回転部材の回転方向上流側で前記回転部材に対向し、前記現像剤供給手段は、前記現像剤剥離手段よりも前記回転部材の回転方向下流側、且つ前記第2の磁極よりも前記回転部材の回転方向上流側で前記回転部材に対向するよう設けられている現像装置である。
請求項1に係る本発明によれば、3つの磁極のみとしても、上述の角度が180度以上の場合と比較して第1の磁極の磁力を高くさせることができ、像保持体に向けて磁界を形成する磁極による磁力を低下させることなく現像体を小型化(小径化)することができる。
【0006】
請求項2に係る本発明は、前記現像剤供給手段及び前記現像剤剥離手段が、前記回転部材に接触しつつ回転する現像剤剥離供給部材によって形成されている請求項1記載の現像装置である。
請求項2に係る本発明によれば、現像剤の剥離及び供給を狭い領域で行うことができる。
【0007】
請求項3に係る本発明は、前記第2の磁極及び前記第3の磁極が、前記第3の磁極よりも前記回転部材の回転方向下流側、且つ前記第2の磁極よりも前記回転部材の回転方向上流側に、前記第1の磁極が形成する磁界と同極性の磁界を形成する請求項2記載の現像装置である。
請求項3に係る本発明によれば、第1の磁極が形成する磁界と同極性の磁界が形成されるので、現像剤供給手段により供給される現像剤を回転部材に吸着させて搬送させることができる。
【0008】
請求項4に係る本発明は、前記第3の磁極が、該第3の磁極による前記回転部材の法線方向の磁界の強さが最大となる方向と、前記第1の磁極による前記回転部材の法線方向の磁界の強さが最大となる方向とがなす角度が90度以下となるように、配置されている請求項2又は3記載の現像装置である。
請求項4に係る本発明によれば、第1の磁極の法線方向の磁界の強さが最大となる位置に対して回転部材の回転方向下流側の接線方向の強さを大きくさせることができるので、磁性キャリアが像保持体に付着することを低減させることができる。
【0009】
請求項5に係る本発明は、前記第2の磁極が、該第2の磁極による前記回転部材の法線方向の磁界の強さが最大となる方向と、前記第1の磁極による前記回転部材の法線方向の磁界の強さが最大となる方向とがなす角度が90度以下となるように、配置されている請求項2又は3記載の現像装置である。
請求項5に係る本発明によれば、第1の磁極の法線方向の磁界の強さが最大となる位置に対して回転部材の回転方向上流側の接線方向の強さを大きくさせることができるので、現像体により搬送される現像剤が第1の磁極へ向けて良好に搬送されずに滞留してしまうことを回避することができる。
【0010】
請求項6に係る本発明は、前記現像剤剥離供給部材が、前記第2の磁極による前記回転部材の法線方向の前記第1の磁極とは異なる極性の磁界の強さが略0となる前記回転部材の回転方向上流側の位置よりも、前記回転部材の回転方向上流側から現像剤を供給し、前記第3の磁極による前記回転部材の法線方向の前記第1の磁極とは異なる極性の磁界の強さが略0となる前記回転部材の回転方向下流側の位置よりも、前記回転部材の回転方向下流側から現像剤を剥離する請求項2乃至5いずれか記載の現像装置である。
請求項6に係る本発明によれば、3つの磁極とは異なる比較的磁力の弱い位置で剥離させるので現像剤剥離供給部材が接触していても現像剤にかかるストレスを軽減させることができる。
【0011】
請求項7に係る本発明は、前記現像剤剥離供給部材が、前記第2の磁極及び前記第3の磁極による前記回転部材の接線方向の前記第1の磁極が形成する磁界と同極性の磁界の強さが略0となる領域で現像剤を供給するとともに、現像剤を剥離する請求項2乃至6いずれか記載の現像装置である。
請求項7に係る本発明によれば、更に磁力の弱い位置で剥離させるので現像剤剥離供給部材が接触していても現像剤にかかるストレスを軽減させることができ、磁力のある領域で現像剤を供給させるので現像剤を回転部材に吸着させて搬送させることができる。
【0012】
請求項8に係る本発明は、前記現像剤剥離供給部材が、回転軸が磁性体からなる請求項2乃至7いずれか記載の現像装置である。
請求項8に係る本発明によれば、現像体と現像剤剥離供給部材との間で磁界が形成され現像剤が立つので、更に現像剤を剥離し易くすることができる。
【0013】
請求項9に係る本発明は、前記現像剤剥離供給部材が、弾性を有する発泡性部材が前記回転部材に接触しつつ回転する請求項2乃至8いずれか記載の現像装置である。
請求項9に係る本発明によれば、現像体と現像剤剥離供給部材との接触領域を広くし易く、更に現像剤を剥離し易くすることができ、また現像体が経時的に磨耗することを低減させることができる。
【0014】
請求項10に係る本発明は、前記現像剤剥離供給部材が、前記回転部材と同一方向に回転する請求項2乃至9いずれか記載の現像装置である。
請求項10に係る本発明によれば、回転部材と現像剤剥離供給部材との対向部位では互いに逆方向に移動するので、更に現像剤を剥離し易くすることができる。
【0015】
請求項11に係る本発明は、像保持体と、この像保持体に形成された潜像を現像剤により現像する現像装置と、この現像装置により現像された現像剤像を記録媒体に転写する転写手段と、この転写手段により記録媒体に転写された現像剤像を記録媒体に定着させる定着装置とを有し、前記現像装置は、非磁性のトナー及び磁性のキャリアを含む現像剤を収容する現像剤収容部と、この現像剤収容部が収容する現像剤を像保持体に向けて搬送する現像体と、前記現像剤収容部が収容する現像剤を前記現像体に向けて供給する現像剤供給手段と、前記現像体が搬送する現像剤を前記現像体から剥離する現像剤剥離手段とを有し、前記現像体は、像保持体に対向して回転する非磁性の回転部材と、この回転部材内に配置された磁石部材とを具備し、前記磁石部材は、像保持体に向けて前記回転部材の法線方向に磁界を形成する第1の磁極と、この第1の磁極とは極性が異なり、前記第1の磁極よりも前記回転部材の回転方向上流側に配置された第2の磁極と、前記第1の磁極とは極性が異なり、前記第1の磁極よりも前記回転部材の回転方向下流側に配置された第3の磁極とからなる3つの磁極のみを外面側に具備し、前記第2の磁極及び前記第3の磁極は、前記回転部材の法線方向の磁界の強さが最大となる方向それぞれが前記第1の磁極を挟んで形成する角度が180度未満であり、前記現像剤剥離手段は、前記第3の磁極よりも前記回転部材の回転方向下流側、且つ前記第2の磁極よりも前記回転部材の回転方向上流側で前記回転部材に対向し、前記現像剤供給手段は、前記現像剤剥離手段よりも前記回転部材の回転方向下流側、且つ前記第2の磁極よりも前記回転部材の回転方向上流側で前記回転部材に対向するよう設けられている画像形成装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、像保持体に向けて磁界を形成する磁極による磁力を低下させることなく、現像体を小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置10の概要を示す側面図である。この画像形成装置10は、画像形成装置本体12を有し、この画像形成装置本体12内に画像形成部14と、画像形成部14にシートなどの記録媒体を供給する記録媒体供給装置54と、電源ユニット16と、図示しないCPUなどを有する制御部68とが配設されている。また、画像形成装置本体12の上部に画像形成がなされた記録媒体が排出される記録媒体排出部15が設けられている。
【0018】
画像形成部14は、カラー画像を形成する電子写真方式のもので、トナー像を保持する像保持体としてのドラム形状の感光体22Y、22M、22C、22Bと、この各感光体22Y、22M、22C、22Bを一様に帯電する帯電ロールを備えた帯電手段としての帯電装置24Y、24M、24C、24Bと、各感光体22Y、22M、22C、22Bに光により静電潜像を書き込む潜像形成手段としての光書き込み装置26Y、26M、26C、26Bと、各感光体22Y、22M、22C、22Bに書き込まれた潜像を非磁性のトナーと磁性のキャリアとからなる二成分系の現像剤を用いて現像する現像装置28Y、28M、28C、28Bと、各感光体22Y、22M、22C、22Bに形成されたトナー像を記録媒体に転写する転写手段として用いられる転写ユニット42と、転写ユニット42によるトナー像の転写がなされた後に感光体22Y、22M、22C、22Bに残留する廃トナーを例えば掻き取ってクリーニングするクリーニング装置30Y、30M、30C、30Bとを有する。
【0019】
光書き込み装置26Y、26M、26C、26Bは、それぞれレーザー露光装置からなり、光書き込み装置26Yは感光体22Yにイエロー画像に対応するレーザー光を、光書き込み装置26Mは感光体22Mにマゼンダ画像に対応するレーザー光を、光書き込み装置26Cは感光体22Cにシアン画像に対応するレーザー光を、光書き込み装置26Bは感光体22Bにブラック画像に対応するレーザー光をそれぞれ発し、感光体22Y、22M、22C、22Bに、それぞれ静電潜像を書き込むようになっている。
【0020】
画像形成部14が有する部材のうち感光体22Y、22M、22C、22B、帯電装置24Y、24M、24C、24B、現像装置28Y、28M、28C、28B及びクリーニング装置30Y、30M、30C、30Bは、交換ユニットとして用いられる像形成ユニット32として一体型とされ、画像形成装置本体12に対して正面側(図1において右側)から着脱自在に装着される。
【0021】
また、感光体22Y、帯電装置24Y及びクリーニング装置30Yは、一体化されて像保持体ユニットを構成する。同様に、感光体22M、22C、22Bは、帯電装置24M、24C、24B及びクリーニング装置30M、30C、30Bとともに対応する画像の色ごとに一体化されてそれぞれ像保持体ユニットを構成する。現像装置28Y、28M、28C、28Bは、それぞれ像形成ユニット32に対して着脱可能に装着されている。
【0022】
また、この像形成ユニット32には、現像装置28Y、28M、28C、28Bに供給されるトナーをそれぞれ収容する交換ユニットとしてのトナーカートリッジ34Y、34M、34C、34Bが画像形成装置本体12に対して側面側から着脱自在に装着されている。
トナーカートリッジ34Y、34M、34C、34Bは、トナーを収容するトナー収容室36Y、36M、36C、36B及び廃トナー収容室38Y、38M、38C、38Bがそれぞれ内部に形成されており、画像形成装置本体12に設けられたトナー供給路(図示せず)を介して、それぞれトナーを現像装置28Y、28M、28C、28Bに対して供給する。例えば、トナーカートリッジ34Yにはイエロートナーが、トナーカートリッジ34Mにはマゼンダトナーが、トナーカートリッジ34Cにはシアントナーが、トナーカートリッジ34Bにはブラックトナーが充填(収容)されている。
【0023】
転写ユニット42は、像形成ユニット32の感光体22Y、22M、22C、22Bと当接するように配置されている。この転写ユニット42は、ユニットとして一体化されていて二つの支持ロール44a、44bと、記録媒体又は像を搬送する搬送手段としての搬送ベルト46と、この搬送ベルト46に記録媒体を吸着させる吸着手段としての吸着ロール48と、搬送ベルト46により搬送中の記録媒体に、各感光体22Y、22M、22C、22Bに形成されたトナー像をそれぞれ転写する転写ロール50Y、50M、50C、50Bとが装着されてなる。
【0024】
吸着ロール48は、搬送ベルト46を介して支持ロール44aに圧接する状態で設けられ、電源ユニット16から電圧が印加されて搬送ベルト46に静電的に記録媒体を吸着させるようになっている。
【0025】
転写ロール50Y、50M、50C、50Bは、それぞれ転写バイアスが印加されており、感光体22Y、22M、22C、22Bに形成されたトナー像を、搬送ベルト46によって搬送中の記録媒体へ順に転写し、記録媒体にイエロー、マゼンダ、ブラック、シアンの4色のトナー像が重ねられたカラートナー像を形成するようになっている。
【0026】
また、画像形成装置本体12内の上部には、転写ユニット42により記録媒体に転写されたトナー像を記録媒体へと定着する定着装置52が設けられている。定着装置52は、加熱ロール52aと加圧ロール52bとからなり、加熱ロール52aと加圧ロール52bとの間を通過する記録媒体に転写されたトナー像を加熱し加圧することで、記録媒体にトナー像を定着するようになっている。
【0027】
また、画像形成装置本体12内には、記録媒体供給装置54から供給された記録媒体を記録媒体排出部15まで搬送する搬送路60が設けられていて、この搬送路60に沿って、記録媒体搬送方向上流側から順に、レジストロール62、転写ユニット42、定着装置52及び排出ロール64が配置されている。排出ロール64は、定着装置52から搬送された記録媒体を記録媒体排出部15へと排出する。
【0028】
図2は、現像装置28Yの構成を示す断面図である。現像装置28Y、28M、28C、28Bは、現像する画像の色が異なる他は、ほぼ同様に構成されている。そこで、以下、現像装置28Yについて詳述する。
現像装置28Yは、現像装置本体70の感光体22Y側に配設される現像体としての現像ロール72、第1の攪拌搬送部材74、第2の攪拌搬送部材76、現像剤剥離供給部材78及び層厚規制部材82を有し、上述したように非磁性のトナーと磁性のキャリアとからなる二成分系の現像剤を現像ロール72により感光体22Yに向けて搬送し、感光体22Yに書き込まれた潜像を現像する。
【0029】
現像装置本体70は、画像形成装置本体12に設けられたトナー供給路(図示せず)を介して、トナー収容室36Yからトナーを受け入れ、トナーとキャリアとを攪拌搬送する筒状の現像剤搬送路84,86と、現像ロール72を収容する現像室88とを有する。また、現像剤搬送路84と現像剤搬送路86とは、間に仕切り板90が設けられており、仕切り板90の両端には、現像剤搬送路84と現像剤搬送路86とを接続する通路(図示せず)が設けられている。つまり、現像剤搬送路84,86は、現像剤を予め収容する現像剤収容部を構成し、第1の攪拌搬送部材74と第2の攪拌搬送部材76とが互い違いの方向に現像剤を搬送することにより、トナーがキャリアによって所定の極性に摩擦帯電されて現像装置本体70内で循環するようにされている。第2の攪拌搬送部材76は、現像剤搬送路84を介して搬送された現像剤を攪拌搬送し、現像剤を現像室88へ供給する。
【0030】
現像剤剥離供給部材78は、磁性体からなる回転軸79と、この回転軸79を覆う例えば発泡ウレタンなどの弾性を有する発泡性部材80とを有し、第2の攪拌搬送部材76に対向するように配置されている。発泡性部材80は、現像ロール72に接触しつつ、回転軸79を軸として時計回り(図2において右回り)に回転し、現像室88へ供給された現像剤を現像ロール72に対して供給するとともに、現像ロール72が潜像を現像した後に現像ロール72の表面に残留して搬送される現像剤を現像ロール72から剥離する。また、回転軸79は、磁性体であるため、マグネットロール94との間で磁界を形成する。層厚規制部材82は、現像剤剥離供給部材78の上方に配置され、現像ロール72が感光体22Yに向けて搬送する現像剤の層厚を所定値に規制する。
【0031】
現像ロール72は、反時計回り(図2において左回り)に回転する感光体22Yに対向して回転する非磁性の回転部材であるスリーブ92と、このスリーブ92内に固定配置された磁石部材であるマグネットロール94とを有する。スリーブ92は、例えば外径が12mm以下の円筒状のアルミニウム又はステンレス鋼などからなり、感光体22Yとの間に所定の間隔をあけて時計回り(図2において右回り)に回転するようにされている。
【0032】
マグネットロール94は、例えばフェライト磁石又はプラスチック樹脂磁石などを金属製のシャフト95に固定したものであり、例えば外面側に1つのS極(主極)である磁極96と、2つのN極である磁極98,100が配置されている。磁極96及び磁極98,100は、それぞれスリーブ92の法線方向を含む方向に磁界を形成するとともに、相互に磁界に影響を与えている。
図2中の太破線は、スリーブ92の表面からの法線方向の距離が、スリーブ92の表面上における法線方向の磁界の強さ又は磁束密度の大きさを示しており、例えば磁極96周辺のスリーブ92の表面では磁束密度の最大値が100mT以上となっている。
なお、マグネットロール94は、ロールの外面に磁極が位置するように磁石を配置して構成されてもよいし、着磁された部材によって構成されてもよい。
【0033】
磁極96(第1の磁極)は、スリーブ92を挟んで感光体22Yに対向するように配置されており、感光体22Yに向けてスリーブ92の法線方向の磁界の強さが最大となる方向s1におけるスリーブ92表面上の法線方向の磁束密度が所定値(例えば100mT)となるようにされている。
【0034】
磁極98(第2の磁極)は、感光体22Yと層厚規制部材82との間に配置されており、上方に向けてスリーブ92の法線方向の磁界の強さが最大となる方向n1におけるスリーブ92表面上の法線方向の磁束密度が所定値(例えば40mT)となるようにされている。
【0035】
磁極100(第3の磁極)は、磁極96に対してスリーブ92の回転方向下流側に配置されており、下方に向けてスリーブ92の法線方向の磁界の強さが最大となる方向n2におけるスリーブ92表面上の法線方向の磁束密度が所定値(例えば40mT)となるようにされている。
以下、方向s1を囲む磁極96側の太破線を太破線S1と、方向n1を囲む磁極98側の太破線を太破線N1と、方向n2を囲む磁極100側の太破線を太破線N2と略記する。
【0036】
図3は、現像ロール72及び現像剤供給部材78と、スリーブ92の法線方向及び接線方向の磁束密度の大きさとの位置関係を示す図2の拡大図である。
ここで、上述した方向n1と方向n2とがなす角度θ1は、磁極96を挟んで180度未満になるようにされている。さらに、方向n1と方向s1とがなす角度θ2は90度以下(最大でも90度)とされており、方向s1と方向n2とがなす角度θ3も90度以下(最大でも90度)となるようにされている。
また、図3において、太破線は、スリーブ92の表面からの法線方向の距離が、スリーブ92の表面上における法線方向の磁束密度の大きさを示しており、太破線と太破線との間でスリーブ92から外側に向けて延びる細破線は、スリーブ92の表面からの法線方向の距離が、スリーブ92の表面上における接線方向の磁束密度の大きさを示している。
【0037】
磁極98及び磁極100は、磁極100よりもスリーブ92の回転方向下流側、且つ磁極98よりもスリーブ92の回転方向上流側(磁性体からなる回転軸79に対向する方向)に、磁極96が形成する磁界と同極性の磁界であり、スリーブ92の法線方向の磁束密度の大きさが太破線S2によって示される領域を形成している。つまり、磁極98と磁極100との間にS極の磁極が設けられていなくても(空間Aが設けられていても)、太破線S2によってスリーブ92の法線方向の磁束密度の大きさが示される磁界が存在する。
【0038】
そして、上述した方向n1と方向s1との間には、細破線H1によってスリーブ92の接線方向の磁束密度の大きさが示される磁界が存在する。また、方向s1と方向n2との間には、細破線H2によってスリーブ92の接線方向の磁束密度の大きさが示される磁界が存在する。さらに、太破線N2と太破線S2との間、及び太破線S2と太破線N1との間には、細破線H3及び細破線H4によってスリーブ92の接線方向の磁束密度の大きさが示される磁界が存在する。
【0039】
図4は、スリーブ92の法線方向の磁束密度の分布と現像剤供給部材78との位置関係を示す図2の拡大図である。なお、図3に示した構成部分、方向、太破線及び細破線と同一のものには、同一の符号が付してある。
太破線N2と太破線S2との間には、スリーブ92の法線方向の磁束密度が略0となる点Bが存在し、太破線N1と太破線S2との間には、スリーブ92の法線方向の磁束密度が略0となる点Cが存在している。つまり、点Bは、磁極98によるスリーブ92の法線方向の磁界の強さが略0となるスリーブ92の回転方向上流側の位置を示している。また、点Cは、磁極100によるスリーブ92の法線方向の磁界の強さが略0となるスリーブ92の回転方向下流側の位置を示している。
【0040】
現像剤供給部材78は、点Bよりもスリーブ92の回転方向下流側に配置されており、点Bを通るスリーブ92の法線方向の線分b1と、点Cを通るスリーブ92の法線方向の線分c1とに挟まれる太線Dで示された領域内でスリーブ92に接触している。
【0041】
図5は、スリーブ92と現像剤供給部材78とが接触している領域の詳細を示す図2の拡大図である。なお、図4に示した構成部分、太破線、細破線及び点(位置)と同一のものには、同一の符号が付してある。
現像剤供給部材78は、点Bよりもスリーブ92の回転方向下流側、且つ点Cよりもスリーブ92の回転方向上流側でスリーブ92に対して所定の接触幅(ニップ幅)を形成するように圧接されている。また、現像剤供給部材78は、細破線H3からも細破線H4からも外れた細破線(スリーブ92の接線方向の磁束密度がほぼ0となる太破線Eの領域)でスリーブ92に接触している。上述したように、スリーブ92及び現像剤供給部材78が同一方向に回転しており、現像剤供給部材78は、スリーブ92の回転方向に対する接触部分の下流側端(点F)側で現像剤を現像ロール72に対して供給し、接触部分の上流側端(点G)側で現像ロール72から現像剤を剥離する。
【0042】
次に、磁極96が形成する磁界に対する磁極98及び磁極100の作用について説明する。
図2に示した現像装置28Yは、磁極96がS極であり、他の磁極98及び磁極100がN極であり、方向n1と方向n2とがなす角度θ1が磁極96を挟んで180度未満であるため、角度θ1が180度以上である場合に比べて、磁極96による磁界の強さが強くなっている。
【0043】
現像剤搬送路84及び現像剤搬送路86を介して搬送された現像剤は、現像剤供給手段でもある現像剤剥離供給部材78により現像ロール72に供給され、スリーブ92の表面に付着する。スリーブ92に付着して搬送される現像剤は、層厚規制部材82により層厚を規制されて、所定の層厚で感光体22Yに向けて搬送され、感光体22Yに書き込まれた静電潜像をトナーにより現像する。現像後にスリーブ92に付着して残っている現像剤は、現像剤剥離手段でもある現像剤供給部材78により、スリーブ92から剥離される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概要を示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る現像装置の構成を示す断面図である。
【図3】現像ロール及び現像剤供給部材と、スリーブの法線方向及び接線方向の磁束密度の大きさとの位置関係を示す図2の拡大図である。
【図4】スリーブの法線方向の磁束密度の分布と現像剤供給部材との位置関係を示す図2の拡大図である。
【図5】スリーブと現像剤供給部材とが接触している領域の詳細を示す図2の拡大図である。
【符号の説明】
【0045】
10 画像形成装置
14 画像形成部
22Y、22M、22C、22B 感光体
28Y、28M、28C、28B 現像装置
36Y、36M、36C、36B トナー収容室
42 転写ユニット
52 定着装置
70 現像装置本体
72 現像ロール
74 第1の攪拌搬送部材
76 第2の攪拌搬送部材
78 現像剤剥離供給部材
79 回転軸
80 発泡性部材
82 層厚規制部材
84,86 現像剤搬送路
88 現像室
92 スリーブ
94 マグネットロール
95 シャフト
96 磁極(S極)
98,100 磁極(N極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性のトナー及び磁性のキャリアを含む現像剤を収容する現像剤収容部と、この現像剤収容部が収容する現像剤を像保持体に向けて搬送する現像体と、前記現像剤収容部が収容する現像剤を前記現像体に向けて供給する現像剤供給手段と、前記現像体が搬送する現像剤を前記現像体から剥離する現像剤剥離手段とを有し、前記現像体は、像保持体に対向して回転する非磁性の回転部材と、この回転部材内に配置された磁石部材とを具備し、前記磁石部材は、像保持体に向けて前記回転部材の法線方向に磁界を形成する第1の磁極と、この第1の磁極とは極性が異なり、前記第1の磁極よりも前記回転部材の回転方向上流側に配置された第2の磁極と、前記第1の磁極とは極性が異なり、前記第1の磁極よりも前記回転部材の回転方向下流側に配置された第3の磁極とからなる3つの磁極のみを外面側に具備し、前記第2の磁極及び前記第3の磁極は、前記回転部材の法線方向の磁界の強さが最大となる方向それぞれが前記第1の磁極を挟んで形成する角度が180度未満であり、前記現像剤剥離手段は、前記第3の磁極よりも前記回転部材の回転方向下流側、且つ前記第2の磁極よりも前記回転部材の回転方向上流側で前記回転部材に対向し、前記現像剤供給手段は、前記現像剤剥離手段よりも前記回転部材の回転方向下流側、且つ前記第2の磁極よりも前記回転部材の回転方向上流側で前記回転部材に対向するよう設けられている現像装置。
【請求項2】
前記現像剤供給手段及び前記現像剤剥離手段は、前記回転部材に接触しつつ回転する現像剤剥離供給部材によって形成されている請求項1記載の現像装置。
【請求項3】
前記第2の磁極及び前記第3の磁極は、前記第3の磁極よりも前記回転部材の回転方向下流側、且つ前記第2の磁極よりも前記回転部材の回転方向上流側に、前記第1の磁極が形成する磁界と同極性の磁界を形成する請求項2記載の現像装置。
【請求項4】
前記第3の磁極は、該第3の磁極による前記回転部材の法線方向の磁界の強さが最大となる方向と、前記第1の磁極による前記回転部材の法線方向の磁界の強さが最大となる方向とがなす角度が90度以下となるように、配置されている請求項2又は3記載の現像装置。
【請求項5】
前記第2の磁極は、該第2の磁極による前記回転部材の法線方向の磁界の強さが最大となる方向と、前記第1の磁極による前記回転部材の法線方向の磁界の強さが最大となる方向とがなす角度が90度以下となるように、配置されている請求項2又は3記載の現像装置。
【請求項6】
前記現像剤剥離供給部材は、前記第2の磁極による前記回転部材の法線方向の前記第1の磁極とは異なる極性の磁界の強さが略0となる前記回転部材の回転方向上流側の位置よりも、前記回転部材の回転方向上流側から現像剤を供給し、前記第3の磁極による前記回転部材の法線方向の前記第1の磁極とは異なる極性の磁界の強さが略0となる前記回転部材の回転方向下流側の位置よりも、前記回転部材の回転方向下流側から現像剤を剥離する請求項2乃至5いずれか記載の現像装置。
【請求項7】
前記現像剤剥離供給部材は、前記第2の磁極及び前記第3の磁極による前記回転部材の接線方向の前記第1の磁極が形成する磁界と同極性の磁界の強さが略0となる領域で現像剤を供給するとともに、現像剤を剥離する請求項2乃至6いずれか記載の現像装置。
【請求項8】
前記現像剤剥離供給部材は、回転軸が磁性体からなる請求項2乃至7いずれか記載の現像装置。
【請求項9】
前記現像剤剥離供給部材は、弾性を有する発泡性部材が前記回転部材に接触しつつ回転する請求項2乃至8いずれか記載の現像装置。
【請求項10】
前記現像剤剥離供給部材は、前記回転部材と同一方向に回転する請求項2乃至9いずれか記載の現像装置。
【請求項11】
像保持体と、この像保持体に形成された潜像を現像剤により現像する現像装置と、この現像装置により現像された現像剤像を記録媒体に転写する転写手段と、この転写手段により記録媒体に転写された現像剤像を記録媒体に定着させる定着装置とを有し、前記現像装置は、非磁性のトナー及び磁性のキャリアを含む現像剤を収容する現像剤収容部と、この現像剤収容部が収容する現像剤を像保持体に向けて搬送する現像体と、前記現像剤収容部が収容する現像剤を前記現像体に向けて供給する現像剤供給手段と、前記現像体が搬送する現像剤を前記現像体から剥離する現像剤剥離手段とを有し、前記現像体は、像保持体に対向して回転する非磁性の回転部材と、この回転部材内に配置された磁石部材とを具備し、前記磁石部材は、像保持体に向けて前記回転部材の法線方向に磁界を形成する第1の磁極と、この第1の磁極とは極性が異なり、前記第1の磁極よりも前記回転部材の回転方向上流側に配置された第2の磁極と、前記第1の磁極とは極性が異なり、前記第1の磁極よりも前記回転部材の回転方向下流側に配置された第3の磁極とからなる3つの磁極のみを外面側に具備し、前記第2の磁極及び前記第3の磁極は、前記回転部材の法線方向の磁界の強さが最大となる方向それぞれが前記第1の磁極を挟んで形成する角度が180度未満であり、前記現像剤剥離手段は、前記第3の磁極よりも前記回転部材の回転方向下流側、且つ前記第2の磁極よりも前記回転部材の回転方向上流側で前記回転部材に対向し、前記現像剤供給手段は、前記現像剤剥離手段よりも前記回転部材の回転方向下流側、且つ前記第2の磁極よりも前記回転部材の回転方向上流側で前記回転部材に対向するよう設けられている画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−268576(P2008−268576A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111678(P2007−111678)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】