説明

球帯状シール体及びその製造方法

【課題】路面に撒かれた融雪剤に起因する塩害環境雰囲気及び高温酸化雰囲気下での使用においても密封性を維持することができると共に摩擦異音を発生することのない球帯状シール体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】球帯状シール体52は、円筒内面39、部分凸球面状面40及び環状端面41及び42によって規定された球帯状基体43と、部分凸球面状面40に一体的に形成された外層44とを備えており、球帯状基体43は、金網からなる補強材と、酸化抑制剤を含む耐熱材とを具備しており、外層44は、酸化抑制剤を含む耐熱材と固体潤滑剤と金網からなる補強材とが混在一体化されてなり、外層44の平滑な外表面48は、補強材の金網からなる面と固体潤滑剤からなる面とが混在してなり、環状端面41及び45には、酸化抑制剤を含む耐熱材と炭化硼素及び金属硼化物のうちの一方からなる筒状体51が一体的に形成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車排気管の球面継手に使用されて好適な球帯状シール体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図20は、自動車エンジンの排気通路の一例を示すもので、エンジンの各気筒(図示せず)で発生した排気ガスは、排気マニホールド触媒コンバータ600にまとめられ、排気管601及び排気管602を通じてサブマフラ603に送られる。このサブマフラ603を通過した排気ガスは、更に排気管604及び排気管605を介してマフラ(消音器)606へと送られ、このマフラ606を通じて大気中に放出される。
【0003】
これら排気管601及び602並びに604及び605や、サブマフラ603及びマフラ606等の排気系部材にあっては、エンジンのロール挙動及び振動などにより繰返し応力を受ける。とくに高速回転で高出力エンジンの場合は、排気系部材に加わる応力はかなり大きなものとなる。したがって、排気系部材は疲労破壊を招く虞があり、またエンジンの振動が排気系部材を共振させ、車室内静粛性を悪化させる場合もある。このような問題を解決するために、排気マニホールド触媒コンバータ600と排気管601との連結部607及び排気管604と排気管605との連結部608を排気管球面継手又は蛇腹式継手等の振動吸収機構によって可動連結することにより、自動車エンジンのロール挙動及び振動などにより排気系部材に繰返し受ける応力が吸収され、当該排気系部材の疲労破壊等が防止されると共にエンジンの振動が排気系部材を共振させ車室内の静粛性を悪化させる問題も解決されるという利点を有する。
【0004】
ここで、従来技術としての球面管継手の一例を図21に基づいて説明すると、次のとおりである。
【0005】
図21に示す排気管球面継手おいて、エンジン側に連結された上流側排気管100の外周面には、管端部101を残してフランジ102が立設されており、管端部101には、外面に部分凸球面部201と部分凸球面部201に連なる円筒面部202を備えた球帯状シール体200が貫通孔を規定する円筒内面203において嵌合されており、部分凸球面部201の大径側の環状端面204において球帯状シール体200がフランジ102に当接されて着座せしめられており、上流側排気管100と対峙して配されていると共にマフラ側に連結された下流側排気管300には、凹球面部301と凹球面部301に連接されたフランジ部302を一体に備えた径拡大部303が固着されており、凹球面部301の内面304が球帯状シール体200の部分凸球面部201の外表面205に摺接されている。
【0006】
上記排気管球面継手において、一端がフランジ102に固定され、他端が径拡大部303のフランジ部302を挿通して配された一対のボルト400とボルト400の膨大頭部及びフランジ部302の間に配された一対のコイルバネ500とにより、下流側排気管300には、常時、上流側排気管100方向にバネ力が付勢されている。そして、排気管球面継手は、上、下流側排気管100、300に生じる相対角変位に対しては、球帯状シール体200の部分凸球面部201の外表面205と下流側排気管300の端部に形成された径拡大部303の凹球面部301の内面304との摺接でこれを許容するように構成されている。
【0007】
上記排気管球面継手に用いられる球帯状シール体としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。この特許文献1に記載された球帯状シール体は、金網から補強材と膨張黒鉛シートからなる耐熱材とを重ね合わせたのち円筒状に複数回捲回し、これを軸線方向に圧縮成形して形成されるもので、球帯状シール体は、中央部に貫通孔を規定する円筒内面を備え、外面に部分凸球面状面と該部分凸球面状面に連なる円筒面部とを備えている。そして、この球帯状シール体は、耐熱性を有し、相手材とのなじみ性が良好であることからシール性に優れ、また衝撃強度も著しく改善されているという利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭54−76759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、この球帯状シール体が組み込まれて使用される自動車エンジンの排気系において、寒冷地においては、路面凍結防止剤としての融雪剤が路面に撒かれ、融雪剤として撒かれた主成分をなす塩化カルシウムや塩化ナトリウムが水に溶け、液体化し、水しぶきとして自動車のボディ部分などに付着して錆を発生させたり、また球帯状シール体に付着した塩化物が高温下において黒鉛の消失を促進させる触媒として作用することが知られている。
【0010】
すなわち、図21に示す環状部位Q(球帯状シール体200の円筒面部202に相当)は大気中に直接晒されており、当該部位は高温の酸化雰囲気となっている。したがって、この高温での酸化雰囲気での使用において、当該環状部位Qに融雪剤の塩化カルシウムや塩化ナトリウム等の塩化物が付着した場合においては、当該塩化物の触媒作用と相俟って球帯状シール体を形成する膨張黒鉛の酸化消失を促進し、球帯状シール体の大径側の環状端面と該環状端面が接触するフランジとのシール面での密封性が損なわれるという問題がある。
【0011】
本発明は上記諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、路面に撒かれた融雪剤に起因する塩害環境雰囲気及び高温酸化雰囲気下での使用においても密封性を維持することができると共に摩擦異音を発生することのない球帯状シール体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の排気管継手に用いられる球帯状シール体は、円筒内面、部分凸球面状面並びに部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面によって規定された球帯状基体と、この球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えており、球帯状基体は、金網からなる補強材と、補強材の金網の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されていると共に圧縮された酸化抑制剤を含む膨張黒鉛からなる耐熱材とを具備しており、外層は、酸化抑制剤を含む膨張黒鉛からなる耐熱材と固体潤滑剤と金網からなる補強材とが混在一体化されてなり、外層の平滑な外表面は、補強材の金網からなる面と固体潤滑剤からなる面とが混在してなり、該球帯状基体の部分凸球面状面の大径側及び外層の大径側の環状端面には、酸化抑制剤を含む膨張黒鉛からなる耐熱材と炭化硼素及び金属硼化物のうちの一方からなる筒状体が一体的に形成されてなる。
【0013】
本発明の球帯状シール体によれば、大気中に直接晒される球帯状シール体の円筒面部、すなわち球帯状基体の部分凸球面状面の大径側の環状端面及び外層の大径側の環状端面に一体的に形成された筒状体は、酸化抑制剤を含む膨張黒鉛からなる耐熱材と炭化硼素及び金属硼化物のうちの少なくとも一方とで形成されており、当該耐熱材は塩害環境雰囲気及び高温酸化雰囲気下において優れた耐酸化性及び耐熱性を有していることから、筒状体を形成する耐熱材、特に膨張黒鉛の酸化消耗が抑制され、結果として筒状体の端面と該端面と接するフランジ部との間からの排気ガスの漏洩は極力防止される。
【0014】
本発明の球帯状シール体において、酸化抑制剤は、燐酸塩又は燐酸塩及び五酸化燐を含有しているとよい。
【0015】
燐酸塩は、好ましくは、第一燐酸リチウム(LiHPO)、第二燐酸リチウム(LiHPO)、第一燐酸カルシウム〔Ca(HPO〕、第二燐酸カルシウム(CaHPO)、第一燐酸アルミニウム〔Al(HPO〕、第二燐酸アルミニウム〔Al(HPO〕から選択され、この燐酸塩は、膨張黒鉛に対し0.1〜16質量%の割合で含有されるとよい。
【0016】
五酸化燐は、特に燐酸塩と共に含有されて、膨張黒鉛に対する酸化抑制作用を一層向上させるもので、その含有量は、好ましい例では、0.05〜5質量%である。
【0017】
本発明の球帯状シール体において、筒状体は、好ましい例では、炭化硼素及び金属硼化物の少なくとも一方を5〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%、さらに好ましくは10〜30質量%含有する。
【0018】
金属硼化物としては、好ましい例では、元素周期律表の第IVa族、第Va族及び第VIa族の中から選択される。具体的には、ホウ化チタン(TiB)、二ホウ化チタン(TiB)、二ホウ化ジルコニウム(ZrB)、十二ホウ化ジルコニウム(ZrB12)、二ホウ化ハフニウム(HfB)、二ホウ化バナジウム(VB)、二ホウ化ニオブ(NbB)、二ホウ化タンタル(TaB)、ホウ化クロム(CrB)、二ホウ化クロム(CrB)、ホウ化モリブデン(MoB)、二ホウ化モリブデン(MoB)、五ホウ化二モリブデン(Mo)、ホウ化タングステン(WB)、二ホウ化タングステン(WB)、ホウ化二タングステン(WB)、五ホウ化二タングステン(W)から少なくとも一つが選択されるとよい。
【0019】
これら炭化硼素及び金属硼化物は、高温において酸素と反応して酸化硼素(B)を生成し、これが550℃以上の温度でガラス状となって膨張黒鉛を覆うことによって当該膨張黒鉛の酸化抑制効果を発揮するものと推察される。
【0020】
固体潤滑剤は、六方晶窒化硼素を23〜57質量%、アルミナ水和物を5〜15質量%及び四ふっ化エチレン樹脂を33〜67質量%含んでいるのが好ましく使用される。
【0021】
相手材との摺動面となる球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層は、酸化抑制剤を含む膨張黒鉛からなる耐熱材と、六方晶窒化硼素23〜57質量%と、アルミナ水和物5〜15質量%及び四ふっ化エチレン樹脂33〜67質量%からなる固体潤滑剤と、金網からなる補強材とが圧縮されて補強材の金網の網目に固体潤滑剤及び耐熱材が充填されて当該固体潤滑剤及び耐熱材と補強材とが混在一体化されて形成されており、該外層の外表面は、補強材の金網からなる面と固体潤滑剤からなる面とが混在した平滑な面に形成されている本発明に係る球帯状シール体では、該固体潤滑剤の外表面からの脱落を回避し得、結果として相手材とは固体潤滑剤と補強材との混在した平滑な面で摺動するので、摩擦異音の発生を極力防止することができる。
【0022】
円筒内面、部分凸球面状面並びに部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面によって規定される球帯状基体と、この球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えていると共に排気管継手に用いられる本発明による球帯状シール体の製造方法は、(a)酸化抑制剤を含有する膨張黒鉛シートを準備する工程と、(b)金属細線を織ったり編んだりして得られる金網を準備し、この金網を前記膨張黒鉛シートに重ね合わせて重合体を形成したのち、この重合体を円筒状に捲回して筒状母材を得る工程と、(c)前記膨張黒鉛シートと同様の別の膨張黒鉛シートを準備し、該別の膨張黒鉛シートの一方の表面に固体潤滑剤の水性ディスパージョンを被覆し、乾燥して別の膨張黒鉛シートの表面に固体潤滑剤の被覆層を形成する工程と、(d)該被覆層が形成された別の膨張黒鉛シートを、金属細線を織ったり編んだりして得られる別の金網からなる二つの層間に挿入すると共に当該別の膨張黒鉛シートを挿入した金網を一対の円筒ローラ間の隙間に供給して加圧し、別の金網の網目に別の膨張黒鉛シートと当該膨張黒鉛シートの表面に形成された被覆層の固体潤滑剤とを充填して、表面に別の金網からなる面と固体潤滑剤からなる面とが混在して露出した外層形成部材を形成する工程と、(e)前記筒状母材の外周面に前記外層形成部材を被覆層を外側にして捲回し、予備円筒成形体を形成する工程と、(f)該予備円筒成形体を金型のコア外周面に挿入し、該コアを金型内に配置する工程と、(g)酸化抑制剤を含有する膨張黒鉛シートの粉砕粉末に、炭化硼素及び金属硼化物の少なくとも一方を配合、混合した混合粉末を圧縮成形した予備成形筒状体を準備する工程と、(h)金型内に配置された予備円筒成形体の端部に、前記予備成形筒状体を載置すると共に金型内において該予備円筒成形体と該予備円筒成形体の端面に載置された予備成形筒状体とをコア軸方向に圧縮成形する工程とを具備しており、球帯状基体は、金網からなる補強材と、補強材の金網の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されていると共に圧縮された酸化抑制剤を含む膨張黒鉛からなる耐熱材とを具備しており、外層は、酸化抑制剤を含む膨張黒鉛からなる耐熱材と固体潤滑剤と別の金網からなる補強材とが混在一体化されてなり、該外層の平滑な外表面は、補強材の金網からなる面と固体潤滑剤からなる面とが混在されてなり、該球帯状基体の部分凸球面状面の大径側の環状端面及び外層の大径側の環状端面には、酸化抑制剤を含む膨張黒鉛化ならなる耐熱材と炭化硼素及び金属硼化物のうちの少なくとも一方とからなる筒状体が一体的に形成されている。
【0023】
本発明の球帯状シール体の製造方法によれば、酸化抑制剤を含有した膨張黒鉛シートからなる耐熱材を粉砕して形成した粉砕粉末に、炭化硼素及び金属硼化物のうちの少なくとも一方を配合、混合した混合粉末を圧縮成形して予備成形筒状体を作製し、これを金型内に配置された予備円筒成形体の端部に配置すると共に該予備成形筒状体と予備円筒成形体とを圧縮成形することにより、該球帯状基体の部分凸球面状面の大径側の環状端面及び外層の大径側の環状端面に筒状体を強固に一体的に形成することができ、そして、この予備成形筒状体を圧縮して形成された筒状体では、膨張黒鉛の具有する可撓性及びなじみ性により、該筒状体の端面とフランジとが密接し、当該密接面からの排気ガスの漏洩が極力防止される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、球帯状シール体は、円筒内面、部分凸球面状面並びに部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面によって規定された球帯状基体と、この球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えており、該球帯状基体の部分凸球面状面の大径側の環状端面及び外層の大径側の環状端面に一体的に形成された筒状体は、酸化抑制剤を含む膨張黒鉛からなる耐熱材と炭化硼素及び金属硼化物のうちの少なくとも一方とで形成されており、当該耐熱材は塩害環境雰囲気及び高温酸化雰囲気下での使用において優れた耐酸化性及び耐熱性を有していることから、筒状体を形成する、特に膨張黒鉛の酸化消耗が抑制され、結果として球帯状シール体の塩害環境雰囲気及び高温酸化雰囲気下での使用においても、筒状体の端面と該端面と接するフランジ部との間からの排気ガスの漏洩を極力防止することができる。
【0025】
また、本発明の球帯状シール体の製造方法においては、酸化抑制剤を含有する耐熱材を粉砕して作製した粉砕粉末に、炭化硼素及び金属硼化物のうちの少なくとも一方を配合、混合して作製した混合粉末を圧縮成形することにより形成された予備成形円筒体を該球帯状基体の部分凸球面状面の大径側の環状端面及び外層の環状端面にわたって強固に一体化することができ、該予備成形円筒体によって形成された筒状体は、膨張黒鉛が具有する可撓性及びなじみ性により排気管球面継手の排気管外周面に立設されたフランジに密接するので、当該筒状体とフランジとの間の密接面からの排気ガスの漏洩は極力防止される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明の実施の形態の一例で製造された球帯状シール体の縦断面図である。
【図2】図2は、図1に示す球帯状シール体の一部拡大断面図である。
【図3】図3は、本発明の球帯状シール体の製造工程における補強材の形成方法の説明図である。
【図4】図4は、本発明の球帯状シール体の製造工程における耐熱材の斜視図である。
【図5】図5は、補強材の金網の網目を示す平面図である。
【図6】図6は、本発明の球帯状シール体の製造工程における重合体の斜視図である。
【図7】図7は、本発明の球帯状シール体の製造工程における筒状母材の平面図である。
【図8】図8は、図7に示す筒状母材の縦断面図である。
【図9】図9は、本発明の球帯状シール体の製造工程における耐熱材の斜視図である。
【図10】図10は、本発明の球帯状シール体の製造工程における固体潤滑剤の被覆層を備えた耐熱材の断面図である。
【図11】図11は、本発明の球帯状シール体の製造工程における外層形成部材の第一の形成方法の説明図である。
【図12】図12は、本発明の球帯状シール体の製造工程における外層形成部材の第一の形成方法の説明図である。
【図13】図13は、本発明の球帯状シール体の製造工程における第一の形成方法で得られた外層形成部材の縦断面図である。
【図14】図14は、本発明の球帯状シール体の製造工程における外層形成部材の第二の形成方法の説明図である。
【図15】図15は、本発明の球帯状シール体の製造工程における外層形成部材の第二の形成方法の説明図である。
【図16】図16は、本発明の球帯状シール体の製造工程における予備円筒成形体の平面図である。
【図17】図17は、本発明の球帯状シール体の製造工程における予備筒状体の断面図である。
【図18】図18は、本発明の球帯状シール体の製造工程における金型中に予備円筒成形体及び予備筒状体を挿入した状態を示す断面図である。
【図19】図19は、本発明の球帯状シール体を組込んだ排気管球面継手を示し、図19において、(a)は、左側面図であり、(b)は、縦断面図である。
【図20】図20は、エンジンの排気系の説明図である。
【図21】図21は、従来の球帯状シール体を組込んだ排気管球面継手を示し、図21において、(a)は、左側面図であり、(b)は、縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明及びその実施の形態を、図に示す好ましい実施例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に何等限定されないのである。
【0028】
本発明の球帯状シール体における構成材料及び球帯状シール体の製造方法について説明する。
【0029】
<耐熱材I及びその製造方法について>
濃度98%の濃硫酸を攪拌しながら、酸化剤として過酸化水素の60%水溶液を加え、これを反応液とする。この反応液を冷却して10℃の温度に保持し、該反応液に粒度30〜80メッシュの鱗片状天然黒鉛粉末を添加して30分間反応を行う。反応後、吸引濾過して酸処理黒鉛粉末を分離し、該酸処理黒鉛粉末を水で撹拌して吸引濾過するという洗浄作業を2回繰り返し、酸処理黒鉛粉末から硫黄分を充分除去する。ついで、硫酸分を充分除去した酸処理黒鉛粉末を乾燥炉で乾燥し、これを酸処理黒鉛粉末とする。
【0030】
上記酸処理黒鉛粉末を攪拌しながら、該酸処理黒鉛粉末に燐酸塩として濃度50%の第一燐酸アルミニウム〔Al(HPO〕水溶液をメタノールで希釈した溶液を噴霧状に配合し、均一に撹拌して湿潤性を有する混合物を作製する。この湿潤性を有する混合物を、120℃の温度に保持した乾燥炉で2時間乾燥する。ついで、これを950〜1200℃の温度で1〜10秒間加熱(膨張)処理して分解ガスを発生せしめ、そのガス圧により黒鉛層間を拡張して膨張させた膨張黒鉛粒子(膨張倍率240〜300倍)を形成する。この膨張処理工程において、第一燐酸アルミニウムは構造式中の水が脱離する。この膨張黒鉛粒子を所望のロール隙間に調整した双ローラ装置に供給してロール成形し、所望の厚さの膨張黒鉛シートを作製し、この膨張黒鉛シートを耐熱材Iとする。
【0031】
このようにして作製された耐熱材Iには、膨張黒鉛に第一燐酸アルミニウムが0.1〜16質量%の割合で含有されている。この燐酸塩を含有した膨張黒鉛は、膨張黒鉛自体の耐熱性が向上されると共に酸化抑制作用が付与されるため、例えば600℃ないし600℃を超える高温領域での使用を可能とする。燐酸塩としては、上記第一燐酸アルミニウムの他に、第二燐酸リチウム(LiHPO)、第一燐酸カルシウム〔Ca(HPO〕、第二燐酸カルシウム(CaHPO)、第二燐酸アルミニウム〔Al(HPO〕を使用することができる。
【0032】
<耐熱材II及びその製造方法>
上記酸処理黒鉛粉末と同様の方法で得た酸処理黒鉛粉末を攪拌しながら、該酸処理黒鉛粉末に燐酸塩として濃度50%の第一燐酸アルミニウム水溶液と燐酸として濃度84%のオルト燐酸(HPO)水溶液をメタノールで希釈した溶液を噴霧状に配合し、均一に撹拌して湿潤性を有する混合物を作製する。この湿潤性を有する混合物を、120℃の温度に保持した乾燥炉で2時間乾燥する。ついで、これを950〜1200℃の温度で1〜10秒間加熱(膨張)処理して分解ガスを発生せしめ、そのガス圧により黒鉛層間を拡張して膨張させた膨張黒鉛粒子(膨張倍率240〜300倍)を形成する。この膨張処理工程において、第一燐酸アルミニウムは構造式中の水が脱離し、オルト燐酸は脱水反応を生じて五酸化燐を生成する。この膨張黒鉛粒子を所望のロール隙間に調整した双ローラ装置に供給してロール成形し、所望の厚さの膨張黒鉛シートを作製し、この膨張黒鉛シートを耐熱材IIとする。
【0033】
このようにして作製された耐熱材IIには、膨張黒鉛に第一燐酸アルミニウムが0.1〜16質量%及び五酸化燐が0.05〜5質量%の割合で含有されている。この燐酸塩及び五酸化燐を含有した膨張黒鉛は、膨張黒鉛自体の耐熱性が耐熱材Iよりも耐熱性が一層向上されると共に酸化抑制作用が付与されるため、耐熱材Iと同様、例えば600℃ないし600℃を超える高温領域での使用を可能とする。燐酸としては、上記オルト燐酸の他に、メタ燐酸(HPO)、ポリ燐酸などを使用することができる。
【0034】
耐熱材I及びIIには、密度が1.0〜1.15Mg/m程度で、厚さが、0.3〜0.6mm程度のシート材が使用されて好適である。
【0035】
<補強材について>
補強材は、鉄系としてオーステナイト系のSUS304、SUS310S、SUS316、フェライト系のSUS430などのステンレス鋼線、鉄線(JISG3532)もしくは亜鉛メッキ鉄線(JISG3547)又は銅系として銅−ニッケル合金(白銅)線、銅−ニッケル−亜鉛合金(洋白)線、黄銅線、ベリリウム銅線からなる金属細線を一本又は二本以上を使用して織ったり、編んだりして形成される織組金網又は編組金網が使用される。
【0036】
金網を形成する金属細線において、線径は、0.28〜0.32mm程度のものが使用され、該線径の金属細線で形成された球帯状基体用の金網の網目の目幅(編組金網を示す図5参照)は縦4〜6mm、横3〜5mm程度のものが使用されて好適であり、外層用の金網の網目の目幅(図5参照)は縦2.5〜3.5mm、横1.5〜2.5mm程度のものが使用されて好適である。
【0037】
<固体潤滑剤について>
固体潤滑剤は、六方晶窒化硼素(以下「h−BN」と略称する。)23〜57質量%、アルミナ水和物5〜15質量%及び四ふっ化エチレン樹脂(以下「PTFE」と略称する。)33〜67質量%を含む潤滑組成物からなる。
【0038】
固体潤滑剤は、製造過程においては、分散媒としての酸を含有するアルミナ水和物を分散含有した水素イオン濃度(pH)が2〜3を呈するアルミナゾルに、h−BN粉末及びPTFE粉末を分散含有した水性ディスパージョンであって、h−BN粉末23〜57質量%とPTFE粉末33〜67質量%及びアルミナ水和物5〜15質量%とを含む潤滑組成物を固形分30〜50質量%分散含有した水性ディスパージョンの形態で使用される。水性ディスパージョンを形成するh−BN及びPTFEは、可及的に微粉末であることが好ましく、これらは平均粒径10μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下の微粉末が使用されて好適である。
【0039】
水性ディスパージョンにおけるアルミナゾルの分散媒としての水に含有される酸は、アルミナゾルを安定化させるための解膠剤として作用するものである。そして、酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、アミド硫酸等の無機酸が挙げられるが、特には硝酸が好ましい。
【0040】
水性ディスパージョンにおけるアルミナゾルを形成するアルミナ水和物としては、組成式Al・nHO(組成式中、0<n<3)で表わされる化合物である。該組成式において、nは、通常、0(零)を超えて3未満の数、好ましくは0.5〜2、さらに好ましくは0.7〜1.5程度である。アルミナ水和物としては、例えばベーマイト(Al・HO)やダイアスポア(Al・HO)などのアルミナ一水和物(水酸化酸化アルミニウム)、ギブサイト(Al・3HO)やバイヤライト(Al・3HO)などのアルミナ三水和物、擬ベーマイトなどが挙げられる。
【0041】
<予備成形筒状体について>
前記耐熱材I又は耐熱材IIを粉砕して粒度200〜350μmの粉砕粉末を作製し、この粉砕粉末に炭化硼素(以下「BC」と略称する。)及び金属硼化物のいずれか一方を5〜50質量%配合、混合してBC及び金属硼化物のいずれか一方を5〜50質量%含有した混合粉末を作製する。この混合粉末を筒状の中空部を有する金型内に装填し、圧縮して予備成形筒状体を作製する。
【0042】
ここで、上記混合粉末を使用して圧縮成形体を作製し、該圧縮成形体の高温での耐酸化性及び塩化ナトリウム(以下「NaCl」という。)水溶液浸漬試験を実施し、該圧縮成形体の酸化消耗率及びNaClに対する耐性について試験した。その試験方法及び試験結果につて説明する。
【0043】
<供試体Aの作製>
第一燐酸アルミニウムを4質量%含有した耐熱材Iを粉砕し、粒度250〜300μmの粉砕粉末を作製したのち、該粉砕粉末にBCを10質量%、20質量%、30質量%、50質量%をそれぞれ配合、混合して得た混合粉末を、成形圧力1.4トン/cmで圧縮成形し、一辺が30mm、厚さ6mmの方形状の成形体を作製した。
【0044】
上記供試体Aで作製された供試体は、
供試体A−1:第一燐酸アルミニウム4質量%、BC10質量%、残部膨張黒鉛からなる成形体、
供試体A−2:第一燐酸アルミニウム4質量%、BC20質量%、残部膨張黒鉛からなる成形体、
供試体A−3:第一燐酸アルミニウム4質量%、BC30質量%、残部膨張黒鉛からなる成形体、
供試体A−4:第一燐酸アルミニウム4質量%、BC50質量%、残部膨張黒鉛からなる成形体、
である。
【0045】
<供試体Bの作製>
第一燐酸アルミニウムを4質量%含有した耐熱材Iを粉砕し、粒度250〜300μmの粉砕粉末を作製したのち、該粉砕粉末に二ホウ化クロム(以下「CrB」と略称する。)を10質量%、20質量%、30質量%それぞれ配合、混合して得た混合粉末を、成形圧力1.4トン/cmで圧縮成形し、一辺が30mm、厚さ6mmの方形状の成形体を作製した。
【0046】
上記供試体Bで作製された供試体は、
供試体B−1:第一燐酸アルミニウム4質量%、CrB10質量%、残部膨張黒鉛からなる成形体、
供試体B−2:第一燐酸アルミニウム4質量%、CrB20質量%、残部膨張黒鉛からなる成形体、
供試体B−3:第一燐酸アルミニウム4質量%、CrB30質量%、残部膨張黒鉛からなる成形体、
である。
【0047】
<供試体Cの作製>
第一燐酸アルミニウムを8質量%及び五酸化燐を1質量%含有した耐熱材IIを粉砕し、粒度250〜300μmの粉砕粉末を作製したのち、該粉砕粉末にBCを5質量%、10質量%、15質量%、20質量%、30質量%、50質量%をそれぞれ配合、混合して得た混合粉末を、成形圧力1.4トン/cmで圧縮成形し、一辺が30mm、厚さ6mmの方形状の成形体を作製した。
【0048】
上記供試体Cで作製された供試体は、
供試体C−1:第一燐酸アルミニウム8質量%、五酸化燐1質量%、BC5質量%、残部膨張黒鉛からなる成形体、
供試体C−2:第一燐酸アルミニウム8質量%、五酸化燐1質量%、BC10質量%、残部膨張黒鉛からなる成形体、
供試体C−3:第一燐酸アルミニウム8質量%、五酸化燐1質量%、BC15質量%、残部膨張黒鉛からなる成形体、
供試体C−4:第一燐酸アルミニウム8質量%、五酸化燐1質量%、BC20質量%、残部膨張黒鉛からなる成形体、
供試体C−5:第一燐酸アルミニウム8質量%、五酸化燐1質量%、BC30質量%、残部膨張黒鉛からなる成形体、
供試体C−6:第一燐酸アルミニウム8質量%、五酸化燐1質量%、BC50質量%、残部膨張黒鉛からなる成形体、
である。
【0049】
<供試体Dの作製>
第一燐酸アルミニウムを8質量%及び五酸化燐を1質量%含有した耐熱材IIを粉砕し、粒度250〜300μmの粉砕粉末を作製したのち、該粉砕粉末にCrBを10質量%、20質量%、30質量%それぞれ配合、混合して得た混合粉末を、成形圧力1.4トン/cmで圧縮成形し、一辺が30mm、厚さ6mmの方形状の成形体を作製した。
【0050】
上記供試体Dで作製された供試体は、
供試体D−1:第一燐酸アルミニウム8質量%、五酸化燐1質量%、CrB10質量%、残部膨張黒鉛からなる成形体、
供試体D−2:第一燐酸アルミニウム8質量%、五酸化燐1質量%、CrB20質量%、残部膨張黒鉛からなる成形体、
供試体D−3:第一燐酸アルミニウム8質量%、五酸化燐1質量%、CrB30質量%、残部膨張黒鉛からなる成形体、
である。
【0051】
次に、上記供試体A、B、C及びDについて、(1)750℃の大気中での供試体の酸化消耗率と、(2)NaClに対する耐性について試験した。その結果を表1に示す。
【0052】
<酸化消耗率の試験方法>
供試体A、B、C及びDを750℃の温度に保持した大気中に15時間暴露し、該供試体A、B、C及びDの試験前の質量に対する試験後の質量を測定し、酸化消耗率を算出した。
【0053】
<NaClに対する耐性の試験方法>
供試体A−2、B−2、C−2、C−4及びD−2を、濃度3質量%のNaCl水溶液を貯留した容器に室温(25℃)で20分間浸漬し、ついで各供試体をるつぼに入れて加熱し、600℃の温度で30分間保持した後、冷却して室温で10分間保持するという操作を1サイクルとして、5サイクル、10サイクル及び20サイクル経過後の各供試体の質量減少率(%)を測定した。
【0054】
【表1】

【0055】
表1中において、供試体E−1は、膨張黒鉛のみからなる膨張黒鉛シートからなる耐熱材、E−2は、第一燐酸アルミニウムを4質量%含有した耐熱I、そして、供試体E−3は、第一燐酸アルミニウムを8質量%及び五酸化燐を1質量%含有した耐熱材IIである。また、表1中の酸化消耗率に−(マイナス)の数値が示されているが、これは膨張黒鉛に含有されたBC及びCrBが酸素と反応して酸化硼素(B)を生成することによる質量増加である。
【0056】
試験結果から、供試体A、B、C及びDからなる成形体は、高温での酸化消耗率及びNaClの耐性においても低い値を示し、供試体Eとの比較において、NaCl等の塩化物が作用する塩害環境雰囲気及び高温雰囲気下で優れた耐酸化性及び耐熱性を有していることがわかる。
【0057】
次に、上記した構成材料からなる球帯状シール体の製造方法について、図面に基づき説明する。
【0058】
(第一工程)図3に示すように、線径0.28〜0.32mmの金属細線を円筒状に編んで形成した網目の目幅が縦4〜6mm程度、横3〜5mm程度(図5参照)の円筒状編組金網1をローラ2及び3間に通して所定の幅の帯状金網4を作製し、帯状金網4を所定の長さに切断した補強材5を準備する。
【0059】
(第二工程)図4に示すように、密度が1.0〜1.5Mg/m、好ましくは1.0〜1.2Mg/mの球帯状基体用の膨張黒鉛シート6(耐熱材I及び耐熱材IIのうちの一つからなる)を準備する。
【0060】
(第三工程)後述する球帯状シール体(図1参照)において、部分凸球面状面の小径側の環状端面に全体的に膨張黒鉛シート6が露出するようにすべく、図6に示すように、部分凸球面状面の小径側の環状端面となる補強材5の幅方向の一方の端縁7から膨張黒鉛シート6が幅方向に僅かにはみ出すと共に補強材5の幅方向の他方の端縁8と膨張黒鉛シート6とが合致するように、そして、膨張黒鉛シート6が補強材5の長さ方向の一方の端縁9から長さ方向にはみ出す一方、補強材5の長さ方向の端縁10と当該端縁10に対応する膨張黒鉛シート6の長さ方向の端縁11とが合致するようにして、膨張黒鉛シート6と補強材5とを互いに重ね合わせた重合体12を作製する。
【0061】
(第四工程)重合体12を図7に示すように、膨張黒鉛シート6を内側にしてうず巻き状であって膨張黒鉛シート6が1回多くなるように捲回して、内周側及び外周側の両方に膨張黒鉛シート6が露出した筒状母材13を形成する。筒状母材13において、図8に示すように、膨張黒鉛シート6は、幅方向の一方の端縁側において補強材5の一方の端縁7から幅方向に僅かにはみ出しており、幅方向の他方の端縁側において補強材5の他方の端縁8と合致している。
【0062】
(第五工程)前記膨張黒鉛シート6と同様であるが、補強材5の幅よりも小さい幅を有すると共に筒状母材13を1巻きできる程度の長さを有した図9に示すような外層用の耐熱材14を別途準備する。
【0063】
(第六工程)解膠剤として作用する硝酸を含有した分散媒としての水にアルミナ水和物が分散含有した水素イオン濃度が2〜3を呈するアルミナゾルに、h−BN粉末及びPTFE粉末を分散含有した水性ディスパージョンであって、h−BN23〜57質量%とPTFE33〜67質量%及びアルミナ水和物1〜14質量%とを含む潤滑組成物を固形分として30〜50質量%分散含有した水性ディスパージョンを準備する。
【0064】
(第七工程)前記図9に示す耐熱材14の一方の表面に、上記水性ディスパージョンを刷毛塗り、ローラ塗り、スプレー等の手段で適用し、これを乾燥させて図10に示すような潤滑組成物からなる固体潤滑剤の被覆層15を形成する。
【0065】
(第八工程)
<第一の方法> 図11ないし図13に示すように、線径が0.28〜0.32mmの金属細線を編み機(図示せず)で連続的に編んで得られる円筒状編組金網からなる外層用の補強材16の内部に、固体潤滑剤の被覆層15を備えた耐熱材14を連続的に挿入(図11参照)し、該耐熱材14を挿入した補強材16をその挿入開始端側から平滑な円筒状の外周面を有する一対の円筒ローラ17及び18間の隙間Δ1に供給し該耐熱材14の厚さ方向に加圧(図12参照)して耐熱材14と補強材16とを一体化し、外層用の補強材16の金網の網目に耐熱材14と該耐熱材14の表面に形成された固体潤滑剤の被覆層15とを充填して、表面に外層用の補強材16からなる面19と被覆層15の固体潤滑剤からなる面20とが混在して露出した扁平状の外層形成部材21を作製する。
【0066】
<第二の方法> 前記第一工程で説明した帯状金網4からなる外層用の補強材16を別途準備し、図14に示すように、帯状金網4からなる外層用の補強材16内に、固体潤滑剤の被覆層15を備えた耐熱材14を挿入すると共に、これらを図15に示すように、ローラ22及び23間の隙間Δ1に供給し該耐熱材14の厚さ方向に加圧して補強材16と耐熱材14とを一体化し、外層用の補強材16の金網の網目に外層用の耐熱材14と該耐熱材14の表面に形成された固体潤滑剤の被覆層15とを充填して、一方の表面に外層用の補強材16からなる面19と被覆層15の固体潤滑剤からなる面20とが混在して露出した扁平状の外層形成部材21を作製する。
【0067】
上記第一及び第二の方法において、一対の円筒ローラ17及び18並びにローラ22及び23間の隙間Δ1は、0.4〜0.6mm程度が適当である。
【0068】
(第九工程)このようにして得た外層形成部材21をその固体潤滑剤からなる面20を外側にして筒状母材13の外周面に巻き付け、予備円筒成形体24を作製する(図16参照)。
【0069】
(第十工程)耐熱材I又は耐熱材IIからなる膨張黒鉛シートを粉砕して粒度200〜350μmに調整した粉砕粉末を別途準備し、該粉砕粉末にBC及び金属硼化物のいずれか一方を5〜50質量%配合、混合してBC及び金属硼化物のいずれか一方の5〜50質量%とを含有した混合粉末を作製する。この混合粉末を筒状の中空部を有する金型(図示せず)内に装填し、圧縮して、図17に示すような、貫通孔25を規定する円筒内面26と円筒外面27と環状端面28及び29とを備えた予備成形筒状体30を作製する。
【0070】
(第十一工程)内面に円筒壁面31と円筒壁面31に連なる部分凹球面状壁面32と部分凹球面状壁面32に連なる貫通孔33とを備え、貫通孔33に段付きコア34を嵌挿することによって内部に中空円筒部35と中空円筒部35に連なる球帯状中空部36とが形成された図18に示すような金型37を準備し、該金型37の段付きコア34に予備円筒成形体24を挿入すると共に、該予備円筒成形体24の端面に、一方の環状端面28を当接させ、該段付きコア34に予備成形筒状体30を貫通孔25を介して挿入し、予備円筒成形体24と予備成形筒状体30とを金型37の中空円筒部35及び球帯状中空部36に配置する。
【0071】
金型37の中空円筒部35及び球帯状中空部36に配された予備円筒成形体24と予備成形筒状体30とを、コア軸方向に98〜294N/mm(1〜3トン/cm)の圧力で圧縮成形し、図1及び図2に示すような、中央部に貫通孔38を有すると共に円筒内面39と部分凸球面状面40と部分凸球面状面40の大径側及び小径側の環状端面41及び42により規定された球帯状基体43と、球帯状基体43の部分凸球面状面40に一体的に形成された外層44と、一方の環状端面28において該部分凸球面状面40の大径側の環状端面41と該外層44の環状端面45とにわたって一体的に形成され、該球帯状基体43の貫通孔38を規定する円筒内面39に連なると共に貫通孔46を規定する円筒内面47と外層44の外表面48に連なる円筒外面49と該小径の環状端面42と反対側に環状端面50を有する筒状体51とを備えた球帯状シール体52を作製する。
【0072】
この圧縮成形により、球帯状基体43は、球帯状基体用の膨張黒鉛シート6と球帯状基体用の補強材5とが互いに圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成されており、外層44は、外層用の耐熱材14と、潤滑組成物からなる固体潤滑剤と、金網からなる外層用の補強材16とが圧縮されて補強材16の金網の網目に固体潤滑剤及び耐熱材14が充填されて当該固体潤滑剤及び耐熱材14と補強材16とが混在一体化されてなり、該外層44の外表面48は、外層用の補強材16からなる面53と固体潤滑剤からなる面54とが混在した平滑な面55に形成さており、部分凸球面状面40の大径側の環状端面41と該外層44の環状端面45とにわたって筒状体51が強固に一体化されている。
【0073】
前記第四工程において、重合体12を球帯状基体用の膨張黒鉛シート6を内側にしてうず巻き状に捲回する代わりに、補強材5を内側にしてうず巻き状に捲回して筒状母材13を形成すると、球帯状基体43の円筒内面39において金網からなる補強材5が露出する球帯状シール体52を作製することができる。この円筒内面39に補強材5が露出した球帯状シール体52においては、該球帯状シール体52が配される排気管外周面と該球帯状シール体52の円筒内面39との間の摩擦力が高められる結果、当該球帯状シール体52の排気管外周面への固着力が高められる。
【0074】
球帯状シール体52は、図19に示す排気管球面継手に組み込まれて使用される。すなわち、図19に示す排気管球面継手において、エンジン側に連結された上流側排気管100の外周面には、管端部101を残してフランジ102が立設されており、管端部101には、筒状体51を一体的に有する球帯状シール体52が貫通孔38を規定する円筒内面39及び筒状体51の貫通孔46を規定する円筒内面47において嵌合されていると共に、大径側の環状端面41及び外層44の環状端面45にわたって一体的に形成された筒状体51の環状端面50においてフランジ102に当接されて着座せしめられており、上流側排気管100と対峙して配されていると共にマフラ側に連結された下流側排気管300には、凹球面部301と凹球面部301に連接されたフランジ部302とを一体に備えた径拡大部303が固着されており、凹球面部301の内面304が球帯状シール体52の外層44の外表面48における補強材16からなる面53と固体潤滑剤からなる面54とが混在した平滑な面55に摺接されている。
【0075】
次に、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施例に何等限定されない。
【実施例1】
【0076】
金属細線として線径0.28mmのオーステナイト系ステンレス鋼線(SUS304)を一本使用して網目の目幅が縦4mm、横5mm程度の円筒状編組金網を作製し、これを一対のローラ間の隙間に供給して帯状金網とし、これを球帯状基体用の補強材とした。球帯状基体用の耐熱材として、第一燐酸アルミニウムを4質量%含有した密度1.12Mg/m、厚さ0.38mmの耐熱材Iを使用した。耐熱材Iをうず巻き状に一周分捲回したのち、耐熱材Iの内側に球帯状基体用の補強材を重ね合わせ、うず巻き状に捲回して最外周に耐熱材Iを配置した筒状母材を作製した。この筒状母材においては、耐熱材Iの幅方向の一方は、補強材の幅とほぼ面一に合わされ、耐熱材Iの幅方向の他方は、球帯状基体用の補強材の幅方向に僅かに突出(はみ出し)している。
【0077】
上記と同様の金属細線を一本使用して、網目の目幅が縦3.5mm、横1.5mm程度の円筒状編組金網を作製し、これを一対のローラ間に通して帯状金網とし、これを外層用の補強材とした。
【0078】
外層用の耐熱材として、上記球帯状基体用の耐熱材Iと同様の耐熱材Iを使用し、上記外層用の帯状金網の幅よりも小さい幅を有する耐熱材Iを別途用意した。
【0079】
解膠剤として作用する硝酸を含有した分散媒としての水にアルミナ水和物としてベーマイト(アルミナ一水和物:Al・HO)を分散含有した水素イオン濃度(pH)が2を呈するアルミナゾルを準備し、このアルミナゾルにh−BN粉末及びPTFE粉末を分散含有した水性ディスパージョンであって、h−BN41.7質量%とPTFE50.0質量%及びベーマイト8.3質量%を含む潤滑組成物を固形分として50質量%分散含有した水性ディスパージョン(h−BN20.8質量%、PTFE25.0質量%及びベーマイト4.2質量%)を前記外層用の耐熱材Iの一方の表面にローラ塗りし、乾燥して該潤滑組成物からなる固体潤滑剤の被覆層(h−BN41.7質量%、PTFE50.0質量%及びベーマイト8.3質量%)を形成した。
【0080】
固体潤滑剤の被覆層を具備した耐熱材Iを、外層用の補強材である帯状金網内に挿入すると共にこれらを一対のローラ間に通して一体化させ、補強材に金網の網目に耐熱材Iと該耐熱材Iの表面に形成された固体潤滑剤の被覆層とを充填して、表面に補強材からなる面と固体潤滑剤からなる面とが混在して露出した扁平状の外層形成部材を作製した。
【0081】
前記筒状母材の外周面に前記外層形成部材を固体潤滑剤からなる面を外側にして捲回し、予備円筒成形体を作製した。この予備円筒成形体を図18に示す金型の段付きコアに挿入し、該予備円筒成形体を金型の中空部に配置した。
【0082】
前記球帯状基体用及び外層用の耐熱材Iと同様の第一燐酸アルミニウムを4質量%含有した耐熱材Iを準備し、該耐熱材Iを粉砕し、これをミキサーに投入して撹拌混合し、粒度を250〜350μmに調整した耐熱材Iの粉砕粉末を作製した。この粉砕粉末に、BC粉末を20質量%配合し混合して、第一燐酸アルミニウム4質量%、BC20質量%及び膨張黒鉛からなる混合粉末を作製した。この混合粉末を金型の筒状中空部に装填し圧縮成形して、貫通孔を規定する円筒内面と円筒外面と両端に環状端面を有する予備成形筒状体を作製した。
【0083】
このようにして得た予備成形筒状体は、一方の環状端面を、前記金型の中空部に配置した予備円筒成形体の端部に当接させて該金型の中空部に配置した。
【0084】
金型の中空部に配した予備円筒成形体と予備成形筒状体とをコア軸方向に294N/mmの圧力で圧縮成形し、中央部に貫通孔を規定する円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層と、該部分凸球面状面の大径側の環状端面と外層の環状端面とにわたって一体的に形成された筒状体とを備えた球帯状シール体を得た。
【0085】
この圧縮成形により、球帯状基体は、球帯状基体用の耐熱材と金網からなる球帯状基体用の補強材とが圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成され、圧縮された金網からなる球帯状基体用の補強材と、この補強材の金網の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されて圧縮された第一燐酸アルミニウムを含有する膨張黒鉛からなる球帯状基体用の耐熱材とを有しており、外層は、外層用の耐熱材、h−BN41.7質量%とPTFE50.0質量%及びベーマイト8.3質量%を含む潤滑組成物からなる固体潤滑剤と、金網からなる外層用の補強材とが圧縮されて補強材の金網の網目に固体潤滑剤及び耐熱材が充填されて当該固体潤滑剤及び耐熱材と補強材とが混在一体化されてなり、該外層の外表面は、補強材からなる面と固体潤滑剤からなる面とが混在した平滑な面に形成されており、該球帯状基体の部分凸球面状面の大径側の環状端面と該外層の環状端面とにわたって第一燐酸アルミニウム4質量%、BC20質量%及び膨張黒鉛からなる筒状体が強固に一体的に形成されている。
【実施例2】
【0086】
前記実施例1と同様の筒状母材を作製した。この筒状母材においては、耐熱材Iの幅方向の一方は、補強材の幅とほぼ面一に合わされ、耐熱材Iの幅方向の他方は、球帯状基体用の補強材の幅方向に僅かに突出(はみ出し)している。
【0087】
前記実施例1と同様の金属細線を一本使用して、網目の目幅が縦3.5mm、横1.5mm程度の円筒状編組金網を作製し、これを一対のローラ間に通して帯状金網とし、これを外層用の補強材とした。
【0088】
外層用の耐熱材として、前記実施例1と同様の耐熱材Iを使用し、上記帯状金網の幅よりも小さい幅を有する耐熱材Iを別途用意した。
【0089】
前記実施例1と同様のアルミナゾルを準備し、このアルミナゾルにh−BN粉末及びPTFE粉末を分散含有した水性ディスパージョンであって、h−BN54.6質量%とPTFE34.5質量%及びベーマイト10.9質量%を含む潤滑組成物を固形分として50質量%分散含有した水性ディスパージョン(h−BN27.3質量%、PTFE17.3質量%及びベーマイト5.4質量%)を前記外層用の耐熱材Iの一方の表面にローラ塗りし、乾燥して該潤滑組成物からなる固体潤滑剤の被覆層(h−BN54.6質量%、PTFE34.5質量%及びベーマイト10.9質量%)を形成した。
【0090】
固体潤滑剤の被覆層を具備した耐熱材Iを、外層用の補強材である帯状金網内に挿入すると共にこれらを一対のローラ間に通して一体化し、補強材に金網の網目に耐熱材Iと該耐熱材Iの表面に形成された固体潤滑剤の被覆層とを充填して、表面に補強材からなる面と固体潤滑剤からなる面とが混在して露出した扁平状の外層形成部材を作製した。
【0091】
以下、前記実施例1と同様の方法で予備円筒成形体を作製し、この予備円筒成形体を図18に示す金型の段付きコアに挿入し、該予備円筒成形体を金型の中空部に位置させた。
【0092】
前記実施例1と同様にして、粒度を250〜350μmに調整した耐熱材Iの粉砕粉末を作製し、この粉砕粉末にCrB粉末を20質量%配合し混合して、第一燐酸アルミニウム4質量%、CrB20質量%及び膨張黒鉛からなる混合粉末を作製した。この混合粉末を金型の筒状中空部に装填し圧縮成形して、貫通孔を規定する円筒内面と円筒外面と両端に環状端面を有する予備成形筒状体を作製した。
【0093】
以下、前記実施例1と同様にして、中央部に貫通孔を規定する円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層と、該部分凸球面状面の大径側の環状端面と外層の環状端面とにわたって一体的に形成された筒状体とを備えた球帯状シール体を得た。
【0094】
この圧縮成形により、球帯状基体は、球帯状基体用の耐熱材と金網からなる球帯状基体用の補強材とが圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成され、圧縮された金網からなる球帯状基体用の補強材と、この補強材の金網の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されて圧縮された第一燐酸アルミニウムを含有する膨張黒鉛からなる球帯状基体用の耐熱材とを有しており、外層は、外層用の耐熱材、h−BN54.6質量%とPTFE34.5質量%及びベーマイト10.9質量%を含む潤滑組成物からなる固体潤滑剤と、金網からなる外層用の補強材とが圧縮されて補強材の金網の網目に固体潤滑剤及び耐熱材が充填されて当該固体潤滑剤及び耐熱材と補強材とが混在一体化されてなり、該外層の外表面は、補強材からなる面と固体潤滑剤からなる面とが混在した平滑な面に形成されており、該球帯状基体の部分凸球面状面の大径側の環状端面と該外層の環状端面とにわたって第一燐酸アルミニウム4質量%、CrB20質量%及び膨張黒鉛からなる筒状体が強固に一体的に形成されている。
【実施例3】
【0095】
前記実施例1と同様の球帯状基体用の補強材を使用した。球帯状基体用の耐熱材として、第一燐酸アルミニウムを8質量%及び五酸化燐を1質量%含有した密度1.12Mg/m、厚さ0.38mmの耐熱材IIを使用した。耐熱材IIをうず巻き状に一周分捲回したのち、耐熱材IIの内側に球帯状基体用の補強材を重ね合わせ、うず巻き状に捲回して最外周に耐熱材IIを配置した筒状母材を作製した。この筒状母材においては、耐熱材IIの幅方向の一方は、補強材の幅とほぼ面一に合わされ、耐熱材IIの幅方向の他方は、球帯状基体用の補強材の幅方向に僅かに突出(はみ出し)している。
【0096】
前記実施例1と同様の金属細線を一本使用して、網目の目幅が縦3.5mm、横1.5mm程度の円筒状編組金網を作製し、これを一対のローラ間に通して帯状金網とし、これを外層用の補強材とした。
【0097】
外層用の膨張黒鉛シートとして、上記球帯状基体用の耐熱材IIと同様の耐熱材IIを使用し、上記外層用の帯状金網の幅よりも小さい幅を有する耐熱材IIを別途用意した。
【0098】
前記実施例1と同様のアルミナゾルを準備し、このアルミナゾルにh−BN粉末及びPTFE粉末を分散含有した水性ディスパージョンであって、h−BN30.0質量%とPTFE60.0質量%及びベーマイト15.0質量%を含む潤滑組成物を固形分として50質量%分散含有した水性ディスパージョン(h−BN15.0質量%とPTFE30.0質量%及びベーマイト5.0質量%)を前記外層用の耐熱材IIの一方の表面にローラ塗りし、乾燥して該潤滑組成物からなる固体潤滑剤の被覆層(h−BN30.0質量%とPTFE60.0質量%及びベーマイト10.0質量%)を形成した。
【0099】
以下、前記実施例1と同様の方法で、外層形成部材を作製し、該筒状母材の外周面に前記外層形成部材を固体潤滑剤からなる面を外側にして捲回し、予備円筒成形体を作製した。この予備円筒成形体を図18に示す金型の段付きコアに挿入し、該予備円筒成形体を金型の中空部に配置した。
【0100】
前記球帯状基体用及び外層用の耐熱材IIと同様の耐熱材IIを準備し、該耐熱材IIを粉砕し、これをミキサーに投入して撹拌混合し、粒度を250〜350μmに調整した耐熱材IIの粉砕粉末を作製した。この粉砕粉末に、BC粉末を20質量%配合し混合して、第一燐酸アルミニウム8質量%、五酸化燐1質量%、BC20質量%及び膨張黒鉛からなる混合粉末を作製した。この混合粉末を金型の筒状中空部に装填し圧縮成形して、貫通孔を規定する円筒内面と円筒外面と両端に環状端面を有する予備成形筒状体を作製した。
【0101】
以下、前記実施例1と同様にして、中央部に貫通孔を規定する円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層と、該部分凸球面状面の大径側の環状端面と外層の環状端面とにわたって一体的に形成された筒状体とを備えた球帯状シール体を得た。
【0102】
この圧縮成形により、球帯状基体は、球帯状基体用の耐熱材と金網からなる球帯状基体用の補強材とが圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成され、圧縮された金網からなる球帯状基体用の補強材と、この補強材の金網の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されて圧縮された第一燐酸アルミニウム及び五酸化燐を含有する膨張黒鉛からなる球帯状基体用の耐熱材とを有しており、外層は、第一燐酸アルミニウム及び五酸化燐を含有する膨張黒鉛からなる外層用の耐熱材、h−BN30.0質量%とPTFE60.0質量%及びベーマイト10.0質量%を含む潤滑組成物からなる固体潤滑剤と、金網からなる外層用の補強材とが圧縮されて補強材の金網の網目に固体潤滑剤及び耐熱材が充填されて当該固体潤滑剤及び耐熱材と補強材とが混在一体化されてなり、該外層の外表面は、補強材からなる面と固体潤滑剤からなる面とが混在した平滑な面に形成されており、該球帯状基体の部分凸球面状面の大径側の環状端面と該外層の環状端面とにわたって第一燐酸アルミニウム8質量%、五酸化燐1質量%、BC20質量%及び膨張黒鉛からなる筒状体が強固に一体的に形成されている。
【実施例4】
【0103】
前記実施例3と同様にして、筒状母材を作製した。耐熱材IIの幅方向の一方は、補強材の幅とほぼ面一に合わされ、耐熱材IIの幅方向の他方は、球帯状基体用の補強材の幅方向に僅かに突出(はみ出し)している。
【0104】
前記実施例1と同様の金属細線を一本使用して、網目の目幅が縦3.5mm、横1.5mm程度の円筒状編組金網を作製し、これを一対のローラ間に通して帯状金網とし、これを外層用の補強材とした。
【0105】
外層用の膨張黒鉛シートとして、上記球帯状基体用の耐熱材IIと同様の耐熱材IIを使用し、上記外層用の帯状金網の幅よりも小さい幅を有する耐熱材IIを別途用意した。
【0106】
前記実施例1と同様のアルミナゾルを準備し、このアルミナゾルにh−BN粉末及びPTFE粉末を分散含有した水性ディスパージョンであって、h−BN45.0質量%とPTFE45.0質量%及びベーマイト10.0質量%を含む潤滑組成物を固形分として50質量%分散含有した水性ディスパージョン(h−BN22.5質量%とPTFE22.5質量%及びベーマイト5.0質量%)を前記外層用の耐熱材IIの一方の表面にローラ塗りし、乾燥して該潤滑組成物からなる固体潤滑剤の被覆層(h−BN45.0質量%とPTFE45.0質量%及びベーマイト10.0質量%)を形成した。
【0107】
以下、前記実施例1と同様の方法で、外層形成部材を作製し、該筒状母材の外周面に前記外層形成部材を固体潤滑剤からなる面を外側にして捲回し、予備円筒成形体を作製した。この予備円筒成形体を図18に示す金型の段付きコアに挿入し、該予備円筒成形体を金型の中空部に位置させた。
【0108】
前記実施例3と同様にして、粒度を250〜350μmに調整した耐熱材IIの粉砕粉末を作製し、この粉砕粉末にCrB粉末を20質量%配合し混合して、第一燐酸アルミニウム8質量%、五酸化燐1質量%、CrB20質量%及び膨張黒鉛からなる混合粉末を作製し、この混合粉末を金型の筒状中空部に装填し圧縮成形して、貫通孔を規定する円筒内面と円筒外面と両端に環状端面を有する予備成形筒状体を作製した。
【0109】
以下、前記実施例1と同様にして、中央部に貫通孔を規定する円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面とにより規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層と、該部分凸球面状面の大径側の環状端面と外層の環状端面とにわたって一体的に形成された筒状体とを備えた球帯状シール体を得た。
【0110】
この圧縮成形により、球帯状基体は、球帯状基体用の耐熱材と金網からなる球帯状基体用の補強材とが圧縮され、互いに絡み合って構造的一体性を有するように構成され、圧縮された金網からなる球帯状基体用の補強材と、この補強材の金網の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されて圧縮された第一燐酸アルミニウム及び五酸化燐を含有する膨張黒鉛からなる球帯状基体用の耐熱材とを有しており、外層は、第一燐酸アルミニウム及び五酸化燐を含有する膨張黒鉛からなる外層用の耐熱材、h−BN45.0質量%とPTFE45.0質量%及びベーマイト10.0質量%を含む潤滑組成物からなる固体潤滑剤と、金網からなる外層用の補強材とが圧縮されて補強材の金網の網目に固体潤滑剤及び耐熱材が充填されて当該固体潤滑剤及び耐熱材と補強材とが混在一体化されてなり、該外層の外表面は、補強材からなる面と固体潤滑剤からなる面とが混在した平滑な面に形成されており、該球帯状基体の部分凸球面状面の大径側の環状端面と該外層の環状端面とにわたって第一燐酸アルミニウム8質量%、五酸化燐1質量%、CrB20質量%及び膨張黒鉛からなる筒状体が強固に一体的に形成されている。
【0111】
次に、上記した実施例1ないし実施例4で得た球帯状シール体を図19に示す排気管球面継手に組み込み、摩擦異常音の発生の有無及びガス漏れ量(l/min)について試験した結果を説明する。
【0112】
<摩擦異常音発生の有無の試験条件>
コイルバネによる押圧力(スプリングセットフォース):590N
揺動角度:±4°
加振周波数:12Hz
温度(図19に示す凹球面部301の外表面温度):室温(25℃)〜500℃
試験回数:100万サイクル
相手材(図19に示す径拡大部303の材質):SUS304
【0113】
<試験方法>
室温(25℃)において12Hzの加振周波数で±4°の遥動運動を1回として45,000回行ったのち、該揺動運動を継継しながら雰囲気温度を500℃の温度まで昇温(昇温中の揺動回数45,000回)し、500℃の温度に到達した時点で115,000回の揺動運動を行い、ついで該揺動運動を継続しながら雰囲気温度を室温まで降温(降温中の遥動回数45,000回)するという全揺動回数250,000回を1サイクルとして4サイクル行う。
【0114】
摩擦異常音の発生の有無の評価は、上記の(1)揺動回数25万回、(2)揺動回数50万回、(3)揺動回数75万回及び(4)揺動回数100万回の時点で、つぎのようにして行った。
<摩擦異常音の判定レベル>
評価記号A:摩擦異常音の発生のないもの。
評価記号B:試験片に耳を近づけた状態で、かすかに摩擦異常音が聴こえるもの。
評価記号C:定位置(試験片から1.5m離れた位置)では生活環境音に掻き消され、
一般には判別し難いが試験担当者には摩擦異常音として判別できるもの。
評価記号D:定位置で誰でも摩擦異常音(不快音)として識別できるもの。
【0115】
<ガス漏れ量の試験条件及び試験方法>
<試験条件>
コイルばねによる押圧力(スプリングセットフォース):980N
加振角度:±2.5°
加振周波数(揺動速度):5Hz
温度(図19に示す凹球面部301の外表面温度):室温(25℃)〜500℃
揺動回数:100万回
相手材(図19に示す径拡大部303の材質):SUS304
【0116】
<試験方法>
室温(25℃)において5Hzの加振周波数で±2.5°の揺動運動を継続しながら温度を500℃まで昇温し、その温度を保持した状態で揺動運動を継続し、揺動回数が100万回に到達した時点でのガス漏れ量を測定した。
【0117】
<ガス漏れ量の測定方法>
図19に示す排気管球面継手の一方の上流側排気管100の開口部を閉塞し、他方の下流側排気管300側から、0.049MPa(0.5kgf/cm)の圧力で乾燥空気を流入し、継手部分(球帯状シール体52の面48と径拡大部303との摺接部、球帯状シール体52の円筒内面39と上流側排気管100の管端部101との嵌合部及び環状端面50と上流側排気管100に立設されたフランジ102との当接部)からのガス漏れ量を流量計にて、(1)試験初期(試験開始前)、(2)揺動回数25万回後、(3)揺動回数50万回後及び(4)揺動回数100万回後の4回測定した。
【0118】
表2は上記試験結果を示す。
【0119】
【表2】

【0120】
上記試験結果から、中央部に貫通孔を有すると共に円筒内面と部分凸球面状面と部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面により規定された球帯状基体と、球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層と、該部分凸球面状面の大径側の環状端面及び該外層の環状端面にわたって一体的に形成された燐酸塩又は燐酸塩及び五酸化燐並びにBC又は金属硼化物(CrB)を含有した膨張黒鉛からなる筒状体とを備えている実施例1、実施例2、実施例3又は実施例4からなる球帯状シール体が排気管球面継手に組み込まれた状態において、高温の酸化性雰囲気に晒される筒状体は、耐酸化性及び耐熱性を有しているので、筒状体での膨張黒鉛の酸化消耗が抑制され、結果として、筒状体の環状端面と該環状端面と接するフランジとの間からの排気ガスの漏洩が極力防止され、また、これらの球帯状シール体の外層の外表面は、外層用の補強材からなる面と固体潤滑剤からなる面とが混在した平滑な面に形成されているので、外層の外表面では、相手材との摺動摩擦において摩擦異音を発生することなく、相手材と円滑な摺動が行われる。
【0121】
以上のように、排気管球面継手に組み込まれた状態において、NaClや塩化カルシウム等の塩化物が作用する塩害環境雰囲気及び高温の酸化性雰囲気に晒される本発明に係る球帯状シール体において、筒状体は、塩害環境雰囲気及び高温の酸化性雰囲気において優れた耐酸化性及び耐熱性を有しているので、筒状体での膨張黒鉛の酸化消耗が抑制され、結果として、本発明の球帯状シール体によれば、筒状体の端面と該端面と接するフランジ部との間からの排気ガスの漏洩を極力防止することができると共に、球帯状シール体の外層の外表面は、外層用の補強材からなる面と固体潤滑剤からなる面とが混在した平滑な面に形成されているので、外層の外表面での相手材との摺動摩擦において摩擦異音を発生することなく円滑な摺動が行われる。
【0122】
また、本発明の球帯状シール体の製造方法においては、酸化抑制剤を含有する耐熱材からなる膨張黒鉛シートを粉砕して作製した粉砕粉末に、炭化硼素及び金属硼化物の少なくとも一方を配合、混合して作製した混合粉末を予め筒状に圧縮成形して予備成形筒状体を形成するので、当該予備成形筒状体を該球帯状基体の部分凸球面状面の大径側の環状端面及び外層の環状端面にわたって筒状体として強固に一体化することができる。
【符号の説明】
【0123】
5 補強材
6 膨張黒鉛シート
12 重合体
13 筒状母材
21 外層形成部材
24 予備円筒成形体
30 予備成形筒状体
37 金型
39 円筒内面
40 部分凸球面状面
41 大径側の環状端面
42 小径側の環状端面
43 球帯状基体
44 外層
51 筒状体
52 球帯状シール体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒内面、部分凸球面状面並びに部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面によって規定された球帯状基体と、この球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えていると共に排気管継手に用いられる球帯状シール体であって、球帯状基体は、金網からなる補強材と、補強材の金網の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されていると共に圧縮された酸化抑制剤を含む膨張黒鉛からなる耐熱材とを具備しており、外層は、酸化抑制剤を含む膨張黒鉛からなる耐熱材と固体潤滑剤と金網からなる補強材とが混在一体化されてなり、該外層の平滑な外表面は、補強材の金網からなる面と固体潤滑剤からなる面とが混在してなり、該球帯状基体の部分凸球面状面の大径側の環状端面及び外層の大径側の環状端面には、酸化抑制剤を含む膨張黒鉛からなる耐熱材と炭化硼素及び金属硼化物のうちの少なくとも一方とからなる筒状体が一体的に形成されていることを特徴とする球帯状シール体。
【請求項2】
酸化抑制剤は、燐酸塩を含有する請求項1に記載の球帯状シール体。
【請求項3】
燐酸塩は、第一燐酸リチウム(LiHPO)、第二燐酸リチウム(LiHPO)、第一燐酸カルシウム〔Ca(HPO〕、第二燐酸カルシウム(CaHPO)、第一燐酸アルミニウム〔Al(HPO〕、第二燐酸アルミニウム〔Al(HPO〕から選択されている請求項2に記載の球帯状シール体。
【請求項4】
酸化抑制剤は、燐酸塩を0.1〜16質量%含有する請求項1から3のいずれか一項に記載の球帯状シール体。
【請求項5】
酸化抑制剤は、五酸化燐を0.05〜5質量%含有する請求項1から4のいずれか一項に記載の球帯状シール体。
【請求項6】
筒状体は、炭化硼素及び金属硼化物のうちの少なくとも一方を5〜50質量%含有する請求項1から5のいずれか一項に記載の球帯状シール体。
【請求項7】
金属硼化物は、元素周期律表の第IVa族、第Va族及び第VIa族の中から選択されている請求項1から6のいずれか一項に記載の球帯状シール体。
【請求項8】
金属硼化物は、ホウ化チタン(TiB)、二ホウ化チタン(TiB)、二ホウ化ジルコニウム(ZrB)、十二ホウ化ジルコニウム(ZrB12)、二ホウ化ハフニウム(HfB)、二ホウ化バナジウム(VB)、二ホウ化ニオブ(NbB)、二ホウ化タンタル(TaB)、ホウ化クロム(CrB)、二ホウ化クロム(CrB)、ホウ化モリブデン(MoB)、二ホウ化モリブデン(MoB)、五ホウ化二モリブデン(Mo)、ホウ化タングステン(WB)、二ホウ化タングステン(WB)、ホウ化二タングステン(WB)、五ホウ化二タングステン(W)から少なくとも一つが選択されている請求項1から7のいずれか一項に記載の球帯状シール体。
【請求項9】
固体潤滑剤は、六方晶窒化硼素を23〜57質量%、アルミナ水和物を5〜15質量%及び四ふっ化エチレン樹脂を33〜67質量%含有する請求項1から8のいずれか一項に記載の球帯状シール体。
【請求項10】
円筒内面、部分凸球面状面並びに部分凸球面状面の大径側及び小径側の環状端面によって規定される球帯状基体と、この球帯状基体の部分凸球面状面に一体的に形成された外層とを備えていると共に排気管継手に用いられる球帯状シール体の製造方法であって、
(a)酸化抑制剤を含有する膨張黒鉛シートを準備する工程と、
(b)金属細線を織ったり編んだりして得られる金網を準備し、この金網を前記膨張黒鉛シートに重ね合わせて重合体を形成したのち、この重合体を円筒状に捲回して筒状母材を得る工程と、
(c)前記膨張黒鉛シートと同様の別の膨張黒鉛シートを準備し、当該別の膨張黒鉛シートの一方の表面に固体潤滑剤の水性ディスパージョンを被覆し、乾燥して別の膨張黒鉛シートの表面に固体潤滑剤の被覆層を形成する工程と、
(d)該被覆層が形成された別の膨張黒鉛シートを、金属細線を織ったり編んだりして得られる別の金網からなる二つの層間に挿入すると共に当該別の膨張黒鉛シートを挿入した金網を一対の円筒ローラ間の隙間に供給して加圧し、別の金網の網目に別の膨張黒鉛シートと当該膨張黒鉛シートの表面に形成された被覆層の固体潤滑剤とを充填して、表面に別の金網からなる面と固体潤滑剤からなる面とが混在して露出した外層形成部材を形成する工程と、
(e)前記筒状母材の外周面に前記外層形成部材を被覆層を外側にして捲回し、予備円筒成形体を形成する工程と、
(f)該予備円筒成形体を金型のコア外周面に挿入し、該コアを金型内に配置する工程と、
(g)酸化抑制剤を含有する膨張黒鉛シートの粉砕粉末に炭化硼素及び金属硼化物のうちの少なくとも一方を配合、混合した混合粉末を圧縮成形して形成した予備成形筒状体を準備する工程と、
(h)金型内に配置された予備円筒成形体の端部に、前記予備成形筒状体を載置すると共に金型内において該予備円筒成形体と該予備円筒成形体の端面に載置された予備成形筒状体とをコア軸方向に圧縮成形する工程と、
を具備しており、球帯状基体は、金網からなる補強材と、補強材の金網の網目を充填し、かつこの補強材と混在一体化されていると共に圧縮された酸化抑制剤を含む膨張黒鉛からなる耐熱材とを具備しており、外層は、酸化抑制剤を含む膨張黒鉛からなる耐熱材と固体潤滑剤と別の金網からなる補強材とが混在一体化されてなり、該外層の平滑な外表面は、補強材の金網からなる面と固体潤滑剤からなる面とが混在してなり、該球帯状基体の部分凸球面状面の大径側の環状端面及び外層の大径側の環状端面には、酸化抑制剤を含む膨張黒鉛からなる耐熱材と炭化硼素及び金属硼化物のうちの少なくとも一方とからなる筒状体が一体的に形成されていることを特徴とする球帯状シール体の製造方法。
【請求項11】
酸化抑制剤は、燐酸塩を含有する請求項10に記載の球帯状シール体の製造方法。
【請求項12】
燐酸塩は、第一燐酸リチウム(LiHPO)、第二燐酸リチウム(LiHPO)、第一燐酸カルシウム〔Ca(HPO〕、第二燐酸カルシウム(CaHPO)、第一燐酸アルミニウム〔Al(HPO〕、第二燐酸アルミニウム〔Al(HPO〕から選択される請求項11に記載の球帯状シール体の製造方法。
【請求項13】
酸化抑制剤は、燐酸塩を0.1〜16質量%含有する請求項10から12のいずれか一項に記載の球帯状シール体の製造方法。
【請求項14】
酸化抑制剤は、燐酸を0.05〜5質量%含有する請求項10から13のいずれか一項に記載の球帯状シール体の製造方法。
【請求項15】
燐酸は、オルト燐酸(HPO)、メタ燐酸(HPO)、ピロ燐酸(H)、トリポリ燐酸(H10)からなる鎖状縮合燐酸あるいはトリメタ燐酸、テトラメタ燐酸からなる環状縮合燐酸から選択されている請求項14に記載の球帯状シール体の製造方法。
【請求項16】
予備成形筒状体は、炭化硼素及び金属硼化物のうちの少なくとも一方を5〜50質量%含有する請求項10から15のいずれか一項に記載の球帯状シール体の製造方法。
【請求項17】
金属硼化物は、元素周期律表の第IVa族、第Va族及び第VIa族の中から選択された金属硼化物である請求項10から16のいずれか一項に記載の球帯状シール体の製造方法。
【請求項18】
金属硼化物は、ホウ化チタン(TiB)、二ホウ化チタン(TiB)、二ホウ化ジルコニウム(ZrB)、十二ホウ化ジルコニウム(ZrB12)、二ホウ化ハフニウム(HfB)、二ホウ化バナジウム(VB)、二ホウ化ニオブ(NbB)、二ホウ化タンタル(TaB)、ホウ化クロム(CrB)、二ホウ化クロム(CrB)、ホウ化モリブデン(MoB)、二ホウ化モリブデン(MoB)、五ホウ化二モリブデン(Mo)、ホウ化タングステン(WB)、二ホウ化タングステン(WB)、ホウ化二タングステン(WB)、五ホウ化二タングステン(W)から少なくとも一つが選択される請求項10から17のいずれか一項に記載の球帯状シール体の製造方法。
【請求項19】
固体潤滑剤の水性ディスパージョンは、分散媒としての酸を含有する水にアルミナ水和物粒子が分散した水素イオン濃度が2〜3を呈するアルミナゾルに、六方晶窒化硼素粉末及び四ふっ化エチレン樹脂粉末を分散含有しており、六方晶窒化硼素23〜57質量%、アルミナ水和物5〜15質量%及び四ふっ化エチレン樹脂33〜67質量%を含む潤滑組成物を固形分として含有する請求項10から18のいずれか一項に記載の球帯状シール体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2012−180920(P2012−180920A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45781(P2011−45781)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】