説明

環状の逆止弁要素を有する油圧弁装置

【課題】逆止弁をソレノイド弁に組み入れた弁装置を提供する。
【解決手段】弁装置は、第1ポートと第2ポートとの間に流れる流体を制御するために、スプール44がスライドするボア21を備えた弁本体を有する。ボアは、環状溝29を有する。第1ポートは、環状溝に開口しており、環状溝は、帯板の端部を重ね合わせることによって形成される逆止弁ベルト80に位置付けられる。第1ポートの圧力で、逆止弁ベルトを円周方向に縮めたり広げたりすることにより、第1ポートを開いたり閉じたりする。停止部は、帯板の一端部の近くに設けられ、逆止弁のベルトの縮小量を制限するために他端部に係合される。このため、逆止弁のベルトの直径は、ボアの直径より小さくすることはできないので、環状溝において逆止弁のリング形状を保持する。逆止弁ベルトは、オプションとして、各縁部から突出し且つ環状溝の側壁と係合する複数のタブを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプール弁、特に、弁に流れる流体を制御する一体型の逆止弁を有するスプール弁に関する。
【背景技術】
【0002】
多種多様な機械は、油圧アクチュエータによって動作される可動部材を有する。例えば、内燃エンジンはカム軸を備えており、そのカム軸は、クランク軸で回転するために機械的に連結され、シリンダの吸入口や排気弁を開けたり閉めたりする。従来のカム軸のタイミングは、全エンジンの運転速度で、最良の動作を行うために設定されていた。しかしながら、エンジン速度、エンジン負荷、その他の要因に応じて、弁のタイミングを変化させると、エンジン性能をさらに向上させることができるということがわかった。このため、カム軸とクランク軸との結合関係を変えるために、油圧アクチュエータがエンジン内で用いられている。また、ソレノイド弁は、油圧アクチュエータを動かす加圧流体を制御するために、用いられている。
【0003】
エンジン動作を制御する油圧システムは、一方向だけに流体を流す逆止弁を有している。例えば、単独の逆止弁が、ソレノイド弁の注入口または排出口に結合する導管に接続され、ソレノイド弁に向けてのみ、または、ソレノイド弁からのみ流体を流すことを可能にする。ソレノイド弁および逆止弁を別々に設けることは、油圧システムに接続する部品の数を増加させる。したがって、油圧システムの接続を単純化するために、逆止弁をソレノイド弁に組み入れることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、油圧システムの接続を単純化するために、逆止弁をソレノイド弁に組み入れた弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の弁装置は、流体ポートが開く環状溝を備えたボアを有する弁本体で構成されている。環状のベルトは、移動可能に環状溝に収容され、第1端部および第2端部を有する帯板によって形成される。第1端部および第2端部は、ベルトの円周を縮小したり拡大したりすることが可能なように重なり合う。標準状態では、環状のベルトが、環状溝の壁に対して円周方向および直径方向に広げられ、第1流体ポートとボアとの間の流体連通を閉じる。他の状態では、流体ポートの圧力により、環状溝の壁から離れるようにベルトの縮小が行われる。これにより、流体ポートとボアとの間の流路が提供される。
【0006】
停止部が、ベルトの縮小を制限するために、弁本体または環状のベルトのいずれかに固定されている。停止部は、圧力でベルトの直径を減らすことができる範囲を制限し、ベルトの直径がボアの直径より小さくならないように防止する。このため、逆止弁のベルトは、環状溝に引き付けられる。
【0007】
1つの実施形態では、停止部が、帯板の第2端部の近くに形成されている。帯板で形成されたベルトの縮小を制限するために、第1端部がその停止部に係合される。例えば、停止部は、ベルトの主要部から離れて曲げられる突部であってもよい。この場合では、ベルトが縮小する際、第1端部が、その突部に当接するまで、すなわち、縮小が止まるポイントまで、第2端部をこえてスライドする。
【0008】
別の実施形態では、帯板が、第1端部に隣接する第1の細長い開口部と、第2端部に隣接する第2の細長い開口部と、を有する。帯板がベルトに形成されると、第1の細長い開口部および第2の細長い開口部が少なくとも部分的に重なり合う。そして、ベルトが、弁本体の環状溝に取り付けられるとすぐに、弁本体の穴に固定されるピンは、停止部を形成するために、第1、第2の細長い開口部の両方を通って突出する。
【0009】
本発明の1つの実施形態によれば、帯板が、第1端部と第2端部との間に設けられた2つの長手方向縁部と、複数のタブを有する。複数のタブは、環状溝の側壁と係合するために、その2つの長手方向縁部から外側に向かって突出している。タブは、通常、環状溝の中央に設けられたリングを保持する。また、タブ間の空間は、リングが、第1流体ポートを開くために縮小する際、流体が流れる通路を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明に係る逆止弁を組み入れた電気油圧弁の長手方向の断面図である。
【図2】図2は、逆止弁の要素を形成するために用いられる第1タイプの帯板を示す。
【図3】図3は、電気油圧弁に挿入するために、環状のベルトに曲げられた帯板を示す。逆止弁の閉位置の場合で、ベルトが正常に広がった状態で示されている。
【図4】図4は、環状のベルトの縮小を制限する停止部の詳細を示す帯板の部分拡大図である。
【図5】図5は、逆止弁の開位置の場合で、円周方向に収縮された環状のベルトを示す。
【図6】図6は、逆止弁の要素を形成する第2タイプの帯板を示す。
【図7】図7は、逆止弁の要素を形成する第3タイプの帯板を示す。
【図8】図8は、図1中の8−8線に沿って逆止弁が閉位置である電気油圧弁の放射状の断面図である。
【図9】図9は、閉位置の逆止弁を示す長手方向の部分拡大断面図である。
【図10】図10は、図1中の8−8線に沿って逆止弁が開位置である電気油圧弁の放射状の断面図である。
【図11】図11は、開位置の逆止弁を示す長手方向の部分拡大断面図である。
【図12】図12は、逆止弁の要素を形成する第4タイプの帯板を示す。
【図13】図13は、第4タイプの帯板で形成された逆止弁のベルトを有する電気油圧弁の放射状の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
例となる図1に示された電気油圧弁10を参照して本発明を説明するが、本発明は、さまざまな種類の弁で用いることができる。電気油圧弁10は、マニホールド(manifold)24に設けられた開口部22に挿入される管状の弁本体20を有している。管状の弁本体20は、長手方向ボア21を有しており、複数のポートがそのボア21に開口している。マニホールド24に設けられた供給路26は、ポンプ又は他のソースから弁本体20に設けられた複数の吸入ポート28に加圧流体を運ぶ。各吸入ポート28は、内部曲面27を通って、弁本体20における長手方向ボア21の面23に形成されている環状溝29に開口している。実施形態における弁10では、6つの吸入ポート28が設けられているが、それに限定されず、6つ以下あるいは6つ以上の吸入ポートを設けることも可能である。弁本体20に設けられた複数の第1ワークポート(workport)30は、長手方向ボア21とマニホールド通路34との間に流路を有している。また、弁本体20に設けられた複数の第2ワークポート32は、長手方向ボア21とマニホールド通路36との間に流路を有している。それら流路は、流体によって動かされる油圧アクチュエータにつながっている。マニホールド24の内側端部には、戻り流路25が設けられている。その戻り流路25は、流体を油圧システムのタンクに戻すために、弁本体20に設けられた排出ポート31と連通している。
【0012】
スプール(spool)44は、弁本体20のボア21内にスライド自在に収容されている。スプール44の外側には、スプール44の選択された位置に環状の切欠き部46が設けられている。切欠き部46は、吸入ポート28と第1ワークポート30との間、および、吸入ポート28と第2ワークポート32との間に、それぞれ流路を提供する。このため、関連するマニホールド通路との間にも、流路が提供される。図1に示すように、スプール44の中央位置において、吸入ポート28が、第1、第2ワークポート30、32の両方から閉じられている。また、第1、第2ワークポート30、32は、スプール44が位置付けられているので、塞がれている。中央通路48は、スプール44の対向する端部47、49との間に延設している。ヘッド54は、スプール44の外側の端部49から突出しており、貫通した開口部53を有する。スプリング50は、排出ポート31が位置付けられている弁本体20の第1端部において、ノーズ片52から離れるようにスプール44の内側の端部を付勢する。
【0013】
また、弁10は、弁本体20の第1端部に対向する第2端部に取り付けられるリニアアクチュエータ51を有する。リニアアクチュエータ51は、非磁性ボビン60に巻きつけられたソレノイドコイル58を囲む金属のアウターハウジング55を備えている。非磁性ボビン60は、プラスチック製であることが好ましい。ソレノイドコイル58は、デューティサイクル(duty cycle)を有するパルス幅変調(PWM)の電気信号によって動かされる。デューティサイクルは、弁本体20においてスプール44を異なる所望の位置に動かすために、従来の方法で変化する。そのPWM信号は、コネクタ57を介してリニアアクチュエータ51に適用される。
【0014】
リニアアクチュエータ51は、さらに、2つの第1磁極片64、第2磁極片66を有している。第1磁極片64および第2磁極片66は、ボビン60の対向する端部にそれぞれ延設されており、それらの内側端部が、間隔を置いて配置されている。ボビン60に設けられた環状のリブ63は、内側に突出しており、第1磁極片64および第2磁極片66を磁極によって分ける。ライナーチューブ62は、第1磁極片64および第2磁極片66を通ってリニアアクチュエータ51に挿入される。また、ライナーチューブ62は、弁本体20と向かい合う開口端部を有している。なお、ライナーチューブ62は、ステンレス製であることが望ましい。ライナーチューブ62の開口端部の反対側の端部は、閉じられている。ライナーチューブ62は、第1磁極片と第2磁極片との間の磁極障壁としての機能を果たすと共に、スライドするプランジャー70に対するガイドとしての機能も果たす。ソレノイドコイルアセンブリ56は、ソレノイドコイル58、ボビン60、第1磁極片64、第2磁極片66、および、ライナーチューブ62で構成されている。
【0015】
リニアアクチュエータ51に設けられたプランジャー70は、スライド自在にライナーチューブ62の開口部内に配置されており、強磁性物質の電機子72を有する。チューブ状の押し部材74は、電機子72を通って長手方向の開口内に収容されて保持される。押し部材74は、ライナーチューブ62の開口端部から外側に突き出ており、弁のスプール44のヘッド54に当接している。
【0016】
図1、図8、および、図9に示すように、吸入ポート28から弁本体20の長手方向ボア21に一方向だけに流体の流れを規制するために、逆止弁80が環状溝29に位置付けられている。逆止弁80は、以下に記載するように、反対方向からの流体の流れを防止する。逆止弁80は、リング状に曲げられる第1の金属帯板82で構成されている。金属帯板82は、端部が重なり合うことで環状の形状を有する。これにより、弾力性のある環状ベルト83が形成される。
【0017】
図2〜4に示すように、金属帯板82は、第1端部90および第2端部96を有する。第1端部90と第2端部96との間には、一対の長手方向縁部84、86が設けられており、互いに平行に長手方向に延びている。金属帯板82の第1端部90には、一対のエンドタブ92が設けられており、2つの長手方向縁部84、86それぞれから外側に向かって突出している。複数のタブ88は、金属帯板82の長手方向の長さに沿って間隔を置いて設けられており、長手方向縁部84、86それぞれから外側に向かって突出している。この実施形態の金属帯板82では、2つの長手方向縁部84、86に沿って3つのタブ88がそれぞれ設けられているが、3つ以上または3以下のタブを設けることもできる。
【0018】
一対のリミットタブ94は、各長手方向縁部84、86に沿って第2端部96の内側に設けられている。各リミットタブ94は、第2端部96に向かって延びる突部95を有している。突部95は、環状ベルト83の内周から内側に向かって曲げられる。特に、図3に示すように、金属帯板82が環状のベルト83に形成されると、第1端部90が、第2端部96に重なり合うように内側に延びる。この実施形態の構成では、エンドタブ92が、リミットタブ94から間隔を置いて配置されている。図4に詳細に示すように、各リミットタブ95は、第1部分97と第2部分とを有する。第1部分97は、金属帯板82の面93と平行に隣接している。また、第2部分は、金属帯板82の第1端部90に設けられたエンドタブ92が、突部95の下にスライドできるように、内側に曲げられる突部95を形成する。以下に記載するように、突部95は、エンドタブ92がベルトに沿ってスライドできる範囲を規制する停止部の役割を果たす。停止部である突部95によって、図5に示すように、ベルト83の円周の縮小を制限することができる。
【0019】
図6は、他の実施形態である逆止弁のベルトを形成するための第2の金属帯板100を示す。第2の金属帯板100は、第1の金属帯板82のように、長手方向縁部から突出するタブ88を有していない。第2の金属帯板100は、長手方向縁部102、104によって定義される均一の幅を有する。細長い開口部106は、第2の金属帯板100の全体に亘って並んで複数設けられている。また、細長い開口部106は、第1長手方向縁部102および第2長手方向縁部104それぞれから内側に向かって少し間隔をおいて配置されている。第1端部108は、第1長手方向縁部102と第2長手方向縁部104との間に延びている。ベルトの第1端部に対向する第2端部110は、減少幅部112を有している。一対の突部114は、第1長手方向縁部102および第2長手方向縁部104の末端のそれぞれから第2端部110に向かって減少幅部112と平行に延びている。第2の金属帯板110がチューブ状のベルトに曲げられると、第1端部108は、第2端部110の内側に重なって、2つの突部114が内側に曲げられる。したがって、逆止弁の作動中、ベルトの円周および直径が、そこに作用する圧力によって減少したとき、以下に述べるように、第1端部108がその円周の縮小の量を制限する2つの突部114の下にスライドする。
【0020】
図7に示すように、さらに別の実施形態である逆止弁ベルトを形成する第3の金属帯板200が示されている。金属帯板200は、複数の円形の開口部206を有する。円形の開口部206は、長手方向縁部202、204の両方のそれぞれに沿って、第1端部208と第2端部210との間に複数設けられている。一対の突部214は、第2端部210に向かって減少幅部と平行に延びている。第3の金属帯板200は、環状の逆止弁のベルトを形成するために、第1端部208および第2端部210と共にリング状に曲げられる。
【0021】
図1および図2に関して、弁本体20の構成部品は、金属帯板82を曲げてチューブ状のベルト83にすることによって、組み立てられる。そして、ベルト83は、第1端部90がリミットタブ94をこえて延びるように、手動で縮小される。これにより、非常に小さい直径のサイズまでベルトを小さくすることができる。この減少したサイズは、ベルト83が弁本体20のボア21に挿入されることを可能にする。挿入されたベルト83は、環状溝29に到達した際、解放される。そして、図8に示すように、ベルトが環状溝29の内部曲面27に対して位置付けられるまで、金属帯板82の弾力性により、ベルト83の直径および円周が外側に向かって広がるようにはね返される。この位置は、逆止弁80の閉位置、および、ベルト83の標準状態として見なされ、ベルト83は、全ての吸入ポート28を閉じる。金属帯板82の弾力性が、そこに働く力がない限り、ベルトをこの標準状態に戻す。ここで用いられている「標準状態(normal state)」は、油圧弁10が閉じられているとき、あるいは、供給路26およびスプール44の切欠き部46における圧力が等しいときの環状のベルト83の配置を参照する。標準状態では、エンドタブ92が、図に示すように、リミットタブ94の突部95から離れて間隔をおいて設けられている。
【0022】
図1を再度参照すると、弁アセンブリは、スプール44、スプリング50、および、ノーズ片52を弁本体20のボア21に挿入することによって、継続する。電気油圧弁10の残りの部分は、従来の方法で組み立てられる。
【0023】
電気油圧弁10の動作中、スプール44は、吸入ポート28とワークポート30との間、または、吸入ポート28とワークポート32との間の経路を開いたり閉じたりするために、弁本体20のボア21内で選択的に移動する。それらの経路の1つが開いた際、関連するワークポートの圧力が吸入ポートの圧力より大きい場合には、図8および図9に示すように、ベルト83が内部曲面27に対して保持され、吸入ポート28を閉じたままにする。これによって、吸入ポート28および供給路26に流れる流体の逆流を防ぐことができる。
【0024】
また、供給路26の圧力が、関連するワークポート30または32の圧力よりも大きい場合には、大きい圧力が弁本体20の周り、および、各吸入ポート内28に伝わる。そして、その大きな力が逆止弁のベルト83の外周に適用されるので、図10および図11に示すように、弁本体20における環状溝29の内部曲面27から離れて直径方向および円周方向にベルトが縮小される。特に、図11に示すように、長手方向縁部に沿って設けられたタブ88は、通常、環状溝29の側壁の間の中央に配置されるベルト88を保持する。縮小された状態では、隣接するタブ88間のギャップまたは空間が、吸入ポート28からスプール44の周辺の外側の切欠き部46および先の各第1、第2ワークポート30、32まで流体が流れる通路を提供する。第2の金属帯板100に設けられた開口部106、および、第3の金属帯板200に設けられた開口部206は、それぞれ、流体が流れる通路を提供する第1の金属帯板82のタブ88間の空間として同じ機能を果たす。スプール44の開位置では、流体が、排出ポート31および戻り流路25を通って別のワークポート32または30から油圧システムのタンクまで流れる。
【0025】
開状態で、第1ワークポート30または第2ワークポート32における圧力が、供給路の圧力より大きくなる場合、より大きな力が、ベルト83の内側の円周面に適用される。これは、環状溝29の内部曲面27に対してバンド83を外側に拡大させる。このため、全ての吸入ポート28が閉じられる。ゆえに、ワークポートからの流体が、弁10を通って供給路26に逆流することを防ぐことができる。
【0026】
弁10の開状態では、時々、非常に大きな圧力差が、吸入ポート28とスプール44に設けられた切欠き部46との間で生じる。この極度な圧力差は、ベルト83の直径が弁本体20の長手方向ボア21の直径より小さくなるように、ベルト83において広範囲でその直径を縮小させることが可能である。そのように減少した直径の状態では、ベルト83は、環状溝29から移動することができ、長手方向ボア21の曲面23と係合することができる。しかしながら、この状況では、圧力差が逆になった場合、逆止弁80は、その位置で動けなくなり、吸入ポート28を閉じることができなくなる。
【0027】
逆止弁80がこのように動けなくなるのを防ぐために、突部95が、ベルト83の円周の縮小の範囲を制限する停止部として働く。図5に示すように、ベルト83の縮小が、ベルトの重なり合う部分で突部95に突き当たるエンドタブ92によって制限される。このようにベルトの縮小を制限することによって、ベルトの縮小が可能な最小の直径が、弁本体20における長手方向ボア21の直径より大きくなるように、保たれる。このため、ベルト83は、環状溝29で動くことができ、かつ、弁本体20の長手方向ボア21の曲面27に接することができる程度まで、縮小を制限することが可能である。
【0028】
図12は、別のバージョンの逆止弁のベルトを形成するための金属帯板300を示す。金属帯板300は、第1の金属帯板82に設けられた突部タイプの停止部を有していない。弾力性のある金属帯板300は、第1端部307および第2端部309を有している。第1端部307と第2端部309との間には、一対の長手方向縁部302、304が設けられており、互いに平行に長手方向に延びている。複数のタブ306が、金属帯板300の長手方向の長さに沿って間隔をあけて設けられており、2つの長手方向縁部302、304それぞれから外側に向かって突出している。この金属帯板300では、4つのタブが各長手方向縁部302、304に沿ってそれぞれ設けられているが、4つ以上または4つ以下のタブを設けることもできる。第1の細長い開口部308は、第1端部307の近くで内側に間隔をあけて設けられており、金属帯板300の幅の中央に位置付けられている。また、第2の細長い開口部310は、第2端部309の近くで内側に間隔をあけて設けられており、金属帯板300の幅の中央に位置付けられている。
【0029】
図13に示すように、金属帯板300が、逆止弁のベルト320を形成するために、リング状に曲げられると、第1端部307および第2端部309が重なり合うと共に、第1の細長い開口部308および第2の細長い開口部310も重なり合う。ベルト320は、弁本体20のボア21における環状溝29に挿入されると、ピン312が、第1の細長い開口部308および第2の細長い開口部310を通って挿入され、環状溝29の内部曲面27に設けられた穴に固定される。逆止弁が、ベルト320の縮小によって開くと、縮小の量が、ピン312を突き刺している第1の細長い開口部308および第2の細長い開口部310の端部によって制限される。ゆえに、この場合の逆止弁では、ピン312がベルトの縮小を制限する停止部として働く。
【0030】
以上の説明は、主に本発明の好ましい具体例に関するものである。本明細書に記載された具体例の記載から明らかな様々な具体例は、当業者にとって明らかであるので、本発明の範囲に含まれると解すべきである。よって、本発明の範囲は、前述の発明の詳細な説明の記載に制限されず、特許請求の範囲によって定められる。
【符号の説明】
【0031】
20 弁本体
21 ボア
22 開口部
25 戻り流路
27 内部曲面
28 吸入ポート
29 環状溝
30 第1ワークポート
31 排出ポート
32 第2ワークポート
44 スプール
46 切欠き部
47、49 端部
53 開口部
56 ソレノイドコイルアセンブリ
63 リブ
80 逆止弁
82、100、200、300 金属帯板
83 環状のベルト
84、86、202、204、302、304 長手方向縁部
88、306 タブ
90、108、208、307 第1端部
96、110、210、309 第2端部
92 エンドタブ
94 リミットタブ
95、114、214 突部(停止部)
102 第1長手方向縁部
104 第2長手方向縁部
106 細長い開口部
206 開口部
308 第1の細長い開口部
310 第2の細長い開口部
312 ピン(停止部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁装置において、
環状溝を備えたボア、および、前記環状溝に開口している第1流体ポート、を有する弁本体と、
重なり合う第1端部および第2端部を備えた帯板によって形成される環状のベルトと、
前記弁本体または前記環状のベルトに設けられ、ベルトの縮小を制限する停止部と、を有し、
前記ベルトが、前記環状溝に位置付けられることにより、前記第1流体ポートと前記ボアとの間の流体連通が閉じられる標準状態となると共に、
前記ベルトが、前記第1流体ポートの圧力で縮小されることにより、前記第1流体ポートと前記ボアとの間の流路が提供される
ことを特徴とする弁装置。
【請求項2】
前記停止部が、前記帯板の前記第2端部に隣接する位置に設けられると共に、前記ベルトの縮小を制限するために前記第1端部に係合されることを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
前記帯板が、前記第1端部に隣接する第1開口部と、前記第2端部に隣接する第2開口部と、前記弁本体に取り付けられ、かつ、前記第1開口部および前記第2開口部に延びる部材を備えた前記停止部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【請求項4】
前記ベルトが、前記第1流体ポートの圧力の大きさにかかわらず前記環状溝から動かないようにするために、前記ベルトの縮小が、前記停止部によって制限されることを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【請求項5】
前記停止部が、前記帯板の面から突出する突部で構成され、
前記帯板の前記第1端部が、前記ベルトの縮小を制限するために、前記突部に当接されることを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【請求項6】
前記帯板が、前記第1端部と前記第2端部との間で延び前記帯板の面に接する第1縁部と、前記第1端部と前記第2端部との間で延び前記帯板の面に接する第2縁部と、を有し、
前記停止部が、前記第1縁部から外側に向かって突出し且つ前記面と平行である第1部分と、前記面と平行ではない第2部分と、で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【請求項7】
前記ベルトの縮小中、前記第1端部が、前記停止部に当接するまで、前記表面に沿ってスライドすることを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【請求項8】
前記第1端部が前記停止部と係合した際、前記ベルトは、前記ボアの直径より大きい直径を有することを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【請求項9】
前記帯板が、前記第1端部と前記2端部との間で延びる第1縁部と、前記第1端部と前記2端部との間で延びる第2縁部と、前記第1縁部および前記第2縁部の少なくとも1つから外側に向かって突出し間隔をおいて設けられる複数のタブと、をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【請求項10】
前記複数のタブが、前記環状溝の少なくとも1つの壁に係合されることを特徴とする請求項9に記載の弁装置。
【請求項11】
隣接する前記タブ間によって、空間が規定され、
前記ベルトのサイズが縮小した状態では、前記空間が、流路の一部を形成することを特徴とする請求項9に記載の弁装置。
【請求項12】
前記弁本体の前記ボアに収容されるスライド可能な弁スプールが、さらに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【請求項13】
前記帯板が、前記第1端部と前記2端部との間で延びる第1縁部と、前記第1端部と前記2端部との間で延びる第2縁部と、前記帯板に延び且つ前記第1縁部および前記第2縁部の少なくとも1つに沿って間隔をあけて隣接して設けられた複数の開口部と、をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【請求項14】
弁装置において、
環状溝を備えたボア、前記環状溝に開口している第1流体ポート、および、前記ボアに開口している第2流体ポート、を有する弁本体と、
前記ボアに収容され、前記第1流体ポートと前記第2流体ポートとの間を流れる流体を選択的に制御するスライド可能なスプールと、
重なり合う第1端部および第2端部を備えた帯板によって形成される環状のベルトと、を有し、
前記ベルトには、前記第2端部に隣接して設けられ、かつ、前記ベルトの縮小を制限するために前記第1端部に係合される停止部が、さらに設けられ、
前記ベルトが、前記環状溝に位置付けられることにより、前記第1流体ポートと前記ボアとの間の流体連通が閉じられる標準状態となると共に、
前記ベルトが、前記第1流体ポートの圧力で縮小されることにより、前記第1流体ポートと前記ボアとの間の流路が開かれることを特徴とする弁装置。
【請求項15】
前記帯板が、前記第1端部と前記第2端部との間に延びる第1縁部と、前記第1端部と前記第2端部との間に延びる第2縁部と、前記第1縁部および前記第2縁部の少なくとも1つから外側に向かって突出し間隔をおいて設けられる複数のタブと、を有することを特徴とする請求項14に記載の弁装置。
【請求項16】
前記複数のタブが、前記環状溝の壁に係合されることを特徴とする請求項15に記載の弁装置。
【請求項17】
隣接する前記タブ間によって、空間が規定され、
前記ベルトのサイズが縮小した際には、前記空間が、流路の一部を形成することを特徴とする請求項15に記載の弁装置。
【請求項18】
前記帯板が、前記第1端部と前記第2端部との間に延びる第1縁部と、前記第1端部と前記第2端部との間に延びる第2縁部と、前記第1縁部および前記第2縁部の少なくとも1つに沿って間隔をあけて隣接して設けられた複数の開口部と、をさらに有することを特徴とする請求項14に記載の弁装置。
【請求項19】
前記ベルトが、前記第1流体ポートの圧力の大きさにかかわらず前記環状溝から完全に動かないようにするために、前記サイズの縮小が、前記停止部によって制限されることを特徴とする請求項14に記載の弁装置。
【請求項20】
前記停止部が、前記帯板の面から突出する部材で構成され、
前記第1端部が、前記ベルトのサイズの縮小を制限するために、前記部材に当接されることを特徴とする請求項14に記載の弁装置。
【請求項21】
前記停止部が、前記第1縁部から外側に向かって突出し且つ前記帯板の面と平行である第1部分と、前記表面と平行ではない第2部分と、で構成されていることを特徴とする請求項14に記載の弁装置。
【請求項22】
前記ベルトのサイズの縮小中、前記第1端部が、前記停止部に当接するまで、前記帯板の面に沿ってスライドすることを特徴とする請求項14に記載の弁装置。
【請求項23】
前記第1端部が前記停止部と係合した際、前記ベルトは、前記ボアの直径より大きい直径を有することを特徴とする請求項14に記載の弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−197936(P2012−197936A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−63185(P2012−63185)
【出願日】平成24年3月21日(2012.3.21)
【出願人】(509337573)インコヴァ テクノロジーズ, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】