説明

環状アルケン誘導体の分解を防止する添加剤

安定化された環状アルケン組成物であって、1つ又はそれ以上の環状アルケン、及び式(I):
【化1】


ここで、R1からR5は、各々独立に、H、OH、(C1−C8)の直鎖状、分枝鎖状若しくは環状アルキル、(C1−C8)の直鎖状、分枝鎖状若しくは環状アルコキシ、又は置換若しくは無置換のアリールである;
を有する少なくとも1つの酸化防止化合物を含み、且つ、酸化防止化合物は、約1ppmから約200ppmの間の量で存在し、そして265℃未満の沸点を有する組成物、及び、基板上に炭素をドープした酸化ケイ素の層を形成する方法であって、安定化したアルケン組成物及びケイ素含有化合物を使用する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明(present disclosure)は、一般に、空気に対して安定性を示す環状のアルケン組成物に関する。更に特別には、本発明は、その様な組成物の蒸発の際の残留物の生成を減少させるか又はなくするための、1つ又はそれ以上の酸化防止剤化合物で安定化した環状アルケン誘導体、及び誘電体膜を形成するためのその様な組成物の使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体工業は半導体素子を製造するため、多くの種類の薄肉及び厚肉膜を必要とし、その多くはケイ素をベースにしている。これらの膜の元素組成は、典型的には、酸素、水素及びフッ素との様々な組み合わせを含むケイ素と炭素のいくつかの組み合わせである。米国特許第6914335号において、Andidehらは、どの様に層が異なり、そして異なった目的に対して、どの様に使用できるかを教示しており、一方、米国特許第6846515号において、Vritisらは、半導体工業にとって好ましい誘電体膜用のケイ素、酸素、炭素及び水素の範囲を教示している。しばしば使用される方法は化学蒸着法であり、そしてこの方法には多くの改良法がある。
【0003】
典型的な化学蒸着法においては、ケイ素含有化合物は、被覆される基板を含む蒸着室に導入される。ケイ素含有化合物は、次いで化学的に又は物理的に(即ち、別の成分と反応し、又は放射線、熱(熱CVD)又はプラズマ(PECVD)などのエネルギー源の処理を受けて)変化し、基板上に膜が析出する。ケイ素及び酸素のみ(即ち、酸化ケイ素)を含む蒸着膜は、空隙が無い場合、約4の誘電率を有し、一方、炭素(即ち、炭素をドープした酸化ケイ素)及び/又は空隙を含む膜は、しばしば4未満の誘電率を有する。誘電率が約2.7未満の膜は、より新しい半導体素子にとって好ましいものである。米国特許第6583048号において、Vincentらは、化学蒸着技術の実例、誘電率及び半導体工業において望ましい膜の実例を挙げている。
【0004】
基板上に蒸着した層の、誘電率、膜硬度、屈折率などの性質は、膜蒸着装置に供給される化学物質の組成、及び採用する方法の変更によって影響を受ける。膜性質は、ケイ素含有化合物の同一性を変えることにより、異なったフロー・ガスを用いることにより、1つ又はそれ以上の反応性気体を用いることにより、又は蒸着後アニール技術を用いることにより変えることができる。層の性質に影響を与える別の手段は、ケイ素含有化合物の組み合わせを用いるか、又はケイ素含有化合物と1つ又はそれ以上の添加剤化合物とを組み合わせるかである。これらの技術は、膜の化学組成を変えて、膜を所望の性質に適合させることに用いることができる。米国特許第6633076号、第6217658号、第6159871号、第6479110号、及び第6756323号(これらは、参照により本明細書に組み入れられる)は、膜の性質が、蒸着パラメータ又は成分混合物を変化させることによって、如何に影響を受けるかの実例を示している。
【0005】
添加剤化合物を用いる別の方法は、化合物の断片又は原子が膜中に一時的にしか存在しない化合物を用いることである。膜は後処理を行って、放射線、又は放射線と酸素の様な反応性気体との組み合わせを用いて、断片又は原子を膜から排除し、得られた膜に空隙を生成させる。この方式は、蒸着膜の性質(例えば、誘電率)に影響を与える。この方式で用いられる化合物は、ポロゲンとして記載される。
【0006】
この種の方式で用いられる代表的なポロゲンは、大半は炭素及び水素で構成される。ポロゲンとして興味ある環状アルケン化合物の類の実例は、米国特許第6846515号及び同第6756323号に記載されている。
【0007】
半導体の大量製造は、装置及び装置を流れる化学物質の純度及び安定性に厳しい要求を課している。微量の何らかの汚染物質ですら、蒸着膜の性質を低下させ得る。化学品ライン及び蒸発手段を通じて送られる化学物質は、輸送し、クリーンに蒸発させ、そして長期の使用期間中、後に残留物を殆んど又は全く残さないことが期待される。1つの装置が予定された又は予定外の保守(例えば、重合残渣で汚染された又は詰まった化学品ライン又は蒸発手段の清掃)の期間の間、より長く操作することができれば、それだけ装置の生産性が高まり、費用効果が向上する。清掃及び保守のため、しばしば停止させなければならない蒸着装置は、半導体製造顧客に対して魅力的ではない。それ故、継続的で、長期間装置を運転できることが望ましい。蒸発手段としては、加熱蒸発器(米国特許第6604492号、同第5882416号、同第5835678号及びそれらにおける引用文献を参照)、泡立てアンプル(米国特許第4979545号、同第5279338号、同第5551309号、同第5607002号、同第5992830号及びそれらにおける引用文献を参照)、フラッシュ蒸発器(米国特許第5536323号及びそれにおける引用文献を参照)、及び煙霧装置(米国特許第5451260号、同第5372754号、同第6383555号及びそれらにおける引用文献を参照)を含む、数種の蒸発装置が挙げられるが、それらに限定されない。
【0008】
これらの純度及び安定性の要求は、しばしば、達成が困難である。多くの物質は、ある程度酸化し、重合し、又は転移するかもしれない。その様な副生成物は、極少量でも多くの半導体用途に対して望ましいものではない。
【0009】
1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)は、低誘電率(low−k)膜を製造するために採用できる代表的なケイ素含有化合物であり、そして、安定性を維持するのが困難である例でもある。信頼性のある製造方法を確立するための初めの作業が、化学品ライン、蒸気配送ライン及び蒸着室内を含む蒸着プロセス中の、異なった場所における生成物のゲル化によって妨げられた。このことは、純粋なTMCTSの安定性が十分でないことを示すものであった。そして多種類の添加剤が、Teffらによって、米国特許出願第2004/0127070号において研究された。酸化防止剤が、空気、特に酸素への暴露に対して、長期の期間、常温で又は昇温下で、TMCTSを安定化させるのに極めて効果的であることが見出された。今や、酸化防止剤で安定化されたTMCTSが半導体の製造に使用された場合、プロセスはより安定化し、そして蒸着装置におけるゲルの生成が著しく減少する。
【0010】
ノルボルナジエン(NBDE)は、主として、その構造における結合歪、及び加熱した場合、熱反応が起って揮発性物質が生成する傾向に基いて、ポロゲンとしての使用について興味ある環状ジエンの例である(米国特許第6846515号、同第6479110号、同第6437443号及び同第6312793号参照)。NBDE及び類似の環状アルケン誘導体は、酸素と反応して重合又は酸化して、環状アルケンモノマーに溶解するか又は溶解しないかも知れない、高分子量で低揮発性の物質を生成する。この反応は、経時により、室温でわずかに空気暴露した後ですら、環状アルケンの著しい分解の原因となる。
【0011】
NBDEは、溶解性に富み、偶発的な空気の存在下で低揮発性の固体生成物を生成するが、それは、NDBEを蒸発させる前に、目視検査では容易に判別できない。このことは、揮発性のNBDEを蒸発させるにつれて、蒸発手段に固体生成物を蓄積させる結果をもたらし得る。蒸発手段の表面積が小さい場合、少量の残留物がNBDEの蒸発を妨げ、遂には、蒸発手段を低揮発性固体で詰まらせ得る。泡立てアンプルが、蒸発手段として用いられる場合、酸化生成物が重合を開始し、泡立て器の全内容物を重合させ、フロー・ガス流入ラインを封鎖する原因になり得る。このことは、蒸発プロセスのために常に加熱されている泡立て器に特に当てはまる。唯一の解決法は、影響を受けた蒸発器を分解し、清掃し、又は代替することであるが、それには大きなコストが掛かり、そして時間も浪費する。圧力の負荷された化学品ライン及びバルブが低揮発性固体で封鎖された場合、安全性の問題も、又、懸案事項となる。
【0012】
半導体工業は、安定な、予測可能な、そして、信頼性のある生成物を要求しているが、この動きは、半導体の大量製造には合致するものではない。それ故、NBDEを安定化させ、生成物が、化学品供給者から最終使用プロセスに至るまでの輸送の間、種々の条件に暴露された後ですら、容易に分解しないことを確実にする手段を見出すことが必要である。しかし、環状アルケン化合物の化学的性質は、一般的に用いられるケイ素含有化合物の化学的性質とはかなり異なり、従って、ケイ素含有化合物を安定化させる同じ化合物が、環状アルケンを安定化させるかどうかは明白でなない。
【0013】
TMCTSは、酸素の存在下で、開環し重合すると信じられている。更に、TMCTSは、酸素分子と反応性のあるSi−H結合を有する(米国特許出願第2004/0127070号、及び米国特許第6858697号を参照)。それに比べて、NBDEは、空気の存在下で徐々にオリゴマー化するが、ゲル化せず、環構造は、オリゴマー化の過程の間に不変に止まる。TMCTSが、化学品ライン内で空気に暴露された場合、ゲルとして完全に重合するのに対して、NBDEは、高度に溶解性のある、中程度から高分子量で、低揮発性のオリゴマーを生成し、それは、目視検査では明白ではなく、又はガスクロマトグラフィー(GC)で容易に検出できないものである。これに反して、生成したオリゴマーは、揮発性のNBDEが蒸発してなくなって、後に低揮発性オリゴマーが残留した場合に検出される。
【0014】
NBDE及び類似の物質は、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)としても知られているブチル化ヒドロキシトルエンの様な酸化防止剤で安定化される場合もある(Clariant LSM 171779 Norbornadiene Specification Sheet and Aldrich Catalog Number B3,380-3を参照)。これらの物質に対する公知の酸化防止剤は、非常に高い沸点を有する。例えば、BHTの沸点は265℃であり、これは、NBDE及び類似の物質のそれより著しく高い沸点であり、このことは、その蒸発プロセスの制御を非常に難しくしている。ある種の通常使用されている酸化防止剤は、又、蒸着膜に導入されることが望ましくない原子(例えば、硫黄、窒素)を含む。選択される酸化防止剤の如何に拘わらず、それらは通常、0.02〜0.25質量%(200〜2500ppm)の濃度で加えられるが、製造業者が貯蔵寿命を延長させたいと希望する場合に、添加剤はこの量を上回ることがありうる。化学品の製造業者は、低コスト及び入手の容易性の観点からBHTの使用を好む。しかしながら、これらの添加剤の濃度は、半導体目的のために好ましいレベルより高い。何故なら、高濃度の酸化防止剤は、ポロゲン組成物の純度に悪影響を与えるからである。これらのより高い濃度は、又、蒸発装置に多くの残留物を残し、それらは、化学蒸着プロセスに関連した清掃及び保守費用に加算される。
【0015】
このように、従来の技術には、環状アルケンを、オリゴマー化又は他の望ましくない反応から安定化させることができる、好適な原子組成を有する低沸点添加剤については記載していない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、安定化した環状アルケン組成物であって、
a)1つ又はそれ以上の、置換された又は置換されていない環状アルケン;及び
b)少なくとも1つの式(I)の化合物を含む酸化防止剤組成物であって、ここで、酸化防止剤組成物は1ppm〜200ppmの濃度で存在し、そして、R1からR5は、各々独立に、H、OH、(C1−C8)の直鎖状、分枝鎖状若しくは環状アルキル、(C1−C8)の直鎖状、分枝鎖状若しくは環状アルコキシ、又は置換若しくは置換されていないアリールであることができ、但し、酸化防止剤組成物の成分は265℃未満の沸点を有するものとする;
【化1】

を含む組成物を提供する。
【0017】
本発明は、更に、ウエハー上に炭素をドープした酸化ケイ素層を形成するための、環状アルケン組成物を用いる方法を提供する。この方法は、以下の工程:
a)容器中の環状アルケン組成物、容器中のケイ素含有化合物、膜蒸着装置、該膜蒸着装置内の膜蒸着室、容器と該膜蒸着装置内の膜蒸着室を連結する手段、環状アルケン組成物及びケイ素含有化合物を、連結手段を通じて膜蒸着室へ吹き流すキャリアガスの流れ、及び膜蒸着装置の膜蒸着室内の基板を用意し;
b)環状アルケン組成物及びケイ素含有化合物の蒸気を、キャリアガス流へ導入し;
c)環状アルケン組成物及びケイ素含有化合物の蒸気を、膜蒸着室へ輸送し;そして
d)1つ又はそれ以上のエネルギー手段を用いて、炭素をドープした酸化ケイ素膜を基板上に形成すること;
を含み、ここで、該環状アルケン組成物は、
1)1つ又はそれ以上の、置換された又は置換されていない環状アルケン;及び
2)少なくとも1つの式(I)の化合物を含む酸化防止剤組成物であって、ここで、酸化防止剤組成物は1ppm〜200ppmの濃度で存在し、そして、R1からR5は、各々独立に、H、OH、(C1−C8)の直鎖状、分枝鎖状若しくは環状アルキル、(C1−C8)の直鎖状、分枝鎖状若しくは環状アルコキシ、又は置換若しくは置換されていないアリールであることができ、但し、酸化防止剤組成物の成分は265℃未満の沸点を有する組成物;
を含むものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
半導体工業は、数多くの種類の薄肉及び厚肉膜を、半導体素子製造のために必要とする。これらの膜を製造するために、しばしば用いられる方法は化学蒸着法(chemical vapor deposition)であり、この方法には多くの変形法がある。代表的な化学蒸着法においては、ケイ素含有化合物は、被覆すべき基板を含む蒸着室内へ導入される。次いで、ケイ素含有化合物は、化学的又は物理的に変化させられ(別の成分と反応し、又は放射線、熱(熱CVD)又はプラズマ(PECVD)などのエネルギー源の適用を受け)、基板上に膜を析出する。
【0019】
半導体の大量製造は、膜蒸着装置及び装置を流れる化学物質の純度及び安定性に厳しい要求を課している。微量の何らかの汚染物質ですら、蒸着膜の性質を低下させ得る。化学品ライン及び蒸発手段を通じて送られる化学物質は、クリーンに輸送し蒸発させ、そして長期の使用期間中、後に残留物を殆んど又は全く残さないことが期待される。1つの装置が予定された又は予定外の保守(例えば、高分子物質で汚染された又は詰まった化学品ライン又は蒸発手段の清掃)の期間の間、より長く操作することができれば、それだけ装置の生産性が高まり、費用効果が向上する。清掃及び保守のため、しばしば停止させなければならない蒸着装置は、半導体製造顧客に対して魅力的ではない。それ故、継続的で、長期間装置を運転できることが望ましい。
【0020】
これらの純度及び安定性の要求は、しばしば、達成が困難である。多くの物質は、ある程度酸化し、重合し、又は転位するかもしれない。その様な副生成物は、極少量でも多くの半導体用途に対して望ましいものではない。半導体工業において用いられる物質は、蒸着室へ到着する前に、望ましくない副反応の生成を防止するために、添加剤を必要としうる。
【0021】
環状アルケンは、半導体工業において、低誘電率(low−k)膜を形成する化学蒸着法にとって興味ある物質であり、安定化するための添加剤を必要とする。
【0022】
半導体工業において有用な化学物質は、添加剤を含めて、典型的には、300℃未満の沸点を有する化学種に限定される。更に、半導体工業における具体的な応用例は、前駆体が持たなければならない更なる性質を指示するかも知れない。例えば、層間誘電体(ILD)膜の形成は、チップ内における周辺層との適合性の故に、前駆体の選択は、ケイ素、酸素、炭素及び水素のみの使用に限定される。ラジカル禁止剤の選択も、又、この基本に従わなければならず、それ故、通常のラジカル禁止剤及びレシチン及びリポ酸などの酸化防止剤に見られる窒素、硫黄及びリンは、避けなければならない。
【0023】
環状アルケンの安定化に加えて、環状アルケン及び使用される安定剤の間での沸点の差異を最小化することは、有利なことである。例えば、NBDEは、89℃で沸騰し、一方、BHTは265℃で沸騰する。この差異は半導体蒸着装置の蒸発手段に深刻な問題を引き起こすのに十分である。通常は、これらの蒸発手段は、熱分解を避けながら、液体生成物の完全な蒸発を可能にするため、最低の可能な温度に設定される。又、蒸発手段の熱負荷のバランスをとり、蒸気流を飽和させることなく、生成物を正しく蒸発させることが必要である。これらに配慮して、化学物質源を過剰に加熱することなく蒸発させることは、微妙なバランスである。従って、高分子量成分が殆ど又は全く蒸発されず、そしてこれらが蒸発手段内に蓄積され、最終的にはそれを詰まらせることは、しばしば起こるケースである。この理由のため、環状アルケン誘導体及びそれらの安定剤の間の沸点差を低減し、安定剤濃度を最低レベルまで下げることは、望ましいことである。しかしながら、望ましい元素組成を有するより高揮発性のどの添加剤が、低濃度で環状アルケンを効率的に安定化させることができるかどうかは、明白ではない。
【0024】
泡立てアンプル(bubbler ampoule)を蒸発手段として用いる場合、少量(アンプル内で約10質量%までの化学物質)の安定剤の蓄積しか許容されない。泡立てアンプルが、その中で化学物質が蒸発するより大きな室を有するのはこのためであり、そして、それらは、できるだけ稀に代える方が有利ではあるが、かなり規則的に新たな泡立てアンプルと取り代えるように設計されている。
【0025】
本発明の組成物は、向上した安定性を示し、環状アルケン製品の貯蔵寿命を著しく延長し、半導体製造におけるこれらの生成物の取り扱いに大きな自由度を与える。得られる環状アルケンの安定化は、輸送容器内での、化学物質配送ラインにおいての、又はバルブ内若しくは蒸発手段内での、残留物の生成(即ち、固体化)を防ぐ。このことは、装置の保守及び費用を低下させ、機械装置が休転している時間を低減する。加えて、高分子量化合物の生成の減少は、蒸気配送ラインにおける高分子量の化合物の逐次的な析出に対する懸念なしに、生成物の均一な蒸発を可能にし、より一貫性のある高品質の蒸着膜が得られることになる。より揮発性のフェノール性の酸化防止剤の使用も、又、有利である。何故なら、環状アルケン及び揮発性の安定剤はクリーンに蒸発し、よりクリーンなプロセスに繋がるということは、おおいにあり得ることであるからである。
【0026】
本発明の1つの実施態様において、環状アルケン組成物は、
a)1つ又はそれ以上の、置換された又は置換されていない環状アルケン;及び
b)式(I)で示される酸化防止剤化合物であって、ここで、酸化防止剤化合物は265℃未満の沸点を有するフェノール性化合物であり、1ppm〜200ppmの間の濃度で存在し、そして、ここで、R1からR5は、各々独立に、H、OH、(C1−C8)の直鎖状、分枝鎖状若しくは環状アルキル、(C1−C8)の直鎖状、分枝鎖状若しくは環状アルコキシ、又は置換若しくは置換されていないアリールである化合物;
【化2】

を含む。
【0027】
環状アルケンは、本明細書において、非芳香族環に非芳香族性の二重結合を有する炭素環化合物として定義される。環状アルケンの類の例としては、シクロアルケン、シクロアルカジエン、シクロアルカトリエン、シクロアルカテトラエン、芳香族基を含むシクロオレフィン、多環アルケン、多環アルカジエン、多環アルカトリエン、多環アルカテトラエン及びそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0028】
好ましい環状アルケンの部類は、一般式Cn2n-2x-yy、ここで、nは、基本環状構造(primary cyclic structure)中の炭素数であり、xは基本環状構造中の不飽和部位の数であり、そしてyは基本環状構造上の非水素置換基Rの数である、の単一不飽和又は多数不飽和環状アルケンである。この類の環状アルケンにおいて、nは4〜18の整数であり、xは整数であって、且つ、1≦x≦n/2であり、yは整数であって、且つ、0≦y≦2n−2xであり、そして、Rは、各々独立に、(C1−C18)の直鎖状、分枝鎖状、不飽和の若しくは環状アルキル、(C1−C18)の直鎖状、分枝鎖状、不飽和の若しくは環状アルコキシ、置換若しくは置換されていないアリール、又は置換基を含む置換ケイ素である。より好ましいnの値の範囲は、6〜14であり、そして最も好ましい範囲は、8〜12である。この類の例としては、t−ブチルシクロヘキセン、α−テルピネン、リモネン、γ−テルピネン、1,5−ジメチル−1,5−シクロオクタジエン、ビニルシクロヘキセン、シクロブテン、メチルシクロブテン、ジメチルシクロブテン、トリメチルシクロブテン、エチルシクロブテン、ジエチルシクロブテン、トリエチルシクロブテン、メトキシシクロブテン、メチルメトキシシクロブテン、シクロヘキシルシクロブテン、イソプロピルシクロブテン、イソプロペニルシクロブテン、シクロペンテン、メチルシクロペンテン、ジメチルシクロペンテン、トリメチルシクロペンテン、メトキシシクロペンテン、メチルメトキシシクロペンテン、シクロヘキシルシクロペンテン、イソプロピルシクロペンテン、イソプロペニルシクロペンテン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン、ジメチルシクロペンタジエン、トリメチルシクロペンタジエン、メトキシシクロペンタジエン、メチルメトキシシクロペンタジエン、シクロヘキシルシクロペンタジエン、イソプロピルシクロペンタジエン、イソプロペニルシクロペンタジエン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、ジメチルシクロヘキセン、トリメチルシクロヘキセン、メトキシシクロヘキセン、メトキシメチルシクロヘキセン、シクロヘキシルシクロヘキセン、イソプロピルシクロヘキセン、イソプロペニルシクロヘキセン、シクロヘキサジエン、メチルシクロヘキサジエン、ジメチルシクロヘキサジエン、トリメチルシクロヘキサジエン、メトキシシクロヘキサジエン、メトキシメチルシクロヘキサジエン、シクロヘキシルシクロヘキサジエン、イソプロピルシクロヘキサジエン、イソプロペニルシクロヘキサジエン、シクロヘプテン、メチルシクロヘプテン、ジメチルシクロヘプテン、トリメチルシクロヘプテン、メトキシシクロヘプテン、メトキシメチルシクロヘプテン、シクロヘキシルシクロヘプテン、イソプロピルシクロヘプテン、イソプロペニルシクロヘプテン、シクロヘプタジエン、メチルシクロヘプタジエン、ジメチルシクロヘプタジエン、トリメチルシクロヘプタジエン、メトキシシクロヘプタジエン、メトキシメチルシクロヘプタジエン、シクロヘキシルシクロヘプタジエン、イソプロピルシクロヘプタジエン、イソプロペニルシクロヘプタジエン、シクロヘプタトリエン、メチルシクロヘプタトリエン、ジメチルシクロヘプタトリエン、トリメチルシクロヘプタトリエン、メトキシシクロヘプタトリエン、メトキシメチルシクロヘプタトリエン、シクロヘキシルシクロヘプタトリエン、イソプロピルシクロヘプタトリエン、イソプロペニルシクロヘプタトリエン、シクロオクテン、メチルシクロオクテン、ジメチルシクロオクテン、トリメチルシクロオクテン、メトキシシクロオクテン、メトキシメチルシクロオクテン、シクロヘキシルシクロオクテン、イソプロピルシクロオクテン、イソプロペニルシクロオクテン、シクロオクタジエン、メチルシクロオクタジエン、ジメチルシクロオクタジエン、トリメチルシクロオクタジエン、メトキシシクロオクタジエン、メトキシメチルシクロオクタジエン、シクロヘキシルシクロオクタジエン、イソプロピルシクロオクタジエン、イソプロペニルシクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、メチルシクロオクタトリエン、ジメチルシクロオクタトリエン、トリメチルシクロオクタトリエン、メトキシシクロオクタトリエン、メトキシメチルシクロオクタトリエン、シクロヘキシルシクロオクタトリエン、イソプロピルシクロオクタトリエン、イソプロペニルシクロオクタトリエン、シクロオクタテトラエン、メチルシクロオクタテトラエン、ジメチルシクロオクタテトラエン、トリメチルシクロオクタテトラエン、メトキシシクロオクタテトラエン、メトキシメチルシクロオクタテトラエン、シクロヘキシルシクロオクタテトラエン、イソプロピルシクロオクタテトラエン、イソプロペニルシクロオクタテトラエン、3−フェニル−1−シクロヘキセン、3−(2−メトキシフェニル)−1−シクロヘキセン、3−シクロヘキセニルトリメチルシラン、3−シクロヘキセニルトリメトキシシラン、[2−(3−シクロヘキセニル)エチル]トリメトキシシラン、[2−(3−シクロヘキセニル)エチル]トリエトキシシラン、tert−ブチルシクロヘキセン、p−メンタ−1−エン、フェランドレン及びテルピノレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
好適な環状アルケンの別の好ましい類は、一般式Cn2n-(2x+2)-yy、ここで、nは基本ビシクロ構造(primary bicyclic structure)中の炭素数であり、xは基本ビシクロ構造中の不飽和部位の数であり、そしてyは基本ビシクロ構造上の非水素置換基Rの数である、のビシクロアルケンである。この類の環状アルケンにおいて、nは5〜18の整数であり、xは整数であって、且つ、x≦n/2であり、yは整数であって、且つ、0≦y≦2n−(2x+2)であり、そしてRは、各々独立に、(C1−C18)の直鎖状、分枝鎖状、不飽和の若しくは環状アルキル、(C1−C18)の直鎖状、分枝鎖状、不飽和の若しくは環状アルコキシ、置換若しくは置換されていないアリール、又は置換基を含む置換ケイ素である。nのより好ましい範囲は、6〜14であり、最も好ましい範囲は、7〜12である。この類の例としては、3−カレン、α−ピネン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ビシクロ[2.2.2]オクタ−2,5,7−トリエン、[(ビシクロヘプテニル)エチル]トリメトキシシラン、ヘキサメチルdewarベンゼン、ビシクロ[4.3.0]ノナ−3,7−ジエン、1,4,5,8−テトラヒドロナフタレン、2,3−ジメチル−1,4,5,8−テトラヒドロナフタレン、ビシクロ[4.3.0]ノナ−3,7−ジエン、ビシクロ[4.1.1]オクタ−3−エン、ビシクロ[4.2.0]オクタ−3−エン、ビシクロ[4.2.0]オクタ−2,4−ジエン、5−(ビシクロ[2.2.1]ヘ
プタ−2−エニル)トリエトキシシラン、ビシクロ[4.2.0]オクタ−2,7−ジエン、ビシクロ[4.3.0]ノナ−3,6−ジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン及び5−エチリデン−2−ノルボルネンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
環状アルケンの別の好ましい類は、一般式Cn2n-(2x+4)-yy、ここで、nは基本トリシクロ構造中の炭素数であり、xは基本トリシクロ構造中の不飽和部位の数であり、そしてyは基本トリシクロ構造上の非水素置換基Rの数である、のトリシクロアルケンである。この類において、nは7〜18の整数であり、xは整数であって、且つ、x≦n/2であり、yは整数であって、且つ、0≦y≦2n−(2x+4)であり、そしてRは、各々独立に、(C1−C18)の直鎖状、分枝鎖状、不飽和の若しくは環状アルキル、(C1−C18)の直鎖状、分枝鎖状、不飽和の若しくは環状アルコキシ、置換若しくは置換されていないアリール、又は置換基を含む置換ケイ素である。nのより好ましい範囲は、8〜14であり、最も好ましい範囲は、9〜12である。例としては、ジシクロペンタジエン、1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロ−1,4−メタノナフタレン、オクタメチルトリシクロ[4.2.0.02,5]オクタ−3,7−ジエン、1,4−ジヒドロ−1,4−メタノナフタレン及び[4.2.2]プロペラ−2,4,7,9−テトラエンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
上記で説明した好ましい環状アルケンの3つの部類におけるRの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソプロペニル、ブチル、フェニル、メチルフェニル、トリメチルシリル、シクロヘキシル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、イソプロペノキシ、ブトキシ、フェノキシ、メチルフェノキシ、トリメチルシロキシ又はシクロヘキシルオキシが挙げられるが、これらに限定されない。Rの好ましい例としては、メチル、イソプロピル及びイソプロペニルが挙げられる。メチル、イソプロピル及びイソプロペニルは、半導体用途に使用するためのRとして最も好ましい。
【0032】
好ましい環状アルケンとしては、ジペンテン、フェランドレン、ジシクロペンタジエン、α−テルピネン、γ−テルピネン、リモネン、α−ピネン、3−カレン、テルピノレン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン及び5−エチリデン−2−ノルボルネンが挙げられる。最も好ましい環状アルケンは、ジシクロペンタジエン、α−テルピネン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン及び5−エチリデン−2−ノルボルネンである。
【0033】
本発明の好適なフェノール性酸化防止剤は、式(I)で記載され、但し、沸点は265℃未満であり、そしてR1からR5は、各々独立に、H、OH、(C1−C8)の直鎖状、分枝鎖状若しくは環状アルキル、(C1−C8)の直鎖状、分枝鎖状若しくは環状アルコキシ、又は置換若しくは置換されていないアリールである。好適なR1からR5の例としては、H、OH、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、tert−ブトキシ、シクロヘキシルオキシ、フェニル又はメチルフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。式(I)におけるR1からR5の好ましい例としては、H、OH、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ及びtert−ブチルが挙げられる。最も好ましい例は、H及びメトキシである。
【0034】
式(I)の酸化防止剤の好適な例としては、フェノール、4−メチルフェノール、3−メチルフェノール、2−メチルフェノール、4−エチルフェノール、4−プロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、4−ブチルフェノール、4−sec−ブチルフェノール、4−イソブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、4−メトキシフェノール(MHQ)、3−メトキシフェノール、2−メトキシフェノール、4−エトキシフェノール、2−(1−メチルブチル)フェノール、2−tert−ブチル−6−メチルフェノール及び1,2−ジヒドロキシベンゼンが挙げられるが、これらに限定されない。より好ましい式(I)の酸化防止剤としては、フェノール、4−メチルフェノール、3−メチルフェノール、2−メチルフェノール、4−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール及び2−メトキシフェノールが挙げられる、最も好ましい式(I)の酸化防止剤は4−メトキシフェノールである。
【0035】
フェノール性添加剤の好適な濃度は、約1ppm〜約200ppmの範囲から得られてよい。好適な濃度範囲は、好適な濃度の下限及び好適な濃度の上限を定義することによって定義することが出来る。
【0036】
フェノール性添加剤の好適な濃度範囲の下限は、約1ppm〜約50ppmであってよい。濃度範囲の下限の好適な濃度は、約1ppm、約5ppm、約10ppm、約25ppm、及び約50ppmであるが、これらに限定されない。
【0037】
好適な濃度範囲の上限は、組成物の安定化に対しては臨界的ではなく、蒸着膜の純度、及び環状アルケン組成物へのフェノール性添加剤の溶解性をある程度考慮して限定されてよい。フェノール性添加剤濃度の上限に対する好適な濃度範囲は、約100ppm〜約200ppmであってよい。上限の好適な濃度の例は、約100ppm、約125ppm、約150ppm、約175ppm、及び約200ppmであるが、これらに限定されない。
【0038】
好適な濃度範囲は、用いられる具体的な酸化防止剤、及び使用する具体的方法に依存して変化する。好適な濃度範囲の例としては、約1ppm〜約200ppm、約1ppm〜約150ppm、約1ppm〜約100ppmが挙げられる。他の好適な濃度範囲としては、約10ppm〜約200ppm、約10ppm〜約175ppm、約10ppm〜約125ppm、及び約10ppm〜約100ppmが挙げられる。他の好適な濃度範囲としては、約25ppm〜約200ppm、約25ppm〜約175ppm、約25ppm〜約125ppm、及び約25ppm〜約100ppmが挙げられる。他の好適な濃度範囲としては、約50ppm〜約200ppm、約50ppm〜約175ppm、約50ppm〜約150ppm、約50ppm〜約125ppm、及び約50ppm〜約100ppmが挙げられる。
【0039】
安定化された環状アルケン組成物として、式(I)を有する単独のフェノール性添加剤、又は2種又はそれ以上のフェノール性添加剤の混合物を挙げることができる。2種又はそれ以上のフェノール性添加剤の混合物は、互いにいかなる割合で存在しても良い。
【0040】
環状アルケンは、市場で入手可能か、又は当業者に公知の合成技術により得ることができる。市販の物質において、環状アルケンを製造している化学品製造業者は、しばしば、彼らの製品を比較的高濃度のBHTを用いて安定化している。大半の製造業者は、高純度の製品を作ることに慣れていないので、彼らの製品取り扱い技術は比較的貧弱であり、空気、湿気及び他の汚染物質が、充填前、充填の間、又は充填後に容器に入る可能性があり得る。これらの汚染物質は、容器内に一旦閉じ込めると、この製品をもしも或る期間にわたって貯蔵すると、これをかなり劣化させ得る。半導体製造の目的のためには、市販の物質は、すべての副生成物、添加剤を除去するため、通常蒸留又は昇華により精製しなければならない。
【0041】
精製、貯蔵及び出荷の間に、純度及び安定性を維持するためには、本発明の環状アルケン及び組成物は、厳密に制御された条件下で取り扱わなければならない。これらには、製品が受け器に入ると直ちに安定化されるように、蒸留前に製品受け器への安定剤の添加、乾燥及び不活性雰囲気下での蒸留の実施、使用前の容器の厳密な清掃及び乾燥、製品を空気暴露させないための閉鎖系充填技術の使用、ダスト及び重合触媒として機能する可能性のある微量金属汚染物を避けるためのクリーンルーム内での充填、及び空気又は他の非相溶性物質への暴露を防ぐための賢明な容器の選択が含まれる。
【0042】
半導体工業用の多くの化学品前駆体及び前駆体組成物は、製品の品質を保持する時間を最大にするために、一般的にはステンレス容器中に包装され、出荷され、そして貯蔵される。次いで、製品の容器は化学品配送装置に連結され、この装置は、製品及びプロセスの純度、粘ちゅう度を保持するために精密に制御された手段で、本明細書で膜蒸着装置と呼ばれる加工装置に化学品を移送する。
【0043】
本発明の組成物は、環状アルケンを必要とするいかなる好適な化学蒸着方法においても使用することができる。好ましい方法は、低誘電率膜を蒸着させるため、ケイ素含有化合物を採用する化学蒸着法である。好適な方法の例としては、米国特許第6815373号、同第6596627号、同第6756323号、同第6541398号、同第6479110号、同第6846515号、及び同第6583048号(これらは参照することにより本明細書に取り入れられている)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
本発明は、又、炭素をドープした酸化ケイ素層をウエハー上に形成するための、環状アルケン組成物を用いる方法に関する。この方法は以下の工程:
a)容器中の環状アルケン組成物、容器中のケイ素含有化合物、膜蒸着装置、該膜蒸着装置内の膜蒸着室、容器と該膜蒸着装置内の膜蒸着室を連結する手段、環状アルケン組成物及びケイ素含有化合物を、連結手段を通じて膜蒸着室へ吹き流すキャリアガスの流れ、及び膜蒸着装置の膜蒸着室内の基板を用意し;
b)環状アルケン組成物及びケイ素含有化合物の蒸気を、キャリアガス流へ導入し;
c)環状アルケン組成物及びケイ素含有化合物の蒸気を、膜蒸着室へ輸送し;そして
d)1つ又はそれ以上のエネルギー手段を用いて、炭素をドープした酸化ケイ素膜を基板上に形成すること;
を含み、ここで、該環状アルケン組成物は、
1)1つ又はそれ以上の、置換された又は置換されていない環状アルケン;及び
2)少なくとも1つの式(I)の化合物を含む酸化防止剤組成物であって、ここで、酸化防止剤組成物は1ppm〜200ppmの濃度で存在し、そして、ここで、R1からR5は、各々独立に、H、OH、(C1−C8)の直鎖状、分枝鎖状若しくは環状アルキル、(C1−C8)の直鎖状、分枝鎖状若しくは環状アルコキシ、又は置換若しくは置換されていないアリールであることができ、但し、酸化防止剤組成物の成分は265℃未満の沸点を有する組成物;
を含むものである。
【0045】
本発明のための好適な環状アルケンは、前記したものと同じである(上記を参照)。
【0046】
本発明のための好適なケイ素含有化合物としては、シラン、アルキルシラン、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、カルボキシシラン、アルキルカルボキシシラン、アルコキシカルボキシシラン、アルキルアルコキシカルボキシシラン、直鎖状シロキサン、環状シロキサン、フッ素化シラン、フッ素化アルキルシラン、フッ素化アルコキシシラン、フッ素化アルキルアルコキシシラン、フッ素化カルボキシシラン、フッ素化アルキルカルボキシシラン、フッ素化アルコキシカルボキシシラン、フッ素化アルキルアルコキシカルボキシシラン、フッ素化直鎖状シロキサン、フッ素化環状シロキサン及びそれらの混合物などのケイ素含有分子のいずれの類も含まれる。上記に記載の各部類の例としては、スキーム1に示されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化3】

【0047】
本発明のケイ素含有化合物の好適な例は、式(II):
【化4】

によって記載されるものである。式(II)において、R6からR9は、各々独立に、H、F、OH、(C1−C8)の直鎖状、分枝鎖状、又は不飽和のアルキル、(C1−C8)の直鎖状、分枝鎖状、又は不飽和のアルコキシ、置換若しくは置換されていない環状アルキル又は環状アルコキシ、置換若しくは置換されていないアリール又はアリールアルコキシ、置換基含有置換ケイ素、部分的に又は完全にフッ素化された(C1−C8)の直鎖状、分枝鎖状、又は不飽和のアルキル、部分的に又は完全にフッ素化された(C1−C8)の直鎖状、分枝鎖状、又は不飽和のアルコキシ、部分的に又は完全にフッ素化された、置換若しくは置換されていない環状アルキル又は環状アルコキシ、部分的に又は完全にフッ素化された、置換若しくは置換されていないアリール又はアリールアルコキシ、部分的に又は完全にフッ素化された置換基を有する置換ケイ素、非フッ素化又は部分的に若しくは完全にフッ素化された、カルボキシレート・リガンド、又はそれらの混合物である。式(II)において、R6からR9の例としては、H、F、OH、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソプロペニル、ブチル、フェニル、メチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、フェノキシ、メチルフェノキシ、シクロヘキシルオキシ、メチルシクロヘキシルオキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、ペンタフルオロエチル、トリフルオロプロピル、ペンタフルオロプロピル、ヘプタフルオロプロピル、イソプロピル、ヘキサフルオロイソプロピル、トリフルオロイソプロペニル、トリフルオロブチル、ペンタフルオロブチル、ノナフルオロブチル、トリフルオロフェニル、(トリフルオロメチル)テトラフルオロフェニル、ウンデカフルオロシクロヘキシル、(トリフルオロメチル)デカフルオロシクロヘキシル、トリフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシ、ペンタフルオロエトキシ、トリフルオロプロポキシ、ペンタフルオロプロポキシ、ヘプタフルオロプロポキシ、ヘキサフルオロイソプロポキシ、ヘプタフルオロイソプロポキシ、トリフルオロブトキシ、ペンタフルオロブトキシ、ノナフルオロブトキシ、ペンタフルオロフェノキシ、(トリフルオロメチル)テトラフルオロフェノキシ、ウンデカフルオロシクロヘキシルオキシ、(トリフルオロメチル)デカフルオロシクロヘキシルオキシ、ジメチルシロキシ(直鎖状シロキサンの場合)、トリメチルシロキシ、トリメチルジシロキシ、ペンタメチルジシロキシ、ジエチルシロキシ、トリエチルシロキシ、トリエチルジシロキシ、ペンタエチルジシロキシ、ジメトキシシロキシ、トリメトキシシロキシ、トリメトキシジシロキシ、ペンタメトキシジシロキシ、ジエトキシシロキシ、トリエトキシシロキシ、トリエトキシジシロキシ、ペンタエトキシジシロキシ、η2−トリメチルトリシロキシ(テトラメチルシクロテトラシロキサンなどの環状シロキサンの場合)、及び、η2−ヘキサメチルトリシロキシ(オクタメチルシクロテトラシロキサンなどの環状シロキサンの場合)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましいR6からR9の例としては、H、F、メチル、メトキシ、エチル、エトキシ及びシロキシが挙げられる。式(II)に対しては、半導体用途における使用のためのR6からR9として、H、メチル、エトキシ及び置換シロキシが最も好ましい。
【0048】
本発明のために好適なケイ素含有化合物の例としては、シラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、テトラメチルシラン、エチルシラン、ジエチルシラン、トリエチルシラン、テトラエチルシラン、プロピルシラン、ジプロピルシラン、トリプロピルシラン、テトラプロピルシラン、イソプロピルシラン、ジイソプロピルシラン、トリイソプロピルシラン、テトライソプロピルシラン、ブチルシラン、ジブチルシラン、トリブチルシラン、テトラブチルシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルプロポキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、トリメチルイソプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、メチルジイソプロポキシシラン、メチルフェニルシラン、メチルジフェニルシラン、メチルトリフェニルシラン、ジメチルジフェニルシラン、トリメチルフェニルシラン、メチル(メチルフェニル)シラン、メチルジ(メチルフェニル)シラン、メチルトリ(メチルフェニル)シラン、メチルフェノキシシラン、メチルジフェノキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、メチル(メチルフェノキシ)シラン、メチルジ(メチルフェノキシ)シラン、ジメチルジ(メチルフェノキシ)シラン、メチル(シクロヘキシル)シラン、メチルジ(シクロヘキシル)シラン、メチルトリ(シクロヘキシル)シラン、ジメチルジ(シクロヘキシル)シラン、トリメチル(シクロヘキシル)シラン、メチル(メチルシクロヘキシル)シラン、メチルジ(メチルシクロヘキシル)シラン、メチルトリ(メチルシクロヘキシル)シラン、ジメチルジ(メチルシクロヘキシル)シラン、トリメチル(メチルシクロヘキシル)シラン、メチル(シクロヘキシルオキシ)シラン、メチルジ(シクロヘキシルオキシ)シラン、メチルトリ(シクロヘキシルオキシ)シラン、ジメチルジ(シクロヘキシルオキシ)シラン、メチル(メチルシクロヘキシルオキシ)シラン、メチルジ(メチルシクロヘキシルオキシ)シラン、メチルトリ(メチルシクロヘキシルオキシ)シラン、ジメチルジ(メチルシクロヘキシルオキシ)シラン、四フッ化ケイ素、フルオロトリメチルシラン、メチルトリス(トリフルオロメトキシ)シラン、トリフルオロメチルトリス(トリフルオロメトキシ)シラン、フルオロトリエトキシシラン、トリアセトキシシラン、メトキシトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、トリメチルシリル(トリメチルシリル)プロピノエート、トリメチルシリル(トリメチルシロキシ)アセテート、トリメチルシリルトリフルオロアセテート、トリス(トリフルオロメチルシリル)トリフルオロアセテート、トリエチルアセトキシシラン、トリ(トリフルオロアセトキシ)シラン、メチルトリ(トリフルオロアセトキシ)シラン、メトキシトリ(トリフルオロアセトキシ)シラン、テトラ(トリフルオロアセトキシ)シラン、テトラアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、フェニルジメチルアセトキシシラン、フェニルジメトキシアセトキシシラン、フェニルアセトキシトリメチルシラン、1,1,1,3,3−ペンタメチル−3−アセトキシジシロキサン、メチルトリアセトキシシランエチルトリアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メタクリロイルオキシトリメチルシラン、エチルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジ−t−ブトキシジアセトキシシラン、ジベンジルオキシジアセトキシシラン、ビス(トリメチルシリル)マロネート、ビス(トリメチルシリル)アセチレンジカルボキシレート、アクリルオキシトリメチルシラン、アセトキシトリメチルシラン、アセトキシメチルジメチルアセトキシシラン、トリエチル(トリフルオロアセトキシ)シラン、フェニルトリ(トリフルオロアセトキシ)シラン、フェニルジ(トリフルオロメチル)アセトキシシラン、(ペンタフルオロフェニル)ジメチルアセトキシシラン、フェニルジメチル(トリフルオロアセトキシ)シラン、フェニル(トリフルオロアセトキシ)トリメチルシラン、(トリフルオロフェニル)アセトキシトリメチルシラン、フェニルアセトキシトリ(トリフルオロメチル)シラン、1,1,1,3,3−ペンタ(トリフルオロメチル)−3−アセトキシジシロキサン、(トリフルオロメチル)トリアセトキシシランエチルトリアセトキシシラン、(トリフルオロメチル)トリアセトキシシラン、(トリフルオロメチル)(トリフルオロメトキシ)ジアセトキシシラン、メタクリロキシトリ(トリフルオロメチル)シラン、(トリフルオロエチル)トリアセトキシシラン、ジ(トリフルオロメチル)ジアセトキシシラン、ジ−(ノナフルオロ−t−ブトキシ)ジアセトキシシラン、ジベンジルオキシジ(トリフルオロアセトキシ)シラン、アクリルオキシトリ(トリフルオロメチル)シラン、アセトキシトリ(トリフルオロメチル)シラン、アセトキシ(トリフルオロメチル)ジメチルアセトキシシラン、(トリフルオロメチル)シラン、ジ(トリフルオロメチル)シラン、トリ(トリフルオロメチル)シラン、テトラ(トリフルオロメチル)シラン、(トリフルオロエチル)シラン、ジ(トリフルオロエチル)シラン、トリ(トリフルオロエチル)シラン、テトラ(トリフルオロエチル)シラン、(トリフルオロプロピル)シラン、ジ(トリフルオロプロピル)シラン、トリ(トリフルオロプロピル)シラン、テトラ(トリフルオロプロピル)シラン、(ヘキサフルオロイソプロピル)シラン、ジ(ヘキサフルオロイソプロピル)シラン、トリ(ヘキサフルオロイソプロピル)シラン、テトラ(ヘキサフルオロイソプロピル)シラン、(トリフルオロブチル)シラン、ジ(トリフルオロブチル)シラン、トリ(トリフルオロブチル)シラン、テトラ(トリフルオロブチル)シラン、(トリフルオロメチル)トリメトキシシラン、ジ(トリフルオロメチル)ジメトキシシラン、トリ(トリフルオロメチル)メトキシシラン、テトラ(トリフルオロメトキシ)シラン、(トリフルオロメチル)メトキシシラン、(トリフルオロメチル)ジメトキシシラン、(トリフルオロメチル)トリエトキシシラン、ジ(トリフルオロメチル)ジエトキシシラン、トリ(トリフルオロメチル)メトキシシラン、テトラ(トリフルオロエトキシ)シラン、(トリフルオロメチル)エトキシシラン、(トリフルオロメチル)ジエトキシシラン、(トリフルオロメチル)プロポキシシラン、ジ(トリフルオロメチル)ジプロポキシシラン、トリ(トリフルオロメチル)プロポキシシラン、テトラ(トリフルオロプロポキシ)シラン、(トリフルオロメチル)トリイソプロポキシシラン、ジ(トリフルオロメチル)ジイソプロポキシシラン、トリ(トリフルオロメチル)イソプロポキシシラン、テトラ(トリフルオロイソプロポキシ)シラン、(トリフルオロメチル)ジイソプロポキシシラン、(トリフルオロメチル)フェニルシラン、(トリフルオロメチル)ジフェニルシラン、(トリフルオロメチル)トリフェニルシラン、ジ(トリフルオロメチル)ジフェニルシラン、トリ(トリフルオロメチル)フェニルシラン、(トリフルオロメチル)(メチルフェニル)シラン、(トリフルオロメチル)ジ(メチルフェニル)シラン、(トリフルオロメチル)トリ(メチルフェニル)シラン、(トリフルオロメチル)フェノキシシラン、(トリフルオロメチル)ジフェノキシシラン、ジ(トリフルオロメチル)ジフェノキシシラン、(トリフルオロメチル)(メチルフェノキシ)シラン、(トリフルオロメチル)ジ(メチルフェノキシ)シラン、ジ(トリフルオロメチル)ジ(メチルフェノキシ)シラン、(トリフルオロメチル)(シクロヘキシル)シラン、(トリフルオロメチル)ジ(シクロヘキシル)シラン、(トリフルオロメチル)トリ(シクロヘキシル)シラン、ジ(トリフルオロメチル)ジ(シクロヘキシル)シラン、トリ(トリフルオロメチル)(シクロヘキシル)シラン、(トリフルオロメチル)(メチルシクロヘキシル)シラン、(トリフルオロメチル)ジ(メチルシクロヘキシル)シラン、(トリフルオロメチル)トリ(メチルシクロヘキシル)シラン、ジ(トリフルオロメチル)ジ(メチルシクロヘキシル)シラン、トリ(トリフルオロメチル)(メチルシクロヘキシル)シラン、(トリフルオロメチル)(シクロヘキシルオキシ)シラン、(トリフルオロメチル)ジ(シクロヘキシルオキシ)シラン、(トリフルオロメチル)トリ(シクロヘキシルオキシ)シラン、ジ(トリフルオロメチル)ジ(シクロヘキシルオキシ)シラン、(トリフルオロメチル)(メチルシクロヘキシルオキシ)シラン、(トリフルオロメチル)ジ(メチルシクロヘキシルオキシ)シラン、(トリフルオロメチル)トリ(メチルシクロヘキシルオキシ)シラン、ジ(トリフルオロメチル)ジ(メチルシクロヘキシルオキシ)シラン、トリ(トリフルオロメトキシ)シラン、メチルトリ(トリフルオロメトキシ)シラン、ジメチルジ(トリフルオロメトキシ)シラン、トリメチル(トリフルオロメトキシ)シラン、メチル(トリフルオロメトキシ)シラン、メチルジ(トリフルオロメトキシ)シラン、メチルトリ(トリフルオロエトキシ)シラン、ジメチルジ(トリフルオロエトキシ)シラン、トリメチルトリ(トリフルオロメトキシ)シラン、メチル(トリフルオロエトキシ)シラン、メチルジ(トリフルオロエトキシ)シラン、メチル(トリフルオロプロポキシ)シラン、ジメチルジ(トリフルオロプロポキシ)シラン、トリメチル(トリフルオロプロポキシ)シラン、メチルトリ(ヘキサフルオロイソプロポキシ)シラン、ジメチルジ(ヘキサフルオロイソプロポキシ)シラン、トリメチル(ヘキサフルオロイソプロポキシ)シラン、メチルジ(ヘキサフルオロイソプロポキシ)シラン、メチル(ペンタフルオロフェニル)シラン、メチルジ(ペンタフルオロフェニル)シラン、メチルトリ(ペンタフルオロフェニル)シラン、ジメチル(ペンタフルオロフェニル)シラン、トリメチル(ペンタフルオロフェニル)シラン、メチル[(トリフルオロメチル)フェニル]シラン、メチルジ[(トリフルオロメチル)フェニル]シラン、メチルトリ[(トリフルオロメチル)フェニル]シラン、メチル(ペンタフルオロフェノキシ)シラン、メチルジ(ペンタフルオロフェノキシ)シラン、ジメチルジ(ペンタフルオロフェノキシ)シラン、メチル[(トリフルオロメチル)フェノキシ]シラン、メチルジ[(トリフルオロメチル)フェノキシ]シラン、ジメチルジ[(トリフルオロメチル)フェノキシ]シラン、メチル(ウンデカフルオロシクロヘキシル)シラン、メチルジ(ウンデカフルオロシクロヘキシル)シラン、メチルトリ(ウンデカフルオロシクロヘキシル)シラン、ジメチルジ(ウンデカフルオロシクロヘキシル)シラン、トリメチル(ウンデカフルオロシクロヘキシル)シラン、メチル[(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]シラン、メチルジ[(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]シラン、メチルトリ[(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]シラン、ジメチルジ[(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]シラン、トリメチル[(トリフルオロメチル)シクロヘキシル]シラン、メチル(ウンデカフルオロシクロヘキシルオキシ)シラン、メチルジ(ウンデカフルオロシクロヘキシルオキシ)シラン、メチルトリ(ウンデカフルオロシクロヘキシルオキシ)シラン、ジメチルジ(ウンデカフルオロシクロヘキシルオキシ)シラン、メチル[(トリフルオロメチル)シクロヘキシルオキシ]シラン、メチルジ[(トリフルオロメチル)シクロヘキシルオキシ]シラン、メチルトリ[(トリフルオロメチル)シクロヘキシルオキシ]シラン、ジメチルジ[(トリフルオロメチル)シクロヘキシルオキシ]シラン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタ(トリフル

オロメチル)トリシロキサン、トリメチルトリシロキサン、ジエチルトリメチルトリシロキサン、トリメチルシクロトリシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、テトラエチルシクロテトラシロキサン、ペンタエチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、トリメチルシリルアセチレン、ジ(トリメチルシリル)アセチレン、ヘキサ(トリフルオロメチル)ジシロキサン、オクタ(トリフルオロメチル)トリシロキサン、トリス(トリフルオロメチル)トリシロキサン、トリス(トリフルオロメチル)シクロトリシロキサン、テトラ(トリフルオロメチル)シクロテトラシロキサン、オクタ(トリフルオロメチル)シクロテトラシロキサン、及びその混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
式(II)におけるケイ素含有化合物の好ましい例としては、トリメチルシクロトリシロキサン、トリエチルシクロトリシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、テトラエチルシクロテトラシロキサン、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、ペンタエチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、トリメチルシリルアセチレン、ビス(トリメチルシリル)アセチレン、メチルジメトキシシラン及びメチルジエトキシシランが挙げられる。テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン及びトリメチルシリルアセチレンが、半導体工業における用途として最も好ましい。
【0050】
少なくとも2つの前駆体を必要とする典型的な化学蒸着法において、成分を組み合わせる方法はいくつかある。図1及び図2を参照することにより、その様な方法が示される。1つの前駆体(例えば、環状アルケン)は、容器(1)から、化学品配送ライン(2)を通して、膜蒸着装置(11)内の蒸発手段(3)に輸送される。この前駆体は、容器(1)から、配送ライン(2)を通して、蒸発手段(3)へ種々の手法(不活性ガスによる容器の加圧化、機械ポンプ装置の使用、重力供給方式、又はそれらの組み合わせなどを含むが、それらに限定されない)を用いて輸送することが可能である。第二の前駆体(例えば、ケイ素含有化合物)は、別の容器(12)から、化学品配送ライン(13)を通して、膜蒸着装置(11)に内蔵された蒸発手段(14)に輸送される。この第二の前駆体は、容器(12)から配送ライン(13)を通して、蒸発手段(14)へ、種々の手法(不活性ガスによる容器の加圧、機械的ポンプ装置の使用、重力供給、又はそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない)を用いて輸送することができる。
【0051】
第二の前駆体(例えば、ケイ素含有化合物)が、室温で気体であるか、又は化学蒸気プロセスライン(chemical vapor process line)(5)へ導入する際、蒸発させるのに実質的に殆んど又は全くエネルギーを必要としない場合は、第二の蒸発手段(14)は、バルブ、逆止弁、邪魔板、拡散装置、又は蒸発手段なしで管若しくは室へ気体を注入することのできる同様の装置で代替してもよい。
【0052】
化学蒸気プロセスライン(5)に接続された少なくとも1つの蒸発手段(3)を有することが望ましいが、少なくとも1つの蒸発手段(3)を直接蒸着室(4)へ連結することも、又、可能であり、場合により1つ又はそれ以上の追加の蒸発手段(14)を化学蒸気プロセスライン(5)へ連結し、又は直接蒸着室(4)へ連結することも可能であることに留意することは重要である。更に、気体配送ライン(8)は、場合により直接蒸着室(4)へ連結することもできる。蒸発手段(3、14)、又は気体配送ライン(8)が化学蒸気プロセスライン(5)に連結されていない場合は、この化学蒸気プロセスラインは、場合により蒸着室(4)に結合される機構になる。
【0053】
理想的には、各前駆体に対して別々の化学品配送ライン及び蒸発手段が使われるべきであるが、しかし、2つの前駆体が化学的に適合性がある場合は、2つの前駆体を、単一の蒸発手段を用いて蒸発させることが可能である。単一の蒸発手段(3)を用いる場合、両者の前駆体を組み合わせるか、又は、化学品配送ライン(15)の一部から蒸発手段(3)へ別々に供給される。2つの前駆体が、図2で示す様に、蒸発の前に組み合わされる場合、方法は、単に、化学品配送ライン(15)における組み合わせと、その後の、蒸発手段(3)における2つの前駆体の蒸発を包含する。2つの前駆体が、単一の蒸発手段(3)を通して別々に供給される場合、各々の前駆体の供給順序は、単に、1つの前駆体の化学品配送ライン(15)を通じた蒸発手段(3)への流れと、それに続く、第二の前駆体の化学品配送ライン(15)を通じた蒸発手段(3)への流れを包含し、繰り返すことはしない。或いは又、第一の前駆体を流し、第二の前駆体を流し、そして所望の層が形成されるまでこれらの工程を繰り返すことが必要とされることがあり得る。用いる方法は、完全に所望する膜の性質に依存する。第一の蒸発手段(3)のみ用いる場合、第二の蒸発手段(14)は必要ではない。
【0054】
2つの異なった前駆体を別々の化学品ライン及び蒸発手段を通して流す方法において、各々の前駆体に対する好適な流速は、約0.01mL/分〜約10mL/分の範囲内である。蒸発手段(3、14)は、液体の前駆体を蒸気又は霧に転換する手段として働き、この課題を達成するためには、熱、高圧気体、又はその他の手段など、様々な手法を使用することができる。或いは又、蒸発手段(3、14)は、一定の体積の液体を保持する容器より構成し、その容器を通して不活性ガスを、(a)前駆体を液体から蒸気に転換させ、そして、(b)前駆体蒸気を化学蒸気プロセスライン(5)へ輸送するための手段として流される。蒸発手段(3、14)の設計に拘わらず、前駆体の液体から気体状態への転換は、蒸発手段(3、14)又は化学蒸気プロセスライン(5)において起こり得る。前駆体は、蒸気又は霧の状態で、化学蒸気プロセスライン(5)へ注入されるが、それは、通常約30℃〜約120℃の間に加熱され、ライン(5)の内部で前駆体蒸気が凝縮するのを防いでいる。前駆体成分の混合は、蒸発手段(3、14)が互いにどの場所に位置しているかの如何によって、化学蒸気プロセスライン内で、又は蒸着室(4)内の異なった場所で起こり得る。化学蒸気プロセスライン(5)は、膜蒸着装置(11)内の蒸着室(4)に連結され、そして基板(6)は、蒸着室(4)に収容される。蒸着室(4)及び化学蒸気プロセスライン(5)は、常圧(即ち、760torr)で操作されるが、しかし、約0.01torrから約700torrの大気圧より低い圧力下で操作し、前駆体の蒸発を促進し、前駆体を気相に維持するのを助けることも、又、一般的である。
【0055】
化学蒸気プロセスライン(5)及び蒸着室(4)の間の連結は、プロセスに対する要求に依存して、蒸着装置毎に変わり得ることは、当業者には理解されるべきである。例えば、設計には、混合、加熱、冷却、又はシステム内における気体の分布に影響を与える様々な装置を含めることができる。これらには、気体を混合するための邪魔板、気体を加熱するための加熱ゾーン、気体を冷却するための冷却ゾーン、圧力の平衡を得るための室、又は気体をウエハーの表面に分布させるためのシャワーノズルが含まれ得る。設計には、例えば、化学蒸気プロセスライン(5)から、邪魔板付きの混合装置を通して、加熱ゾーンを通して、そしてシャワーノズルを通して、気体が蒸着室(4)内の基板(6)へ流れるように、化学品蒸気を送ることも含まれ得る。市場において利用できる設計の複雑さ、及びプロセスに起因する必要性に基づく多様性の故に、選択肢は本明細書においては一般的用語でのみ記述される。
【0056】
我々の一般的な例において、前駆体蒸気は、化学蒸気プロセスライン(5)を通して、蒸発手段(3、14)を流れる気体流により、蒸着室(4)内の基板(6)へ輸送される。気体の流れは、供給タンク(7)から供給され、そして、気体配送ライン(8)を通して化学蒸気プロセスライン(5)へ流れる。気体の流れは、流速約5sccm〜10,000sccmの範囲であり、前駆体の蒸発を促進し、前駆体を気相に維持するのを助けるため、しばしば加熱される。使用される気体は、前駆体蒸気を基板へ輸送する手段としてのみ選択される、窒素、ヘリウム、又はアルゴンなどの不活性ガスでも良く、又は酸素、オゾン、アンモニア、亜酸化窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、SiH4、シラン、四フッ化ケイ素、ヒドラジンなどの蒸着方法を促進するための反応性気体であっても良い。
【0057】
前駆体蒸気を基板(6)へ輸送する場合に、それらを、輸送ガスに加えて、1つ又はそれ以上の反応物質と混合して、基板上への蒸着を促進することができる。反応物質は上記で述べた反応性気体であっても良く、又はアミン、アミノアルコール、アルカン、アルケン、アルキン、アルコール、エステル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸などの他の化学品前駆体であっても良い。反応物質は、基板上への前駆体の蒸着を促進するために、そして、基板上に蒸着した層の化学的同一性及び性質を改良するために注意深く選択される。これらの反応物質は、所望する効果に依存して、様々な手段を用いて、そしてプロセスにおける様々な位置で、膜蒸着装置(11)内へ導入しうる。膜蒸着装置(11)内へ気体状態で反応物質を導入することは最も便利である。それ故、液体の反応物質を用いる場合は、追加の蒸発手段が必要となるであろう。追加の蒸発手段、又は反応物質を導入するために使用される気体配送ラインは、気体配送ライン(8)が化学蒸気プロセスライン(5)と合流する点の近くに、蒸発手段の上流又は下流に、プラズマ(9)に直接又はその近くに、及び/又は、膜蒸着装置(11)の膜蒸着室(4)の側面、頂部又は底部のどこかに設置することができる。
【0058】
前駆体蒸気、潜在的な反応物質及び不活性又は活性ガスは、又、熱又はプラズマ(9)の様な蒸着を促進するために用いられる他の条件に曝されてもよい。前駆体蒸気は、基板上への前駆体蒸着を促進するために、基板と接触する前に約50℃〜約800℃で予備加熱しても良い。プラズマも、又、前駆体蒸気へエネルギーを加え、そして蒸着を促進するために使用することができる。更に、プラズマは、蒸着膜の性質を変化させるため、オン・オフさせてパルス化(脈動)させても良い。プラズマ電力と、パルス継続時間は、基板上への前駆体蒸着を促進するために、そして、基板上に蒸着した層の化学的同一性と性質を改良するために、注意深く選択される。プラズマは、又、ある範囲の周波数に亘って適用され、その場合、高及び低周波数プラズマ用電力は約0〜数キロワットの範囲でよい。基板は、又、基板への物質の輸送を促進するために、約0〜約400VDCのバイアスを有してよい。基板は、前駆体を基板上で熱分解を起こさせるため、又は、基板上への前駆体蒸着を促進するために、約25℃〜約500℃に加熱されうる。未反応の物質は、排気ライン(10)を通して排気される。
【0059】
膜の元素組成、従って、膜の性質は、使用する出発物質のケイ素含有化合物及び環状アルケンの選択、並びにその方法における様々な反応性気体の使用又は不使用により調節可能である。
【0060】
膜蒸着に続いて、初期の膜は、キュアリング工程を受けることができる。キュアリング工程は、又、例えば、膜の密度又は元素組成を修正して、膜強度、誘電率及びその他の種々の膜性質を変えることができる。これらのキュアリング工程は、ホットプレート、オーブン、赤外ランプ、又はマイクロウェーブなどの種々の加熱手段の1つを応用した加熱処理を含むことができる。或いは又、キュアリングは、プラズマ処理、又は膜の化学処理を含むことができる。これらのキュアリング工程は、初期膜の所望の化学変化の如何に応じて、不活性雰囲気下(例えば、希ガス)で、還元性雰囲気下(例えば、水素又は炭化水素)で、又は酸化性雰囲気下(例えば、酸素、空気、亜酸化窒素、二酸化炭素)で行い得る。その様な方法は、技術的に記載されており、当業者に公知である。
【実施例】
【0061】
一連のテストが、様々な条件下での純粋なNBDEの分解を添加剤で安定化されたNBDEと比較するために考案された。これらのテストにおいて、ガラスアンプルは、約50mLの安定化された又は安定化されていないNBDEで満たし、約15mLのヘッドスペースを残した。試料は、実験前に偶発的な気体への暴露を避けるために、窒素パージしたグローブボックス内で調製した。次いで、各々の容器のヘッドスペースは、常圧で容器を密閉する前に、一回につき5秒間づつ、室空気で3回パージした。
【0062】
試料の加速分解条件をシミュレートするため、60〜80℃の温度に24時間暴露した。実験が完了した後、各々のアンプルの揮発分を減圧下、室温で除去し、非揮発性分解生成物が後に残った。分解又は残留物生成の程度は、実験の後の容器の質量を、実験の前の容器の質量と比較することにより定量した。2つの質量の差異が、この条件下で試料に生じた分解物の量である。添加剤の質量を差し引いて、生じた分解物のみを示す結果が得られ、そして、この最終質量を20倍して、試料1L中に見出されるであろう固体量が得られる。
【0063】
〔実施例1〜5〕及び〔比較例1〜7〕
表1にまとめた結果は、純粋NBDEについての結果を示し、空気中で24時間暴露した場合、有意の分解量が観察された。
【表1】

【0064】
安定化された試料を空気に暴露した場合、全てのケースにおいて、安定化されていない試料と比較してより少ない分解量が観察された。BHT及びMHQで安定化されたNBDEの比較では、80℃で、全ての安定剤濃度に対して、MHQは、予想外に残留物の生成が少なく、それ故、BHTより良好な性能を示した。これらの安定剤は1つの分解経路を阻害したものの、これらの濃度での安定剤の添加では完全に防ぐことの出来ない第二の分解経路も、又、80℃で活性であると信じられている。一方、BHTは60℃ではMHQより良好な結果を示した。温度依存性のある性能に拘わらず、MHQは、安定化されていないNBDEに比較して分解物の量を効果的に低減したことは明らかである。
【0065】
半導体工業で用いられている化学蒸着用途のための代表的な蒸発手段は、しばしば、蒸発の1つの手段として熱を用いるが、しかし、蒸発手段に化学物質が滞在する時間は、通常は1秒未満であることを指摘することは重要である。24時間加熱した上記のテストは、安定剤存在下での化学物質の限界を評価するために設定された。更に、テストは、使用に先立って、化学物質の出荷及び保存の間の遥かに長期間(例えば、1年)に亘って、起こるかもしれない分解を加速するために設定された。
【0066】
上記のデータは、安定剤の濃度がより高いほど好ましいことを示しているが、実際に必要とされる濃度は、化学物質の適切な安定化(この場合はより高濃度が好ましい)と、後に残る可能性がある、安定剤それ自身などのような潜在的な残留物の減少(この場合はより低濃度が好ましい)の間の微妙なバランスの問題である。この両者の最良のバランスは、25〜50ppmのMHQなどの安定剤を用いて、環状アルケンを安定化させることによって得られ、この場合、濃度は用いる安定剤のタイプに依存する。
【0067】
〔実施例6〕
50ppmのMHQで安定化された前駆体、NBDEを、ヘリウム圧の助力でステンレススチールの容器から、化学品配送ラインを経由して、加熱した蒸発装置へ、1mL/分の流速で輸送した。前駆体を蒸発して、80℃に加熱され化学蒸気プロセスラインへ送り、システム基礎圧を6torrに維持しながら、500sccmの二酸化炭素を輸送ガスとし用いて、基板へ輸送した。基板への輸送中、前駆体蒸気及び輸送ガスを、メチルジエトキシシラン(M−DEOS)の流れと、約60%M−DEOS及び40%NBDEの割合で混合した。この気体混合物を250Wのプラズマパワーに暴露した。基板バイアスを−15VDCにして、基板を150℃に加熱した。炭素ドープした酸化ケイ素膜を、これらの条件下で基板上に付着させた。
【0068】
〔実施例7〕
50ppmのMHQで安定化された前駆体、NBDEを、ヘリウム圧の助力で、ステンレススチールの容器から、化学品配送ラインを経由して、加熱した蒸発装置へ1mL/分の流速で輸送した。前駆体を蒸発して、80℃に加熱された化学蒸気プロセスラインへ送り、システム基礎圧を6torrに維持しながら、500sccmの二酸化炭素を輸送ガスとし用いて、基板へ輸送した。基板への輸送中、前駆体蒸気及び輸送ガスを、TMCTSの流れと、約60%TMCTS及び40%NBDEの割合で混合した。この気体混合物を250Wのプラズマパワーに暴露した。基板バイアスを−15VDCにして、基板を150℃に加熱した。炭素ドープした酸化ケイ素膜を、これらの条件下で基板上に付着させた。
【0069】
〔実施例8〕
この実施例は実施例6の方法を採用したが、炭素ドープ酸化ケイ素膜を、蒸着後キュアリング工程で処理した。この膜を425℃で、窒素雰囲気下、4時間アニールし、膜中に残留したNBDEポロゲンの殆ど全てを実質的に除去した。この処理は、より低い誘電率を有する若干薄い膜を与える。
【0070】
〔実施例9〕
この実施例は実施例7の方法を採用したが、炭素ドープした酸化ケイ素膜を、蒸着後キュアリング工程で処理した。この膜を425℃で、窒素雰囲気下、4時間アニールし、膜中に残留したNBDEポロゲンの殆ど全てを実質的に除去した。この処理は、より低い誘電率を有する若干薄い膜を与える。
【0071】
我々は、本発明による数例の実施態様を示し、説明したが、当業者に明白な多数の変更も同様に許容されることを、明らかに理解すべきである。それ故、我々は、提示し、説明した詳細事項に限定することを望むものではなく、全ての変更及び修正は添付の特許請求の範囲に入ることの意図を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】半導体工業で用いられている、本発明による組成物を用いた膜蒸着装置の表示図であり、ここで、2つの独立した蒸発手段は、2つの別々の前駆体と共に使用される。
【図2】半導体工業で用いられている、本発明による組成物を用いた膜蒸着装置の表示図であり、ここで、単一の蒸発手段は、2つの別々の前駆体と共に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又はそれ以上の環状アルケン;及び
少なくとも1つの、式(I):
【化1】

[式中、
1からR5は、各々独立に、H、OH、(C1−C8)の直鎖状、分枝鎖状若しくは環状アルキル、(C1−C8)の直鎖状、分枝鎖状若しくは環状アルコキシ、又は置換若しくは置換されていないアリールであることができる]の酸化防止化合物を含み、且つ、
該酸化防止化合物は、約1ppmから約200ppmの間の量で存在し、
該酸化防止化合物は、265℃未満の沸点を有する
安定化された環状アルケン組成物。
【請求項2】
酸化防止化合物が、フェノール、4−メチルフェノール、3−メチルフェノール、2−メチルフェノール、4−エチルフェノール、4−プロピルフェノール、4−イソ−プロピルフェノール、4−ブチルフェノール、4−sec−ブチルフェノール、4−イソ−ブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、4−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、2−メトキシフェノール、4−エトキシフェノール、2−(1−メチルブチル)フェノール、2−tert−ブチル−6−メチルフェノール及び1,2−ジヒドロキシベンゼンから成るグループから選択される少なくとも1つの化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
酸化防止化合物が4−メトキシフェノールである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
酸化防止化合物が約1ppmから約100ppmの間の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
酸化防止化合物が約100ppmから約200ppmの間の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
環状アルケンが、一般式Cn2n-2x-yy[ここで、nは4〜18の整数であり;xは整数であって、1≦x≦n/2であり;yは整数であって、0≦y≦2n−2xであり;そしてRは、(C1−C18)の直鎖状、分枝鎖状、不飽和若しくは環状アルキル、(C1−C18)の直鎖状、分枝鎖状、不飽和若しくは環状アルコキシ、置換若しくは置換されていないアリール、又は置換基を有する置換ケイ素から成るグループから選択される少なくとも1つの成分である]を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
環状アルケンが、一般式Cn2n-(2x+2)-yy[ここで、nは5〜18の整数であり;xは整数であって、x≦n/2であり;yは整数であって、0≦y≦2n−(2x+2)であり;そしてRは、(C1−C18)の直鎖状、分枝鎖状、不飽和若しくは環状アルキル、(C1−C18)の直鎖状、分枝鎖状、不飽和若しくは環状アルコキシ、置換若しくは置
換されていないアリール、又は置換基を有する置換ケイ素から成るグループから選択される少なくとも1つの成分である]を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
環状アルケンが、一般式Cn2n-(2x+4)-yy[ここで、nは7〜18の整数であり;xは整数であって、x≦n/2であり;yは整数であって、0≦y≦2n−(2x+4)であり;そしてRは、(C1−C18)の直鎖状、分枝鎖状、不飽和若しくは環状アルキル、(C1−C18)の直鎖状、分枝鎖状、不飽和若しくは環状アルコキシ、置換若しくは置換されていないアリール、又は置換基を有する置換ケイ素から成るグループから選択される少なくとも1つの成分である]を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
環状アルケンが、ジペンテン、フェランドレン、ジシクロペンタジエン、α−テルピネン、γ−テルピネン、リモネン、α−ピネン、3−カレン、テルピノレン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン及び5−エチリデン−2−ノルボルネンから成るグループから選択される少なくとも1つの化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
環状アルケンが、ジペンテン、フェランドレン、ジシクロペンタジエン、α−テルピネン、γ−テルピネン、リモネン、α−ピネン、3−カレン、テルピノレン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン及び5−エチリデン−2−ノルボルネンから成るグループから選択される少なくとも1つの化合物であり、そして酸化防止化合物が4−メトキシフェノールである、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも1つの、式(I):
【化2】

[式中、
1からR5は、各々独立に、H、OH、(C1−C8)の直鎖状、分枝鎖状若しくは環状アルキル、(C1−C8)の直鎖状、分枝鎖状若しくは環状アルコキシ、又は置換若しくは置換されていないアリールであることができる]
の酸化防止化合物を該環状アルケンに添加することを含み、
酸化防止化合物は、約1ppmから約200ppmの間の量で存在し、そして
該酸化防止化合物は、265℃未満の沸点を有する
環状アルケンを安定化させる方法。
【請求項12】
酸化防止化合物が、フェノール、4−メチルフェノール、3−メチルフェノール、2−メチルフェノール、4−エチルフェノール、4−プロピルフェノール、4−イソ−プロピルフェノール、4−ブチルフェノール、4−sec−ブチルフェノール、4−イソ−ブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、4−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、2−メトキシフェノール、4−エトキシフェノール、2−(1−メチルブチル)フェノール、2−tert−ブチル−6−メチルフェノール及び1,2−ジヒドロキシベンゼンから成るグループから選択される少なくとも1つの化合物である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
酸化防止化合物が4−メトキシフェノールである請求項12に記載の方法。
【請求項14】
環状アルケンが、一般式Cn2n-2x-yy[ここで、nは4〜18の整数であり;xは整数であって、1≦x≦n/2であり;yは整数であって、0≦y≦2n−2xであり;そしてRは、(C1−C18)の直鎖状、分枝鎖状、不飽和若しくは環状アルキル、(C1−C18)の直鎖状、分枝鎖状、不飽和若しくは環状アルコキシ、置換若しくは置換されていないアリール、又は置換基を有する置換ケイ素から成るグループから選択される少なくとも1つの成分である]を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
環状アルケンが、一般式Cn2n-(2x+2)-yy[ここで、nは5〜18の整数であり;xは整数であって、x≦n/2であり;yは整数であって、0≦y≦2n−(2x+2)であり;そしてRは、(C1−C18)の直鎖状、分枝鎖状、不飽和若しくは環状アルキル、(C1−C18)の直鎖状、分枝鎖状、不飽和若しくは環状アルコキシ、置換若しくは置換されていないアリール、又は置換基を有する置換ケイ素から成るグループから選択される少なくとも1つの成分である]を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
環状アルケンが、一般式Cn2n-(2x+4)-yy[ここで、nは7〜18の整数であり;xは整数であって、x≦n/2であり;yは整数であって、0≦y≦2n−(2x+4)であり;そしてRは、(C1−C18)の直鎖状、分枝鎖状、不飽和若しくは環状アルキル、(C1−C18)の直鎖状、分枝鎖状、不飽和若しくは環状アルコキシ、置換若しくは置換されていないアリール、又は置換基を有する置換ケイ素から成るグループから選択される少なくとも1つの成分である]を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
環状アルケンが、ジペンテン、フェランドレン、ジシクロペンタジエン、α−テルピネン、γ−テルピネン、リモネン、α−ピネン、3−カレン、テルピノレン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン及び5−エチリデン−2−ノルボルネンから成るグループから選択される少なくとも1つの化合物である請求項11記載の方法。
【請求項18】
環状アルケンが、ジペンテン、フェランドレン、ジシクロペンタジエン、α−テルピネン、γ−テルピネン、リモネン、α−ピネン、3−カレン、テルピノレン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン及び5−エチリデン−2−ノルボルネンから成るグループから選択される少なくとも1つの化合物であり、そして該酸化防止化合物が4−メトキシフェノールである、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
以下の工程:
環状アルケン組成物、ケイ素含有化合物及び基板を用意すること;及び
基板上に炭素をドープした酸化ケイ素の層を形成すること;
を含む、基板上に炭素をドープした酸化ケイ素の層を形成する方法であって、ここで、該環状アルケン組成物は、
1つ又はそれ以上の環状アルケン;及び
少なくとも1つの、式(I):
【化3】

[式中、
1からR5は、各々独立に、H、OH、(C1−C8)の直鎖状、分枝鎖状若しくは環状アルキル、(C1−C8)の直鎖状、分枝鎖状若しくは環状アルコキシ、又は置換若しくは置換されていないアリールである]の酸化防止化合物;
を含み、且つ、
該酸化防止化合物は、約1ppmから200ppmの間の濃度で存在し;そして、
該酸化防止化合物は、265℃未満の沸点を有する
上記方法。
【請求項20】
以下の工程:
第一の容器の環状アルケン組成物、第二の容器のケイ素含有化合物、膜蒸着装置、該膜蒸着装置内の膜蒸着室、及び、該環状アルケン組成物及び該ケイ素含有化合物を、連結手段を通じて膜蒸着室へ吹き流すキャリアガスの流れを用意し、ここで、該基板は、該膜蒸着装置の該膜蒸着室内に配置され;
該第一及び第二容器を該膜蒸着装置内の膜蒸着室に連結すること;
該環状アルケン組成物及び該ケイ素含有化合物の蒸気を、該キャリアガスの流れに導入すること;そして、
該環状アルケン組成物及び該ケイ素含有化合物の蒸気を、該被膜蒸着室へ輸送すること;
を更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
環状アルケンが、一般式Cn2n-2x-yy[ここで、nは4〜18の整数であり;xは整数であって、1≦x≦n/2であり;yは整数であって、0≦y≦2n−2xであり;そしてRは、(C1−C18)の直鎖状、分枝鎖状、不飽和若しくは環状アルキル、(C1−C18)の直鎖状、分枝鎖状、不飽和若しくは環状アルコキシ、置換若しくは置換されていないアリール、又は置換基を有する置換ケイ素から成るグループから選択される少なくとも1つの成分である]を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
環状アルケンが、一般式Cn2n-(2x+2)-yy[ここで、nは5〜18の整数であり;xは整数であって、x≦n/2であり;yは整数であって、0≦y≦2n−(2x+2)であり;そしてRは、(C1−C18)の直鎖状、分枝鎖状、不飽和若しくは環状アルキル、(C1−C18)の直鎖状、分枝鎖状、不飽和若しくは環状アルコキシ、置換若しくは置換されていないアリール、又は置換基を有する置換ケイ素から成るグループから選択される少なくとも1つの成分である]を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
環状アルケンが、一般式Cn2n-(2x+4)-yy[ここで、nは7〜18の整数であり;xは整数であって、x≦n/2であり;yは整数であって、0≦y≦2n−(2x+4)であり;そしてRは、(C1−C18)の直鎖状、分枝鎖状、不飽和若しくは環状アルキル、(C1−C18)の直鎖状、分枝鎖状、不飽和若しくは環状アルコキシ、置換若しくは置換されていないアリール、又は置換基を有する置換ケイ素から成るグループから選択される少なくとも1つの成分である]を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
環状アルケンが、ジペンテン、フェランドレン、ジシクロペンタジエン、α−テルピネン、γ−テルピネン、リモネン、α−ピネン、3−カレン、テルピノレン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン及び5−エチリデン−2−ノルボルネンから成るグループから選択される少なくとも1つの化合物である、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
酸化防止化合物が、フェノール、4−メチルフェノール、3−メチルフェノール、2−メチルフェノール、4−エチルフェノール、4−プロピルフェノール、4−イソ−プロピルフェノール、4−ブチルフェノール、4−sec−ブチルフェノール、4−イソ−ブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、4−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、2−メトキシフェノール、4−エトキシフェノール、2−(1−メチルブチル)フェノール、2−tert−ブチル−6−メチルフェノール、1,2−ジヒドロキシベンゼン、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、1,3−ジヒドロキシベンゼン、ヒドロキノン、2−(ベンジルオキシ)フェノール、3,4,5−トリメトキシフェノール、3−エトキシ−4−メチルフェノール、4−ベンジルオキシフェノール、4−ベンジル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−(2−ブテニル)フェノール、4−プロポキシフェノール、4−ブトキシフェノール、2−(4−メチルベンジル)フェノール、2,4,6−トリス−ベンジルオキシフェノール、2,4−ジシクロヘキシル−5−メチルフェノール及び6−tert−ブチル−1,2−ジヒドロキシベンゼンから成るグループから選択される少なくとも1つの化合物である、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
酸化防止化合物が、4−メトキシフェノールである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
環状アルケンが、ジペンテン、フェランドレン、ジシクロペンタジエン、α−テルピネン、γ−テルピネン、リモネン、α−ピネン、3−カレン、テルピノレン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン及び5−エチリデン−2−ノルボルネンから成るグループから選択される少なくとも1つの化合物であり、そして酸化防止化合物が4−メトキシフェノールである、請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−507837(P2009−507837A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530029(P2008−530029)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/035402
【国際公開番号】WO2007/033123
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(305037086)フジフィルム・エレクトロニック・マテリアルズ・ユーエスエイ・インコーポレイテッド (29)
【Fターム(参考)】