説明

生体情報検出装置、睡眠環境制御システムおよび生体情報検出方法

【課題】非接触型センサを用いながらも、耐ノイズ性に優れ、生体情報の検出精度が高い生体情報検出装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、被測定対象に接触せずに生体信号を電気信号として取得する非接触型センサ部10と、非接触型センサ部10が電気信号として取得した生体信号を周波数スペクトルに変換するスペクトル変換部14と、スペクトル変換部14により得られた周波数スペクトルの分散の大きさに応じて、通過周波数帯域の帯域幅を変更する可変帯域フィルタ部19と、可変帯域フィルタ部19を通過した周波数スペクトルに基づいて生体情報を検出する生体情報検出部20と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心拍数や呼吸数等の生体情報を検出する生体情報検出装置、当該生体情報検出装置を備える睡眠環境制御システムおよび生体情報検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心拍数や呼吸数等の生体情報を検出する方法として、人体にセンサ素子を接触させる接触型センサを用いる方法と人体にセンサ素子を接触させない非接触型センサを用いる方法の2種類がある。人体にセンサ素子を接触させる接触型センサを用いる場合には、例えば、特許文献1に記載の方法で、生体情報を検出することが可能である。人体にセンサ素子を接触させない非接触型センサを用いる場合は、例えば、特許文献2に記載の方法で、生体情報を検出することが可能である。
【特許文献1】特開平9−168521号公報
【特許文献2】特開平11−19056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、睡眠中の生体情報を検出する際に、接触型センサを使用すると、接触部の違和感により、睡眠に悪影響を及ぼす恐れがある。そのため、非接触型センサの使用が望まれている。
【0004】
しかし、非接触型センサを使用する場合、人体信号以外の振動、マットレスの摩擦等によるノイズの混入により、生体情報をうまく検出できずに、心拍数や呼吸数を誤検出してしまうことがある。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、非接触型センサを用いながらも、耐ノイズ性に優れ、生体情報の検出精度が高い生体情報検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の生体情報検出装置は、被測定対象に接触せずに生体信号を電気信号として取得する非接触型センサ部と、非接触型センサ部が電気信号として取得した生体信号を周波数スペクトルに変換するスペクトル変換部と、スペクトル変換部により得られた周波数スペクトルの分散の大きさに応じて、通過周波数帯域の帯域幅を変更する可変帯域フィルタ部と、可変帯域フィルタ部を通過した周波数スペクトルに基づいて生体情報を検出する生体情報検出部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の生体情報検出装置において、可変帯域フィルタ部に周波数スペクトルが入力される前に、非線形補間処理により、周波数スペクトルの低周波数域のスペクトルを強調する非線形補間処理部を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、上記請求項1に記載の生体情報検出装置において、被測定対象の在床と不在床を判別する在床状態検出部を備え、在床状態検出部は、被測定対象が在床の場合にのみスペクトル変換部と可変帯域フィルタ部と生体情報検出部とを動作させることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、上記請求項3に記載の生体情報検出装置において、被測定対象が不在床のときの周波数スペクトルを雑音スペクトルとし、被測定対象が在床のときの周波数スペクトルから雑音スペクトルを逓倍した周波数スペクトルを減算する雑音スペクトル除去部を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の生体情報検出装置において、周波数スペクトルのピークと分散の時間変化とにより、被測定対象の睡眠状態を推定する睡眠状態推定部を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、上記請求項5に記載の生体情報検出装置において、被測定対象に睡眠異常が発生した場合に、当該睡眠異常を検出する睡眠異常検出部を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明においては、上記請求項6に記載の生体情報検出装置において、睡眠異常検出部が睡眠異常を検出したときに、その結果を報知する睡眠異常報知部を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の睡眠環境制御システムにおいては、上記請求項1〜7のいずれか1項に記載の生体情報検出装置と、外部機器と、を備え、外部機器は、生体情報検出装置の検出結果に基づいて制御されることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の生体情報検出方法は、被測定対象に接触せずに生体信号を電気信号として取得する工程と、電気信号として取得された生体信号を周波数スペクトルに変換する工程と、周波数スペクトルの分散の大きさに応じて、周波数スペクトルの通過周波数帯域の帯域幅を変更し、周波数スペクトルを通過させる工程と、通過した周波数スペクトルから生体情報を検出する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明においては、周波数スペクトルの周波数変動が大きく、分散が大きい場合には、可変帯域フィルタ部が通過周波数帯域の帯域幅を広くするので、生体情報を検出することができる。分散が小さい場合には、可変帯域フィルタ部が通過周波数帯域の帯域幅を狭くするので、生体情報の検出精度を高めることができる。
【0016】
請求項2に記載の発明においては、心拍数や呼吸数等の生体信号が存在する低周波数帯域のスペクトルを、演算量を増やさずに、精度よく推定できる。
【0017】
請求項3に記載の発明においては、生体情報検出装置の消費電力を抑えることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明においては、雑音(ノイズ)のスペクトルを除去することができ、生体情報検出装置の設置環境の影響を拝上して生体情報の検出性能が向上する。
【0019】
請求項5に記載の発明においては、睡眠状態の推定を行うことにより、外部機器の制御に活用することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明においては、被測定対象に睡眠異常が発生した場合に、当該睡眠異常を検出することにより、被測定対象の健康状態を判定することができる。
【0021】
請求項7に記載の発明においては、被測定対象に睡眠異常が検出された場合に、その結果を報知することにより、被測定対象の健康状態を確認することができる。
【0022】
請求項8に記載の発明においては、上記請求項1〜7に記載の生体情報検出装置を備えることにより、被測定対象に快適な睡眠を提供することができる。
【0023】
請求項9に記載の発明においては、周波数スペクトルの周波数変動が大きく、分散が大きい場合には、可変帯域フィルタ部の通過周波数帯域の帯域幅を広くするので、生体情報を検出することができる。また、分散が小さい場合には、通過周波数帯域の帯域幅を狭くするので、生体情報の検出精度を高めることができる。また、リアルタイムに処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施形態を、図面に基づいて、説明する。
【0025】
図1に、実施形態に係る睡眠環境制御システムを示す。ここで、図1(A)は、側面図を示し、図1(B)は、上面図を示す。
【0026】
生体情報検出装置1は、ベッド本体2とマットレス3との間に配置される。これにより、ユーザー4に生体情報検出装置1が接触することがないため、ユーザー4に不快感を及ぼすことがない。生体情報検出装置1は、ユーザー4から20〜40cm離すことができる。これは、一般的なマットレスの厚さに対応している。
【0027】
また、枕5の近辺に、指示入力機器6が設けられている。指示入力機器6として、タッチパネルモニターを採用することができる。指示入力機器6は、ユーザー4からの指示が入力されると、その情報をコントローラ7へ伝える。
【0028】
コントローラ7は、ベッド本体2の内部に備えられている。コントローラ7は、ユーザー4からの指示や、生体情報検出装置1の検出結果に従って、外部機器を制御し、ユーザー4の環境を整える。外部機器として、照明31、エアコン32やテレビ33、コンテンツプレーヤ34等のAV機器が挙げられる。
【0029】
図2に、生体情報検出装置1のブロック図を示す。
【0030】
生体情報検出装置1は、非接触型センサ部10と、ゲイン・フィルタ部11と、ADコンバータ部12と、在床状態検出部13と、スペクトル変換部14と、非線形補間処理部15と、正規化部16と、雑音スペクトル推定部17と、雑音スペクトル除去部18と、可変帯域フィルタ部19と、生体情報検出部20と、生体情報検出制御部21と、睡眠状態推定部22と、睡眠異常検出部23と、睡眠異常報知部24と、データ転送部25と、を基本構成とする。
【0031】
非接触型センサ部10は、非接触型センサ素子部101と、センサIF部102と、を基本構成とする。
【0032】
非接触型センサ素子部101は、静電容量型の振動センサであり、ユーザー4(図1参照)に接触せずに、振動により発生した電荷の量を計測する。
【0033】
センサIF部102は、非接触型センサ素子部101が計測した電荷の量をアナログ電気信号に変換する。
【0034】
ゲイン・フィルタ部11は、センサIF部102が電荷の量から変換したアナログ電気信号について、所望の帯域において、フィルタリング処理や増幅処理を行う。所望の帯域とは、生体信号が出現する帯域であり、心拍数では、0.5〜1.5Hz、呼吸数では、0〜0.1Hzである。
【0035】
ADコンバータ部12は、ゲイン・フィルタ部11がフィルタリング処理や増幅処理を行ったアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換する。なお、この際のサンプリング周波数は、例えば、1kHzである。
【0036】
在床状態検出部13は、ADコンバータ部12がアナログ電気信号から変換したデジタル電気信号に基づいて、ユーザー4の在床状態を検出する。ユーザー4が在床し、生体信号が入力されているときは、所望の周波数帯域に生体信号が出現するが、ユーザー4が不在床のときなどは、生体信号が入力されず、本来、生体信号が出現する周波数帯域に、生体信号の強い成分が出現しない。
【0037】
スペクトル変換部14は、ADコンバータ部12がアナログ電気信号から変換したデジタル電気信号を周波数軸上のスペクトル(周波数スペクトル)に変換する。スペクトル変換部14は、バッファを備え、バッファがFULLになったときにFFTを行う。
【0038】
非線形補間処理部15は、スペクトル変換部14が変換した周波数スペクトルに非線形補間処理を行う。スペクトル変換部14に備えられているバッファのサイズのポイント数により、周波数スペクトルの周波数間隔が大きくなり、心拍周波数のような細かい変動を捉えることができない場合がある。この場合、低周波数のスペクトルを強調し、高精度で推定するために、周波数スペクトルに、補間処理を行うとよい。補間処理として、線形補間処理と非線形補間処理とが挙げられるが、周波数スペクトルの推定精度の観点から、非線形補間処理のほうが好ましい。非線形補間処理として、例えば、ラグランジェの非線形補間処理を行うとよい。所望帯域の数点を用いることにより、周波数スペクトルを効果的に推定することができる。所望帯域の3点を用いた場合の非線形補間の例を、図3に示す。選択した区間の周波数スペクトル上の3点を、(x0,g0)、(x1,g1)、(x2,g2)とすると、3点を通る関数は、
G(x)=a0(x−x1)(x−x2)+a1(x−x0)(x−x2)+a2(x−x0)(x−x1)
となる。G(xi)=giとなることから、a0、a1、a2は、
a0=g0/{(x0−x1)(x0−x2)}
a1=g1/{(x1−x0)(x1−x2)}
a2=g2/{(x2−x0)(x2−x1)}
となる。以上より、x’、g’は、
x’=(x0+x1)/2
g’=a0(x’−x1)(x’−x2)+a1(x’−x0)(x’−x2)+a2(x’−x0)(x’−x1)
となる。
【0039】
正規化部16は、非線形補間処理部15が非線形補間処理を行った周波数スペクトルを正規化する。生体情報の検出性能が周波数スペクトルの入力の大きさに依存するのを防止し、特に、ノイズが発生する環境下で、生体情報の検出性能を高めるためである。
【0040】
雑音スペクトル推定部17は、在床状態検出部13で判断されたユーザー4の在床状態に基づいて、雑音スペクトルを算出する。雑音スペクトルは、不在床区間の周波数スペクトルの平均値とすることができる。なお、非接触型センサ部10を用いて、生体情報を検出する場合には、ユーザー4の在床状態に関わらず、非接触型センサ部10に不定期な振動が加わり、信号を検出する場合がある。特に、設置環境の振動特性等により、非接触型センサ部10に振動が伝わる場合に、信号を検出する可能性が高い。そのような信号は、定常的な信号と非定常的な信号が考えられるが、定常的な信号は、ユーザー4の在床状態に関わらず、常に出力されている場合が多い。
【0041】
雑音スペクトル除去部18は、正規化部16が正規化した周波数スペクトルから、雑音スペクトル推定部17で計算された雑音スペクトル、すなわち不在床区間の周波数スペクトルの平均値、を逓倍したものを減算して、ノイズをカットした周波数スペクトルを算出する。なお、逓倍の倍率は、あらかじめ設定しておくことができる。ユーザー4が不在床の場合には、1倍であり、ユーザー4が在床の場合には、雑音が増えるので、2倍や3倍に設定する。
【0042】
可変帯域フィルタ部19は、雑音スペクトル除去部18が算出した周波数スペクトルについて、生体信号が出現する周波数帯域におけるピークと分散の大きさにより、通過周波数帯域の帯域幅を変更し、通過させる。帯域幅は、あらかじめスレッショルドを設定しておくことにより定めることができる。生体信号が出現する周波数帯域は、例えば、心拍数では、0.5〜1.5Hzである。図4に示すように、可変帯域フィルタ部19は、分散(標準偏差)が小さいと、通過周波数帯域の帯域幅を狭い帯域幅w1にして、狭い周波数帯域の周波数スペクトルのみ通過させるが(図4(A)参照)、分散(標準偏差)が大きいと、通過周波数帯域の帯域幅を広い帯域幅w2にして、広い周波数帯域の周波数スペクトルも通過させる(図4(B)参照)。
【0043】
生体情報検出部20は、可変帯域フィルタ部19を通過した周波数スペクトルを分析することにより、生体情報を検出する。なお、生体情報検出部20は、ユーザー4の環境や状態に応じて、着脱可能なメモリ部を有していてもよい。
【0044】
生体情報検出制御部21は、在床状態検出部13で判断されたユーザー4の在床状態に基づいて、生体情報検出部20の動作を制御する。例えば、消費電力を少なくするために、生体情報が必要な在床区間のみで、生体情報検出部20を動作させ、生体情報を検出するとよい。
【0045】
睡眠状態推定部22は、生体情報検出部20が検出した生体情報からユーザー4の睡眠状態を推定する。心拍数や呼吸数は、時々刻々と変化しており、この周波数スペクトルのピークと分散の時間的変化を利用して、眠りが浅いか深いか、覚醒か睡眠か等の睡眠状態を推定する。睡眠状態推定部22の処理により、例えば、睡眠時間、浅い眠りと深い眠りの割合、夜中起床等の時間配分がわかる。
【0046】
睡眠異常検出部23は、生体情報検出部20が検出した生体情報から、睡眠状態推定部22が推定したユーザー4の睡眠状態に鑑みて、睡眠異常を検出する。睡眠異常は、時々刻々と変化する心拍数や呼吸数の変動の大きさにより検出することができる。例えば、ユーザー4の心拍は検出されているのに、呼吸が検出されなくなった場合には、ユーザー4に無呼吸症候群が発生している恐れがある。
【0047】
睡眠異常報知部24は、生体情報検出部20が検出した生体情報および睡眠状態推定部22が推定したユーザー4の睡眠状態を報知する。また、睡眠異常報知部22は、睡眠異常検出部23がユーザー4の睡眠異常を検出したときに、ユーザー4に睡眠異常が発生したことを報知する。なお、睡眠状態推定部22がユーザー4の起床を推定することができるので、ユーザー4の睡眠を妨げず、ユーザー4が起床した時に、ユーザー4にこれらを報知することもできる。
【0048】
データ転送部25は、睡眠状態推定部22が推定したユーザー4の睡眠状態や生体情報検出部20が検出した生体情報に関するデータをコントローラ7(図1参照)に転送する。生体情報とは、例えば、心拍数、呼吸数の値やその時間的変化状態等である。
【0049】
コントローラ7は、データ転送部25から転送されたデータに従って、外部機器を制御し、ユーザー4の環境を整える。外部機器として、照明31、エアコン32やテレビ33、コンテンツプレーヤ34等のAV機器が挙げられる。具体的には、コントローラ7は、データ転送部25から転送されたデータに従って、ユーザー4の睡眠時には、照明31やテレビ33の電源をOFFにしたり、ユーザー4の起床時には、照明31を徐々に明るくしたり、テレビ33にユーザー4の起床を促す画像や音声を出力させたりして、ユーザー4の睡眠環境を制御する。さらに、例えば、外部機器であるテレビ33を、ユーザー4の健康状態が表示されるように制御する。
【0050】
なお、在床状態検出部13は、ユーザー4が在床の場合にのみ、スペクトル変換部14と可変帯域フィルタ部19と生体情報検出部20を動作させるようにすることもできる。
【0051】
生体情報検出装置1について、処理の流れの概略を図5のフローチャートに示す。
【0052】
処理は、1kHzの割り込みにより実施される。これは、ADコンバータ部12のサンプリング周波数と同期したものである。
【0053】
1kHzの割り込みにより、処理が開始する。(S1)。
【0054】
割り込みが発生すると、ADコンバータ部12によりアナログ電気信号から変換されたデジタル電気信号がスペクトル変換部14に備えられているバッファに格納される(S2)。このとき、バッファは2つ用意され、一方のバッファがFULLの場合には、デジタル電気信号は、もう一方のバッファに順次格納される。
【0055】
両方のバッファがFULLでないときは(S3)、処理が終了する(S8)。
【0056】
一方、両方のバッファがFULLのときは(S3)、以降の処理が行われる(S4〜S8)。
【0057】
まず、スペクトル変換部14がバッファに格納されているデジタル電気信号を周波数スペクトルに変換する(S4)。
【0058】
次に、可変帯域フィルタ部19は、所望の周波数帯域、例えば、心拍では、0.5Hz〜1.5Hzの帯域でのピークとその分散を求め、分散が大きければ、広い通過周波数帯域の帯域幅を算出し、分散が小さければ、狭い通過周波数帯域の帯域幅を算出する(S5)。
【0059】
その後、可変帯域フィルタ部19が周波数スペクトルを、S5で算出した通過周波数帯域の帯域幅に応じて、通過させ、フィルタリングする(S6)。ここでフィルタリングされた周波数スペクトルが生体信号を表現した周波数スペクトルである。
【0060】
そして、生体情報検出部20は、生体信号を表現した周波数スペクトルを用いて、生体情報を検出する(S7)。
【0061】
生体情報が検出されると、処理が終了する(S8)。
【0062】
したがって、周波数スペクトルの周波数変動が大きく、分散が大きい場合には、可変帯域フィルタ部19が通過周波数帯域の帯域幅を広くするので、生体情報を検出することができる。分散が小さい場合には、可変帯域フィルタ部19が通過周波数帯域の帯域幅を狭くするので、生体情報の検出精度を高めることができる。また、リアルタイムに処理することができる。
【0063】
なお、非線形補間処理部15を設けることにより、心拍数や呼吸数等の生体信号が存在する低周波数帯域のスペクトルを、演算量を増やさずに、精度よく推定できる。
【0064】
また、在床状態検出部13は、ユーザー4が在床の場合にのみ、スペクトル変換部14と可変帯域フィルタ部19と生体情報検出部20を動作させるようにすれば、生体情報検出装置1の消費電力を抑えることができる。
【0065】
さらに、雑音スペクトル除去部18を設けることにより、雑音(ノイズ)のスペクトルを除去することができ、生体情報検出装置1の設置環境の影響を拝上して生体情報の検出性能が向上する。
【0066】
また、睡眠状態推定部22を設けることにより、睡眠状態の推定を行うことができるので、外部機器の制御に活用することができる。
【0067】
さらに、睡眠異常検出部23を設けることにより、ユーザー4に睡眠異常が発生した場合に、当該睡眠異常を検出することができるので、ユーザー4の健康状態を判定することができる。
【0068】
またさらに、睡眠異常報知部24を設けることにより、ユーザー4に睡眠異常が検出された場合に、その結果を報知することができるので、ユーザー4の健康状態を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施形態に係る睡眠環境制御システムを示す図である。
【図2】実施形態に係る生体情報検出装置のブロック図である。
【図3】所望帯域の3点を用いた場合の非線形補間の例を示す図である。
【図4】可変帯域フィルタ部の処理を示す図である。
【図5】実施形態に係る生体情報検出装置について、処理の流れの概略を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0070】
1 生体検出装置
2 ベッド本体
3 マットレス
4 ユーザー
5 枕
6 指示入力機器
7 コントローラ
10 非接触型センサ部
101 非接触型センサ素子部
102 センサIF部
11 ゲイン・フィルタ部
12 ADコンバータ部
13 在床状態検出部
14 スペクトル変換部
15 非線形補間処理部
16 正規化部
17 雑音スペクトル推定部
18 雑音スペクトル除去部
19 可変帯域フィルタ部
20 生体情報検出部
21 生体情報検出制御部
22 睡眠状態推定部
23 睡眠異常検出部
24 睡眠異常報知部
25 データ転送部
w1、w2 帯域幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定対象に接触せずに生体信号を電気信号として取得する非接触型センサ部と、
前記非接触型センサ部が電気信号として取得した生体信号を周波数スペクトルに変換するスペクトル変換部と、
前記スペクトル変換部により得られた周波数スペクトルの分散の大きさに応じて、通過周波数帯域の帯域幅を変更する可変帯域フィルタ部と、
前記可変帯域フィルタ部を通過した周波数スペクトルに基づいて生体情報を検出する生体情報検出部と、
を備えることを特徴とする生体情報検出装置。
【請求項2】
前記可変帯域フィルタ部に周波数スペクトルが入力される前に、非線形補間処理により、周波数スペクトルの低周波数域のスペクトルを強調する非線形補間処理部を備えることを特徴とする請求項1に記載の生体情報検出装置。
【請求項3】
前記被測定対象の在床と不在床を判別する在床状態検出部を備え、
前記在床状態検出部は、前記被測定対象が在床の場合にのみ前記スペクトル変換部と前記可変帯域フィルタ部と前記生体情報検出部とを動作させることを特徴とする請求項1に記載の生体情報検出装置。
【請求項4】
前記被測定対象が不在床のときの周波数スペクトルを雑音スペクトルとし、前記被測定対象が在床のときの周波数スペクトルから雑音スペクトルを逓倍した周波数スペクトルを減算する雑音スペクトル除去部を備えることを特徴とする請求項3に記載の生体情報検出装置。
【請求項5】
周波数スペクトルのピークと分散の時間変化とにより、前記被測定対象の睡眠状態を推定する睡眠状態推定部を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の生体情報検出装置。
【請求項6】
前記被測定対象に睡眠異常が発生した場合に、当該睡眠異常を検出する睡眠異常検出部を備えることを特徴とする請求項5に記載の生体情報検出装置。
【請求項7】
前記睡眠異常検出部が睡眠異常を検出したときに、その結果を報知する睡眠異常報知部を備えることを特徴とする請求項6に記載の生体情報検出装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の生体情報検出装置と、
外部機器と、
を備え、
前記外部機器は、前記生体情報検出装置の検出結果に基づいて制御されることを特徴とする睡眠環境制御システム。
【請求項9】
被測定対象に接触せずに生体信号を電気信号として取得する工程と、
電気信号として取得された生体信号を周波数スペクトルに変換する工程と、
周波数スペクトルの分散の大きさに応じて、周波数スペクトルの通過周波数帯域の帯域幅を変更し、周波数スペクトルを通過させる工程と、
通過した周波数スペクトルから生体情報を検出する工程と、
を含むことを特徴とする生体情報検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−125595(P2008−125595A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311358(P2006−311358)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】