説明

生体活性物質の放出を制御するためのヒドロゲル

本発明は、陽イオンの存在下でのグアノシンヒドラジド誘導体をベースとしたヒドロゲルの形成に関する。ヒドロゲルは、生物活性物質、例えば食品香料、芳香剤、昆虫誘引剤または昆虫忌避剤、殺菌剤、殺真菌剤、医薬または農薬のためのキャリヤー/デリバリーシステムとして使用されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、陽イオンの存在下での超分子の大環状化合物の形成のためにフーグステン型水素結合によって会合しうるグアノシンヒドラジド誘導体を基礎とした安定な超分子ヒドロゲルの形成に関する。ヒドロゲルアセンブリーは、種々の活性のアルデヒドまたはケトンと相互作用することができ、周囲環境中への前記アルデヒドまたはケトンの放出に影響を及ぼす。本発明は、ヒドロゲル、生物活性物質を保護するための前記ヒドロゲルの使用ならびに食品香料、芳香剤、医薬品または農薬の放出を制御するためのデリバリーシステムとしての前記ヒドロゲルの使用に関する。
【0002】
従来技術
生物活性分子、例えば食品香料、芳香剤、医薬品または農薬の安定化および制御されたデリバリーは、ほぼ全ての応用化学のための重要な論争点である。(生体)活性薬剤の濃縮され、容易に運搬可能かつ加工可能な形を安定化させることなしでは、デリバリーは実現されず、および機能性薬剤は、予定された場所および時間で、めったに有利な性質を示すことはない。実際に、崩壊に敏感な添加剤を保護し、添加剤の放出を制御し、それ故に、使用要件に応じて性能を最適化するために、広範囲な用途には、効果的なカプセル封入が必要とされている。マトリックス、例えばミセル、カプセルまたはゲル中への活性化合物の閉じ込めは、種々の部門の工業で広範囲に研究された。
【0003】
高度に揮発性であり、したがって制限された時間に亘ってのみ知覚されうる食品香料および芳香剤の制御された放出は、最近、食品香料工業および芳香剤工業からますます関心を寄せられている。活性の揮発性物質のディスペンサー、例えばエアフレッシュナーは、日常の生活に通常使用される消費製品であり、このエアフレッシュナーの幾つかの異なるタイプは、公知である。ゲルは、食品香料および/または芳香剤の放出における潜在性に対して多くの関心が寄せられた。
【0004】
また、ゲル、殊にpHに応じて低分子量の化合物から形成されたゲルは、生物医学的用途のために重要である。
【0005】
機能化されていないグアノシンは、超分子の大環状化合物を形成するフーグステン型水素結合によってGカルテット中へ四重に会合することが公知であり、この場合この超分子の大環状化合物は、ヒドロゲルの形成と共に陽イオン、例えばNa+、K+およびNH4+の存在下でG4アセンブリー中に積み重ねられる。前記構造は、活性物質と相互作用することにより公知ではない。
【0006】
本発明の説明
本発明は、グアノシンヒドラジド誘導体、陽イオンおよび水性液体から構成されている新規ゲル組成物に関する。このゲルは、生物活性の物質、例えばアルデヒドまたはケトンに対して有用なキャリヤーであり、この場合この生物活性の物質は、ヒドロゲル内に閉じ込められていてよく、かつ適用中に周囲に放出されてよい。
【0007】
それ故、本発明の他の実施態様は、上記ゲルと少なくとも1つの生物活性の物質とを一緒に混合することによって得ることができる活性ゲルに関する。更に、前記物質の放出は、ゲルまたはゲル成分と活性物質との相互作用の強さならびにヒドロゲルからの前記物質の拡散に依存する。
【0008】
この場合、"活性物質"は、利点または効果を周囲環境中にもたらすことができかつ殊に、芳香効果、矯味効果、製薬学的効果、昆虫忌避剤効果または昆虫誘引剤効果、殺虫剤効果、殺菌剤効果、農薬効果およびその混合を有することができる成分を意味する。この場合、"活性ゲル"は、少なくとも1つの活性物質を放出することができるゲルを意味する。
【0009】
従って、本発明の第1の対象は、
1)式:
【化1】

〔式中、R1は、水素原子、C1〜C10線状または分枝鎖状アルキル基またはフェニル基を表わし;
Aは、式i)〜vi)
【化2】

から構成される群から選択され、
上記式中、点線および太字の線は、それぞれ−CONHNHR1およびB部分への結合を表わし、R2、R3またはR4は、互いに独立に−H、−OH、−OCOCH3、−OCH2Ph、−OPO3NaHおよび−OPO32から構成される群から選択されるかまたはR2、R3またはR4の2つを一緒にした場合には、−OP(OH)OO−、−OP(ONa)OO−および−OC(CH32O−から構成される群から選択され、
YおよびXは、NHキャリヤーまたは酸素原子またはCH2基またはCHOH基であり;および
nは、1〜50、好ましくは1〜10の1つの整数であり;および
Bは、式vii)〜x)
【化3】

で示される一部分であり、
上記式中、太字の線は、A部分への結合を示し、R5は、−H、−OH、−OCH3、−SH、−SCH3、−NH2、−NHCH3、−OCOCH3、−OCH2Ph、−OCH2CH=CH2および−Brから構成されている群から選択される〕で示される少なくとも1つの化合物、
2)K+、Na+、Li+、Rb+、Cs+、Sr2+、Ba2+、NH4+または(CH34+から構成される群から選択された少なくとも1つの陽イオンおよびCl-、Br-、I-、NO3-、HCOO-、CH3COO-、H2PO3-、HPO32-、PO33-、SO42-、CO32-、HCO3-、BO2-、PF6-、ピクレート-およびシトレート3-から構成される群から選択された少なくとも1つのアニオンを含有する塩;および
3)水性液体からなるゲルである。
【0010】
式(I)の好ましい化合物は、Aが式i)またはii)、但し、この場合R2およびR3は互いに独立に−Hまたは−OHであるものとし、から選択され、Bが式vii)またはx)の一部分であり、かつR1およびR5が水素原子を表わすような化合物である。
【0011】
式(I)のよりいっそう好ましい化合物は、式
【化4】

〔式中、R2およびR3は、互いに独立に−Hまたは−OHである〕で示される化合物であり、この化合物の本発明の対象である。
【0012】
特に好ましいのは、グアノシン−5′−ヒドラジドである。
【0013】
好ましい塩は、式Mymの塩に対して中性の全電荷を生じるために、XがCl-、NO3-、HCOO-、CH3COO-、HCO3-、H2PO3-、HPO32-、SO42-、CO32-、PO33-およびシトレート3-から構成される群から選択されたアニオンであり、MがNa+、K+、Sr2+、NH4+または(CH34+から構成される群から選択された陽イオンであり、かつyおよびmが1、2または3から個別的に選択されているような式Mymを有する。
【0014】
よりいっそう好ましくは、Mは、K+、Na+またはN(CH34+である。よりいっそう好ましくは、Xは、Cl-、CH3COO-、H2PO3-、HPO32-、PO33-、SO42-およびシトレート3-である。
【0015】
好ましい水性液体は、水および水とエタノール、ジプロピレングリコールまたはプロピレングリコールとの均質混合物である。本発明の特殊な実施態様によれば、水性液体は、5〜8のpHを有し、このpHは、緩衝液によって一定に維持されることができる。
【0016】
更に、本発明の実施態様によれば、水性液体は、Isopar(登録商標)H、J、K、L、M、PまたはV(イソパラフィン;出所:Exxon Chemical)、Norpar(登録商標)12または15(パラフィン;出所:Exxon Chemical)、Exxsol(登録商標)D 155/170、D 40、D 180/200、D 60、D 70、D 80、D 100、D 110またはD 120(脱芳香化された炭化水素;出所:Exxon Chemical)、Dowanol(登録商標)PM、DPM、TPM、PnB、DPnB、TPnB、PnPまたはDPnP(グリコールエーテル;出所:Dow Chemical Company)、Eastman(登録商標)EP、EB、EEH、DM、DE、DPまたはDB(グリコールエーテル;出所:Eastman Chemical Company)、Dowanol(登録商標)PMAまたはPGDA(グリコールエーテルエステル;出所:Dow Chemical Company)またはEastman(登録商標)EBアセテート、Eastman(登録商標)DEアセテート、Eastman(登録商標)DBアセテート、Eastman(登録商標)EEP(全てグリコールエーテルエステル;全ての出所:Eastman Chemical Company)の商品名で公知の化合物から選択される助溶剤、または他の溶剤、例えばエタノール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、イソプロピルミリステート、ジエチルフタレート、2−エチルヘキシルアセテート、メチルn−アミルケトンまたはジイソブチルケトンを含有することができるし、或いはメタノール、DMSO、ジオキサン、ブタノール、第三ブタノール、プロパノールおよびイソプロパノールも含有することができる。
【0017】
本発明のゲルは、中性または僅かに酸性のpHで最高の収率で形成される。水性液体中の式(I)の化合物の濃度は、1〜1000mM、好ましくは10〜200mM、よりいっそう好ましくは10〜80mMで変動してよい。ゲルの形成に必要とされる塩の濃度は、好ましくは10mMを上廻り、よりいっそう好ましくは30mMを上廻り、特によりいっそう好ましくは45mMを上廻るが、しかし、一般的には、2000mMを超えない。式(I)の化合物の濃度ならびに塩の濃度は、ゲル化の温度に影響を及ぼし、当業者であれば、目標とされる用途に適した特殊なゲル化温度を得るために前記濃度の選択を望むことができる。
【0018】
また、本発明によるゲルは、酸化防止剤、UV抑制剤、油溶性染料、溶剤、界面活性剤および苦味剤から構成される群から選択された少なくとも1つの成分を場合による成分として含有していてもよい。
【0019】
有用な酸化防止剤成分の制限されない例として、1つは、立体障害アミン、即ち2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン誘導体、例えばUvinul(登録商標)(出所:BASF AG)またはTinuvin(登録商標)(出所:Ciba Speciality Chemicals)の商品名で公知であるもの、ならびにアルキル化ヒドロキシアレン誘導体、例えばブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を挙げることができる。
【0020】
酸化防止剤成分は、本発明によれば0%〜3%の量で組成物中に配合されていてよく、この場合この百分率は、組成物の全質量に対するものである。好ましくは、酸化防止剤成分は、0.1%〜2%の量で存在する。
【0021】
有用なUV抑制剤成分として、1つは、ベンゾフェノン、ジフェニルアクリレートまたはシンナメート、例えばUvinul(登録商標)(出所:BASF AG)の商品名で入手可能なものを挙げることができる。
【0022】
UV抑制剤成分は、本発明によれば0%〜0.5%の量で組成物中に配合されていてよく、この場合この百分率は、組成物の全質量に対するものである。好ましくは、UV抑制剤成分は、0.01%〜0.4%の量で存在する。
【0023】
染料は、本発明による組成物の別の場合による成分である。適当な染料は、油溶性である。適当な染料の制限されない例は、アントラキノン誘導体、メチン、アゾ、トリアリールメタン、トリフェニルメタン、アジン、アミノケトン、スピロオアキシン(spirooaxine)、チオキサンタン、フタロシアニン、ペリレン、ベンゾピランまたはペリノン系である。商業的に入手可能なかかる染料の例は、Sandoplast(登録商標)Violet RSB、Violet FBL、Green GSB Blue 2BまたはSavinyl(登録商標)Blue RS(全てアントラキノン誘導体、出所:Clariant Hungingue S.A.)、Oilsol(登録商標)Blue DB(アントラキノン;出所:Morton International Ltd.)、Sandoplast(登録商標)Yellow 3G(メチン、出所:Clariant Hungingue S.A.)、Savinyl(登録商標)Scarlet RLS(アゾ金属錯体、出所:Clariant Huningue S.A.)、Oilsol(登録商標)Yellow SEG(モノアゾ;出所:Morton International Ltd.)、Fat Orange(登録商標)R(モノアゾ;出所:Hoechst AG)、Fat Red(登録商標)5B(モノアゾ;出所:Hoechst AG)、Neozapon(登録商標)Blue 807(フタロシアニン;出所:BASF AG)、Fluorol(登録商標)Grenn Golden(ペリレン;出所:BASF AG)の商品名で公知である。
【0024】
染料成分は、本発明によれば0%〜1%の量で組成物中に配合されていてよく、この場合この百分率は、組成物の全質量に対するものである。好ましくは、染料成分は、0.005%〜0.5%の量で存在する。
【0025】
界面活性剤は、陽イオン性、陰イオン性または非イオン性であることができ、0.1〜15%の間、好ましくは1〜10%の間、よりいっそう好ましくは1〜5%の間で変動する量で存在することができる。
【0026】
苦味剤の存在は、生成物を口に合わなくするために望ましく、この場合には、組成物が殊に幼児によって摂取されることをよりいっそう少なくする。1つは、制限のない例としてイソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、メチルn−ブチルケトンまたはデナトニウム塩、例えばBitrex(登録商標)(出所:mAC Parian Smith Ltd.)でも公知の安息香酸デナトニウムを挙げることができる。
【0027】
苦味剤成分は、本発明によれば0%〜6%の量で組成物中に配合されていてよく、この場合この百分率は、組成物の全質量に対するものである。Bitrex(登録商標)の場合、最大量は、組成物の全質量の0.1%にまで下げられていてよい。
【0028】
好ましくは、苦味剤成分は、0.5%〜5%の量で存在する。Bitrex(登録商標)の場合、この量は、組成物の全質量の0.001%〜0.05%を有することができる。
【0029】
式(I)の化合物は、陽イオンM、例えばK+、Na+、Sr2+、N(CH34+およびNH4+の存在下でヒドロゲルの形成と共に積み重ねられる超分子の大環状化合物を形成するフーグステン型水素結合によって会合するものと確信されている。このような会合の例は、反応式1に示されており、この場合式(I)の化合物は、Gカルテット中へ四重に会合する。
【0030】
反応式1:陽イオンの存在下でのGカルテットに対するヒドロゲレーター(hydrogelator)の自己集合
【化5】

【0031】
この反応式は、synグリコシド配座だけを示しているが、しかし、グアノシン誘導体は、超分子構造体中でsynグリコシド配座および/またはantiグリコシド配座の双方を採用してよい。陽イオンは、占有されている異なる可能な部位の組合せに依存して種々の化学量論的割合で結合されてよい。化合物の立体中心は、規定されないが、しかし、R配置またはS配置であることができる。
【0032】
本発明によるヒドロゲルは、ゲルマトリックスによる崩壊から保護されかつ制御された方法で環境に放出されうる、活性物質のためのキャリヤーとして有用であることが見い出された。
【0033】
それ故に、本発明の別の対象は、次のもの:
少なくとも1つの活性物質および
上記したようなゲルまたは上記したようなゲル成分を混合することによって得ることができる活性ゲルである。
【0034】
上記したように、活性物質は、殊に芳香効果、矯味効果、製薬学的効果、昆虫忌避剤効果または昆虫誘引剤効果、殺虫剤効果、殺菌剤効果、農薬効果およびその混合を有することができる成分である。
【0035】
本発明の好ましい実施態様において、活性物質は、食品香料成分、芳香成分、医薬成分または農薬成分である。医薬成分は、薬剤、例えばヒトまたは動物のための薬物、またはビタミンであることができる。農薬成分は、除草剤、農薬または殺真菌剤であることができる。
【0036】
上記したように、式(I)の化合物の濃度ならびに塩および活性物質の濃度は、ゲル化の温度に影響を及ぼし、当業者であれば、目標とされる用途に適した特殊なゲル化温度を得るために前記濃度の選択を望むことができる。活性物質は、中性の化合物または有機塩であることができる。
【0037】
活性物質は、C5〜C30の脂肪族または芳香族の炭化水素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸エステル、ラクトン、ニトリル、エーテル、アミンまたはアルコールならびにその混合物であることができる。好ましくは、活性物質は、C5〜C30のアルデヒドまたはケトンである。医薬品または農薬の場合には、活性物質は、70個までのC原子を有することができる。
【0038】
活性物質は、ゲルと相互作用すると考えられており、したがって周囲での当該活性物質の拡散能力は、変性される。例えば、活性物質がアルデヒドまたはケトン誘導体である場合には、反応式2に示されているように、当該活性物質は、可逆的にゲルのヒドラジド官能基の−NH2基と反応することができ、遊離ヒドラジド官能基との平衡状態であると考えられるヒドラゾン誘導体を形成する。
【0039】
反応式2:ゲルのGカルテットと活性のアルデヒドまたはケトンとの間の可逆的な付加物の形成。
【0040】
【化6】

【0041】
式(I)の化合物のアシルヒドラゾン誘導体は、選択的に別々に活性のアルデヒドまたはケトンとの反応によって製造されることができ、次に純粋な形かまたは式(I)の化合物および他の活性のアルデヒドおよび/またはケトンとの混合物で添加されることができる。この平衡の形成は、ゲル中での活性化合物の強い保持を生じる。選択的に活性物質は、化合物(I)への共有結合なしにゲル構造中に含まれていてよい。
【0042】
この保持は、外部の攻撃的な媒体からの活性物質の保護ならびに制御された方法または制御された速度で活性物質の引き渡しを可能にする。こうして、活性化合物は、共有結合的または非供給結合的に超分子状のヒドロゲル構造中に含まれることができる。
【0043】
本発明の特殊な実施態様によれば、活性物質は、芳香成分である。「芳香成分」の場合、本明細書中では、快楽効果を付与するために芳香調製物または組成物に使用される化合物を意味する。換言すれば、芳香成分であると考えられるかかる成分は、当業者によって前向きにかまたは気持ちのよく組成物の匂いを付与することができるかまたは変化させることができるものであって、まさに1つの匂いを有するだけでないこととして認められなければならない。このような成分の例は、参考文献、例えばS. Arctander, Perfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USAによる書物またはその最新の版、または同様の種類の他の作品、ならびに香料分野における豊富な特許文献に見出すことができる。
【0044】
特に有用な芳香成分は、香料アルデヒドまたはケトン、殊にC5〜C30香料アルデヒドまたはケトンである。香料アルデヒドまたはケトンの制限のない例として、次のものを引用することができる:
A)式R"−CHO〔式中、R"は、C8〜C12の線状または分枝鎖状アルキル基である〕で示されるアルデヒド、ベンズアルデヒド、1,3−ベンゾジオキソール−5−カルボキシアルデヒド(ヘリオトロピン)、3−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−2−メチルプロパナール、(E)−4−デセナール、8−デセナール、3(6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−エン−2−イル)プロパナール、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−カルボアルデヒド(Triplal(登録商標)、出所:Internationa Flavors and Fragrances, USA)、3,5−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−カルボアルデヒド、1−(3,3−ジメチル−1−シクロヘキシル)−1−エタノン、5,9−ジメチル−4,8−デカジエナール、2,6−ジメチル−5−ヘプテナール、3,7−ジメチル−2,6−オクタジエナール(シトラール)、3,7−ジメチルオクタナール、3,7−ジメチル−6−オクテナール(シトロネラール)、(3,7−ジメチル−6−オクテニル)アセトアルデヒド、3−ドデセナール、(Z)−4−ドデセナール、3−エトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒド(エチルバニリン)、4−エチルベンズアルデヒド、3−(2−エチルフェニルおよび4−エチルフェニル)−2,2−ジメチルプロパナール、2−フランカルボアルデヒド(フルフラール)、(E)−2−ヘキシル−3−フェニル−2−プロペナール(ヘキシルシンナムアルデヒド)、7−ヒドロキシ−3,7−ジメチルオクタナール(ヒドロキシシトロネラール)、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド(バニリン)、4−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボアルデヒドおよび3−(4−ヒドロキシ−4−メチルペンチル)−3−シクロヘキセン−1−カルボアルデヒド(Lyral(登録商標)、出所:International Flavors and Fragrancesm USA)、4−イソプロピルベンズアルデヒド(クミンアルデヒド)、3−(4−イソプロピルフェニル)−2−メチルプロパナール、2−(4−イソプロピルフェニル)プロパナール、(4R)1−p−メンテン−9−カルボアルデヒド(Liminal(登録商標)、出所:Firmenich SA, Geneva, Switzerland)、2−メトキシベンズアルデヒドおよび4−メトキシベンズアルデヒド(anis aldehyde)、6−メトキシ−2,6−ジメチルヘプタナール(メトキシメロナール)、8(9)−メトキシ−トリシクロ[5.2.1.0.(2,6)]デカンー3(4)−カルボアルデヒド(Scentenal(登録商標)、出所:Firmenich SA, Geneva, Switzerland)、1−メチル−4−(4−メチル−3−ペンテニル)−3−シクロヘキセン−1−カルボアルデヒド(Precyclemone(登録商標)B,出所:International Flavors & Fragrances, USA)、4−(4−メチル−3−ペンテニル)−3−シクロヘキセン−1−カルボアルデヒド(Acropal(登録商標)、出所:Givaudan-Roure SA, Vernier, Switzerland)、(4−メチルフェノキシ)アセトアルデヒド、(4−メチルフェニル)アセトアルデヒド、3−メチル−5−フェニルペンタナール、2−(1−メチルプロピル)−1−シクロヘキサノン、2,6−ノナジエナール、(Z)−6−ノネナール、フェノキシアセトアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、3−フェニルブタナール(Trifernal(登録商標), 出所:Firmenich SA, Geneva, Switzerland)、3−フェニルプロパナール、2−フェニルプロパナール(ヒドラトロプアルデヒド)、(E)−3−フェニル−2−プロペナール(シンナムアルデヒド)、3−(4−第三ブチルフェニル)−2−メチルプロパナール(Lolial(登録商標)、出所:Givaudan-Roure SA, Vernier, Switzerland)、3−(4−第三ブチルフェニル)プロパナール(Bourgeonal(登録商標)、出所:Quest International, Naarden, Netherlands)、トリシクロ[5.2.1.0.(2,6)]デカン−4−カルボアルデヒド、エキソートリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカンー8−エキソ−カルボアルデヒド(Vertral(登録商標)、出所:Dragoco, Germany)、2,6,6−トリメチル−ビシクロ[3.1.1]ヘプタン−3−カルボアルデヒド(ホルミルピナン)、2,4,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−カルボアルデヒドおよび3,5,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−カルボアルデヒド、2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−アセトアルデヒド(カンホレニックアルデヒド(campholenic aldehyde))、2,6,10−トリメチル−2,6,9,11−ドデカテトラエナール、(E)−2,5,6−トリメチル−4−ヘプテナール、3,5,5−トリメチルヘキサナール(Verdinal,出所:Quest International, Naarden, Netherlands)、10−ウンデセナールまたは9−ウンデセナールおよびその混合物、例えばイントレレベンアルデヒド(Intreleven aldehyde)(出所:International Flavors & Fragrances, USA)であり、および
B)式R’−(CO)−R"〔式中、R’およびR"は、線状アルキル基である〕で示されるC8〜C11ケトン、アセトフェノン、ダマスセノンおよびダマスセン、1−(5,5−ジメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−4−ペンテン−1−オン(Neobutenone(登録商標)、出所:Firmenich SA, Geneva, Switzerland)、4−(1,1−ジメチルプロピル)−1−シクロヘキサノン(Orivone(登録商標)、出所:International Flavors & Fragrances, USA)、2,4−ジ−第三ブチル−1−シクロヘキサノン、2−ヘキシル−1−シクロペンタノン、2−ヒドロキシ−3−メチル−2−シクロペンテン−1−オン、4−(4−ヒドロキシ−1−フェニル)−2−ブタノン(ラズベリーケトン)、イオノンおよびメチルイオノン、イロン、4−イソプロピル−2−シクロヘキセン−1−オン、大環状ケトン、例えばシクロペンタデカノン(Exaltone(登録商標))または3−メチル−4−シクロペンタデセン−1−オンおよび3−メチル−5−シクロペンタデセン−1−オン(δ−ムスセノン)または3−メチル−1−シクロペンタデカノン(ムスコン)、この場合、これらの出所の全てがFirmenich SA, Geneva, Switzerlandであり、1(6),8−p−メタンジエン−2−オン(carvone)、1−(1−p−メンテン−2−イル)−1−プロパノン、メントン、(1R,4R)−8−メルカプト−3−p−メンタノン、7−メチル−2H,4H−1,5−ベンゾジオキセピン−3−オン(Calone(登録商標)、出所:C.A.L. SA, Grasse, France)、5−メチル−3−ヘプタノン、6−メチル−5−ヘプテン−2−オン、メチル−3−オキソ−2−ペンチル−1−シクロペンタンアセテート(Hedione(登録商標)、出所:Firmenich SA, Geneva, Switzerland)、5−メチル−エキソ−トリシクロ[6.2.1.0(2,7)]ウンデカン−4−オン、2−ナフタレニル−1−エタノン、1−(オクタヒドロ−2,3,8,8−テトラメ−2−ナフタレニル)−1−エタノン(異性体混合物、Iso E Super(登録商標)、出所:International Flavors & Fragrances, USA)、2−ペンチル−1−シクロペンタノン(Delphone)、4−フェニル−2−ブタノン(ベンジルアセトン)、2−第三ブチル−1−シクロヘキサノン、2,4,4,7−テトラメチル−6−オクテン−3−オン、1,7,7−トリメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オン(樟脳)、4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−2−ブタノン(ジヒドロイオノン)、(E)−1−(2,4,4−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−イル)−2−ブテン−1−オン、1−(3,5,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−イル)−1−エタノン、2,2,5−トリメチル−5−ペンチル−1−シクロペンタノンである。
【0045】
更に、上記の実施態様の何れかによれば、香料アルデヒドまたはケトンは、有利にソフトウェアEPIwin v.3.10(2000US Environmental Protection Agencyで入手可能)を用いて計算することによって得られるように、2.0Paを上廻る蒸気圧によって特徴付けられる。別の実施態様によれば、蒸気圧は、5.0Paを上廻るかまたはなおいっそう7.0Paを上廻る。
【0046】
"昆虫誘引剤または昆虫忌避剤"の場合には、昆虫に対してプラスの効果またはマイナスの効果を有する化合物を意味する。このような成分の例は、かかる参考文献または同様の種類の他の書物中に見出すことができ、例えばA.M.EI−Sayed,The Pherobase2005、http://www.pherobase.net中に見出すことができる。
【0047】
当業者であれば、望ましい恩恵を付与し、同時に本発明のゲルの形成を可能にする活性物質の製造に必要とされる成分ならびにその濃度を完全に選択することができるであろう。特に有用な製薬学的成分の制限のない例としては、次のものを引用することができる:抗ウィルス性化合物、例えばアシクロビル当該誘導体(valacyclovir, gancyclovirまたはpencyclovir等)、抗生物質(例えば、バンコマイシン、ペニシリン)、ビタミン(例えば、ビタミンA、B、C等)、DNAまたはRNA、治療効果を有するC5〜C20天然化合物、C5〜C20アミノ酸およびペプチド、タンパク質、およびC6〜C20炭水化物をベースとする薬剤。
【0048】
上記のものは、生物学的に活性の基質であることが特に強調されるけれども、当該活性物質がイオノフォア、増粘剤または液晶であることができることは述べる価値はある。
【0049】
本発明による組成物は、活性物質を0.5%〜50%の量で含有することができ、この場合百分率は、当該組成物の全質量に対するものである。本発明の好ましい実施態様において、1%〜25%の量で存在し、なおいっそう好ましくは、1%〜10%の量で存在する。
【0050】
式(I)の化合物に関連して、活性物質は、好ましくは0.01〜2等量の間で変動するモル比で添加されるか、またはよりいっそう好ましくは0.1〜1等量のモル比で添加される。
【0051】
上記に予想されているように、本発明によるヒドロゲル組成物は、揮発性物質を周囲空間に計量供給するための消費者製品を製造するのに特に好適である。従って、本発明によるゲル組成物を含有するかまたは当該ゲル組成物に関連する消費者製品も本発明の対象である。
【0052】
このような消費者製品は、ゲル組成物の製造に使用される揮発性の液体成分の性質に依存して、芳香デバイスまたは衛生デバイス、例えば特に固体またはゲルタイプのエアフレッシュナー、おむつ手桶用フレッシュナー、自動車用フレッシュナー、クロゼット用フレッシュナー、猫砂の入った容器用フレッシュナー(cat litter box freshener)、靴用フレッシュナーまたは厨芥バケツ用フレッシュナー、練り歯磨き、化粧用クリームまたは製薬学的クリーム、ヘアケア製品またはボディケア製品、クリーニング製品、表面艶出し製品、殺虫剤、または昆虫誘引剤または昆虫忌避剤デバイスであることができる。
【0053】
本発明による消費者製品は、先に引用された公知技術水準のものとは異なり、適当な形状に成形された、本発明によるゲル組成物から簡単に構成されていてよく、即ちゲルの補助は、不要である。本発明によるゲル組成物は、任意の適当な形状を有することができる。
【0054】
また、本発明によるゲルは、当該組成物を収容する容器と関連していていてもよい。このような場合には、異なるタイプの容器を使用することができる。制限されない例として、揮発性の液体成分の蒸気に対して全体的に不浸透性の材料から形成されかつ揮発性の液体成分の蒸気を消費者製品を包囲する空気中に拡散させることができる少なくとも1つのアパーチャーを有する容器を引用することができる。また、前記容器は、ゲルを完全に包み込むことができ、当該容器の少なくとも一部分は、揮発性の液体成分の蒸気を消費者製品を包囲する空気中に逃出させる材料から形成されている。
【0055】
たとえ消費者製品が周囲への揮発性の液体の蒸気の拡散を貯蔵中に回避させるために容器を含むか含んでいなくとも、当該消費者製品または揮発性の液体の蒸気に対して浸透性である容器の一部分は、任意の公知の手段、例えば揮発性の液体相の蒸気に対して不浸透性であるプラスチックフィルムによって封止されていてよい。更に、消費者は、消費者製品を簡単に封止の除去によって活性化し、その後、揮発性の液体相は、周囲空気中への拡散を開始するであろう。
【0056】
式(I)の化合物は、商業的に入手可能な出発材料から、反応式3にグアノシン−5′−ヒドラジドの例について説明されているような1つの反応順序で合成させることができる。
【0057】
反応式3:本発明によるヒドロゲレーター(hydrogelator)を製造するための例
【化7】

【0058】
例えば、ケタールの形のように遊離ヒドロキシル基を3位および4位で適当に保護した後、遊離ヒドロキシメチル基は、相応するカルボン酸に酸化される。適当な酸化条件は、例えばアセトニトリル水溶液中の2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)基および[ビス(アセトキシ)ヨード]ベンゼン(BAIB)を用いるEppおよびWidlanskiによって記載された酸化条件(J. Org. Chem., 1999, 64, 293-295)である。更に、カルボン酸は、メタノール中のSOCl2を用いて(例えば:Norris et al., Nucl. Acid. Res., 1975, 2, 1093-1100参照)、引続きエタノールまたはメタノール中のヒドラジン水和物での処理(例えば:Vercruysse et al., Bioconjugate Chem., 1997, 8, 686-694参照)によって相応するメチルエステルに変換することができる。
【0059】
更に、本発明は、次の実施例によりさらに詳細に記載され、この場合略符号は、当業界での通常の意味を有する。別記しない限り、NMRスペクトルデータは、DMSO−d6またはD2O中でBruker-Biospin分光計で1Hのために400MHzおよび13Cのために100.6MHzで記録されるか、またはBruker AV 500分光計で1Hのために500MHzおよび13Cのために125.8MHzで記録され、化学的変位δは、別記しない限り標準としてのTMSに関連してppmで示され、結合定数Jは、Hzで表わされる。エレクトロスプレーイオン化質量分析法(ESI−MS)は、液体クロマトグラフィーと結合されたBruker Micro-TOF分光計で実施された。試料は、Milli−Q水中または0.5Mの酢酸アンモニウム緩衝液中の200μMの濃度で製造された。噴射前に、試料の少量のアリコートは、20倍に希釈され、ESI−MSのために使用された。次の穏和な条件は、Gカルテットの超分子アセンブリーを検出するために使用された:120℃での乾燥ヒーター温度の設定、イオン極性 プラス、噴霧器圧力0.4バール、毛管電圧4000V、端板オフセット電圧 −400V、および乾燥ガス流3.0 l/分。粘度測定は、Brookfield Digital-Rheometer、直径4cmおよび角度1゜のスピンドル型を装備した型DV−IIIで実施された。
【0060】
実施例1
グアノシン−5′−ヒドラジドの製造
メタノール(150ml)中のグアノシン−5′−メチルエステル(メチル(2S,3S,4R,5R)−5−(2−アミノ−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−9H−プリン−9−イル)−3,4−ジヒドロキシテトラヒドロ−2−フランカルボキシレート、100mg、0.32ミリモル)の懸濁液にヒドラジン水和物(80mg、1.6ミリモル)を添加し、この混合物を12時間還流した。この反応混合物を体積の1/3に濃縮し、濾過し、真空下に乾燥し、グアノシン−5′−ヒドラジド76mg((2S,3S,4R,5R)−5−(2−アミノ−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−9H−プリン−9−イル)−3,4−ジヒドロキシテトラヒドロ−2−フランカルボヒドラジド、収率76%)を生じた。白色の固体。融点:241〜243℃。
1H NMR:(400MHz、DMSO−d6):10.8(br.s,1H);10.6(br.s,1H);7.94(s,1H);6.59(br.s,2H);5.77(d,J=7.6,1H);5.73(m,1H);5.54(m,1H);4.50(m,1H);4.45(m,1H);4.33(d,J=1.2,1H);4.0(s,1H)。
13C NMR:(100.6MHz,DMSO−d6)169.2(s);157.1(s);153.9(s);150.3(s);137.7(d);117.8(s);88.0(d);84.6(d);73.5(d);72.6(d)。
ESI−MS:312.1[M+H]+
【0061】
グアノシン−5′−ヒドラジドのベンズアルデヒド誘導体の製造
グアノシン−5′−ヒドラジド(300mg、0.96ミリモル)およびエタノール(10ml)中のベンズアルデヒド(153mg、1.45ミリモル)の懸濁液を6時間還流した。室温への冷却後、この混合物を濾過し、相応するヒドラゾン250mg((2S,3S,4R,5R)−5−(2−アミノ−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−9H−プリン−9−イル)−3,4−ジヒドロキシテトラヒドロ−2−フランカルボン酸ベンジリデンヒドラジド、収率74%)をアミド結合配座(synlanti約64:36)に関連して2つの異性体の混合物として生じた。灰色の固体。
1H NMR:(400MHz、DMSO−d6、主要な異性体):11.69(s,1H);10.88(s,1H);8.35(s,1H);8,28(s,1H);7.77−7.66(m,2H);7.54−7.39(m,3H);6.65(br.s,2H);5.88(d,J=6.1,1H);5.67(br.s,2H);4.61(dd,J=6.1,1.0,1H);4.47(d,J=3.1,1H);4.31(dd,J=3.1,1.0,1H);
(小数の異性体):11.72(s,1H);10.81(s,1H);8.39(s,1H);8,05(s,1H);7.77−7.66(m,2H);7.54−7.39(m,3H);6.65(br.s,2H);5.96(d,J=7.2,1H);5.67(br.s,2H);5.34(m,1H);4.43(dd,J=4.1,3.1,1H);4.26(m,1H)。
13C NMR:(100.6MHz,DMSO−d6、主要な異性体)166.5(s);156.7(s);154.4(s);151.5(s);149.5(d);136.2(d);134.4(s);130.7(d);129.2(d);127.6(d);116.2(s);87.3(d);83.2(d);73.7(d);73.4(d);
(小数の異性体):171.5(s);156.7(s);154.4(s);152.0(s);144.8(d);135.7(d);134.3(s);130.5(d);129.2(d);127.4(d);115.6(s);86.2(d);81.4(d);75.2(d);73.7(d)。
ESI−MS:401[M+2]+,400[M+H]+
【0062】
実施例2
ゲルの製造およびゲル溶融温度の測定
グアノシン−5′−ヒドラジドを0.5Mのアセテート緩衝液 pH6(500μl)中に溶解し、15ミリモルの濃度を形成させた。容器をグアノシン−5′−ヒドラジドが完全に溶解するまで加熱し、次に室温に冷却した。ゲル化を観察し、ゲル溶融温度(Tgel)を、バイアル倒置法(the vial inversion method)によって目視的に測定した。試料のバイアルを倒置された位置で油浴中に浸漬し、温度を徐々に高めた。Tgelをゲルが流動を開始した点として考慮した。
【0063】
グアノシン−5′−ヒドラジドは、Na+、K+およびNH4+の存在下に15ミリモルで安定して自由に立ち、ならびに中性のpH(燐酸塩緩衝液)でよりいっそう大きな(CH34+陽イオンを有するゲルを形成することが見出された。このヒドロゲルは、容器の転倒時に流動するほど十分な強さではなく、室温で数日間安定することが見出された。ESI−MSは、m/z 1267.4で(G4+Na)のためのピークを示し、Gカルテットの同一性が確認された。製造されたゲルの透過電子顕微鏡による観察により、長さが数μmである繊維が明らかになった。
【0064】
ゲル化温度Tgelを酢酸ナトリウム緩衝液(0.5モル)中でpH6でゲレーター(gelator)濃度の関数として測定した。この結果は、グアノシン−5′−ヒドラジドが緩衝液を10ミルモル程度の低い濃度、即ち約0.3質量%であってもゲル化することができ、33℃のTgelを生じることができることを示した。50ミリモルでTgelは、65℃であり、濃度を100ミリモルまで増加させることにより、生成物の沈殿を生じた。形成されたヒドロゲルは、熱的に可逆的であるが、しかし、剪断に対しては不安定であった。異なる陽イオンのためのグアノシン−5′−ヒドラジドの濃度の関数としてのTgelの測定は、K+が最も効果的なゲレーター(gelator)/G4アセンブラーであることを示した。他の陽イオンは、ゲル化効率の順序(CH34+>NH4+>Na+を示した。K+濃度の関数として容器の転倒によって目視的に測定されるグアノシン−5′−ヒドラジドのゲル化温度Tgelは、61℃で45ミリモルを上廻り90ミリモルまで不変のままであり、ゲル化が完結すると直ちにイオン濃度に依存しないことが示された。
【0065】
実施例3
プロトンNMR分光法によるグアノシン−5′−ヒドラジドのゲル化の測定
NMR管にグアノシン−5′−ヒドラジド(2.3mg)、D2O(450μl)、KCl貯蔵溶液45μl(1モル)、ジオキサン貯蔵溶液5μl(300ミリモル)を添加し、グアノシン−5′−ヒドラジド15ミリモル、KCl90ミリモルおよびジオキサン溶液3ミリモルを生じた。NMR管をグアノシン−5′−ヒドラジドが溶解するまで温和に加熱し、次に室温に冷却した。この試料が十分にゲル化したら直ちに1H NMRスペクトル(400MHz)を記録した。遊離ヒドロゲレーター(hydrogelator)の百分率を、内部ジオキサン基準に関連してグアニン基上のH−8のプロトン信号を積算することによって測定した。H−8のプロトン信号は、溶液中の遊離グアノシン−5′−ヒドラジドに関連して鮮鋭であり、これに反してゲル中に組み込まれたグアノシン−5′−ヒドラジドに関しては、広範囲に亘って検出される。内部基準(ジオキサン3ミリモル)に関連して観察可能なH−8信号の積算により、グアノシン−5′−ヒドラジドの画分は、なお自由に(較差によって)ゲル中に生じた。このゲルを、澄明な溶液を生じる濃厚なDClの1滴の添加によって破壊し、次にプロトンNMRスペクトルを記録し;内部ジオキサン基準に関連してグアノシン−5′−ヒドラジドのH−8(溶液中で100%の遊離)の組み込みにより、グアノシン−5′−ヒドラジドの量を生じた。全ての遊離グアノシン−5′−ヒドラジド(溶液中で100%)の組み込みとゲル化溶液中の遊離グアノシン−5′−ヒドラジドの組み込みとの較差により、ゲル化の百分率が生じた。
【0066】
実際に全部のゲル化(98%を上廻る)は、KCl約45ミリモルを上廻って起こることが見出された。同様に、温度の関数としての遊離グアノシン−5′−ヒドラジドの画分の変形には、引続きH−8プロトン信号が積算される。この変形は、二本鎖DNAの溶融曲線と同様のS字の形状を示し、43℃の転移温度Ttを生じる。
【0067】
目視的に測定されるTgel(61℃)とTt(43℃)との較差は、これらTgelとTtとが2つの異なる事象に関連するという事実に帰因する。異なる物理的方法は、異なる鏡検法に言及される(Terech et al., J. Colloid Interface Sci., 2000, 227, 363-370)。Ttは、1の遊離状態および結合状態(ゲル中で)の量の分子レベルでの変形に言及され、場合によっては脱重合なしのフィブリル内の運動を含む。Tgelは、材料が重力の剪断の下でアセンブリーの凝集の損失により流れる場合に巨視的レベルでのゲルゾル転移を表わす。線形で、NMRデータは、ゲルの十分な溶融を約55〜60℃で示す。このようなデータは、ゲル中での顕微鏡的および巨視的な捕集事象と一般的に有機化された段階との関係を理解するのに著しく重要である。この有機化された段階は、有機化された段階内での運動または有機化された段階への交換および有機化された段階からの交換が引き渡し法にとって重要な特徴である相転移前に起こりうるという事実にも指摘される。
【0068】
実施例4
活性アルデヒドまたはケトンとグアノシン−5′−ヒドラジドをベースとするゲルとの相互作用および最も安定したヒドロゲルの形成
"適合した"動的ヒドロゲルに向けての系の発展を研究するために、ヒドラジドグアノシン−5′−ヒドラジド(1)およびN−(1−ヒドラジノカルボニル−2−ヒドロキシ−エチル)−アセトアミド(セリンヒドラジド)(2)およびアルデヒド2−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(3)および燐酸モノ−(4−ホルミル−5−ヒドロキシ−6−メチル−ピリジン−3−イルメチル)エステル(ピリドキサルモノホスフェート)(4)を選択した。動的ライブラリーをそれぞれの化合物のために15ミリモルの濃度で酢酸ナトリウム緩衝液中でpD6で生成した。この場合この化合物は、4つの可能なアシルヒドラゾンA−D(A:1+3、B:1+4、C:2+3、D:2+4)から構成され、それぞれ2つの配位異性体を表わし、水性媒体中でのアシルヒドラゾン結合形成および分割によって連続的に相互作用を受ける。ヒドラジド2ならびにアルデヒド3および4の貯蔵溶液(150ミリモル)を、記載された化合物をD2Oまたは重水素化緩衝液中に溶解することによって製造した。(酢酸ナトリウムまたは酢酸カリウム0.5モル、pD6.0)。グアノシン−5′−ヒドラジド(1、2.3mg)をNMR管中の緩衝液500μl中に溶解し、15ミリモルの溶液を形成させた。次に、ヒドラジド2溶液50μlおよび貯蔵溶液からのアルデヒド(3,4)溶液50μlを添加した。NMR管を5〜6時間、50〜60℃に温和に加熱し、平衡を達成させた。次に、当該管を室温に冷却し、1H−NMRスペクトル(400MHz)を、溶液が完全にゲル化されたら直ちに記録した。遊離(ゲル化されていない)アシルヒドロゾンのCH=Nイミンプロトン信号は、広範囲に及ぶのだけれども、混合物のそれぞれの成分に対して明らかに同定することができた。それぞれアシルヒドラゾンのanti異性体およびsyn異性体(アミド結合配座に関連し、anti約75%およびsyn25%+化合物に依存して+10%)を組み込み、溶液中に遊離して存在するライブラリー成分の画分を生じた。ゲル中のグアノシン−5′−ヒドラジドの画分は、較差によって得られた。アシルヒドラゾンA(1+3)は、単独ではゲルを生じないけれども、少量(3%以下)のアシルヒドラゾンA(1+3)は、(1+2)と(3+4)との混合物中のアシルヒドラゾンB(1+4)によって形成されたゲル中に閉じ込められることが可能であった。個別的なアシルヒドラゾン(15ミリモル)のスペクトルは、反応されていないアルデヒドプロトンの弱い信号(5%以下)を示した。加熱時に、CH=N信号は、個別的な当該化合物および当該混合物の双方に関連して広範囲に及んだ。
【0069】
著しく不均一な分布が得られた(図1)。グアノシン−5′−ヒドラジド1は、それぞれ当該グアノシン−5′−ヒドラジド1とアルデヒド3および4との反応により生じるアシルヒドラゾンA8%およびアシルヒドラゾンB39%を生じた。同様に、セリンヒドラジド2は、アルデヒド3および4と反応し、C約42%ならびにD11%を生じた。1H−NMRスペクトルが55℃で測定される場合には、アシルヒドラゾンの分布は、殆んど不均一にならないことが見出された。更に、温度が80℃にまで上昇した場合には、ゲルは、完全に溶融し、アシルヒドラゾンの分布は、ほぼ均一になった(図1)。反応混合物を徐々に60分間に亘って逆に25℃に冷却することにより、初期の分布が復元され、この分布は、かかる有機相を生じない成分A、CおよびD上で、熱力学的に安定した動的ヒドロゲルを形成する成分Bに有利に働く混合物が発生される選択的方法が生じたことを示す。1H−NMRデータによって示されているように、2つのヒドラゾンB(ゲル中)およびC(溶液中で遊離)は、明らかに構造的な動的ライブラリーで平衡状態で優位に立っている。後者のCは、Dの結果がピリドキサルモノホスフェート4をゲル中のBに閉じ込めることによって抑制される場合にBの"イメージ"として表わされる。動的選択は、可逆的であり、温度に依存する:ゲルが溶融した場合の高い温度で選択は失われ、一方で、25℃で処理される場合には、媒体はゲル化される。従って、ゲルが形成される場合には、強い選択が存在し、グアノシン誘導体は、相互作用するかまたは最も安定した生成物の形成を可能にするアルデヒドと反応する。この原理は、セリンヒドラジド2を相応するアラニンヒドラジドによって代替することによって確認され、この場合このアラニンヒドラジドは、アシルヒドラゾンと殆んど同じ分布を生じる。
【0070】
幾つかの対照試験が実施された。ヒドラジド2とアルデヒド3と4(1:1:1)の等モル量は、アシルヒドラゾンC15%およびヒドラゾンD85%を生じ、この場合には、ヒドラジド2は、有利にアルデヒド4と共にアシルヒドラゾンDを形成することが示される。予想されたように、ヒドラジド2とアルデヒド3と4は、2:1:1の比で等量のアシルヒドラゾンCとDを平衡状態で発生させた。アルデヒド4とヒドラジド1と2は、1:1:1のモル比でゲル形成を生じ、このゲル形成により、アシルヒドラゾンB87%およびD13%を平衡状態で生じた。前記の結果を共に採用した場合には、4に対して2の強い優位にも拘わらずヒドラジド1がDで2から4を取り除くことができる場合に、アシルヒドラゾンの分布に向け直すためにゲル化の可能性が強調される。1、2と3(1:1:1)との反応は、選択を制御するためにゲル化が起こらない場合にイミンの殆んど均一な分布を生じた。この試験により、グアノシン−5′−ヒドラジド(1)陽イオンのテンプレートを備えた自己アセンブリーが超分子アセンブリーBの能力によって強化された成分の選択を制御し、安定したヒドロゲルを形成することが強調される。
【0071】
ピリドキサルモノホスフェート(4)および1−ホルミルフラン−3−スルホン酸から得られたグアノシン−5′−ヒドラジドのアシルヒドラゾン誘導体によって形成されたゲルに対するレオロジー測定は、当該ゲルがグアノシン−5′−ヒドラジドそれ自体によって形成されたゲルより著しく高い粘度(2400mPasおよび1900mPasは、それぞれ0.38でs-1剪断速度を変える)を有すること、および当該ゲルが熱的応力および剪断応力の双方の可逆性を表わすことが示された。
【0072】
実施例5
活性アルデヒドまたはケトンを含有するヒドロゲルの形成
本実施例で使用される活性アルデヒドまたはケトンは、芳香成分または食品香料成分として公知である。しかし、前記の活性アルデヒドまたはケトンは、昆虫忌避剤または昆虫誘引剤としても表わされるかまたは殺菌剤または殺真菌剤としても表わされる。幾つかの化合物、例えばベンズアルデヒド、2,4−ジメチル−3−シクロヘキセン−1−カルボアルデヒド(Triplal(登録商標))、3,7−ジメチル−6−オクテナール(シトロネラール)、2−フランカルボアルデヒド(フルフラール)、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド(バニリン)、メントン、1−(4−メチルフェニル)−1−エタノン(4−メチルアセトフェノン)、2−ペンチル−1−シクロペンタノン(デルホン(Delphone))、3−フェニル−2−プロペナール(シンナムアルデヒド)または10−ウンデセナールは、昆虫誘引剤または昆虫忌避剤の性質を有し(例えば:A.M. EI-Sayed, The Pherobase 2005, http://www.pherobase.net)および/または細菌類に対して活性であることが公知である(例えば:WO 01/24769または欧州特許第1043968号明細書参照)。
【0073】
0.5モルの酢酸カリウム緩衝液(pH6)を酢酸カリウム(4.61g)、氷酢酸(0.16g)および脱イオン水(97.11g、100mlまで充填した)から製造した。5.95(±0.045)のpH値を25℃で測定した。
【0074】
小型のガラス容器中で、グアノシン−5′−ヒドラジド(37.3mg、0.12ミリモル)を音波破砕下に上記の0.5モルの酢酸カリウム緩衝液7ml中に溶解した。
【0075】
この容器を水浴(約70℃で)上でヒドラジドが完全に溶解するまで加熱し、次に酢酸カリウム緩衝液中に溶解された活性アルデヒドまたはケトン1ml(0.06モル)を添加し、15ミリモルのグアノシン−5′−ヒドラジドおよび7.5ミリモルのアルデヒドまたはケトン溶液を生じた。この試料を室温に冷却したまま放置した。比較試験において、官能化されていないグアノシン(33.8mg、0.12ミリモル)をグアノシン−5′−ヒドラジドの代わりに使用した。ゲルが得られたかまたは化合物が沈殿したかを見るために、試料を室温への冷却後および室温での5日間の放置後に転倒させおよび/または目視的に分析した。
【0076】
次の結果が得られた:
【表1】

【0077】
活性アルデヒドおよび/またはケトンの混合物でのゲルの形成を検査するために、それぞれ3つの異なるアルデヒドまたはケトン0.075モルを上記の0.5モルの酢酸カリウム緩衝液20ml中に溶解した。小型のガラス容器中で、グアノシン−5′−ヒドラジド(37.1mg、0.12ミリモル)を音波破砕下にアルデヒドを含有する0.5モルの酢酸カリウム緩衝液8ml中に溶解し、15ミリモルのグアノシン−5′−ヒドラジドおよびそれぞれアルデヒドまたはケトンに対して3.75ミリモルの溶液を生じた。この容器を水浴(約70℃で)上で加熱し、次に室温に冷却したまま放置した。比較試験において、官能化されていないグアノシン(33.8mg、0.12ミリモル)をグアノシン−5′−ヒドラジドの代わりに使用した。ゲルが得られたかまたは化合物が沈殿したかを見るために、試料を1日後および室温での5日間の放置後に転倒させおよび/または目視的に分析した。
【0078】
次の結果が得られた:
【表2】

【0079】
このデータは、活性アルデヒドまたはケトンの存在下でグアノシン−5′−ヒドラジドがヒドロゲレーター(hydrogelator)として役立つ場合にゲルが得られ、これとは異なり、ヒドロゲレーターとしての官能化されたグアノシンを用いての試料は、不安定であり、5日間の放置後に沈殿することが見出されたことを示す。
【0080】
実施例6
プロトンNMR分光法による超分子ヒドロゲル構造中に配合された活性アルデヒドまたはケトンの量の定量化
グアノシン−5′−ヒドラジド(37.1mg、0.12ミリモル)をD2O(pD6)中の0.5モルの酢酸カリウム緩衝液7ml中に溶解した。次に、異なる量のベンズアルデヒド(31.6mg、0.30ミリモル;62.9mg、0.59ミルモルまたは94.7mg、0.89ミリモル)を、内部標準としてのジオキサン(60.4ミリモル)を含有するD2O中の0.5モルの酢酸カリウム緩衝液5ml中に溶解した。測定のために、グアノシン−5′−ヒドラジドを含有する緩衝液700μlおよびそれぞれベンズアルデヒド緩衝液の1つ100mlを、幾つかのナトリウム3−トリメチルシリル−テトラジュウテリオプロピオネート(内部ロックとして)と一緒にNMR管に添加し、0.5、1.0または1.5モル等量のベンズアルデヒドおよび0.5モル等量のジオキサンを有するグアノシン−5′−ヒドラジド溶液15ミリモルを生じた。この管を水浴(約70℃)上で、澄明な溶液が得られるまで加熱し、次に一晩中、室温に冷却したまま放置した。生じる生成物は、完全に固化した試料であった。下記の結果に示されているように、この試料は、ゲル化された相(遊離されていない成分を有する)およびゲル構造内に閉じ込められた液相(遊離成分を有する)の分散液から本質的に構成されていた。
【0081】
完全に固化した試料について1H NMRスペクトル(500MHz)を記録した。遊離ヒドロゲレーターの百分率(モル%で)を、内部ジオキサン基準に関連してグアニン基上のH−8のプロトン信号を積算することによって測定し、遊離ベンズアルデヒドの百分率を、芳香環のH−3プロトン信号を積算することによって測定した。
【0082】
グアノシン−5′−ヒドラジドの量に関連して0.5、1.0または1.5等量のベンズアルデヒドを含有する試料において、閉じ込められた液相中でそれぞれ遊離ベンズアルデヒド13.7%、8.9%および5.6%ならびに遊離グアノシン−5′−ヒドラジド4.7%、4.9%および4.3%を測定した。室温で5日間の放置後、NMR試料をゲルが溶解するまで再加熱し、次に再び室温に冷却した。1H−NMRスペクトルを再測定することにより、それぞれ遊離ベンズアルデヒド13.9%、8.3%および5.6%ならびに遊離グアノシン−5′−ヒドラジド4.2%、3.2%および3.2%が示され、こうしてゲル形成の良好な再現性を示した。1つの場合には、グアノシン−5′−ヒドラジドに関連して過剰量で使用されるけれども、閉じ込められた液相中に残留した遊離ベンズアルデヒドが5〜14%にすぎないという事実は、活性アルデヒドまたはケトンが共有結合および/または非共有結合で超分子ヒドロゲル構造中に配合されていてよいことを示す。
【0083】
実施例7
ヘッドスペース分析による超分子ヒドロゲル構造からの活性アルデヒドまたはケトンの蒸発による定量化
小型のガラス容器中で、グアノシン−5′−ヒドラジド(42.0mg、0.14ミリモル)を音波破砕下に0.5モルの酢酸カリウム緩衝液7ml(pH6)中に溶解した。緩衝液10ml中の非揮発性の2−ホルミルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(200.5mg、1.0ミリモル)の溶液1mlの添加後、試料を水浴上で約70℃に加熱した。完全な溶解後、緩衝液10ml中の等モル量(0.30ミリモル)の揮発性フルフラール(29.2mg)、ベンズアルデヒド(31.5mg)、アセトフェノン(35.7mg)および2,4,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−カルボアルデヒド(45.6mg)の溶液1mlを添加し、15ミリモルのグアノシン−5′−ヒドラジドおよび3,3ミリモルのアルデヒドまたはケトン溶液を生じた。この試料を室温に冷却したまま放置し、ヒドロゲルを形成した。
【0084】
比較試験において、グアノシン(38.1mg、0.14ミリモル)をグアノシン−5′−ヒドラジドの代わりに使用した。開いた容器を17日間室温で放置した。ヘッドスペース中の揮発性のアルデヒドまたはケトンの量をそれぞれ1日後、6日後および17日後に動的ヘッドスペース分析によって測定した。
【0085】
分析のために、ガラス容器をヘッドスペース採取セル(約650ml)中に置き、それぞれ約200ml/分の一定の空気流に晒した。この空気を活性炭を通して濾過し、NaClの飽和溶液を通して吸引した。15分間、ヘッドスペース系を平衡状態のまま放置し、次に揮発性成分をそれぞれ清潔なTenax(登録商標)カートリッジ上で20分間(1日後および6日後)または30分間(17日後)吸着した。この採取を30分ごとに8回繰り返した。このカートリッジを、J&W Scientific DB1毛管カラム(30m、内径0.45mm、被膜0.42μm)およびFID検出器を装備したCarlo Erba MFC 500ガスクロマトグラフに結合されたPerkin Elmer TurboMatrix ATD脱着器上で脱着した。当該揮発性成分を3℃/分で70℃から出発して130℃までおよび次に25℃/分で260℃までの2工程の温度勾配を用いて分析した。噴射温度は、240℃であり、検出器温度は、260℃であった。ヘッドスペース濃度(ng/lで)を、5つの異なる濃度のエタノール溶液を用いての相応する芳香アルデヒドおよびケトンの外部標準較正によって得た。それぞれの較正溶液0.2μlをTenax(登録商標)カートリッジ上に噴射し、直ちにヘッドスペース採取から生じる条件と同じ条件下で脱着した。グアノシン−5′−ヒドラジドの場合には、ゲルは、全試験中安定したままであるのに対して、グアノシンを有するゲルは、数日後に沈殿することが見出された。
【0086】
ng/lでの次の平均ヘッドスペース濃度が得られた:
【表3】

【0087】
このデータは、グアノシン−5′−ヒドラジドで形成されたヒドロゲル構造中への活性アルデヒドおよびケトンの配合により、グアノシンで形成されたゲルの場合よりもヘッドスペース中での活性アルデヒドおよびケトンの濃度の明らかな減少が殆んど生じないことを示す。これは、時が経つにつれて活性物質のよりいっそう一定した放出を生じる。更に、グアノシンを有する試料と比較して、グアノシン−5′−ヒドラジドの存在下で試験の終結時に測定されるよりいっそう高いヘッドスペース濃度(ベンズアルデヒド、アセトフェノンおよび2,4,6−トリメチル−3−シクロヘキセン−1−カルボアルデヒドのため、およびフルフラールに対して比較可能な濃度について)は、活性物質の放出のための増大された長い耐久性を生じる。
【0088】
実施例8
プロトンNMR分光法による超分子ヒドロゲル構造からの活性物質の放出の定量化
グアノシン−5′−ヒドラジドおよびアシクロビルを0.5モル%の重水素化された酢酸ナトリウム緩衝液pD6(500μl)中に溶解し、それぞれ15ミリモルおよび5ミリモルの濃度を形成させた。容器をグアノシン−5′−ヒドラジドが完全に溶解するまで加熱し、次に室温に冷却した。ゲル化後、酢酸ナトリウム緩衝液(500μl)をヒドロゲルの上面上に極めて注意深く添加した。異なる時間間隔で、上澄液を注意深くNMR管に取り出した。1H NMRスペクトルを内部標準としての第三ブタノール(3ミリモル)を用いて記録した。ヒドロゲルから放出されたアシクロビルの百分率を第三ブタノール信号に関連してアシクロビルのグアニン部分のH−8プロトン信号を積算することによって測定した。別々のNMR管中で、アシクロビルおよび第三ブタノールをD20(500μl)中に溶解し、それぞれ5ミリモルおよび3ミリモルの溶液を形成させ、プロトンNMRスペクトルを記録した。内部標準第三ブタノール(3ミリモル)に関連してアシクロビルのグアニン部分のH−8プロトン信号の積算により、全体量のアシクロビルが生じた(100%に相当する)。アシクロビルの全体量の積算と種々の時間間隔でヒドロゲルから上澄みの緩衝液中へ放出されるアシクロビルの積算との較差により、放出された活性物質の百分率が生じた。バンコマイシンまたはビタミンCを活性物質として使用する同様の試験は、実施された。異なる時間間隔で上澄みの緩衝液中に放出されたそれぞれの活性物質の量は、図2に示されている。
【0089】
実施例9
グアノシン−5′−ヒドラジドのベンズアルデヒド誘導体を含有するヒドロゲルの形成
小型のガラス容器中で、グアノシン−5′−ヒドラジド(46.9mg、0.15ミリモル)を音波破砕下に上記の0.5モルの酢酸カリウム緩衝液10ml中に溶解した。この溶液を水浴(約70℃で)上でヒドラジドが完全に溶解するまで加熱した。次に、この溶液6mlを約70℃で酢酸カリウム緩衝液中に溶解された5−(2−アミノ−6−オキソ−1,6−ジヒドロ−9H−プリン−9−イル)−3,4−ジヒドロキシテトラヒドロ−2−フランカルボン酸ベンジリデンヒドラジド2ml(11.8mg、0.03ミリモル)に添加し、グアノシン−5′−ヒドラジド中の11,3ミリモルの試料およびベンジリデンヒドラジド誘導体中の3.7ミリモルの試料を生じた。この試料を室温に冷却したまま放置した。この試料を室温で1日間および5日間放置した後に倒置しおよび/または目視的に分析した。ゲルが得られた。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】CH=N 1H−NMR信号を積算することにより計算された、平衡を達成した後の温度の関数としてのヒドラジド1、2とアルデヒド3および4(全て15ミリモル、酢酸ナトリウム緩衝液、D2O中のpD6)との混合物から発生された構造的な動的ライブラリー中のアシルヒドラゾンA−Dの分布を示す略図。25℃で:A、8%;B、39%;C、42%;D、11%;55℃で:A、15%;B、35%;C、35%;D、15%;80℃で:A、22%;B、28%;C、28%;D、22%。
【図2】1H NMR分光法によって測定された、異なる時間間隔でのヒドロゲルから上澄みの緩衝液中へのアシクロビル、ビタミンCおよびバンコマイシンの放出のためのプロファイルを示す線図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)式:
【化1】

〔式中、R1は、水素原子、C1〜C10線状または分枝鎖状アルキル基またはフェニル基を表わし;
Aは、式i)〜vi)
【化2】

から構成される群から選択され、
上記式中、点線および太字の線は、それぞれ−CONHNHR1およびB部分への結合を表わし、R2、R3またはR4は、互いに独立して−H、−OH、−OCOCH3、−OCH2Ph、−OPO3NaHおよび−OPO32から構成される群から選択されるかまたはR2、R3またはR4の2つを一緒にした場合には、−OP(OH)OO−、−OP(ONa)OO−および−OC(CH32O−から構成される群から選択され、
YおよびXは、NHキャリヤーまたは酸素原子またはCH2基またはCHOH基であり;および
nは、1〜50の整数であり;および
Bは、式vii)〜x)
【化3】

で示される一部分であり、
上記式中、太字の線は、A部分への結合を示し、R5は、−H、−OH、−OCH3、−SH、−SCH3、−NH2、−NHCH3、−OCOCH3、−OCH2Ph、−OCH2CH=CH2および−Brから構成されている群から選択される〕で示される少なくとも1つの化合物、
2)K+、Na+、Li+、Rb+、Cs+、Sr2+、Ba2+、NH4+または(CH34+から構成される群から選択された少なくとも1つの陽イオンおよびCl-、Br-、I-、NO3-、HCOO-、CH3COO-、H2PO3-、HPO32-、PO33-、SO42-、CO32-、HCO3-、BO2-、PF6-、ピクレート-およびシトレート3-から構成される群から選択された少なくとも1つのアニオンを含有する塩;および
3)水性液体からなるゲル。
【請求項2】
式(I)の化合物中で、Aが式i)またはii)、但し、この場合R2およびR3は互いに独立して−Hまたは−OHであるものとし、から選択され、Bが式vii)またはx)の一部分であり、かつR1およびR5が水素原子を表わす、請求項1記載のゲル。
【請求項3】
式(I)の化合物が
【化4】

〔式中、R2およびR3は、互いに独立に−Hまたは−OHである〕である、請求項1記載のゲル。
【請求項4】
式(I)の化合物がグアノシン−5′−ヒドラジドである、請求項1記載のゲル。
【請求項5】
塩が、式Mymの塩に対して中性の全電荷を生じるために、XがCl-、NO3-、HCOO-、CH3COO-、HCO3-、H2PO3-、HPO32-、SO42-、CO32-、PO33-およびシトレート3-から構成される群から選択されたアニオンであり、MがNa+、K+、Sr2+、NH4+または(CH34+から構成される群から選択された陽イオンであり、かつyおよびmが1、2または3から個別的に選択されているような式Mymを有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載のゲル。
【請求項6】
水性液体が水であるかまたは水とエタノール、ジプロピレングリコールまたはプロピレングリコールとの均一な混合物である、請求項1から5までのいずれか1項に記載のゲル。
【請求項7】
水性液体が5〜8から構成されたpHを有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載のゲル。
【請求項8】
次のもの:
少なくとも1つの活性物質および
請求項1から7までのいずれか1項に定義されたようなゲル、または請求項1から7までのいずれか1項に定義されたような前記ゲルの成分を混合することによって得ることができる活性ゲル。
【請求項9】
活性物質が食品香料成分、芳香成分、医薬成分、昆虫誘引剤または昆虫忌避剤、殺虫剤、殺菌剤または農薬成分である、請求項8記載の活性ゲル。
【請求項10】
活性物質がC5〜C30アルデヒドまたはケトンである、請求項8記載の活性ゲル。
【請求項11】
活性物質が芳香成分である、請求項8記載の活性ゲル。
【請求項12】
芳香成分がC5〜C30芳香アルデヒドまたはケトンである、請求項11載の活性ゲル。
【請求項13】
請求項8から12までのいずれか1項に記載のゲルを含有するかまたは当該ゲルと関連する消費製品。
【請求項14】
芳香デバイスまたは衛生デバイス、おむつ手桶用フレッシュナー、自動車用フレッシュナー、クロゼット用フレッシュナー、猫砂の入った容器用フレッシュナー、靴用フレッシュナーまたは厨芥バケツ用フレッシュナー、練り歯磨き、化粧用クリームまたは製薬学的クリーム、ヘアケア製品またはボディケア製品、クリーニング製品、表面艶出し製品、殺虫剤、または昆虫誘引剤または昆虫忌避剤デバイスの形である、請求項13記載の消費製品。
【請求項15】
ゲルタイプのエアフレッシュナーの形である、請求項12記載の消費製品。
【請求項16】
食品香料成分、芳香成分、医薬成分、昆虫誘引剤または昆虫忌避剤、または農薬の放出のためのデリバリーシステムとしての請求項8から12までのいずれか1項に記載のゲル組成物の使用。
【請求項17】

【化5】

〔式中、R2およびR3は、互いに独立に−Hまたは−OHである〕で示される化合物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2008−538744(P2008−538744A)
【公表日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502548(P2008−502548)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【国際出願番号】PCT/IB2006/050876
【国際公開番号】WO2006/100647
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(390009287)フイルメニツヒ ソシエテ アノニム (146)
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
【住所又は居所原語表記】1,route des Jeunes, CH−1211 Geneve 8, Switzerland
【出願人】(507038777)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE LOUIS PASTEUR
【住所又は居所原語表記】4, rue Blaise Pascal, F−67000 Strasbourg, France
【出願人】(500379381)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシャルシュ シアンティフィク (17)
【Fターム(参考)】