説明

生体認証装置、生体認証方法および生体認証プログラム

【課題】認証率の低下を軽減することを課題とする。
【解決手段】前記課題を解決するために、本発明は、生体を認証する際に取得される生体データである認証時生体データと予め登録される生体データである登録時生体データとを、認証のための閾値である認証閾値を用いて照合し、生体を認証する生体認証装置1であって、生体を認証する際の外気の温度である認証時外気温度を取得する外気温度取得部16と、認証閾値と、登録時生体データと、認証閾値を補正するための閾値補正量の情報である閾値補正量情報とが格納される記憶部18と、閾値補正量情報に基づいて、認証閾値を補正する補正処理部20と、補正後の認証閾値に基づいて、認証時生体データと登録時生体データとを照合する照合部19と、を備え、閾値補正量情報は、認証時外気温度が低くなるに従って、閾値補正量が大きくなるように設定されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体認証装置、生体認証方法および生体認証プログラム等の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
指や手のひら等の静脈パターンにより個人を認証する生体認証において、気温の低い環境下では、生体の血管が収縮するため、登録時の生体データと一致せず、認証に失敗することが少なくない。
特許文献1に開示された技術では、生体データの読み取り時に生体データに加え、生体の温度を取得し、生体データの登録時の生体の温度と比較を行う。これらの温度の差分により認証の閾値を変更することにより、認証率の低下を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−11769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術では、閾値を下げることにより、認証の失敗を防止しているが、それにより、生体データの誤認証が発生する可能性が高くなるという問題がある。
また、冬季等の気温が低い環境では、扉のドアノブに触れた際に静電気が発生する可能性が高く、認証者は安心して通行できない。
【0005】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたものであり、認証率の低下を軽減する生体認証装置、生体認証方法および生体認証プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の生体認証装置は、生体を認証する際に取得される生体データである認証時生体データと予め登録される生体データである登録時生体データとを、認証のための閾値である認証閾値を用いて照合し、生体を認証する生体認証装置であって、生体を認証する際の外気の温度である認証時外気温度を取得する外気温度取得部と、前記認証閾値と、前記登録時生体データと、前記認証閾値を補正するための閾値補正量の情報である閾値補正量情報とが格納される記憶部と、前記閾値補正量情報に基づいて、前記認証閾値を補正する補正処理部と、補正後の認証閾値に基づいて、前記認証時生体データと前記登録時生体データとを照合する照合部と、を備え、前記閾値補正量情報は、前記認証時外気温度が低くなるに従って、前記閾値補正量が大きくなるように設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、認証率の低下を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係る生体認証システムの構成を示す図である。
【図2】実施形態に係る生体認証装置の外観を示す図である。
【図3】実施形態に係る個人情報の一例を示す図である。
【図4】実施形態に係る生体認証装置の構成を示すブロック図である。
【図5】実施形態における認証閾値を補正する閾値補正値を説明する図であり、(a)は、認証時外気温度が低温時の閾値補正値を示すものである。(b)は、認証時外気温度が中温時の閾値補正値を示すものである。(c)は、認証時外気温度が高温時の閾値補正値を示すものである。
【図6】実施形態に係る生体認証装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】実施形態に係る蓄積情報の一例を示す図であり、(a)は、蓄積情報の主たるテーブルを示すものである。(b)は、(a)のテーブルの一部を拡大して説明する図である。(c)は、(a)のテーブルに関連付けられたテーブルを示すものである。
【図8】実施形態に係る生体認証装置における補正処理部の蓄積認証閾値補正処理の動作を示すフローチャートである。
【図9】実施形態に係る生体認証装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】実施形態に係る生体認証装置の表示部の画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
[生体認証システム10の構成]
図1は、実施形態に係る生体認証システム10の構成を示す図である。
図1に示すように、生体認証システム10は、ネットワーク4を介して接続される生体認証装置1と、システム管理サーバ2と、登録端末3と、を備えている。
まず、概略を説明すると、認証者の生体データ等の情報は、予め登録端末3または生体認証装置1により登録され、システム管理サーバ2または生体認証装置1のデータベースに格納される。
認証時には、認証者が生体認証装置1において、認証操作を行い、認証時の生体データと登録時の生体データとが照合される。一致した場合は、認証成功となり、例えば、ドア5が開錠される。
【0010】
登録端末3は、生体データを登録するものであり、個人ごとに生体データと生体温度を読み取る機能を有し、また、同時に外気の温度および湿度を読み取る機能も有する。この登録端末3で読み取られた情報は、システム管理サーバ2のデータベースに格納される。
システム管理サーバ2は、生体認証装置1における認証操作および入退室を管理するものであり、一般的なPC(Personal Computer)等で構成される。また、システム管理サーバ2は、ユーザ情報の登録、登録したユーザ情報のダウンロード、IC(Integrated Circuit)カードの登録、生体認証装置1の管理、生体認証装置1のリモート操作、履歴保存、スケジュールの設定等、様々な機能を有する。
【0011】
ここで、予め登録される生体データ等の情報である個人情報81について説明する。
図3は、実施形態に係る個人情報81の一例を示す図である。
図3に示すように、個人情報81は、個人ID(IDentification)をインデックスとして、個人名、個人PIN(Personal Identification Number)(暗証番号)、個人カード番号を格納している。さらに、個人情報81は、登録時の生体データを暗号化したデータである登録時生体データ、登録時の生体温度である登録時生体温度、登録時に予め設定する認証閾値である登録時認証閾値、登録時の外気の温度である登録時外気温度、および、登録時の外気の湿度である登録時外気湿度を格納している。
【0012】
認証閾値とは、認証の際、登録時の生体データである登録時生体データと、認証時の生体データである認証時生体データとの一致度の割合を示すものである。例えば図3に示すように、登録時認証閾値「80」とは、登録時生体データと認証時生体データとの一致度が「80%」であることを示す。この認証閾値以上の一致度である場合は、認証が成功することになる。また、この認証閾値は、一般に、値を大きく設定すると、本人拒否の可能性が高くなり、値を小さく設定すると、他人受入れの可能性が高くなる。
【0013】
個人情報81は、システム管理サーバ2のデータベースに格納されるとともに、生体認証装置1のデータベースにもダウンロードされて格納される。システム管理サーバ2と生体認証装置1は、ネットワーク4で接続されており、それぞれに格納された個人情報81は、同期して常に同じ状態を保っている。
【0014】
[生体認証装置1の構成]
次に、生体認証装置1の構成について、図2および図4を参照して説明する。
図2は、実施形態に係る生体認証装置1の外観を示す図である。
図2に示すように、生体認証装置1は、外気温度・湿度を読み取る外気温度・湿度センサ101と、表示部102と、テンキー部103と、生体温度を読み取る温度センサ104と、生体データを読み取る生体データ読み取りスキャナ105と、静電気を除去する静電気除去パッド106と、を備えている。
【0015】
認証者は、テンキー部103により、個人ID等を入力し、生体データ読み取りスキャナ105に指等を翳して認証操作を行う。生体データ読み取りスキャナ105は、認証者の生体データを読み取り、温度センサ104は、認証者の生体温度を読み取る。また、外気温度・湿度センサ101は、認証時の外気(生体認証装置1周辺の外気)温度および湿度を読み取る。所定の場合、表示部102に静電気除去メッセージが表示され、認証者は、このメッセージに促され、静電気除去パッド106により、静電気を除去することができる。
【0016】
図4は、実施形態に係る生体認証装置1の構成を示すブロック図である。
生体認証装置1は、認証者が認証操作を行うことにより、当該認証者個人を特定するものである。
図4に示すように、生体認証装置1は、操作および結果のメッセージを表示する処理を行う表示部11と、個人IDや個人PIN等の入力を処理するテンキー入力部12と、カードデータを読み込むカードリーダ部13と、生体データを取得する生体データ取得部14と、生体温度を取得する生体温度取得部15と、外気温度を取得する外気温度取得部16と、外気湿度を取得する外気湿度取得部17と、を備えている。
【0017】
さらに、生体認証装置1は、個人情報81、蓄積情報82、閾値補正値情報83および静電気検知情報84を格納する記憶部18と、照合部19と、補正処理部20と、制御部21と、を備えている。
個人情報81は、前記したとおりである。
蓄積情報82は、個人情報81のように予め登録されたものではなく、認証時にデータとして蓄積されるものである。この蓄積されたデータを次回以降の認証時に認証対象として用いる。
例えば図7(a)および図7(b)に示すように、蓄積情報82は、個人IDおよび外気温度区分ごとに、認証が成功する度に、認証時の生体データである認証時生体データ、認証時の認証閾値である認証時認証閾値等を、それぞれ蓄積生体データ、蓄積認証閾値等として格納している。詳細は、「生体認証装置1の動作」において説明する。なお、外気温度区分の低温、中温および高温の値の範囲は、システム管理サーバ2で設定することができる。また、低温、中温および高温の値の範囲は、さらに細分化して設定してもよい。特に、低温については、血流が悪くなり、静脈パターンの変化が激しくなるため、より細分化することとしてもよい。
【0018】
閾値補正値情報83は、認証閾値を補正する閾値補正値(閾値補正量)に関する情報である。閾値補正値について、次の認証閾値補正方法において説明する。
(認証閾値補正方法)
閾値補正値は、認証閾値を補正するものである。例えば、認証閾値が「80」であるところ、閾値補正値が「5」であれば、補正後の認証閾値は、「75」である。すなわち、認証時の登録時生体データと認証時生体データとの一致度の割合を下げることにより、認証されやすくすることになる。なお、場合によっては逆に、一致度の割合を上げて、他人受入れの可能性を低くする等してもよい。
【0019】
図5(a)は、認証時外気温度が低温(0℃〜15℃)の場合の閾値補正値の変化を示したものである。
縦軸が閾値補正値で、横軸が認証時の外気温度である認証時外気温度と、登録時の外気温度である登録時外気温度との温度差である。この温度差が大きくなるに従って、閾値補正値が大きくなるように設定される。また、閾値補正値は、大きくしすぎると、他人受入れの可能性が高くなる(斜線部)ため、予め最大閾値補正値をシステム管理サーバ2で設定し、最大閾値補正値を超えないようにする。
【0020】
図5(b)、図5(c)は、認証時外気温度がそれぞれ中温(16℃〜30℃)、高温(31℃〜40℃)の場合の閾値補正値の変化を示したものである。温度差が同じであれば、認証時外気温度が低くなるに従って、閾値補正値が大きくなるように設定している。
なお、外気温度区分の低温、中温および高温の値の範囲は、システム管理サーバ2で設定することができる。また、低温、中温および高温の値の範囲は、さらに細分化して設定してもよい。
なお、本明細書等において、閾値補正量は、認証閾値を補正する程度を示すものであって、閾値補正値は、閾値補正量に含まれる概念である。また、本明細書等において、閾値補正量情報は、閾値補正量に関する情報であって、閾値補正値情報は、閾値補正量情報に含まれる概念である。
【0021】
図4に戻って説明を続ける。
静電気検知情報84は、静電気が発生しやすい外気温度および外気湿度の値の範囲に関する情報であり、システム管理サーバ2で予め設定する。
照合部19は、登録時認証閾値または登録時認証閾値を補正した補正後の認証閾値に基づいて、認証時生体データと登録時生体データとを照合するものである。
補正処理部20は、閾値補正値情報83に基づいて、認証閾値を閾値補正値により補正するものである。
制御部21は、生体認証装置1内の全体を制御するものである。この制御部21は、前記した各機能部から通知される制御情報に基づいて、動作を決定し、他の機能部に対して指示等を行う。また、制御部21は、図示しない通信部を介して、生体認証装置1の記憶部18に格納された情報を送信し、システム管理サーバ2内のサーバデータベース201に格納された情報を受信する。
なお、サーバデータベース201に格納された情報は、生体認証装置1の記憶部18に格納された情報と同期して常に同じ状態を保っている。
【0022】
なお、生体認証装置1は、図示を省略したCPU(Central Processing Unit)やメモリを搭載した一般的なコンピュータで実現することができる。このとき、生体認証装置1は、コンピュータを、前記した各機能部として機能させる生体認証プログラムによって動作する。また、前記した各機能部は、IC(Integrated Circuit)やLSI(Large Scale Integration)等のハードウェア回路で実現してもよい。
【0023】
[生体認証装置1の動作]
次に、生体認証装置1の動作について図6および図7(構成は適宜図4)を参照して説明する。
【0024】
図6のフローチャートに示すように、ステップS11において、テンキー入力部12は、個人IDを取得する。
ステップS12において、生体データ取得部14は、認証時生体データを取得する。また、生体温度取得部15は、認証時生体温度を取得する。また、外気温度取得部16は、認証時外気温度を取得する。また、外気湿度取得部17は、認証時外気湿度を取得する。
ステップS13において、制御部21は、蓄積情報82を参照し、認証時外気温度が属する外気温度区分に蓄積生体データがN個以上蓄積されているか否かを判定する。
すなわち、認証回数が少ない初期の状態では、ステップS14〜ステップS20(ステップS13・No)の処理を実行し、認証回数が一定以上になった状態では、ステップS21〜ステップS29(ステップS13・Yes)の処理を実行する。
【0025】
例えば図7(a)および図7(b)に示すように、個人IDが「0001」において、外気温度区分が低温(0℃〜15℃)のデータに、N個の蓄積生体データが蓄積されている。これらは、それぞれ認証が成功した際に蓄積情報82に蓄積されたもので、過去にN回認証が成功していることになる。なお、Nは、システム管理サーバ2で、予め設定できるものであり、例えば、10とする。また、認証成功回数がN回を超えた場合に、既に格納された蓄積生体データの中で、蓄積閾値補正値が最も高いもの、または、一致回数が最も少ないものを消去し、(N+1)回目の蓄積生体データの格納をしてもよい。
【0026】
蓄積生体データがN個以上蓄積されていないと判定した場合は(ステップS13・No)、ステップS14において、照合部19は、登録時認証閾値に基づいて、認証時生体データと登録時生体データとを照合する。
なお、以降のフローにおいて、L=2,M=4,P=2,Q=4として説明する。
ステップS15において、照合部19は、認証が成功したか否かを判定する。
認証が成功した場合は(ステップS15・Yes)、ステップS20において、制御部21は、認証時外気温度が属する外気温度区分ごとに、認証時生体データ、認証時認証閾値、認証時生体温度および閾値補正値を蓄積情報82に格納する。
【0027】
例えば図7(a)および図7(b)に示すように、蓄積情報82には、認証時外気温度が属する外気温度区分ごとに、認証時生体データは蓄積生体データとして、認証時認証閾値は蓄積認証閾値として、閾値補正値は蓄積閾値補正値として、また、図7(c)に示すように、認証時生体温度は蓄積生体温度として、格納される。
【0028】
一方、認証が失敗した場合で(ステップS15・No)、認証が1回目のときは、L=2,M=4であるため、処理は、ステップS18に進み(ステップS16・No→ステップS17・No)、制御部21は、表示部11に再度認証操作をするようユーザに促す旨の表示をさせ、生体データ取得部14は、新たに認証時生体データを取得し直す(ステップS18)。そして、処理は、ステップS14に戻り、照合部19は、登録時認証閾値に基づいて、新たに取得した認証時生体データと登録時生体データとを照合する。
なお、LまたはMは、システム管理サーバ2で設定できるものである。
【0029】
認証が失敗した場合で(ステップS15・No)、認証が2回目のときは、ステップS19に進み(ステップS16・Yes)、補正処理部20は、登録時認証閾値を補正する(認証閾値補正方法を参照)。ステップS18において、制御部21は、表示部11に再度認証操作をするようユーザに促す旨の表示をさせ、生体データ取得部14は、新たに認証時生体データを取得し直す(ステップS18)。そして、処理は、ステップS14に戻り、照合部19は、登録時認証閾値を補正した補正後の認証閾値に基づいて、新たに取得した認証時生体データと登録時生体データとを照合する。
【0030】
認証が失敗した場合で(ステップS15・No)、認証が3回目のときは、処理は、ステップS18に進み(ステップS16・No→ステップS17・No)、制御部21は、表示部11に再度認証操作をするようユーザに促す旨の表示をさせ、生体データ取得部14は、新たに認証時生体データを取得し直す(ステップS18)。そして、処理は、ステップS14に戻り、照合部19は、補正後の認証閾値に基づいて、新たに取得した認証時生体データと登録時生体データとを照合する。
【0031】
認証が失敗した場合で(ステップS15・No)、認証が4回目のときは、処理は、終了する(ステップS16・No→ステップS17・Yes)。
【0032】
ステップS13において、蓄積生体データがN個以上蓄積されていると判定した場合は(ステップS13・Yes)、ステップS21において、制御部21は、当該N個の蓄積生体データのうち、一致回数が最も多い蓄積生体データを照合対象データとする。
ステップS22において、照合部19は、照合対象データと認証時生体データとを、対応する蓄積認証閾値に基づいて、照合する。
【0033】
例えば図7(b)に示すように、N個のレコードにおいて、蓄積生体データ「AA3」が一致回数「5」で最も多いとすると、照合部19は、認証時生体データと、蓄積生体データ「AA3」とを、蓄積認証閾値「74」を用いて照合する。
【0034】
ステップS23において、照合部19は、認証が成功したか否かを判定する。
認証が成功した場合は(ステップS23・Yes)、ステップS29において、制御部21は、当該蓄積生体データの一致回数を上げるとともに、当該蓄積生体データごとに認証時生体温度を蓄積生体温度として、蓄積情報82に格納する。
【0035】
例えば図7(b)および図7(c)の左図に示すように、蓄積生体データ「AA3」に関連付けられた蓄積情報82に付属するテーブルに、認証が成功した回数である一致回数の5回分の蓄積生体温度が格納される。図7(c)の右図に示すように、蓄積生体データ「AA2」については、一致回数の3回分の蓄積生体温度が格納される。
【0036】
一方、認証が失敗した場合で(ステップS23・No)、認証が1回目のときは、P=2,Q=4であるため、処理は、ステップS26に進み(ステップS24・No→ステップS25・No)、制御部21は、表示部11に再度認証操作をするようユーザに促す旨の表示をさせ、生体データ取得部14は、新たに認証時生体データを取得し直す(ステップS26)。そして、処理は、ステップS21に戻る。
なお、PまたはQは、システム管理サーバ2で設定できるものである。
【0037】
認証が失敗した場合で(ステップS23・No)、認証が2回目のときは、ステップS27に進み(ステップS24・Yes)、補正処理部20は、蓄積認証閾値補正処理を行う。この処理の詳細については、後記する。
続いてステップS26において、制御部21は、表示部11に再度認証操作をするようユーザに促す旨の表示をさせ、生体データ取得部14は、新たに認証時生体データを取得し直す(ステップS26)。そして、処理は、ステップS21に戻り、制御部21は、当該N個の蓄積生体データのうち、一致回数が最も多い蓄積生体データを照合対象データとする。
ステップS22において、照合部19は、照合対象データと新たに取得した認証時生体データとを、対応する蓄積認証閾値を補正した補正後の認証閾値に基づいて、照合する。
【0038】
認証が失敗した場合で(ステップS23・No)、認証が3回目のときは、処理は、ステップS26に進み(ステップS24・No→ステップS25・No)、制御部21は、表示部11に再度認証操作をするようユーザに促す旨の表示をさせ、生体データ取得部14は、新たに認証時生体データを取得し直す。そして、処理は、ステップS21に戻り、制御部21は、当該N個の蓄積生体データのうち、一致回数が最も多い蓄積生体データを照合対象データとする。
ステップS22において、照合部19は、照合対象データと新たに取得した認証時生体データとを、補正後の認証閾値に基づいて、照合する。
【0039】
認証が失敗した場合で(ステップS23・No)、認証が4回目のときは、処理は、ステップS28に進み(ステップS24・No→ステップS25・Yes)、制御部21は、N個の蓄積生体データのうち、一致回数が2番目に多い蓄積生体データを、照合対象データとする(ステップS28)。そして、処理は、ステップS22に戻り、照合部19は、認証時生体データと照合対象データとを、対応する蓄積認証閾値に基づいて、照合する。
【0040】
例えば図7(b)に示すように、N個のレコードにおいて、蓄積生体データ「AA2」が一致回数「3」で2番目に多いとすると、照合部19は、認証時生体データと、蓄積生体データ「AA2」とを、蓄積認証閾値「78」を用いて照合する。
なお、ステップS21〜ステップS28のループは、所定回数で終了すればよい。
【0041】
(蓄積認証閾値補正処理)
次に、ステップS27における蓄積認証閾値補正処理について図7および図8を参照して説明する。
図8のフローチャートに示すように、ステップS271において、補正処理部20は、照合対象データである蓄積生体データの一致回数分の蓄積生体温度を取得する。例えば図7(b)に示すように、照合対象データである蓄積生体データ「AA3」の一致回数は「5」であるから、図7(c)の左図に示すように、関連付けられたテーブルには、5つ分の蓄積生体温度が格納されており、これらすべての蓄積生体温度を取得する。
【0042】
ステップS272において、補正処理部20は、取得した複数の蓄積生体温度の平均値を算出する。例えば図7(c)の左図に示すように、これらの蓄積生体温度の平均値は、「32.4」である。
ステップS273において、補正処理部20は、認証時生体温度を取得する。
ステップS274において、補正処理部20は、算出した平均値と認証時生体温度との差を算出する。例えば、認証時生体温度が「30」であるとすると、差は「−2.4」である。
【0043】
ステップS275において、補正処理部20は、算出した差を用いて、閾値補正値を補正する。例えば図7(b)に示すように、蓄積生体データ「AA3」の蓄積閾値補正値「6」に「Δx」を加算する。「Δx」は、差に依存する変数であり、適宜設定すればよい。なお、逆に、差が「+2.4」である場合、他人受け入れの可能性を低くするため、蓄積閾値補正値「6」から「Δx」を減算する等してもよい。
【0044】
ステップS276において、補正処理部20は、登録時認証閾値を補正後の閾値補正値で補正して蓄積認証閾値とする。例えば図7(b)に示すように、登録時認証閾値「80」から補正後の閾値補正値「6+Δx」を減算して蓄積認証閾値「74−Δx」とする。なお、蓄積認証閾値「74」から「Δx」を直接減算して補正してもよい。
【0045】
(静電気除去表示処理)
次に、静電気除去表示処理について、図9および図10を参照して説明する。
この処理は、周期的に実行される。例えば5分周期とする。
図9のフローチャートに示すように、ステップS41において、外気温度取得部16は、外気温度を取得する。また、外気湿度取得部17は、外気湿度を取得する。
ステップS42において、制御部21は、取得された外気温度および外気湿度が静電気検知情報84に設定された静電気が発生しやすい外気温度および外気湿度の値の範囲内か否かを判定する。
【0046】
範囲内である場合は(ステップS42・範囲内)、ステップS43において、表示部11は、静電気除去メッセージを表示する。静電気除去メッセージとは、例えば、図10に示すように、「静電気が発生する可能性があります。静電気除去パッドに触れてから入室を行ってください。」というようなものである。
一方、範囲外である場合は(ステップS42・範囲外)、ステップS44において、表示部11は、静電気除去メッセージを非表示にする。
【0047】
本実施形態により、認証が成功するごとに、認証に多く成功している生体データおよび認証閾値が蓄積されることにより、生体データが安定したものとなり、認証率が安定する効果がある。
また、扉のドアノブに触れた際に静電気が発生しやすい環境において、生体認証装置1の表示部102にメッセージを表示し、予め静電気の除去を促すことで、認証者は安心して通行することができる。
【0048】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、例えば次のように変更することができる。
図5(a)〜(c)のグラフの横軸を、認証時生体温度と登録時生体温度との温度差としてもよい。すなわち、閾値補正値情報は、認証時生体温度と登録時生体温度との差が大きくなるに従って、閾値補正値が大きくなるように設定されるようにしてもよい。
また、閾値補正量情報は、認証時生体温度が登録時生体温度よりも高い場合は、閾値補正量を小さく設定し、認証時生体温度が登録時生体温度よりも低い場合は、閾値補正量を大きく設定することとしてもよい。
【0049】
また、図5(a)〜(c)のグラフの横軸を、認証時外気温度と認証時生体温度との温度差としてもよい。この温度差が大きい場合とは、例えば、気温の低い屋外から急に室内へ入って来た場合等である。なお、このとき、手を温めるよう促す旨のメッセージを表示するとしてもよい。
【0050】
また、図6に示すフローチャートのステップS18またはステップS26において、生体温度取得部15は、再度、認証時生体温度を取得することとしてもよい。
また、図6に示すフローチャートのステップS18、ステップS26の処理は、それぞれステップS19、ステップS27の処理の実行後は、省略することとしてもよい。
また、図6に示すフローチャートによると、認証L回目とM回目の間、認証P回目とQ回目の間の処理においては、認証閾値を補正しないこととなっているが、認証閾値を補正することとしてもよい。
【0051】
また、本発明の実施形態では、フローチャートのステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理の例を示したが、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別実行される処理をも含むものである。
【0052】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 生体認証装置
2 システム管理サーバ
3 登録端末
4 ネットワーク
5 ドア
10 生体認証システム
11 表示部
12 テンキー入力部
13 カードリーダ部
14 生体データ取得部
15 生体温度取得部
16 外気温度取得部
17 外気湿度取得部
18 記憶部
19 照合部
20 補正処理部
21 制御部
81 個人情報
82 蓄積情報
83 閾値補正値情報(閾値補正量情報)
84 静電気検知情報
101 外気温度・湿度センサ
102 表示部
103 テンキー部
104 温度センサ
105 生体データ読み取りスキャナ
106 静電気除去パッド
201 サーバデータベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体を認証する際に取得される生体データである認証時生体データと予め登録される生体データである登録時生体データとを、認証のための閾値である認証閾値を用いて照合し、生体を認証する生体認証装置であって、
生体を認証する際の外気の温度である認証時外気温度を取得する外気温度取得部と、
前記認証閾値と、前記登録時生体データと、前記認証閾値を補正するための閾値補正量の情報である閾値補正量情報とが格納される記憶部と、
前記閾値補正量情報に基づいて、前記認証閾値を補正する補正処理部と、
補正後の認証閾値に基づいて、前記認証時生体データと前記登録時生体データとを照合する照合部と、を備え、
前記閾値補正量情報は、前記認証時外気温度が低くなるに従って、前記閾値補正量が大きくなるように設定される
ことを特徴とする生体認証装置。
【請求項2】
前記記憶部は、生体データを登録する際の外気の温度である登録時外気温度をさらに格納し、
前記閾値補正量情報は、前記認証時外気温度と前記登録時外気温度との差が大きくなるに従って、前記閾値補正量が大きくなるように設定される
ことを特徴とする請求項1に記載の生体認証装置。
【請求項3】
生体を認証する際の生体の温度である認証時生体温度を取得する生体温度取得部をさらに備え、
前記記憶部は、生体データを登録する際の生体の温度である登録時生体温度をさらに格納し、
前記閾値補正量情報は、前記認証時生体温度と前記登録時生体温度との差が大きくなるに従って、前記閾値補正量が大きくなるように設定される
ことを特徴とする請求項1に記載の生体認証装置。
【請求項4】
前記閾値補正量情報は、認証時生体温度が登録時生体温度よりも高い場合は、閾値補正量を小さく設定し、認証時生体温度が登録時生体温度よりも低い場合は、閾値補正量を大きく設定する
ことを特徴とする請求項3に記載の生体認証装置。
【請求項5】
前記記憶部は、認証が成功した際の前記認証時生体データ、当該認証の際の認証閾値である認証時認証閾値を、それぞれ蓄積生体データ、蓄積認証閾値としてさらに格納し、
前記照合部は、認証時生体データと前記蓄積生体データとを、前記蓄積認証閾値に基づいて照合する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の生体認証装置。
【請求項6】
前記記憶部は、認証が成功した際の前記閾値補正量、当該認証の際の生体の温度である認証時生体温度を、それぞれ蓄積閾値補正量、蓄積生体温度として前記蓄積生体データごとにさらに格納し、
前記補正処理部は、認証時生体温度と前記蓄積生体温度とに基づいて、対応する前記蓄積認証閾値を補正し、
前記照合部は、認証時生体データと前記蓄積生体データとを、補正後の蓄積認証閾値に基づいて照合する
ことを特徴とする請求項5に記載の生体認証装置。
【請求項7】
前記記憶部は、前記蓄積生体データごとに、認証が成功した回数を一致回数として、当該認証の際の前記蓄積生体データごとにさらに格納し、
前記照合部は、前記一致回数が多い順に前記蓄積生体データを照合対象データとし、認証時生体データと前記照合対象データとを、対応する蓄積認証閾値に基づいて照合する
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の生体認証装置。
【請求項8】
生体を認証する際の外気の湿度である認証時外気湿度を取得する外気湿度取得部をさらに備え、
前記記憶部は、静電気を検知するための外気温度および外気湿度の情報である静電気検知情報をさらに格納し、
制御部は、前記認証時外気温度および前記認証時外気湿度が前記静電気検知情報に基づいて、所定の範囲内である場合は、静電気除去のメッセージを表示部に表示させる
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の生体認証装置。
【請求項9】
生体を認証する際に取得される生体データである認証時生体データと予め登録される生体データである登録時生体データとを、認証のための閾値である認証閾値を用いて照合し、生体を認証する生体認証装置における生体認証方法であって、
前記生体認証装置の制御部は、
生体を認証する際の外気の温度である認証時外気温度を取得し、
前記認証閾値と、前記登録時生体データと、前記認証閾値を補正するための閾値補正量の情報である閾値補正量情報とを格納し、
前記閾値補正量情報に基づいて、前記認証閾値を補正し、
補正後の認証閾値に基づいて、前記認証時生体データと前記登録時生体データとを照合し、
前記補正は、前記認証時外気温度が低くなるに従って、前記閾値補正量が大きくなるように設定される閾値補正量情報に基づいて行われる
ことを特徴とする生体認証方法。
【請求項10】
請求項9に記載の生体認証方法をコンピュータに実行させるための生体認証プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−165885(P2012−165885A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29326(P2011−29326)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000153443)株式会社日立情報制御ソリューションズ (359)
【Fターム(参考)】