田植機
【課題】 本発明の課題は、植付部を適正に稼動することができる田植機を提供することにある。
【解決手段】 転向車輪と後輪とを備えて旋回走行可能な水田作業車の旋回動作信号と、同水田作業車に昇降可能に搭載されて均平用のフロートを備えた植付部の高さ位置信号とを受け、機体の旋回動作と対応して植付部の昇降調節と稼動を制御する制御処理部を備える田植機において、後輪を駆動する後輪伝動部(16)には、後輪車軸(3a)へ減速伝動する減速伝動部と、該減速伝動部よりも伝動上手側に設けた走行距離を算出するための回転センサ(16s)とを備え、旋回のためのハンドル操作又は植付切操作で走行の距離カウントを開始し、走行の距離カウントが所定の旋回走行距離に到達したときに植付部を稼動制御する制御装置を設けた。
【解決手段】 転向車輪と後輪とを備えて旋回走行可能な水田作業車の旋回動作信号と、同水田作業車に昇降可能に搭載されて均平用のフロートを備えた植付部の高さ位置信号とを受け、機体の旋回動作と対応して植付部の昇降調節と稼動を制御する制御処理部を備える田植機において、後輪を駆動する後輪伝動部(16)には、後輪車軸(3a)へ減速伝動する減速伝動部と、該減速伝動部よりも伝動上手側に設けた走行距離を算出するための回転センサ(16s)とを備え、旋回のためのハンドル操作又は植付切操作で走行の距離カウントを開始し、走行の距離カウントが所定の旋回走行距離に到達したときに植付部を稼動制御する制御装置を設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田における機体走行とともに自動的に苗植付け等の圃場作業をする田植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
旋回走行可能な機体に備えた水田作業装置により、機体走行とともに田植作業を行う水田作業車(田植機)において、特許文献1に示すように、機体の旋回走行動作と連動して水田作業装置の動作を制御するようにしたものが知られている。この水田作業車は、昇降動作可能に田植え等の水田植生作業を行う水田作業装置と、この水田作業装置と一体構成のフロート等を備えて構成される。このフロートは、その前後方向傾斜が検出可能に取付けられた平板状浮体であり、水田の植生盤面を均平整地するとともに、植生盤面の高さ位置を検出する。
【0003】
田植え等の圃場の往復作業走行においては、フロートで植生盤面を均平整地しつつ水田作業装置が植付作業を行う。このとき、フロートの傾斜角度等に基づいて水田作業装置の高さを昇降調節して植付け深さを調節する。往行から復行への折り返し地点でUターン旋回する旋回行程においては、水田作業装置の植付動作を停止するとともに上昇動作により水田作業装置とフロートとを植生盤面の上方の非作業高さ位置に保持して旋回走行に入り、機体が復行方向まで旋回すると水田作業装置とフロートを下降するとともに同水田作業装置を稼動することにより植付けを再開する。この一連の旋回操作を制御装置により機体の旋回動作と連動して自動処理することにより、オペレータの操作負担を軽減することができる。
【0004】
しかし、上記制御装置による一連の旋回自動処理においては、圃場の往復植え作業の畦際の機体旋回の際に走行車輪が機体を支持しつつ方向を急変し、走行車輪と接する水田底部が部分的に抉られて激しい凹凸を生じる場合があるので、水田作業装置による苗植付け深さを一定に確保することができず、したがって、圃場の畦際に近い部分の苗植付け作業に支障を来すという問題があった(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−335720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、植付部を適正に稼動することができる田植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、転向車輪(2)と後輪(3)とを備えて旋回走行可能な水田作業車(1)の旋回動作信号と、同水田作業車に昇降可能に搭載されて均平用のフロート(15)を備えた植付部(7)の高さ位置信号とを受け、機体の旋回動作と対応して植付部(7)の昇降調節と稼動を制御する制御処理部(22)を備える田植機において、後輪(3)を駆動する後輪伝動部(16)には、後輪車軸(3a)へ減速伝動する減速伝動部と、該減速伝動部よりも伝動上手側に設けた走行距離を算出するための回転センサ(16s)とを備え、旋回のためのハンドル操作又は植付切操作で走行の距離カウントを開始し、走行の距離カウントが所定の旋回走行距離に到達したときに植付部(7)を稼動制御する制御装置を設けたことを特徴とする田植機とする。
【0008】
請求項2の発明は、回転センサ(16s)を、左右の後輪(3)に対応して左右各別に設けたことを特徴とする請求項1に記載の田植機とする。
請求項3の発明は、植付部(7)を下降してから、走行の距離カウントが第一の旋回走行距離に到達したときにハンドル角度が規定値(b)未満であって、その後、距離カウントが第二の旋回走行距離に到達したことを条件に植付部(7)を稼動制御する構成としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の田植機とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によると、減速伝動部よりも伝動上手側に回転センサ(16s)設けたので、走行距離を高精度で算出することができ、植付部(7)を適正に稼動することができる。
【0010】
請求項2の発明によると、請求項1の発明の効果に加えて、回転センサ(16s)を、左右の後輪(3)に対応して左右各別に設けたので、走行距離を高精度で算出することができ、植付部(7)を適正に稼動することができる。
【0011】
請求項3の発明によると、請求項1又は請求項2の発明の効果に加えて、植付部(7)を下降してから、走行の距離カウントが第一の旋回走行距離に到達したときにハンドル角度が規定値(b)未満であって、その後、距離カウントが第二の旋回走行距離に到達したことを条件に植付部(7)を稼動制御する構成としたので、植付部(7)を適正に稼動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の水田作業車用制御装置を適用した田植機の側面図である。
【図2】伝動系平面図である。
【図3】後輪の伝動系統展開図である。
【図4】別構成の後輪伝動部の要部拡大透視図である。
【図5】図4の後輪伝動部の側面図である。
【図6】ターン選択スイッチである。
【図7】「自動ターン」(a)、「バック付ターン」(b)、「枕地調節ターン」(c)の各旋回構成図である。
【図8】制御処理部の入出力系統図である。
【図9】制御処理のフローチャートである。
【図10】ターン制御の詳細フローチャートである。
【図11】ターン制御の詳細フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態について、以下に図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の一例を図1の側面図に示す田植機について説明する。田植機1は、転向車輪2、2と後輪3、3とによって4輪駆動可能に機体を支持し、操舵ハンドル4、オペレータシート5、エンジン6、植付部(水田作業装置)7、伝動機8のほか、各種機器を制御する後述の制御装置を備える。
【0014】
植付部7は、機体後部に昇降部11を介して昇降可能に取付けた水田作業装置であり、図示せぬ植付クラッチを介して機体の走行に合わせて多条植え動作するほか、植付け動作と連動して苗を順次送り出す送出部13、薬肥を吐出する施肥部14、均平用のフロート部15…等を備える。フロート部15は植付部7に対して傾斜検出可能に取付けられた平板状浮体によるセンターフロート、サイドフロート等のフロートからなり、水田の植生盤面を均平整地するとともに、植生盤面の高さ位置を検出する。
【0015】
これらの搭載機器の伝動系については、たとえば、図2の伝動系平面図に示すように、伝動機8は、その導入部に付設した前後進無段変速機(HST)8vのプーリ軸8pにエンジン6の動力を受け、この動力を変速するとともに前輪系、後輪系、作業機系に動力を分ける。前輪系の構成は、伝動機8の左右に延出する筒状ケースに伝動軸を内設した前輪伝動部9、9に左右の前輪2,2のナックル2a,2aを転向可能に支持して構成する。後輪系の構成は、伝動機8に内設した左右のサイドクラッチ8c、8cを介して伝動機後方に延びる後輪伝動軸10,10から左右の後輪伝動部16,16を介して後輪3,3を各別に駆動する。作業機系の構成は、伝動機8の片側部(図例は右側)から作業機伝動軸17を介して後方の植付部7等の作業機を駆動する。
【0016】
上記前輪伝動部9,9の一方(図例は左側)には、ナックル2aの転向角度を検出する前輪角度センサ2bを設ける。後輪伝動部16,16は、図3の後輪の伝動系統展開図に示すように、後輪伝動軸10を受ける導入軸16fからベベルギヤ16bを介して減速軸18を設け、この減速軸18からさらに後輪車軸3aに減速伝動する。導入軸16fには回転センサ16sを設け、その積算処理によって走行距離を左右各別に算出する。この回転センサ16sによる走行距離は、ギヤケース16c内の径が最小のギヤ軸(回転数が最大の軸)に設けることにより、外部の泥を受けることなく、左右各別に高精度で算出することができる。その他、後輪伝動部16,16を支持する機体フレーム1aには、前後傾斜センサ1bを取付けて機体の前後方向の傾斜を検出する。
【0017】
また、別の構成例による後輪伝動部16,16の回転センサ3sは、図4の要部拡大透視平面図に示すように、後輪伝動軸10をベベルギヤ16bによって減速軸18に受け、さらに後輪車軸3aに減速伝動する最大歯数を有する大歯車3gの歯の側面に臨んでギヤケース16c内に配置する。この回転センサ3sは、検出が容易であり、かつ、センサ取付け部の加工が容易で簡易に構成することができるとともに、多数の歯によって回転検出精度を向上することができる。また、図5の側面図に示すように、後輪車軸3aより高位に回転センサ3sを配置することにより、ギヤケース16c内の潤滑油中に没することがなく、かつ、深田等における圃場への沈み込みをなくすことができる。
【0018】
田植機1の制御装置は、図6に示すターン切替スイッチ21の切替操作により、「バック付ターン」「自動ターン」「枕地調節ターン」の中から選択に応じたパターンの旋回処理を行うべく構成する。「自動ターン」は、図7(a)に示すように、旋回のためのハンドル操作に対応して植付を停止し、機体旋回に付帯して所定の手順で植付けを再開する旋回パターンであり、「バック付ターン」は、図7(b)に示すように、畦に近接した位置まで進んで停車するとともに植付けを停止し、その後の機体後進に続く機体旋回に付帯して植付けを再開するものであり、「枕地調節ターン」は、図7(c)に示すように、機体旋回の手前位置から植付けを停止してさらに前進し、続く機体旋回に付帯して植付けを再開するものである。
【0019】
制御装置において信号処理をする制御処理部22の入出力構成は、図8の系統図に示すように、旋回パターンを選択するためのターン切替スイッチ21の入力信号のほか、各種のスイッチ、センサの信号を受け、また、機体走行と植付部7動作用の各種機器のアクチュエータ類を制御する。
【0020】
具体的には、制御処理部22の入力側に、上記切替スイッチ21のほかに植付け自動動作選択用の植始め自動切替スイッチ23、植付け動作指令用のフィンガーレバースイッチ23a、植付部7の自動上昇選択用の植付部上昇モードスイッチ24、変速操作検知用のHSTレバー位置センサ25、操舵操作検知用のハンドル切れ角センサ26、時間調節用のタイムラグ調節ダイヤル27、ブレーキ操作検知用のブレーキペダルセンサ28、植付部7の下降タイミングを決めるn1設定ダイヤル29等を接続する。また、出力側に、昇降部11の油圧シリンダ11aを介して植付部7を昇降する電磁油圧バルブ11b、植付部7の植付け稼動用の植付クラッチ作動ソレノイド31、施肥機動作用の施肥クラッチ作動ソレノイド32、HSTレバー傾動用のHSTモータ33、後述のサイドフロートの傾斜検出を固定制御するサイドフロートストッパソレノイド36、植付深さを調節するための植付深さモータ37等を接続する。
【0021】
n1設定ダイヤル29は、「標準」を中心に「早」から「遅」までの所定範囲内で調節可能なダイヤルであり、その指示と対応するドライブシャフトの回転距離n1が植付部7の下降タイミングとして設定される。サイドフロートストッパソレノイド36は、フロート部15のサイドフロートの傾動を固定するストッパを進退駆動する。このストッパは、その進出位置でサイドフロートの傾斜を固定することにより、傾斜検出することなく、旋回途中の車輪跡を強制的に均平整地することができる。この均平整地のためのフロート固定動作は、植付部7が下降して植付動作を開始すると制御処理部22により解除され、以後は傾斜検出による昇降調節を行う。また、サイドフロートの支持部には上記植付深さモータ37を取付けて植付け深さを調節する。特に、旋回の後の直進する時に駆動反力が掛かり、機体が前上がりになることによって後部が下がり、植付部7による植付け深さが不適正になるので、植付け深さが浅くなるように制御する。
【0022】
上記制御処理部22による制御処理は、図9のフローチャートに示すように、各センサ値読込(S1)の後に、変速位置が植付速(S2)になり、かつ、ドライブシャフト回転数が所定値n3(S2a)になるまで待機する。この所定値n3は、圃場の直進距離と対応する回転距離であり、予め設定することにより、圃場端の畦際との接近を判定することができる。この条件判定により、ターン選択用の切替スイッチ21をチェック(S3)し、「バック付ターン」「自動ターン」「枕地調節ターン」の中から選択に応じたパターンの旋回処理を行う。
【0023】
各旋回パターンについて詳細に説明すると、「バック付ターン」は、HSTレバー位置センサ25の信号によりHSTレバーが中立(S11)で、主クラッチが「切」(S12)でないことを条件に、すなわち、HSTレバーで走行停止がなされたときに植付部「上昇」と植付クラッチ「切」とを指令(S13)する。
【0024】
この場合、HSTレバーの中立検出によって旋回制御の感知精度を向上することができる。また、図示せぬ接触センサ等による畦検知センサを機体前端部に設け、畦の側面に最接近した時の検知信号によりレバー傾動装置33を介してHSTレバーを中立に戻し、自動停車するように構成することにより、畦との衝突を防止して位置決め精度を向上し、以降の制御精度を確保することができる。
【0025】
主クラッチ「切」の場合は、所定時間以上の停車継続を検出した場合を含め、旋回処理を中止することにより、植付け途中の異常停車等に対応することができる。この時は、オペレータが後進操作を行うことにより、「バック付ターン」の処理に復帰するように構成する。また、植付部「上昇」は、機体の後進動作の前に行われることから、機体後進とともに植付部7を上昇する通常のバックリフト動作による機体後進の際に植付部7が上昇しきれずに表土に喰い込むという事態が回避されるので、フロート部15の破損を防止することができる。
【0026】
次いで、衝撃緩和のため所定時間の経過を挟んで所定距離後進(S14)する。この後進の際は、その時間的余裕により、走行方向切替によってオペレータが受けるショックを抑えるとともに、植付部7の上昇動作が遅い場合の表土への喰い込みを防止することができる。また、後進動作による車輪跡によって植え付け済みの圃場面が乱れ、植付けた苗を倒すことなく車輪跡を消すのは煩わしい手間を要するので、上記後進動作は、植え終わり位置までの範囲に規制する。
【0027】
所定時間の経過後に前進操作(S15)を待ってドライブシャフト回転による距離カウントを開始(S16)する。この前進操作に代えてHSTレバーの傾動指令によって機体を前進させるように構成することにより、操作性の向上を図ることができる。また、機体の前進開始までのタイムラグを設けることにより、オペレータが受けるショックを抑えることができ、さらに、タイムラグ調節ダイヤル27を設けることにより後進時と前進時について好みの時間に設定できるので、操作性を向上することができる。
【0028】
この前進開始に続く旋回のためのハンドル操作(S17)に応じて後述の左または右の所定のターン制御(S18,S18)により、機体の旋回動作に付帯して所定位置から植付けを再開する。所定のターン制御(S18)は、左右共通のサブルーチン処理によるものであり、他の旋回パターンにも組み込み可能に構成する。
【0029】
このように制御処理する「バック付ターン」の処理は、植付け条数の少ない田植機を使用する場合において、圃場の往復植付け作業において畦に近接した位置まで植付けすることができるので、植付部7の植付け幅に適合させるべく畦際部の周回植付け作業幅を小さくすることができる。なお、ブレーキペダルセンサ28の信号によって旋回処理の制御を中止するべく構成した場合には、異状に際して安全性を確保することができる。
【0030】
「自動ターン」は、旋回のための左右のハンドル操作(S21)に応じて上記同様に距離カウントを開始(S22,S22)するとともに、対応するターン制御(S18,S18)により所定位置から植付けを再開する。また、「枕地調節ターン」は、植付「切」操作(S31)を条件として上記同様に距離カウントを開始(S32)し、前進を続行した後に旋回のためのハンドル操作(S33)に応じてターン制御(S18,S18)をすることにより所定位置から植付けを再開する。
【0031】
サブルーチン処理による左または右のターン制御処理の詳細は、図10および図11のフローチャートに示すように、植付部7の上昇モードスイッチ24をチェック(S41)し、上昇モードでない場合にドライブシャフト回転数チェック(S42)によって所定の旋回走行距離n1になるまで待った上で、内外輪3,3の回転差(S42a)によって昇降感度を変更する。回転差が所定値以上でないときは昇降感度を「鈍感b」(S42b)とし、所定値以上であればHSTを戻し(またはスロットルを戻し)て減速(S42c)することにより機体沈没を回避して低速脱出し、次いで昇降感度を「鈍感a」(S42d)とする。「鈍感a」は「鈍感b」より昇降感度を鈍感すなわち低感度に設定することにより旋回抵抗の大きい土壌について圃場の凹凸を確実に均平することができる。昇降感度の変更に続いてサイドフロートストッパソレノイド36を作動(S42e)してサイドフロートの傾斜検出を固定する。
【0032】
昇降感度は、表土が硬い場合には前上がり姿勢としてセンターフロートの後部の支点寄りに作用力を受けることにより、検出感度を抑えて鈍感とし、逆に、表土が軟らかい場合には前下がり姿勢としてセンターフロートの支点から離れた前部寄りに作用力を受けることにより、検出感度を上げて敏感とする。これらフロートの設定の後、旋回操作の判定のためのハンドル角度が規定値a以上であることを条件に植付部の「下げ」を指令(S44)することによって水田作業装置を植付け動作位置に下降する。
【0033】
一方、上記チェック(S41)で上昇モードの場合は、植付部「上げ」を指令(S41a)する。ハンドル角度が規定値a以上(S43)でない場合は、警報出力(S43a)の上で処理を終了する。
【0034】
次いで、ドライブシャフト回転数チェック(S45)によって所定の旋回走行距離n2’になると、異常操作の判定のためのハンドル角度が規定値b以上でないこと(S46)を条件に施肥クラッチ「入」を指令(S47)する。ハンドル角度のチェック(S46)の結果が規定値b以上であれば、上記同様に、警報出力(S43a)の上で処理を終了する。
【0035】
続いて、植始め自動切替スイッチ23が「入」であること(S48)を条件に、ドライブシャフト回転数チェック(S49)によって所定の旋回走行距離n2になった時に、または、植始め自動切替スイッチ23のチェック(S48)で「入」でないときはフィンガレバーの操作(S48a)の時に、HSTを元に戻し(S49a)、サイドフロートストッパソレノイドを元に戻し(S49b)、直進植付けのために植付部の昇降を調節制御し、かつ、植付深さモータを「浅」側に所定量作動(S49c)することにより、直進開始時の深植えを防止する。
【0036】
次いで、植付「入」を指令(S50)するとともにドライブシャフト回転カウントクリア(S51)により新たに直進距離カウントを開始する。このカウントにより、次のターン位置までの間でハンドル操作をしても、植付部7を上昇することなく植付け走行することができる。また、上記植付け開始時にタイマをセット(S52)し、機体が安定する所定時間のタイマアップ(S52a)を待って昇降感度と植付深さモータを元に戻す(S53)ことにより、所定の植付深さを維持しつつ処理を終了する。上記タイマ処理(S52,S52a)は、ドライブシャフト回転カウントによる走行距離に基づく処理としても同様である。
【0037】
これらの一連の動作パターンに必要なすべての制御値、例えば、直進走行距離、直進走行方位、旋回時操向量、旋回時変速値は、エンジンキーを切っても記憶が維持され、その一方で全制御値をリセットするスイッチを設けることにより、田圃が変わった場合に新たな制御値の設定を可能に構成する。
【0038】
上述のように構成することにより、左または右のターン制御処理により、機体の旋回動作と連動して植付部7が対応動作することにより、旋回過程の整地を行うとともに、旋回終了後の直進によって植付けが再開される。この機体旋回の際の内外輪3,3の回転差は、スリップ量および泥の持ち上げ量の増加と対応しており、また、土壌の脆さに起因する旋回抵抗の増加との関連性に基づき、内外輪3,3の回転差が所定値以上のときは、昇降感度をより鈍感側に設定することによって圃場の凹凸を強力に均平でき、減速(S42c)することによって機体の沈没を防止することができる。
【0039】
この場合において、上記制御処理部22は、水田作業装置7を下降する旋回途中から所定の範囲に亘り応答感度を鈍感として水田作業装置7を昇降制御することにより、フロート15によって圃場を強力に均平しつつ、水田作業装置7の稼動によって水田作業するように制御することから、畦際における機体旋回によって圃場に荒れが生じた場合でも、所定の範囲をカバーするように圃場の凹凸を強力に均平してその水田作業を適正化することができ、その範囲以降は応答感度を敏感に戻すことにより通常の条件によって水田作業装置7が稼動される。したがって、機体旋回によって泥の塊が発生した場合にあっても、往復作業走行における苗植付け等の水田作業に支障を来すことなく、畦際部分の機体旋回による圃場の荒れに対して適正な水田作業を確保することができる。
【符号の説明】
【0040】
1:田植機(水田作業車)、2:前輪(転向車輪)、3:後輪、3a:後輪車軸、3g:大歯車、3s:回転センサ、7:植付部(水田作業装置)、10:後輪伝動軸、15:フロート部(フロート)、16:後輪伝動部、16b:ベベルギヤ、16f:導入軸、16s:回転センサ、18:減速軸、22:制御処理部、23:植始め自動切替スイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田における機体走行とともに自動的に苗植付け等の圃場作業をする田植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
旋回走行可能な機体に備えた水田作業装置により、機体走行とともに田植作業を行う水田作業車(田植機)において、特許文献1に示すように、機体の旋回走行動作と連動して水田作業装置の動作を制御するようにしたものが知られている。この水田作業車は、昇降動作可能に田植え等の水田植生作業を行う水田作業装置と、この水田作業装置と一体構成のフロート等を備えて構成される。このフロートは、その前後方向傾斜が検出可能に取付けられた平板状浮体であり、水田の植生盤面を均平整地するとともに、植生盤面の高さ位置を検出する。
【0003】
田植え等の圃場の往復作業走行においては、フロートで植生盤面を均平整地しつつ水田作業装置が植付作業を行う。このとき、フロートの傾斜角度等に基づいて水田作業装置の高さを昇降調節して植付け深さを調節する。往行から復行への折り返し地点でUターン旋回する旋回行程においては、水田作業装置の植付動作を停止するとともに上昇動作により水田作業装置とフロートとを植生盤面の上方の非作業高さ位置に保持して旋回走行に入り、機体が復行方向まで旋回すると水田作業装置とフロートを下降するとともに同水田作業装置を稼動することにより植付けを再開する。この一連の旋回操作を制御装置により機体の旋回動作と連動して自動処理することにより、オペレータの操作負担を軽減することができる。
【0004】
しかし、上記制御装置による一連の旋回自動処理においては、圃場の往復植え作業の畦際の機体旋回の際に走行車輪が機体を支持しつつ方向を急変し、走行車輪と接する水田底部が部分的に抉られて激しい凹凸を生じる場合があるので、水田作業装置による苗植付け深さを一定に確保することができず、したがって、圃場の畦際に近い部分の苗植付け作業に支障を来すという問題があった(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−335720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、植付部を適正に稼動することができる田植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、転向車輪(2)と後輪(3)とを備えて旋回走行可能な水田作業車(1)の旋回動作信号と、同水田作業車に昇降可能に搭載されて均平用のフロート(15)を備えた植付部(7)の高さ位置信号とを受け、機体の旋回動作と対応して植付部(7)の昇降調節と稼動を制御する制御処理部(22)を備える田植機において、後輪(3)を駆動する後輪伝動部(16)には、後輪車軸(3a)へ減速伝動する減速伝動部と、該減速伝動部よりも伝動上手側に設けた走行距離を算出するための回転センサ(16s)とを備え、旋回のためのハンドル操作又は植付切操作で走行の距離カウントを開始し、走行の距離カウントが所定の旋回走行距離に到達したときに植付部(7)を稼動制御する制御装置を設けたことを特徴とする田植機とする。
【0008】
請求項2の発明は、回転センサ(16s)を、左右の後輪(3)に対応して左右各別に設けたことを特徴とする請求項1に記載の田植機とする。
請求項3の発明は、植付部(7)を下降してから、走行の距離カウントが第一の旋回走行距離に到達したときにハンドル角度が規定値(b)未満であって、その後、距離カウントが第二の旋回走行距離に到達したことを条件に植付部(7)を稼動制御する構成としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の田植機とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によると、減速伝動部よりも伝動上手側に回転センサ(16s)設けたので、走行距離を高精度で算出することができ、植付部(7)を適正に稼動することができる。
【0010】
請求項2の発明によると、請求項1の発明の効果に加えて、回転センサ(16s)を、左右の後輪(3)に対応して左右各別に設けたので、走行距離を高精度で算出することができ、植付部(7)を適正に稼動することができる。
【0011】
請求項3の発明によると、請求項1又は請求項2の発明の効果に加えて、植付部(7)を下降してから、走行の距離カウントが第一の旋回走行距離に到達したときにハンドル角度が規定値(b)未満であって、その後、距離カウントが第二の旋回走行距離に到達したことを条件に植付部(7)を稼動制御する構成としたので、植付部(7)を適正に稼動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の水田作業車用制御装置を適用した田植機の側面図である。
【図2】伝動系平面図である。
【図3】後輪の伝動系統展開図である。
【図4】別構成の後輪伝動部の要部拡大透視図である。
【図5】図4の後輪伝動部の側面図である。
【図6】ターン選択スイッチである。
【図7】「自動ターン」(a)、「バック付ターン」(b)、「枕地調節ターン」(c)の各旋回構成図である。
【図8】制御処理部の入出力系統図である。
【図9】制御処理のフローチャートである。
【図10】ターン制御の詳細フローチャートである。
【図11】ターン制御の詳細フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態について、以下に図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の一例を図1の側面図に示す田植機について説明する。田植機1は、転向車輪2、2と後輪3、3とによって4輪駆動可能に機体を支持し、操舵ハンドル4、オペレータシート5、エンジン6、植付部(水田作業装置)7、伝動機8のほか、各種機器を制御する後述の制御装置を備える。
【0014】
植付部7は、機体後部に昇降部11を介して昇降可能に取付けた水田作業装置であり、図示せぬ植付クラッチを介して機体の走行に合わせて多条植え動作するほか、植付け動作と連動して苗を順次送り出す送出部13、薬肥を吐出する施肥部14、均平用のフロート部15…等を備える。フロート部15は植付部7に対して傾斜検出可能に取付けられた平板状浮体によるセンターフロート、サイドフロート等のフロートからなり、水田の植生盤面を均平整地するとともに、植生盤面の高さ位置を検出する。
【0015】
これらの搭載機器の伝動系については、たとえば、図2の伝動系平面図に示すように、伝動機8は、その導入部に付設した前後進無段変速機(HST)8vのプーリ軸8pにエンジン6の動力を受け、この動力を変速するとともに前輪系、後輪系、作業機系に動力を分ける。前輪系の構成は、伝動機8の左右に延出する筒状ケースに伝動軸を内設した前輪伝動部9、9に左右の前輪2,2のナックル2a,2aを転向可能に支持して構成する。後輪系の構成は、伝動機8に内設した左右のサイドクラッチ8c、8cを介して伝動機後方に延びる後輪伝動軸10,10から左右の後輪伝動部16,16を介して後輪3,3を各別に駆動する。作業機系の構成は、伝動機8の片側部(図例は右側)から作業機伝動軸17を介して後方の植付部7等の作業機を駆動する。
【0016】
上記前輪伝動部9,9の一方(図例は左側)には、ナックル2aの転向角度を検出する前輪角度センサ2bを設ける。後輪伝動部16,16は、図3の後輪の伝動系統展開図に示すように、後輪伝動軸10を受ける導入軸16fからベベルギヤ16bを介して減速軸18を設け、この減速軸18からさらに後輪車軸3aに減速伝動する。導入軸16fには回転センサ16sを設け、その積算処理によって走行距離を左右各別に算出する。この回転センサ16sによる走行距離は、ギヤケース16c内の径が最小のギヤ軸(回転数が最大の軸)に設けることにより、外部の泥を受けることなく、左右各別に高精度で算出することができる。その他、後輪伝動部16,16を支持する機体フレーム1aには、前後傾斜センサ1bを取付けて機体の前後方向の傾斜を検出する。
【0017】
また、別の構成例による後輪伝動部16,16の回転センサ3sは、図4の要部拡大透視平面図に示すように、後輪伝動軸10をベベルギヤ16bによって減速軸18に受け、さらに後輪車軸3aに減速伝動する最大歯数を有する大歯車3gの歯の側面に臨んでギヤケース16c内に配置する。この回転センサ3sは、検出が容易であり、かつ、センサ取付け部の加工が容易で簡易に構成することができるとともに、多数の歯によって回転検出精度を向上することができる。また、図5の側面図に示すように、後輪車軸3aより高位に回転センサ3sを配置することにより、ギヤケース16c内の潤滑油中に没することがなく、かつ、深田等における圃場への沈み込みをなくすことができる。
【0018】
田植機1の制御装置は、図6に示すターン切替スイッチ21の切替操作により、「バック付ターン」「自動ターン」「枕地調節ターン」の中から選択に応じたパターンの旋回処理を行うべく構成する。「自動ターン」は、図7(a)に示すように、旋回のためのハンドル操作に対応して植付を停止し、機体旋回に付帯して所定の手順で植付けを再開する旋回パターンであり、「バック付ターン」は、図7(b)に示すように、畦に近接した位置まで進んで停車するとともに植付けを停止し、その後の機体後進に続く機体旋回に付帯して植付けを再開するものであり、「枕地調節ターン」は、図7(c)に示すように、機体旋回の手前位置から植付けを停止してさらに前進し、続く機体旋回に付帯して植付けを再開するものである。
【0019】
制御装置において信号処理をする制御処理部22の入出力構成は、図8の系統図に示すように、旋回パターンを選択するためのターン切替スイッチ21の入力信号のほか、各種のスイッチ、センサの信号を受け、また、機体走行と植付部7動作用の各種機器のアクチュエータ類を制御する。
【0020】
具体的には、制御処理部22の入力側に、上記切替スイッチ21のほかに植付け自動動作選択用の植始め自動切替スイッチ23、植付け動作指令用のフィンガーレバースイッチ23a、植付部7の自動上昇選択用の植付部上昇モードスイッチ24、変速操作検知用のHSTレバー位置センサ25、操舵操作検知用のハンドル切れ角センサ26、時間調節用のタイムラグ調節ダイヤル27、ブレーキ操作検知用のブレーキペダルセンサ28、植付部7の下降タイミングを決めるn1設定ダイヤル29等を接続する。また、出力側に、昇降部11の油圧シリンダ11aを介して植付部7を昇降する電磁油圧バルブ11b、植付部7の植付け稼動用の植付クラッチ作動ソレノイド31、施肥機動作用の施肥クラッチ作動ソレノイド32、HSTレバー傾動用のHSTモータ33、後述のサイドフロートの傾斜検出を固定制御するサイドフロートストッパソレノイド36、植付深さを調節するための植付深さモータ37等を接続する。
【0021】
n1設定ダイヤル29は、「標準」を中心に「早」から「遅」までの所定範囲内で調節可能なダイヤルであり、その指示と対応するドライブシャフトの回転距離n1が植付部7の下降タイミングとして設定される。サイドフロートストッパソレノイド36は、フロート部15のサイドフロートの傾動を固定するストッパを進退駆動する。このストッパは、その進出位置でサイドフロートの傾斜を固定することにより、傾斜検出することなく、旋回途中の車輪跡を強制的に均平整地することができる。この均平整地のためのフロート固定動作は、植付部7が下降して植付動作を開始すると制御処理部22により解除され、以後は傾斜検出による昇降調節を行う。また、サイドフロートの支持部には上記植付深さモータ37を取付けて植付け深さを調節する。特に、旋回の後の直進する時に駆動反力が掛かり、機体が前上がりになることによって後部が下がり、植付部7による植付け深さが不適正になるので、植付け深さが浅くなるように制御する。
【0022】
上記制御処理部22による制御処理は、図9のフローチャートに示すように、各センサ値読込(S1)の後に、変速位置が植付速(S2)になり、かつ、ドライブシャフト回転数が所定値n3(S2a)になるまで待機する。この所定値n3は、圃場の直進距離と対応する回転距離であり、予め設定することにより、圃場端の畦際との接近を判定することができる。この条件判定により、ターン選択用の切替スイッチ21をチェック(S3)し、「バック付ターン」「自動ターン」「枕地調節ターン」の中から選択に応じたパターンの旋回処理を行う。
【0023】
各旋回パターンについて詳細に説明すると、「バック付ターン」は、HSTレバー位置センサ25の信号によりHSTレバーが中立(S11)で、主クラッチが「切」(S12)でないことを条件に、すなわち、HSTレバーで走行停止がなされたときに植付部「上昇」と植付クラッチ「切」とを指令(S13)する。
【0024】
この場合、HSTレバーの中立検出によって旋回制御の感知精度を向上することができる。また、図示せぬ接触センサ等による畦検知センサを機体前端部に設け、畦の側面に最接近した時の検知信号によりレバー傾動装置33を介してHSTレバーを中立に戻し、自動停車するように構成することにより、畦との衝突を防止して位置決め精度を向上し、以降の制御精度を確保することができる。
【0025】
主クラッチ「切」の場合は、所定時間以上の停車継続を検出した場合を含め、旋回処理を中止することにより、植付け途中の異常停車等に対応することができる。この時は、オペレータが後進操作を行うことにより、「バック付ターン」の処理に復帰するように構成する。また、植付部「上昇」は、機体の後進動作の前に行われることから、機体後進とともに植付部7を上昇する通常のバックリフト動作による機体後進の際に植付部7が上昇しきれずに表土に喰い込むという事態が回避されるので、フロート部15の破損を防止することができる。
【0026】
次いで、衝撃緩和のため所定時間の経過を挟んで所定距離後進(S14)する。この後進の際は、その時間的余裕により、走行方向切替によってオペレータが受けるショックを抑えるとともに、植付部7の上昇動作が遅い場合の表土への喰い込みを防止することができる。また、後進動作による車輪跡によって植え付け済みの圃場面が乱れ、植付けた苗を倒すことなく車輪跡を消すのは煩わしい手間を要するので、上記後進動作は、植え終わり位置までの範囲に規制する。
【0027】
所定時間の経過後に前進操作(S15)を待ってドライブシャフト回転による距離カウントを開始(S16)する。この前進操作に代えてHSTレバーの傾動指令によって機体を前進させるように構成することにより、操作性の向上を図ることができる。また、機体の前進開始までのタイムラグを設けることにより、オペレータが受けるショックを抑えることができ、さらに、タイムラグ調節ダイヤル27を設けることにより後進時と前進時について好みの時間に設定できるので、操作性を向上することができる。
【0028】
この前進開始に続く旋回のためのハンドル操作(S17)に応じて後述の左または右の所定のターン制御(S18,S18)により、機体の旋回動作に付帯して所定位置から植付けを再開する。所定のターン制御(S18)は、左右共通のサブルーチン処理によるものであり、他の旋回パターンにも組み込み可能に構成する。
【0029】
このように制御処理する「バック付ターン」の処理は、植付け条数の少ない田植機を使用する場合において、圃場の往復植付け作業において畦に近接した位置まで植付けすることができるので、植付部7の植付け幅に適合させるべく畦際部の周回植付け作業幅を小さくすることができる。なお、ブレーキペダルセンサ28の信号によって旋回処理の制御を中止するべく構成した場合には、異状に際して安全性を確保することができる。
【0030】
「自動ターン」は、旋回のための左右のハンドル操作(S21)に応じて上記同様に距離カウントを開始(S22,S22)するとともに、対応するターン制御(S18,S18)により所定位置から植付けを再開する。また、「枕地調節ターン」は、植付「切」操作(S31)を条件として上記同様に距離カウントを開始(S32)し、前進を続行した後に旋回のためのハンドル操作(S33)に応じてターン制御(S18,S18)をすることにより所定位置から植付けを再開する。
【0031】
サブルーチン処理による左または右のターン制御処理の詳細は、図10および図11のフローチャートに示すように、植付部7の上昇モードスイッチ24をチェック(S41)し、上昇モードでない場合にドライブシャフト回転数チェック(S42)によって所定の旋回走行距離n1になるまで待った上で、内外輪3,3の回転差(S42a)によって昇降感度を変更する。回転差が所定値以上でないときは昇降感度を「鈍感b」(S42b)とし、所定値以上であればHSTを戻し(またはスロットルを戻し)て減速(S42c)することにより機体沈没を回避して低速脱出し、次いで昇降感度を「鈍感a」(S42d)とする。「鈍感a」は「鈍感b」より昇降感度を鈍感すなわち低感度に設定することにより旋回抵抗の大きい土壌について圃場の凹凸を確実に均平することができる。昇降感度の変更に続いてサイドフロートストッパソレノイド36を作動(S42e)してサイドフロートの傾斜検出を固定する。
【0032】
昇降感度は、表土が硬い場合には前上がり姿勢としてセンターフロートの後部の支点寄りに作用力を受けることにより、検出感度を抑えて鈍感とし、逆に、表土が軟らかい場合には前下がり姿勢としてセンターフロートの支点から離れた前部寄りに作用力を受けることにより、検出感度を上げて敏感とする。これらフロートの設定の後、旋回操作の判定のためのハンドル角度が規定値a以上であることを条件に植付部の「下げ」を指令(S44)することによって水田作業装置を植付け動作位置に下降する。
【0033】
一方、上記チェック(S41)で上昇モードの場合は、植付部「上げ」を指令(S41a)する。ハンドル角度が規定値a以上(S43)でない場合は、警報出力(S43a)の上で処理を終了する。
【0034】
次いで、ドライブシャフト回転数チェック(S45)によって所定の旋回走行距離n2’になると、異常操作の判定のためのハンドル角度が規定値b以上でないこと(S46)を条件に施肥クラッチ「入」を指令(S47)する。ハンドル角度のチェック(S46)の結果が規定値b以上であれば、上記同様に、警報出力(S43a)の上で処理を終了する。
【0035】
続いて、植始め自動切替スイッチ23が「入」であること(S48)を条件に、ドライブシャフト回転数チェック(S49)によって所定の旋回走行距離n2になった時に、または、植始め自動切替スイッチ23のチェック(S48)で「入」でないときはフィンガレバーの操作(S48a)の時に、HSTを元に戻し(S49a)、サイドフロートストッパソレノイドを元に戻し(S49b)、直進植付けのために植付部の昇降を調節制御し、かつ、植付深さモータを「浅」側に所定量作動(S49c)することにより、直進開始時の深植えを防止する。
【0036】
次いで、植付「入」を指令(S50)するとともにドライブシャフト回転カウントクリア(S51)により新たに直進距離カウントを開始する。このカウントにより、次のターン位置までの間でハンドル操作をしても、植付部7を上昇することなく植付け走行することができる。また、上記植付け開始時にタイマをセット(S52)し、機体が安定する所定時間のタイマアップ(S52a)を待って昇降感度と植付深さモータを元に戻す(S53)ことにより、所定の植付深さを維持しつつ処理を終了する。上記タイマ処理(S52,S52a)は、ドライブシャフト回転カウントによる走行距離に基づく処理としても同様である。
【0037】
これらの一連の動作パターンに必要なすべての制御値、例えば、直進走行距離、直進走行方位、旋回時操向量、旋回時変速値は、エンジンキーを切っても記憶が維持され、その一方で全制御値をリセットするスイッチを設けることにより、田圃が変わった場合に新たな制御値の設定を可能に構成する。
【0038】
上述のように構成することにより、左または右のターン制御処理により、機体の旋回動作と連動して植付部7が対応動作することにより、旋回過程の整地を行うとともに、旋回終了後の直進によって植付けが再開される。この機体旋回の際の内外輪3,3の回転差は、スリップ量および泥の持ち上げ量の増加と対応しており、また、土壌の脆さに起因する旋回抵抗の増加との関連性に基づき、内外輪3,3の回転差が所定値以上のときは、昇降感度をより鈍感側に設定することによって圃場の凹凸を強力に均平でき、減速(S42c)することによって機体の沈没を防止することができる。
【0039】
この場合において、上記制御処理部22は、水田作業装置7を下降する旋回途中から所定の範囲に亘り応答感度を鈍感として水田作業装置7を昇降制御することにより、フロート15によって圃場を強力に均平しつつ、水田作業装置7の稼動によって水田作業するように制御することから、畦際における機体旋回によって圃場に荒れが生じた場合でも、所定の範囲をカバーするように圃場の凹凸を強力に均平してその水田作業を適正化することができ、その範囲以降は応答感度を敏感に戻すことにより通常の条件によって水田作業装置7が稼動される。したがって、機体旋回によって泥の塊が発生した場合にあっても、往復作業走行における苗植付け等の水田作業に支障を来すことなく、畦際部分の機体旋回による圃場の荒れに対して適正な水田作業を確保することができる。
【符号の説明】
【0040】
1:田植機(水田作業車)、2:前輪(転向車輪)、3:後輪、3a:後輪車軸、3g:大歯車、3s:回転センサ、7:植付部(水田作業装置)、10:後輪伝動軸、15:フロート部(フロート)、16:後輪伝動部、16b:ベベルギヤ、16f:導入軸、16s:回転センサ、18:減速軸、22:制御処理部、23:植始め自動切替スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転向車輪(2)と後輪(3)とを備えて旋回走行可能な水田作業車(1)の旋回動作信号と、同水田作業車に昇降可能に搭載されて均平用のフロート(15)を備えた植付部(7)の高さ位置信号とを受け、機体の旋回動作と対応して植付部(7)の昇降調節と稼動を制御する制御処理部(22)を備える田植機において、後輪(3)を駆動する後輪伝動部(16)には、後輪車軸(3a)へ減速伝動する減速伝動部と、該減速伝動部よりも伝動上手側に設けた走行距離を算出するための回転センサ(16s)とを備え、旋回のためのハンドル操作又は植付切操作で走行の距離カウントを開始し、走行の距離カウントが所定の旋回走行距離に到達したときに植付部(7)を稼動制御する制御装置を設けたことを特徴とする田植機。
【請求項2】
回転センサ(16s)を、左右の後輪(3)に対応して左右各別に設けたことを特徴とする請求項1に記載の田植機。
【請求項3】
植付部(7)を下降してから、走行の距離カウントが第一の旋回走行距離に到達したときにハンドル角度が規定値(b)未満であって、その後、距離カウントが第二の旋回走行距離に到達したことを条件に植付部(7)を稼動制御する構成としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の田植機。
【請求項1】
転向車輪(2)と後輪(3)とを備えて旋回走行可能な水田作業車(1)の旋回動作信号と、同水田作業車に昇降可能に搭載されて均平用のフロート(15)を備えた植付部(7)の高さ位置信号とを受け、機体の旋回動作と対応して植付部(7)の昇降調節と稼動を制御する制御処理部(22)を備える田植機において、後輪(3)を駆動する後輪伝動部(16)には、後輪車軸(3a)へ減速伝動する減速伝動部と、該減速伝動部よりも伝動上手側に設けた走行距離を算出するための回転センサ(16s)とを備え、旋回のためのハンドル操作又は植付切操作で走行の距離カウントを開始し、走行の距離カウントが所定の旋回走行距離に到達したときに植付部(7)を稼動制御する制御装置を設けたことを特徴とする田植機。
【請求項2】
回転センサ(16s)を、左右の後輪(3)に対応して左右各別に設けたことを特徴とする請求項1に記載の田植機。
【請求項3】
植付部(7)を下降してから、走行の距離カウントが第一の旋回走行距離に到達したときにハンドル角度が規定値(b)未満であって、その後、距離カウントが第二の旋回走行距離に到達したことを条件に植付部(7)を稼動制御する構成としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の田植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−51967(P2013−51967A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−248379(P2012−248379)
【出願日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【分割の表示】特願2010−16867(P2010−16867)の分割
【原出願日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【分割の表示】特願2010−16867(P2010−16867)の分割
【原出願日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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