説明

画像レーダ装置

【課題】画像レーダ装置において誤差の少ない高さの分布図を得る。
【解決手段】観測対象領域の地形情報を予め格納する地形データ格納手段と、地形情報に基づいて観測対象領域の傾斜を算出する傾斜算出手段と、傾斜算出手段で算出された傾斜を持つ平面上の散乱点に対応する平面位相を算出する平面位相算出手段と、位相差算出手段で算出された2枚のレーダ画像の位相差から平面位相算出手段で算出された平面位相を減ずる位相補償手段と、位相補償された位相差の折り返しを開いて繋ぎ合わせる位相アンラップ手段と、繋ぎ合わせた位相差を地形の高さに換算して観測対象領域の高さの分布図を得る位相・高さ変換手段と、算出された高さの分布図に、傾斜算出手段で算出された観測対象領域の傾斜を加える高さ補正手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地形を観測する画像レーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーダの受信信号の位相はアンテナから散乱点までの距離に比例している。インターフェロメトリック合成開口レーダあるいは干渉型合成開口レーダと呼ばれる画像レーダ装置は、この原理を利用して、電波入射角度が若干異なる条件で2枚のレーダ画像を取得し、両レーダ画像の位相差に基づいて地形の高さの測定を行っている(例えば特許文献1参照)。図8は、地形観測のジオメトリであるが、仮想的な水平面19に対して傾斜角20を持つ地形の観測対象領域18をレーダプラットフォーム16から観測する状態を仮想的に表している。レーダプラットフォーム16は等速直線運動しており、これに搭載されたアンテナ17aまたは17bにより、速度方向と直交する方向に電波を照射して観測対象領域18を観測する。その観測対象領域18からの反射波を2つのアンテナ17aおよび17bで受信し、それぞれの受信信号から観測対象領域18に関する2枚のレーダ画像を得る。これは合成開口レーダとして広く知られている技術であり、画像の電波伝播方向の軸をレンジ、プラットフォームの速度方向の軸をアジマスと呼ぶ。
レーダ装置では、上記2枚のレーダ画像に対して観測処理を行うが、その際得られるインターフェログラム、すなわち同一領域を観測した2枚のレーダ画像の位相差を表す模式図を図9に示す。横軸はレンジ、縦軸はアジマスである。また、濃淡はゼロから2πラジアンの位相差を表している。(a)と(b)は地形の傾斜角がゼロである場合、また(c)は地形の傾斜角がゼロでない場合のインターフェログラムである。
【0003】
特許文献1に掲載されたレーダ装置の場合、まずレジストレーション手段により、それぞれのアンテナ17a,17bの受信信号から得られた2枚のレーダ画像について、レンジとアジマスのずれ、および分解能の差を補償して、同一の散乱点が画像の同一画素に現れるように調整する。次に位相差算出手段により、調整された2枚の画像の位相差の算出を行い、その出力として2つのアンテナ17a,17bから観測対象領域18上の各散乱点までの距離差に応じた位相差、例えば図9(a)を得る。次に、平面位相除去手段により、観測対象領域18が水平面19である場合を仮定して位相差を計算し、これを上記位相差算出手段で算出された位相差(図9(a))から差し引く。すると、図9(b)のような地形の高さに応じた位相差が得られるので、これに基づいて地形の起伏を計算できることが理解される。しかし、図9(b)に示される位相差は、ゼロから2πラジアンの範囲で折り返した値しか観測できない。そこで、位相アンラップ(Unwrap)手段により、折り返しを開いて繋ぎ合わせた位相差にするアンラップ操作を行う。この方法については様々なものが知られている。最後に、位相・高さ変換手段を用いて、折り返しを開いた位相差を高さに変換して高さの分布図を得る。
【0004】
【特許文献1】特開2004−191053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、従来のレーダ装置は、図8における観測対象領域18の高さの分布図を得るために、観測対象領域18が水平面19である場合を仮定して位相差を計算し、これを散乱点までの距離差に応じた位相差から差し引いて地形の高さに応じた位相差を求めている。このため、観測対象領域18が傾いている場合には、地形の高さに応じた位相差は、例えば図9(c)のようになる。この場合、図9(c)の左側、すなわち地形の凸部のプラットフォーム側の斜面では、図9(b)の斜面と比較して、等位相差線の密度が高くなるという現象が発生する。この現象は、雑音環境下において位相アンラップ手段の動作に誤りを発生させ、その結果、位相・高さ変換手段で生成した高さの分布図に誤差が発生するという問題がある。
【0006】
この発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、誤差の少ない高さの分布図を得る画像レーダ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る画像レーダ装置は、観測対象領域からの反射波の入射角度が若干異なる条件で2枚のレーダ画像を取得し、両レーダ画像の位相差に基づいて地形の高さの測定を行う画像レーダ装置において、入力される2枚のレーダ画像を、同一の散乱点が画像の同一画素に現れるように調整するレジストレーション手段と、調整された2枚のレーダ画像の位相差を算出する位相差算出手段と、観測対象領域の地形情報を予め格納する地形データ格納手段と、地形情報に基づいて観測対象領域の傾斜を算出する傾斜算出手段と、傾斜算出手段で算出された傾斜を持つ平面上の散乱点に対応する平面位相を算出する平面位相算出手段と、位相差算出手段で算出された2枚のレーダ画像の位相差から平面位相算出手段で算出された平面位相を減ずる位相補償手段と、位相補償された位相差の折り返しを開いて繋ぎ合わせる位相アンラップ手段と、繋ぎ合わせた位相差を地形の高さに換算して観測対象領域の高さの分布図を得る位相・高さ変換手段と、算出された高さの分布図に、傾斜算出手段で算出された観測対象領域の傾斜を加える高さ補正手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、2枚のレーダ画像の位相差から平面位相を減じることで、地形が傾斜していない場合のインターフェログラムと同等に、等位相線の間隔が密になる状況を避けることができる。そのため、位相アンラップ処理は誤り無く行うことができ、観測対象領域の地形が傾斜している場合であっても、誤差の少ない高さの分布図を得ることを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による画像レーダ装置の機能構成を示すブロック図である。
図1において、レジストレーション手段2は、観測対象領域からの反射波の入射角度が若干異なる条件で取得した2枚のレーダ画像を、同一の散乱点が画像の同一画素に現れるように調整する手段である。位相差算出手段3は、調整された2枚のレーダ画像の位相差を算出する手段である。地形データ格納手段11は、観測対象領域の地形情報を予め格納する手段である。傾斜算出手段10は、地形データ格納手段11の地形情報に基づいて観測対象領域の傾斜を算出する手段である。平面位相算出手段9は、傾斜算出手段10で算出された傾斜を持つ平面上の散乱点に対応する位相を算出する手段である。位相補償手段8は、位相差算出手段で算出された2枚のレーダ画像の位相差から平面位相算出手段9で算出された平面位相を減ずる手段である。位相アンラップ手段5は、位相補償された位相差の折り返しを開いて繋ぎ合わせる手段である。位相・高さ変換手段6は、繋ぎ合わせた位相差を地形の高さに換算して観測対象領域の高さの分布図を得る手段である。高さ補正手段7は、算出された高さの分布図に、傾斜算出手段10で算出された傾斜を加えて補正する手段である。なお、上記手段のうち、2,3,5,6の手段は従来のレーダ装置で使用しているものと同じタイプである。
【0010】
図2はこの発明の画像レーダ装置に係る同一領域を観測した2枚のレーダ画像の位相差を表す模式図である。図2(a)は地形が傾斜していた場合の位相差算出手段3で算出された位相差、図2(c)は位相補償手段8が出力する位相差、図2(b)は平面位相算出手段9が出力する位相をそれぞれ表す。それぞれのインターフェログラムにおいて、横軸はレンジ、縦軸はアジマスである。また、濃淡はゼロから2πラジアンの位相差を表している。
【0011】
次に、動作について説明する。
図8に示すように、この画像レーダ装置は、レーダプラットフォーム16に搭載されたアンテナ17aまたは17bにより、等速直線運動している状態で、速度方向と直交する方向に電波を照射し、観測対象領域18からの反射波を2つのアンテナ17a,17bでそれぞれ受信し、各受信信号から観測対象領域18に関する2枚のレーダ画像を得る。なお、このレーダ画像を得るための前段の処理は周知であるので、ここでは省略する。レジストレーション手段2では、得られた2枚のレーダ画像に対して、レンジとアジマスのずれ、および分解能の差を補償して、同一の散乱点が画像の同一画素に現れるように調整する。位相差算出手段3では、レジストレーション手段2で調整された2枚の画像の位相差を算出して、その出力として2つのアンテナ17a,17bから観測対象領域18上の各散乱点までの距離差に応じた位相差を得る。この位相差は模式的に図2(a)のように表される。
【0012】
地形データ格納手段11には、観測対象領域18の地形情報、例えば空間分解能の粗い地形図、あるいはいくつかの地点の緯度・経度および標高などのデータを予め収集して蓄えておく。傾斜算出手段10では、地形データ格納手段11の地形情報に、例えば最小二乗法で仮想的な平面を当てはめ、あるいは傾斜の平均値あるいは最頻値を算出するなどして、地形の代表的な傾きと高さのオフセット値を求める。次に、平面位相算出手段9では、傾斜算出手段10で算出された傾斜を持つ平面上の散乱点に対応する位相差(この位相差を以降、平面位相と呼ぶ。)を算出する。この平面位相は模式的に図2(b)のように表される。この平面位相の算出処理動作を図3により説明する。図3は、図8のジオメトリのレンジ方向の断面を示したもので、26は仮想的な平面、27はその上の散乱点である。このとき、散乱点27に対応する平面位相は次式で求めることができる。
【数1】

但し、ra はアンテナ17aと散乱点27の距離、rb はアンテナ17bと散乱点27の距離、λは電波の波長である。
【0013】
位相補償手段8では、位相差算出手段3で算出された2枚のレーダ画像の位相差から平面位相算出手段9で求めた平面位相を減じる。この処理は、図2(a)から図2(b)を差し引いて図2(c)を得ることである。したがって、位相補償手段8の出力(図2(c))としては、地形の傾斜に相当する位相差が無く、図9(b)に示した地形が傾斜していない場合のインターフェログラムと同等の結果を得ることができる。したがって、等位相線の間隔が密になる状況を避けることができるので、位相アンラップ手段5は位相補償手段8で補償された位相差の折り返しを開き誤り無く繋ぎ合わせることができる。位相・高さ変換手段6では、位相アンラップ手段5で繋ぎ合わせた位相差を高さに変換し、観測対象領域の高さの分布図を出力として得る。しかし、この結果には地形の傾斜が反映されていないので、補正する必要がある。そのため、高さ補正手段7において、位相・高さ変換手段6で算出された観測対象領域の高さの分布図に、傾斜算出手段10で算出された観測対象領域の傾斜を加えてやる。
【0014】
以上のように、この実施の形態1によれば、2枚のレーダ画像の位相差から平面位相を減じることで、地形が傾斜していない場合のインターフェログラムと同等に、等位相線の間隔が密になる状況を避けることができるため、位相アンラップ処理において誤り無く位相差を繋ぎ合わせることができる。したがって、観測対象領域の地形が傾斜している場合であっても、誤差の少ない高さの分布図を得ることができる。
なお、以上の説明では、地形の傾斜を平面として扱ったが、曲面であっても同様の効果を得られることは明らかである。また、画像を分割して多数の平面として扱うことももちろん可能である。これらのことは、以降の各実施の形態においても同様である。
【0015】
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2による画像レーダ装置の機能構成を示すブロック図である。図において、実施の形態1の図1に相当する部分には同一符号を付し、その説明は原則として省略する。この実施の形態2では、実施の形態1の地形データ格納手段11と傾斜算出手段10の代わりに、傾斜推定手段14を設けた構成を持つ。
図2(a)からも分かるように、起伏が局所的である地形の場合には、地形の傾斜により生じた位相差をインターフェログラムから推定することが可能である。そこで、傾斜推定手段14では、位相差算出手段3で算出される2枚のレーダ画像の位相差に基づいて、観測対象領域の地形の傾斜を推定する。例えば、画像の一部のインターフェログラムを抜き出して、これを地形の傾斜に換算して全体の領域に適用する。あるいは、インターフェログラムの位相をレンジ方向で微分して、その平均あるいは最頻値を求め、傾斜に換算するようにしても良い。
【0016】
以上のように、実施の形態2によれば、傾斜推定手段14で推定した観測対象領域の傾斜を用いて、平面位相算出手段9が位相補償手段8で使用する平面位相を算出し、また高さ補正手段7が地形の高さを補正するようにしたので、実施の形態1のような収集に手間を要する地形データを必要とせず、実施の形態1と同様に誤差の少ない高さの分布図を得ることができる。
【0017】
実施の形態3.
図5はこの発明の実施の形態3による画像レーダ装置の機能構成を示すブロック図である。図において、上記実施の形態1の図1に相当する部分には同一符号を付し、その説明は原則として省略する。この実施の形態3では、上記実施の形態1の地形データ格納手段11の代わりにレーダ散乱強度データベース29を設け、傾斜算出手段10の代わりに傾斜推定手段142を設けた構成を持つ。
電波の反射率は、地表面の状態(被覆)と周波数、および入射角によって変化する。これらの代表的な値については、観測された値あるいは理論値が公開されている。逆に、被覆と周波数が既知である場合には、電波の反射率に基づいて入射角を推定することが可能である。そこで、この実施の形態3では、レーダ散乱強度データベース29に、土地被覆と周波数、および入射角毎の電波の反射率、すなわち後方散乱係数を予め蓄えておく。傾斜推定手段142では、レジストレーション手段2から得られるレーダ画像の強度を、レーダ散乱強度データベース29を参照して後方散乱係数に換算し、算出した後方散乱係数に基づいて入射角を推定する。さらに、推定した入射角から観測対象領域の傾斜を算出する。その際、画像の強度は、1枚のレーダ画像の振幅や電力に基づいて求めても良いし、あるいは2枚のレーダ画像から求めても良い。
【0018】
以上のように、この実施の形態3によれば、レーダ画像の強度に基づいて推定した観測対象領域の傾斜を用いて、平面位相算出手段9が位相補償手段8で使用する平面位相を算出し、また高さ補正手段7が地形の高さを補正するようにしたので、実施の形態1のように収集に手間を要する地形データを必要とせず、実施の形態1と同様に誤差の少ない高さの分布図を得ることができる。
【0019】
実施の形態4.
図6はこの発明の実施の形態4による画像レーダ装置の機能構成を示すブロック図である。図において、上記実施の形態1の図1に相当する部分には同一符号を付し、その説明は原則として省略する。この実施の形態4では、上記実施の形態1の高さ補正手段7を用いず、代わりに、位相アンラップ手段5と位相・高さ変換手段6の間に位相補正手段12を設けた構成を持つ。
位相補正手段12では、位相アンラップ手段5により折り返しを開いて繋ぎ合わせた位相差に、平面位相算出手段9で算出された平面位相を加えて補正する。
上記実施の形態1では、地形の高さを求めた後で傾斜を補正するようにしたものであるが、この実施の形態4では、地形の高さを求める前に平面位相を加えることで傾斜を補正している。この場合も、実施の形態1と同等な誤差の少ない高さの分布図を得ることができる。
【0020】
実施の形態5.
図7はこの発明の実施の形態5による画像レーダ装置の他の機能構成を示すブロック図である。図において、上記実施の形態4の図6に相当する部分には同一符号を付し、その説明は原則として省略する。この実施の形態5では、上記実施の形態4の地形データ格納手段、傾斜算出手段10および平面位相算出手段9の代わりに、平面位相推定手段13を設けた構成を持つ。
平面位相推定手段13では、位相差算出手段3で算出された2枚のレーダ画像の位相差に基づいて、観測対象領域の傾斜を持つ平面上の散乱点に対応する平面位を推定する。例えば、一部の領域のインターフェログラムを抜き出して、これを地形の傾斜により生じた位相差として全体の領域に適用する。あるいは、インターフェログラムの位相をレンジ方向で微分して、その平均あるいは最頻値を求めても良い。
以上のように、この実施の形態5によれば、平面位相推定手段13で推定した地形の傾斜に基づく平面位相を用いて、位相補償手段8がレーダ画像の位相差を補償し、また位相補正手段12が位相アンラップ手段5により繋ぎ合わせた位相差を補正することで、上記実施の形態1や実施の形態4のような収集に手間を要する地形データを必要とせず、これらの実施の形態と同様に誤差の少ない高さの分布図を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施の形態1による画像レーダ装置の機能構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の画像レーダ装置に係る同一領域を観測した2枚のレーダ画像の位相差を表す模式図である。
【図3】地形観測のジオメトリのレンジ方向の断面図である。
【図4】この発明の実施の形態2による画像レーダ装置の機能構成を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態3による画像レーダ装置の機能構成を示すブロック図である。
【図6】この発明の実施の形態4による画像レーダ装置の他の機能構成を示すブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態5による画像レーダ装置の機能構成を示すブロック図である。
【図8】地形観測の状況のジオメトリを示す説明図である。
【図9】従来のレーダ装置に係る同一領域を観測した2枚のレーダ画像の位相差を表す模式図である。
【符号の説明】
【0022】
2 レジストレーション手段、3 位相差算出手段、5 位相アンラップ手段、6 位相・高さ変換手段、7 高さ補正手段、8 位相補償手段、9 平面位相算出手段、10 傾斜算出手段、11 地形データ格納手段、12 位相補正手段、13 平面位相推定手段、14,142 傾斜推定手段、29 レーダ散乱強度データベース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測対象領域からの反射波の入射角度が若干異なる条件で2枚のレーダ画像を取得し、両レーダ画像の位相差に基づいて地形の高さの測定を行う画像レーダ装置において、
入力される2枚のレーダ画像を、同一の散乱点が画像の同一画素に現れるように調整するレジストレーション手段と、前記調整された2枚のレーダ画像の位相差を算出する位相差算出手段と、
観測対象領域の地形情報を予め格納する地形データ格納手段と、
前記地形情報に基づいて観測対象領域の傾斜を算出する傾斜算出手段と、
前記傾斜算出手段で算出された傾斜を持つ平面上の散乱点に対応する平面位相を算出する平面位相算出手段と、
前記位相差算出手段で算出された2枚のレーダ画像の位相差から前記平面位相算出手段で算出された平面位相を減ずる位相補償手段と、
位相補償された位相差の折り返しを開いて繋ぎ合わせる位相アンラップ手段と、
繋ぎ合わせた位相差を地形の高さに換算して観測対象領域の高さの分布図を得る位相・高さ変換手段と、
算出された高さの分布図に、前記傾斜算出手段で算出された観測対象領域の傾斜を加える高さ補正手段を備えたことを特徴とする画像レーダ装置。
【請求項2】
位相差算出手段で算出される2枚のレーダ画像の位相差に基づいて、観測対象領域の地形の傾斜を推定する傾斜推定手段を、地形データ格納手段と傾斜算出手段の代わりに備え、
平面位相算出手段は、前記傾斜推定手段で推定された傾斜を持つ平面上の散乱点に対応する平面位相を算出し、
高さ補正手段は、位相・高さ変換手段で算出された高さの分布図に、前記傾斜推定手段で推定された観測対象領域の傾斜を加えて補正することを特徴とする請求項1記載の画像レーダ装置。
【請求項3】
後方散乱係数に関連したデータを格納するレーダ散乱強度データベースと、
レジストレーション手段から得られるレーダ画像の強度に基づいて前記レーダ散乱強度データベースを参照して後方散乱係数に変換し、変換した後方散乱係数に基づいて入射角を推定し、当該推定入射角から観測対象領域の傾斜を算出する傾斜推定手段を、地形データ格納手段と傾斜算出手段の代わりに備え、
平面位相算出手段は、前記傾斜推定手段で推定された傾斜を持つ平面上の散乱点に対応する平面位相を算出し、
高さ補正手段は、位相・高さ変換手段で算出された高さの分布図に、前記傾斜推定手段で推定された観測対象領域の傾斜を加えて補正することを特徴とする請求項1記載の画像レーダ装置。
【請求項4】
観測対象領域からの反射波の入射角度が若干異なる条件で2枚のレーダ画像を取得し、両レーダ画像の位相差に基づいて地形の高さの測定を行う画像レーダ装置において、
入力される2枚のレーダ画像を、同一の散乱点が画像の同一画素に現れるように調整するレジストレーション手段と、前記調整された2枚のレーダ画像の位相差を算出する位相差算出手段と、
観測対象領域の地形情報を予め格納する地形データ格納手段と、
前記地形情報に基づいて観測対象領域の傾斜を算出する傾斜算出手段と、
前記傾斜算出手段で算出された傾斜を持つ平面上の散乱点に対応する平面位相を算出する平面位相算出手段と、
前記位相差算出手段で算出された2枚のレーダ画像の位相差から前記平面位相算出手段で算出された平面位相を減ずる位相補償手段と、
位相補償された位相差の折り返しを開いて繋ぎ合わせる位相アンラップ手段と、
繋ぎ合わせた位相差に、前記平面位相算出手段で算出された平面位相を加える位相補正手段と、
前記位相補正手段で補正された位相差を地形の高さに換算して観測対象領域の高さの分布図を得る位相・高さ変換手段を備えたことを特徴とする画像レーダ装置。
【請求項5】
位相差算出手段3で算出された2枚のレーダ画像の位相差に基づいて観測対象領域の傾斜を持つ平面上の散乱点に対応する平面位相を推定する平面位相推定手段を、地形データ格納手段、傾斜算出手段および平面位相算出手段の代わりに備え、
位相補償手段は、前記位相差算出手段で算出された2枚のレーダ画像の位相差から前記平面位相推定手段で推定された平面位相を減じ、
位相補正手段は、位相アンラップ手段で繋ぎ合わせた位相差に、前記平面位相推定手段で推定された平面位相を加えて補正することを特徴とする請求項4記載の画像レーダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−322383(P2007−322383A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−156276(P2006−156276)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】