画像入力装置
【課題】光量調整手段として多段絞りとNDフィルタを併用した画像入力装置において、NDフィルタを用いた光量調整の機会を少なくして、コストの低減と、NDフィルタ駆動機構の小型化による鏡胴の小型化、動作の安定化を可能にする。
【解決手段】被写体像を結像させる光学手段と、光学手段の光軸上に存在し絞り開口の大きさにより光量を調整する第一の減光手段と、光学手段の光軸上に存在し透過率を変化させて通過光量を調整する第二の減光手段と、撮影時の露出を適正にするために第一、第二の減光手段の動作を制御する制御手段と、を有し、制御手段は、所定の絞り開口径までは第一の減光手段による光量調整を優先し、所定の絞り開口径よりも絞った状態では第二の減光手段による光量調整を優先して露出の適正化を行う。
【解決手段】被写体像を結像させる光学手段と、光学手段の光軸上に存在し絞り開口の大きさにより光量を調整する第一の減光手段と、光学手段の光軸上に存在し透過率を変化させて通過光量を調整する第二の減光手段と、撮影時の露出を適正にするために第一、第二の減光手段の動作を制御する制御手段と、を有し、制御手段は、所定の絞り開口径までは第一の減光手段による光量調整を優先し、所定の絞り開口径よりも絞った状態では第二の減光手段による光量調整を優先して露出の適正化を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラなどの画像入力装置に関するもので、特により高画質の画像を得るための光量調整に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レンズなどの結像光学手段を用いた画像入力装置、特にデジタルカメラにおいては、高輝度の被写体を撮影するに際して開口絞りを小さく絞り込むと、絞りのエッジ部による回折の影響で画質が劣化する。そのため、カメラの高級機種にはしばしばND(ニュートラル・デンシティ)フィルタを用いた減光手段が用いられ、絞りをある程度以上に絞り込む必要がないようにしたものがある。一方、カメラのハイエンドユーザは、絞りによる撮影効果を実現することができるカメラを望んでいる。すなわち、被写界深度を確保するために絞り開口を小さく絞り込むことができ、逆に、背景又は前景を適度にぼかすために絞り開口を大きく開くことができるカメラが望まれていて、それを実現するために高級機種には多段絞りが用いられることが多い。
【0003】
上記2つの要求を満たすためには、NDフィルタを併用した多段絞りを搭載することが有効である。図4は、NDフィルタ35を併用した多段絞り13付きシャッタユニット14の外観を示す。図4において、多段絞り13は一般的に複数枚の絞り羽根で構成され、パルスモータによりカムを駆動することで絞り羽根を駆動して、所望の開口径を得る構造になっている。多段絞り13の駆動源としてパルスモータを用いるため、絞り開口径は段階的となり、通常は1パルス毎に1/2AVもしくは1/3AV刻みで絞り開口径が変化するように設計される。NDフィルタ35は、通常、シート状のフィルタを支持体としての羽根部材に貼付け、その羽根部材を光軸上に進退させることによって光量調整を実現している。
【0004】
なお、絞りが開放状態であっても対応できるだけの大きさのNDフィルタを用いて光量調整を行うことができるものであってもよいが、NDフィルタはコストが嵩むため、なるべく小さなNDフィルタであることが望ましい。すなわち、図10、図11に示すような露出線図を構成することができるのであれば、絞り開口をある程度絞った状態でNDフィルタを使用するようにし、小さめのNDフィルタで対応できるようにすることが好ましい。小さなNDフィルタであれば、それを保持し駆動する機構も小型化することが可能である。図4に示す例では、絞り13が開放絞り値から1AV以上絞った状態でNDフィルタ35を使用することができるような、開放絞り径とNDフィルタ35の寸法関係となっている。
【0005】
上述のようなカメラの高級機種に用いられるNDフィルタ併用多段絞りにおいては、開放状態又は開放に近い状態からNDフィルタを使用することができるように構成されるため、開放絞り値と最小絞り値の間のある要求減光量に対して、多段絞りのみで絞った場合と、NDフィルタを併用して減光した場合の2パターンが存在する場合がある。図5はその例を示している。図5において網掛けで示した範囲は、多段絞りのみを使用する場合と、多段絞りとNDフィルタを併用する場合とが重複する範囲を示している。これを露出線図にあらわしたものが図6である。図5、図6では、F5〜F9までの6段階が、NDフィルタ無しの場合と有りの場合が重複している。図5、図6では多段絞りの開放状態を丸付き数字「1」で標記し、最小絞り状態を丸付き数字「12」で表記し、それぞれの丸付き数字が絞り段を示している。なお、図6では多段絞りの9〜12段にNDフィルタを併用した場合の線も引かれているが、実際のカメラではLV18程度まで適用できれば十分であるため、これら4段にわたる減光状態は使用しない。
【0006】
このように、特定の被写体輝度に対して同一の減光状態が、多段絞りのみによる場合とNDフィルタを併用する場合の2通りある場合、どちらを用いるのが適切か、が問題となる。図7は、多段絞りによる減光方式とNDフィルタによる減光方式の得失を比較して示す。カメラにおいて第一に考慮すべき事項は、如何にしてより良好な画質を得るかということであり、その場合に考慮すべき問題は、前述したとおり小絞り時の画質の劣化の問題である。NDフィルタを減光手段として用いる最大の理由がこれで、NDフィルタを使用することによって小絞りの弊害を排除するためである。図8に絞りと画質(MTF)の関係の一例を示す。図8に示すように、開放絞りから1段絞り込んだ程度まではある程度良好なMTFを維持するが、それ以上絞ると明らかにMTFが劣化する。このようなMTFの劣化を防ぐためにはNDフィルタによる減光方式を用いるのが望ましい。
【0007】
一方、多段絞りの使用が望まれる理由は、被写界深度を撮影者の意図に沿って設定できる点にある。近景から遠景まで広い範囲にピントを合わせるためには、多段絞りの開口を小さくする制御方法(多段絞り)が要求される。
次に、ゴーストや周辺光量低下の問題に関しても、多段絞りによる減光方式とNDフィルタによる減光方式で差異が発生する。ゴーストに関しては、反射面が増加するNDフィルタ方式の方が不利であり、また、ゴーストが絞り部で遮断されるような場合には、多段絞りで絞ればゴーストは低減する。周辺光量低下の問題についても、一般的に開口を小さくすれば均一に近くなって改善されるが、NDフィルタでは改善されない(図9参照)。
【0008】
消費電力に関しても、多段絞りによる減光方式とNDフィルタによる減光方式では違いがある。多段絞りはパルスモータで駆動する場合が多く、二つのコイルを有するパルスモータは消費電力の面で不利、すなわち消費電力が多い。NDフィルタは光軸上への進出位置と光軸からの退避位置の2ポジションしかないため、1コイルのムービングマグネット等を用いることが可能であり、消費電力の面で有利すなわち消費電力が少ない。ただし、消費電力を少なくするには、どちらの方式にしても極力動かさないのが最良の方法である。
【0009】
以上述べた従来技術を鑑み、多段絞りによる減光方式とNDフィルタによる減光方式の得失に合わせて、最適なカメラ制御方法を選択的に切り換え制御するようにした撮像装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。より具体的には、開口絞り及び透過率制御手段を組み合わせて制御する露出制御手段を備え、露出制御手段は、被写界震度を優先するように開口絞り及び透過率制御手段を制御する第1の動作モードを備えていることを特徴とする。また、上記露出制御手段は、上記第1の動作モードとともに、解像度を優先モードとするように開口絞り及び透過率制御手段を制御する第2の動作モードを備え、撮影条件に応じて第1の動作モード及び第2の動作モードを切り換えて制御することを特徴としている。
【0010】
【特許文献1】特開2003−134393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、特許文献1に記載されているような従来技術をさらに改良し、光量調整手段として多段絞りを用いるとともに、高画質を得るためにNDフィルタを併用した画像入力装置において、NDフィルタを用いた光量調整の機会をなるべく少なくするように構成することにより、コストの低減と、NDフィルタ駆動機構の小型化による鏡胴の小型化および動作の安定化を可能にした画像入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、被写体像を結像させるための光学手段と、この光学手段の光軸上に存在し絞り開口の大きさを変化させることにより光量を調整することができる第一の減光手段と、上記光学手段の光軸上に存在し透過率を変化させることにより通過光量を調整することができる第二の減光手段と、撮影時の露出を適正にするために上記第一、第二の減光手段の動作を制御する制御手段と、を有し、上記制御手段は、所定の絞り開口径までは第一の減光手段による光量調整を優先し、所定の絞り開口径よりも減光すべき状況では第二の減光手段による光量調整を優先して露出の適正化を行うことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、高画質要求に対しては、光量調整を単にNDフィルタのみで対応するのではなく、第一の減光手段である絞りを少し絞った所定の絞り値からNDフィルタで対応する。こうすることによって、解像度、周辺光量低下、ゴーストの問題を最適なバランスをとりながら解消することができ、従来よりも、より高画質の画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明にかかる画像入力装置の実施例を、図を参照しながら説明する。
本発明は、図4に示すNDフィルタ35を併用した多段絞り13付きシャッタユニット14と同じ構成のシャッタユニットを備えたカメラなどに適用することができる。多段絞りの具体的構成は任意で、絞り開口の径を複数段階にわたって調整できるものであればよい。NDフィルタの作動機構の構成も任意で、NDフィルタを、被写体像を結像させるための光学手段例えば撮影レンズの光軸上に進出し、また、撮影レンズの光軸から退避させることができる機構であればよい。
【0015】
図3は、本発明にかかる画像入力装置の一例であるデジタルカメラの制御系統の例を示す。図3において、符号10は、被写体像を結像させるための撮影レンズを含む光学手段を示す。光学手段10はレンズ鏡筒内に組み込まれている。レンズ鏡筒内には、合焦機能をもつレンズ群11と別のレンズ群12が組み込まれ、仕様によっては複数のレンズ群11,12を独立して移動させることによってズーム機能が組み込まれることもある。レンズ群12の後ろにはNDフィルタ13、さらにその後ろにシャッタユニット14が組み込まれている。上記NDフィルタ13は適宜の作動機構によって撮影レンズ光軸に進出しかつ退避することができるように構成されている。
【0016】
上記レンズ群11はフォーカスモータ31によって光軸方向に駆動され、多段絞り13は絞りモータ32によって絞り開口径が多段にわたり調整され、NDフィルタ35はNDフィルタモータ33によって撮影レンズ光軸上に進退させられ、シャッタユニット14はシャッタモータ34によって駆動される。各モータ31〜34は、システムコントローラ21によって制御されるモータドライバ30により制御される。光学手段10の結像位置には撮像素子であるCCD15が配置されていて、CCD15の画素ごとに、その画素に対応する被写体像の明るさに応じた電気信号に変換される。CCD15の各画素で変換された電気信号は撮像回路16により所定の順序で取り出され、A/D変換器17でデジタル信号に変換され、信号処理回路18に入力される。信号処理回路18、上記システムコントローラ21、制御プログラムを格納した読み出し専用メモリ(ROM)22、データを格納する随時書き込み可能なメモリ(RAM)23、メモリカード26、内蔵メモリ27、モニタドライバ28がバスライン20によってつながっている。システムコントローラ21は例えばCPU(中央制御処理ユニット)乃至はマイクロコンピュータからなり、操作部24からの操作信号その他の入力データに基づき、上記メモリ22に格納されている制御プログラムにしたがって制御対象を制御する。上記操作部24はモード設定部25を有している。上記モニタドライバ28は、システムコントローラ21による制御のもとに、被写体画像をリアルタイムで表示し、あるいは撮影データを表示するようになっている。
【0017】
本発明は、前述のように、光学手段の光軸上に存在し絞り開口の大きさを変化させることにより光量を調整することができる第一の減光手段と、光学手段の光軸上に存在し透過率を変化させることにより通過光量を調整することができる第二の減光手段と、撮影時の露出を適正にするために第一、第二の減光手段の動作を制御する制御手段と、を有し、制御手段は、所定の絞り開口径までは第一の減光手段による光量調整を優先し、所定の絞り開口径よりも減光すべき状況では第二の減光手段による光量調整を優先して露出の適正化を行うことを特徴とする。「第一の減光手段による光量調整を優先し」とは、シャッタ速度による光量調整に優先して第一の減光手段による光量調整を行うという意味である。「第二の減光手段による光量調整を優先し」とは、シャッタ速度による光量調整に優先して第二の減光手段による光量調整を行うという意味である。図3、図4に示す多段絞り13が上記第一の減光手段に相当する。図3、図4に示すNDフィルタ35が上記第二の減光手段に相当する。図3におけるシステムコントローラ21が、メモリ22に格納されている制御プログラムとともに上記制御手段に相当する。本発明はまた、モード設定手段としての上記モード設定部25を有し、このモード設定部25で設定された動作モードに応じた光量調整を行うことができるようにもなっている。以下、各動作モードでの第一、第二の減光手段の制御動作例を具体的に説明する。
【0018】
まず、図10に示す「絞り優先モード」に設定されている場合の露出線図について説明する。この露出線図は、図7における「被写界深度」に着目して、ユーザーが絞り値を優先して選択したものであり、多段絞りのみを使用して光量を調整するものである。したがって、従来例と同じで、新規性はない。図11に、解像度(MTF)を考慮した露出線図を示す。この露出線図は、図7に示す「像性能(MTF)」を優先してNDフィルタによる光量調整を重視した露出線図である。カメラに高解像度モードがある場合などは、NDフィルタによる光量調整を多用して、極力開放に近い絞りを用いるとよい。この図11に示す露出線図も、従来例に近い発想のものであり、本願発明の発想とは異なる。
【0019】
次に、本発明にかかる画像入力装置の一実施例として、図1に示す露出線図に基づいた実施例について説明する。この実施例は、図7に示す「像性能(MTF)」に、「ゴースト」、「周辺光量」を勘案することによって、最適な高画質画像を得ることができるようにした実施例である。図8について説明したように、多段絞りの開口径を絞ると、解像度(MTF)は低下するが、−1AVレベルまでは大きくは変化しない。これに対し、ゴーストは、多段絞りを開放絞りから少しでも絞ることで減少する場合があり、さらに、周辺光量は、図9に示すように−1AVレベルでも絞ることによって明確に改善される。
【0020】
これらを鑑み、総合的に良好な画質を得るように設定した露出線図が図1であって、図1は本発明の一実施例を示している。図1において、横軸はシャッタ速度及びこれに対応するTv値、縦軸は第一の減光手段による絞り値及びこれに対応するAv値である。丸付きの数字は光量調整の各段階を示していて、1/3Lv刻みで光量調整することができるようになっている。横方向の太線が、使用する減光方式を示している。丸付き数字の「1」は多段絞りが開放絞りになっていることを示しており、被写体輝度に応じてシャッタ速度を切り換えて露光量を制御している。丸付き数字の「4」は多段絞りを1段絞った状態であって、この状態でシャッタ速度を1/60秒から1/1000秒までの範囲で段階的に切り換えることにより露光量を制御する。
【0021】
次の光量制御が本発明の特徴の一つで、丸付き数字「4」の、多段絞りを1段絞った状態において、これに第二の減光手段としてのNDフィルタを加えた状態を優先使用して撮影時の露出を適正にするように構成されている。多段絞りを1段絞った状態でNDフィルタを併用し、シャッタ速度の切り換えで適正露光を得る領域が比較的広範囲に設定され、被写体輝度が高くなってもNDフィルタを併用することによって、多段絞りをあまり小さく絞り込まないようになっている。このように構成することにより、ゴーストや周辺光量の低下が目立ちやすい撮影の条件のときに、ゴーストの発生や周辺光量の低下を改善することができる。以上のような撮影モードは、例えば「総合高画質」モードとして、図3に示すモード設定部25で設定することができる。「総合高画質」モードのほかに、太陽光が存在し、空の部分の周辺光量低下が目立ちやすい「屋外モード」等を設定することも有用である。
【0022】
上記実施例によれば、所定の絞り開口径までは多段絞り(第一の減光手段)による光量調整を優先し、所定の絞り開口径よりも減光すべき状況ではNDフィルタ(第二の減光手段)による光量調整を優先して露出の適正化を行うため、通常の撮影モードでも、従来技術より高画質な画像を得ることができる。
なお、「所定の絞り径」とは、多段絞りが開放絞りになっている場合も含む。すなわち、開放絞りのときNDフィルタを使用してもよいし、それ以外の所定の絞り径のときNDフィルタを使用してもよい。この実施例は、NDフィルタの小型化によって画像入力装置の小型化を図るというよりも、高画質化を目的とするものである。
【0023】
上記実施例によればまた、特別な撮影モードに設定されている場合に限られるものではなく、一般的な動作モードでもよく、この動作モードでも従来技術より高品質の画像を得ることができる。
NDフィルタは、多段絞りの途中の絞り段階から使用するように構成すれば、NDフィルタ自体を小型化してコストダウンを図ることができるとともに、レンズ鏡胴の小型化、したがって、カメラの小型化を図ることができる。
【0024】
高画質の画像を得るのに最も有用な実施例は、上に述べた図1の露出線図に従った実施例であるが、カメラに求められる要素としては、表7の最後の項目に挙げられている消費電力も重要な要素である。すなわち、画質だけを考えると、図1に示す露出線図が最も望ましいものと考えられるが、カメラの総合的な自動制御モードないしは自動撮影モードとしては、消費電力も考慮して消費電力の少ない露出線図であることが好ましい。かかる要求に対応した露出線図が図2に示す露出線図で、これが本発明の第二の実施例である。図2において、図1と同様に、丸付き数字の「4」は多段絞りを開放絞りから1段絞った絞り値を示しており、この1段絞った絞り値にNDフィルタを付加した状態を優先しつつ、さらに減光が必要な領域に関しては、機構的な駆動を極力少なくなるように構成したものである。図1に示す実施例では、開放絞りから2段絞った丸付数字「5」+NDフィルタ、3段絞った丸付数字「6」+NDフィルタ、4段絞った丸付数字「7」+NDフィルタを使用しているのに対し、図2に示す実施例では、上記の部分をすべて4段絞った丸付数字「7」+NDフィルタで代用している。図8を参照すると、開放絞りから2段絞った絞り値(=AV4+ND)、開放絞りから3段絞った絞り値+ND(=AV4.3+ND)、開放絞りから4段絞った絞り値+ND(=AV4.6+ND)で、MTFは徐々に低下するが、極端に低下するわけではない。したがって、開放絞りから4段絞った絞り値+NDでも許容できるというような場合には、図2に示す実施例のように、多段絞りを数段飛ばして絞り込んでこれにNDフィルタを付加する。こうすれば、多段絞りの機構的な動作を極力少なくした光量調整モードを設定することができ、これにより、消費電力の低減を図ることができる。
【0025】
上記実施例は、多段絞りの開放状態でNDフィルタを使用することは利用価値がそれほど高くないため、NDフィルタは多段絞りの途中から、すなわち、開放絞りから所定の絞り開口まで絞った状態で使用するように構成している。このように構成することにより、前述のとおり、NDフィルタの小型化によるコストダウン及び鏡胴の小型化、したがってカメラの小型化を図ることができる。
また、NDフィルタを使用する所定の絞り開口径は、光の回折による画像劣化が顕著に発現する直前の開口径とするとよい。こうすることにより、高画質の画像を得ることと鏡筒の小型化を図ることができる。
【0026】
以上説明した実施例はいずれも、開放絞り値(F値)がF2.5、多段絞りが1/3AV刻みで開放絞りを含み全12段階、NDフィルタは2段落ち、という条件で設計されている。しかし、多段絞りの開放絞り値、絞り調整の刻み幅及び絞り調整の段階数、さらに、NDフィルタの減光量は特に特定の数値に限定されるものではなく、任意に設定可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明にかかる画像入力装置は、各種カメラ、例えば、デジタルカメラ、携帯電話付属のカメラなどに手供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明にかかる画像入力装置の一実施例にかかる露光線図である。
【図2】本発明にかかる画像入力装置の別の実施例にかかる露光線図である。
【図3】本発明にかかる画像入力装置に用いることができる制御系統の例を示すブロック図である。
【図4】本発明にかかる画像入力装置に用いることができる減光手段の例を示す正面図である。
【図5】従来のカメラにおける多段絞りとNDフィルタの併用例を表にして示す図である。
【図6】上記従来のカメラにおける多段絞りとNDフィルタの併用例を示す露光線図である。
【図7】開口絞りによる減光方式とNDフィルタによる減光方式の特質を比較して示す図表である。
【図8】絞り開口とMTFの関係を示すグラフである。
【図9】絞り開口と周辺光量の関係を示すグラフである。
【図10】従来のカメラにおける絞り優先モード時の多段絞り開口とNDフィルタの組み合わせ例を示す露光線図である。
【図11】従来のカメラにおける解像度優先モード時の多段絞り開口とNDフィルタの組み合わせ例を示す露光線図である。
【符号の説明】
【0029】
13 多段絞り(第一の減光手段)
14 シャッタユニット
35 NDフィルタ(第二の減光手段)
21 システムコントローラ(制御手段)
25 モード設定手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラなどの画像入力装置に関するもので、特により高画質の画像を得るための光量調整に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レンズなどの結像光学手段を用いた画像入力装置、特にデジタルカメラにおいては、高輝度の被写体を撮影するに際して開口絞りを小さく絞り込むと、絞りのエッジ部による回折の影響で画質が劣化する。そのため、カメラの高級機種にはしばしばND(ニュートラル・デンシティ)フィルタを用いた減光手段が用いられ、絞りをある程度以上に絞り込む必要がないようにしたものがある。一方、カメラのハイエンドユーザは、絞りによる撮影効果を実現することができるカメラを望んでいる。すなわち、被写界深度を確保するために絞り開口を小さく絞り込むことができ、逆に、背景又は前景を適度にぼかすために絞り開口を大きく開くことができるカメラが望まれていて、それを実現するために高級機種には多段絞りが用いられることが多い。
【0003】
上記2つの要求を満たすためには、NDフィルタを併用した多段絞りを搭載することが有効である。図4は、NDフィルタ35を併用した多段絞り13付きシャッタユニット14の外観を示す。図4において、多段絞り13は一般的に複数枚の絞り羽根で構成され、パルスモータによりカムを駆動することで絞り羽根を駆動して、所望の開口径を得る構造になっている。多段絞り13の駆動源としてパルスモータを用いるため、絞り開口径は段階的となり、通常は1パルス毎に1/2AVもしくは1/3AV刻みで絞り開口径が変化するように設計される。NDフィルタ35は、通常、シート状のフィルタを支持体としての羽根部材に貼付け、その羽根部材を光軸上に進退させることによって光量調整を実現している。
【0004】
なお、絞りが開放状態であっても対応できるだけの大きさのNDフィルタを用いて光量調整を行うことができるものであってもよいが、NDフィルタはコストが嵩むため、なるべく小さなNDフィルタであることが望ましい。すなわち、図10、図11に示すような露出線図を構成することができるのであれば、絞り開口をある程度絞った状態でNDフィルタを使用するようにし、小さめのNDフィルタで対応できるようにすることが好ましい。小さなNDフィルタであれば、それを保持し駆動する機構も小型化することが可能である。図4に示す例では、絞り13が開放絞り値から1AV以上絞った状態でNDフィルタ35を使用することができるような、開放絞り径とNDフィルタ35の寸法関係となっている。
【0005】
上述のようなカメラの高級機種に用いられるNDフィルタ併用多段絞りにおいては、開放状態又は開放に近い状態からNDフィルタを使用することができるように構成されるため、開放絞り値と最小絞り値の間のある要求減光量に対して、多段絞りのみで絞った場合と、NDフィルタを併用して減光した場合の2パターンが存在する場合がある。図5はその例を示している。図5において網掛けで示した範囲は、多段絞りのみを使用する場合と、多段絞りとNDフィルタを併用する場合とが重複する範囲を示している。これを露出線図にあらわしたものが図6である。図5、図6では、F5〜F9までの6段階が、NDフィルタ無しの場合と有りの場合が重複している。図5、図6では多段絞りの開放状態を丸付き数字「1」で標記し、最小絞り状態を丸付き数字「12」で表記し、それぞれの丸付き数字が絞り段を示している。なお、図6では多段絞りの9〜12段にNDフィルタを併用した場合の線も引かれているが、実際のカメラではLV18程度まで適用できれば十分であるため、これら4段にわたる減光状態は使用しない。
【0006】
このように、特定の被写体輝度に対して同一の減光状態が、多段絞りのみによる場合とNDフィルタを併用する場合の2通りある場合、どちらを用いるのが適切か、が問題となる。図7は、多段絞りによる減光方式とNDフィルタによる減光方式の得失を比較して示す。カメラにおいて第一に考慮すべき事項は、如何にしてより良好な画質を得るかということであり、その場合に考慮すべき問題は、前述したとおり小絞り時の画質の劣化の問題である。NDフィルタを減光手段として用いる最大の理由がこれで、NDフィルタを使用することによって小絞りの弊害を排除するためである。図8に絞りと画質(MTF)の関係の一例を示す。図8に示すように、開放絞りから1段絞り込んだ程度まではある程度良好なMTFを維持するが、それ以上絞ると明らかにMTFが劣化する。このようなMTFの劣化を防ぐためにはNDフィルタによる減光方式を用いるのが望ましい。
【0007】
一方、多段絞りの使用が望まれる理由は、被写界深度を撮影者の意図に沿って設定できる点にある。近景から遠景まで広い範囲にピントを合わせるためには、多段絞りの開口を小さくする制御方法(多段絞り)が要求される。
次に、ゴーストや周辺光量低下の問題に関しても、多段絞りによる減光方式とNDフィルタによる減光方式で差異が発生する。ゴーストに関しては、反射面が増加するNDフィルタ方式の方が不利であり、また、ゴーストが絞り部で遮断されるような場合には、多段絞りで絞ればゴーストは低減する。周辺光量低下の問題についても、一般的に開口を小さくすれば均一に近くなって改善されるが、NDフィルタでは改善されない(図9参照)。
【0008】
消費電力に関しても、多段絞りによる減光方式とNDフィルタによる減光方式では違いがある。多段絞りはパルスモータで駆動する場合が多く、二つのコイルを有するパルスモータは消費電力の面で不利、すなわち消費電力が多い。NDフィルタは光軸上への進出位置と光軸からの退避位置の2ポジションしかないため、1コイルのムービングマグネット等を用いることが可能であり、消費電力の面で有利すなわち消費電力が少ない。ただし、消費電力を少なくするには、どちらの方式にしても極力動かさないのが最良の方法である。
【0009】
以上述べた従来技術を鑑み、多段絞りによる減光方式とNDフィルタによる減光方式の得失に合わせて、最適なカメラ制御方法を選択的に切り換え制御するようにした撮像装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。より具体的には、開口絞り及び透過率制御手段を組み合わせて制御する露出制御手段を備え、露出制御手段は、被写界震度を優先するように開口絞り及び透過率制御手段を制御する第1の動作モードを備えていることを特徴とする。また、上記露出制御手段は、上記第1の動作モードとともに、解像度を優先モードとするように開口絞り及び透過率制御手段を制御する第2の動作モードを備え、撮影条件に応じて第1の動作モード及び第2の動作モードを切り換えて制御することを特徴としている。
【0010】
【特許文献1】特開2003−134393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、特許文献1に記載されているような従来技術をさらに改良し、光量調整手段として多段絞りを用いるとともに、高画質を得るためにNDフィルタを併用した画像入力装置において、NDフィルタを用いた光量調整の機会をなるべく少なくするように構成することにより、コストの低減と、NDフィルタ駆動機構の小型化による鏡胴の小型化および動作の安定化を可能にした画像入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、被写体像を結像させるための光学手段と、この光学手段の光軸上に存在し絞り開口の大きさを変化させることにより光量を調整することができる第一の減光手段と、上記光学手段の光軸上に存在し透過率を変化させることにより通過光量を調整することができる第二の減光手段と、撮影時の露出を適正にするために上記第一、第二の減光手段の動作を制御する制御手段と、を有し、上記制御手段は、所定の絞り開口径までは第一の減光手段による光量調整を優先し、所定の絞り開口径よりも減光すべき状況では第二の減光手段による光量調整を優先して露出の適正化を行うことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、高画質要求に対しては、光量調整を単にNDフィルタのみで対応するのではなく、第一の減光手段である絞りを少し絞った所定の絞り値からNDフィルタで対応する。こうすることによって、解像度、周辺光量低下、ゴーストの問題を最適なバランスをとりながら解消することができ、従来よりも、より高画質の画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明にかかる画像入力装置の実施例を、図を参照しながら説明する。
本発明は、図4に示すNDフィルタ35を併用した多段絞り13付きシャッタユニット14と同じ構成のシャッタユニットを備えたカメラなどに適用することができる。多段絞りの具体的構成は任意で、絞り開口の径を複数段階にわたって調整できるものであればよい。NDフィルタの作動機構の構成も任意で、NDフィルタを、被写体像を結像させるための光学手段例えば撮影レンズの光軸上に進出し、また、撮影レンズの光軸から退避させることができる機構であればよい。
【0015】
図3は、本発明にかかる画像入力装置の一例であるデジタルカメラの制御系統の例を示す。図3において、符号10は、被写体像を結像させるための撮影レンズを含む光学手段を示す。光学手段10はレンズ鏡筒内に組み込まれている。レンズ鏡筒内には、合焦機能をもつレンズ群11と別のレンズ群12が組み込まれ、仕様によっては複数のレンズ群11,12を独立して移動させることによってズーム機能が組み込まれることもある。レンズ群12の後ろにはNDフィルタ13、さらにその後ろにシャッタユニット14が組み込まれている。上記NDフィルタ13は適宜の作動機構によって撮影レンズ光軸に進出しかつ退避することができるように構成されている。
【0016】
上記レンズ群11はフォーカスモータ31によって光軸方向に駆動され、多段絞り13は絞りモータ32によって絞り開口径が多段にわたり調整され、NDフィルタ35はNDフィルタモータ33によって撮影レンズ光軸上に進退させられ、シャッタユニット14はシャッタモータ34によって駆動される。各モータ31〜34は、システムコントローラ21によって制御されるモータドライバ30により制御される。光学手段10の結像位置には撮像素子であるCCD15が配置されていて、CCD15の画素ごとに、その画素に対応する被写体像の明るさに応じた電気信号に変換される。CCD15の各画素で変換された電気信号は撮像回路16により所定の順序で取り出され、A/D変換器17でデジタル信号に変換され、信号処理回路18に入力される。信号処理回路18、上記システムコントローラ21、制御プログラムを格納した読み出し専用メモリ(ROM)22、データを格納する随時書き込み可能なメモリ(RAM)23、メモリカード26、内蔵メモリ27、モニタドライバ28がバスライン20によってつながっている。システムコントローラ21は例えばCPU(中央制御処理ユニット)乃至はマイクロコンピュータからなり、操作部24からの操作信号その他の入力データに基づき、上記メモリ22に格納されている制御プログラムにしたがって制御対象を制御する。上記操作部24はモード設定部25を有している。上記モニタドライバ28は、システムコントローラ21による制御のもとに、被写体画像をリアルタイムで表示し、あるいは撮影データを表示するようになっている。
【0017】
本発明は、前述のように、光学手段の光軸上に存在し絞り開口の大きさを変化させることにより光量を調整することができる第一の減光手段と、光学手段の光軸上に存在し透過率を変化させることにより通過光量を調整することができる第二の減光手段と、撮影時の露出を適正にするために第一、第二の減光手段の動作を制御する制御手段と、を有し、制御手段は、所定の絞り開口径までは第一の減光手段による光量調整を優先し、所定の絞り開口径よりも減光すべき状況では第二の減光手段による光量調整を優先して露出の適正化を行うことを特徴とする。「第一の減光手段による光量調整を優先し」とは、シャッタ速度による光量調整に優先して第一の減光手段による光量調整を行うという意味である。「第二の減光手段による光量調整を優先し」とは、シャッタ速度による光量調整に優先して第二の減光手段による光量調整を行うという意味である。図3、図4に示す多段絞り13が上記第一の減光手段に相当する。図3、図4に示すNDフィルタ35が上記第二の減光手段に相当する。図3におけるシステムコントローラ21が、メモリ22に格納されている制御プログラムとともに上記制御手段に相当する。本発明はまた、モード設定手段としての上記モード設定部25を有し、このモード設定部25で設定された動作モードに応じた光量調整を行うことができるようにもなっている。以下、各動作モードでの第一、第二の減光手段の制御動作例を具体的に説明する。
【0018】
まず、図10に示す「絞り優先モード」に設定されている場合の露出線図について説明する。この露出線図は、図7における「被写界深度」に着目して、ユーザーが絞り値を優先して選択したものであり、多段絞りのみを使用して光量を調整するものである。したがって、従来例と同じで、新規性はない。図11に、解像度(MTF)を考慮した露出線図を示す。この露出線図は、図7に示す「像性能(MTF)」を優先してNDフィルタによる光量調整を重視した露出線図である。カメラに高解像度モードがある場合などは、NDフィルタによる光量調整を多用して、極力開放に近い絞りを用いるとよい。この図11に示す露出線図も、従来例に近い発想のものであり、本願発明の発想とは異なる。
【0019】
次に、本発明にかかる画像入力装置の一実施例として、図1に示す露出線図に基づいた実施例について説明する。この実施例は、図7に示す「像性能(MTF)」に、「ゴースト」、「周辺光量」を勘案することによって、最適な高画質画像を得ることができるようにした実施例である。図8について説明したように、多段絞りの開口径を絞ると、解像度(MTF)は低下するが、−1AVレベルまでは大きくは変化しない。これに対し、ゴーストは、多段絞りを開放絞りから少しでも絞ることで減少する場合があり、さらに、周辺光量は、図9に示すように−1AVレベルでも絞ることによって明確に改善される。
【0020】
これらを鑑み、総合的に良好な画質を得るように設定した露出線図が図1であって、図1は本発明の一実施例を示している。図1において、横軸はシャッタ速度及びこれに対応するTv値、縦軸は第一の減光手段による絞り値及びこれに対応するAv値である。丸付きの数字は光量調整の各段階を示していて、1/3Lv刻みで光量調整することができるようになっている。横方向の太線が、使用する減光方式を示している。丸付き数字の「1」は多段絞りが開放絞りになっていることを示しており、被写体輝度に応じてシャッタ速度を切り換えて露光量を制御している。丸付き数字の「4」は多段絞りを1段絞った状態であって、この状態でシャッタ速度を1/60秒から1/1000秒までの範囲で段階的に切り換えることにより露光量を制御する。
【0021】
次の光量制御が本発明の特徴の一つで、丸付き数字「4」の、多段絞りを1段絞った状態において、これに第二の減光手段としてのNDフィルタを加えた状態を優先使用して撮影時の露出を適正にするように構成されている。多段絞りを1段絞った状態でNDフィルタを併用し、シャッタ速度の切り換えで適正露光を得る領域が比較的広範囲に設定され、被写体輝度が高くなってもNDフィルタを併用することによって、多段絞りをあまり小さく絞り込まないようになっている。このように構成することにより、ゴーストや周辺光量の低下が目立ちやすい撮影の条件のときに、ゴーストの発生や周辺光量の低下を改善することができる。以上のような撮影モードは、例えば「総合高画質」モードとして、図3に示すモード設定部25で設定することができる。「総合高画質」モードのほかに、太陽光が存在し、空の部分の周辺光量低下が目立ちやすい「屋外モード」等を設定することも有用である。
【0022】
上記実施例によれば、所定の絞り開口径までは多段絞り(第一の減光手段)による光量調整を優先し、所定の絞り開口径よりも減光すべき状況ではNDフィルタ(第二の減光手段)による光量調整を優先して露出の適正化を行うため、通常の撮影モードでも、従来技術より高画質な画像を得ることができる。
なお、「所定の絞り径」とは、多段絞りが開放絞りになっている場合も含む。すなわち、開放絞りのときNDフィルタを使用してもよいし、それ以外の所定の絞り径のときNDフィルタを使用してもよい。この実施例は、NDフィルタの小型化によって画像入力装置の小型化を図るというよりも、高画質化を目的とするものである。
【0023】
上記実施例によればまた、特別な撮影モードに設定されている場合に限られるものではなく、一般的な動作モードでもよく、この動作モードでも従来技術より高品質の画像を得ることができる。
NDフィルタは、多段絞りの途中の絞り段階から使用するように構成すれば、NDフィルタ自体を小型化してコストダウンを図ることができるとともに、レンズ鏡胴の小型化、したがって、カメラの小型化を図ることができる。
【0024】
高画質の画像を得るのに最も有用な実施例は、上に述べた図1の露出線図に従った実施例であるが、カメラに求められる要素としては、表7の最後の項目に挙げられている消費電力も重要な要素である。すなわち、画質だけを考えると、図1に示す露出線図が最も望ましいものと考えられるが、カメラの総合的な自動制御モードないしは自動撮影モードとしては、消費電力も考慮して消費電力の少ない露出線図であることが好ましい。かかる要求に対応した露出線図が図2に示す露出線図で、これが本発明の第二の実施例である。図2において、図1と同様に、丸付き数字の「4」は多段絞りを開放絞りから1段絞った絞り値を示しており、この1段絞った絞り値にNDフィルタを付加した状態を優先しつつ、さらに減光が必要な領域に関しては、機構的な駆動を極力少なくなるように構成したものである。図1に示す実施例では、開放絞りから2段絞った丸付数字「5」+NDフィルタ、3段絞った丸付数字「6」+NDフィルタ、4段絞った丸付数字「7」+NDフィルタを使用しているのに対し、図2に示す実施例では、上記の部分をすべて4段絞った丸付数字「7」+NDフィルタで代用している。図8を参照すると、開放絞りから2段絞った絞り値(=AV4+ND)、開放絞りから3段絞った絞り値+ND(=AV4.3+ND)、開放絞りから4段絞った絞り値+ND(=AV4.6+ND)で、MTFは徐々に低下するが、極端に低下するわけではない。したがって、開放絞りから4段絞った絞り値+NDでも許容できるというような場合には、図2に示す実施例のように、多段絞りを数段飛ばして絞り込んでこれにNDフィルタを付加する。こうすれば、多段絞りの機構的な動作を極力少なくした光量調整モードを設定することができ、これにより、消費電力の低減を図ることができる。
【0025】
上記実施例は、多段絞りの開放状態でNDフィルタを使用することは利用価値がそれほど高くないため、NDフィルタは多段絞りの途中から、すなわち、開放絞りから所定の絞り開口まで絞った状態で使用するように構成している。このように構成することにより、前述のとおり、NDフィルタの小型化によるコストダウン及び鏡胴の小型化、したがってカメラの小型化を図ることができる。
また、NDフィルタを使用する所定の絞り開口径は、光の回折による画像劣化が顕著に発現する直前の開口径とするとよい。こうすることにより、高画質の画像を得ることと鏡筒の小型化を図ることができる。
【0026】
以上説明した実施例はいずれも、開放絞り値(F値)がF2.5、多段絞りが1/3AV刻みで開放絞りを含み全12段階、NDフィルタは2段落ち、という条件で設計されている。しかし、多段絞りの開放絞り値、絞り調整の刻み幅及び絞り調整の段階数、さらに、NDフィルタの減光量は特に特定の数値に限定されるものではなく、任意に設定可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明にかかる画像入力装置は、各種カメラ、例えば、デジタルカメラ、携帯電話付属のカメラなどに手供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明にかかる画像入力装置の一実施例にかかる露光線図である。
【図2】本発明にかかる画像入力装置の別の実施例にかかる露光線図である。
【図3】本発明にかかる画像入力装置に用いることができる制御系統の例を示すブロック図である。
【図4】本発明にかかる画像入力装置に用いることができる減光手段の例を示す正面図である。
【図5】従来のカメラにおける多段絞りとNDフィルタの併用例を表にして示す図である。
【図6】上記従来のカメラにおける多段絞りとNDフィルタの併用例を示す露光線図である。
【図7】開口絞りによる減光方式とNDフィルタによる減光方式の特質を比較して示す図表である。
【図8】絞り開口とMTFの関係を示すグラフである。
【図9】絞り開口と周辺光量の関係を示すグラフである。
【図10】従来のカメラにおける絞り優先モード時の多段絞り開口とNDフィルタの組み合わせ例を示す露光線図である。
【図11】従来のカメラにおける解像度優先モード時の多段絞り開口とNDフィルタの組み合わせ例を示す露光線図である。
【符号の説明】
【0029】
13 多段絞り(第一の減光手段)
14 シャッタユニット
35 NDフィルタ(第二の減光手段)
21 システムコントローラ(制御手段)
25 モード設定手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体像を結像させるための光学手段と、
この光学手段の光軸上に存在し絞り開口の大きさを変化させることにより光量を調整することができる第一の減光手段と、
上記光学手段の光軸上に存在し透過率を変化させることにより通過光量を調整することができる第二の減光手段と、
撮影時の露出を適正にするために上記第一、第二の減光手段の動作を制御する制御手段と、を有し、
上記制御手段は、所定の絞り開口径までは第一の減光手段による光量調整を優先し、所定の絞り開口径よりも減光すべき状況では第二の減光手段による光量調整を優先して露出の適正化を行うことを特徴とする画像入力装置。
【請求項2】
被写体像を結像させるための光学手段と、
この光学手段の光軸上に存在し絞り開口の大きさを変化させることにより光量を調整することができる第一の減光手段と、
上記光学手段の光軸上に存在し透過率を変化させることにより通過光量を調整することができる第二の減光手段と、
撮影時の露出を適正にするために上記第一、第二の減光手段の動作を制御する制御手段と、
撮影時のモードを設定するモード設定手段と、を有し、
上記制御手段は、上記モード設定手段が高画質モードにあるときは所定の絞り開口径までは第一の減光手段による光量調整を優先し、所定の絞り開口径よりも減光すべき状況では第二の減光手段による光量調整を優先して露出の適正化を行うことを特徴とする画像入力装置。
【請求項3】
被写体像を結像させるための光学手段と、
この光学手段の光軸上に存在し絞り開口の大きさを変化させることにより光量を調整することができる第一の減光手段と、
上記光学手段の光軸上に存在し透過率を変化させることにより通過光量を調整することができる第二の減光手段と、
撮影時の露出を適正にするために上記第一、第二の減光手段の動作を制御する制御手段と、
撮影時のモードを設定するモード設定手段と、を有し、
上記制御手段は、上記モード設定手段が自動撮影モードにあるときは所定の絞り開口径までは第二の減光手段を優先使用し、さらに所定の絞り開口径よりも減光する場合は第一の減光手段による光量調整を優先して露出の適正化を行うことを特徴とする画像入力装置。
【請求項4】
被写体像を結像させるための光学手段と、
この光学手段の光軸上に存在し絞り開口の大きさを変化させることにより光量を調整することができる第一の減光手段と、
上記光学手段の光軸上に存在し透過率を変化させることにより通過光量を調整することができる第二の減光手段と、
撮影時の露出を適正にするために上記第一、第二の減光手段の動作を制御する制御手段と、を有し、
上記制御手段は、開放絞りから所定の絞り開口径となるまで第一の減光手段のみの動作による光量調整を優先して行い、上記所定の絞り開口径からさらに光量を制限する場合は上記所定の絞り開口径のままで第二の減光手段の動作による光量調整を行なうことを特徴とする画像入力装置。
【請求項5】
被写体像を結像させるための光学手段と、
この光学手段の光軸上に存在し絞り開口の大きさを変化させることにより光量を調整することができる第一の減光手段と、
上記光学手段の光軸上に存在し透過率を変化させることにより通過光量を調整することができる第二の減光手段と、
撮影時の露出を適正にするために上記第一、第二の減光手段の動作を制御する制御手段と、
撮影時のモードを設定するモード設定手段と、を有し、
上記制御手段は、上記モード設定手段が高画質モードにあるときは、開放絞りから所定の絞り開口径となるまで第一の減光手段のみの動作による光量調整を優先して行い、上記所定の絞り開口径からさらに光量を制限する場合は上記所定の絞り開口径のままで第二の減光手段の動作による光量調整を行うことを特徴とする画像入力装置。
【請求項6】
被写体像を結像させるための光学手段と、
この光学手段の光軸上に存在し絞り開口の大きさを変化させることにより光量を調整することができる第一の減光手段と、
上記光学手段の光軸上に存在し透過率を変化させることにより通過光量を調整することができる第二の減光手段と、
撮影時の露出を適正にするために上記第一、第二の減光手段の動作を制御する制御手段と、
撮影時のモードを設定するモード設定手段と、を有し、
上記制御手段は、上記モード設定手段が自動撮影モードにあるときは、開放絞りから所定の絞り開口径となるまで第一の減光手段のみの動作による光量調整を優先して行い、上記所定の絞り開口径からさらに光量を制限する場合は上記所定の絞り開口径のままで第二の減光手段の動作による光量調整を行うことを特徴とする画像入力装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の画像入力装置において、所定の開口径とは、光の回折による画像劣化が顕著に発現する直前の開口径であることを特徴とする画像入力装置。
【請求項1】
被写体像を結像させるための光学手段と、
この光学手段の光軸上に存在し絞り開口の大きさを変化させることにより光量を調整することができる第一の減光手段と、
上記光学手段の光軸上に存在し透過率を変化させることにより通過光量を調整することができる第二の減光手段と、
撮影時の露出を適正にするために上記第一、第二の減光手段の動作を制御する制御手段と、を有し、
上記制御手段は、所定の絞り開口径までは第一の減光手段による光量調整を優先し、所定の絞り開口径よりも減光すべき状況では第二の減光手段による光量調整を優先して露出の適正化を行うことを特徴とする画像入力装置。
【請求項2】
被写体像を結像させるための光学手段と、
この光学手段の光軸上に存在し絞り開口の大きさを変化させることにより光量を調整することができる第一の減光手段と、
上記光学手段の光軸上に存在し透過率を変化させることにより通過光量を調整することができる第二の減光手段と、
撮影時の露出を適正にするために上記第一、第二の減光手段の動作を制御する制御手段と、
撮影時のモードを設定するモード設定手段と、を有し、
上記制御手段は、上記モード設定手段が高画質モードにあるときは所定の絞り開口径までは第一の減光手段による光量調整を優先し、所定の絞り開口径よりも減光すべき状況では第二の減光手段による光量調整を優先して露出の適正化を行うことを特徴とする画像入力装置。
【請求項3】
被写体像を結像させるための光学手段と、
この光学手段の光軸上に存在し絞り開口の大きさを変化させることにより光量を調整することができる第一の減光手段と、
上記光学手段の光軸上に存在し透過率を変化させることにより通過光量を調整することができる第二の減光手段と、
撮影時の露出を適正にするために上記第一、第二の減光手段の動作を制御する制御手段と、
撮影時のモードを設定するモード設定手段と、を有し、
上記制御手段は、上記モード設定手段が自動撮影モードにあるときは所定の絞り開口径までは第二の減光手段を優先使用し、さらに所定の絞り開口径よりも減光する場合は第一の減光手段による光量調整を優先して露出の適正化を行うことを特徴とする画像入力装置。
【請求項4】
被写体像を結像させるための光学手段と、
この光学手段の光軸上に存在し絞り開口の大きさを変化させることにより光量を調整することができる第一の減光手段と、
上記光学手段の光軸上に存在し透過率を変化させることにより通過光量を調整することができる第二の減光手段と、
撮影時の露出を適正にするために上記第一、第二の減光手段の動作を制御する制御手段と、を有し、
上記制御手段は、開放絞りから所定の絞り開口径となるまで第一の減光手段のみの動作による光量調整を優先して行い、上記所定の絞り開口径からさらに光量を制限する場合は上記所定の絞り開口径のままで第二の減光手段の動作による光量調整を行なうことを特徴とする画像入力装置。
【請求項5】
被写体像を結像させるための光学手段と、
この光学手段の光軸上に存在し絞り開口の大きさを変化させることにより光量を調整することができる第一の減光手段と、
上記光学手段の光軸上に存在し透過率を変化させることにより通過光量を調整することができる第二の減光手段と、
撮影時の露出を適正にするために上記第一、第二の減光手段の動作を制御する制御手段と、
撮影時のモードを設定するモード設定手段と、を有し、
上記制御手段は、上記モード設定手段が高画質モードにあるときは、開放絞りから所定の絞り開口径となるまで第一の減光手段のみの動作による光量調整を優先して行い、上記所定の絞り開口径からさらに光量を制限する場合は上記所定の絞り開口径のままで第二の減光手段の動作による光量調整を行うことを特徴とする画像入力装置。
【請求項6】
被写体像を結像させるための光学手段と、
この光学手段の光軸上に存在し絞り開口の大きさを変化させることにより光量を調整することができる第一の減光手段と、
上記光学手段の光軸上に存在し透過率を変化させることにより通過光量を調整することができる第二の減光手段と、
撮影時の露出を適正にするために上記第一、第二の減光手段の動作を制御する制御手段と、
撮影時のモードを設定するモード設定手段と、を有し、
上記制御手段は、上記モード設定手段が自動撮影モードにあるときは、開放絞りから所定の絞り開口径となるまで第一の減光手段のみの動作による光量調整を優先して行い、上記所定の絞り開口径からさらに光量を制限する場合は上記所定の絞り開口径のままで第二の減光手段の動作による光量調整を行うことを特徴とする画像入力装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の画像入力装置において、所定の開口径とは、光の回折による画像劣化が顕著に発現する直前の開口径であることを特徴とする画像入力装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−114283(P2007−114283A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303077(P2005−303077)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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