説明

画像処理方法、プログラム、画像処理装置、画像形成装置及び画像形成システム

【課題】文字の種類によって出力された文字が細くなり、ボールド機能などで対応すると、文字全体が太くなって読みづらくなる。
【解決手段】フォントデータの先頭に注目画素をセットし、注目画素を中心に、ウインドウに相当するフォントデータのビットマップデータを取得して、パターンマッチングにより、取得したデータと、あらかじめ設定していた画像ドットを付加する参照パターンのデータとを比較し、マッチした場合に、注目画素の空白ドットを画像ドットに置換することで、文字を太らせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理方法、プログラム、画像形成装置、画像処理装置、画像形成装置及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、これらの複合機等の画像形成装置として、例えば液体吐出ヘッドを記録ヘッドに用いたインクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置は、記録ヘッドから用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に記録液としてのインクを吐出して画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものである。
【0003】
このようなインクジェット記録装置としては、記録ヘッドをキャリッジに搭載して主走査方向に移動させながら、主走査方向と直交する方向に用紙を間歇的に搬送して画像を形成するシリアス型のものと、ライン型の記録ヘッドを備えてノズルの並び方向と直交する方向に用紙を搬送して画像を形成するライン型のものがある。
【0004】
いずれの方式のインクジェット記録装置であっても、主走査方向(又はノズルの並び方向)と用紙送り方向とのマトリクス状にドットを配置することによって画像を形成することになる。
【0005】
そのため、特に、文字画像を記録する場合、文字の斜線部では、解像度に従って階段状にドットが増えていく(あるいは、減っていく)ことから、ドットのギザギザ(ジャギー)が認識され、画像品質が十分得られないことがある。
【0006】
また、インクジェット記録では、液体であるインクを用いることから、特に普通紙上に印字した場合には、画像の色再現性、耐久性、耐光性、インク乾燥性、文字滲み(フェザリング)、色境界滲み(カラーブリード)などのインクジェット記録特有の画質劣化問題があり、更に、普通紙に対して高速印字しようとした場合には、これら全ての特性を満足して印刷することは極めて難しい状況である。
【0007】
前者のジャギーによる画質劣化に関して、ギザギザの文字画像の輪郭を滑らかにするスムージング方法としては、特許文献1に記載されているようなアンチエイリアシングと呼ばれているスムージング方法がある。
【特許文献1】実開平03−113452号公報
【0008】
しかしながら、この方法は、輪郭を非常に多くの階調でドットを変化させるため、高精度のスムージングができる一方、その処理が非常に複雑で、処理時間を必要とするため、最近のインクジェット記録装置のように高スループットを要求される画像形成装置には適していない。
【0009】
後者の普通紙印刷における文字滲みなどによる画像劣化に関して、染料系インクに代えて、着色剤として有機顔料、カーボンブラック等を用いる顔料系インクを普通紙印刷に使用することが行われている。顔料は染料とは異なり水への溶解性がないため、通常は、顔料を分散剤とともに混合し、分散処理して水に安定分散させた状態の水性インクとして用いられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、アプリケーションソフトで文書を作成してドット配置で画像を形成するインクジェット記録装置のような画像形成装置で出力する場合、アプリケーションソフトで指定されたフォント(一般的にはTrueTypeフォント)は、アプリケーションソフトやプリンタドライバなどで画像形成装置で出力するためのドットで構成される文字データに変換される。
【0011】
この場合、アプリケーションソフトやプリンタドライバによっては、出力した文字が細くなってしまうことがあるという課題がある。これは、TrueTypeフォントの輪郭部を形成するときに、印刷の解像度によっては、忠実に文字の輪郭を再現することができないためと考えられる。
【0012】
また、文字の種類によっても、例えばゴシック体は比較的太い文字であるのに対して、明朝体は細い書体である。そのため、明朝体で文書を作成した場合には、もう少し太い文字で出力して読みやすくしたい場合がある。
【0013】
この場合、アプリケーションソフトの太字或いはボールドという機能を用いて、指定した文字を太くする処理がある。ところが、このような従来の処理で太くした場合には、通常数ドット以上太くなってしまうため、元の文字の太さとは明らかに異なるレベルの文字となって、すべての文字に対して処理を行った場合には、かえって読みづらい文書となるという課題がある。
【0014】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、出力画像が細すぎる場合に少し太い画像を出力できるようにして画像品質を向上する画像処理方法、この画像処理方法をコンピュータに実行させるプログラム、この画像処理方法を実行する手段を備える画像処理装置、この画像処理方法を実行する手段を備えた画像形成装置、これらの画像処理装置と画像形成装置とを組み合わせた画像形成システム、この画像処理方法で処理された画像を出力するに適して画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像処理方法は、記録液の液滴を吐出して複数のドットからなる画像を形成する画像形成装置で出力するための画像データを生成する画像処理方法において、画像を形成する画像ドットに隣接する空白部に画像ドットを付加して画像を太くする処理をする構成とした。
【0016】
ここで、太くする処理をする画像が文字画像であることが好ましい。
【0017】
また、注目画素を含むm×nのウインドウに含まれるドットと所定のパターンとのパターンマッチングで画像ドットを付加するドットであるか否かを判別することが好ましい。また、空白部に付加する画像ドットは相対的に小さなサイズのドットである構成とできる。さらに、パターンマッチングを画像ドット及び空白部のドットを注目画素として行い、判別結果に応じて小さなサイズのドットを付加する構成とできる。
【0018】
また、付加する画像ドットの大きさが複数種類ある構成とできる。この場合、画像の輪郭部の傾きに応じて付加する画像ドットの大きさが異なる構成とできる。
【0019】
また、画像ドットを付加するモードと画像ドットを付加しないモードとを切り替え可能であることが好ましい。この場合、画像が文字であり、この文字のサイズに応じてモードを切り替える、画像が文字であり、この文字の種類に応じてモードを切り替える、解像度に応じてモードを切り替える構成とできる。
【0020】
本発明に係るプログラムは、本発明に係る画像処理方法をコンピュータに実行させる構成とした。
【0021】
本発明に係る画像処理装置は、本発明に係る画像処理方法を実行させる手段を備えている構成とした。
【0022】
本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る画像処理方法を実行させる手段を備えている構成とした。
【0023】
本発明に係る画像形成システムは、本発明に係る画像処理装置と記録液の液滴を吐出する記録ヘッドを搭載して画像を形成する画像形成装置とで構成した。
【0024】
本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る画像処理方法で生成された画像データを出力する画像形成装置において、記録液の液滴を吐出するノズルが連通する圧力室を加圧するエネルギーを発生する圧力発生手段を備える記録ヘッドと、この記録ヘッドの圧力発生手段を駆動するために1印刷周期内に複数の駆動パルスを有する駆動波形を生成する駆動波形生成手段とを備え、駆動波形は選択された複数の駆動パルスで吐出される複数の液滴が飛翔中に合体して1つの液滴になるように設定された波形であり、かつ、選択された複数の駆動パルスの内の最終駆動パルスが滴吐出速度を相対的に小さくするパルスであって、選択された複数の駆動パルスで吐出される液滴によって画像を形成するドットに隣接する空白部に画像ドットを形成する構成とした。
【0025】
ここで、複数の液滴から形成されたサイズの異なる複数種類の液滴はほぼ同じ位置に着弾するように駆動波形が設定されていることが好ましい。また、駆動波形を構成する駆動パルスは、メニスカスを圧力室側に引き込むように圧力室を膨張させる引き込み要素と、引き込み要素によって膨張した圧力室を収縮させる加圧要素とを含むことが好ましい。また、最終駆動パルスの引き込み要素である引き込み電圧が相対的に小さいことで吐出される滴吐出速度が相対的に小さいことが好ましい。
【0026】
また、印字信号に応じて1印刷周期内に出力される複数の駆動パルスの内から異なる組み合わせで2以上の駆動パルスを選択可能であることが好ましい。また、駆動波形には液滴を吐出させずにメニスカスを振動させる微駆動パルスを含むことが好ましい。この場合、微駆動パルスとこれに続く駆動パルスとは、駆動パルスで吐出される液滴の滴体積が、微駆動パルスがないときよりも相対的に大きくなる関係にあることが好ましい。
【0027】
また、少なくとも大きな滴を形成するための駆動パルス、小さな滴を形成するための駆動パルス及び微駆動パルスを選択して圧力発生手段に印加することが好ましい。また、記録液の粘度が5mPa・s〜20mPa・sであることが好ましい。
【0028】
本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る画像処理方法で生成された画像データを出力する画像形成装置において、膜沸騰で記録液の液滴を吐出する記録ヘッドを備えている構成とした。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る画像処理方法、プログラム、画像処理装置、画像形成装置及び画像形成システムによれば、出力された文字などの画像が細すぎると感じられる場合には太くすることができて通常の太さの画像にすることができ、画像品質を向上することができる。
【0030】
本発明に係る画像形成装置によれば、本発明に係る画像処理方法で生成された画像データを出力する画像形成装置において、記録液の液滴を吐出するノズルが連通する圧力室を加圧するエネルギーを発生する圧力発生手段を備える記録ヘッドと、この記録ヘッドの圧力発生手段を駆動するために1印刷周期内に複数の駆動パルスを有する駆動波形を生成する駆動波形生成手段とを備え、駆動波形は選択された複数の駆動パルスで吐出される複数の液滴が飛翔中に合体して1つの液滴になるように設定された波形であり、かつ、選択された複数の駆動パルスの内の最終駆動パルスが滴吐出速度を相対的に小さくするパルスであって、選択された複数の駆動パルスで吐出される液滴によって画像を形成するドットに隣接する空白部に画像ドットを形成する構成としたので、付加するドットを適切な位置に形成することができて、太文字化によって視認性を向上した読み易い文字などの画像を形成することができる。
【0031】
本発明に係る画像形成装置によれば、本発明に係る画像処理方法で生成された画像データを出力する画像形成装置において、膜沸騰で記録液の液滴を吐出する記録ヘッドを備えている構成としたので、解像度の高い画像を高速で形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。先ず、本発明に係る画像処理方法で生成された画像データを出力する画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の機構部の全体構成を説明する側面説明図、図2は同機構部の平面説明図である。
この画像形成装置は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材であるガイドロッド1とガイドレール2とでキャリッジ3を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ4で駆動プーリ6Aと従動プーリ6Bとの間に張架したタイミングベルト5を介して図2で矢示方向(主走査方向)に移動走査する。
【0033】
このキャリッジ3には、例えば、それぞれイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)のインク滴を吐出する液体吐出ヘッドからなる4個の記録ヘッド7y、7c、7m、7k(色を区別しないときは「記録ヘッド7」という。)を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0034】
記録ヘッド7を構成する液体吐出ヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。また、各色毎に独立したヘッド構成に限るものではなく、複数の色の液滴を吐出する複数のノズルで構成されるノズル列を有する1又は複数の液体吐出ヘッドで構成することもできる。
【0035】
また、キャリッジ3には、記録ヘッド7に各色のインクを供給するための各色のサブタンク8を搭載している。このサブタンク8にはインク供給チューブ9を介して図示しないメインタンク(インクカートリッジ)からインクが補充供給される。
【0036】
一方、給紙カセット10などの用紙積載部(圧板)11上に積載した用紙12を給紙するための給紙部として、用紙積載部11から用紙12を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙ローラ)13及び給紙ローラ13に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド14を備え、この分離パッド14は給紙ローラ13側に付勢されている。
【0037】
そして、この給紙部から給紙された用紙12を記録ヘッド7の下方側で搬送するため、用紙12を静電吸着して搬送するための搬送ベルト21と、給紙部からガイド15を介して送られる用紙12を搬送ベルト21との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ22と、略鉛直上方に送られる用紙12を略90°方向転換させて搬送ベルト21上に倣わせるための搬送ガイド23と、押さえ部材24で搬送ベルト21側に付勢された押さえコロ25とを備えている。また、搬送ベルト21表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ26を備えている。
【0038】
ここで、搬送ベルト21は、無端状ベルトであり、搬送ローラ27とテンションローラ28との間に掛け渡されて、副走査モータ31からタイミングベルト32及びタイミングローラ33を介して搬送ローラ27が回転されることで、図2のベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。なお、搬送ベルト21の裏面側には記録ヘッド7による画像形成領域に対応してガイド部材29を配置している。また、帯電ローラ26は、搬送ベルト21の表層に接触し、搬送ベルト21の回動に従動して回転するように配置されている。
【0039】
また、図2に示すように、搬送ローラ27の軸には、スリット円板34を取り付け、このスリット円板34のスリットを検知するセンサ35を設けて、これらのスリット円板34及びセンサ35によってロータリエンコーダ36を構成している。
【0040】
さらに、記録ヘッド7で記録された用紙12を排紙するための排紙部として、搬送ベルト21から用紙12を分離するための分離爪51と、排紙ローラ52及び排紙コロ53と、排紙される用紙12をストックする排紙トレイ54とを備えている。
【0041】
また、背部には両面給紙ユニット55が着脱自在に装着されている。この両面給紙ユニット55は搬送ベルト21の逆方向回転で戻される用紙12を取り込んで反転させて再度カウンタローラ22と搬送ベルト21との間に給紙する。
【0042】
さらに、図2に示すように、キャリッジ3の走査方向の一方側の非印字領域には、記録ヘッド7のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構56を配置している。
【0043】
この維持回復機56は、記録ヘッド7の各ノズル面をキャピングするための各キャップ57と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード58と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行なうときの液滴を受ける空吐出受け59などを備えている。
【0044】
このように構成した画像形成装置においては、給紙部から用紙12が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙12はガイド15で案内され、搬送ベルト21とカウンタローラ22との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド23で案内されて押さえコロ25で搬送ベルト21に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0045】
このとき、図示しない制御部によってACバイアス供給部から帯電ローラ26に対して正負が交互に繰り返す交番電圧を印加して、搬送ベルト21を交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが交互に所定の幅で繰り返されるパターンで帯電させる。この帯電した搬送ベルト21上に用紙12が給送されると、用紙12が搬送ベルト21に静電力で吸着され、搬送ベルト21の周回移動によって用紙12が副走査方向に搬送される。
【0046】
そこで、キャリッジ3を往路及び復路方向に移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド7を駆動することにより、停止している用紙12にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙12を所定量搬送後、次の行の記録を行なう。記録終了信号又は用紙12の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙12を排紙トレイ54に排紙する。
【0047】
また、両面印刷の場合には、表面(最初に印刷する面)の記録が終了したときに、搬送ベルト21を逆回転させることで、記録済みの用紙12を両面給紙ユニット61内に送り込み、用紙12を反転させて(裏面が印刷面となる状態にして)再度カウンタローラ22と搬送ベルト21との間に給紙し、タイミング制御を行って、前述したと同様に搬送ベル21上に搬送して裏面に記録を行った後、排紙トレイ54に排紙する
【0048】
また、印字(記録)待機中にはキャリッジ3は維持回復機構55側に移動されて、キャップ57で記録ヘッド7のノズル面がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ57で記録ヘッド7をキャッピングした状態でノズルから記録液を吸引し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行い、この回復動作によって記録ヘッド7のノズル面に付着したインクを清掃除去するためにワイパーブレード58でワイピングを行なう。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行なう。これによって、記録ヘッド7の安定した吐出性能を維持する。
【0049】
次に、記録ヘッド7を構成している液体吐出ヘッドの一例について図3及び図4を参照して説明する。なお、図3は同ヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図、図4は同ヘッドの液室短手方向(ノズルの並び方向)の断面説明図である。
【0050】
この液体吐出ヘッドは、例えば単結晶シリコン基板を異方性エッチングして形成した流路板101と、この流路板101の下面に接合した例えばニッケル電鋳で形成した振動板102と、流路板101の上面に接合したノズル板103とを接合して積層し、これらによって液滴(インク滴)を吐出するノズル104が連通する流路であるノズル連通路105及び圧力発生室である液室106、液室106に流体抵抗部(供給路)107を通じてインクを供給するための共通液室108に連通するインク供給口109などを形成している。
【0051】
また、振動板102を変形させて液室106内のインクを加圧するための圧力発生手段(アクチュエータ手段)である電気機械変換素子としての2列(図6では1列のみ図示)の積層型圧電素子121と、この圧電素子121を接合固定するベース基板122とを備えている。なお、圧電素子121の間には支柱部123を設けている。この支柱部123は圧電素子部材を分割加工することで圧電素子121と同時に形成した部分であるが、駆動電圧を印加しないので単なる支柱となる。
【0052】
また、圧電素子121には図示しない駆動回路(駆動IC)を搭載したFPCケーブル126を接続している。
【0053】
そして、振動板102の周縁部をフレーム部材130に接合し、このフレーム部材130には、圧電素子121及びベース基板122などで構成されるアクチュエータユニットを収納する貫通部131及び共通液室108となる凹部、この共通液室108に外部からインクを供給するためのインク供給穴132を形成している。このフレーム部材130は、例えばエポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂或いはポリフェニレンサルファイトで射出成形により形成している。
【0054】
ここで、流路板101は、例えば結晶面方位(110)の単結晶シリコン基板を水酸化カリウム水溶液(KOH)などのアルカリ性エッチング液を用いて異方性エッチングすることで、ノズル連通路105、液室106となる凹部や穴部を形成したものであるが、単結晶シリコン基板に限られるものではなく、その他のステンレス基板や感光性樹脂などを用いることもできる。
【0055】
振動板102は、ニッケルの金属プレートから形成したもので、例えばエレクトロフォーミング法(電鋳法)で作製しているが、この他、金属板や金属と樹脂板との接合部材などを用いることもできる。この振動板102に圧電素子121及び支柱部123を接着剤接合し、更にフレーム部材130を接着剤接合している。
【0056】
ノズル板103は各液室106に対応して直径10〜30μmのノズル104を形成し、流路板101に接着剤接合している。このノズル板103は、金属部材からなるノズル形成部材の表面に所要の層を介して最表面に撥水層を形成したものである。
【0057】
圧電素子121は、圧電材料151と内部電極152とを交互に積層した積層型圧電素子(ここではPZT)である。この圧電素子121の交互に異なる端面に引き出された各内部電極152には個別電極153及び共通電極154が接続されている。なお、この実施形態では、圧電素子121の圧電方向としてd33方向の変位を用いて液室106内インクを加圧する構成としているが、圧電素子121の圧電方向としてd31方向の変位を用いて加圧液室106内インクを加圧する構成とすることもできる。また、1つの基板122に1列の圧電素子121が設けられる構造とすることもできる。
【0058】
このように構成した液体吐出ヘッドヘッドにおいては、例えば圧電素子121に印加する電圧を基準電位から下げることによって圧電素子121が収縮し、振動板102が下降して液室106の容積が膨張することで、液室106内にインクが流入し、その後圧電素子121に印加する電圧を上げて圧電素子121を積層方向に伸長させ、振動板102をノズル104方向に変形させて液室106の容積/体積を収縮させることにより、液室106内の記録液が加圧され、ノズル104から記録液の滴が吐出(噴射)される。
【0059】
そして、圧電素子121に印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板102が初期位置に復元し、液室106が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室108から液室106内に記録液が充填される。そこで、ノズル104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
【0060】
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行なうこともできる。
【0061】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図5のブロック図を参照して説明する。
この制御部200は、この装置全体の制御を司るCPU201と、CPU211が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM202と、画像データ等を一時格納するRAM203と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ204と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行なう画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC205とを備えている。
【0062】
また、この制御部200は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行なうためのI/F206と、記録ヘッド7を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動波形を生成する駆動波形生成手段を含む印刷制御部207と、キャリッジ3側に設けた記録ヘッド7を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)208と、主走査モータ4及び副走査モータ31を駆動するためのモータ駆動部210と、帯電ローラ34にACバイアスを供給するACバイアス供給部212と、エンコーダセンサ43、35からの各検出信号、環境温度を検出する温度センサなどの各種センサからの検出信号を入力するためのI/O213などを備えている。また、この制御部200には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行なうための操作パネル214が接続されている。
【0063】
ここで、制御部200は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト側からの画像データ等をケーブル或いはネットを介してI/F206で受信する。
【0064】
そして、制御部200のCPU201は、I/F206に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC205にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行ない、この画像データをヘッド駆動制御部207からヘッドドライバ208に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成は後述するようにホスト側のプリンタドライバで行なっている。
【0065】
印刷制御部207は、上述した画像データをシリアルデータでヘッドドライバ208に転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、滴制御信号(マスク信号)などをヘッドドライバ208に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動信号のパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動波形生成部及びヘッドドライバに与える駆動波形選択手段を含み、1の駆動パルス(駆動信号)或いは複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形を生成してヘッドドライバ208に対して出力する。
【0066】
ヘッドドライバ208は、シリアルに入力される記録ヘッド7の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部207から与えられる駆動波形を構成する駆動信号を選択的に記録ヘッド7の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば前述したような圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド7を駆動する。このとき、駆動波形を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴(大ドット)、中滴(中ドット)、小滴(小ドット)など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0067】
また、CPU201は、リニアエンコーダを構成するエンコーダセンサ43からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて主走査モータ4に対する駆動出力値(制御値)を算出してモータ駆動部210を介して主走査モータ4を駆動する。同様に、ロータリエンコーダを構成するエンコーダセンサ35からの検出パルスをサンプリングして得られる速度検出値及び位置検出値と、予め格納した速度・位置プロファイルから得られる速度目標値及び位置目標値とに基づいて副走査モータ31対する駆動出力値(制御値)を算出してモータ駆動部210を介しモータドライバを介して副走査モータ31を駆動する。
【0068】
次に、印刷制御部207及びヘッドドライバ208の一例について図6を参照して説明する。
印刷制御部207は、上述したように、1印刷周期内に複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形(共通駆動波形)を生成して出力する駆動波形生成部301と、印刷画像に応じた2ビットの画像データ(階調信号0、1)と、クロック信号、ラッチ信号(LAT)、滴制御信号M0〜M3を出力するデータ転送部302とを備えている。
【0069】
なお、滴制御信号は、ヘッドドライバ208の後述するスイッチ手段であるアナログスイッチ317の開閉を滴毎に指示する2ビットの信号であり、共通駆動波形の印刷周期に合わせて選択すべき波形でHレベル(ON)に状態遷移し、非選択時にはLレベル(OFF)に状態遷移する。
【0070】
ヘッドドライバ208は、データ転送部302からの転送クロック(シフトクロック)及びシリアル画像データ(階調データ:2ビット/CH)を入力するシフトレジスタ311と、シフトレジスタ311の各レジスト値をラッチ信号によってラッチするためのラッチ回路312と、階調データと制御信号M0〜M3をデコードして結果を出力するデコーダ313と、デコーダ313のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ315が動作可能なレベルへとレベル変換するレベルシフタ314と、レベルシフタ314を介して与えられるデコーダ313の出力でオン/オフ(開閉)されるアナログスイッチ316とを備えている。
【0071】
このアナログスイッチ316は、各圧電素子121の選択電極(個別電極)154に接続され、駆動波形生成部301からの共通駆動波形が入力されている。したがって、シリアル転送された画像データ(階調データ)と制御信号MN0〜MN3をデコーダ313でデコードした結果に応じてアナログスイッチ316がオンにすることにより、共通駆動波形を構成する所要の駆動信号が通過して(選択されて)圧電素子121に印加される。
【0072】
ここで、この画像形成装置において使用する記録液であるインクについて説明する。記録液は、次の構成(1)〜(10)よりなる。
(1)顔料(自己分散性顔料)6wt%以上
(2)湿潤剤1
(3)湿潤剤2
(4)水溶性有機溶剤
(5)アニオンまたはノニオン系界面活性剤
(6)炭素数8以上のポリオールまたはグリコールエーテル
(7)エマルジョン
(8)防腐剤
(9)pH調製剤
(10)純水
【0073】
すなわち、印字(記録)するための着色剤として顔料を使用し、それを分解、分散させるための溶剤とを必須成分とし、更に添加剤として、湿潤剤、界面活性剤、エマルジョン、防腐剤、pH調整剤とを含んでいる。湿潤剤1と湿潤剤2とを混合するのは各々湿潤剤の特徴を活かすためと、粘度調整が容易にできるためである。
【0074】
以下、上記各インク構成要素について、より具体的に説明する。
(1)の顔料に関しては、特にその種類を限定することなく、無機顔料、有機顔料を使用することができる。無機顔料としては、酸化チタン及び酸化鉄に加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。また、有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。
【0075】
インクの好ましい態様によれば、これらの顔料のうち、水と親和性の良いものが好ましく用いられる。顔料の粒径は、0.05μmから10μm以下が好ましく、さらに好ましくは1μm以下であり、最も好ましくは0.16μm以下である。インク中の着色剤としての顔料の添加量は、6〜20重量%程度が好ましく、より好ましくは8〜12重量%程度である。
【0076】
インクの好ましく用いられる顔料の具体例としては、以下のものが挙げられる。
黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられる。
【0077】
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG)、3、12(ジスアゾイエローAAA)、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、81、83(ジスアゾイエローHR)、95、97、98、100、101、104、408、109、110、117、120、138、153、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22(ブリリアントファーストスカレット)、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ba))、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3(パーマネントレッド2B(Sr))、48:4(パーマネントレッド2B(Mn))、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81(ローダミン6Gレーキ)、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルーR)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルーE)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36等がある。
【0078】
その他顔料(例えばカーボン)の表面を樹脂等で処理し、水中に分散可能としたグラフト顔料や、顔料(例えばカーボン)の表面にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加し水中に分散可能とした加工顔料等が使用できる。
【0079】
また、顔料をマイクロカプセルに包含させ、該顔料を水中に分散可能なものとしたものであっても良い。
【0080】
インクの好ましい態様によれば、ブラックインク用の顔料は、顔料を分散剤で水性媒体中に分散させて得られた顔料分散液としてインクに添加されるのが好ましい。好ましい分散剤としては、従来公知の顔料分散液を調整するのに用いられる公知の分散液を使用することができる。
【0081】
分散液としては、例えば以下のものが挙げられる。
ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0082】
インクの好ましい態様によれば、これらの共重合体は重量平均分子量が3,000〜50,000であるのが好ましく、より好ましくは5,000〜30,000、最も好ましくは7,000〜15,000である。分散剤の添加量は、顔料を安定に分散させ、他の効果を失わせない範囲で適宣添加されて良い。分散剤としては1:0.06〜1:3の範囲が好ましく、より好ましくは1:0.125〜1:3の範囲である。
【0083】
着色剤に使用する顔料は、記録用インク全重量に対して6重量%〜20重量%含有し、0.05μm〜0.16μm以下の粒子径の粒子であり、分散剤により水中に分散されていて、分散剤が、分子量5、000から100、000の高分子分散剤である。水溶性有機溶剤が少なくとも1種類にピロリドン誘導体、特に、2−ピロリドンを使用すると画像品質が向上する。
【0084】
(2)〜(4)の湿潤剤1、2と水溶性有機溶剤に関しては、インクの場合、インク中に水を液媒体として使用するものであるが、インクを所望の物性にし、インクの乾燥を防止するために、また、溶解安定性を向上するため等の目的で、例えば下記の水溶性有機溶剤が使用される。これら水溶性有機溶剤は複数混合して使用してもよい。
【0085】
湿潤剤と水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、1,2、6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類;
【0086】
エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;
【0087】
エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類;
【0088】
2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミイダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物;
【0089】
ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N、N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;
【0090】
モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類;
【0091】
ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物類;
プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等である。
【0092】
これら有機溶媒の中でも、特にジエチレングリコール、チオジエタノール、ポリエチレングリコール200〜600、トリエチレングリコール、グリセロール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ペトリオール、1,5−ペンタンジオール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。これらは溶解性と水分蒸発による噴射特性不良の防止に対して優れた効果が得られる。
【0093】
その他の湿潤剤としては、糖を含有してなるのが好ましい。糖類の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類および四糖類を含む)および多糖類があげられ、好ましくはグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオースなどが挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。
【0094】
また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖(例えば、糖アルコール(一般式HOCH2(CHOH)nCH2OH(ここでn=2〜5の整数を表す。)で表される。)、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ酸などがあげられる。特に糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビットなどが挙げられる。
【0095】
これら糖類の含有量は、インク組成物の0.1〜40重量%、好ましくは0.5〜30重量%の範囲が適当である。
【0096】
(5)の界面活性剤に関しても、特に限定はされないが、アニオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩などが挙げられる。
【0097】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミドなどが挙げられる。前記界面活性剤は、単独または二種以上を混合して用いることができる。
【0098】
インクにおける表面張力は紙への浸透性を示す指標であり、特に表面形成されて1秒以下の短い時間での動的表面張力を示し、飽和時間で測定される静的表面張力とは異なる。測定法としては特開昭63−31237号公報等に記載の従来公知の方法で1秒以下の動的な表面張力を測定できる方法であればいずれも使用できるが、本発明ではWilhelmy式の吊り板式表面張力計を用いて測定した。表面張力の値は40mJ/m2以下が好ましく、より好ましくは35mJ/m2以下とすると優れた定着性と乾燥性が得られる。
【0099】
(6)の炭素数8以上のポリオールまたはグリコールエーテルに関しては、25℃の水中において0.1〜4.5重量%未満の間の溶解度を有する部分的に水溶性のポリオールおよび/またはグリコールエーテルを記録用インク全重量に対してを0.1〜10.0重量%添加することによって、該インクの熱素子への濡れ性が改良され、少量の添加量でも吐出安定性および周波数安定性が得られることが分かった。(A)2−エチル−1、3−ヘキサンジオール 溶解度:4.2%(20℃) (B)2、2、4−トリメチル−1、3−ペンタンジオール 溶解度:2.0%(25℃)。
【0100】
25℃の水中において0.1〜4.5重量%未満の間の溶解度を有する浸透剤は溶解度が低い代わりに浸透性が非常に高いという長所がある。したがって、25℃の水中において0.1〜4.5重量%未満の間の溶解度を有する浸透剤と他の溶剤との組み合わせや他の界面活性剤との組み合わせで非常に高浸透性のあるインクを作製することが可能となる。
【0101】
(7)インクには樹脂エマルジョンが添加されている方が好ましい。樹脂エマルジョンとは、連続相が水であり、分散相が次の様な樹脂成分であるエマルジョンを意味する。分散相の樹脂成分としてはアクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂などが挙げられる。
【0102】
インクの好ましい態様によれば、この樹脂は親水性部分と疎水性部分とを併せ持つ重合体であるのが好ましい。また、これらの樹脂成分の粒子径はエマルジョンを形成する限り特に限定されないが、150nm程度以下が好ましく、より好ましくは5〜100nm程度である。
【0103】
これらの樹脂エマルジョンは、樹脂粒子を、場合によって界面活性剤とともに水に混合することによって得ることができる。例えば、アクリル系樹脂またはスチレン−アクリル系樹脂のエマルジョンは、(メタ)アクリル酸エステルまたはスチレンと、(メタ)アクリル酸エステルと、場合により(メタ)アクリル酸エステルと、界面活性剤とを水に混合することによって得ることができる。樹脂成分と界面活性剤との混合の割合は、通常10:1〜5:1程度とするのが好ましい。界面活性剤の使用量が前記範囲に満たない場合、エマルジョンとなりにくく、また前記範囲を超える場合、インクの耐水性が低下したり、浸透性が悪化する傾向があるので好ましくない。
【0104】
前記エマルジョンの分散相成分としての樹脂と水との割合は、樹脂100重量部に対して水60〜400重量部、好ましくは100〜200の範囲が適当である。
【0105】
市販の樹脂エマルジョンとしては、マイクロジェルE−1002、E−5002(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ペイント株式会社製:いずれも商品名)、ボンコート4001(アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業株式会社製:商品名)、ボンコート5454(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、大日本インキ化学工業株式会社製:商品名)、SAE−1014(スチレン−アクリル系樹脂エマルジョン、日本ゼオン株式会社製:商品名)、サイビノールSK−200(アクリル系樹脂エマルジョン、サイデン化学株式会社製:商品名)、などが挙げられる。
【0106】
インクは、樹脂エマルジョンを、その樹脂成分がインクの0.1〜40重量%となるよう含有するのが好ましく、より好ましくは1〜25重量%の範囲である。
【0107】
樹脂エマルジョンは、増粘・凝集する性質を持ち、着色成分の浸透を抑制し、さらに記録材への定着を促進する効果を有する。また、樹脂エマルジョンの種類によっては記録材上で皮膜を形成し、印刷物の耐擦性をも向上させる効果を有する。
【0108】
(8)〜(10)インクには上記着色剤、溶媒、界面活性剤の他に従来より知られている添加剤を加えることができる。
例えば、防腐防黴剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム等が使用できる。
【0109】
pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響をおよぼさずにpHを7以上に調整できるものであれば、任意の物質を使用することができる。その例として、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩等が挙げられる。
【0110】
キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウム等がある。
【0111】
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等がある。
【0112】
このように、顔料、水溶性有機溶剤、炭素数8以上のポリオールまたはグリコールエーテル、および水を少なくとも含んでなるインク構成を用いることにより、普通紙上へ印字した場合でも,(1)良好な色調(十分な発色性,色再現性を有する)、(2)高い画像濃度、(3)文字・画像にフェザリング現象やカラーブリード現象のない鮮明な画質、(4)両面印刷にも耐え得るインク裏抜け現象の少ない画像、(5)高速印刷に適した高いインク乾燥性(定着性)、(6)耐光性,耐水性などの高い堅牢性を有した高画質画像を達成することができ、画像濃度、発色性、色再現性、文字にじみ、色境界にじみ、両面印刷性、定着性等を大幅に改善することができる。
【0113】
次に、このようなインクを使用する場合に好ましい駆動波形の一例について図7及び図8を参照して説明する。
駆動波形生成部301からは1印刷周期(1駆動周期)内に、図7に示すように、基準電位Veから立ち下がる波形要素と、立下り後の状態から立ち上がる波形要素などで公正される、8個の駆動パルスP1ないしP8からなる駆動信号(駆動波形)を生成して出力する。一方、データ転送部302からの滴制御信号M0〜M3によって使用する駆動パルスを選択する。
【0114】
ここで、駆動パルスの電位Vが基準電位Veから立ち下がる波形要素は、これによって圧電素子121が収縮して加圧液室106の容積が膨張する引き込み波形要素である。また、立下り後の状態から立ち上がる波形要素は、これによって圧電素子121が伸長して加圧液室106の容積が収縮する加圧波形要素である。
【0115】
そして、データ転送部302からの滴制御信号M0〜M3によって、小滴(小ドット)を形成するときには図8(a)に示すように駆動パルスP1を選択し、中滴(中ドット)を形成するときには図8(b)に示すように駆動パルスP4ないしP6を選択し、大滴(大ドット)を形成するときには図8(c)に示すように駆動パルスP2ないしP8を選択し、微駆動の(滴吐出を伴わないでメニスカスを振動させる)ときには図8(d)に示すように微駆動パルスP2を選択して、それぞれ記録ヘッド7の圧電素子121に印加させるようにする。
【0116】
中滴を形成する場合、駆動パルスP4にて1滴目、駆動パルスP5にて2滴目、駆動パルスP6にて3滴目を吐出させ、飛翔中に合体させて一滴として着弾させる。このとき、圧力室(液室106)の固有振動周期をTcとすると、駆動パルスP4とP5の吐出タイミングの間隔は2Tc±0.5μsが好ましい。駆動パルスP4とP5は、単純引き打ち波形要素で構成されているため、駆動パルスP6も同様の単純引き打ち波形要素にするとインク滴速度が大きくなりすぎてしまい、他の滴種の着弾位置からずれてしまうおそれがある。そこで、駆動パルスP6は、引き込み電圧を小さくする(立下りの電位を少なくする)ことでメニスカスの引き込みを小さくし、3滴目のインク滴速度を抑えている。ただし、必要なインク滴体積をかせぐために立ち上げ電圧は小さくしない。
【0117】
つまり、複数の駆動パルスのうちの最終駆動パルスの引き込み波形要素では引き込み電圧を相対的に小さくすることによって、当該最終駆動パルスによる滴吐出速度を相対的に小さくして、着弾位置を他の滴種と極力合わせるようにすることができる。
【0118】
また、微駆動パルスP2とは、ノズルのメニスカスの乾燥を防ぐため、インク滴を吐出させずにメニスカスを振動させる駆動波形である。非印字領域ではこの微駆動パルスP2が記録ヘッド7に印加される。また、この微駆動波形である駆動パルスP2を、大滴を構成する駆動パルスの一つとして利用することにより、駆動周期の短縮化(高速化)を達成することができる。
【0119】
さらに、微駆動パルスP2と駆動パルスP3の吐出タイミングの間隔を、固有振動周期Tc±0.5μsの範囲内に設定することにより、駆動パルスP3によって吐出するインク滴の体積をかせぐことができる。つまり、微駆動パルスP2によって生じた振動周期によって加圧液室106の圧力振動に駆動パルスP3による加圧液室6の膨張を重畳させることによって駆動パルスP3で吐出できる滴の滴体積を駆動パルスP3単独で印加する場合よりも大きくすることができる。
【0120】
なお、インクの粘度によって必要な駆動波形が異なることから、この画像形成装置においては、図9に示すように、インク粘度が5mPa・sのときの駆動波形、同じく粘度が10mPa・sのときの駆動波形、同じく20mPa・sのときの駆動波形をそれぞれ用意し、温度センサからの検出温度からインク粘度を判定して、使用する駆動波形を選択するようにしている。
【0121】
つまり、インク粘度が小さいときは駆動パルスの電圧を相対的に小さく、インク粘度が大きいときは駆動パルスの電圧を相対的に大きくすることにより、インク粘度(温度)によらずインク滴の速度及び体積を略一定に吐出させることができる。また、駆動パルス2は、インク粘度に合わせて波高値を選択することにより、インク滴を吐出させることなくメニスカスを振動させることができる。
【0122】
このような駆動パルスから構成される駆動波形を使用することによって、大中小の各滴が用紙に着弾するまでの時間を制御することができ、吐出開始の時間が大中小の各滴で異なっても、各滴をほぼ同じ位置に着弾させることが可能となる。
【0123】
次に、上記の画像形成装置によって印刷画像を出力するための本発明に係る画像形成方法をコンピュータに本発明に係るプログラムを搭載した画像処理装置及び上記画像形成装置についてについて以下に説明する。
【0124】
次に、本発明に係る画像処理装置と上述した画像形成装置であるインクジェットプリンタ(インクジェット記録装置)とで構成した本発明に係る画像形成システムの一例について図10を参照して説明する。
この印刷システム(画像形成システム)は、パーソナルコンピュータ(PC)などからなる1又は複数台の画像処理装置400と、インクジェットプリンタ500とが、所定のインターフェイス又はネットワークで接続されて構成されている。
【0125】
画像処理装置400は、図11に示すように、CPU401と、メモリ手段である各種のROM402やRAM403とが、バスラインで接続されている。このバスラインには、所定のインターフェイスを介して、ハードディスクなどの磁気記憶装置を用いた記憶装置406と、マウスやキーボードなどの入力装置404と、LCDやCRTなどのモニタ405と、図示しないが、光ディスクなどの記憶媒体を読み取る記憶媒体読取装置が接続され、また、インターネットなどのネットワークやUSBなどの外部機器と通信を行なう所定のインターフェイス(外部I/F)407が接続されている。
【0126】
画像処理装置400の記憶装置406には、本発明に係るプログラムを含む画像処理プログラムが記憶されている。この画像処理プログラムは、記憶媒体から記憶媒体読取装置により読み取って、あるいは、インターネットなどのネットワークからダウンロードするなどして、記憶装置406にインストールしたものである。このインストールにより画像処理装置400は、以下のような画像処理を行なうために動作可能な状態となる。なお、この画像処理プログラムは、所定のOS上で動作するものであってもよい。また、特定のアプリケーションソフトの一部をなすものであってもよい。
【0127】
なお、本発明に係る画像処理方法はインクジェットプリンタ側で実施することもできるが、ここでは、インクジェット記録装置側では、装置内に画像の描画又は文字のプリント命令を受けて実際に記録するドットパターンを発生する機能を持たない例で説明する。すなわち、ホストとなる画像処理装置400で実行されるアプリケーションソフトなどからのプリント命令は、画像処理装置400(ホストコンピュータ)内にソフトウェアとして組み込まれた本発明に係るプリンタドライバで画像処理されてインクジェットプリンタ500が出力可能な多値のドットパターンのデータ(印刷画像データ)が生成され、それがラスタライズされてインクジェットプリンタ500に転送され,インクジェットプリンタ500が印刷出力される例で説明する。
【0128】
具体的には、画像処理装置400内では、アプリケーションやオペレーティングシステムからの画像の描画又は文字の記録命令(例えば記録する線の位置と太さと形などを記述したものや、記録する文字の書体と大きさと位置などを記述したもの)は描画データメモリに一時的に保存される。なお、これらの命令は、特定のプリント言語で記述されたものである。
【0129】
そして、描画データメモリに記憶された命令は、ラスタライザによって解釈され、線の記録命令であれば、指定された位置や太さ等に応じた記録ドットパターンに変換され、また、文字の記録命令であれば画像処理装置(ホストコンピュータ)400内に保存されているフォントアウトラインデータから対応する文字の輪郭情報を呼びだし指定された位置や大きさに応じた記録ドットパターンに変換され、イメージデータであれば、そのまま記録ドットのパターンに変換される。
【0130】
その後、これらの記録ドットパターン(画像データ)に対して画像処理を施してラスタデータメモリに記憶する。このとき、画像処理装置400は、直交格子を基本記録位置として、記録ドットパターンのデータにラスタライズする。画像処理としては、例えば色を調整するためのカラーマネージメント処理(CMM)やγ補正処理、ディザ法や誤差拡散法などの中間調処理、さらには下地除去処理、インク総量規制処理などがある。そして、ラスタデータメモリに記憶された記録ドットパターンがインタフェースを経由してインクジェット記録装置500へ転送されるものである。
【0131】
そこで、画像(以下では文字を例にして説明する。)を太くする太文字化(太字化)について図12以降をも参照して説明する。
先ず、太文字化処理を行わない場合の出力例を図12に、そのドットサイズでの部分拡大図を図13に示している。この実施形態では、解像度が主走査方向と副走査方向で異なる場合を示しており、画像の解像度は、副走査方向にはノズルピッチと同じ解像度(この例では300dpi)で形成され、主走査方向には副走査方向より高密度に(この例では、副走査方向の2倍の600dpi)で形成している。なお、図13では、主走査方向は副走査方向の2倍の解像度であるので、主走査方向の2つのドット分が副走査方向の1ドット分に相当するが、図示の都合上、主走査方向は副走査方向に対して2倍に拡大して図示している(以下同様である。)。また、文字画像部分を塗り潰しの丸印で、背景部分を白抜きの丸印で図示している(以下でも同様とする。)。
【0132】
これに対して、本発明に係る太文字化処理を行った場合のドットサイズでの部分拡大図を図14に示している。つまり、図14に示すように、画像部分を形成するドットに隣接する空白部のドットに、副走査方向に1ドット、主走査方向に1ドット、大滴の(大きな)ドットDpを付加している。これにより、文字が太くなり、細すぎる文字を太くして、視認性の高い文字を印刷することができ、文字品質が向上する。
【0133】
また、他の例のドットサイズでの部分拡大図を図15に示している。この例は、解像度が相対的に高い(例えば600dpi)主走査方向では画像部分を形成するドットに隣接する空白部のドットに、大滴の(大きな)ドットDplを付加し、解像度が相対的に低い(例えば300dpi)副走査方向では画像部分を形成するドットに隣接する空白部のドットに、中滴の(大滴に比べて相対的に小さな)ドットDpmを付加している。
【0134】
なお、上記画像形成装置では、大滴(大ドット)、中滴(中ドット)、小滴(小ドット)を形成できるので、中滴に代えて小滴を付加することもできる。
【0135】
この図15の例のように解像度に応じて付加するドットの大きさ(ドットサイズ)を変えることによって、粗い解像度ではドットを付加することによって太りすぎてしまう場合に、適切な太り方を実現することができる。
【0136】
そこで、文字の太文字化を行う処理について具体的に説明する。
文字を形成するドットの横あるいは下に大滴を付加する方法としては、パターンマッチングが高速で処理できるという点で優れている。図16は、パターンマッチングに用いられるウインドウの例である。ウインドウサイズとしては、横m、縦n(m×n)のサイズである。ここでは、mとnは同じ値であり、図17に示すように、m=3、n=3のウインドウで行った例について説明する。
【0137】
フォントデータは、プリンタドライバソフトで、ビットマップデータに展開される。ビットマップデータはフォントを形成するドットを示したものである。フォントデータとしてのビットマップデータに対して、各ビットを前述のウインドウ単位でパターンマッチングを実施する。
【0138】
プリンタドライバが実行するパターンマッチング処理(太文字化処理)の一例について図18を参照して説明する。
先ず、フォントデータの先頭に注目画素をセットする。注目画素を中心に、ウインドウに相当するフォントデータのビットマップデータを取得する。この場合、取得したビットマップデータは3×3の9ドット分のデータである。パターンマッチングにより、取得したデータと、あらかじめ設定していた画像ドットを付加するパターン(以下「参照パターン」という。)のデータとを比較し、マッチした場合に、注目画素を大滴(又は中滴)を示す画像ドットのデータに置換する。
【0139】
これらの処理は、1画素を1バイトのデータとして扱ってもよいし、1ビットのデータとして扱っても良い。1バイトのデータとして扱う場合は、9ドット分のデータを表すには9バイト必要であるのに対して、1ビットのデータとして扱う場合は、9ドット分のデータを表すには2バイトのデータ量で済むので、1ビットのデータとして扱ったほうが、処理するデータ数が小さく、メモリの節約、処理速度の向上が図れるため、好ましい。
【0140】
このパターンマッチングの例について図19及び図20を参照して具体的に説明する。
図19(a)〜(c)の参照パターンの一例を示している。この参照パターンを用いて図20(a)に示すフォントデータとパターンマッチングを行った場合、図20(a)に示すように、フォントデータの画素位置(ドット位置)D45を注目画素としたときのウインドウWに含まれるドットの状態は、図19(c)の参照パターンと一致することになるので、注目画素D45が図20(b)に示すように空白データから画像ドットのデータに置換される。
【0141】
同様に、ウインドウWが1つ右に移動して、注目画素がD46となった場合、図19(b)の参照パターンと一致するので、注目画素D46が空白のデータから画像ドットデータに置換され、更にウインドウWが1つ右に移動して、注目画素がD47となった場合、図19(a)の参照パターンと一致するので、注目画素D47が空白のデータから画像ドットデータに置換される。
【0142】
画像ドットデータの生成において、画像ドットを示すデータは、元のフォントデータがビットマップデータのように0(空白)と255(印字データ)で表されるときには、空白データを示す「0」を画像ドットデータを示す「255」に変更する。また、0(空白)、1(印字データ)のように2値で表されるときには、空白データを示す「0」を印字データを示す「1」に変更する。
【0143】
パターンマッチングにより生成した大滴を示すデータで構成されたフォントデータ(前者の場合)、あるいは小滴用2値(0、1)データと元の2値(0、1)フォントデータ(後者の場合)に応じて、大滴(又は中、小滴)を印字することにより、文字の太文字化を実現することができる。
【0144】
なお、上記の具体例では、図14に示すように副走査方向に大滴のドットを付加する例で説明しているが、図15に示す副走査方向には中滴(又は小滴)のドットを付加し、主走査方向には大滴のドットを付加する場合には、参照パターンとして副走査方向用と主走査方向用をそれぞれ別個に作成して、同様にパターンマッチングを行うことによって、主走査方向と副走査方向で、大きさの異なる種類の画像ドットを付加する(置換する)ことができる。
【0145】
次に、太文字化を行う方法として、太文字化により文字を太くしたうえに、更に階段状変化分にジャギー補正を行う方法について説明する。
文字を形成するドットの横あるいは下に、小滴、又は中滴、若しくは大滴を付加する方法としては、上述したようにパターンマッチングが高速で処理できる。ウインドウサイズとしては、上述したように、横m、縦n(m×n)のサイズであるが、ここでは、主走査方向に平行な線に近い斜線ではジャギー補正を行い、副走査方向に平行な線に近い斜線ではジャギー補正を行わないので、mとnは異なった値となる。すなわち、横線に近い斜線の階段状変化点及びその近傍の空白ドットが検出できるようにmは大きく、逆に、縦線に近い斜線の階段状変化点近傍は検出する必要がないため、nは小さな値となる。ここでは、m=9、n=3のウインドウを用いて行う。
【0146】
この場合の処理について図21を参照して説明すると、注目画素が空白データであるときには、注目画素を中心に、ウインドウに相当するフォントデータのビットマップデータを取得する。したがって、取得したビットマップデータは、9×3の27ドット分のデータである。パターンマッチングにより、取得したデータと、あらかじめ設定していた小さな滴を付加或いは置換する参照パターンのデータとを比較し、マッチした場合に、注目画素を小さな滴を示すデータに置換する。
【0147】
これらの処理は、1画素を1バイトのデータとして扱ってもよいし、1ビットのデータとして扱っても良い。1バイトのデータとして扱う場合は、27ドット分のデータを表すには27バイト必要であるのに対して、1ビットのデータとして扱う場合は、27ドット分のデータを表すには4バイトのデータ量で済むので、1ビットのデータとして扱ったほうが、処理するデータ数が小さく、メモリの節約、処理速度の向上が図れるため、好ましい。
【0148】
ジャギー補正のみを行うパターンマッチングの例を図22、図23により具体的に説明する。図22(a)〜(e)の参照パターンを用いて図23に示すパターンとパターンマッチングを行ったとき、図23(a)に示すように、フォントデータのドットD46を注目画素としたとき、両者のドットのパターンは一致するため、図23(b)示すように、注目画素D46の位置が空白のドットから小さな滴の画像ドットに置換される。
【0149】
この場合も、上述したと同様に、小さな滴データの生成において、小さな滴を示すデータは、元のフォントデータがビットマップデータのように0(空白)と255(印字データ)で表されるとき、あるいは0(空白)、1(印字データ)のように2値で表されるときに、いったん0(空白)、255(印字データ)のように変換したときには、空白データ、フォントを形成するデータそのものを小さな滴を表すデータ(例えばそれぞれ85)に置換してもよい。また、0と1のまま処理するときには、フォントデータと同じサイズの別のメモリ(小さな滴データ用メモリ)設け、その中の小さな滴をつける位置に印字データを表す「1」を生成すればよい。パターンマッチングにより生成した小さな滴、大滴を示すデータで構成されたフォントデータ(前者の場合)、あるいは小さな滴用2値(0、1)データと元の2値(0、1)フォントデータとで(後者の場合)、小さな滴、大滴を印字することにより、太文字化を実現することができる。
【0150】
このように、9×3のウインドウ及び参照パターンを用いることにより、変化点を中心に前後4ドットの空白(すべてのドットを注目画素とする場合には空白及び画像ドット)に対して小さな滴に置換するかどうかの判別が可能となる。変化点の前後4ドット分に対して実施可能な理由は、例えば図23(a)中のドットDeの位置を注目画素としたときには変化点がウインドウの外になるため、変化点を検出できないためである。これを解消して、ドットDeの位置にも小滴を付加する場合には、ウインドウ及び参照パターンを11×3のサイズにすることにより可能となる。
【0151】
すなわち、ウインドウのサイズ、参照パターンのサイズを大きくすることにより、水平あるいは垂直に近い斜線の変化点を検出でき、その傾きに応じた小滴を付加することが可能となり、それらの斜線品質をよりいっそう最適にすることができる。つまり、前述したように、ウインドウ及び参照パターンのサイズは上記の例で使用したものに限らず、小さな滴への置換をどこまで実施する必要があるか、処理時間が印字速度に対して間に合うかによって決まる。さらに言うと、このサイズが大きくなるとパターンマッチングするデータが大きくなるため、パターンマッチングに時間を要する。そのため、処理時間からは、そのサイズとしてはできるだけ小さいほうがよい。一方、変化点の前後いくつのドットを小さな滴にすれば良いかは、ジャギー補正による文字品質から決まるので、処理速度と、文字品質から最適なサイズを決定する必要がある。
【0152】
本発明者の実験により、前述のようなインクを用いた場合、インクの広がりによる隣接ドットとの凹凸の低減から、通常4ドット、好ましくは6ドットの小さな滴付加でも、十分文字品質の向上が図れることがわかり、また、処理速度も、10PPM以上のスループットを達成することができることが分かった。したがって、ウインドウのサイズとしては、主走査方向には6ドットが検出できるm≦13、副走査方向にはn=3のサイズが適している。
【0153】
次に、図24ないし図30を参照して他の太文字化の例について説明する。これらの例は、小さな滴として、小滴と中滴の2種類のサイズの滴を用いて、かつ、付加するドット数を異ならせた例である。なお、いずれの図においても、等間隔で表された隣り合うドットのピッチは、実際の紙面上では、主走査方向600dpi、副走査方向300dpiとなる。
【0154】
図24に示す例は変化点の前の1ドットの空白部に小滴(D61、D71)を付加した例、図25に示す例は変化点の前の2ドットの空白部に中滴(D61、D71)と小滴(D60、D72)を付加した例、図26に示す例は変化点の前の3ドットの空白部に中滴(D61、D71)と小滴(D60、D59、D72、D73)を付加した例、図27に示す例は変化点の前の4ドットの空白部に中滴(D61、D60、D71、D72)と小滴(D59、D58、D72、D73)を付加した例である。
【0155】
また、図28ないし図31に示す例は変化点の前の4ドットの空白部に小滴(D61〜D58、D71〜D74)を付加した上で、図28に示す例は変化点の後の1ドットの文字部を中滴(D62、D70)に置換した例、図29に示す例は変化点の後の2ドットの文字部を中滴(D62、D70)と小滴(D63、D69)に置換した例、図30に示す例は変化点の後の3ドットの文字部を中滴(D62、D63、D70、D69)と小滴(D64、D68)に置換した例、図31に示す例は変化点の後の4ドットの文字部を中滴(D62、D63、D70、D69)と小滴(D64、D65、D68、D67)に置換した例である。
【0156】
以上のようにして、階段状変化部に対してはジャギー補正を行い、それ以外の文字と隣接する空白部(例えば図23のドットDeの部分)には図22(a)のパターンにより太文字化を行うようにした。
【0157】
本発明者らは、これら8種類の方法で文字を作成し、太文字化による視認性の向上とジャギーの目立ちにくさを評価した結果、変化点の前の空白ドットに対しては、4ドットの小滴を付加し、さらに文字部を形成するドットを2ドット以上(すなわち、図29ないし図31の例)の補正を行うことが好ましいことが分かった。
【0158】
一方、処理速度の点から比較すると、図24の例が最も速く、図25、図26…図31の例の順に遅くなる。これは、1つには、処理方法が、図24ないし図27の例では注目画素が空白の場合のみにパターンマッチングを実行すればよいのに比べ、図28ないし図31の例では、空白の場合及び画像ドットの場合の両方(すなわちすべてのフォントデータ)でパターンマッチングを行う必要があるためである。言い換えれば、空白にのみ小さな滴を付加することにより、高速にジャギーを改善したフォントデータを作成することができる。また、画像ドットのみを小さな滴に置換することにより、高速にジャギーを改善したフォントデータを作成することができるが太字化するときには好ましくない。
【0159】
2つ目としては、必要な参照パターンの数が、図24、図25、……図31の例の順に多くなるためである。これは、図25の例を実施するには、図24の例の参照パターンにさらに空白2ドット目を判断する参照パターンが必要であり、図28に示す例では、さらに文字を構成するドット1つ目を判断する参照パターンが必要であり、図29に示す例では、さらにドット2つ目を判断するための参照パターンが必要となるためである。このように、図24に示す例から図31に示す例に行くにしたがって、判断するための参照パターンの数が増え、パターンマッチングの回数が増えるためである。
【0160】
ここで、空白部及び画像部に対してパターンマッチングを行う例について図32を参照して説明する。
フォントデータとしてのビットマプデータに対して、各ビットを前述のウインドウ単位でパターンマッチングを実施する。まず、フォントデータの先頭に注目画素をセットする。そして、注目画素を中心に、ウインドウに相当するフォントデータのビットマップデータを取得する。この場合、前述した9×3サイズのウインドウを用いる場合には27ドット分のデータを取得する。パターンマッチングにより、取得したデータと、あらかじめ設定していた小滴及び中滴を付加あるいは置換する参照パターンのデータとを比較し、マッチした場合に、注目画素を小滴又は中滴を示すデータに置換する。
【0161】
これらの処理は、1画素を1バイトのデータとして扱ってもよいし、1ビットのデータとして扱っても良い。1バイトのデータとして扱う場合は、27ドット分のデータを表すには27バイト必要であるのに対して、1ビットのデータとして扱う場合は、27ドット分のデータを表すには4バイトのデータ量で済むので、1ビットのデータとして扱ったほうが、処理するデータ数が小さく、メモリの節約、処理速度の向上が図れるため、好ましい。
【0162】
このとき,小滴、中滴を示すデータは、元のフォントデータがビットマップデータのように0(空白)と255(印字データ)で表されるとき、あるいは0(空白)、1(印字データ)のように2値で表されるときに、いったん0(空白)、255(印字データ)のように変換したときには、空白データ、フォントを形成するデータそのもの小滴、中滴を表すデータ(例えばそれぞれ85,170)に置換してもよい。また、0と1のまま処理するときには、フォントデータと同じサイズの別のメモリを複数(ここでは、小滴と中滴の2種類であるので小滴用、中滴用の2つ)設け、それぞれの中の小滴、中滴をつける位置に印字データを表す「1」を生成すればよい。パターンマッチングにより生成した小滴、中滴、大滴を示すデータで構成されたフォントデータ(前者の場合)、あるいは小滴用2値(0、1)データ、中滴用の2値(0、1)データと元のフォントデータ(2値)とで、小滴、中滴、大滴を印字することにより、ジャギーが改善された斜線を実現することができる。
【0163】
このようにして、空白部に画像ドットを付加したフォントデータを、実際に以下の条件で、インクジェット記録ヘッドを用いて普通紙に印字してその文字品質を評価した。
ヘッド:384ノズル/色
ノズルピッチ=84μm(300dpi相当)
画像解像度:主走査方向600dpi、副走査方向300dpi(=ノズルピッチ)
ドットサイズ:大滴87μm、小滴40μm、中滴60μm
文字:MS明朝 フォントサイズ=6、10、12、20、30、50、80ポイント
ジャギー補正方法:図24ないし図33の例
印字方法:パス数(1ライン形成するスキャン数)=1、インターレース=なし
紙:リコー タイプ6200(商品名)
【0164】
本発明における太文字化処理を施した文字と太文字化処理を施さない文字についての出力結果を、各文字サイズについて比較した結果を表1に示している。なお、表1中の記号は、××:潰れて文字品質劣悪、×:文字が細く、文字品質悪、△:文字はやや細い、○:文字品質良好で、読みやすい、ことを表している。
【0165】
【表1】

【0166】
この表1の結果から、本発明による太文字化を行うことによって文字の視認性が増して読みやすくなり、文字品質が向上することが分かる。また、フェザリングもなく、画像濃度も十分な文字が得られた。
【0167】
また、表1から分かるように、フォントサイズとしては小さすぎるサイズでは、かえって文字品質が低下してしまうことが分かった。これは、小さなサイズの文字では、文字を構成するドットの間隔が狭く、太文字化により付加したドットにより文字つぶれが発生するためである。そのサイズとしては、8ポイント以上では極めて太文字化の効果があることが分かった。
【0168】
ここでは、普通紙に印字したときの例を示したが、コート紙や、光沢紙、OHPフィルムなどに印字するときにも本発明を適用することにより、同様の効果を得ることができる。また、これらの紙種によって、太文字化を実施する場合と、しない場合とを選択可能とすることもでき、これにより、にじみやすい用紙と、にじみにくい用紙による文字太さの程度に応じて最適な文字太さを実現することが可能となる。
【0169】
また、ここでは、600dpi×300dpiの解像度で文字を印字した例を示したが、より低解像度の400dpi×200dpi、300dpi×150dpiの文字に対しても、文字を構成するドット径が大きくなり、階段状の段差がさらに目立つことから、本発明を好適に適用でき、その効果も大きい。
【0170】
これに対して、解像度が600dpi×600dpi、600dpi×1200dpi、1200dpi×1200dpi、……といった高密度の場合には、フォントを構成するドット数が多く、ドットサイズも小さいためジャギーが目立たない。そのため、異なる解像度で印字する複数の印字モードを有する画像形成装置の場合、その解像度によって、本発明を実施するモードと、実施しないモードを設け、解像度に応じて選択するのがスループットの向上をいう点では好ましい。
【0171】
このように、文字サイズ、文字種、画像の解像度などに応じて太文字化処理を施すモードと太文字化処理を施さない通常モードとを切り替える場合の処理の一例について図33を参照して説明する。
この処理では、文字サイズが8ポイント以上、文字種が明朝体、画像の解像度が600dpi×300dpi以下のときに、太文字化処理を施すようにしている。なお、文字サイズ、文字種、画像の解像度の判別条件は、これに限るものではない。
【0172】
このように、文字のサイズ、文字の種類、解像度に応じて太文字化処理を施すモード(ドットを付加するモード)と太文字化処理を施さない通常モード(ドットを付加しないモード)とを切り替えるようにすることで、高スループットの場合でも不必要な処理速度を要することなく高PPMの出力を行うことができるようになる。
【0173】
また、文字の輪郭部の傾きに応じて複数種類の参照パターンを用意しておき、文字の輪郭部の傾きに応じて太文字化処理を変える(画像ドットを付加する位置、付加するドットの大きさを変える)ことによって、最適な太文字化を行うことができて、高品質の文字が得られる。
【0174】
さらに、上記実施形態では、文字である場合について説明したが画像がグラフィックである場合にも同様に適用することができる。
【0175】
また、上述したように、太文字化をジャギー補正の一環として行うことによって参照パターンを増加するだけで対応することができ、処理速度の著しい低下を招くことなく、文字を太らせて見やすくすることができる。ここで、単なるジャギー補正とジャギー補正を用いた太文字化の違いを図34に示している。図34(a)は単なるジャギー補正を行うだけであるので、階段状変化部に対してドットの置換が行われるだけであるが、本発明では図34(b)に示すように階段状変化部に対するジャギー補正によるドットの付加だけでなく、非変化部に対するドットの付加も行うことができて文字を太らせることができる。
【0176】
なお、上記実施形態の画像形成装置では記録ヘッドが圧電素子を用いる圧電型ヘッドの例で説明しているが、上述したように、電気熱変換素子を用いて膜沸騰で滴吐出を行うサーマル型ヘッドもよいことは勿論である。圧電型ヘッドでは上述したように駆動波形によって大きさ異なる液滴を吐出させることができ、階調画像の形成が容易になる。これに対して、サーマル型ヘッドは、ノズルの高集積化が容易であるので、解像度が高い画像を高速で印刷するのに有利である。
【0177】
ここで、サーマル型ヘッドの異なる例について図35及び図36を参照して説明する。
図35に示すヘッドは、エッジシュータ方式のヘッドであり、吐出エネルギー発生体501(該発生体に吐出信号を印加する電極および該発生体に必要に応じて設けられる保護層などは省略してある)を有する基板502に、流路503の側壁およびノズル504を構成する壁材505及び流路503の覆いを構成する天板506を積層して構成されている。このヘッドでは一点鎖線507で示すようにインクが流路503からノズル504に向かって直進する。
【0178】
このヘッドにおいては、インクが貯えられている図示しない液室から流路503にインクが充填された状態で、図示しない電極を介して記録信号を吐出エネルギー発生体501に印加すると、該発生体501から発生した吐出エネルギーが流路503内のインクに吐出エネルギー発生体501上方(吐出エネルギー作用部)で作用し、その結果、インクがノズル504から液滴として吐出される。
【0179】
このようなエッジシュータ方式のヘッドにおいては、各部分の精度良い微細化やノズルのマルチ化、あるいは小型化が極めて容易であり、また量産性に富むという利点を有する。その一方で、滴吐出の際の応答周波数や滴の飛翔速度に限界がある。また、電熱変換素子が発熱することでインク中に気泡が発生するが、この気泡が温度低下により収縮し、吐出エネルギー発生体501近辺で消滅する際の衝撃により吐出エネルギー発生体501が徐々に破壊されるいわゆるキャビテーション現象が生じて、相対的に寿命が比較的短くなるという不利な点がある。
【0180】
図36に示すヘッドは、サイドシュータ方式のヘッドであり、吐出エネルギー発生体511(該発生体に吐出信号を印加する電極および該発生体に必要に応じて設けられる保護層などは省略してある)を有する基板512に、流路513の側壁を構成する流路形成部材515を積層し、この流路形成部材515上にノズル514を形成したノズル板516を積層して構成している。このヘッドでは、一点鎖線517で示すように、流路513内の吐出エネルギー作用部へのインクの流れ方向とノズル514の開口中心軸とが直角をなしている。
【0181】
このような構成とすることによって、吐出エネルギー発生体511からのエネルギーをより効率良くインク滴の形成とその飛行の運動エネルギーへと変換でき、またインクの供給によるメニスカスの復帰も速いという構造上の利点を有し、吐出エネルギー発生体に発熱素子を用いた場合に特に効果的である。また、エッジシュータにおいて問題となる気泡が消滅する際の衝撃により吐出エネルギー発生体を徐々に破壊する、いわゆるキャビテーション現象をサイドシュータ方式であれば回避することができる。つまり、サイドシュータ方式において、気泡が成長し、その気泡がノズルに達すれば気泡が大気に通じることになり温度低下による気泡の収縮が起こらないことから、ヘッドの寿命が相対的に長くなる。
【0182】
なお、上記実施形態においては、本発明に係るプログラムとしてのプリンタドライバが本発明に係る画像処理方法をコンピュータに実行させるようにして画像処理装置を構成したが、画像形成装置自体が上述した画像処理方法を実行する手段を備えるようにすることもできる。また、本発明に係る画像処理方法を実行する特定用途向け集積回路(ASIC)を画像形成装置に搭載することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】本発明に係る画像処理方法で生成された画像データを出力する画像形成装置の機構部の全体構成を説明する側面説明図である。
【図2】同機構部の要部平面説明図である。
【図3】同装置の記録ヘッドの一例を示す液室長手方向に沿う断面説明図である。
【図4】同記録ヘッドの液室短手方向に沿う断面説明図である。
【図5】同装置の制御部の概要を示すブロック図である。
【図6】同制御部の印刷制御部の一例を示すブロック図である。
【図7】同印刷制御部の駆動波形生成部で生成出力する駆動波形の一例を示す説明図である。
【図8】同駆動波形から選択される小滴、中滴、大滴、微駆動の各駆動信号を説明する説明図である。
【図9】同記録液粘度に応じた駆動波形を説明する説明図である。
【図10】本発明に係る画像形成システムの一例を示すブロック説明図である。
【図11】同システムにおける画像処理装置の一例を示すブロック説明図である。
【図12】比較例の文字の出力例を示す説明図である。
【図13】同出力例のドットサイズでの要部拡大説明図である。
【図14】本発明における太文字化処理を施した文字の出力例のドットサイズでの要部拡大説明図である。
【図15】同じく太文字化の他の例を示す説明図である。
【図16】パターンマッチングに用いるウインドウサイズの説明図である。
【図17】3×3サイズのウインドウサイズの説明図である。
【図18】太文字化処理の説明に供するフロー図である。
【図19】太文字化処理の具体例の説明に供する3×3サイズのウインドウサイズの参照パターンの説明図である。
【図20】同じく図19の参照パターンを適用した場合の説明に供する説明図である。
【図21】太文字化処理の他の例の説明に供するフロー図である。
【図22】同じく太文字化処理の具体例の説明に供する9×3サイズのウインドウサイズの参照パターンの説明図である。
【図23】同じく図21の参照パターンを適用した場合の説明に供する説明図である。
【図24】ジャギー補正による太文字化の第1例の説明に供する説明図である。
【図25】同じく第2例の説明に供する説明図である。
【図26】同じく第3例の説明に供する説明図である。
【図27】同じく第4例の説明に供する説明図である。
【図28】同じく第5例の説明に供する説明図である。
【図29】同じく第6例の説明に供する説明図である。
【図30】同じく第7例の説明に供する説明図である。
【図31】同じく第8例の説明に供する説明図である。
【図32】ジャギー補正による太文字化の第1例ないし第8例の処理の説明に供するフロー図である。
【図33】文字サイズ、文字種、解像度に応じて太文字化処理を施すモードと施さないモードとを切り替える場合の処理の一例の説明に供するフロー図である。
【図34】ジャギー補正とジャギー補正による太文字化を行う場合の対比説明に供する説明図である。
【図35】ヘッドの他の例の説明に供する説明図である。
【図36】ヘッドの更に他の例の説明に供する説明図である。
【符号の説明】
【0184】
3…キャリッジ
7…記録ヘッド
207…印刷制御部
208…ヘッドドライバ
400…画像処理装置
500…インクジェットプリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録液の液滴を吐出して複数のドットからなる画像を形成する画像形成装置で出力するための画像データを生成する画像処理方法において、画像を形成する画像ドットに隣接する空白部に画像ドットを付加して前記画像を太くする処理をすることを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理方法において、前記画像が文字画像であることを特徴とする画像処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像処理方法において、注目画素を含むm×nのウインドウに含まれるドットと所定のパターンとのパターンマッチングで前記画像ドットを付加するドットであるか否かを判別することを特徴とする画像処理方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の画像処理方法において、前記空白部に付加する画像ドットは相対的に小さなサイズのドットであることを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
請求項3に記載の画像処理方法において、前記パターンマッチングを画像ドット及び空白部のドットを注目画素として行い、判別結果に応じて小さなサイズのドットを付加することを特徴とする画像処理方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の画像処理方法において、付加する画像ドットの大きさが複数種類あることを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の画像処理方法において、前記画像の輪郭部の傾きの応じて付加する画像ドットの大きさが異なることを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれかに記載の画像処理方法において、前記画像ドットを付加するモードと前記画像ドットを付加しないモードとを切り替え可能であることを特徴とする画像処理方法。
【請求項9】
請求項8に記載の画像処理方法において、前記画像が文字であり、この文字のサイズに応じてモードを切り替えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の画像処理方法において、前記画像が文字であり、この文字の種類に応じてモードを切り替えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項11】
請求項8ないし10のいずれかに記載の画像処理方法において、解像度に応じてモードを切り替えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項12】
記録液の液滴を吐出して画像を形成する画像形成装置で出力する画像データを生成する画像処理をコンピュータに実行させるプログラムにおいて、コンピュータに前記請求項1ないし11のいずれかに記載の画像処理方法を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項13】
記録液の液滴を吐出して画像を形成する画像形成装置で出力する画像データを生成する画像処理を行う画像処理装置において、前記請求項1ないし11のいずれかに記載の画像処理方法を実行させる手段を備えていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項14】
画像データに基づいて記録液の液滴を吐出する記録ヘッドを搭載して用紙に画像を形成する画像形成装置において、前記請求項1ないし11のいずれかに記載の画像処理方法を実行させる手段を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
請求項13に記載の画像処理装置と記録液の液滴を吐出する記録ヘッドを搭載して画像を形成する画像形成装置とで構成されることを特徴とする画像形成システム
【請求項16】
請求項1ないし11に記載の画像処理方法で生成された前記画像データを出力する画像形成装置において、前記記録液の液滴を吐出するノズルが連通する圧力室を加圧するエネルギーを発生する圧力発生手段を備える記録ヘッドと、この記録ヘッドの圧力発生手段を駆動するために1印刷周期内に複数の駆動パルスを有する駆動波形を生成する駆動波形生成手段とを備え、前記駆動波形は選択された複数の駆動パルスで吐出される複数の液滴が飛翔中に合体して1つの液滴になるように設定された波形であり、かつ、前記選択された複数の駆動パルスの内の最終駆動パルスが滴吐出速度を相対的に小さくするパルスであって、前記選択された複数の駆動パルスで吐出される液滴によって前記画像を形成するドットに隣接する空白部に画像ドットを形成することを特徴とする画像形成装置。
【請求項17】
請求項16に記載の画像形成装置において、複数の液滴から形成されたサイズの異なる複数種類の液滴はほぼ同じ位置に着弾するように前記駆動波形が設定されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の画像形成装置において、前記駆動波形を構成する駆動パルスは、メニスカスを圧力室側に引き込むように圧力室を膨張させる引き込み要素と、引き込み要素によって膨張した圧力室を収縮させる加圧要素とを含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項19】
請求項16ないし18のいずれかに記載の画像形成装置において、前記最終駆動パルスの引き込み要素である引き込み電圧が相対的に小さいことで吐出される滴吐出速度が相対的に小さいことを特徴とする画像形成装置。
【請求項20】
請求項16ないし19のいずれかに記載の画像形成装置において、印字信号に応じて1印刷周期内に出力される複数の駆動パルスの内から異なる組み合わせで2以上の駆動パルスを選択可能であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項21】
請求項16ないし20のいずれかに記載の画像形成装置において、前記駆動波形には液滴を吐出させずにメニスカスを振動させる微駆動パルスを含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項22】
請求項16ないし21のいずれかに記載の画像形成装置において、前記微駆動パルスとこれに続く駆動パルスとは、駆動パルスで吐出される液滴の滴体積が、微駆動パルスがないときよりも相対的に大きくなる関係にあることを特徴とする画像形成装置。
【請求項23】
請求項21又は22に記載の画像形成装置において、少なくとも大きな滴を形成するための駆動パルス、小さな滴を形成するための駆動パルス及び微駆動パルスを選択して前記圧力発生手段に印加することを特徴とする画像形成装置。
【請求項24】
請求項16ないし23のいずれかに記載の画像形成装置において、前記記録液の粘度が5mPa・s〜20mPa・sであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項25】
請求項1ないし11に記載の画像処理方法で生成された前記画像データを出力する画像形成装置において、膜沸騰で記録液の液滴を吐出する記録ヘッドを備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図21】
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【図32】
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【図33】
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【図35】
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【図36】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図19】
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【図20】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図34】
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【公開番号】特開2007−125827(P2007−125827A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−321621(P2005−321621)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】