説明

画像処理装置、検査装置、画像処理方法、検査方法およびプログラム

【課題】被検出体の状態を精度良く認識する。
【解決手段】検査装置の画像読取部20は、センサ21とセンサ22とを備える。センサ21とセンサ22とは、それぞれ用紙Sの第1の面と第2の面とを読み取り、第1の面を表す画像データ(第1の画像データ)と第2の面を表す画像データ(第2の画像データ)とを生成する。また、用紙Sは、基材中に繊維状の金属を被検出体として含んでいる。被検出体は用紙Sに埋め込まれた状態となっているため、若干不明瞭となっている。その結果、被検出体は、第1の画像データと第2の画像データの双方に現れることがある一方で、第1の画像データと第2の画像データのいずれかのみに現れることもある。そこで、検査装置は、第1の画像データに現れる被検出体の数と第2の画像データに現れる被検出体の数とに応じて実際に用紙Sに含まれる被検出体の数を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、検査装置、画像処理方法、検査方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
所定の部材(例えば、ICタグ、ICチップ、金属繊維等)を含有するシート状物(例えば、紙、フィルム、カード等)においては、所定の部材を正しく含有しているか否かを判定し、正しく含有していないものを不良品として選別するような作業が行われている。例えば、画像処理によって特定繊維が含まれるか否かを判定する方法として、撮像して得られた画像データに対して所定の画像処理を行い、原稿中に含まれる特定繊維に対応する画像情報を抽出し、その抽出した画像情報に応じて処理中の画像データが特定繊維の含まれた特定の原稿に基づくものか否かを判定する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−120456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、シート状物に含有されている被検出体の状態を精度良く認識するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述の目的を達成するために、本発明は、被検出体を含有するシート状物の第1の面を表す第1の画像データと、第1の面の反対面である第2の面を表す第2の画像データとを取得する取得手段と、前記取得手段により取得された第1の画像データと第2の画像データとに応じて、前記シート状物における被検出体の含有状態を特定する特定手段とを備える画像処理装置を、その第1の構成として提供する。なお、この場合において、被検出体の含有状態とは、例えば、「被検出体の数」、「被検出体の形状(長さ、周囲長または面積を含む)」、「被検出体の位置(重心および角度を含む)」に関する情報を意味する。
【0005】
また、本発明は、第2の構成として、前記第1の構成において、前記特定手段が、前記第1および第2の画像データに現れる前記被検出体の数を比較し、その数が大きい方の値を前記シート状物に含まれる被検出体の数として特定するようにしてもよい。
【0006】
また、本発明は、第3の構成として、前記第1の構成において、前記特定手段が、前記第1および第2の画像データが表す画像領域を所定の領域にそれぞれ分割し、前記被検出体の数を前記領域毎に特定するようにしてもよい。
【0007】
また、本発明は、第4の構成として、前記第3の構成において、前記特定手段が、前記第1および第2の画像データに現れる前記被検出体の数を、対応するそれぞれの領域毎に比較し、その数が大きい方の値を前記シート状物の当該領域に含まれる被検出体の数として特定し、当該特定された数の各領域についての総和を前記シート状物に含まれる被検出体の数として特定するようにしてもよい。
【0008】
また、本発明は、第5の構成として、前記第1の構成において、前記特定手段が、前記第1の画像データに現れる前記被検出体の数と前記第2の画像データに現れる前記被検出体の数の比が所定の範囲に含まれない場合に、所定の情報を出力する出力手段を備えるようにしてもよい。
【0009】
また、本発明は、第6の構成として、前記第1の構成において、前記特定手段が、前記取得手段により取得された第1の画像データと第2の画像データのそれぞれに対して、所定の画像処理を実行する処理実行手段を備えるようにしてもよい。
【0010】
また、本発明は、第7の構成として、前記第6の構成において、前記処理実行手段が、前記第1の画像データに対して実行する画像処理と、前記第2の画像データに対して実行する画像処理とを異ならせるようにしてもよい。
【0011】
また、本発明は、第8の構成として、前記第6の構成において、前記処理実行手段が、平滑化処理、膨張処理および二値化処理の少なくともいずれかを実行するようにしてもよい。
【0012】
また、本発明は、第9の構成として、前記第8の構成において、前記処理実行手段が、前記平滑化処理を実行した後に前記膨張処理を実行し、前記膨張処理を実行した後に前記二値化処理を実行するようにしてもよい。
【0013】
また、本発明は、被検出体を含有するシート状物の第1の面を表す第1の画像データと、第1の面の反対面である第2の面を表す第2の画像データとを取得する取得手段と、前記取得手段により取得された第1の画像データと第2の画像データとに応じて前記シート状物における被検出体の含有状態を特定することにより、前記シート状物に含まれる被検出体の含有状態が所定の基準を満たすか否かを判定する判定手段とを備える検査装置を、その第10の構成として提供する。
【0014】
なお、本発明は、前記第1または第10の構成に対応する方法や、これらの構成により実現される機能を実行するプログラムを提供することも可能である。例えば、本発明は、第11の構成として、被検出体を含有するシート状物の第1の面を表す第1の画像データと、前記第1の面の反対面である第2の面を表す第2の画像データとを取得する取得ステップと、前記取得ステップにおいて取得された第1の画像データと第2の画像データとに応じて前記シート状物における被検出体の含有状態を特定する特定ステップとを有する画像処理方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、第12の構成として、被検出体を含有するシート状物の第1の面を表す第1の画像データと、前記第1の面の反対面である第2の面を表す第2の画像データとを取得する取得ステップと、前記取得ステップにおいて取得された第1の画像データと第2の画像データとに応じて前記シート状物における被検出体の含有状態を特定することにより、前記シート状物に含まれる被検出体の含有状態が所定の基準を満たすか否かを判定する判定ステップとを有するシート状物の検査方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、第13の構成として、コンピュータを、被検出体を含有するシート状物の第1の面を表す第1の画像データと、前記第1の面の反対面である第2の面を表す第2の画像データとを取得する取得手段と、前記取得手段により取得された第1の画像データと第2の画像データとに応じて前記シート状物における被検出体の含有状態を特定する特定手段として機能させるためのプログラムを提供する。
【0017】
また、本発明は、第14の構成として、コンピュータを、被検出体を含有するシート状物の第1の面を表す第1の画像データと、前記第1の面の反対面である第2の面を表す第2の画像データとを取得する取得手段と、前記取得手段により取得された第1の画像データと第2の画像データとに応じて前記シート状物における被検出体の含有状態を特定することにより、前記シート状物に含まれる被検出体の含有状態が所定の基準を満たすか否かを判定する判定手段として機能させるためのプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1、第11または第13の構成によれば、シート状物の片面のみを読み取った場合に比べて、被検出体の状態をより精度よく認識することが可能となる。
【0019】
また、本発明の第2の構成によれば、第1および第2の画像データの一方のみに被検出体が現れるような場合であっても、被検出体をより精度よく認識することが可能となる。
【0020】
また、本発明の第3の構成によれば、本構成を有さない場合に比べて第1および第2の画像データを比較する処理を容易ならしめることが可能となる。
また、本発明の第4の構成によれば、第1および第2の画像データの一方のみに現れるような被検出体が複数存在する場合であっても、本構成を有さない場合に比べて、被検出体をより精度よく認識することが可能となる。
【0021】
また、本発明の第5の構成によれば、被検出体の含有状態、若しくは検査状態が異常であると認められる場合に、ユーザにその旨を通知することが可能となる。
【0022】
また、本発明の第6の構成によれば、本構成を有さない場合に比べて、被検出体がより明瞭に現れるようにすることが可能となる。
また、本発明の第7の構成によれば、例えば、第1の画像データと第2の画像データが異なる条件で生成されたような場合であっても、それぞれについてより適した画像処理を実行することが可能となる。
また、本発明の第8の構成によれば、本構成を有さない場合に比べて、平滑化処理による被検出体の背景部分のムラ低減、膨張処理による被検出体の強調、及び二値化処理による被検出体と背景部分との明瞭な区別化が可能となる。
さらに、本発明の第9の構成のような順番で実行することにより、それぞれの処理の効果をより顕著なものにすることが可能となる。
また、本発明の第10、第12または第14の構成によれば、シート状物の片面のみを読み取った場合に比べて、被検出体の含有状態をより精度よく判定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。以下においては、本発明を実施するために好適な一の実施形態と、その実施形態における具体的な動作例とを例示して説明する。
【0024】
[構成]
図1は、本発明の一実施形態である検査装置100の全体構成を示すブロック図である。同図に示すように、検査装置100は、制御部10と、画像読取部20と、操作部30と、通知部40とを備える。制御部10は、画像読取部20および通知部40の動作を制御するとともに、画像読取部20から取得した画像データに所定の画像処理を実行する。画像読取部20は、用紙(シート状物)を光学的に読み取り、これを表す画像データを生成して制御部10に供給する。操作部30は、キーボード等の入力装置またはボタン等の操作子を備え、ユーザによる操作を受け付けてこれを表す制御信号を生成し、制御部10に供給する。通知部40は、液晶ディスプレイやスピーカを備え、制御部10から供給される画像信号や音声信号を出力することによりユーザに各種情報を通知する。
【0025】
制御部10は、より詳細には、CPU(Central Processing Unit)11と、メモリ12と、インタフェース13とを備える。CPU11は、メモリ12に記憶されたプログラムを実行する。メモリ12は、例えば、各種プログラムの記憶されたROM(Read Only Memory)や、CPU11のワークエリアとして機能するRAM(Random Access Memory)を備える。インタフェース13は、制御部10に接続される各部と情報のやりとりを可能にする物理インタフェースであり、画像読取部20および操作部30から各種の情報を取得するとともに、画像読取部20および通知部40に各種の情報を供給する。
【0026】
なお、メモリ12が記憶しているプログラムには、検査装置100の動作を制御する基本プログラムP1と、用紙の判定を行うための検査プログラムP2とがある。検査プログラムP2によって実現される処理には、平滑化処理、膨張処理、二値化処理などの画像処理に加えて、画像データを比較する処理などがあるが、詳細については後述する。
【0027】
画像読取部20の構成は、具体的には図2のようになっている。同図に示すように、画像読取部20は、センサ21、22と、光源23、24と、搬送ロール25、26と、信号処理回路27とを備える。センサ21、22は、例えば密着型のCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサであり、用紙Sの第1の面および第2の面をそれぞれ撮像してその濃淡を示す画像信号を生成する。なお、ここでは説明の便宜上、センサ21が撮像する面を第1の面とし、センサ22が撮像する面を第2の面とする。光源23、24は、例えば蛍光ランプであり、それぞれ、センサ21、22が撮像を行う位置に光を照射する。搬送ロール25、26は、用紙Sを図中の矢印方向に搬送するロール状部材である。信号処理回路27は、センサ21、22から供給される画像信号にAD変換等の信号処理を実行し、アナログの画像信号をデジタルの画像データに変換して出力する回路である。なお、センサ21、22、光源23、24および用紙Sは、図2の紙面に垂直な方向に有限の幅を有している。この方向のことを、以下では「X方向」という。そして、X方向に直交する方向、すなわち図2中の矢印方向のことを、以下では「Y方向」という。
【0028】
また、画像データのサイズや階調は任意であるが、ここではA4サイズ(210mm×297mm)を1インチ当たり600ドット(画素)の入力解像度で読み取り、各ドットが8ビットの階調(256階調)を示すデータであるとする。このときの階調値(輝度情報)は、「0」を白とし、「255」を黒とする。また、画像データは、用紙の第1の面または第2の面の全体を画像領域に含むとする。
【0029】
ここで、図3および4を参照して、本実施形態において読み取られる用紙について説明する。図3に示すように、本実施形態の用紙Sは、基材S1に被検出体S2を埋め込んでなるシート状物である。基材S1には、通常の用紙と同様のものが用いられており、その主な構成材料はパルプ繊維である。被検出体S2は、例えば繊維状の金属であり、基材S1に漉き込むようにして用紙Sに含有されている。被検出体S2は、用紙Sの全体に数本〜50本程度含有されている。なお、被検出体S2の光の透過率は、基材S1のそれよりも低く、被検出体S2の厚みは、用紙Sの厚み以下である。それゆえ、用紙Sを光にかざした場合などには、用紙S内での被検出体S2の位置や形状がある程度視認できるようになっている。
【0030】
図4は、用紙Sに被検出体S2が埋め込まれている様子を例示した図であり、用紙Sの断面を示している。例えば、図4(a)に示すように、基材S1のほぼ中央に被検出体S2が位置する場合には、被検出体S2は、第1の面と第2の面のいずれからもほぼ同程度の濃度で視認される。一方、例えば図4(b)に示すように、被検出体S2が第1の面寄りに埋め込まれた場合には、第1の面からはより明瞭に視認され、第2の面からはより不明瞭に視認されることとなる。また、例えば図4(c)に示すように、被検出体S2が基材S1のなす平面に対して傾いた状態で埋め込まれた場合には、被検出体S2が視認される位置が第1の面と第2の面とで異なる(ずれる)こともある。用紙Sに被検出体S2を常に図4(a)に示すような状態で含有させることは困難であり、その含有状態には多少の変動を生じ得る。そのため、被検出体S2の個数や長さ、形状などは、第1の面から見た場合と第2の面から見た場合とでは必ずしも一致しないこととなる。
【0031】
[動作]
本実施形態の構成は以上の通りである。続いて、上述の検査装置100が実行する処理の内容を説明する。以下においては、まず、検査装置100が実行する一連の処理の概要について説明し、その後、その処理における具体的な動作について2つの動作例を挙げて説明する。
【0032】
検査装置100は、検査対象の用紙が所定の基準を満たしているか否かを判定するために用いられるものである。この判定の基準はさまざまであるが、例えば、被検出体が所定の個数含有されているか、所定の位置にあるか、所定の形状をなしているか、などである。検査装置100は、このような判定を画像読取部20において生成された画像データに応じて行うが、一方の面(第1の面または第2の面)の画像データのみに基づいたのでは、正確な判定を行えない可能性がある。なぜならば、上述したように、被検出体の個数や長さ、形状などは、第1の面から見た場合と第2の面から見た場合とでは必ずしも一致しないからである。そこで、検査装置100においては、第1の面と第2の面の双方の画像データを生成し、これらにより判定を行うこととしている。
【0033】
ここでは、検査装置100が行う判定の一例として、「用紙に含まれる被検出体が所定の範囲内の個数であるか否か」を判定する場合の動作について、2つの動作例を挙げて説明する。なお、ここにおいて、1枚の用紙に含まれる被検出体の個数の理想値は「5」であり、ここに「±1」の許容範囲を設けるとする。つまり、ここでいう「所定の範囲の個数」とは、「4」以上「6」以下であり、この基準を満たす用紙を使用可能品(良品)とし、それ以外の用紙を不良品とするのが本実施形態における判定の内容である。また、本実施形態における被検出体は、長さが25mm、直径(太さ)が30μmの繊維状の金属であるとする。
【0034】
図5は、検査装置100の制御部10により検査プログラムP2が実行されたときの処理を示すフローチャートである。検査プログラムP2は、ユーザが用紙の判定を行うための操作(ボタン押下等)を行い、この操作に対応する制御信号を制御部10が取得したときに実行されるプログラムである。このときに実行される処理は、画像データ生成処理(ステップSa)と、オブジェクト抽出処理(ステップSb)と、判定処理(ステップScまたはSd)とに大別される。以下では、これらの処理のそれぞれについて具体的に説明する。
【0035】
(1)動作例1
図6は、ステップSaの画像データ生成処理を示すフローチャートである。この処理は、第1の面および第2の面に相当する画像データのそれぞれについて実行されるものである。同図に沿って説明すると、はじめに、検査装置100の制御部10は、画像読取部20に用紙の読み取りを行わせ、画像読取部20により生成された画像データをインタフェース13を介して取得する(ステップSa1)。
【0036】
続いて、制御部10は、取得した画像データが第2の面を表す画像データであるか否かを判断する(ステップSa2)。具体的な判断方法は任意であるが、例えば、画像読取部20が面(第1の面・第2の面)を示す情報を画像データとともに送信するようにしてもよいし、制御部10が第1の面および第2の面を表す画像データがあらかじめ決められた順番で取得するようにしてもよい。
【0037】
取得した画像データが第2の面を表す画像データであった場合(ステップSa2;YES)、制御部10はこの画像データを反転する処理を行う(ステップSa3)。具体的には、例えば、画像データの各画素の座標をX方向について反転させるような処理を行う。これは、第2の面を表す画像データにより表される像が第1の面を表す画像データにより表される像の鏡像となっているからである。つまり、この処理は、それぞれの画像データに現れる被検出体の位置関係を容易に対応付けるための処理である。それゆえ、取得した画像データが第1の面を表す画像データであった場合(ステップSa2;NO)、制御部10はこの画像データに対しては反転処理を行わない。
【0038】
画像データ生成処理は以上の通りである。制御部10は、第1の面を表す画像データと第2の面を表す画像データのそれぞれについてこの処理を実行し、2つの画像データを得る。この処理が実行された後の第1の面を表す画像データと第2の面を表す画像データのことを、以下ではそれぞれ「第1の画像データ」と「第2の画像データ」という。すなわち、第1の画像データは第1の面を表す画像データであり、第2の画像データは第2の面を表す画像データをさらに反転させた画像データである。
【0039】
第1および第2の画像データは、その大部分が基材部分に相当し、その基材部分の階調値はほぼ一様であるが、用紙の浮きや照射光のムラ等に起因して多少の濃淡が現れる。また、被検出体が埋め込まれている部分は、基材部分と多少異なる階調値として現れるが、被検出体には基材に覆われた部分(一部または全部)があるため、基材部分との階調値の差は僅かである。そこで、検査装置100は、被検出体の検出精度を向上させるべく、ステップSbのオブジェクト抽出処理を実行する。
【0040】
図7は、ステップSbのオブジェクト抽出処理を示すフローチャートである。この処理は、第1および第2の画像データのそれぞれについて実行されるものである。同図に沿って説明すると、はじめに、制御部10は、画像データに対して平滑化処理を実行する(ステップSb1)。この処理は、基材部分の濃淡の差を低減させるための処理であり、例えば、所定のサイズの平滑化フィルタを適用することにより実現される。続いて、制御部10は、画像データに対して膨張処理を実行する(ステップSb2)。この処理は、被検出体が埋め込まれている部分を強調するための処理であり、具体的には、注目画素の近傍にある他の画素(以下「近傍画素」という。)を参照し、近傍画素に1つでも注目画素の階調値よりも大きい(すなわち濃い)階調値を有する画素があれば、注目画素の階調値をその近傍画素の階調値に置換する処理である。
【0041】
この膨張処理について、具体的な例を挙げて説明する。例えば、図8(a)に示すような画素P(i,j)を有する画像データについて考える。なお、ここにおいて、iはX方向の座標値を表しており、jはY方向の座標値を表している。また、説明の便宜上、画素Pの階調値は「1」であり、その他の画素の階調値は全て「0」であるとする。このような画像データに対して、例えば注目画素の上下左右の2ライン分の画素を参照した膨張処理を実行すると、画素P(i−2,j−2)を注目画素とした場合、近傍画素は、図8(b)においてハッチングで示した画素となる。すなわち、近傍画素は、画素P(i−4,j−4)〜P(i,j−4)、P(i−4,j−3)〜P(i,j−3)、P(i−4,j−2)〜P(i−3,j−2)、P(i−1,j−2)〜P(i,j−2)、P(i−4,j−1)〜P(i,j−1)、P(i−4,j)〜P(i,j)の24画素である。このとき、近傍画素には階調値が「1」である画素P(i,j)が含まれるので、注目画素である画素P(i−2,j−2)の階調値は、「0」から「1」に置換される。このような処理を各画素について実行すると、その処理結果は、図8(c)に示すように、画素P(i,j)の近傍の24画素の階調値が「1」となる。
【0042】
なお、この膨張処理においては、近傍画素の数はいくつであってもよい。例えば、上述した例では注目画素の上下左右の2ライン分の画素を近傍画素としたが、これを1ライン分としてもよい。以下では、注目画素の上下左右の2ライン分の画素を近傍画素とした膨張処理のことを、注目画素を中心とした5×5画素を参照する処理という意味で「5×5画素の膨張処理」という。また、同様に、注目画素の上下左右の1ライン分の画素を近傍画素とした膨張処理のことを、注目画素を中心とした3×3画素を参照する処理という意味で「3×3画素の膨張処理」という。つまり、ステップSb2において実行した膨張処理は、5×5画素の膨張処理である。
【0043】
ここで図7のフローチャートの説明に戻る。制御部10は、ステップSb2の膨張処理を実行したら、再び膨張処理を実行する(ステップSb3)。このとき実行される膨張処理は、3×3画素の膨張処理である。続いて、制御部10は、ステップSb1、Sb2およびSb3において実行した平滑化処理と膨張処理とを同じ順番で繰り返す(ステップSb4、Sb5、Sb6)。
【0044】
次に、制御部10は、画像データの全画素の階調値の平均値を算出する(ステップSb7)。制御部10はこのとき算出した平均値に基づき、後段の二値化処理における閾値を決定する(ステップSb8)。閾値と平均値の関係は任意であり、例えば、平均値に所定の係数を乗算した値を閾値としたりすることもできるが、本動作例においては、平均値から「22」を加算した値を閾値としている。
【0045】
そして、制御部10は、このようにして決定された閾値を用いて二値化処理を実行する(ステップSb9)。すなわち、制御部10は、上述の閾値より小さい階調値を有する画素の階調値を全て「0」とし、上述の閾値以上の階調値を有する画素の階調値を全て「1」とする置換を行う。
【0046】
二値化処理を実行したら、制御部10は、この二値化後の画像データに応じて被検出体に相当するオブジェクトを抽出する処理を行う(ステップSb10)。この処理は、例えば、階調値が「1」である画素が連続した固まりを1つのオブジェクトとみなしてラベリングを行うとともに、それぞれのオブジェクトの長さ、周囲長および面積を算出し、これらが所定の閾値を上回ったオブジェクトを被検出体に相当するオブジェクトであるとする処理である。このとき、用紙の浮きや照射光のムラ等に起因して抽出されるオブジェクトは閾値を下回るため、被検出体に相当するオブジェクトとみなされずに除外される。
【0047】
本実施形態においては、長さ、周囲長および面積の閾値を、それぞれ「350」、「850」および「10000」とした。なお、これらの閾値の単位は、いずれも「画素」である。つまり、長さの閾値は、およそ14.8(≒350÷600×25.4)mmである。なお、以下において単に「オブジェクト」といった場合、これはステップSb10において抽出されたオブジェクト、すなわち第1または第2の画像データに現れた被検出体に相当するオブジェクトのことを指すものとする。
【0048】
オブジェクトを抽出したら、制御部10はこれらのオブジェクトの数を特定し、それぞれのオブジェクトについて長さ、周囲長、面積、重心および角度を算出し、これらを各オブジェクトの検出値としてメモリ12に記憶する(ステップSb11)。なお、ここにおいて「角度」とは、所定の方向(例えばX方向またはY方向)の直線とオブジェクトとがなす角度のことで、単位は「度」である。
【0049】
オブジェクト抽出処理は以上の通りである。このような処理を実行した結果、制御部10は、それぞれのオブジェクトについての検出値を第1および第2の画像データの双方について記憶することとなる。例えば、第1の画像データが図9に示すような画像データであった場合、制御部10は図10に示すような検出値をメモリ12に記憶する。同図に示すように、制御部10は、長さ、周囲長、面積、重心(X方向)、重心(Y方向)および角度の値をオブジェクト毎に記憶する。この検出値はオブジェクト毎に記憶されるものであるから、これらの数によってオブジェクトの個数も特定可能である。第1の画像データが図9に示すような画像データであれば、オブジェクトの個数は「5」である。
【0050】
なお、第1の画像データと対になる第2の画像データも存在する。例えば、第1の画像データが図9に示すような画像データである場合、第2の画像データは、例えば図11のような画像データとなる。同図において、オブジェクトb、c、dおよびeは、それぞれ、図9のオブジェクトB、C、DおよびEに対応する。図11に示した第2の画像データを図9に示した第1の画像データと比較すると、第2の画像データは第1の画像データよりもオブジェクトが1個少ないことがわかる。これは、オブジェクトAが用紙の第1の面寄りに埋め込まれており、第2の面からは被検出体に相当するオブジェクトとして抽出されなかったことを意味している。
【0051】
続いて、制御部10は、抽出したオブジェクトを用いてステップScの判定処理を実行する。図12は、ステップScの判定処理を示すフローチャートである。この処理は、第1および第2の画像データから抽出されたそれぞれのオブジェクトを比較することにより行われる処理である。同図に沿って説明すると、はじめに、制御部10は、メモリ12に記憶した検出値を読み出し、第1の画像データ(第1の面)および第2の画像データ(第2の面)に現れたオブジェクトの数をそれぞれ特定する(ステップSc1、Sc2)。制御部10は、第1の画像データに現れたオブジェクトの数をN、第2の画像データに現れたオブジェクトの数をNとし、このとき特定された値をメモリ12にそれぞれ記憶する。
【0052】
次に、制御部10は、第1および第2の画像データに現れたオブジェクトの数(N、N)に応じて、用紙に含まれる被検出体の数を推定する。この推定の具体的な手順は、上述のNとNの値に応じて変化する。そこで、まず、制御部10はNとNの値が等しいか否かを判断する(ステップSc3)。これらの値が等しい場合(ステップSc3;YES)、制御部10は用紙に含まれる被検出体の数もこの値に等しいとみなす。そのため、制御部10は、用紙に含まれる被検出体の数をNとし、このNの値をNの値に等しいとする。つまり、この場合、制御部10はNにNの値を代入し、これをメモリ12に記憶する(ステップSc4)。
【0053】
一方、NとNの値が等しくない場合(ステップSc3;NO)は、制御部10はNとNのいずれの値が大きいかを判断する。具体的には、まず、制御部10はNのNに対する比(N/N)を算出し、N/Nが「0.8」以上で「1.0」より小さいか否かを判断する(ステップSc5)。N/Nが0.8≦N/N<1.0を満たす場合(ステップSc5;YES)、すなわちNがNよりも大きい場合には、制御部10は用紙に含まれる被検出体の数NがNの値に等しいとみなす。そのため、制御部10は、用紙に含まれる被検出体の数NにNの値を代入し、これをメモリ12に記憶する(ステップSc6)。
【0054】
また、N/Nが0.8≦N/N<1.0を満たさない場合(ステップSc5;NO)は、制御部10はこの比N/Nが「1.0」より大きく「1.25」以下であるか否かを判断する(ステップSc7)。N/Nが1.0<N/N≦1.25を満たす場合(ステップSc7;YES)、すなわちNがNよりも大きい場合には、制御部10は用紙に含まれる被検出体の数NがNの値に等しいとみなす。そのため、制御部10は、用紙に含まれる被検出体の数NにNの値を代入し、これをメモリ12に記憶する(ステップSc8)。
【0055】
用紙に含まれる被検出体の数Nがいずれかの値として特定された場合、制御部10は、この用紙が良品か否かを判断する。上述したように、この動作例においては、被検出体の個数は「4」以上「6」以下を許容範囲としたから、制御部10は、被検出体の数Nがこの範囲に含まれるか否かを判断する(ステップSc9)。そして、被検出体の数Nが「4」以上「6」以下である場合には(ステップSc9;YES)、制御部10は読み取った用紙が良品であると判定し、この旨を示す画像信号や音声信号を生成して通知部40に供給する(ステップSc10)。一方、被検出体の数Nが「4」以上「6」以下でない場合には(ステップSc9;NO)、制御部10は読み取った用紙が不良品であると判定し、この旨を示す画像信号や音声信号を生成して通知部40に供給する(ステップSc11)。その後、制御部10は、この検査プログラムP2による判定が正常に終了した旨の情報を出力する。具体的には、制御部10は、検査プログラムP2による判定結果を示すデータをDとし、このDの値を「0」とする(ステップSc12)。
【0056】
また、N/Nが1.0<N/N≦1.25を満たさない場合(ステップSc7;NO)は、N/Nが「0.8」より小さいか、または「1.25」より大きいことを意味している。このような場合には、制御部10は、被検出体が用紙に正しく埋め込まれていないか、あるいは被検出体を正しく読み取れていないとみなす。そこで、制御部10は、用紙に含まれる被検出体の数Nを不定とし、この検査プログラムP2による判定が不調である旨の情報を出力する。具体的には、制御部10は、上述のデータDの値を「1」とする(ステップSc13)。
【0057】
判定処理は以上の通りである。また、これにより検査プログラムP2が実行する処理も終了する。このような処理を実行した結果、制御部10は、用紙に含まれる被検出体の数Nと判定結果を示すデータDとを処理結果として得る。そして、制御部10は、判定結果を示すデータDが「1」である場合には、検査装置100による判定がエラーとなった旨を表す画像信号や音声信号を通知部40に供給する。また、制御部10は、判定結果を示すデータDが「0」である場合には、検査装置100による判定が成功した旨を表す画像信号や音声信号を通知部40に供給してもよい。
【0058】
(2)動作例2
続いて、上述の動作例1と異なる動作例を説明する。ここでは、上述の動作例1と異なる判定処理について説明する。なお、判定処理以前の画像データ生成処理とオブジェクト抽出処理については、上述した動作例1と同様であるため、その説明を省略する。
【0059】
本動作例の判定処理は、第1および第2の画像データの画像領域を所定の小領域に分割し、それぞれの小領域に現れるオブジェクトの数に応じて用紙全体に含まれる被検出体の数を特定することを特徴としている。画像データをいくつに分割するかは任意であるが、ここでは6個の小領域に分割する場合を例に説明する。
【0060】
図13は、本動作例における判定処理を示すフローチャートである。同図に沿って説明すると、はじめに、制御部10は、第1および第2の画像データの画像領域を6個の小領域に分割する(ステップSd1)。このとき、制御部10は、第1の画像データの小領域とこれに対応する位置の第2の画像データの小領域とが同一の形状となるように分割する。また、それぞれの画像データ内の各小領域についても、それぞれ同一の形状となるのが望ましい。
【0061】
次に、制御部10は、第1の画像データ(第1の面)に現れたオブジェクトの数を、分割された小領域毎に特定する(ステップSd2)。以下では、それぞれの小領域毎に特定されたオブジェクトの数を、N11、N21、N31、N41、N51およびN61とする。続いて、制御部10は、第2の画像データ(第2の面)に現れたオブジェクトの数についても同様の要領で特定する(ステップSd3)。以下では、それぞれの小領域毎に特定されたオブジェクトの数を、N12、N22、N32、N42、N52およびN62とする。なお、N11とN12とが同一の位置に対応し、N21とN22とが同一の位置に対応する。その他の値についても同様である。
【0062】
これを図で示すと、例えば図14のようになる。同図において、画像データD1は第1の面を表しており、画像データD2は第2の面を表している。また、画像データD1の小領域は11、21、31、41、51および61とし、画像データD2の小領域は12、22、32、42、52および62としている。画像データD1およびD2は、同一の用紙から読み取られた画像データであるが、現れているオブジェクトの一部に相違がある。これは、一方の面で抽出され、他方の面で抽出されなかったオブジェクトがあることを意味している。なお、説明の便宜上、用紙に含まれているもののオブジェクトとして抽出されなかった被検出体の位置を、図中では破線で表している。
【0063】
ここで図13のフローチャートの説明に戻る。それぞれの小領域のオブジェクトの数を特定したら、制御部10は変数iに「1」を代入する(ステップSd4)。変数iは、オブジェクトの数の比較のために用いられる値である。変数iに「1」を代入したら、制御部10はオブジェクトの数を対応する小領域毎に比較する。この処理は、例えば変数iが「1」であるとき、上述のN11とN12とを比較する処理である。この例を用いて説明すると、まず、制御部10は、N11とN12の値が等しいか否かを判断する(ステップSd5)。N11とN12の値が等しい場合(ステップSd5;YES)、制御部10は用紙のこの小領域に含まれる被検出体の数もこの値に等しいとみなす。そのため、制御部10は、用紙のこの小領域に含まれる被検出体の数をNとし、このNの値をN11の値に等しいとする。つまり、この場合、制御部10はNにN11の値を代入し、これをメモリ12に記憶する(ステップSd6)。
【0064】
一方、Ni1とNi2の値が等しくない場合(ステップSd5;NO)は、制御部10はNi1とNi2のいずれの値が大きいかを判断する(ステップSd7)。そして、Ni1の値がNi2の値よりも大きい場合(ステップSd7;YES)には、制御部10は、用紙のこの小領域に含まれる被検出体の数NがNi1の値に等しいとみなす。そのため、制御部10は、用紙のこの小領域に含まれる被検出体の数NにNi1の値を代入し、これをメモリ12に記憶する(ステップSd8)。また、Ni2の値がNi1の値よりも大きい場合(ステップSd7;NO)には、制御部10は、用紙のこの小領域に含まれる被検出体の数NがNi2の値に等しいとみなす。そのため、制御部10は、用紙のこの小領域に含まれる被検出体の数NにNi2の値を代入し、これをメモリ12に記憶する(ステップSd9)。
【0065】
続いて、制御部10は、変数iが6であるか否かを判断する(ステップSd10)。変数iが6に満たない場合(ステップSd10;NO)、制御部10は変数iを「1」だけ増加(インクリメント)させて(ステップSd11)、ステップSd5からの処理を繰り返す。そして、変数iが6である場合(ステップSd10;YES)、すなわち全ての小領域について被検出体の数N〜Nを特定した場合には、制御部10はこれらの総和を算出し、これを用紙に含まれる被検出体の数Nとする(ステップSd12)。
【0066】
用紙に含まれる被検出体の数Nがいずれかの値として特定された場合、制御部10は、この用紙が良品か否かを判断する。この判断の方法は、上述した動作例1と同様である。すなわち、制御部10は、被検出体の数Nが「4」以上「6」以下であるか否かを判断し(ステップSd13)、「4」以上「6」以下である場合には(ステップSd13;YES)、制御部10は読み取った用紙が良品であると判定し(ステップSd14)、「4」以上「6」以下でない場合には(ステップSd13;NO)、制御部10は読み取った用紙が不良品であると判定する(ステップSd15)。以上で本動作例の判定処理は終了である。
【0067】
上述した判定処理により得られる結果について、具体的な例を用いて説明する。ここでは、上述の判定処理を図14に示した画像データD1およびD2に対して実行した場合について説明する。まず、小領域11と21について比較した場合、前者に現れるオブジェクトの数(N11)は「1」、後者に現れるオブジェクトの数(N12)は「0」であるから、用紙のこの小領域に含まれる被検出体の数(N)は「1」と特定される。また、同様の要領で、Nの値は「2」、Nの値は「1」、Nの値は「0」、Nの値は「1」、Nの値は「1」と特定される。その結果、用紙に含まれる被検出体の数Nの値は「6(=1+2+1+0+1+1)」と特定される。なお、動作例1において示した判定処理を図14に示した画像データD1およびD2に対して実行した場合には、用紙に含まれる被検出体の数Nの値は「5」と特定されるので、図14に示した例の場合においては、本動作例において示した判定処理のほうが実際の被検出体の数によく一致しているといえる。
【0068】
[変形例]
以上においては、一の好適な実施形態を例示して本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その他の種々の態様にて実施することも可能である。本発明においては、例えば、上述した実施形態に対して以下のような変形を適用することができる。なお、これらの変形は、各々を適宜に組み合わせることも可能である。
【0069】
上述した実施形態においては、「シート状物」の一例として用紙を挙げたが、本発明に係るシート状物はこれに限らず、例えば、ICカード等のカード状の物体や合成樹脂製のフィルムなどであってもよい。また、被検出体についても、上述した実施形態では繊維状の金属であるとしたが、ICチップのような物体であってもよいし、繊維状でなくともよい。例えば、被検出体は、基材よりも薄く形成されたテープ状の金属であってもよい。また、被検出体の材質も金属に限らず、例えば、大バルクハウゼン効果を有する磁性体やプラスチックなどであってもよい。
【0070】
また、上述した実施形態においては、シート状物に含有する所定の被検知体が所望の状態で含有しているか否かを判定する形態を挙げたが、逆に、シート状物に含有するのが望ましくないゴミ等の異物を検出し、所定の基準以上に含有しているか否かによってシート状物を選別するために用いてもよい。
【0071】
また、上述した実施形態においては、両面の画像データを同時に生成すべく2つの撮像系(光源およびセンサ)を用いたが、単一の撮像系を用いて、用紙を反転させることによって両面の画像データを生成するようにしてもよい。
【0072】
また、上述した実施形態においては、良品と不良品の判定結果は、通知部40に供給されるものであったが、例えば、この結果を用いて、良品と不良品を弁別するようにしてもよい。具体的には、シート状物を収容する収容手段を2つ設けて、良品と判定された場合には、そのシート状物が一方の収容手段に収容され、不良品と判定された場合には、そのシート状物が他方の収容手段に収容されるような構成としてもよい。
【0073】
また、上述した実施形態においては、オブジェクト抽出処理を図7に示したフローチャートにて実行したが、オブジェクト抽出処理はこの手順に限定されない。例えば、上述の実施形態は平滑化処理と膨張処理とを複数回繰り返すものであったが、これを1回ずつにしてもよいし、いずれかの処理を省略してもよい。また、基材と被検出体が明瞭に識別されるようなシート状物にあっては、平滑化処理や膨張処理を実行しなくてもよい。
【0074】
また、オブジェクト抽出処理の手順は、第1の画像データと第2の画像データとで異ならせてもよい。例えば、2つの撮像系の特性が等しくないのであれば、これを調整するべくそれぞれの撮像系に適したオブジェクト抽出処理をあらかじめ求めておき、それぞれの画像データに対してこれを実行するようにしてもよい。
【0075】
また、上述した実施形態においては、両面に現れたオブジェクトの数に応じて判定を行っていたが、判定の基準はオブジェクトの数だけではなく、長さ、周囲長、面積、重心または角度であってもよい。具体的には、例えば、オブジェクトの重心が所定の位置にあるか否かを判定してもよいし、所定の長さ以上のオブジェクトが所定の数以上あるか否かを判定してもよい。また、オブジェクトの検出値に応じて被検出体の長さ、周囲長、面積、重心または角度を特定するときには、両面の検出値の平均値を用いたりしてもよい。
【0076】
また、その他の判定の方法としては、被検出体を所望の状態で含有しているか否かを判定するものがある。例えば、図4を例に説明すると、図4(a)に示すように基材S1のほぼ中央に被検出体S2が位置する場合には、両面の検出値がほぼ等しい値となる可能性が高い一方で、図4(b)や(c)に示すような状態だと、両面の検出値に不一致が生じる可能性が高い。そこで、図4(a)に示すような状態を所望の状態とするのであれば、両面の検出値が所定のレベル以上に異なる場合には、被検出体を所望の状態で含有していないと判定することができる。
【0077】
また、上述した実施形態は、本発明を検査装置に適用するものであったが、例えば、上述の制御部10に相当する機能を複写機・プリンタ等の画像形成装置やスキャナ等の画像読取装置に搭載することも可能である。また、本発明は、上述の検査プログラムP2に相当するプログラムとして提供されたり、あるいは、このプログラムを記録したROM等の記録媒体として提供されたりすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施形態である検査装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】検査装置の画像読取部の構成を示す図である。
【図3】シート状物の一例を示す図である。
【図4】シート状物の一例を示す図である。
【図5】検査装置により検査プログラムが実行されたときの処理を示すフローチャートである。
【図6】検査装置が実行する画像データ生成処理を示すフローチャートである。
【図7】検査装置が実行するオブジェクト抽出処理を示すフローチャートである。
【図8】膨張処理を説明するための図である。
【図9】第1の画像データの一例を示す図である。
【図10】図9の画像データから特定される検出値を示す図である。
【図11】図9の第1の画像データに対応する第2の画像データを示す図である。
【図12】検査装置が実行する判定処理を示すフローチャートである(動作例1)。
【図13】検査装置が実行する判定処理を示すフローチャートである(動作例2)。
【図14】第1および第2の画像データの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0079】
100…検査装置、10…制御部、11…CPU、12…メモリ、13…インタフェース、20…画像読取部、21、22…センサ、23、24…光源、25、26…搬送ロール、27…信号処理回路、30…操作部、40…通知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出体を含有するシート状物の第1の面を表す第1の画像データと、前記第1の面の反対面である第2の面を表す第2の画像データとを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された第1の画像データと第2の画像データとに応じて前記シート状物における被検出体の含有状態を特定する特定手段と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記特定手段は、
前記第1および第2の画像データに現れる前記被検出体の数を比較し、その数が大きい方の値を前記シート状物に含まれる被検出体の数として特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記特定手段は、
前記第1および第2の画像データが表す画像領域を所定の領域にそれぞれ分割し、前記被検出体の数を前記領域毎に特定する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記特定手段は、
前記第1および第2の画像データに現れる前記被検出体の数を、対応するそれぞれの領域毎に比較し、その数が大きい方の値を前記シート状物の当該領域に含まれる被検出体の数として特定し、当該特定された数の各領域についての総和を前記シート状物に含まれる被検出体の数として特定する
ことを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記特定手段は、
前記第1の画像データに現れる前記被検出体の数と前記第2の画像データに現れる前記被検出体の数の比が所定の範囲に含まれない場合に、所定の情報を出力する出力手段を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記特定手段は、
前記取得手段により取得された第1の画像データと第2の画像データのそれぞれに対して、所定の画像処理を実行する処理実行手段を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記処理実行手段は、
前記第1の画像データに対して実行する画像処理と、前記第2の画像データに対して実行する画像処理とを異ならせる
ことを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記処理実行手段は、
平滑化処理、膨張処理および二値化処理の少なくともいずれかを実行する
ことを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記処理実行手段は、
前記平滑化処理を実行した後に前記膨張処理を実行し、前記膨張処理を実行した後に前記二値化処理を実行する
ことを特徴とする請求項8に記載の画像処理装置。

【請求項10】
被検出体を含有するシート状物の第1の面を表す第1の画像データと、前記第1の面の反対面である第2の面を表す第2の画像データとを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された第1の画像データと第2の画像データとに応じて前記シート状物における被検出体の含有状態を特定することにより、前記シート状物に含まれる被検出体の含有状態が所定の基準を満たすか否かを判定する判定手段と
を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項11】
被検出体を含有するシート状物の第1の面を表す第1の画像データと、前記第1の面の反対面である第2の面を表す第2の画像データとを取得する取得ステップと、
前記取得ステップにおいて取得された第1の画像データと第2の画像データとに応じて前記シート状物における被検出体の含有状態を特定する特定ステップと
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項12】
被検出体を含有するシート状物の第1の面を表す第1の画像データと、前記第1の面の反対面である第2の面を表す第2の画像データとを取得する取得ステップと、
前記取得ステップにおいて取得された第1の画像データと第2の画像データとに応じて前記シート状物における被検出体の含有状態を特定することにより、前記シート状物に含まれる被検出体の含有状態が所定の基準を満たすか否かを判定する判定ステップと
を有することを特徴とするシート状物の検査方法。
【請求項13】
コンピュータを、
被検出体を含有するシート状物の第1の面を表す第1の画像データと、前記第1の面の反対面である第2の面を表す第2の画像データとを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された第1の画像データと第2の画像データとに応じて前記シート状物における被検出体の含有状態を特定する特定手段と
して機能させるためのプログラム。
【請求項14】
コンピュータを、
被検出体を含有するシート状物の第1の面を表す第1の画像データと、前記第1の面の反対面である第2の面を表す第2の画像データとを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された第1の画像データと第2の画像データとに応じて前記シート状物における被検出体の含有状態を特定することにより、前記シート状物に含まれる被検出体の含有状態が所定の基準を満たすか否かを判定する判定手段と
して機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−58271(P2008−58271A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238929(P2006−238929)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】