説明

画像処理装置、画像処理システム及び動作管理方法

【課題】ユーザーの操作を不要とした認証機能及び認証に連動してモード移行を行う省電力機能を備えた画像処理装置において、セキュリティの性能をより高めると同時に省電力をより有効化する。
【解決手段】画像処理装置204の操作位置に立つユーザー203が所持する認証情報送信機201と受信機202は、ユーザー203を媒体とする容量結合によって通信が可能になり、通信が確立すると、認証情報送信機201は、認証情報を送信する。画像処理装置204は、ユーザー認証の成立を条件に、このユーザーのログインを許可、即ちこのユーザーに許可される機能やデータを使用できる状態にする。この後、要求したジョブの処理の終了等を経て、ユーザー203が画像処理装置204から離れて通信が切断した場合、ログアウトする。ログアウトすることにより、認証を必要としない機能に制限してログインを受け付ける状態に再び戻る。また、通信が切断したときに、画像処理装置204は、通常動作モードから省電力モードに移行する動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のユーザーによって共用される複写機、ファクシミリ、複合機等の画像処理装置に関し、より詳しくは、ユーザー認証機能及び省電力化機能を備えるとともに、両機能の性能をより高める手法を付加した画像処理装置、画像処理システム及び該機能に係る動作管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機、ファクシミリ、複合機等の画像処理装置は、多機能化が進展し、画像処理システムを構成する重要な要素の1つとして、多様な需要に応えることが可能になり、また多くの人に共用されることが普通の使用形態になっている。このため、セキュリティ対策が求められ、ユーザーが入力する認証情報によって認証を行い、認証に成立したことを条件にログイン等の許可を与える方法が提案されている。
また、環境への関心の高まりから、省電力が求められ、従来から画像処理装置においては、最低限必要な電源供給以外の電源供給を停止する最大の省電力レベルまでに数段階のレベル設定で待機時に通常動作時からの電力消費を削減する省電力モードの動作を行う方法が採用されている。
【0003】
省電力モードでは、各種のデバイス、モジュール、ユニット等に対して電力を供給せずに動作を停止させるが、この省電力モードへの移行条件は、「一定時間アクセスがない場合」という条件による方法が主流である。ただ、認証を必要とする画像処理装置の場合、消費電力をさらに低減するために、認証に係る動作に用いる認証キーが取り外されたときに省電力モードに移行する方法も、既に知られており、特許文献1を例示することができる。特許文献1では、プリンタに印刷要求を行うクライアントPCへの操作を終え、印刷データを識別する識別情報の記憶されている認証キーが取り外されたときにクライアントPCを省電力モードに移行させ、この方法によって、通常の移行によるよりも省電力動作を早めるようにしている。
ただ、例示した特許文献1によると、認証キーを物理的に着脱しなければならないため使い勝手が悪く、また、認証キーを抜き忘れてしまう可能性があるためセキュリティの保証という点でも不確実である。また、抜き忘れると、省電力モードへ移行せずに無駄に電力を消費してしまうという問題も生じる。
【0004】
また、特許文献1による着脱操作が必要な確認キーにより生じる上記問題を解決することが可能な従来技術として、特許文献2を示すことができる。
特許文献2では、ユーザーが所持する識別情報送信装置と画像処理装置(複合機)との間で無線通信を使用してユーザー識別情報等の必要な情報を伝えることで、着脱操作を不要とした認証を行う。また、この従来例では、認証とともに、送受信装置間の距離を電波の強さによって測り、複合機から所定距離内にユーザーがいることを条件に当該ユーザーが要求した処理を開始する等の制御を行い、かつ、複合機から所定距離にユーザーが離れたことを条件に、処理を停止し、省電力モードに移行する制御を行うことで、セキュリティの確保と省電力を可能としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、無線通信を使用する従来技術(特許文献2)によると、ユーザーが所持する識別情報送信装置が所定距離だけ離れないと省電力モードに移行しないので、画像処理装置(複合機)の近くに留まらなくてはいけない状況になった場合には、その間、省電力モードに移行せず、通常動作を続ける。
このような場合に、無駄に電力を消費してしまい、また、通常動作が続く間に、認証されていない人の使用を許す結果となるおそれがあり、セキュリティの保証という点で確実性を損なう。また、この従来技術による場合、識別情報送信装置が所定距離だけ離れたか否か判別する処理を続けなければならないので、相当の処理負担が必要になる、という不利益が生じる。
本発明は、上記した従来技術の問題に鑑みてなされたもので、その目的は、認証キーを採用する場合における着脱操作のようなユーザーの操作を不要とした認証機能及び認証に連動してモード移行を行う省電力機能を備えた画像処理装置或いは画像処理システムにおいて、セキュリティの性能をより高めると同時に省電力をより有効化し、問題の解決手段を簡素化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像処理装置は、認証情報を保有する送信手段から容量結合方式の近距離通信によって送信される該認証情報を受信する認証情報受信手段と、受信した認証情報に対する認証処理を行う認証手段と、前記認証手段による認証の成立を条件にログインを許可する手段と、前記認証情報受信手段と送信手段との間の通信が確立しているか否かを監視する通信監視手段と、電源供給を制限することで通常動作から省電力動作へ動作モードを移行させるモード移行手段と、前記通信監視手段によって前記通信の切断が検知されたときに、許可されていたログインをログアウトするとともに、省電力モードへ移行させる制御手段を有したことを特徴とする。
本発明は、認証の成立を条件にログインを許可し、電源供給を制限することで通常動作から省電力動作へ動作モードを移行させる機能を持つ画像処理装置における動作管理方法であって、認証情報を保有する送信手段から容量結合方式の近距離通信によって送信される該認証情報を受信する認証情報受信工程と、受信した認証情報に対する認証処理を行う認証工程と、前記認証工程により認証が成立したことを条件にログインを許可する工程と、前記送信手段との間の通信が確立しているか否かを監視する通信監視工程と、前記通信監視工程によって前記通信の切断が検知されたときに、許可されていたログインをログアウトするとともに、電源供給を通常動作から省電力動作へ動作モードを移行させる制御工程とを有したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
ユーザーの着脱操作を不要とした認証機能及び認証に連動してモード移行を行う省電力機能を備えたことにより、使い勝手がよく、ユーザーの不注意な操作ミスを防止しセキュリティ性能の向上及び無駄な電力消費の低減化をより高いレベルで、また簡素な手段によって実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る画像処理装置の実施形態で用いる容量結合方式の近距離通信の回路構成を説明する図である。
【図2】認証情報の送受信を行う容量結合方式の通信回路を組み込んだ画像処理装置(システム)の1例を示す概略構成図である。
【図3】図2に示した認証情報送信機内部の概略構成を示す図である。
【図4】図2に示した画像処理装置とこれに接続される受信機それぞれの内部の概略構成を示す図である。
【図5】通信の切断に対応する省電力モードへの移行処理のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る画像処理装置の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
以下には、画像処理装置によって処理されるジョブの入力が、画像処理装置の設置場所でユーザーの操作に従って行われ、ログインの許可にユーザーの認証を必要とする、例えば複写機、ファクシミリ、複合機等の画像処理装置を例にした実施形態を示す。
従来、提案された同種の画像処理装置には、ユーザーが所持する識別情報送信装置からユーザー識別情報等を無線通信で伝えて認証を行い、また、処理を終えたユーザーが画像処理装置から所定距離だけ離れることを条件に省電力モードに移行する動作を行う機能を有するものがある。ただ、この従来装置によると、上記[発明が解決しようとする課題]で述べたように、無駄な電力消費が生じることや認証されていない人による使用が起きる、というセキュリティ上の問題が生じるおそれがあり、また、識別情報送信装置が所定距離だけ離れたか否か判別する処理を続けなければならないので、相当の処理負担が必要になる、という不利益が生じる。
【0010】
そこで、この発明では、上記の問題を生じることなく、処理負担の少ない手法として、ユーザーが所持する識別情報の送信手段から容量結合方式の近距離通信によって画像処理装置側の受信手段に認証に用いる識別情報等を伝える手法を用いる。
この手法で採用する容量結合方式の通信によると、無線通信では不可能な近距離で通信が確立でき、通信の確立後に行うユーザー認識を経てログインをする。その後、要求したジョブの処理の終了、中止等を経てユーザーが画像処理装置から離れる場合にも、近距離で通信の切断を検知でき、通信の切断を条件にログアウトをすることで、セキュリティの確保ができる。また、ログアウトと同時に省電力モードに移行する制御を行うようにすることで、無駄な電力消費が生じることなく、しかも上記従来装置の距離の判別に掛かる処理負担をなくし、処理の簡素化が実現できる。
【0011】
[容量結合方式の近距離通信]
先ず、この実施形態でユーザーが所持する識別情報の送受信に適用する容量結合方式の近距離通信について、概要を説明する。
図1は、この実施形態で適用する容量結合方式の近距離通信の回路構成を説明する図である。
図1に示す通信回路100は、送信機101、通信媒体103及び受信機102よりなる。
送信機101は、伝送データにより変調された交流信号の発生回路101m、通信媒体103と容量的に結合して変調信号を送信機101に伝える送信電極101eを有する。
受信機102は、送信機101から通信媒体103を介して伝わる信号を通信媒体103と容量的に結合して受信する受信電極102e、受信信号から伝送データを復調する回路102dを有する。
この実施形態では、通信媒体103は、送信機101を保持するユーザーであり、人体を通信媒体103として、送受信機の両電極101e,102eと容量的に結合し、受信機102で信号が受信できる状態にユーザーが接近することにより通信回路が構成される。
【0012】
図1に示した容量結合方式の通信回路100は、近距離の通信技術であり、送受信機の両電極101e,102e間で電荷のやりとりを行う方法であり、両電極101e,102e間の通信媒体103が電気を通す媒体であっても電荷の変化が伝播するため、通信が可能である。
通信媒体103は、この実施形態のように、人体でもよい。この場合、人体近傍の微弱な交流電界を電極で読み取る、という人体を介して構成する回路により通信動作を行う。また、この通信回路では、容量的な結合で電荷の変化を伝えるので、送信機101、通信媒体103、受信機102の間に衣服等が介在しても信号を伝えることができる。
なお、この実施形態に適用する容量結合方式の近距離通信は、例えば、非特許文献1に示すように公知技術であり、詳細は同文献を参照することができる。
【0013】
[画像処理装置への通信回路100の接続]
上記通信回路100(図1)は、ユーザーが画像処理装置に近接したときに、通信が確立でき、画像処理装置から離れる場合にも、近距離で通信の切断を検知できるようにする、という所期の動作を、ユーザーが画像処理装置を使用するときに行う自然な振る舞いの中で確実に実行できるようにすることが望ましい。
そこで、ユーザーの所持する認証情報の送信機(以下「認証情報送信機」という)を例えばユーザーのポケットに入れる携帯可能な形式とし、容量結合によりユーザーの体を通信媒体として伝わる認証情報送信機からの信号を画像処理装置側に設け認証情報を受け取る受信機で確実に受信できるように、受信機を例えば、画像処理装置を操作するときにユーザーが立つカーペットの下に置く形式で実施する。
【0014】
図2は、認証情報の送受信を行う容量結合方式の通信回路を組み込んだ画像処理装置(システム)の1例を示す概略構成図である。
図2に示す実施形態の構成では、ユーザー(通信媒体)203の所持する認証情報送信機201は、ユーザーのポケットに携帯されており、受信機202は、画像処理装置204を例えば操作パネル(不図示)を通して入力の操作を行うときにユーザー203が立つ床面に設置されている。
また、受信機202は、画像処理装置204に接続され、受信したデータを転送する。この接続は、USB(Universal Serial Bus)やLAN(Local Area Network)などの有線通信での接続でもよいが、無線LAN等の無線通信での接続でもよい。
【0015】
なお、通信媒体となるユーザー203が所持する認証情報送信機201の携帯の仕方は、カードタイプの認証情報送信機201をポケットに入れる、上記のような方法以外に、首から紐で吊るす方法、或いはリストバンド形式で腕に装着する方法でもよい。
こうした形態で認証情報送信機201を用いる際に、ユーザー203が受信機202の電極に直接もしくは間接に触れるなどして電荷の伝播が可能な距離になることにより、認証情報送信機201と受信機202の間で通信をすることが可能となる。ユーザー203と受信機202の電極との接触方法は、例えば、図2に示すように床面に設置される板状の電極を通信媒体であるユーザー203が踏む方法、もしくはユーザーの手が行く場所に設けた電極を手で触れるという方法による。後者の場合、画像処理装置204に内蔵する形式で実施することができる。
【0016】
[通信回路の動作に対応する画像処理装置の処理]
ユーザー203が画像処理装置204を使用するために、画像処理装置204の操作位置に立つと、ユーザーの所持する認証情報送信機201と受信機202は、容量結合によって通信が可能な状態になる。この後、通信が確立すると、認証情報送信機201は、内部のメモリに保存されている認証情報を受信機202に送信する。
受信機202が受信信号を復元し得られる認証情報を受け取る画像処理装置は、受け取った認証情報を、予めデータベースに登録されている認証情報と照合して、ユーザー認証を行う。なお、認証情報を登録するデータベースは、画像処理装置204内に持っていてもよいが、ネットワーク等で接続された認証サーバ(不図示)を外部に設けて、ここからデータの提供を受ける方法を採用してもよい。
【0017】
ユーザー認証が成立した場合は、画像処理装置204は、ログインを許可する。ログインの許可は、画像処理装置204が有する機能や蓄積されたデータのうち、認証されたユーザー203に許可されている機能やデータを使用できる状態にする。例えば、操作パネル(不図示)から認証されたユーザー203に許されるジョブの処理要求を受け付けるキー入力等の指示ができる状態にする。
ユーザーが要求したジョブの入力操作を終え、処理が開始された後、処理内容によっては処理中であっても、ユーザー203が画像処理装置204から立ち去る場合があり、この場合を含め、通信媒体であるユーザー203が受信機202から離れて通信が切断されると、ログアウトの状態になる。ログアウトすると、認証を必要としない機能に制限してログインを受け付ける状態に再び戻る。なお、ログアウトすると、上記のように、画像処理装置の機能の使用を制限して一部の機能は使用できるようにすることもできるが、全ての機能を使用できなくすることもできる。この使用の制限は、利用環境によって制限する機能を選択できるようにするとよい。
また、この実施形態では、通信が切断したときに、画像処理装置204は、処理が終了していれば即時に、また処理中であれば処理の終了を待って、通常動作モードから省電力モードに移行する動作を行う。なお、処理中の場合、上記のように、一部の機能の使用を制限する動作モードになっている場合には、この動作モードから省電力モードへ移行することになる。
【0018】
以下、上記の動作及び処理を行う認証情報送信機201、受信機202及び画像処理装置204に関するより詳細な説明をする。
〈認証情報送信機の内部構成〉
図3は、図2に示した認証情報送信機201内部の概略構成を示す図である。
図3に示すように、認証情報送信機201は、認証情報等を格納するメモリ206と、認証情報等の送信データにより変調された交流信号を発生し、容量結合方式の通信を行う送信部207と、メモリ206と送信部207を制御する制御部205と、認証情報送信機201内の各部に電源を供給する電源回路208を有する。
メモリ206は、マスクROM(Read Only Memory)等の書き換え不可能なメモリでも良いが、EEP(Electrically Erasable Programmable)ROMやFRAM(登録商標)等の強誘電体メモリ、FLASH ROM等の書き換え可能な不揮発性メモリでもよい。
【0019】
制御部205は、CPU(Central Processing Unit)、制御部205の処理に必要なプログラム、データ等を保存するメモリ、ワークメモリ等を要素として構成するコンピュータであってもよいが、より簡素な回路であってもよい。そのほか、外部の制御部からの信号で動作する方式によれば、認証情報送信機201内に制御部205を設けずに構成することも可能である。
また、図3では、送信のみを行う構成になっているが、受信機202から送られてくる信号の受信も可能な構成にすることができる。受信も可能とした場合には、認証情報送信機201側で画像処理装置204側の受信機202をチェックすることができる。即ち、認証情報を送信する前に、送信先が正規の受信機202として認められたものであるか否かを送信先から受信した機器IDにより確認し、正規の受信機202と判断された場合にのみ認証情報を送付する、というチェック動作を行える。このチェックを行うことによって、認証情報の漏洩を防ぎ、セキュリティを確保することができる。
【0020】
〈受信機及び画像処理装置の内部構成〉
図4は、図2に示した画像処理装置とこれに接続される受信機それぞれの内部の概略構成を示す図である。
図4に示すように、受信機202は、認証情報送信機201から容量結合方式の通信で伝えられる交流信号を受信し、受信信号から認証情報等のデータを復調する受信部210と、受信部210を制御し、画像処理装置204の後述するコントローラ212と接続される制御部209と、受信機202内の各部に電源を供給する電源回路211を有する。なお、この実施形態では、制御部209と画像処理装置204のコントローラ212との接続にUSBを用いるとともに、このUSBのVBUS(電源)により、画像処理装置204から電源を電源回路211に供給する。ただし、制御部209とコントローラ212の接続は、その他の有線接続もしくは無線接続でもよいが、この場合には、別途電源供給が必要になり、この点がUSBとは異なる。
【0021】
また、画像処理装置204は、画像処理装置204全体を制御するコントローラ212と、コントローラ212の制御下に置かれた、ユーザーの要求に従い画像を処理する画像処理部215、受信機202を通して受け取った認証情報をもとに認証処理を行う認証処理部216、動作させるデバイス等に必要な電源を供給するために後述する電源回路218を制御する動作を行う電源制御部217の各部と、画像処理装置204内の各部に電源を供給する電源回路218を有する。
なお、この実施形態では、コントローラ212は、省電力モードへの移行条件が満たされる場合に、電源制御部217を介して電源回路218を制御することで無駄な電力消費を抑制する省電力モードの動作を行う。
省電力モードへの移行条件は、この実施形態では、ユーザー認証を経てログインをした場合に、ログアウトが移行条件になる。また、ログアウトは、ユーザー203が受信機202から離れて通信が切断される場合である。
【0022】
上記のような条件のもとに省電力モードへの移行動作を行うためには、通信の切断を監視する手段を備えることが必要である。
通信の切断を監視する方法の1つは、定期的に接続を表す信号を認証情報送信機201から送り続けて、受信機202を通してこの信号を受け取る画像処理装置204は、この受信信号が送られてこなくなったら、通信の切断を判断するという方法である。
また、他の方法としては、接続を表す信号に代えて、認証情報を定期的に送り続けるという方法によってもよい。この方法によれば、途中でユーザーが変わっていないことを確認することもできる。
また、特に接続を表す信号等を送らなくても、受信機202の電極に生じる電荷の状態で接続か切断かを画像処理装置204で判断する方法によってもよい。
この省電力モードへの移行処理については、この実施形態に特有の処理として、後記〈省電力モードへの移行処理〉でも説明する。
【0023】
また、図4に示すように、受信機202と画像処理装置204をUSBで接続する構成をとると、画像処理装置204が省電力モードに移行した場合、コントローラ212がUSBを使用できなくなり、ユーザー認証を行うことができなくなる。この不都合を解決するための手段としては、省電力モードになった場合、別の制御線でコントローラ212と受信機202を接続し、ユーザー認証を行える構成を用意する。この構成を用意することによって、省電力モードに移行した場合にも、ユーザー認証を行うことができ、ユーザー認証が成立する場合に、この制御線を使用してコントローラ212に省電力モードから復帰するトリガを入力できるような構成をとることができる。
また、図4では、受信機202は受信のみを行う構成になっているが、認証情報送信機201に対し送信も可能な構成にすることができる。送信も可能とすれば、認証情報送信機201側で画像処理装置204側の受信機202をチェックするための情報を送ることができる。即ち、認証情報送信機201が認証情報を送信する前に、送信先が正規の受信機202として認められたものであるか否かを確認する場合に必要な受信機202の機器IDを取得し、正規の受信機202のチェックが行える。このチェック動作によって、認証情報の漏洩を防ぐことができ、セキュリティを確保することができる。
【0024】
〈省電力モードへの移行処理〉
次に、画像処理装置204が行う通信の切断に対応する省電力モードへの移行処理について、図5のフロー図を参照して説明する。
この処理フローは、受信機202の受信状態を常時監視する画像処理装置204のコントローラ212が受信機202を介して認証情報送信機201から送られてくる信号を受信した時に起動する。
この処理フローが起動されると、先ず、受信した認証情報をもとにユーザー認証を行い、認証の成立を条件に、このユーザーのログインを許可するとともに、通常動作モードの電源供給により動作を開始する(ステップS101)。なお、ここでは、消費電力を低減しない通常モードと、消費電力を低減する省電力モードの2種類を持つことにしているが、省電力モードは、動作可能範囲を選択することで、省電力のレベルを何段階かに設定できる方法によって行ってもよい。
【0025】
許可されたログインの後、ログインしたユーザーの所持する認証情報送信機201との間で継続している通信が切断されたか否かを監視し続ける(ステップS102)。
ここで、認証情報送信機201との通信が切断されたことが検知されれば(ステップS102-YES)、直ちにログインしたユーザーのログアウト処理を実行する(ステップS103)。なお、通信の切断を監視する方法は、上記〈受信機及び画像処理装置の内部構成〉で説明した監視方法のいずれかを用いる。また、ログアウト処理は、他のユーザーのログインを可能にするが、この実施形態では、ユーザー認証を通してログインが行われるまでは、誰でも使用できる画像処理装置に制限してログインを可能にする。ただ、ユーザー認証を通してログインが行われるまでは、全ての機能の使用を制限する方法によってもよい。
【0026】
ログアウト処理を行った後、ユーザーによっては、処理を待たずに画像処理装置204を離れる場合があり、ログアウト処理後に直ぐ省電力モードへ移行すると、画像処理等のジョブが終了できないので、終了していない処理があるか否かを確認する(ステップS104)。
この確認の結果、終了していない処理がある場合には(ステップS104-YES)、未終了の処理を実行し(ステップS105)、処理後に省電力モードへ移行させ(ステップS106)、このフローの処理を終了する。例えば、印刷を開始したが終了していない場合には、未処理の印刷を終了してから省電力モードに移行する。ただし、処理の中断を可能にする機能を用意している場合には、即座に省電力モードに移行しても良い。
他方、ステップS104で全部の処理が終了している場合には(ステップS104-NO)、即座に省電力モードへ移行させ(ステップS106)、このフローの処理を終了する。
また、移行する省電力モードは、前述の通り、複数の省電力モードから設定可能なモードが選択できる場合は、どのモードに移行するかを判定する手順を付加し、この手順の判定に従った省電力モードへ移行させる。
【0027】
上述のように、この実施形態の画像処理装置204によれば、従来技術(特許文献1)における認証キーのように、物理的に何かを着脱する必要がなく、例えば、靴を履いたまま受信機202の板状の電極を踏む、といった形態でユーザーが触れるだけで認証が可能となる容量結合による通信(人体通信)方式を使用したことで、認証キーやカードといったものを物理的に接続したり近づけたりするユーザーの操作が不要になり、使い勝手がよくなる。
また、認証されたユーザーが受信機202から離れたときにログアウトし、画像処理装置204の機能の使用を制限することが可能になり、認証キーやカードの抜き忘れによって他人が使用可能になってしまうという問題が解消され、セキュリティの性能を高度化することができる。
また、認証されたユーザーが受信機202から離れたときに省電力モードに移行することが可能になり、認証キーやカードの抜き忘れによって省電力モードに移行できなくなるために起きる無駄な電力消費を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0028】
100・・通信回路、101・・送信機、101e・・送信電極、102・・受信機、102e・・受信電極、103・・通信媒体、201・・認証情報送信機、202・・受信機、203・・通信媒体(ユーザー)、204・・画像処理装置、205・・制御部、206・・メモリ、207・・送信部、208・・電源回路、209・・制御部、210・・受信部、211・・電源回路、212・・コントローラ、215・・画像処理部、216・・認証処理部、217・・電源制御部、218・・電源回路。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【特許文献1】特開2007−172493号公報
【特許文献2】特開2009−276866号公報
【非特許文献】
【0030】
【非特許文献1】門 勇一、外1名、“人体近傍電界通信技術「レッドタクトン」とその応用”、[online]、NTT技術ジャーナル 2010 vol.22 NO.1 P.16〜19、[平成22年4月26日検索]、インターネット<URL:http://www.ntt.co.jp/journal/1001/files/jn201001016.pdf>

【特許請求の範囲】
【請求項1】
認証情報を保有する送信手段から容量結合方式の近距離通信によって送信される該認証情報を受信する認証情報受信手段と、
受信した認証情報に対する認証処理を行う認証手段と、
前記認証手段による認証の成立を条件にログインを許可する手段と、
前記認証情報受信手段と送信手段との間の通信が確立しているか否かを監視する通信監視手段と、
電源供給を制限することで通常動作から省電力動作へ動作モードを移行させるモード移行手段と、
前記通信監視手段によって前記通信の切断が検知されたときに、許可されていたログインをログアウトするとともに、省電力モードへ移行させる制御手段
を有したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載された画像処理装置において、
前記送信手段は、携帯可能なものであることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された画像処理装置において、
前記認証情報受信手段は、床に設置可能なものであることを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された画像処理装置と前記画像処理装置の前記認証情報受信手段で受信する認証情報を送信する前記送信手段とにより構成することを特徴とする画像処理システムであって、
前記画像処理装置は、前記送信手段から認証情報を受信する前に自身の受信機情報を前記送信手段へ前記容量結合方式の近距離通信によって送信する受信機情報送信手段をさらに有し、
前記送信手段は、前記受信機情報送信手段から送信される受信機情報を受信する受信機情報受信手段と、受信した前記受信機情報をもとに送信先が予め許可された画像処理装置であるか否かを判断する送信先適否判別手段と、前記送信先適否判別手段によって送信先が予め許可された画像処理装置であると判断された場合のみ前記認証情報送信手段によって認証情報を送信する制御手段を有する
ことを特徴とする画像処理システム。
【請求項5】
認証の成立を条件にログインを許可し、電源供給を制限することで通常動作から省電力動作へ動作モードを移行させる機能を持つ画像処理装置における動作管理方法であって、
認証情報を保有する送信手段から容量結合方式の近距離通信によって送信される該認証情報を受信する認証情報受信工程と、
受信した認証情報に対する認証処理を行う認証工程と、
前記認証工程により認証が成立したことを条件にログインを許可する工程と、
前記送信手段との間の通信が確立しているか否かを監視する通信監視工程と、
前記通信監視工程によって前記通信の切断が検知されたときに、許可されていたログインをログアウトするとともに、電源供給を通常動作から省電力動作へ動作モードを移行させる制御工程と
を有したことを特徴とする動作管理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−237857(P2011−237857A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106242(P2010−106242)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】