画像処理装置、画像処理方法、及び画像処理プログラム
【課題】印刷用の画像処理装置であって、カラー及びブラックを別個に調整できると共に濃度に合わせて色材量をコントロール可能な濃度調整を実行し、濃度調整に係るユーザーニーズに適確に応えることのできる画像処理装置等を提供する。
【解決手段】画像記録装置に接続可能な画像処理装置が、第一色空間で表現された画像データを、画像記録装置で使用される色材の第二色空間で表現された色材量データに変換する色変換部と、前記色材量データを指定された調整値に基づいて増減させる濃度調整部と、増減後の前記色材量データを、前記画像記録装置で形成されるドットのサイズ別のドット発生量で表現されたドット発生量データに変換するドット分解部と、前記ドット発生量データを、ドットの形成の有無を表現したデータに変換するハーフトーン処理部と、を有する。
【解決手段】画像記録装置に接続可能な画像処理装置が、第一色空間で表現された画像データを、画像記録装置で使用される色材の第二色空間で表現された色材量データに変換する色変換部と、前記色材量データを指定された調整値に基づいて増減させる濃度調整部と、増減後の前記色材量データを、前記画像記録装置で形成されるドットのサイズ別のドット発生量で表現されたドット発生量データに変換するドット分解部と、前記ドット発生量データを、ドットの形成の有無を表現したデータに変換するハーフトーン処理部と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用の画像処理装置等に関し、特に、カラー及びブラックを別個に調整できると共に濃度に合わせて色材量をコントロール可能な濃度調整を実行し、濃度調整に係るユーザーニーズに適確に応えることのできる画像処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な用途でインクジェットプリンターなどのプリンターが使用されている。当該プリンターでは、色材を用紙などの印刷媒体に打ち込んでドットを形成することにより印刷が実行される。このような印刷処理では、印刷対象の画像データを上記ドットの有無を表すデータに変換するための画像処理が必要であり、当該画像処理がホスト装置におけるドライバーやプリンターのコントローラーによって行われている。
【0003】
また、その画像処理では、ユーザー要求等に基づく濃度の調整処理が行われることがあり、従来の濃度調整方法としては、下記特許文献1に記載のように、画像データの有する各色の濃度を、設定された調整値に応じた濃度に変換するものがある。また、下記特許文献2及び3に記載されるように、下色除去による濃度調整もよく用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−141941号公報
【特許文献2】特開2006−279922号公報
【特許文献3】特開2008−205964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のように、画像データに対して濃度調整処理を行う場合、処理されるデータの色表現がプリンターで使用される色材による色表現と異なれば、濃度調整処理による濃度の増減が、そのまま、印刷媒体に打ち込まれる色材量の増減にはならず、場合によっては増減が逆転してしまうことも起こり得る。例えば、プリンターで使用される色材がCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)であり、画像データがRGB(レッド、グリーン、ブルー)で表現されている場合には、RGBからCMYKへの変換は一律に決まるものではないので、その変換内容の設計により上記濃度増減による色材量の変化も様々な結果となり得る。具体的には、一例として、RGB(0,0,0)で表現されるデータ(各色の濃度を256階調で表現したデータで、黒色(ブラック)に対応する)に対して濃度を10%下げる調整処理を行うと、そのデータは(20,20,20)となり、その後、CMYKで表現されるデータ(例えば、色材の量に比例する単位面積あたりの色材による被覆率で表現したデータ)に変換すると、その値は(10%,10%,10%,75%)となる。しかし、元のRGB(0,0,0)をそのまま変換した場合にはCMYK(0%,0%,0%,100%)となり、上記濃度調整の結果は、濃度を10%下げたにも関わらず、色材の量が増加(100%(K)→105%(CNYK合計))してしまう結果となっている。
【0006】
濃度調整において濃度を減少させる目的には、用紙(印刷媒体)における裏抜けや滲みの防止、印刷に使用されるインク(色材)コストの削減といったものがあり、このような場合には、見た目の濃度だけでなく物理的に打ち込まれる色材量を減少させる必要があるが、上述の状況では、具体的な色材の削減量も把握できず調整が困難である。
【0007】
また、濃度調整において濃度を増加させる目的には、印刷結果におけるいわゆる「埋まりが足りない」という状況を解消しようとするものがあるが、この場合にも、濃度増加量に相応した色材量の増加が得られる必要があり、上述の状況ではかかる目的を実現できない。
【0008】
さらに、上述した従来の下色除去を用いた手法では、カラーインクを除いてブラックインクに置き換える手法であるため、カラーとブラックを別々に調整したい場合に困難であるという課題がある。
【0009】
例えば、黒文字・バーコード等の品質を低下させず、かつ、ブラックインクを増加させずに総インク打ち込み量を指定量減少する、という目的を達成する場合には、上記下色除去を用いた手法では困難である。
【0010】
そこで、本発明の目的は、印刷用の画像処理装置であって、カラー及びブラックを別個に調整できると共に濃度に合わせて色材量をコントロール可能な濃度調整を実行し、濃度調整に係るユーザーニーズに適確に応えることのできる画像処理装置、等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の一つの側面は、画像記録装置に接続可能な画像処理装置が、第一色空間で表現された画像データを、画像記録装置で使用される色材の第二色空間で表現された色材量データに変換する色変換部と、前記色材量データを指定された調整値に基づいて増減させる濃度調整部と、増減後の前記色材量データを、前記画像記録装置で形成されるドットのサイズ別のドット発生量で表現されたドット発生量データに変換するドット分解部と、前記ドット発生量データを、前記ドットの形成の有無を表現したデータに変換するハーフトーン処理部と、を有する、ことである。
【0012】
更に、上記発明において、好ましい態様は、前記調整値は、有彩色と黒色について別個に指定され、前記濃度調整部は、有彩色について指定された前記調整値に基づいて、有彩色の前記色材量データを増減させ、黒色について指定された前記調整値に基づいて、黒色の前記色材量データを増減させる、ことを特徴とする。
【0013】
更にまた、上記発明において、好ましい態様は、前記画像データと前記色材量データとを、前記色材の総色材量が制限値以内になるように対応付けたテーブルであって、前記制限値が異なる複数の色変換テーブルを備え、前記色変換部は、前記指定された調整値に基づいて前記色変換テーブルを選択し、当該選択した色変換テーブルを用いて前記変換を行う、ことを特徴とする。
【0014】
更に、上記発明において、一つの態様は、前記色変換部は、前記指定された調整値が濃度増加を示す場合には、基準の前記色変換テーブルよりも、前記制限値が大きい前記色変換テーブルを選択する、ことを特徴とする。
【0015】
更に、上記発明において、好ましい態様は、前記濃度調整部は、前記制限値が大きい色変換テーブルを選択したことにより、前記色変換部による変換処理で生成された前記色材量データが、前記指定された調整値が示す濃度増加を超えて増加された値となる場合には、その超過分を減少させる、ことを特徴とする。
【0016】
また、上記発明において、一つの態様は、前記色変換部は、前記基準の前記色変換テーブルを用いた場合に、前記濃度調整部による処理後に得られる前記色材量データの総色材量の最大値が、当該基準の色変換テーブルの前記制限値を超えない場合には、当該基準の色変換テーブルを選択する、ことを特徴とする。
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明の別の側面は、画像処理方法が、第一色空間で表現された画像データを、印刷に用いられる色材の第二色空間で表現された色材量データに変換する色変換工程と、前記色材量データを指定された調整値に基づいて増減させる濃度調整工程と、増減後の前記色材量データを、印刷媒体に形成されるドットのサイズ別のドットの発生量で表現したドット発生量データに変換するドット分解工程と、前記ドット発生量データを、前記ドットの形成の有無を表現したデータに変換するハーフトーン処理工程と、を有する、ことである。
【0018】
上記の目的を達成するために、本発明の更に別の側面は、画像処理プログラムが、印刷用画像データを、印刷に用いられる色材の量で表現した色材量データに変換する色変換工程と、前記色材量データを指定された調整値に基づいて増減させる濃度調整工程と、前記増減後の色材量データを、ドットサイズ別のドット発生量で表現したドット発生量データに変換するドット分解工程と、前記ドット発生量データを、ドットの有無を表現したデータに変換するハーフトーン処理工程と、を画像処理装置に実行させる、ことである。
【0019】
本発明の更なる目的及び、特徴は、以下に説明する発明の実施の形態から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用した画像処理装置の実施の形態例に係る構成図である。
【図2】ドット分解テーブル128を例示した図である。
【図3】ドライバー12によって行われる処理の手順を例示したフローチャートである。
【図4】濃度調整入力画面を例示した図である。
【図5】第一の具体例におけるデータの推移を示した図である。
【図6】第二の具体例におけるデータの推移を示した図である。
【図7】第三の具体例におけるデータの推移を示した図である。
【図8】第三の具体例におけるドット分解処理の結果を例示した図である。
【図9】変形例における画像処理の手順を例示したフローチャートである。
【図10】変形例におけるデータの推移を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態例を説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。なお、図において、同一又は類似のものには同一の参照番号又は参照記号を付して説明する。
【0022】
図1は、本発明を適用した画像処理装置の実施の形態例に係る構成図である。図1に示すホストコンピューター1が本発明を適用した画像処理装置であり、濃度調整部123が、ユーザーによって指定された濃度調整の処理を、色変換部122による処理後のインク量データ(色材量データ)に対し、ブラック(黒色)とカラー(有彩色)とで別々に実行する、ことを特徴とする。当該装置により、カラー及びブラックを別個に調整できると共に濃度に合わせて色材量をコントロール可能な濃度調整が実行され、濃度調整に係るユーザーニーズに適確に応えることが可能となる。
【0023】
図1では、本実施の形態例における装置構成を機能的に示している。ホストコンピューター1は、プリンター2(画像記録装置)に対して印刷指示を行うプリンター2のホスト装置であり、例えば、パーソナルコンピューターで構成される。従って、ホストコンピューター1は、図示していないが、CPU、RAM、ROM、HDD、ディスプレイ、操作装置等で構成されている。
【0024】
アプリケーション11は、印刷要求元であり、例えば、文章作成アプリケーション、図形作成アプリケーションなど、様々な機能を有するアプリケーションが存在し得る。当該アプリケーション11は、処理内容を指示するプログラム、当該プログラムに従って処理を実行する上記CPU、及び上記RAM等で構成され、印刷要求時には印刷内容を表す画像データを出力する。
【0025】
ドライバー12は、プリンター2用のドライバーであり、上記アプリケーション11から出力された画像データに画像処理を施してプリンター2用の画像データ(印刷データ)とし、当該印刷データをプリンター2に送信して、アプリケーション11から要求を受けた印刷について印刷指示を行う部分である。
【0026】
当該ドライバー12は、処理内容を指示するドライバープログラム、当該プログラムに従って処理を実行する上記CPU、処理に使用される各種データ及び上記RAM等で構成され、その具体的な機能構成及び処理内容は後述する。また、このドライバープログラムは、CD等の記憶媒体からホストコンピューター1に複写される、または、インターネット等のネットワークを介してホストコンピューター1にダウンロードされる、ことにより、ホストコンピューター1の上記HDDに格納される。
【0027】
プリンター2は、上記ホストコンピューター1の印刷指示に従って印刷処理を実行する、例えば、ラインヘッドのインクジェットプリンターである。プリンター2には、図1に示されるように、コントローラー13と印刷実行部14が備えられる。
【0028】
コントローラー13は、上記印刷指示による印刷データを受信して、当該印刷データに従った印刷処理を印刷実行部14に実行させる部分である。具体的には、処理内容を記述したプログラム、当該プログラムに従って処理を実行するCPU、RAM、プログラムを格納するROM、ASIC等で構成される。
【0029】
印刷実行部14は、上記コントローラー13の指示に従って実際に用紙などの印刷媒体に印刷処理を実行する部分である。ここには、印刷媒体に対して色材であるインクを吐出する複数のノズルを備えたラインヘッド、印刷媒体を所定の速度で搬送する搬送装置などが備えられる。ここでは、一例として、CMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)4色のインクを色材として用い、各色に対応するそれぞれのノズルからインクを吐出するものとする。そして、吐出されたインクが印刷媒体に打ち込まれてドットが形成されることにより印刷が実行される。また、ラインヘッドは、一例として、複数のヘッドユニットに分割されており、それらが互い違いに、いわゆる千鳥状に配置される構成である。
【0030】
次に、図1の下部に示すドライバー12の機能構成について説明する。ラスタライズ部121は、上記アプリケーション11から出力された画像データに対してラスタライズの処理を施し、第一色空間、例えば、RGB(レッド、グリーン、ブルー)の色空間で、表現されたビットマップデータを生成する部分である。
【0031】
色変換部122は、色変換テーブル127に従って、上記ビットマップデータを色材の色空間(第二色空間)であるCMYKの色空間で表現されたデータ、すなわち、インク量データに変換する部分である。
【0032】
色変換テーブル127は、予め用意されたLUT(ルックアップテーブル)であり、RGBの各濃度階調値(例えば、0から255の256階調で表現された値)に対して、対応するCMYKの各インク量データが収められたテーブルである。ここで、インク量データは、画素あたりの色材による被覆率を表現したデータであり、インク量に比例するものとする。なお、インク量データは、インクの重量あるいは体積等でも表現することもできる。当該色変換テーブル127は、印刷媒体の種類(用紙の種類)、解像度などの印刷条件に対してそれぞれ設計され、上記HDD等に格納されている。ここでは、一例として、3つの色変換テーブル127(1)、127(2)、及び127(3)が用意され、それぞれ順番に、低濃度用、中濃度用、及び高濃度用に位置付けられる。具体的には、全色材(CMYK)のインク量データを合計した量を総インク打ち込み量とすると、その制限値(最大値)が、低濃度用、中濃度用、及び高濃度用に、それぞれ順番に、120%、160%、及び200%になるように設計されている。従って、色変換前の画像データが如何なる値であっても、上記各色変換テーブル127を用いた処理の結果のインク量データの値の総計(色材の総色材量)は、上記各総インク打ち込み量の制限値(最大総インク打ち込み量)を超えることはない。
【0033】
そして、色変換部122には、上記複数(3つ)備えられた色変換テーブル127を選択するLUT選択部122aが備えられる。当該LUT選択部122aは、色変換処理時に上記印刷条件及びユーザーによる濃度調整要求に従って適切な色変換テーブル127を選択し、選択された色変換テーブル127によって色変換処理がなされる。
【0034】
また、上記各色変換テーブル127は、事前に従前の方法で生成され、上述したドライバープログラムと同様にして格納される。
【0035】
次に、濃度調整部123は、上記色変換処理後のインク量データに対して濃度調整処理を実行する部分である。当該濃度調整部123は、ユーザーによって指定される濃度調整値に従い、カラー(CMY)のインク量データとブラック(K)のインク量データを別個に変更する処理を実行する。
【0036】
次に、ドット分解部124は、上記濃度調整後のインク量データを、ドット分解テーブル128に従って、ドットの発生量で表現したデータに変換する部分である。ここでは、一例として、各ノズルからのインクの吐出により、印刷媒体に形成することのできるドットが小ドット(S)、中ドット(M)、大ドット(L)の3サイズあり、変換前のインク量データ(0%−100%)が、これら3つのドットの発生量のデータに変換される。ここで、各ドットの発生量は、画素を網状に分割し、その分割した領域にドットを配置した数値で表され、例えば、0から4096の値で示すことができるものとする。
【0037】
ドット分解テーブル128は、CMYKの各インク量データ(0%−100%)に対して、上記3つのドットの発生量を対応付けたテーブルであり、上記HDD等に格納されている。格納方法は、上述したドライバープログラムと同様である。
【0038】
図2は、ドット分解テーブル128をグラフ形式で例示した図である。図2に示すグラフにおいて、横軸はドット分解前の上記インク量(データ)を示し、縦軸がドット分解後のドット発生量を示している。また、グラフS、M、Lは、それぞれ、小ドット、中ドット、大ドットの発生量を示している。図から分かるとおり、インク量が少ない場合には、小ドットだけが発生して濃度の薄い印刷となり、逆に、インク量が多い場合には、大ドットを含め3つのドットが発生して濃度の高い印刷が実現されることになる。
【0039】
次に、ハーフトーン処理部125は、いわゆるハーフトーン処理を実行し、上記ドット発生量に変換されたデータを、各ドットの形成の有無を表すデータに変換する部分である。処理手法は、従前のディザ法や誤差拡散法などを用いることができる。
【0040】
次に、印刷データ変換部126は、上記ハーフトーン処理後のデータをプリンター2用のコマンドで表現された上記印刷データに変換する部分である。
【0041】
以上説明したような構成を有する本実施の形態例にけるドライバー12では、以下のように画像処理が実行される。図3は、ドライバー12によって行われる処理の手順を例示したフローチャートである。以下、図3に基づいて画像処理の具体的な内容について説明する。
【0042】
まず、上述したようにアプリケーション11を利用するユーザーが、印刷要求の操作をする際に、濃度調整の要求操作を実行すると、その濃度調整要求がドライバー12によって受信される(ステップS1)。当該要求を受けたドライバー12は、ホストコンピューター1の表示装置に濃度調整入力画面を表示する(ステップS2)。
【0043】
図4は、その濃度調整入力画面を例示した図である。当該入力画面で、ユーザーは、カラーとブラックについて別々に濃度調整の指示を行うことができ、カラーの濃度調整は、図中のaで示すスライドバーを操作して、また、ブラックの濃度調整は、図中のbで示すスライドバーを操作して、それぞれ、指示される。例えば、両方とも30%濃くする(+30%、+30%)、あるいは、カラーは30%薄くしブラックは10%薄くする(OLE_LINK1OLE_LINK2−30%、OLE_LINK1OLE_LINK2−10%)といった指示がなされる。
【0044】
この表示された入力画面に対して、上述の如くユーザーが入力操作を実行すると、入力された濃度調整値(上記スライドバーで入力された2つの濃度調整割合(%)の値)と、アプリケーション11からの印刷対象の画像データがドライバー12に受信される(ステップS3)。
【0045】
受信される画像データは、この段階では、通常、テキスト、グラフィックス、イメージなどのオブジェクトの単位で表現されたデータ形式になっているので、ラスタライズ部121がラスタライズ処理を実行し、その画像データをビットマップデータに変換する(ステップS4)。具体的には、ラスタライズ部121は、各画素がRGB各色の濃度階調値(0−255)を有するデータに変換する。ラスタライズには従前の手法を用いることができる。
【0046】
次に、生成されたビットマップデータが色変換部122に渡され、上述した色変換テーブル127を用いた色変換処理が実行される。具体的には、まず、LUT選択部122aが、上記画像データに含まれる上記印刷条件に相応した色変換テーブル127を、又は、デフォルトとして決まっている色変換テーブル127を基準のテーブルとして選択する。
【0047】
次に、LUT選択部122aは、前記受信した濃度調整値が濃度を増加させる調整を意味するものであるか(上記濃度調整割合がプラスであるか)否かを判断し(ステップS5)、そうでない場合、すなわち、濃度調整を行わない場合、又は、濃度調整値が濃度を減少させる調整を意味するものである(上記濃度調整割合がマイナスである)場合には(ステップS5のNo)、上記選択した基準の色変換テーブル127で処理を行うべく、処理工程がステップS8へ移行する。
【0048】
一方、濃度調整値が濃度を増加させる調整を意味するものである場合には(ステップS5のYes)、LUT選択部122aは、使用する色変換テーブル127を切り替える(ステップS6)。具体的には、上記選択された色変換テーブルを、上記基準のテーブルよりも高濃度用の色変換テーブル127に切り替える。より具体的には、上記基準のテーブルの最大総インク打ち込み量(X)に上記濃度調整値の大きい方の値(+Y%)を乗じた値(X×(1+Y%/100%))以上の最大総インク打ち込み量を有する色変換テーブル127に切り替える。
【0049】
その後、色変換部122は、上記テーブルの切り替えによって必要になる濃度減少の量を求める(ステップS7)。具体的には、下記(1)及び(2)式によって計算する。
カラー濃度減少量(%)=(X×(1+Y1/100)/Z−1)×100 (1)
ブラック濃度減少量(%)=(X×(1+Y2/100)/Z−1)×100 (2)
なお、Xは、基準テーブルの最大総インク打ち込み量(%)であり、Y1は、カラーの濃度調整値(%)であり、Y2は、ブラックの濃度調整値(%)であり、Zは、上記切り替え後の色変換テーブル127の最大総インク打ち込み量(%)である。
【0050】
次に、色変換部122は、その時点で選択されている色変換テーブル127を用いて、すなわち、濃度調整が増加でない場合には上記基準のテーブルを用いて、濃度調整が増加である場合には上記切り替え後のテーブルを用いて、色変換処理を実行する(ステップS8)。具体的には、色変換部122は、色変換テーブル127を参照して、上記生成されたビットマップデータの各画素の(R,G,B)で表現されるデータを、色変換テーブル127において当該データの値に対応付けられる(C,M,Y,K)の値に順次変換し、各画素がCMYK各色のインク量で表現されるインク量データを生成する。
【0051】
このようにして、色変換処理が実行されると、生成されたインク量データは濃度調整部123に渡され、ここで、濃度調整処理が実行される(ステップ9、10)。具体的には、カラー(CMY)の各インク量及びブラック(K)のインク量について、それぞれ、濃度を減少させる(値を減少させる)処理を実行する。より具体的には、上記インク量データについて、画素毎に、CMYの各値をカラーの濃度減少割合に応じて減少させ、Kの値をブラックの濃度減少割合に応じて減少させる、処理を実行する。ここで、カラーの濃度減少割合及びブラックの濃度減少割合は、上記ユーザーに指定された濃度調整が増加でない場合には、上記ユーザーによって入力された濃度調整値であり、上記ユーザーに指定された濃度調整が増加である場合には、上記ステップS7で求めたカラー濃度減少量及びブラック濃度減少量である。
【0052】
次に、濃度調整後のインク量データである(C’,M’,Y’,K’)がドット分解部124に渡され、当該調整後のデータに対して、各ドットへの分解処理が実行される(ステップS11)。当該処理は、ドット分解部124が上述したドット分解テーブル128を用いて行い、具体的には、ドット分解テーブル128を参照して、画素毎に(C’,M’,Y’,K’)の各インク量データを、上記ドット毎の発生量データ(S,M,L)に変換していく。
【0053】
その後、当該変換されたデータは、ハーフトーン処理部125に渡され、ここでハーフトーン処理が実行される(ステップS12)。そして、各画素の各色のドット発生量データ(S,M,L)は、小、中、大ドットの有無(オン・オフ)を表すデータに変換される。
【0054】
ハーフトーン処理されたデータは、印刷データ変換部126によってプリンター2用の印刷データ(コマンド)に変換され(ステップS13)、プリンター2へ送信される(ステップS14)。その後、送信された印刷データは、コントローラー13で受信されて、当該印刷データに従った印刷処理が実行されることになる。すなわち、印刷データに従って各ノズルからインクが吐出されて、印刷媒体上に小、中、大ドットが形成される。そして、上記ユーザーによって指定された濃度調整が反映されたインク量で印刷が実現される。
【0055】
次に、上記説明した画像処理の濃度調整に係る部分の具体例を説明する。図5は、第一の具体例におけるデータの推移を示した図である。当該第一の具体例は、図5の(1)に示されるように、ユーザーによって指定され、上記ステップS3で受信される濃度調整値が、カラーでは+50%、ブラックでは+10%である場合を示している。
【0056】
また、図5の(2)に示すように、一例として着目する画素の画像データである(R,G,B)の値は(200,150,150)であり、図5の(3)に示すように、LUT選択部122aで基準テーブルとして選択されているテーブルは、最大総インク打ち込み量が120%である色変換テーブル127(1)(ここでは、LUT1とする)である。
【0057】
当該第一の具体例では、指定された濃度調整が増加であるので、前述のステップS6に従って、色変換テーブル127の切り替えが実行され、図5の(4)及び(5)に示されるように、LUT1の最大総インク打ち込み量120%を大きい方の濃度調整値50%で拡大させた値180%を超える最大総インク打ち込み量200%を有する色変換テーブル127(3)(ここでは、LUT3とする)が切り替え後のテーブルとして選択される。
【0058】
その後、上記ステップS7の処理により、図5の(6)に示すように、カラー及びブラックの濃度減少量が計算される。その結果、カラーの濃度減少量は−10%、ブラックの濃度減少量は−34%となる。
【0059】
その後、上記ステップS8の処理により、図5の(7)に示すように、上記選択されたLUT3による色変換処理が実行され、CMYKのインク量データが生成される。対象画素のインク量データは、(C,M,Y,K)=(0%,50%,50%,33%)となる。
【0060】
次に、上記ステップS9の処理により、図5の(8)に示すように、当該対象画素のカラーインク量について濃度調整(減少)の処理がなされる。(C,M,Y)=(0%,50%,50%)の各インク量データが、上記求められた濃度減少量−10%に従って、10%減少し、(C’,M’,Y’)=(0%,45%,45%)となる。
【0061】
同様に、上記ステップS10の処理により、図5の(9)に示すように、当該対象画素のブラックインク量について濃度調整(減少)の処理がなされる。K=33%のインク量データが、上記求められた濃度減少量−34%に従って、34%減少し、K’=22%となる。
【0062】
このようにして、第一の具体例における濃度調整処理が実行される。第一の具体例では、濃度増加による色変換テーブル127の切り替えが行われ、当該切り替えで増加させ過ぎた分が後に調整される。
【0063】
次に、第二の具体例について説明する。図6は、第二の具体例におけるデータの推移を示した図である。当該第二の具体例は、図6の(1)に示されるように、ユーザーによって指定され、上記ステップS3で受信される濃度調整値が、カラーでは+30%、ブラックでも+30%である場合を示している。
【0064】
また、図6の(2)に示すように、一例として着目する画素の(R,G,B)の値は(100,100,100)であり、図6の(3)に示すように、LUT選択部122aで基準テーブルとして選択されているテーブルは、最大総インク打ち込み量が160%である色変換テーブル127(2)(ここでは、LUT2とする)である。
【0065】
当該第二の具体例では、指定された濃度調整が増加であるので、前述のステップS6に従って、色変換テーブル127の切り替えが実行され、図6の(4)及び(5)に示されるように、LUT1の最大総インク打ち込み量160%を濃度調整値30%で拡大させた値208%から、最大総インク打ち込み量200%を有する色変換テーブル127(3)(ここでは、LUT3とする)が切り替え後のテーブルとして選択される。なお、このように、上記拡大させた値を超える最大総インク打ち込み量を有する色変換テーブル127がない場合には、最大総インク打ち込み量が最大の色変換テーブル127を選択する。
【0066】
その後、上記ステップS7の処理により、図6の(6)に示すように、カラー及びブラックの濃度減少量が計算される。しかし、このような場合には、テーブルの切り替えによって過剰な増加はなされないので、カラーの濃度減少量及びブラックの濃度減少量は0%とされる。なお、この例の場合には、上記拡大させた値208%と、LUT3の最大総インク打ち込み量200%とで大きな差異がないので、概ねユーザーが所望した濃度調整を実現できる。
【0067】
その後、上記ステップS8の処理により、図6の(7)に示すように、上記選択されたLUT3による色変換処理が実行され、CMYKのインク量データが生成される。対象画素のインク量データは、(C,M,Y,K)=(50%,50%,50%,50%)となる。
【0068】
次に、上記ステップS9の処理により、当該対象画素のカラーインク量について濃度調整(減少)の処理がなされるが、上述のようにカラー濃度減少量は0%であるので、図6の(8)に示されるように、(C,M,Y)=(50%,50%,50%)の各インク量はそのままとなる。
【0069】
同様に、上記ステップS10の処理により、当該対象画素のブラックインク量について濃度調整(減少)の処理がなされるが、上述のようにブラック濃度減少量は0%であるので、図6の(9)に示されるように、K=50%のインク量はそのままとされる。
【0070】
このようにして、第二の具体例における濃度調整処理が実行される。第二の具体例では、濃度増加による色変換テーブル127の切り替えが行われるが、当該切り替えで増加させ過ぎの分がないので、後の調整処理はなされない。
【0071】
なお、当該第二の具体例において、濃度調整(増加)を画像データのRGBの値に対して行ったとすると、着目した画素の(R,G,B)=(100,100,100)は、(R’,G’,B’)=(50,50,50)に調整され、その後の色変換処理で得られるインク量データは(C,M,Y,K)=(20%,20%,20%,70%)となる。一方、濃度調整を行わない(R,G,B)=(100,100,100)を同じテーブルで色変換した場合には(C,M,Y,K)=(35%,35%,35%,45%)が得られる。両者の総インク打ち込み量は、濃度調整を行わない場合に150%であり、濃度調整を行った場合には130%である。従って、濃度増加を指示したにも関わらず、インク量は逆に減少する結果となってしまう。
【0072】
また、当該第二の具体例において、色変換テーブル127の切り替えを行わずに、色変換処理後のインク量を単に指示どおりに増加させる処理を行うと、色変換処理により、(C,M,Y,K)=(40%,40%,40%,40%)のインク量データが得られ、その後、各インク量が30%増加されるので、濃度調整後のインク量データは(C’,M’,Y’,K’)=(52%,52%,52%,52%)となる。この場合には、総インク打ち込み量が208%となり、高濃度用のLUT3の最大総インク打ち込み量200%を超えてしまう結果となる。これは、設計限界を超えるインクを打ち込むことになり、滲みや裏抜けの点から好ましくない。
【0073】
次に、第三の具体例について説明する。図7は、第三の具体例におけるデータの推移を示した図である。当該第三の具体例は、図7の(1)に示されるように、ユーザーによって指定され、上記ステップS3で受信される濃度調整値が、カラーでは−30%、ブラックでも−30%である場合を示している。
【0074】
また、図7の(2)に示すように、一例として着目する画素の(R,G,B)の値は(70,70,70)であり、図7の(3)に示すように、LUT選択部122aで基準テーブルとして選択されているテーブルは、最大総インク打ち込み量が160%である色変換テーブル127(2)(ここでは、LUT2とする)である。
【0075】
当該第三の具体例では、濃度の減少が指示されているので、上記色変換テーブル127の切り替えは行われず、基準テーブルLUT2による色変換処理が上記ステップS8に従って実行され、図7の(7)に示されるように、CMYKのインク量データが生成される。対象画素のインク量データは、(C,M,Y,K)=(30%,30%,30%,70%)となる。
【0076】
次に、上記ステップS9の処理により、当該対象画素のカラーインク量について濃度調整(減少)の処理がなされる。(C,M,Y)=(30%,30%,30%)の各インク量データが、上記指定された濃度調整値−30%に従って、30%減少し、(C’,M’,Y’)=(21%,21%,21%)となる。
【0077】
同様に、上記ステップS10の処理により、図7の(9)に示すように、当該対象画素のブラックインク量について濃度調整(減少)の処理がなされる。K=70%のインク量が、上記指定された濃度調整値−30%に従って、30%減少し、K’=49%となる。
【0078】
このようにして、第三の具体例における濃度調整処理が実行される。第三の具体例では、濃度減少であるので色変換テーブル127の切り替えが行われず、基準テーブルによる色変換処理後のインク量データに対して濃度調整がなされる。
【0079】
なお、当該第三の具体例において、濃度調整(減少)を画像データのRGBの値に対して行ったとすると、着目した画素の(R,G,B)=(70,70,70)は、(R’,G’,B’)=(100,100,100)に調整され、その後の色変換処理で得られるインク量データは(C,M,Y,K)=(35%,35%,35%,45%)となる。一方、濃度調整を行わない(R,G,B)=(70,70,70)を同じテーブルで色変換した場合には(C,M,Y,K)=(30%,30%,30%,70%)が得られる。両者の総インク打ち込み量は、濃度調整を行わない場合に160%であり、濃度調整を行った場合には150%である。従って、−30%の濃度減少を指示したにも関わらず、インク量はそれに相応するほど減少しない。
【0080】
また、第三の具体例において、濃度調整(減少)をドット分解部124によるドット分解処理の後に行う場合を考える。図8は、第三の具体例におけるドット分解処理の結果を例示した図である。図8の(1)は、濃度減少をドット分解処理の後に行った場合を示している。その上段には、濃度調整前の上記注目画素のドット発生量データが示され、当該データに対して−30%の濃度調整を行った結果がその下段に示されている。
【0081】
一方、図8の(2)には、上述した本実施の形態例における方法で濃度調整をした後に、上記ステップS11の結果として得られる上記注目画素のドット発生量データが示される。
【0082】
両者を比較すると、前者(図8の(1))では、カラー(CMY)の比較的低濃度に対して中ドットが発生し、ブラック(K)の高濃度でない濃度に対して大ドットが発生する結果となっているが、後者(図8の(2))では、そのような中ドットや大ドットの発生は見られない。前者の場合は、印刷結果における粒状性などの点で画質にとって好ましくないドット発生状況となってしまう。
【0083】
次に、上記実施形態例の変形例について説明する。当該変形例に係る装置構成は図1に示した上述の実施形態の場合と同様である。上記実施形態例との相違は、濃度調整が増加の場合にも、濃度調整後の総インク打ち込み量の最大値(総色材量の最大値)が、基準テーブルの最大総インク打ち込み量以内であれば、色変換テーブル127の高濃度方向への切り替えを実施しない、という点である。以下、上記実施形態例との相違部分について説明する。
【0084】
図9は、当該変形例における画像処理の手順を例示したフローチャートである。図9のステップS21−S24においては、図3に示すステップS1−S4と同様に処理が行われる。また、その後、ユーザーに指定された濃度調整が増加でない場合(ステップS25のNo)のその後の処理(ステップS31−S37)についても、図3の場合(ステップS5のNo、S8−S14)と同様である。
【0085】
ステップS25の判断、すなわち、ユーザーに指定された濃度調整が増加であるか否かの判断において、増加であると判断された場合には(ステップS25のYes)、まず、色変換部122が、基準の色変換テーブル127によってRGBの画像データをCMYKのインク量データに変換する(ステップS26)。
【0086】
その後、色変換部122は、各画素の各インク量を、ステップS23で受信した濃度調整値に従って増加させ、増加後の各画素の総インク量を求める。例えば、(C,M,Y,K)=(30%,30%,30%,30%)の画素は、上記濃度調整値がカラー・ブラック共に+20%であれば、1.2(120%)が乗じられて、(36%,36%,36%,36%)となり、その総インク量のデータとして、144%が求められる。
【0087】
次に、色変換部122は、全画素の中で最も上記総インク量が大きい値のデータを、上記濃度調整後の総インク打ち込み量の最大値とし(ステップS27)、その値を上記基準テーブルの最大総インク打ち込み量と比較する(ステップS28)。
【0088】
その結果、上記濃度調整後の総インク打ち込み量の最大値の方が大きく、インク打ち込み量が超過していれば(ステップS28のYes)、LUT選択部122aが使用する色変換テーブル127の切り替えを行う(ステップS29)。当該切り替えでは、上記濃度調整後の総インク打ち込み量の最大値以上の最大総インク打ち込み量を有する色変換テーブル127へ切り替えられる。そして、色変換部122は、上述したステップS7と同様に濃度減少量を計算する(ステップS30)。
【0089】
その後(S31−S37)は、図1の場合(S8−S14)と同様に処理がなされる。
【0090】
一方、上記ステップS28において、上記実際の最大総インク打ち込み量が基準テーブルの最大総インク打ち込み量を超過していなければ(ステップS28のNo)、濃度調整部123は、上記ステップS26での色変換結果に対して、すなわち、基準テーブルによる色変換結果に対して、カラー及びブラックの濃度増加処理を実行する(ステップS32、33)。具体的には、色変換結果のインク量データについて、画素毎に、CMYの各値をカラーの濃度調整値に応じて増加させ、Kの値をブラックの濃度調整値に応じて増加させる、処理を実行する。
【0091】
その後の処理(S34−S37)は、図1の場合(S11−S14)と同様に行われる。
【0092】
図10は、当該変形例におけるデータの推移を例示した図である。図10に示す例は、図5で示した具体例と同じ条件の場合について示している。従って当該具体例では、図10の(1)に示されるように、ユーザーによって指定され、上記ステップS23で受信される濃度調整値が、カラーでは+50%、ブラックでは+10%である場合を示している。
【0093】
また、図10の(2)に示すように、一例として着目する画素の(R,G,B)の値は(200,150,150)であり、図10の(3)に示すように、LUT選択部122aで基準テーブルとして選択されているテーブルは、最大総インク打ち込み量が120%である色変換テーブル127(1)(ここでは、LUT1とする)である。
【0094】
当該具体例では、濃度調整が増加であるので、図5に示した場合においては色変換テーブル127がLUT3に切り替えられたが、ここでは、上記濃度調整後の総インク打ち込み量の最大値がLUT1の最大総インク打ち込み量を超過しないものとし、図10の(7)に示されるように、基準テーブルLUT1がそのまま使用されて、ステップS26の処理により、色変換処理が実行される。その結果、上記着目した画素のインク量データとして、(C,M,Y,K)=(0%,30%,30%,20%)が得られる。
【0095】
次に、上記ステップS32の処理により、図10の(8)に示すように、当該対象画素のカラーインク量について濃度調整(増加)の処理がなされる。(C,M,Y)=(0%,30%,30%)の各インク量データが、上記濃度調整値+50%に従って、50%増加し、(C’,M’,Y’)=(0%,45%,45%)となる。
【0096】
同様に、上記ステップS33の処理により、図10の(9)に示すように、当該対象画素のブラックインク量について濃度調整(増加)の処理がなされる。K=20%のインク量データが、上記濃度調整値+10%に従って、10%増加し、K’=22%となる。
【0097】
このようにして、当該変形例では、濃度調整が増加の場合であっても、基準テーブルでまかなえる場合には色変換テーブル127を切り替えず、テーブル切り替えに伴う色具合の変化をなくすことができる。
【0098】
以上、実施の形態例及びその変形例について説明したが、濃度増加の際に行われる色変換テーブル127の切り替え時には、ユーザーに対して、所望の色合いから変化する可能性がある旨を報知するようにしてもよい。この場合には、例えば、ドライバー12がそのメッセージをホストコンピューター1の表示装置に表示する処理を実行する。
【0099】
また、濃度を減少させる調整の際にも、色変換テーブル127の切り替えを実行するようにしてもよい。
【0100】
以上説明したように本実施の形態例及び変形例における画像処理装置では、プリンター2で使用されるインクの打ち込み量のデータ(インク量データ)に対して、ユーザーが指定した濃度調整値に従った処理が実行されるので、ユーザーが入力する値に比例してインクの打ち込み量が変化する。従って、ユーザーは、濃度調整操作によってインク量(色材量)をコントロールすることができ、滲みや裏抜けの防止、インク量減少によるコスト削減、いわゆる埋まりを十分なものにする、といったユーザーニーズを容易に達成することができる。
【0101】
また、濃度調整は、カラーとブラックとで別々に実行され、互いに異なる濃度調整値でインク量の増減がなされ得る。従って、黒文字・バーコード等の品質を低下させずに総インク打ち込み量を減少させる、といったことが可能になる。
【0102】
また、最大総インク打ち込み量が定まった色変換テーブルを用いてその範囲内で濃度の増加がなされるので、インク打ち込み量が超過してしまう問題も抑えることができる。
【0103】
また、上記変形例のように、濃度を増加させる調整であっても、その印刷条件で基準とされる色変換テーブルで総インク打ち込み量がまかなえる場合には、そのテーブルをそのまま使用するので、色合いが変化してしまうことを防止できる。
【0104】
なお、本実施の形態例では、ラインヘッドのインクジェットプリンター用の画像処理装置であったが、他のタイプのプリンターに対しても本発明の装置を適用することができる。
【0105】
また、本実施の形態例におけるドライバー12が行う処理は、プリンター2側のコントローラー13を用いて実行することもでき、または、ホストコンピューター1とプリンター2に分割して、実行するようにしてもよい。
【0106】
本発明の保護範囲は、上記の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【符号の説明】
【0107】
1 ホストコンピューター、 2 プリンター、 11 アプリケーション、 12 ドライバー、 13 コントローラー、 14 印刷実行部、 121 ラスタライズ部、 122 色変換部、 122a LUT選択部、 123 濃度調整部、 124 ドット分解部、 125 ハーフトーン処理部、 126 印刷データ変換部、 127 色変換テーブル、 128 ドット分解テーブル
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用の画像処理装置等に関し、特に、カラー及びブラックを別個に調整できると共に濃度に合わせて色材量をコントロール可能な濃度調整を実行し、濃度調整に係るユーザーニーズに適確に応えることのできる画像処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な用途でインクジェットプリンターなどのプリンターが使用されている。当該プリンターでは、色材を用紙などの印刷媒体に打ち込んでドットを形成することにより印刷が実行される。このような印刷処理では、印刷対象の画像データを上記ドットの有無を表すデータに変換するための画像処理が必要であり、当該画像処理がホスト装置におけるドライバーやプリンターのコントローラーによって行われている。
【0003】
また、その画像処理では、ユーザー要求等に基づく濃度の調整処理が行われることがあり、従来の濃度調整方法としては、下記特許文献1に記載のように、画像データの有する各色の濃度を、設定された調整値に応じた濃度に変換するものがある。また、下記特許文献2及び3に記載されるように、下色除去による濃度調整もよく用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−141941号公報
【特許文献2】特開2006−279922号公報
【特許文献3】特開2008−205964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のように、画像データに対して濃度調整処理を行う場合、処理されるデータの色表現がプリンターで使用される色材による色表現と異なれば、濃度調整処理による濃度の増減が、そのまま、印刷媒体に打ち込まれる色材量の増減にはならず、場合によっては増減が逆転してしまうことも起こり得る。例えば、プリンターで使用される色材がCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)であり、画像データがRGB(レッド、グリーン、ブルー)で表現されている場合には、RGBからCMYKへの変換は一律に決まるものではないので、その変換内容の設計により上記濃度増減による色材量の変化も様々な結果となり得る。具体的には、一例として、RGB(0,0,0)で表現されるデータ(各色の濃度を256階調で表現したデータで、黒色(ブラック)に対応する)に対して濃度を10%下げる調整処理を行うと、そのデータは(20,20,20)となり、その後、CMYKで表現されるデータ(例えば、色材の量に比例する単位面積あたりの色材による被覆率で表現したデータ)に変換すると、その値は(10%,10%,10%,75%)となる。しかし、元のRGB(0,0,0)をそのまま変換した場合にはCMYK(0%,0%,0%,100%)となり、上記濃度調整の結果は、濃度を10%下げたにも関わらず、色材の量が増加(100%(K)→105%(CNYK合計))してしまう結果となっている。
【0006】
濃度調整において濃度を減少させる目的には、用紙(印刷媒体)における裏抜けや滲みの防止、印刷に使用されるインク(色材)コストの削減といったものがあり、このような場合には、見た目の濃度だけでなく物理的に打ち込まれる色材量を減少させる必要があるが、上述の状況では、具体的な色材の削減量も把握できず調整が困難である。
【0007】
また、濃度調整において濃度を増加させる目的には、印刷結果におけるいわゆる「埋まりが足りない」という状況を解消しようとするものがあるが、この場合にも、濃度増加量に相応した色材量の増加が得られる必要があり、上述の状況ではかかる目的を実現できない。
【0008】
さらに、上述した従来の下色除去を用いた手法では、カラーインクを除いてブラックインクに置き換える手法であるため、カラーとブラックを別々に調整したい場合に困難であるという課題がある。
【0009】
例えば、黒文字・バーコード等の品質を低下させず、かつ、ブラックインクを増加させずに総インク打ち込み量を指定量減少する、という目的を達成する場合には、上記下色除去を用いた手法では困難である。
【0010】
そこで、本発明の目的は、印刷用の画像処理装置であって、カラー及びブラックを別個に調整できると共に濃度に合わせて色材量をコントロール可能な濃度調整を実行し、濃度調整に係るユーザーニーズに適確に応えることのできる画像処理装置、等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の一つの側面は、画像記録装置に接続可能な画像処理装置が、第一色空間で表現された画像データを、画像記録装置で使用される色材の第二色空間で表現された色材量データに変換する色変換部と、前記色材量データを指定された調整値に基づいて増減させる濃度調整部と、増減後の前記色材量データを、前記画像記録装置で形成されるドットのサイズ別のドット発生量で表現されたドット発生量データに変換するドット分解部と、前記ドット発生量データを、前記ドットの形成の有無を表現したデータに変換するハーフトーン処理部と、を有する、ことである。
【0012】
更に、上記発明において、好ましい態様は、前記調整値は、有彩色と黒色について別個に指定され、前記濃度調整部は、有彩色について指定された前記調整値に基づいて、有彩色の前記色材量データを増減させ、黒色について指定された前記調整値に基づいて、黒色の前記色材量データを増減させる、ことを特徴とする。
【0013】
更にまた、上記発明において、好ましい態様は、前記画像データと前記色材量データとを、前記色材の総色材量が制限値以内になるように対応付けたテーブルであって、前記制限値が異なる複数の色変換テーブルを備え、前記色変換部は、前記指定された調整値に基づいて前記色変換テーブルを選択し、当該選択した色変換テーブルを用いて前記変換を行う、ことを特徴とする。
【0014】
更に、上記発明において、一つの態様は、前記色変換部は、前記指定された調整値が濃度増加を示す場合には、基準の前記色変換テーブルよりも、前記制限値が大きい前記色変換テーブルを選択する、ことを特徴とする。
【0015】
更に、上記発明において、好ましい態様は、前記濃度調整部は、前記制限値が大きい色変換テーブルを選択したことにより、前記色変換部による変換処理で生成された前記色材量データが、前記指定された調整値が示す濃度増加を超えて増加された値となる場合には、その超過分を減少させる、ことを特徴とする。
【0016】
また、上記発明において、一つの態様は、前記色変換部は、前記基準の前記色変換テーブルを用いた場合に、前記濃度調整部による処理後に得られる前記色材量データの総色材量の最大値が、当該基準の色変換テーブルの前記制限値を超えない場合には、当該基準の色変換テーブルを選択する、ことを特徴とする。
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明の別の側面は、画像処理方法が、第一色空間で表現された画像データを、印刷に用いられる色材の第二色空間で表現された色材量データに変換する色変換工程と、前記色材量データを指定された調整値に基づいて増減させる濃度調整工程と、増減後の前記色材量データを、印刷媒体に形成されるドットのサイズ別のドットの発生量で表現したドット発生量データに変換するドット分解工程と、前記ドット発生量データを、前記ドットの形成の有無を表現したデータに変換するハーフトーン処理工程と、を有する、ことである。
【0018】
上記の目的を達成するために、本発明の更に別の側面は、画像処理プログラムが、印刷用画像データを、印刷に用いられる色材の量で表現した色材量データに変換する色変換工程と、前記色材量データを指定された調整値に基づいて増減させる濃度調整工程と、前記増減後の色材量データを、ドットサイズ別のドット発生量で表現したドット発生量データに変換するドット分解工程と、前記ドット発生量データを、ドットの有無を表現したデータに変換するハーフトーン処理工程と、を画像処理装置に実行させる、ことである。
【0019】
本発明の更なる目的及び、特徴は、以下に説明する発明の実施の形態から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用した画像処理装置の実施の形態例に係る構成図である。
【図2】ドット分解テーブル128を例示した図である。
【図3】ドライバー12によって行われる処理の手順を例示したフローチャートである。
【図4】濃度調整入力画面を例示した図である。
【図5】第一の具体例におけるデータの推移を示した図である。
【図6】第二の具体例におけるデータの推移を示した図である。
【図7】第三の具体例におけるデータの推移を示した図である。
【図8】第三の具体例におけるドット分解処理の結果を例示した図である。
【図9】変形例における画像処理の手順を例示したフローチャートである。
【図10】変形例におけるデータの推移を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態例を説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。なお、図において、同一又は類似のものには同一の参照番号又は参照記号を付して説明する。
【0022】
図1は、本発明を適用した画像処理装置の実施の形態例に係る構成図である。図1に示すホストコンピューター1が本発明を適用した画像処理装置であり、濃度調整部123が、ユーザーによって指定された濃度調整の処理を、色変換部122による処理後のインク量データ(色材量データ)に対し、ブラック(黒色)とカラー(有彩色)とで別々に実行する、ことを特徴とする。当該装置により、カラー及びブラックを別個に調整できると共に濃度に合わせて色材量をコントロール可能な濃度調整が実行され、濃度調整に係るユーザーニーズに適確に応えることが可能となる。
【0023】
図1では、本実施の形態例における装置構成を機能的に示している。ホストコンピューター1は、プリンター2(画像記録装置)に対して印刷指示を行うプリンター2のホスト装置であり、例えば、パーソナルコンピューターで構成される。従って、ホストコンピューター1は、図示していないが、CPU、RAM、ROM、HDD、ディスプレイ、操作装置等で構成されている。
【0024】
アプリケーション11は、印刷要求元であり、例えば、文章作成アプリケーション、図形作成アプリケーションなど、様々な機能を有するアプリケーションが存在し得る。当該アプリケーション11は、処理内容を指示するプログラム、当該プログラムに従って処理を実行する上記CPU、及び上記RAM等で構成され、印刷要求時には印刷内容を表す画像データを出力する。
【0025】
ドライバー12は、プリンター2用のドライバーであり、上記アプリケーション11から出力された画像データに画像処理を施してプリンター2用の画像データ(印刷データ)とし、当該印刷データをプリンター2に送信して、アプリケーション11から要求を受けた印刷について印刷指示を行う部分である。
【0026】
当該ドライバー12は、処理内容を指示するドライバープログラム、当該プログラムに従って処理を実行する上記CPU、処理に使用される各種データ及び上記RAM等で構成され、その具体的な機能構成及び処理内容は後述する。また、このドライバープログラムは、CD等の記憶媒体からホストコンピューター1に複写される、または、インターネット等のネットワークを介してホストコンピューター1にダウンロードされる、ことにより、ホストコンピューター1の上記HDDに格納される。
【0027】
プリンター2は、上記ホストコンピューター1の印刷指示に従って印刷処理を実行する、例えば、ラインヘッドのインクジェットプリンターである。プリンター2には、図1に示されるように、コントローラー13と印刷実行部14が備えられる。
【0028】
コントローラー13は、上記印刷指示による印刷データを受信して、当該印刷データに従った印刷処理を印刷実行部14に実行させる部分である。具体的には、処理内容を記述したプログラム、当該プログラムに従って処理を実行するCPU、RAM、プログラムを格納するROM、ASIC等で構成される。
【0029】
印刷実行部14は、上記コントローラー13の指示に従って実際に用紙などの印刷媒体に印刷処理を実行する部分である。ここには、印刷媒体に対して色材であるインクを吐出する複数のノズルを備えたラインヘッド、印刷媒体を所定の速度で搬送する搬送装置などが備えられる。ここでは、一例として、CMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)4色のインクを色材として用い、各色に対応するそれぞれのノズルからインクを吐出するものとする。そして、吐出されたインクが印刷媒体に打ち込まれてドットが形成されることにより印刷が実行される。また、ラインヘッドは、一例として、複数のヘッドユニットに分割されており、それらが互い違いに、いわゆる千鳥状に配置される構成である。
【0030】
次に、図1の下部に示すドライバー12の機能構成について説明する。ラスタライズ部121は、上記アプリケーション11から出力された画像データに対してラスタライズの処理を施し、第一色空間、例えば、RGB(レッド、グリーン、ブルー)の色空間で、表現されたビットマップデータを生成する部分である。
【0031】
色変換部122は、色変換テーブル127に従って、上記ビットマップデータを色材の色空間(第二色空間)であるCMYKの色空間で表現されたデータ、すなわち、インク量データに変換する部分である。
【0032】
色変換テーブル127は、予め用意されたLUT(ルックアップテーブル)であり、RGBの各濃度階調値(例えば、0から255の256階調で表現された値)に対して、対応するCMYKの各インク量データが収められたテーブルである。ここで、インク量データは、画素あたりの色材による被覆率を表現したデータであり、インク量に比例するものとする。なお、インク量データは、インクの重量あるいは体積等でも表現することもできる。当該色変換テーブル127は、印刷媒体の種類(用紙の種類)、解像度などの印刷条件に対してそれぞれ設計され、上記HDD等に格納されている。ここでは、一例として、3つの色変換テーブル127(1)、127(2)、及び127(3)が用意され、それぞれ順番に、低濃度用、中濃度用、及び高濃度用に位置付けられる。具体的には、全色材(CMYK)のインク量データを合計した量を総インク打ち込み量とすると、その制限値(最大値)が、低濃度用、中濃度用、及び高濃度用に、それぞれ順番に、120%、160%、及び200%になるように設計されている。従って、色変換前の画像データが如何なる値であっても、上記各色変換テーブル127を用いた処理の結果のインク量データの値の総計(色材の総色材量)は、上記各総インク打ち込み量の制限値(最大総インク打ち込み量)を超えることはない。
【0033】
そして、色変換部122には、上記複数(3つ)備えられた色変換テーブル127を選択するLUT選択部122aが備えられる。当該LUT選択部122aは、色変換処理時に上記印刷条件及びユーザーによる濃度調整要求に従って適切な色変換テーブル127を選択し、選択された色変換テーブル127によって色変換処理がなされる。
【0034】
また、上記各色変換テーブル127は、事前に従前の方法で生成され、上述したドライバープログラムと同様にして格納される。
【0035】
次に、濃度調整部123は、上記色変換処理後のインク量データに対して濃度調整処理を実行する部分である。当該濃度調整部123は、ユーザーによって指定される濃度調整値に従い、カラー(CMY)のインク量データとブラック(K)のインク量データを別個に変更する処理を実行する。
【0036】
次に、ドット分解部124は、上記濃度調整後のインク量データを、ドット分解テーブル128に従って、ドットの発生量で表現したデータに変換する部分である。ここでは、一例として、各ノズルからのインクの吐出により、印刷媒体に形成することのできるドットが小ドット(S)、中ドット(M)、大ドット(L)の3サイズあり、変換前のインク量データ(0%−100%)が、これら3つのドットの発生量のデータに変換される。ここで、各ドットの発生量は、画素を網状に分割し、その分割した領域にドットを配置した数値で表され、例えば、0から4096の値で示すことができるものとする。
【0037】
ドット分解テーブル128は、CMYKの各インク量データ(0%−100%)に対して、上記3つのドットの発生量を対応付けたテーブルであり、上記HDD等に格納されている。格納方法は、上述したドライバープログラムと同様である。
【0038】
図2は、ドット分解テーブル128をグラフ形式で例示した図である。図2に示すグラフにおいて、横軸はドット分解前の上記インク量(データ)を示し、縦軸がドット分解後のドット発生量を示している。また、グラフS、M、Lは、それぞれ、小ドット、中ドット、大ドットの発生量を示している。図から分かるとおり、インク量が少ない場合には、小ドットだけが発生して濃度の薄い印刷となり、逆に、インク量が多い場合には、大ドットを含め3つのドットが発生して濃度の高い印刷が実現されることになる。
【0039】
次に、ハーフトーン処理部125は、いわゆるハーフトーン処理を実行し、上記ドット発生量に変換されたデータを、各ドットの形成の有無を表すデータに変換する部分である。処理手法は、従前のディザ法や誤差拡散法などを用いることができる。
【0040】
次に、印刷データ変換部126は、上記ハーフトーン処理後のデータをプリンター2用のコマンドで表現された上記印刷データに変換する部分である。
【0041】
以上説明したような構成を有する本実施の形態例にけるドライバー12では、以下のように画像処理が実行される。図3は、ドライバー12によって行われる処理の手順を例示したフローチャートである。以下、図3に基づいて画像処理の具体的な内容について説明する。
【0042】
まず、上述したようにアプリケーション11を利用するユーザーが、印刷要求の操作をする際に、濃度調整の要求操作を実行すると、その濃度調整要求がドライバー12によって受信される(ステップS1)。当該要求を受けたドライバー12は、ホストコンピューター1の表示装置に濃度調整入力画面を表示する(ステップS2)。
【0043】
図4は、その濃度調整入力画面を例示した図である。当該入力画面で、ユーザーは、カラーとブラックについて別々に濃度調整の指示を行うことができ、カラーの濃度調整は、図中のaで示すスライドバーを操作して、また、ブラックの濃度調整は、図中のbで示すスライドバーを操作して、それぞれ、指示される。例えば、両方とも30%濃くする(+30%、+30%)、あるいは、カラーは30%薄くしブラックは10%薄くする(OLE_LINK1OLE_LINK2−30%、OLE_LINK1OLE_LINK2−10%)といった指示がなされる。
【0044】
この表示された入力画面に対して、上述の如くユーザーが入力操作を実行すると、入力された濃度調整値(上記スライドバーで入力された2つの濃度調整割合(%)の値)と、アプリケーション11からの印刷対象の画像データがドライバー12に受信される(ステップS3)。
【0045】
受信される画像データは、この段階では、通常、テキスト、グラフィックス、イメージなどのオブジェクトの単位で表現されたデータ形式になっているので、ラスタライズ部121がラスタライズ処理を実行し、その画像データをビットマップデータに変換する(ステップS4)。具体的には、ラスタライズ部121は、各画素がRGB各色の濃度階調値(0−255)を有するデータに変換する。ラスタライズには従前の手法を用いることができる。
【0046】
次に、生成されたビットマップデータが色変換部122に渡され、上述した色変換テーブル127を用いた色変換処理が実行される。具体的には、まず、LUT選択部122aが、上記画像データに含まれる上記印刷条件に相応した色変換テーブル127を、又は、デフォルトとして決まっている色変換テーブル127を基準のテーブルとして選択する。
【0047】
次に、LUT選択部122aは、前記受信した濃度調整値が濃度を増加させる調整を意味するものであるか(上記濃度調整割合がプラスであるか)否かを判断し(ステップS5)、そうでない場合、すなわち、濃度調整を行わない場合、又は、濃度調整値が濃度を減少させる調整を意味するものである(上記濃度調整割合がマイナスである)場合には(ステップS5のNo)、上記選択した基準の色変換テーブル127で処理を行うべく、処理工程がステップS8へ移行する。
【0048】
一方、濃度調整値が濃度を増加させる調整を意味するものである場合には(ステップS5のYes)、LUT選択部122aは、使用する色変換テーブル127を切り替える(ステップS6)。具体的には、上記選択された色変換テーブルを、上記基準のテーブルよりも高濃度用の色変換テーブル127に切り替える。より具体的には、上記基準のテーブルの最大総インク打ち込み量(X)に上記濃度調整値の大きい方の値(+Y%)を乗じた値(X×(1+Y%/100%))以上の最大総インク打ち込み量を有する色変換テーブル127に切り替える。
【0049】
その後、色変換部122は、上記テーブルの切り替えによって必要になる濃度減少の量を求める(ステップS7)。具体的には、下記(1)及び(2)式によって計算する。
カラー濃度減少量(%)=(X×(1+Y1/100)/Z−1)×100 (1)
ブラック濃度減少量(%)=(X×(1+Y2/100)/Z−1)×100 (2)
なお、Xは、基準テーブルの最大総インク打ち込み量(%)であり、Y1は、カラーの濃度調整値(%)であり、Y2は、ブラックの濃度調整値(%)であり、Zは、上記切り替え後の色変換テーブル127の最大総インク打ち込み量(%)である。
【0050】
次に、色変換部122は、その時点で選択されている色変換テーブル127を用いて、すなわち、濃度調整が増加でない場合には上記基準のテーブルを用いて、濃度調整が増加である場合には上記切り替え後のテーブルを用いて、色変換処理を実行する(ステップS8)。具体的には、色変換部122は、色変換テーブル127を参照して、上記生成されたビットマップデータの各画素の(R,G,B)で表現されるデータを、色変換テーブル127において当該データの値に対応付けられる(C,M,Y,K)の値に順次変換し、各画素がCMYK各色のインク量で表現されるインク量データを生成する。
【0051】
このようにして、色変換処理が実行されると、生成されたインク量データは濃度調整部123に渡され、ここで、濃度調整処理が実行される(ステップ9、10)。具体的には、カラー(CMY)の各インク量及びブラック(K)のインク量について、それぞれ、濃度を減少させる(値を減少させる)処理を実行する。より具体的には、上記インク量データについて、画素毎に、CMYの各値をカラーの濃度減少割合に応じて減少させ、Kの値をブラックの濃度減少割合に応じて減少させる、処理を実行する。ここで、カラーの濃度減少割合及びブラックの濃度減少割合は、上記ユーザーに指定された濃度調整が増加でない場合には、上記ユーザーによって入力された濃度調整値であり、上記ユーザーに指定された濃度調整が増加である場合には、上記ステップS7で求めたカラー濃度減少量及びブラック濃度減少量である。
【0052】
次に、濃度調整後のインク量データである(C’,M’,Y’,K’)がドット分解部124に渡され、当該調整後のデータに対して、各ドットへの分解処理が実行される(ステップS11)。当該処理は、ドット分解部124が上述したドット分解テーブル128を用いて行い、具体的には、ドット分解テーブル128を参照して、画素毎に(C’,M’,Y’,K’)の各インク量データを、上記ドット毎の発生量データ(S,M,L)に変換していく。
【0053】
その後、当該変換されたデータは、ハーフトーン処理部125に渡され、ここでハーフトーン処理が実行される(ステップS12)。そして、各画素の各色のドット発生量データ(S,M,L)は、小、中、大ドットの有無(オン・オフ)を表すデータに変換される。
【0054】
ハーフトーン処理されたデータは、印刷データ変換部126によってプリンター2用の印刷データ(コマンド)に変換され(ステップS13)、プリンター2へ送信される(ステップS14)。その後、送信された印刷データは、コントローラー13で受信されて、当該印刷データに従った印刷処理が実行されることになる。すなわち、印刷データに従って各ノズルからインクが吐出されて、印刷媒体上に小、中、大ドットが形成される。そして、上記ユーザーによって指定された濃度調整が反映されたインク量で印刷が実現される。
【0055】
次に、上記説明した画像処理の濃度調整に係る部分の具体例を説明する。図5は、第一の具体例におけるデータの推移を示した図である。当該第一の具体例は、図5の(1)に示されるように、ユーザーによって指定され、上記ステップS3で受信される濃度調整値が、カラーでは+50%、ブラックでは+10%である場合を示している。
【0056】
また、図5の(2)に示すように、一例として着目する画素の画像データである(R,G,B)の値は(200,150,150)であり、図5の(3)に示すように、LUT選択部122aで基準テーブルとして選択されているテーブルは、最大総インク打ち込み量が120%である色変換テーブル127(1)(ここでは、LUT1とする)である。
【0057】
当該第一の具体例では、指定された濃度調整が増加であるので、前述のステップS6に従って、色変換テーブル127の切り替えが実行され、図5の(4)及び(5)に示されるように、LUT1の最大総インク打ち込み量120%を大きい方の濃度調整値50%で拡大させた値180%を超える最大総インク打ち込み量200%を有する色変換テーブル127(3)(ここでは、LUT3とする)が切り替え後のテーブルとして選択される。
【0058】
その後、上記ステップS7の処理により、図5の(6)に示すように、カラー及びブラックの濃度減少量が計算される。その結果、カラーの濃度減少量は−10%、ブラックの濃度減少量は−34%となる。
【0059】
その後、上記ステップS8の処理により、図5の(7)に示すように、上記選択されたLUT3による色変換処理が実行され、CMYKのインク量データが生成される。対象画素のインク量データは、(C,M,Y,K)=(0%,50%,50%,33%)となる。
【0060】
次に、上記ステップS9の処理により、図5の(8)に示すように、当該対象画素のカラーインク量について濃度調整(減少)の処理がなされる。(C,M,Y)=(0%,50%,50%)の各インク量データが、上記求められた濃度減少量−10%に従って、10%減少し、(C’,M’,Y’)=(0%,45%,45%)となる。
【0061】
同様に、上記ステップS10の処理により、図5の(9)に示すように、当該対象画素のブラックインク量について濃度調整(減少)の処理がなされる。K=33%のインク量データが、上記求められた濃度減少量−34%に従って、34%減少し、K’=22%となる。
【0062】
このようにして、第一の具体例における濃度調整処理が実行される。第一の具体例では、濃度増加による色変換テーブル127の切り替えが行われ、当該切り替えで増加させ過ぎた分が後に調整される。
【0063】
次に、第二の具体例について説明する。図6は、第二の具体例におけるデータの推移を示した図である。当該第二の具体例は、図6の(1)に示されるように、ユーザーによって指定され、上記ステップS3で受信される濃度調整値が、カラーでは+30%、ブラックでも+30%である場合を示している。
【0064】
また、図6の(2)に示すように、一例として着目する画素の(R,G,B)の値は(100,100,100)であり、図6の(3)に示すように、LUT選択部122aで基準テーブルとして選択されているテーブルは、最大総インク打ち込み量が160%である色変換テーブル127(2)(ここでは、LUT2とする)である。
【0065】
当該第二の具体例では、指定された濃度調整が増加であるので、前述のステップS6に従って、色変換テーブル127の切り替えが実行され、図6の(4)及び(5)に示されるように、LUT1の最大総インク打ち込み量160%を濃度調整値30%で拡大させた値208%から、最大総インク打ち込み量200%を有する色変換テーブル127(3)(ここでは、LUT3とする)が切り替え後のテーブルとして選択される。なお、このように、上記拡大させた値を超える最大総インク打ち込み量を有する色変換テーブル127がない場合には、最大総インク打ち込み量が最大の色変換テーブル127を選択する。
【0066】
その後、上記ステップS7の処理により、図6の(6)に示すように、カラー及びブラックの濃度減少量が計算される。しかし、このような場合には、テーブルの切り替えによって過剰な増加はなされないので、カラーの濃度減少量及びブラックの濃度減少量は0%とされる。なお、この例の場合には、上記拡大させた値208%と、LUT3の最大総インク打ち込み量200%とで大きな差異がないので、概ねユーザーが所望した濃度調整を実現できる。
【0067】
その後、上記ステップS8の処理により、図6の(7)に示すように、上記選択されたLUT3による色変換処理が実行され、CMYKのインク量データが生成される。対象画素のインク量データは、(C,M,Y,K)=(50%,50%,50%,50%)となる。
【0068】
次に、上記ステップS9の処理により、当該対象画素のカラーインク量について濃度調整(減少)の処理がなされるが、上述のようにカラー濃度減少量は0%であるので、図6の(8)に示されるように、(C,M,Y)=(50%,50%,50%)の各インク量はそのままとなる。
【0069】
同様に、上記ステップS10の処理により、当該対象画素のブラックインク量について濃度調整(減少)の処理がなされるが、上述のようにブラック濃度減少量は0%であるので、図6の(9)に示されるように、K=50%のインク量はそのままとされる。
【0070】
このようにして、第二の具体例における濃度調整処理が実行される。第二の具体例では、濃度増加による色変換テーブル127の切り替えが行われるが、当該切り替えで増加させ過ぎの分がないので、後の調整処理はなされない。
【0071】
なお、当該第二の具体例において、濃度調整(増加)を画像データのRGBの値に対して行ったとすると、着目した画素の(R,G,B)=(100,100,100)は、(R’,G’,B’)=(50,50,50)に調整され、その後の色変換処理で得られるインク量データは(C,M,Y,K)=(20%,20%,20%,70%)となる。一方、濃度調整を行わない(R,G,B)=(100,100,100)を同じテーブルで色変換した場合には(C,M,Y,K)=(35%,35%,35%,45%)が得られる。両者の総インク打ち込み量は、濃度調整を行わない場合に150%であり、濃度調整を行った場合には130%である。従って、濃度増加を指示したにも関わらず、インク量は逆に減少する結果となってしまう。
【0072】
また、当該第二の具体例において、色変換テーブル127の切り替えを行わずに、色変換処理後のインク量を単に指示どおりに増加させる処理を行うと、色変換処理により、(C,M,Y,K)=(40%,40%,40%,40%)のインク量データが得られ、その後、各インク量が30%増加されるので、濃度調整後のインク量データは(C’,M’,Y’,K’)=(52%,52%,52%,52%)となる。この場合には、総インク打ち込み量が208%となり、高濃度用のLUT3の最大総インク打ち込み量200%を超えてしまう結果となる。これは、設計限界を超えるインクを打ち込むことになり、滲みや裏抜けの点から好ましくない。
【0073】
次に、第三の具体例について説明する。図7は、第三の具体例におけるデータの推移を示した図である。当該第三の具体例は、図7の(1)に示されるように、ユーザーによって指定され、上記ステップS3で受信される濃度調整値が、カラーでは−30%、ブラックでも−30%である場合を示している。
【0074】
また、図7の(2)に示すように、一例として着目する画素の(R,G,B)の値は(70,70,70)であり、図7の(3)に示すように、LUT選択部122aで基準テーブルとして選択されているテーブルは、最大総インク打ち込み量が160%である色変換テーブル127(2)(ここでは、LUT2とする)である。
【0075】
当該第三の具体例では、濃度の減少が指示されているので、上記色変換テーブル127の切り替えは行われず、基準テーブルLUT2による色変換処理が上記ステップS8に従って実行され、図7の(7)に示されるように、CMYKのインク量データが生成される。対象画素のインク量データは、(C,M,Y,K)=(30%,30%,30%,70%)となる。
【0076】
次に、上記ステップS9の処理により、当該対象画素のカラーインク量について濃度調整(減少)の処理がなされる。(C,M,Y)=(30%,30%,30%)の各インク量データが、上記指定された濃度調整値−30%に従って、30%減少し、(C’,M’,Y’)=(21%,21%,21%)となる。
【0077】
同様に、上記ステップS10の処理により、図7の(9)に示すように、当該対象画素のブラックインク量について濃度調整(減少)の処理がなされる。K=70%のインク量が、上記指定された濃度調整値−30%に従って、30%減少し、K’=49%となる。
【0078】
このようにして、第三の具体例における濃度調整処理が実行される。第三の具体例では、濃度減少であるので色変換テーブル127の切り替えが行われず、基準テーブルによる色変換処理後のインク量データに対して濃度調整がなされる。
【0079】
なお、当該第三の具体例において、濃度調整(減少)を画像データのRGBの値に対して行ったとすると、着目した画素の(R,G,B)=(70,70,70)は、(R’,G’,B’)=(100,100,100)に調整され、その後の色変換処理で得られるインク量データは(C,M,Y,K)=(35%,35%,35%,45%)となる。一方、濃度調整を行わない(R,G,B)=(70,70,70)を同じテーブルで色変換した場合には(C,M,Y,K)=(30%,30%,30%,70%)が得られる。両者の総インク打ち込み量は、濃度調整を行わない場合に160%であり、濃度調整を行った場合には150%である。従って、−30%の濃度減少を指示したにも関わらず、インク量はそれに相応するほど減少しない。
【0080】
また、第三の具体例において、濃度調整(減少)をドット分解部124によるドット分解処理の後に行う場合を考える。図8は、第三の具体例におけるドット分解処理の結果を例示した図である。図8の(1)は、濃度減少をドット分解処理の後に行った場合を示している。その上段には、濃度調整前の上記注目画素のドット発生量データが示され、当該データに対して−30%の濃度調整を行った結果がその下段に示されている。
【0081】
一方、図8の(2)には、上述した本実施の形態例における方法で濃度調整をした後に、上記ステップS11の結果として得られる上記注目画素のドット発生量データが示される。
【0082】
両者を比較すると、前者(図8の(1))では、カラー(CMY)の比較的低濃度に対して中ドットが発生し、ブラック(K)の高濃度でない濃度に対して大ドットが発生する結果となっているが、後者(図8の(2))では、そのような中ドットや大ドットの発生は見られない。前者の場合は、印刷結果における粒状性などの点で画質にとって好ましくないドット発生状況となってしまう。
【0083】
次に、上記実施形態例の変形例について説明する。当該変形例に係る装置構成は図1に示した上述の実施形態の場合と同様である。上記実施形態例との相違は、濃度調整が増加の場合にも、濃度調整後の総インク打ち込み量の最大値(総色材量の最大値)が、基準テーブルの最大総インク打ち込み量以内であれば、色変換テーブル127の高濃度方向への切り替えを実施しない、という点である。以下、上記実施形態例との相違部分について説明する。
【0084】
図9は、当該変形例における画像処理の手順を例示したフローチャートである。図9のステップS21−S24においては、図3に示すステップS1−S4と同様に処理が行われる。また、その後、ユーザーに指定された濃度調整が増加でない場合(ステップS25のNo)のその後の処理(ステップS31−S37)についても、図3の場合(ステップS5のNo、S8−S14)と同様である。
【0085】
ステップS25の判断、すなわち、ユーザーに指定された濃度調整が増加であるか否かの判断において、増加であると判断された場合には(ステップS25のYes)、まず、色変換部122が、基準の色変換テーブル127によってRGBの画像データをCMYKのインク量データに変換する(ステップS26)。
【0086】
その後、色変換部122は、各画素の各インク量を、ステップS23で受信した濃度調整値に従って増加させ、増加後の各画素の総インク量を求める。例えば、(C,M,Y,K)=(30%,30%,30%,30%)の画素は、上記濃度調整値がカラー・ブラック共に+20%であれば、1.2(120%)が乗じられて、(36%,36%,36%,36%)となり、その総インク量のデータとして、144%が求められる。
【0087】
次に、色変換部122は、全画素の中で最も上記総インク量が大きい値のデータを、上記濃度調整後の総インク打ち込み量の最大値とし(ステップS27)、その値を上記基準テーブルの最大総インク打ち込み量と比較する(ステップS28)。
【0088】
その結果、上記濃度調整後の総インク打ち込み量の最大値の方が大きく、インク打ち込み量が超過していれば(ステップS28のYes)、LUT選択部122aが使用する色変換テーブル127の切り替えを行う(ステップS29)。当該切り替えでは、上記濃度調整後の総インク打ち込み量の最大値以上の最大総インク打ち込み量を有する色変換テーブル127へ切り替えられる。そして、色変換部122は、上述したステップS7と同様に濃度減少量を計算する(ステップS30)。
【0089】
その後(S31−S37)は、図1の場合(S8−S14)と同様に処理がなされる。
【0090】
一方、上記ステップS28において、上記実際の最大総インク打ち込み量が基準テーブルの最大総インク打ち込み量を超過していなければ(ステップS28のNo)、濃度調整部123は、上記ステップS26での色変換結果に対して、すなわち、基準テーブルによる色変換結果に対して、カラー及びブラックの濃度増加処理を実行する(ステップS32、33)。具体的には、色変換結果のインク量データについて、画素毎に、CMYの各値をカラーの濃度調整値に応じて増加させ、Kの値をブラックの濃度調整値に応じて増加させる、処理を実行する。
【0091】
その後の処理(S34−S37)は、図1の場合(S11−S14)と同様に行われる。
【0092】
図10は、当該変形例におけるデータの推移を例示した図である。図10に示す例は、図5で示した具体例と同じ条件の場合について示している。従って当該具体例では、図10の(1)に示されるように、ユーザーによって指定され、上記ステップS23で受信される濃度調整値が、カラーでは+50%、ブラックでは+10%である場合を示している。
【0093】
また、図10の(2)に示すように、一例として着目する画素の(R,G,B)の値は(200,150,150)であり、図10の(3)に示すように、LUT選択部122aで基準テーブルとして選択されているテーブルは、最大総インク打ち込み量が120%である色変換テーブル127(1)(ここでは、LUT1とする)である。
【0094】
当該具体例では、濃度調整が増加であるので、図5に示した場合においては色変換テーブル127がLUT3に切り替えられたが、ここでは、上記濃度調整後の総インク打ち込み量の最大値がLUT1の最大総インク打ち込み量を超過しないものとし、図10の(7)に示されるように、基準テーブルLUT1がそのまま使用されて、ステップS26の処理により、色変換処理が実行される。その結果、上記着目した画素のインク量データとして、(C,M,Y,K)=(0%,30%,30%,20%)が得られる。
【0095】
次に、上記ステップS32の処理により、図10の(8)に示すように、当該対象画素のカラーインク量について濃度調整(増加)の処理がなされる。(C,M,Y)=(0%,30%,30%)の各インク量データが、上記濃度調整値+50%に従って、50%増加し、(C’,M’,Y’)=(0%,45%,45%)となる。
【0096】
同様に、上記ステップS33の処理により、図10の(9)に示すように、当該対象画素のブラックインク量について濃度調整(増加)の処理がなされる。K=20%のインク量データが、上記濃度調整値+10%に従って、10%増加し、K’=22%となる。
【0097】
このようにして、当該変形例では、濃度調整が増加の場合であっても、基準テーブルでまかなえる場合には色変換テーブル127を切り替えず、テーブル切り替えに伴う色具合の変化をなくすことができる。
【0098】
以上、実施の形態例及びその変形例について説明したが、濃度増加の際に行われる色変換テーブル127の切り替え時には、ユーザーに対して、所望の色合いから変化する可能性がある旨を報知するようにしてもよい。この場合には、例えば、ドライバー12がそのメッセージをホストコンピューター1の表示装置に表示する処理を実行する。
【0099】
また、濃度を減少させる調整の際にも、色変換テーブル127の切り替えを実行するようにしてもよい。
【0100】
以上説明したように本実施の形態例及び変形例における画像処理装置では、プリンター2で使用されるインクの打ち込み量のデータ(インク量データ)に対して、ユーザーが指定した濃度調整値に従った処理が実行されるので、ユーザーが入力する値に比例してインクの打ち込み量が変化する。従って、ユーザーは、濃度調整操作によってインク量(色材量)をコントロールすることができ、滲みや裏抜けの防止、インク量減少によるコスト削減、いわゆる埋まりを十分なものにする、といったユーザーニーズを容易に達成することができる。
【0101】
また、濃度調整は、カラーとブラックとで別々に実行され、互いに異なる濃度調整値でインク量の増減がなされ得る。従って、黒文字・バーコード等の品質を低下させずに総インク打ち込み量を減少させる、といったことが可能になる。
【0102】
また、最大総インク打ち込み量が定まった色変換テーブルを用いてその範囲内で濃度の増加がなされるので、インク打ち込み量が超過してしまう問題も抑えることができる。
【0103】
また、上記変形例のように、濃度を増加させる調整であっても、その印刷条件で基準とされる色変換テーブルで総インク打ち込み量がまかなえる場合には、そのテーブルをそのまま使用するので、色合いが変化してしまうことを防止できる。
【0104】
なお、本実施の形態例では、ラインヘッドのインクジェットプリンター用の画像処理装置であったが、他のタイプのプリンターに対しても本発明の装置を適用することができる。
【0105】
また、本実施の形態例におけるドライバー12が行う処理は、プリンター2側のコントローラー13を用いて実行することもでき、または、ホストコンピューター1とプリンター2に分割して、実行するようにしてもよい。
【0106】
本発明の保護範囲は、上記の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【符号の説明】
【0107】
1 ホストコンピューター、 2 プリンター、 11 アプリケーション、 12 ドライバー、 13 コントローラー、 14 印刷実行部、 121 ラスタライズ部、 122 色変換部、 122a LUT選択部、 123 濃度調整部、 124 ドット分解部、 125 ハーフトーン処理部、 126 印刷データ変換部、 127 色変換テーブル、 128 ドット分解テーブル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像記録装置に接続可能な画像処理装置であって、
第一色空間で表現された画像データを、画像記録装置で使用される色材の第二色空間で表現された色材量データに変換する色変換部と、
前記色材量データを指定された調整値に基づいて増減させる濃度調整部と、
増減後の前記色材量データを、前記画像記録装置で形成されるドットのサイズ別のドット発生量で表現されたドット発生量データに変換するドット分解部と、
前記ドット発生量データを、前記ドットの形成の有無を表現したデータに変換するハーフトーン処理部と、を有する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記調整値は、有彩色と黒色について別個に指定され、
前記濃度調整部は、有彩色について指定された前記調整値に基づいて、有彩色の前記色材量データを増減させ、黒色について指定された前記調整値に基づいて、黒色の前記色材量データを増減させる
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1あるいは2において、
前記画像データと前記色材量データとを、前記色材の総色材量が制限値以内になるように対応付けたテーブルであって、前記制限値が異なる複数の色変換テーブルを備え、
前記色変換部は、前記指定された調整値に基づいて前記色変換テーブルを選択し、当該選択した色変換テーブルを用いて前記変換を行う
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記色変換部は、前記指定された調整値が濃度増加を示す場合には、基準の前記色変換テーブルよりも、前記制限値が大きい前記色変換テーブルを選択する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記濃度調整部は、前記制限値が大きい色変換テーブルを選択したことにより、前記色変換部による変換処理で生成された前記色材量データが、前記指定された調整値が示す濃度増加を超えて増加された値となる場合には、その超過分を減少させる
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項3において、
前記色変換部は、前記基準の色変換テーブルを用いた場合に、前記濃度調整部による処理後に得られる前記色材量データの総色材量の最大値が、当該基準の色変換テーブルの前記制限値を超えない場合には、当該基準の色変換テーブルを選択する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
第一色空間で表現された画像データを、印刷に用いられる色材の第二色空間で表現された色材量データに変換する色変換工程と、
前記色材量データを指定された調整値に基づいて増減させる濃度調整工程と、
増減後の前記色材量データを、印刷媒体に形成されるドットのサイズ別のドット発生量で表現されたドット発生量データに変換するドット分解工程と、
前記ドット発生量データを、前記ドットの形成の有無を表現したデータに変換するハーフトーン処理工程と、を有する
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
第一色空間で表現された画像データを、印刷に用いられる色材の第二色空間で表現した色材量データに変換する色変換工程と、
前記色材量データを指定された調整値に基づいて増減させる濃度調整工程と、
増減後の前記色材量データを、印刷媒体に形成されるドットのサイズ別のドット発生量で表現したドット発生量データに変換するドット分解工程と、
前記ドット発生量データを、前記ドットの形成の有無を表現したデータに変換するハーフトーン処理工程と、を画像処理装置に実行させる
ことを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項1】
画像記録装置に接続可能な画像処理装置であって、
第一色空間で表現された画像データを、画像記録装置で使用される色材の第二色空間で表現された色材量データに変換する色変換部と、
前記色材量データを指定された調整値に基づいて増減させる濃度調整部と、
増減後の前記色材量データを、前記画像記録装置で形成されるドットのサイズ別のドット発生量で表現されたドット発生量データに変換するドット分解部と、
前記ドット発生量データを、前記ドットの形成の有無を表現したデータに変換するハーフトーン処理部と、を有する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記調整値は、有彩色と黒色について別個に指定され、
前記濃度調整部は、有彩色について指定された前記調整値に基づいて、有彩色の前記色材量データを増減させ、黒色について指定された前記調整値に基づいて、黒色の前記色材量データを増減させる
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1あるいは2において、
前記画像データと前記色材量データとを、前記色材の総色材量が制限値以内になるように対応付けたテーブルであって、前記制限値が異なる複数の色変換テーブルを備え、
前記色変換部は、前記指定された調整値に基づいて前記色変換テーブルを選択し、当該選択した色変換テーブルを用いて前記変換を行う
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記色変換部は、前記指定された調整値が濃度増加を示す場合には、基準の前記色変換テーブルよりも、前記制限値が大きい前記色変換テーブルを選択する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記濃度調整部は、前記制限値が大きい色変換テーブルを選択したことにより、前記色変換部による変換処理で生成された前記色材量データが、前記指定された調整値が示す濃度増加を超えて増加された値となる場合には、その超過分を減少させる
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項3において、
前記色変換部は、前記基準の色変換テーブルを用いた場合に、前記濃度調整部による処理後に得られる前記色材量データの総色材量の最大値が、当該基準の色変換テーブルの前記制限値を超えない場合には、当該基準の色変換テーブルを選択する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
第一色空間で表現された画像データを、印刷に用いられる色材の第二色空間で表現された色材量データに変換する色変換工程と、
前記色材量データを指定された調整値に基づいて増減させる濃度調整工程と、
増減後の前記色材量データを、印刷媒体に形成されるドットのサイズ別のドット発生量で表現されたドット発生量データに変換するドット分解工程と、
前記ドット発生量データを、前記ドットの形成の有無を表現したデータに変換するハーフトーン処理工程と、を有する
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
第一色空間で表現された画像データを、印刷に用いられる色材の第二色空間で表現した色材量データに変換する色変換工程と、
前記色材量データを指定された調整値に基づいて増減させる濃度調整工程と、
増減後の前記色材量データを、印刷媒体に形成されるドットのサイズ別のドット発生量で表現したドット発生量データに変換するドット分解工程と、
前記ドット発生量データを、前記ドットの形成の有無を表現したデータに変換するハーフトーン処理工程と、を画像処理装置に実行させる
ことを特徴とする画像処理プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図4】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図4】
【公開番号】特開2013−102397(P2013−102397A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245930(P2011−245930)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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