画像処理装置、画像処理方法および記録装置
【課題】インクを吐出するノズル間の吐出特性のばらつきに起因して、異なる種類の複数のインクの混色により形成される色画像に生じる色むらを高精度にかつ効率的に低減可能な画像処理装置を提供する。
【解決手段】複数のノズル列からインクをそれぞれ吐出させてパッチを記録し(S502)、記記録媒体に記録された測定用色画像の色補正処理をすべき領域を指定し(S503)、色補正領域に対応する色信号に複数の異なる色補正処理をして、複数の色補正パッチを記録する(Sステップ504)、複数の異なる色補正パッチの中から使用する色補正パッチを選択し(S506)、選択された色補正処理に基づいて、ノズルに対応するテーブルパラメータを形成し(S507)、複数の色補正パッチを形成する際には、測定用色画像の色信号に対して均等色空間上で所定の閾値よりも大きい色差をもつ補正候補値のみを生成する。
【解決手段】複数のノズル列からインクをそれぞれ吐出させてパッチを記録し(S502)、記記録媒体に記録された測定用色画像の色補正処理をすべき領域を指定し(S503)、色補正領域に対応する色信号に複数の異なる色補正処理をして、複数の色補正パッチを記録する(Sステップ504)、複数の異なる色補正パッチの中から使用する色補正パッチを選択し(S506)、選択された色補正処理に基づいて、ノズルに対応するテーブルパラメータを形成し(S507)、複数の色補正パッチを形成する際には、測定用色画像の色信号に対して均等色空間上で所定の閾値よりも大きい色差をもつ補正候補値のみを生成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に記録すべき画像データの各画素が有する所定の色空間の色信号に対して色補正処理をする画像処理装置、画像処理方法および記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
同一の吐出量を吐出する様に設計された複数のインク吐出ノズルは、実際には製造上のばらつきによって実際の吐出量が異なってしまう。したがって、上記複数の吐出ノズルを用いて記録媒体上に均一な記録ドット数で画像形成すると、製造上のばらつき等に起因した濃度ムラを生ずる可能性がある。
【0003】
特許文献1は、この濃度ムラを解決するために、各インク吐出ノズルから吐出されるインク量情報を取得し、このインク量情報に応じて記録ドット数を変調するヘッドシェーディング技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−13674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなヘッドシェーディング技術を用いても、2種類以上のインクを重ねて色再現した場合には、標準と異なる吐出量のノズルで記録した領域の発色が本来記録されるべき色と異なる現象、いわゆる色ずれが生じる。すなわち、ヘッドシェーディング技術だけでは、単色画像の濃度むらは補正されたとしても、2種類以上のインクを重ねて表現される画像においては、複数のノズル間の吐出特性のばらつきに応じて色ずれが生じる可能性がある。複数のノズル間の吐出特性が異なると、記録された領域間において色ずれの程度が異なり、これが、色むらとして認識される。
【0006】
このような色むらの発生箇所を測色機器で測色すると、測色誤差が生じてしまうことがある。例えば、分光測色機は一定のスポット径内の反射光を読み込むことで測色を行っている。しかし、スポット径より幅が小さい領域における色むらは、その色むらの周囲の領域まで分光測色機が読み取ってしまう。このため、色むらを精確に測色することが困難である。また、スキャナのような画像入力機器では、センサーの精度によってはメタメリズムが生じる場合や、入力画像を作成する際のビット数によっては色差が識別できない場合があるなど、人間の見た目の精度を再現できないことがある。
【0007】
本発明の目的は、インクを吐出するノズル間の吐出特性のばらつきに起因して、異なる種類の複数のインクの混色により形成される色画像に生じる色むらを高精度にかつ効率的に低減可能な画像処理装置、記録装置および画像処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る画像処理装置は、記録媒体に記録すべき画像データの各画素が有する所定の色空間の複数の要素からなる色信号に対して色補正処理をする画像処理装置であって、第1のインクと当該第1のインクとは異なる色の第2のインクとを含む複数のインクをそれぞれ吐出する複数のノズル列における前記記録媒体の同一領域への記録に用いられる所定数のノズル毎に割り当てられた複数のテーブルパラメータを有する変換テーブルを記憶する記憶手段と、前記複数のテーブルパラメータのうち、前記各画素の色信号に対応するノズルに割り当てられたテーブルパラメータを用いて当該色信号に色補正処理をする補正手段と、前記複数のノズル列から前記記録媒体の同一領域に少なくとも前記第1および第2のインクをそれぞれ吐出させて、測定用色画像を記録するための信号を出力する第1の出力手段と、前記第1の出力手段により出力された前記測定用色画像の出力の結果に基づく、前記測定用色画像における色補正処理をすべき色補正領域に関する情報を受ける第1の受信手段と、前記測定用色画像の色信号のうち、前記色補正領域に対応する色信号に色補正処理をするための複数の補正候補値を生成する生成手段と、前記複数の補正候補値を用いて複数の異なる色補正処理した複数の異なる色補正画像を前記記録媒体に記録するための信号を出力する第2の出力手段と、前記第2の出力手段により出力された前記複数の異なる色補正画像の出力の結果に基づく、前記複数の異なる色補正画像の中から選択された色補正画像に関する情報を受ける第2の受信手段と、前記選択された色補正画像に対応する色補正処理に基づいて、前記複数のテーブルパラメータの中の、前記色補正領域に対応するノズルに割り当てられたテーブルパラメータを形成する手段と、を有し、前記生成手段は、前記測定用色画像の色信号に対して均等色空間上で所定の閾値よりも大きい色差をもつ補正候補値のみを生成する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ノズル間のインク吐出特性のばらつきに起因して、異なる色の複数のインクにより形成される画像に生じる色むらを、高精度にかつ効率的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタを模式的に示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る記録システムを示すブロック図である。
【図3】(a)〜(c)は、ブルー画像を記録した際に発生する色むら説明する図である。
【図4】(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態およびその変形例にかかる、インクジェットプリンタにおける画像処理部の構成を示すブロック図である。
【図5】図4(a)に示したMCS処理部で用いるテーブルのパラメータを生成する処理と、記録データを生成する際の画像処理における、上記テーブルを用いたMCS処理部の処理をそれぞれ示すフローチャートである。
【図6】測定用色画像のレイアウトを示す図である。
【図7】測定用色画像の色むらの発生領域を指定するためのユーザインターフェイスを示す図である。
【図8】候補色補正画像のレイアウトを示す図である。
【図9】複数の候補色補正画像から使用する色補正画像を選択するためのユーザインターフェイスを示す図である。
【図10】測定用色画像の記録状態を説明するための図である。
【図11】(a)および(b)は、図4(a)のMCS処理部による処理後の画像の一例を説明する図である。
【図12】RGB空間において等間隔に座標を取った格子点を示す図である。
【図13】シアン色相のインク打ち込み量と濃度の関係を示すグラフである。
【図14】図4(b)に示したMCS処理部で用いるテーブルのパラメータを生成する処理と、記録データを生成する際の画像処理における、上記テーブルを用いたMCS処理部の処理をそれぞれ示すフローチャートである。
【図15】(a)および(b)は、図4(d)に示したMCS処理部による処理後の画像の一例を説明する図である。
【図16】本発明の第1の実施形態の補正候補作成の手順を示すフローチャートである。
【図17】本発明の第2の実施形態の補正候補作成の手順を示すフローチャートである。
【図18】本発明の第3の実施形態の補正候補作成の手順を示すフローチャートである。
【図19】本発明の第4の実施形態の補正候補作成の手順を示すフローチャートである。
【図20】本発明の第5の実施形態の補正候補作成の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタ(インクジェット記録装置)を模式的に示す図である。図1に示すように、プリンタ100は、プリンタの構造材をなすフレーム上に記録ヘッド101〜104を備える。記録ヘッド101〜104はそれぞれ、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを吐出するための複数のノズルをx方向に沿って記録用紙106の幅に対応した範囲に配列した、いわゆるフルラインタイプのものである。それぞれのインク色のノズル列のノズル配置の解像度は1200dpiである。
【0013】
記録媒体としての記録用紙106は、搬送ローラ105(および他の不図示のローラ)がモータ(不図示)の駆動力によって回転することにより、図中矢印y方向に搬送される。そして、記録用紙106が搬送される間に、記録ヘッド101〜104それぞれの複数のノズルから記録データに応じてインクが吐出される。これにより、それぞれの記録ヘッドのノズル列に対応した1ラスタ分の画像が順次記録される。このような、搬送される記録用紙に対する各記録ヘッドからのインク吐出動作を繰り返すことにより、例えば、一頁分の画像を記録することができる。なお、本発明を適用可能な記録装置は、以上説明したフルラインタイプの装置に限られない。例えば、記録ヘッドを記録用紙の搬送方向と交差する方向に走査して記録を行う、いわゆるシリアルタイプの記録装置にも本発明を適用できることは、以下の説明からも明らかである。
【0014】
図2は、本発明の一実施形態に係る記録システムの構成を示すブロック図である。同図に示すように、この記録システムは、図1に示したプリンタ100と、そのホスト装置としてのパーソナルコンピュータ(PC)300を有して構成されるものである。
【0015】
ホストPC300は、以下の要素を有している。CPU301は、HDD303やRAM302に保持されているプログラムに従った処理を実行する。RAM302は、揮発性のストレージであり、プログラムやデータを一時的に保持する。また、HDD303は、不揮発性のストレージであり、同じくプログラムやデータを保持する。データ転送I/F(インターフェース)304はプリンタ100との間におけるデータの送受信を制御する。このデータ送受信の接続方式としては、USB、IEEE1394、LAN等を用いることができる。キーボード・マウスI/F305は、キーボードやマウス等のHID(Human Interface Device)を制御するI/Fであり、ユーザは、このI/Fを介して入力をすることができる。ディスプレイI/F306は、ディスプレイ(不図示)における表示を制御する。
【0016】
一方、プリンタ100は、以下の要素を有している。CPU311は、ROM313やRAM312に保持されているプログラムに従い、図4以降で後述する各実施形態の処理を実行する。RAM312は、揮発性のストレージであり、プログラムやデータを一時的に保持する。また、ROM313は不揮発性のストレージであり、図4以降で後述する各実施形態の処理で作成されるテーブルデータやプログラムを保持することができる。
【0017】
データ転送I/F314はPC300との間におけるデータの送受信を制御する。ヘッドコントローラ315は、図1に示したそれぞれの記録ヘッド101〜104に対して記録データを供給するとともに、記録ヘッドの吐出動作を制御する。具体的には、ヘッドコントローラ315は、RAM312の所定のアドレスから制御パラメータと記録データを読み込む構成とすることができる。そして、CPU311が、制御パラメータと記録データをRAM312の上記所定のアドレスに書き込むと、ヘッドコントローラ315により処理が起動され、記録ヘッドからのインク吐出が行われる。画像処理アクセラレータ316は、CPU311よりも高速に画像処理を実行するハードウェアである。具体的には、画像処理アクセラレータ316は、RAM312の所定のアドレスから画像処理に必要なパラメータとデータとを読み込む構成とすることができる。そして、CPU311が上記パラメータとデータをRAM312の上記所定のアドレスに書き込むと、画像処理アクセラレータ316が起動され、所定の画像処理が行われる。本実施形態では、図4以降の各実施形態で後述されるMCS処理部で用いるテーブルパラメータの作成処理をCPU311によるソフトウェア処理により実行する。一方、MCS処理部の処理を含む記録の際の画像処理を画像処理アクセラレータ316によるハードウェア処理によって行う。なお、画像処理アクセラレータ316は必須の要素ではく、プリンタの仕様などに応じて、CPU311によるソフトウェア処理のみで上記のテーブルパラメータの作成処理および画像処理を実行してもよいことはもちろんである。
【0018】
以上説明した記録システムにおいて、複数種類のインクを用いて画像を記録する場合の、複数のノズル間の吐出特性のばらつきに起因して生じる色むらを低減するための実施形態を以下に説明する。
【0019】
図3(a)〜(c)は、従来のヘッドシェーディングを行った状態で、2色のインクの重ね合わせ(混色)により表現されるブルー画像を記録した際に発生する色むらを説明する図である。図3(a)において、102は第1のインクとしてのシアンインクを吐出する記録ヘッド、103は第1のインクとは異なる色の第2のインクとしてのマゼンタインクを吐出する記録ヘッドをそれぞれ示している。同図では、説明および図示の簡略化のため、それぞれの記録ヘッドにおける複数のノズルのうち8つのノズルのみが示されている。また、シアンおよびマゼンタインクによってブルーを記録する場合の色むらを説明するため、シアンとマゼンタの2つの記録ヘッドのみが示されている。
【0020】
シアンインクの記録ヘッド102の8つのノズル10211、10221は、総て標準的な量のインクを標準的な方向に吐出可能であり、記録媒体には同じ大きさのドットが一定の間隔で記録される。一方、マゼンタの記録ヘッド103の8つのノズルについても、吐出方向は全て標準であるが、図中左側の4つのノズル10311は標準の吐出量、右側の4つのノズル10321は標準よりも多い吐出量とする。よって、図中左側の領域(第1ノズルエリア)では、シアンドットと等しい大きさのマゼンタドットが記録されるが、右側の領域(第2ノズルエリア)では、シアンドットよりも大きいマゼンタドットが、シアンドットと等しい一定の間隔で記録される。なお、図3(a)に示すマゼンタインクの記録ヘッド103における右側の4つのノズルを左側より大きいサイズで示してあるが、これは吐出量の違いを分かり易くするためであり、実際のノズルサイズの関係を示しているわけでない。
【0021】
このような吐出量特性を有する記録ヘッドを用いる場合に、従来のヘッドシェーディングによって画像データの補正を行うと、マゼンタノズル10321に対応する画像データは、その値が減少する方向に補正される。その結果、最終的にマゼンタノズル10321が記録するドットの数が、マゼンタノズル10311が記録するドットの数よりも少なく抑えられるように、ドットの記録(1)或いは非記録(0)を定めるドットデータ(2値データ)が生成される。
【0022】
図3(b)は、シアンインクの記録ヘッド102のノズルに対応したシアンドット10611、10621、およびマゼンタインクの記録ヘッド103のノズルに対応したマゼンタドット10612、10622を示している。このうち、マゼンタインクの吐出量が多い4つのノズル10321に対応した領域のドット10622は、ヘッドシェーディングによって、上記対応した領域の画像データが補正された結果、ドットの数が減少したものとなる。図に示す例は、吐出量が多いマゼンタインクのノズル10321から吐出されるインクによって形成されるドットの面積が標準の吐出量のときのドット面積の2倍である例を示している。この場合、ヘッドシェーディングによる補正によって、ドットの数が1/2(4ドット→2ドット)とされる。なお、ドット面積が2倍となるときにドットの数を1/2とするのは説明を簡潔にするためである。実際は、吐出量のばらつきによってドット面積が増す(減少する)ことによる濃度の増加(減少)を抑制して標準の濃度となるようにドットデータの数を定めることはもちろんである。
【0023】
図3(c)は、以上のようにして得られたドットデータに基づき、それぞれの記録ヘッドから記録用紙106上にシアンおよびマゼンタのインクを吐出してブルーの画像を記録した例を示している。図3(c)において、記録用紙106における図中左側の領域には、シアンインクとマゼンタインクが重なって形成される、標準のサイズのブルーのドット10613が記録される。一方、図中右側のマゼンタの吐出量が多い4つのノズル10321に対応する領域には、標準のサイズのシアンドット10623と、シアンインクとマゼンタインクが重なって形成されるブルーのエリア10624とその周囲のマゼンタのエリア10625からなるドットが記録される。
【0024】
このように、図中右側の吐出量が多いマゼンタのノズル10321に対応する、ブルー(のベタ画像)を記録する領域は、次の3種類のドットないしエリアによって構成されることになる。
【0025】
2つの標準サイズのシアンエリア(ドット)10623
標準よりも大きなマゼンタドット中に形成された標準サイズのシアンドットによる、2つのブルーエリア10624
標準サイズのブルーエリア10624の廻りに存在する、2つのマゼンタエリア10625
ここで、上述したように従来のヘッドシェーディングでは、シアンおよびマゼンタの画像データがそれぞれ個別に補正されることによりそれぞれのドットの数が調整される。その結果、2つのシアンエリア(ドット)10623の面積=2つのブルーエリア10624の面積=2つのマゼンタエリア10625の面積となっている。この場合仮に、シアンエリア10623の光吸収特性とマゼンタエリア10625の光吸収特性によって全体として観察される色が、ブルーエリア10624の光吸収特性によって観察される色と同じであれば、この領域全体はブルーエリア10624と同じ色となる。
【0026】
しかしながら、ブルーエリア10624のように、異なる色の複数のインクが重ねて形成される場合、そのエリアの光吸収特性によって観察される色は、複数のインクそれぞれのエリアの光吸収特性を合せて全体として観察される色と異なることが多い。その結果、その領域全体は目標とする標準の色からの色ずれを生じ、結果として、記録用紙106において図中左側半分の領域のブルー画像と、右側半分の領域のブルー画像は異なる色に見えることになる。
【0027】
なお、例えば、大、中、小の3段階のドットによって記録を行う4値の記録装置など、ドットの大きさを変更できる多値の記録装置でも、ノズル間の吐出量のばらつきによってそれぞれのサイズのドットの大きさにばらつきを生じることがある。この場合も、従来のヘッドシェーディングによる補正を施しても、上述と同様の理由によって色むらを生じることがある。従って、2値の記録装置に限らず3値以上の多値記録装置にも本発明を適用することができる。
【0028】
本発明の実施形態は、量子化前の、画像データの各画素の値を規定する色信号に対する補正処理によって、記録画像の色むらを低減する。
【0029】
[第1の実施形態]
図4(a)は、本発明の第一の実施形態にかかる、インクジェットプリンタにおける画像処理部の構成を示すブロック図である。すなわち、本実施形態は、図2に示したプリンタ100の制御、処理のための各要素によって画像処理部を構成する。なお、本発明の適用はこの形態に限られないことはもちろんである。例えば、図2に示したPC300において画像処理部が構成されてもよく、あるいは画像処理部の一部がPC300において構成され、その他の部分がプリンタ100において構成されてもよい。
【0030】
図4(a)に示すように、入力部401はホストPC300から送信された画像データを入力し、画像処理部402へ渡す。この画像処理部402は、入力色変換処理部403、MCS(Multi Color Shading)処理部404、インク色変換処理部405、HS(Head Shading)処理部406、TRC(Tone Reproduction Curve)処理部407および量子化処理部408を有する。
【0031】
画像処理部402において、先ず、入力色変換処理部403は、入力部401からの入力画像データを、プリンタの色再現域に対応した画像データに変換する。入力する画像データは、本実施形態では、モニタの表現色であるsRGB等の色空間座標中の色座標(R,G,B)を示すデータである。入力色変換処理部403は、この各8ビットの入力画像データR,G,Bを、マトリクス演算処理や三次元ルックアップテーブルを用いた処理等、既知の手法によって、3要素から構成される色信号である、プリンタの色再現域の画像データ(R’,G’,B’)に変換する。本実施形態では、三次元ルックアップテーブルを用い、これに補間演算を併用して変換処理を行う。なお、画像処理部402において扱われる8ビットの画像データの解像度は600dpiであり、量子化処理部408の量子化によって得られる2値データの解像度は後述のように1200dpiである。
【0032】
MCS処理部404は、入力色変換処理部403によって変換された画像データに対して色補正処理をする。この処理も後述するように、三次元LUTからなる補正テーブル(変換テーブル)を用いて行う。三次元LUTは、複数のインクをそれぞれ吐出する複数のノズル列における記録媒体の同一領域への記録に用いられる所定数のノズル毎に割り当てられた複数のテーブルパラメータを有する。これら複数のテーブルパラメータのうち、画像データの各画素の色信号であるRGB信号に対応するノズルに割り当てられたテーブルパラメータを用いて当該RGB信号に色補正処理をする。この補正処理によって、出力部409における記録ヘッドのノズル間で吐出特性にばらつきがあっても、それによる上述した色むらを低減することができる。このMCS処理部404の具体的なテーブルの内容およびそれを用いた補正処理については後述する。なお、本実施形態においては、MCS処理部404はRGB信号値を入力し、三次元LUTで補正されたRGB信号値を出力する構成で以下に説明を行っていく。ただし、次に説明するインク色変換処理部405の入力信号値をCMYKとした場合、MCS処理部404でRGB信号値を入力してCMYK信号値を出力とする系も構成することができる。この場合、MCS処理部404ではRGB信号値をCMYK信号値に変換する三次元LUTを保持することになる。また、前記の入力色変換処理部403でCMYK信号値を出力できる場合は、MCS処理部404でCMYK信号値の四次元LUTを保持し、CMYK信号値を入力してCMYK信号値を出力してもよい。
【0033】
インク色変換処理部405は、MCS処理部404によって処理されたR、G、B各8ビットの信号で構成される画像データをプリンタで用いるインクの色信号データで構成される画像データに変換する。本実施形態のプリンタ100はブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを用いることから、RGB信号の画像データは、K、C、M、Yの各8ビットの色信号からなる画像データに変換される。この色変換も、上述の入力色変換処理部403と同様、三次元LUTに補間演算を併用して行う。なお、他の変換の手法として、上述と同様、マトリクス演算処理等の手法を用いることもできる。
【0034】
HS処理部406は、インク色信号の画像データを入力して、インク色ごとにそれぞれ8ビットデータを、記録ヘッドを構成する各ノズルの吐出量に応じたインク色信号の画像データに変換する処理を行う。すなわち、HS処理部406は、従来のヘッドシェーディング処理と同様の処理を行う。本実施形態では、一次元LUTを用いて本HS処理を行う。
【0035】
TRC処理部407は、HS処理された各8ビットのインク色信号からなる画像データに対して、インク色毎に、出力部409で記録されるドットの数を調整するための補正を行う。一般に、記録媒体に記録されるドットの数と、その数のドットによって記録媒体で実現される光学濃度は線形関係にない。よって、TRC処理部407は、この関係を線形にすべく各8ビットの画像データを補正して記録媒体に記録されるドットの数を調整する。
【0036】
量子化処理部408は、TRC処理部407で処理された各8ビット256値のインク色の画像データに対して、量子化処理を行い、1ビットの2値データを得る処理である。この際、本実施形態では、先ず、「0」〜「4」の3ビット5値のインク色ごとのインデックスデータに変換する。このインデックスデータ「0」〜「4」は、0〜4個のドットを1200dpiの解像度の2画素×2画素に配置するパターンに対応している。なお、本発明を適用する上で、量子化408の形態はこの例に限られないことはもちろんである。例えば、8ビットの画像データを、2値化し直接2値データ(ドットデータ)を得る形態でもよい。また、量子化処理方法として、本実施形態は誤差拡散法を用いるが、ディザ法など他の疑似中間調処理を用いてもよい。
【0037】
出力部409は、量子化によって得られたドットデータに基づいて、記録ヘッドを駆動し記録媒体に各色のインクを吐出して記録を行う。出力部409は、具体的には、図1に示した、記録ヘッド101〜104を備えた記録機構によって構成される。
【0038】
図5は、図4(a)に示したMCS処理部404で用いるテーブルのパラメータを生成する処理と、記録データを生成する際の画像処理における、上記テーブルを用いたMCS処理部404の処理を示すフローチャートである。
【0039】
図5において、ステップS501〜S507は、MCS処理部404で用いる三次元ルックアップテーブルのパラメータを生成する処理である。具体的には、S501は、入力部401で入力する画像データを作成する工程である。S502は、入力色変換処理部403〜出力部409を経てプリンタで記録を行う工程である。S503は、ホストPC300でキーボードやマウスを使って色むらの発生領域を指定する工程である。S504は、S503で指定した領域を基に、入力部401で入力する画像データを作成する工程である。S505は、S502同様プリンタで記録を行う工程である。S506は、ホストPC300でキーボードやマウスを使って画像処理を指定する工程である。S507は、MCS処理部404で用いる三次元LUTのパラメータを生成する工程である。本実施形態において、このようなパラメータ生成処理は、プリンタの製造時やプリンタを所定期間使用したとき、あるいは所定量の記録を行ったときに、強制的あるいは選択的に実行される。また、例えば、記録を行うたびに、その動作前に実行するようにしてもよい。すなわち、当該処理はいわゆるキャリブレーションとして行うことができ、これにより、LUTの内容であるテーブルパラメータが更新される。
【0040】
ステップS508は、プリンタで記録を行う際にその記録データ生成のために、画像処理アクセレータ316が、図4(a)に示した画像処理部402の画像処理の一環として実行する工程である。
【0041】
本実施形態においては、MCS処理部404のテーブルパラメータは、HS処理部406のテーブルパラメータが作成されていることを前提に、作成される。このため、本処理が起動されるステップS501の時点では、既にHS処理部406のテーブルパラメータは既知の方法によって生成(更新)されている。HS処理部のテーブルパラメータの生成では、インク色ごとに、記録媒体で表現される濃度のばらつきを抑える。このため、例えば吐出量の比較的大きいノズルは吐出回数を抑えるように、吐出量の比較的少ないノズルは吐出回数を増やすように、パラメータが作成される。よって、例えば図3(a)に示すマゼンタヘッド103のノズル10321については、図3(b)に示すように、ドット数が約半数に抑えられるようなパラメータが作成される。また、シアンヘッド102については、図3(b)に示すように、ドット数が変更されないようなパラメータが作成される。以上のように、本実施形態では、MCS処理部404のテーブルパラメータを生成又は更新するときは、その前にHS処理部406のテーブルパラメータを完成させておく。これにより、MCS処理部404のパラメータ生成のときに、ノズル間の吐出特性のばらつきによる色むらを、MCS処理部404とHS処理部406との双方の処理によって適切に低減することができる。
【0042】
また、本実施形態では、上述したように、MCS処理部404がRGB信号値を入力し、RGB信号値を出力する系として説明される。これに対し、テーブルパラメータを求める処理では、後述されるように、記録媒体に記録される色を扱う処理が存在する。その際に、RGB信号値をL*a*b*値、あるいはCMYK値に変換するLUTなど、標準的な吐出量のときの記録媒体上の色を再現できるパラメータを記録媒体毎に持つことが望ましい。あるいは、RGB信号値を記録媒体上でL*a*b*値に変換する変換式を保持しておいてもよい。これにより、本実施形態において記録媒体上で所望の色を表現するための、入力値の変換値を推定することが可能となる。特に、後述するステップS504の処理において、記録媒体上の色を基準に色変換処理をすることができる。このため、図5に示す処理の前に、記録媒体毎のプリンタプロファイル、もしくはインク色変換処理部405で使用されるLUTを、MCS処理部404で保持しておくことが望ましい。
【0043】
そこで、図5に示す処理の前に、ホストPC300からMCS処理のテーブルパラメータを生成する際に用いる記録媒体を指定する。そして、それに応じてプリンタ本体100のROM313から記録媒体ごとのプリンタプロファイル、もしくはインク色変換処理部405で使用されるLUTを、ホストPC300のRAM302にコピーしておく。記録媒体の指定は、予め用意された記録媒体のリストの中からユーザが手動で選択してもよいし、プリンタ本体100で記録媒体を自動検知し、その結果をホストPC300に転送してもよい。
【0044】
ホストPC300は、S501において、2次色を含む複数色の測定用色画像(パッチ)をレイアウトした画像を作成する。この際、例えば256階調で1677万色のパッチを作成すると膨大なコストがかかる。このため、R、G、Bそれぞれについて、信号値0〜255を、例えば17等分し、17×17×17通りの全ての組合せ(格子点)についてパッチを記録してもよい。もしくは、色むらが気になる色相をユーザが選択して、その色相に含まれるパッチをレイアウトする方法で作成してもよい。つまり、メモリ及び作業時間を縮小するため、上記格子点のうち、吐出特性によって色むらが特に大きく変化しやすい格子点を選択し、これらの格子点に対応するR、G、Bの組についてのみ、パッチを記録するのである。そして、この格子点の1つには、例えば、図3にて説明したブルー画像に対応した、(R、G、B)=(0、0、255)が含まれていればよい。測定用色画像を記録する色(格子点)の選択は、例えば、吐出量に応じて色むらが所定以上大きくなるR、G、Bの組を定め、演算負荷やメモリ容量に応じて、パッチの種類(色信号の組)や数を定めればよい。また、RGB格子点ではなく、上述したプリンタプロファイルやインク色変換処理部405で使用されるLUTを用いて、均等色空間内でパッチが等間隔になるよう画像を作成してもよい。
【0045】
一方、パッチの近傍にノズル位置情報が分かる識別子をパッチに関係付けて付加する。識別子として例えば数字や目盛りを付加するなど、既知の手法を用いてよい。こうして作成された画像を、第1の画像データとする。
【0046】
S502では、S501で作成された第1の画像データをプリントする(第1の出力手段)。これを第1のテストプリントと呼ぶ。この第1のテストプリントのレイアウトの一例を図6に示す。プリント処理が開始されると、図1に示した各記録ヘッドの総てのノズルからインクを吐出して記録媒体にパッチを記録する。パッチを記録する際、選択された数組の画像データ(R、G、B)は、入力色変換処理部403の処理を施された画像データ(以下、デバイス色画像データD[X]という)として、MCS処理部404の処理を経ずに、インク色変換処理部405に入力する。このような経路は、図4(a)においてバイパス経路として破線410で示されている。バイパス経路による処理は、例えば入力値=出力値となるようなテーブルを用意し、デバイス色画像データD[X]はMCS処理部404に入力されるが、Xによらず入力値のまま出力されるような処理が行われてもよい。その後、HS処理部406、TRC処理部407、量子化処理部408にて、通常データと同様の処理を施し、出力部409で記録用紙106に測定用色画像を記録する。この過程で、(R、G、B)で表される測定用色画像の画像データは、インク色変換処理部405によってインクの色信号による画像データ(C、M、Y、K)に変換される。この際、例えば測定用色画像の画像データのひとつに(R、G、B)=(0、0、255)が含まれていれば、その信号値は、(K、C、M、Y)=(0、255、255、0)、すなわち、シアンおよびマゼンタが100%ずつ記録されるデータに変換される。その後、HS処理部406およびそれ以降の処理によって、(K、C、M、Y)=(0、255、255、0)の画像データは、図3(b)に示すドットデータとなって記録される。以下の説明では、説明を簡略化するため、このブルーの測定用色画像の画像データを示す格子点に対応したテーブルパラメータのみについてその作成処理を説明する。ここで、Xとは、図1で示した記録ヘッド101〜104において、x方向における各色のノズルの位置を4つのノズル毎に示す情報である。本実施形態のMCS処理では、このように所定数(4つ)のノズルからなるノズル単位毎に処理を施し、ノズル単位で画像データを補正する。そして、デバイス色画像データD[X]とは、各インク色のXのエリアに配置された4ノズルで記録するべき画像データである。図10(a)および(b)は、上記ステップS502における測定用色画像の記録状態を説明するための図である。図10(a)および(b)において、図3(a)〜(c)に示した要素と同様の要素には同じ符号を付してその説明は省略する。
【0047】
図10(a)は、図3(a)と同様、マゼンタの記録ヘッド103のノズルのうち第2エリアに相当する4つのノズルが標準より多い吐出量である場合を示している。よって、ブルーを示す画像データ(K、C、M、Y)=(0、255、255、0)に、HS処理が施されることによって、図10(b)に示すようなブルーの測定用色画像が記録される。すなわち、吐出量が標準より多いノズルを含む第2エリアに色むらが生じ、第1エリアの標準的なブルーとは異なる発色のパッチが記録される。
【0048】
ユーザはこの記録状態を目視することで、第1のテストプリントから何色の、どのノズル位置に色むらが発生するかを識別することができる。例えば、図6においては、「色2」の「ノズル位置3〜4」に色むらが発生していると識別することができる。
【0049】
ただし、本処理を行う前にMCS処理部404で予めテーブルパラメータが作成されていれば、画像データはMCS処理部404の処理を経て、インク色変換処理部405に入力される。ここで、MCS処理部404で使用されるテーブルパラメータは、本処理に入る前に色むらが発見された時点において更新されたテーブルパラメータである。その場合、上記では図4(a)においてバイパス経路として破線410を使用していたが、MCS処理部404を通ればよい。
【0050】
次に、S503では、ユーザが第1のテストプリントで色むらを確認した色とノズル位置(発生領域)を、アプリケーション上で指定する。すなわち、色むらの発生したパッチと、そのパッチにおける色むら発生領域(色補正処理をすべき色補正領域)を指定する。ホストPC300は、表示手段としてのディスプレイ306に各パッチを表示させる。色むらの発生したパッチと発生領域は、たとえば、マウスや、キーボード等の入力装置を用いて指定可能になっている。第1の受信手段としてのホストPC300は、この指定操作に関する情報を受信し、色補正処理をすべきパッチとその色補正領域を認識する。
【0051】
この処理を行うアプリケーションのユーザインターフェイスを図7に示す。図6に示した第1のテストプリントで「色2」の「ノズル位置3〜4」に色むらの発生領域Pを検出した場合、図7において色むらの該当領域を指定する。その指定方法は、例えば図7で表示された「色2」のパッチ上で、色むらの両端位置(ノズル位置3、4)をカーソルCで指定すればよい。また、色むら発生領域内(色補正領域内)に濃度勾配がある場合は、色むらが最も強く現れる位置、すなわち色むら強度の最大値位置(特徴点)を図7のパッチ上で選択させる手段も設けてもよい。この場合の処理として、S504で行う色補正処理を、最大値位置に近いほど処理度合いを大きく、色むらの両端位置に近いほど処理度合いを小さくする。こうすることで、色むらの中に濃度勾配があっても、色補正処理をノズル位置に応じて変えていくことができる。一方、色むらの色とノズル位置を指定する際に、図7のようなカーソルではなく、色とノズル位置に番号を振り、その番号で色とノズル位置を指定するという方法でもよい。
【0052】
続いて、S504において、S503で指定された色とノズル位置に対して色補正処理を行う。S503で指定された色のみで構成され、指定されたノズル位置に対して複数の異なる色補正処理を施した色補正画像(色補正パッチ)を作成し、これらの色補正パッチをレイアウトした画像データを作成する。色補正パッチの近傍にノズル位置情報が分かる識別子をパッチに関係付けて付加する。これを第2の画像データとする。この際、複数の異なる色補正処理は、第1のテストプリントの色から色空間内で任意の距離だけ離れた点を複数個作成すればよい。この画像データをプリントしたものが図8となる。
【0053】
このステップS504の詳細を説明すると、デバイス色画像データD[X]が(R、G、B)=(0、0、255)である格子点のブルーの測定用色画像は、図1に示したシアンおよびマゼンタの記録ヘッド102および103によって記録される。以下、第nエリアをX=nとする。S503において色むらの傾向が大きく変化する色として指定された色(すなわち格子点)について、指定されたノズルに対応した位置(すなわちエリア[X])ごとにテーブルパラメータを求める。そして、上記指定された格子点以外の他の格子点のテーブルパラメータについては、上記指定された格子点の間の補間によって求める。この補間によって求める方法は公知の方法を用いることができ、その説明は省略する。ここで、各エリア[X]は1200dpiの4ノズル分の領域に対応している一方、画像処理における画素の解像度は600dpiであるので、各エリアXには、x方向に2つずつの画素が対応することになる。
【0054】
S503で指定されたエリア[X]のX値をnとする。このエリア[n]に対応したテーブルは、その格子点の画像データ(R、G、B)からRGB方向それぞれに値を変化させたm個の色補正値Zi[n]をそれぞれデバイス色画像データD[n]に加算して作成する。ここで、添え字iは、異なる複数の色補正処理を行う場合の色補正番号である。例えば、図7で指定された「色2」のR、G、Bがブルー(0、0、255)であった場合、上述したようにしてエリア[n]に対応するブルー(0、0、255)の1つ目の色補正値Z1[n]を(10、0、0)とする。次に、2つ目の色補正値としてZ2[n]を(0、10、0)とする。さらに、3つ目の色補正値としてZ3[n]を(0、0、10)とする。そして、指定された格子点RGBに対して、下記式に従って色補正値Zi[n]を加算し、色補正後のデバイス色画像データDi[X](第2の色信号)を得る。すなわち、第1の色信号D[X]と第2の色信号Di[X]の関係は以下のようになる。
【0055】
色補正後のデバイス色画像データDi[n]=D[n]+Zi[n]
【0056】
本例の場合、色むらとしては指定されていない第1エリアについては、色補正処理は行わない。従って、D[1]は変わらない。つまり、MCS処理における色補正処理は施されないことになる。一方、色むらとして指定された第nエリアについてはZi[n]≠0であり、従って、MCS処理において、Di[n]はD[n]とは色が異なる補正が施される。
【0057】
このようにして作成されたm個のパッチを画像中に並列にレイアウトして、画像データを作成する。上記例はRGB値を基準に色補正を行ったが、例えば均等色空間(L*、a*、b*)に変換して、その中で等間隔になるようm個の色補正されたパッチを作成してもよい。つまり、上述したプリンタプロファイルやインク色変換処理部405で使用されるLUTを用いて、第1の色信号D[X]や第2の色信号Di[X]や色補正値Zi[n]をL*a*b*値やCMYK値に変換して処理を行う。その工程は、まず第1の色信号D[X]のRGB値をプリンタプロファイルでL*a*b*値に変換する。次に、L*a*b*値で表された色補正値Zi[n]を加算し、第2の色信号Di[X]を得る。最後に、プリンタプロファイルを用いて逆演算による補間処理を行えば、L*a*b*値に基づいた色補正ができる。
【0058】
また、色空間の位置に応じて、色補正値Zi[n]の大きさを変えてもよい。例えば、人間の視覚では、グレー近辺においては色の違いを高精度に識別できるので、色補正値Zi[n]の大きさを小さくする。こうすることで、微小な色補正処理を行うことができる。一方、人間の視覚では、明度の低い領域や彩度の高い領域などは色むらをグレー近辺に比べて高精度に識別できないので、色補正値Zi[n]の大きさを大きくしてもよい。
【0059】
すなわち、デバイス色画像データD[X]の色空間座標とは無関係に、RGB空間において予め静的に設定した固定値を加算して色画像データDi[n]を作成してテストプリントした場合には、以下の課題を有する。
【0060】
(1) 色むらが発生している近傍のパッチ数(以下候補色数と称す)が多すぎると最適なパッチを短時間で選択することが困難であり、画像処理装置のダウンタイムが増大する。
【0061】
(2) 候補色数が多すぎるとテストプリントに要する用紙が増加し、相対的に成果物のコストアップにつながる。
【0062】
そこで、本実施形態では、人間の視覚特性に適合した最適な数の色画像データDi[n](以下補正候補と称す)を作成する。
【0063】
図16は、補正候補作成の動作手順を示すフローチャートである。
補正値Zi[n]のR成分加算値をAr、G成分加算値をAg、B成分加算値をAbとするとき、先ず、ステップS1601で初期化を行い、Ar=Ag=Ab=0とする。次に、ステップS1602で、加算値Ar、Ag、Abについて、補正される格子点の色D[n]からの補正値Zi[n]の距離を小さい値から順に変化するように設定し、設定された加算値Ar、Ag、Abを格子点の色D[n]のR、G、B成分に対して加算する。具体的には、変化させる加算値Ar、Ag、Abのステップ数を1とする。すなわち、加算値Ar、Ag、Abを+1、−1、+2、−2、+3、−3、…と変化させる。このとき、格子点の色D[n]からの距離は、1、√2、√3、…と変化する。
【0064】
この場合、ステップS1602では、最初に上記距離が1の場合について、(Ar、Ag、Ab)=(1、0、0)の値が加算される。その後、後述するステップS1603〜S1605の処理を経てステップS1602に戻るときは、(Ar、Ag、Ab)=(0、1、0)の値が加算される。その後、同様にステップS1602に戻るときは、順次(Ar、Ag、Ab)=(0、0、1)、(−1、0、0)、(0、−1、0)、(0、0、−1)が加(減)算される。そして、次に、ステップS1602に戻るときは、上記距離が√2となる補正値であり、戻るごとに順次(Ar、Ag、Ab)=(1、1、0)、(0、1、1)、(1、0、1)、(−1、1、0)、(0、−1、1)、(−1、0、1)、(1、−1、0)、(0、1、−1)、(1、0、−1)、(−1、−1、0)、(0、−1、−1)、(−1、0、−1)の値が加(減)算される。以降、同様にステップS1602に戻るときは、上記距離√((Ar^2)+(Ag^2)+(Ab^2))が小さい値から順次大きい値に変化するよう、加算値Ar、Ag、Abを+2、−2、+3、−3、…と変化させて加算値を設定する。
【0065】
なお、加算値Ar、Ag、Abを変化させる順序は、上例では、Ar、Ag、Abの順序であるがこれに限られないことはもちろんである。格子点の色D[n]からの距離が1の組合せについて総て終了してから次の距離√2の組合せの処理に移るという規則が遵守されれば、どのような順序であってもよい。
【0066】
次に、ステップS1603では、上記のように求めた加算値を成分として有する補正値Zi[Ar、Ag、Ab]によって補正対象である格子点の色D[n]を補正した結果である候補色信号である、Di[n]=D[n]+Zi[Ar、Ag、Ab]を均等色空間(L*、a*、b*)に変換する。なお、RGB空間からL*、a*、b*空間への変換は公知の技術であるためその説明は省略する。
【0067】
次に、ステップSS1604で、D[n]とDi[n]の均等色空間上での差分値(ΔE)を算出する。ここで、差値ΔEは、√(ΔL^2)+(Δa^2)+(Δb^2)と表すことができ、また、Di[n]のLab値を(L1,a1,b1)、D[n]のLab値を(L2,a2,b2)とするとき、
ΔL=L1−L2
Δa=a1−a2
Δb=b1−b2
である。
【0068】
そして、ステップS1605で、上記のように求めたΔEが予め設定した閾値TH1よりも小さいか否かを判断する。ここ閾値TH1は、色差を識別できるか否かを示す閾値であり、人間の視覚特性に基づいて設定する。例えば、特開2000−301807号公報の記載によれば、JISや様々な団体での規定では、0.8〜1.6で「隣接比較で色差を感じられる」とされていることから、本実施形態では閾値TH1を1.6とする。
【0069】
ステップS1605で色差ΔEが閾値よりも小さいと判断された場合は、人間の視覚には同一色として視認されるため、その色差に対応する補正値で補正する意味が無いとして補正候補値とせずにステップS1602に戻る。そして、上述したように、加算値Ar、Ag、Abを変化させてステップS1602〜1605の処理を繰り返す。一方、ステップS1605で、色差ΔEが閾値TH1以上であると判断されたときは、異なる色に視認されることから、ステップS1606で、その色差に対応する補正値を補正候補値とし、この補正値で補正したDi[n]を候補パッチ(候補色)のデータとして登録する。
【0070】
最後に、ステップS1607では、iの値を予め設定した候補色数mと比較し、iの値がmとなるまでステップS1602〜S1606の処理を繰返す。
【0071】
なお、上述のΔEの算出はCIE1976色差モデルを前提に説明したが、修正したCIE1994色差モデルや、より視覚特性に忠実なCIE2000色差モデルで算出するようにしてもよい。
【0072】
このように、本実施形態では、測定用色パッチの色信号に対して均等色空間上で所定の閾値よりも大きい色差をもつ補正候補値のみを生成する。すなわち、測定用パッチの色信号であるDi[n]と、Di[n]から所定距離だけ離れ、かつ、RGBの値を変化させたDi[n]との均等色空間上における色差を算出し、色差ΔEが所定の閾値を越えるDi[n]を補正候補値とする。また、補正候補値の数が、所定数mに達するまで各要素であるRGBの値を変化させ、所定数mに達しない場合には、D[n]とDi[n]との距離を増加させて、RGBの値を変化させる。
【0073】
さらには、プリンタのノズル位置に応じて、色補正値Zi[n]の大きさを変えてもよい。プリンタのヘッド内で位置によって色むらの出方が異なる場合がある。例えば、複数のチップでヘッドが構成されている場合、チップとチップのつなぎ目位置に色むらが過度に発生してしまうことがある。その場合、チップとチップのつなぎ目位置における色補正値Zi[n]の大きさを通常より大きくすれば、強度の大きい色むらにも対応することができる。
【0074】
複数の異なる色補正パッチの中に、第1のテストプリントで用いた色補正処理なしのパッチを同時に配置してもよい。こうすれば、ユーザは色補正処理されたパッチを色補正処理なしパッチと比べることで、その効果を確認することができる。また、S506で複数のパッチの中から少なくとも1つのパッチを選択するが、色むらの強度と色補正値Zi[n]の大きさによっては、色補正処理なしのパッチが最も色むらが目立たないこともありうる。その場合の選択肢として、色補正処理なしのパッチをレイアウトしておけば、より誤差を小さく抑える選択を行うことができる。さらには、プリント試行差を排除するという効果もある。例えば、前述の第1のテストプリントの色補正処理なしのパッチを用いて、複数の色補正処理を行ったパッチと比較することもできるが、プリント試行や用紙が異なるとパッチの色が異なってしまう場合がある。その課題を解決する方法として、色補正処理なしのパッチを同時にプリントする方法が有効になる。
【0075】
S505においては、S504で作成された第2の画像データを、記録媒体にプリントする(第2の出力手段)。これを第2のテストプリントと呼ぶ。この第2のテストプリントは図8のようになり、ユーザはS503で指定した位置の色むらの色が、複数の色補正処理によって変化していることを確認することができる。
【0076】
S506においては、第2のテストプリントの複数あるパッチの中から最も色むらが低減されたものをユーザが目視で判断し、その色補正番号を少なくとも1つ指定する。これを行うアプリケーションのユーザインターフェイスを図9に示す。ホストPC300は、ディスプレイ306に各色補正パッチを表示させる。例えば、m個ある色補正パッチの中から、i番目の色補正が最も色むらが低減できた場合、図7で指定したノズル位置において「補正i」を指定する。図8においては、「補正3」が色むらが低減されているため、図9において「補正3」の「ノズル位置3〜4」をカーソルで選択すればよい。もしくは、図9のようなカーソルではなく、S503と同様に色補正と位置に番号を振り、その番号で指定してもよい。また、色むらの低減度合いが同程度のものが2つあれば、それら2つを指定してもよい。第2の受信手段としてのホストPC300は、選択された色補正処理の情報を受信し、これを認識する。
【0077】
一方、どの色補正パッチも色むらが低減できなかった場合は、色補正パッチの中から最も効果があったものを少なくとも1つ選択する。そして、そのパッチを基準に第2のテストプリントを再度行う。すなわち、S504に戻って、再度第2の画像データを作成する。これを第3の画像データとし、このプリントを第3のテストプリントと呼ぶ。
【0078】
このとき選択された色補正パッチは、他の色補正パッチに比べて色むらが少なくとも低減されていることになる。言い換えれば、選択されなかった他の色補正パッチは、色補正値Zi[n]の大きさが大き過ぎたことになる。そこで、第3の画像データを作成する際は、第2の画像データに比べて色補正値Zi[n]の大きさを小さくすればよい。例えば、第2の画像データで作成された色補正値Zi[n]の大きさを半分にする。こうすることで、第3の画像データの中で、色むら低減を選択する範囲を狭めていく。すなわち、本処理を収束させて、色むらが低減できる色補正パッチを絞っていくことができる。
【0079】
また、第3のテストプリントでも色むらが低減できなかった場合は、上記処理フローを繰り返して、第4以降のテストプリントを行っていけばよい。
【0080】
ところで、上記では第2のテストプリントで色補正値Zi[n]の大きさが大きいために、色むらが低減できなかった場合の処理フローを記載した。しかし、発生した色むらの強度が大きいために、第2のテストプリントの色補正値Zi[n]の大きさが小さくて色むらが補正できないという場合もある。その場合は、逆に第3のテストプリントで色補正値Zi[n]の大きさを大きくしないといけない。その際、第3のテストプリントを行うときにユーザインターフェイス上で色補正値Zi[n]の大きさを指定させればよい。この値を元に第3のテストプリントの画像を作成することで、効率的に色むらを低減させる色補正パッチを作ることができる。
【0081】
S507においては、S506で選択された色補正処理に基づいて、MCS処理部404に用いる変換テーブルの複数のテーブルパラメータのうち、ノズル位置Xに対応するテーブルパラメータを変更する。これにより、ノズルのインク吐出特性に応じて色むらを低減できるテーブルパラメータを作成することができる。S506の第2のテストプリントで複数の色補正パッチが指定された場合は、例えばそれらの平均を取った色補正処理を施せばよい。詳しくは、複数指定された色補正パッチのうち、1つ目の色補正パッチはRGB値を(0、0、10)だけ色補正する処理であり、2つ目の色補正パッチはRGB値を(0、10、0)だけ色補正する処理だったとする。その場合、最終的に決定する色補正処理は、RGB値を平均化した(0、5、5)としてもよいし、これら2つのベクトルを取って(0、10、10)としてもよい。図8のような有限数の色補正パッチで色むらを正確に低減するためには、このように複数の色補正パッチを同時に指定する加算的な方法を行うことが有効となる。新しく作成されたテーブルパラメータは、MSC処理部404にセットされる。各格子点のテーブルパラメータは、ノズル位置毎にその格子点に対応させてメモリに記憶される。この時格納されるメモリは、本実施形態ではホストPCのHDD303とするが、プリンタ本体に用意された不揮発性のメモリであってもよい。いずれにしても、作成したテーブルパラメータが、電源OFFしたタイミング等で失われたりしないように取り扱われるのが好ましい。
【0082】
S508においては、新しいテーブルパラメータがセットされたMSC処理部404を用いて、任意の画像データをプリントする。本工程は、通常の記録動作の際に、図4(a)に示す一連の画像処理に従って画像処理アクセレータ316が行う工程である。
【0083】
最初に、画像処理アクセレータ316は、デバイス色画像データD[X](第1の色信号)に対し、新たに作成したテーブルパラメータを用いて、色補正処理をする。続いて、画像処理アクセレータ316は、得られたデバイス色画像データDi[X](第2の色信号)に対し、インク色変換処理部405、HS処理部406、TRC処理部407、量子化処理部408による、処理を施す。そして得られた2値データに従って、出力部409によって記録用紙106にインクドットを記録する。
【0084】
図11(a)および(b)は、図5のS508で記録された画像例を説明する図である。図11(a)は、図10(a)と同様、シアンおよびマゼンタの記録ヘッド102、103におけるノズルの吐出量特性を示す。一方、図11(b)は、本実施形態のMCS処理を行った結果得られるドットの記録状態を、図10(b)で示したHS処理のみを行った結果得られる記録状態と比較して説明するための図である。HS処理のみを行った図10(b)の状態でシアンの色身が強いと判断された第nエリアについては、D[n]よりもシアンの色味が削減されたDi[n]が生成されるようなMCS処理が行われる。その結果、図10(b)で示したHS処理のみを行った結果の記録状態よりも、シアンドット10624の数が低減されている。吐出量のばらつきなどに起因して、どうしてもある程度の色むらは発生するが、色むらが出ない色に十分近い色となる。
【0085】
以上説明したように、本実施形態は、色むら傾向が大きく変化する色(R、G、Bの組)について記録媒体に測定用色画像(パッチ)を記録し、ユーザが目視で色むらが発生する色とノズル位置を指定し、その結果に基づいてテーブルパラメータを求める。一般に、色むら傾向とは、(1)記録する色そのもの、および(2)記録媒体に対する各色インクの記録特性、の両方に依存する。(1)については、例えば、同じように吐出量のばらつきがあっても、レッドよりもブルーの色むらの方が目立ちやすい、というようなことである。また、(2)については、吐出量のほか、吐出方向、ドットの形状、浸透率、記録媒体の種類等のように、ドットの大きさや濃度、また重複されたドットにおける各インク色の発色など、に影響を与える要素のことを示す。
【0086】
なお、色むら量は、その色を記録するのに用いられるインク色の記録特性の組み合わせに依存するものであって、用いられないインク色の記録特性には依存しないことは明らかである。つまり、関連するインク色の種類と数は画素毎に異なり、画素によっては1つのインク色しか関連せず、色むら量が発生しない場合も有り得る。
【0087】
また、以上では、同一のエリアに含まれるマゼンタの4つのノズルが総て標準より大きな吐出量である場合を例に説明したが、1つのエリアの中で各ノズルの吐出特性がまちまちであることは十分あり得る。このような場合であっても、同一エリアにおける平均の色むら量を取得し、この色むらを4つのノズルの全てによって補正するような処理を行えば、上述した効果を得ることが出来る。
【0088】
記録装置で用いる各インク色の単色で表現できるデータについては、既にHS処理によって濃度が調整されているので、色むらは発生しない。よって、当該色については、MCS処理部404による補正が必要なくなる。このような状態を、測定色空間とデバイス色空間が完全に一致していた場合を例に、以下に具体的に説明する。
【0089】
測定色空間とデバイス色空間が完全に一致していた場合、色信号(R、G、B)=(0、255、255)は、インク色変換処理部において(C、M、Y、K)=(255、0、0、0)に変換される。シアン単色(C信号)についてはHS処理の一次変換によってすでに適切な濃度調整が行われているので、HS処理で調整された以上にシアンデータを変化させたり、他色データを追加したりしないほうがよい。すなわち、このようなデータを有する場合には、指定された色むらエリアに対する補正値は、(0、0、0)とするのがよい。マゼンタ100%データ(R、G、B)=(255、0、255)についても、同様である。これに対し、ブルー100%(R、G、B)=(0、0、255)については、記録装置で用いる単色インクで表現できるデータではなく、シアンインクとマゼンタインクの組み合わせによって表現される。よって、図3を用いて既に説明したとおり、HS処理を行っても色むらが発生する可能性はある。このため、図10(b)に示す例では、
Zi[n]≠(0、0、0)
となり、MCS処理によって適切な補正が行なわれる。
【0090】
このように、RGBの三次元空間においては、MCS処理が必要とされる格子点や、必要とされない格子点が存在し、補正の程度も信号値(格子点の位置)によって様々である。従って、色空間の全域で色むらを抑制したい場合には、全てのRGB値について、MCS処理の補正信号値を用意することが望まれる。しかしながら、全てのRGBの組み合わせでパッチを記録したり測色を行ったり、補正値の算出を行なったり、得られた補正値を記録する領域を用意したりすると、処理の負荷が増大し、メモリの大容量化や処理時間の増大化が招致される。よって、本実施形態のように、RGB空間において特に色むらの補正が必要とされるいくつかの色を選択し、当該色に相当する信号値で測定用色画像(パッチ)を記録し、それぞれの等価補正値を取得してテーブルを作成するのが好ましい。ただし、特に色むらの傾向が大きい色が限定されないような場合には、例えば図12に示すように、RGB空間において等間隔に座標を取った27個の格子点それぞれについて、補正値を求める形態であってもよい。いずれにしても、幾つかの特定色信号についてパッチを記録し、そのパッチから得られる補正値をもとにテーブルパラメータを作成すればよい。このようにすれば、実際に画像を記録する際には、複数の飛び飛びのパラメータ情報から補間処理を行って所望の信号値に対応するパラメータを用意することが出来る。
【0091】
上記一連のアプリケーション処理は、図2のホストPC300で行うことを前提に説明を行ったが、例えばS501〜S507の処理はホストPC300以外の外部PCで行ってもよい。
【0092】
上述したように、本発明はMCS処理部404においてRGB信号値で入出力を行ってきた。RGB信号値で制御を行うことによるインクジェットプリンタ固有のメリットが3つあり、以下にそれらを説明する。
【0093】
1つ目のメリットは、データ容量を縮小できる点である。インク色信号で処理を行った場合、少なくともCMYKの4つの信号値が必要になる。一般的にインクジェットプリンタではその他にCより薄いライトシアン(Lc)、Mより薄いライトマゼンタ(Lm)などがある。これだけで6色のインク、すなわち6つの信号値が必要になる。さらには、インクジェットプリンタによってはグレー(Gr)、レッド(R)、グリーン(G)などのインクがあり、これらを合わせると全部で9色のインクが存在することになる。上述したとおり、MCS処理部404ではLUTで処理を行っているため、インク色信号で処理を行うとその組み合わせ、すなわちデータ容量が膨大に増えてしまう。インクジェットプリンタはインクの浸透によって発色が異なるので、その発色特性は非線形となる。そのため、三次元LUTの格子点間隔も細かくする必要があり、その結果格子点数が増えてしまう。上記のように、色数(次数)が増えると、格子点数(すなわちデータ容量)が指数関数的に増えてしまうことになる。加えて、MCS処理部404ではノズルエリア毎にテーブルパラメータを保持するため、システム負荷がさらに増えてしまう。例えば、8bit(1Byte)信号値のLUTを考える。1色に対して17格子点を用意した場合、RGBのLUTは17の3乗で4913点の格子点が必要になるため、1Byte×3信号値×4913点=約15kByteのLUTとなる。ところが、CMYKの4色だと、LUTは17の4乗で83521点の格子点が必要となり、1Byte×4信号値×83512点=約334kByteが必要となってしまう。つまり、色数が1つ増えるだけで、上記の例では約22倍もデータ容量が増えてしまうことになる。ちなみに、もし仮にノズルエリアが100個あれば、CMYKの4次元LUTは最終的に約33MByteのデータ容量となる。本発明はインクの吐出制御を行う技術であり、インク色信号を直接制御することが考えられるが、本実施形態においては、データ容量を縮小するというメリットを考慮して、MCS処理部404をRGBの3つの信号値で行った。
【0094】
2つ目のメリットは、インク量飽和による不測の事態を回避できる点である。インク色信号のLUTを本処理で変更してしまうと、記録媒体に対するインクの浸透に影響が及んでしまう。インクジェットプリンタは、記録媒体に応じてインクの打ち込み量が決まっている。しかし、S505で第2のテストプリントを行う場合など、パッチによってはインク色信号値が従来値より大きく変更されてしまい、インク量が記録媒体の飽和量をオーバーしてしまうことがある。その結果、プリントされた記録媒体上のインクが通常よりも乾燥せずにプリンタから出力されてしまうことになる。このことにより、ユーザの手を汚すことになったり、インクジェットプリンタ本体の内部部品を汚してセンサーが正常に作動しなくなったり、ひいてはプリンタの故障にもつながってしまう。そのため、インクの吐出量を制御するCMYK信号値よりも、それとは独立したRGB信号値を制御することで、こうした課題を回避することができる。本実施形態においては、誤って上記のような事態を起こさないよう、MCS処理部404をRGBの3つの信号で行った。
【0095】
3つ目のメリットは、記録される画像の粒状感を低減できる点である。一例として、シアンの色相における濃度値0からシアン濃度最大値へのグラデーション(薄いシアンから濃いシアン)のインク使用量を考える。図13において、Lcインクの打ち込み曲線を「Lcインク曲線1」、Cインクの打ち込み曲線を「Cインク曲線」とする。濃度が0の状態からLcインクの打ち込み始まり、その量を徐々に増やしていく。続いて、Lcインクの打ち込み量を減らしていき、その分Cインクの打ち込み量を増やしていく。こうして、シアンのグラデーションを再現することができる。このとき、Lcインクの打ち込み量が打ち込み限界(飽和量)に達した状態、すなわちLcインクでシアン色を濃くした状態でCインクを打ち込めば、粒状感を低減することができる。こうしたインクジェットプリンタの特性から、Lcインク使用量を多くするほど粒状感の低減に効果がある。ここで、本発明では、S505の第2のテストプリントで、S503で指定された色のパッチに対して、濃度を変化させたパッチをプリントする。しかしその際、S503で指定された色のパッチが図13の点Aだと、それより濃度の高いパッチをCMYK信号値で作成するには、Lcインク打ち込み量を「Lcインク曲線1」から「Lcインク曲線2」に上げなければならない。そして、この時点で打ち込み限界を超えてしまうことになる。逆に、インクの打ち込み量を変動させつつ、打ち込み量の飽和を防ぐためには、Lcインク打ち込み量は予め下げておかなければならない。すなわち、「Lcインク曲線3」にしなくてはならない。ところが「Lcインク曲線3」はLcインク使用量が少なく、粒状感が目立ってしまうことになる。ここで本発明のメリットとして、粒状感低減のメリットを考慮して、CMYK値ではなくRGB信号値で、「Lcインク曲線1」を用いて第2のテストプリントを作成する。色補正パッチを作成する際に、例えば点Aを点Bに変換することで、インク打ち込み条件を変えることなく第2のテストプリントを作成することができる。
【0096】
(変形例1)
図4(b)は、本実施形態に係る、インクジェットプリンタにおける画像処理部の構成の別例を示すブロック図である。図4(b)において、符号401、405〜409で示す各部は、図4(a)において同じ符号で示すそれぞれの部と同じであるためそれらの説明を省略する。本変形例が、図4(a)に示す構成と異なる点は、入力色変換処理部とMCS処理部による処理を一体の処理部として構成した点である。すなわち、本変形例の入力色変換処理&MCS処理部411は、入力色変換処理とMCS処理の機能を併せ持つ処理部である。
【0097】
具体的には、入力色変換処理&MCS処理部411は、入力色変換処理部のテーブルとMCS処理部のテーブルを合成した1つのテーブルを用いる。すなわち、このテーブルは、sRGB色空間の色信号に対して色補正処理をするとともに、sRGB色空間とは異なるRGB色空間の色信号に変換するのに用いられる。これにより、入力部401からの入力画像データに対して、直接色むらの補正処理を行い、色むらを低減したデバイス色画像データを出力することができる。
【0098】
図14は、入力色変換処理&MCS処理部411で用いるテーブルのパラメータを生成する処理と、記録データを生成する際の画像処理における、上記テーブルを用いたMCS処理をそれぞれ示すフローチャートである。
【0099】
図14は、CPU311が実行する、三次元LUTのパラメータを生成する処理である。図5のフローチャートと異なる点は、ステップS1402およびステップS1405およびステップS1407の処理である。
【0100】
ステップS1402では、入力色変換処理で用いられるLUTをMCS処理部411で用いられるLUTと合算させている。このようにして第1の実施形態と同様に、インク色変換処理部405、HS処理部406、TRC処理部407、量子化処理部408を経て出力部409で、測定用色画像として記録用紙106に記録される。
【0101】
ステップS1405、S1406も同様に、入力色変換処理で用いられるLUTをMCS処理部411で用いられるLUTと合算させている。
【0102】
以上説明した変形例1によれば、入力色変換処理&MCS処理部411で合算したLUTを用いて第1の実施形態と同じ処理を行うので、第1の実施形態と同様に色むらを低減することができる。そして、1つのLUTで一括して変換しているので、第1の実施形態よりもLUTのために用意する領域を削減したり、処理速度を向上させたりすることが可能となる。
【0103】
(変形例2)
図4(c)は、本実施形態の変形例2に係る画像処理部の構成を示すブロック図である。
【0104】
本変形例のMCS処理部のテーブルパラメータの生成およびMCS処理部の処理は、図5と同じであり、異なるのはMCS処理部404の処理を、入力色変換処理部403の処理の前に実施することである。このことにより、モジュールの独立性が向上する。例えば、MCS処理部を非搭載の画像処理部に対する拡張機能として提供できるようになる。また、ホストPC側に処理を移すことも可能となる。
【0105】
(変形例3)
図4(d)は、変形例3に係る画像処理部の構成を示すブロック図である。同図に示すように、本変形例は、図4(a)〜(c)では用意したHS処理部406を省いた形態になっている。
【0106】
本変形例のMCS処理部のテーブルパラメータの生成およびMCS処理部の処理は、図5と同じであり、異なるのはHS処理部におけるヘッドシェーディングを実施しない点である。すなわち、本変形例では、MCS処理部のテーブルパラメータは、上記実施形態や変形例のように、HS処理後のデータを基に作成されるものではない。本変形例においては、図5で示したフローチャートに従って、MCS処理部のテーブルのパラメータを生成したり、画像処理を行ったりすることが出来る。
【0107】
図15(a)および(b)は、本変形例における測定用色画像の記録状態を説明するための図である。図15(a)は、図3(a)に示した例と同様、マゼンタの記録ヘッド103のノズルのうち第2エリアに相当する4つのノズルが標準より多い吐出量となっている例を示している。本変形例では、ブルーを示す画像データ(K、C、M、Y)=(0、255、255、0)に、HS処理が施されていないので、図15(b)に示すようなブルーの測定用色画像が記録される。すなわち、吐出量が標準より多いノズルを含む第2エリアであっても、マゼンタドットとシアンドットは同じ数だけ記録される。結果、第2エリアにおいて、マゼンタよりの色ずれが生じる。
【0108】
このようなパッチを測色した結果、本変形例のMCS処理部404のテーブルパラメータは、マゼンタ色を減少させるような補正値が生成される。このような補正を行うことにより、HS処理部を含まない本変形例においても、ブルーデータを記録する際に、図11(b)に示すような記録状態を得ることが可能となり、色ずれを低減することが可能となる。
【0109】
また、HS処理部を設けない本変形例においては、HS処理用のテーブルを用意する必要がなくなり、HS処理のための「パターン記録」、「測色」、「補正パラメータ演算」などの処理が必要なくなる。その結果、メモリを低減しHS処理に係るタイムコストを低減することが可能となる。
【0110】
なお、これまで第1の実施形態およびその第1〜第3変形例を説明してきたが、それぞれの処理内容についてはあくまで一例であり、本発明の効果である色むらの低減が実現できる構成であれば、どのような構成をも用いることができる。例えば、エリア間の相対的な色むらを低減することが出来れば、本発明が課題とするような色むらは目立たなくなるので、必ずしも全ての色むらを、周囲の色むらでない領域に近づけるような補正を行わなくても良い。例えば、パッチ内の全領域を任意の目標色になるよう補正しても良い。
【0111】
また、以上の実施形態では、4つのノズルによって規定される領域を1つのエリアとし、MCS処理を行う最小単位として設定したが、無論本発明はこのような単位に限定されるものではない。より多くのノズルで規定される領域を一単位としてもよいし、1ノズルずつMCS補正が行なわれるようにしても構わない。更に、個々のエリアに含まれるノズル数は必ずしも同数でなくても良く、個々のエリアに含まれるノズル数をデバイスの特性に応じて適宜設定してもよい。
【0112】
更に、上記実施形態では、RGB形式で入力された画像データに対しMCS処理などを行った後、記録装置で用いるインク色に対応したCMYK形式の画像データに変換する例で説明したが、無論本発明はこのような形式限定されるものではない。MCS処理の対象となる画像データは、RGB形式のほか、L*a*b*、Luv、LCbCr、LCHなど、いずれの形式であっても構わない。
【0113】
[第2の実施形態]
図17は、第2の実施形態に係る複数の補正候補値の決定処理の手順を示すフローチャートであり、第1実施形態に係る図16に示す補正候補値を決定する処理と同様の処理を示している。
【0114】
本実施形態の図16に示す処理と異なる点は、ステップS1705の判断で用いる閾値を、色むらが生じている色に応じて異ならせる点である。すなわち、本処理で用いるCIELab色空間は均等色空間であるが、視覚特性上は色の弁別域に偏りがある。この点に関する、MacAdamの偏差楕円やNickersonの色差式は、例えば、「新編 色彩ハンドブック、第二版(日本色彩学会編:東京大学出版会)」において知られているところである。
【0115】
図17のステップS1705に示すように、色むらが発生している色D[n]に応じて等色と知覚される弁別閾値TH1[D[n]]が設定される。すなわち、ステップS1705において、算出したΔEを予め設定した閾値TH1と比較するのではなく、色D[n]に応じた閾値TH1[D[n]]と比較して等色に見える範囲か否かを判断する。
【0116】
すなわち、本実施形態では、閾値TH1をパッチの色に応じて変化させて、パッチの色が無彩色近傍領域においては、複数の補正候補値の間の距離が相対的に小さくなるように、高彩度部領域においては、無彩色近傍領域に比べて相対的に大きくなるように、複数の補正候補値を生成する。
【0117】
本実施形態によれば、実験的に色ごとの閾値を設定できるので、視覚的に色差に敏感となる無彩色近辺を細かく設定し、鈍感となる高彩度部を粗く設定することができる。なお、このTH1[D[n]]は、予めLUT(ルックアップテーブル)として設定しておく。すなわち、無彩色近傍領域においては、複数の補正候補値の間の距離が相対的に小さくなるように、高彩度部領域においては、無彩色近傍領域に比べて相対的に大きくなるように、複数の補正候補値を生成する。
【0118】
[第3の実施形態]
図18は、第3の実施形態に係る複数の補正候補値の決定処理の手順を示すフローチャートであり、第1の実施形態に係る図16に示す補正候補値を決定する処理と同様の処理を示している。
【0119】
本実施形態が図16に示す処理と異なる点は、ステップS1804の補正候補値による候補色の色差を求める処理である。図16に示す実施形態では、補正対象の色D[n]と、人間の視覚特性に基づく所定の閾値以上の色差がある色を候補色として設定した。これに対し、本実施形態は、候補色同士の色差も所定値以上離れた色を候補色として設定する。すなわち、ステップS1804では、Di[n]とD[n]の差分、すなわち、ステップS1602で求めた補正候補値Zi、および、この補正候補値で補正された候補色Di[n]と既に登録された各候補色との差分を各々算出する。そして、その中から差分(色差)の最小の色差(ΔEmin)を決定する。そして、次のS1805では、ΔEminとTH1とを比較して等色内か否かを判断する。すなわち、本実施形態では、Di[n]とD[n]との間の均等色空間上の色差が所定の閾値を越え、かつ、複数のDi[n]間の均等色空間上での色差が所定の閾値を越えるように、Di[n]を生成する。
【0120】
図16に示す処理では、補正対象である色むらが生じている色とは異なる候補色を設定するが、候補色同士を比較するとそれぞれが等色内の色であることがある。すなわち、似た色が候補色として存在しているため、ユーザが選択に迷うことも考えられる。本実施形態では、候補色総てが相互に所定の色差を有して登録されているために、より効率的な候補色の設定が可能になる。
【0121】
[第4の実施形態]
図19は、第4の実施形態に係る複数の補正候補値の決定処理の手順を示すフローチャートであり、第1の実施形態に係る図16に示す補正候補値を決定する処理と同様の処理を示している。
【0122】
本実施形態が図16に示す処理と異なる点は、ステップS1907の処理である。すなわち、図16に示す処理では、所定数の候補色が登録されると処理を終了していたが、本実施形態では、候補色の数で判断するのではなく、予め設定していた候補色の範囲をカバーできたか否かによって判断する。
【0123】
図19のステップS1907では、色むらの生じている色D[n]および登録した候補色Di[n]をそれぞれ中心とした半径TH1の球体の体積を算出し、総てを加算(但し重なり部は除去)した総体積が所定値以上か否かを判断する。この総体積は、使用者が候補色の中から選択可能な色の領域に相当する。ある一定以上の体積を占めた場合には補正可能と判定して本処理を終了する。
【0124】
[第5の実施形態]
図20は、第5の実施形態に係る複数の補正候補値の決定処理の手順を示すフローチャートであり、第1の実施形態に係る図16に示す補正候補値を決定する処理と同様の処理を示している。
【0125】
本実施形態が図16に示す処理と異なる点は、ステップS2005の処理である。本実施形態は、補正する位置ごとに発生している色むらの乖離度合いの強弱を指定できる例に関するものである。
【0126】
図20のステップS2005では、補正候補値に係るΔEと閾値との比較をするが、本実施形態では、この閾値TH1[H]を指定された色むらの強弱(程度)に応じて異ならせる。すなわち、視覚的な弁別閾値に基づいてΔEが所定値以内の候補色(候補パッチ)を数多く増加させることは効率的ではない。色むらの強弱において、例えば「強」と指定された色むらに関してΔEが1.6前後の「かすかな違い」に相当する候補色を多数記録しても非効率である。この点から、「強」と指定された色むらに関してはTH1[H]を3.0程度に大きくすることにより、先ず粗い間隔で候補色の出力が可能になる。
【0127】
また、乖離度合いを使用者が登録する方式も有効である。すなわち、乖離度合いは感覚量であるため、ユーザごとに異なることが多い。画像処理装置を使用するユーザが常に同一者であれば乖離度合いをカスタマイズして設定しておくことが有効である。
【0128】
[その他の実施形態]
以上述べた実施形態およびその変形例では、Ar、Ag、Abを絶対値の小さい順に加減算してΔEを算出するものとしたが、本発明はこの方法以外にも適用できることはもちろんである。
【0129】
例えば、Lab空間上でD[n]から所定の距離を設定し、所定座標に位置する値(仮に、L1、a1、b1とおく)をRGB空間の値に変換して、変換値に最も近いRGB値を探索していく方法も有効である。この方法では、所定座標の取り方に自由度を持たせることができる。すなわち、前述した実施形態では視覚特性に基づき候補色(パッチの色)と補正対象の色とのΔEを閾値と比較をすることにより候補色として設定するか否かを判断するものである。すなわち、色空間において上記補正対象の色D[n]からの距離が一定の球内に含まれるか否かで判断するものである。これに対し、本変形例では、D[n]からの距離を、D[n]に依存して自由に設定できるために非球体にすることが可能となる。
【0130】
すなわち、人間の知覚特性として、Lab空間でLの変化量がabの変化量に比べて敏感である。すなわち、ΔEが1.6以内であってもΔLが0.4以上であれば視覚的に色むらとして知覚されることがある。本変形例では、自由に座標を設定できることから、L軸方向の間隔を狭く設定し、a軸、b軸の間隔をL軸に比較して粗く設定しておくことも可能となる。すなわち、L軸方向である明度方向において、複数の補正候補値の間の距離が相対的に小さく、a軸、b軸で規定される色相彩度方向においては、明度方向に比べて、相対的に大きくなるように、補正候補値を生成することができる。
【符号の説明】
【0131】
403 入力色変換処理部
404 MCS処理部
405 インク色変換処理部
406 HS処理部
407 TRC処理部
408 量子化処理部
409 出力部
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に記録すべき画像データの各画素が有する所定の色空間の色信号に対して色補正処理をする画像処理装置、画像処理方法および記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
同一の吐出量を吐出する様に設計された複数のインク吐出ノズルは、実際には製造上のばらつきによって実際の吐出量が異なってしまう。したがって、上記複数の吐出ノズルを用いて記録媒体上に均一な記録ドット数で画像形成すると、製造上のばらつき等に起因した濃度ムラを生ずる可能性がある。
【0003】
特許文献1は、この濃度ムラを解決するために、各インク吐出ノズルから吐出されるインク量情報を取得し、このインク量情報に応じて記録ドット数を変調するヘッドシェーディング技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−13674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなヘッドシェーディング技術を用いても、2種類以上のインクを重ねて色再現した場合には、標準と異なる吐出量のノズルで記録した領域の発色が本来記録されるべき色と異なる現象、いわゆる色ずれが生じる。すなわち、ヘッドシェーディング技術だけでは、単色画像の濃度むらは補正されたとしても、2種類以上のインクを重ねて表現される画像においては、複数のノズル間の吐出特性のばらつきに応じて色ずれが生じる可能性がある。複数のノズル間の吐出特性が異なると、記録された領域間において色ずれの程度が異なり、これが、色むらとして認識される。
【0006】
このような色むらの発生箇所を測色機器で測色すると、測色誤差が生じてしまうことがある。例えば、分光測色機は一定のスポット径内の反射光を読み込むことで測色を行っている。しかし、スポット径より幅が小さい領域における色むらは、その色むらの周囲の領域まで分光測色機が読み取ってしまう。このため、色むらを精確に測色することが困難である。また、スキャナのような画像入力機器では、センサーの精度によってはメタメリズムが生じる場合や、入力画像を作成する際のビット数によっては色差が識別できない場合があるなど、人間の見た目の精度を再現できないことがある。
【0007】
本発明の目的は、インクを吐出するノズル間の吐出特性のばらつきに起因して、異なる種類の複数のインクの混色により形成される色画像に生じる色むらを高精度にかつ効率的に低減可能な画像処理装置、記録装置および画像処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る画像処理装置は、記録媒体に記録すべき画像データの各画素が有する所定の色空間の複数の要素からなる色信号に対して色補正処理をする画像処理装置であって、第1のインクと当該第1のインクとは異なる色の第2のインクとを含む複数のインクをそれぞれ吐出する複数のノズル列における前記記録媒体の同一領域への記録に用いられる所定数のノズル毎に割り当てられた複数のテーブルパラメータを有する変換テーブルを記憶する記憶手段と、前記複数のテーブルパラメータのうち、前記各画素の色信号に対応するノズルに割り当てられたテーブルパラメータを用いて当該色信号に色補正処理をする補正手段と、前記複数のノズル列から前記記録媒体の同一領域に少なくとも前記第1および第2のインクをそれぞれ吐出させて、測定用色画像を記録するための信号を出力する第1の出力手段と、前記第1の出力手段により出力された前記測定用色画像の出力の結果に基づく、前記測定用色画像における色補正処理をすべき色補正領域に関する情報を受ける第1の受信手段と、前記測定用色画像の色信号のうち、前記色補正領域に対応する色信号に色補正処理をするための複数の補正候補値を生成する生成手段と、前記複数の補正候補値を用いて複数の異なる色補正処理した複数の異なる色補正画像を前記記録媒体に記録するための信号を出力する第2の出力手段と、前記第2の出力手段により出力された前記複数の異なる色補正画像の出力の結果に基づく、前記複数の異なる色補正画像の中から選択された色補正画像に関する情報を受ける第2の受信手段と、前記選択された色補正画像に対応する色補正処理に基づいて、前記複数のテーブルパラメータの中の、前記色補正領域に対応するノズルに割り当てられたテーブルパラメータを形成する手段と、を有し、前記生成手段は、前記測定用色画像の色信号に対して均等色空間上で所定の閾値よりも大きい色差をもつ補正候補値のみを生成する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ノズル間のインク吐出特性のばらつきに起因して、異なる色の複数のインクにより形成される画像に生じる色むらを、高精度にかつ効率的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタを模式的に示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る記録システムを示すブロック図である。
【図3】(a)〜(c)は、ブルー画像を記録した際に発生する色むら説明する図である。
【図4】(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態およびその変形例にかかる、インクジェットプリンタにおける画像処理部の構成を示すブロック図である。
【図5】図4(a)に示したMCS処理部で用いるテーブルのパラメータを生成する処理と、記録データを生成する際の画像処理における、上記テーブルを用いたMCS処理部の処理をそれぞれ示すフローチャートである。
【図6】測定用色画像のレイアウトを示す図である。
【図7】測定用色画像の色むらの発生領域を指定するためのユーザインターフェイスを示す図である。
【図8】候補色補正画像のレイアウトを示す図である。
【図9】複数の候補色補正画像から使用する色補正画像を選択するためのユーザインターフェイスを示す図である。
【図10】測定用色画像の記録状態を説明するための図である。
【図11】(a)および(b)は、図4(a)のMCS処理部による処理後の画像の一例を説明する図である。
【図12】RGB空間において等間隔に座標を取った格子点を示す図である。
【図13】シアン色相のインク打ち込み量と濃度の関係を示すグラフである。
【図14】図4(b)に示したMCS処理部で用いるテーブルのパラメータを生成する処理と、記録データを生成する際の画像処理における、上記テーブルを用いたMCS処理部の処理をそれぞれ示すフローチャートである。
【図15】(a)および(b)は、図4(d)に示したMCS処理部による処理後の画像の一例を説明する図である。
【図16】本発明の第1の実施形態の補正候補作成の手順を示すフローチャートである。
【図17】本発明の第2の実施形態の補正候補作成の手順を示すフローチャートである。
【図18】本発明の第3の実施形態の補正候補作成の手順を示すフローチャートである。
【図19】本発明の第4の実施形態の補正候補作成の手順を示すフローチャートである。
【図20】本発明の第5の実施形態の補正候補作成の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタ(インクジェット記録装置)を模式的に示す図である。図1に示すように、プリンタ100は、プリンタの構造材をなすフレーム上に記録ヘッド101〜104を備える。記録ヘッド101〜104はそれぞれ、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを吐出するための複数のノズルをx方向に沿って記録用紙106の幅に対応した範囲に配列した、いわゆるフルラインタイプのものである。それぞれのインク色のノズル列のノズル配置の解像度は1200dpiである。
【0013】
記録媒体としての記録用紙106は、搬送ローラ105(および他の不図示のローラ)がモータ(不図示)の駆動力によって回転することにより、図中矢印y方向に搬送される。そして、記録用紙106が搬送される間に、記録ヘッド101〜104それぞれの複数のノズルから記録データに応じてインクが吐出される。これにより、それぞれの記録ヘッドのノズル列に対応した1ラスタ分の画像が順次記録される。このような、搬送される記録用紙に対する各記録ヘッドからのインク吐出動作を繰り返すことにより、例えば、一頁分の画像を記録することができる。なお、本発明を適用可能な記録装置は、以上説明したフルラインタイプの装置に限られない。例えば、記録ヘッドを記録用紙の搬送方向と交差する方向に走査して記録を行う、いわゆるシリアルタイプの記録装置にも本発明を適用できることは、以下の説明からも明らかである。
【0014】
図2は、本発明の一実施形態に係る記録システムの構成を示すブロック図である。同図に示すように、この記録システムは、図1に示したプリンタ100と、そのホスト装置としてのパーソナルコンピュータ(PC)300を有して構成されるものである。
【0015】
ホストPC300は、以下の要素を有している。CPU301は、HDD303やRAM302に保持されているプログラムに従った処理を実行する。RAM302は、揮発性のストレージであり、プログラムやデータを一時的に保持する。また、HDD303は、不揮発性のストレージであり、同じくプログラムやデータを保持する。データ転送I/F(インターフェース)304はプリンタ100との間におけるデータの送受信を制御する。このデータ送受信の接続方式としては、USB、IEEE1394、LAN等を用いることができる。キーボード・マウスI/F305は、キーボードやマウス等のHID(Human Interface Device)を制御するI/Fであり、ユーザは、このI/Fを介して入力をすることができる。ディスプレイI/F306は、ディスプレイ(不図示)における表示を制御する。
【0016】
一方、プリンタ100は、以下の要素を有している。CPU311は、ROM313やRAM312に保持されているプログラムに従い、図4以降で後述する各実施形態の処理を実行する。RAM312は、揮発性のストレージであり、プログラムやデータを一時的に保持する。また、ROM313は不揮発性のストレージであり、図4以降で後述する各実施形態の処理で作成されるテーブルデータやプログラムを保持することができる。
【0017】
データ転送I/F314はPC300との間におけるデータの送受信を制御する。ヘッドコントローラ315は、図1に示したそれぞれの記録ヘッド101〜104に対して記録データを供給するとともに、記録ヘッドの吐出動作を制御する。具体的には、ヘッドコントローラ315は、RAM312の所定のアドレスから制御パラメータと記録データを読み込む構成とすることができる。そして、CPU311が、制御パラメータと記録データをRAM312の上記所定のアドレスに書き込むと、ヘッドコントローラ315により処理が起動され、記録ヘッドからのインク吐出が行われる。画像処理アクセラレータ316は、CPU311よりも高速に画像処理を実行するハードウェアである。具体的には、画像処理アクセラレータ316は、RAM312の所定のアドレスから画像処理に必要なパラメータとデータとを読み込む構成とすることができる。そして、CPU311が上記パラメータとデータをRAM312の上記所定のアドレスに書き込むと、画像処理アクセラレータ316が起動され、所定の画像処理が行われる。本実施形態では、図4以降の各実施形態で後述されるMCS処理部で用いるテーブルパラメータの作成処理をCPU311によるソフトウェア処理により実行する。一方、MCS処理部の処理を含む記録の際の画像処理を画像処理アクセラレータ316によるハードウェア処理によって行う。なお、画像処理アクセラレータ316は必須の要素ではく、プリンタの仕様などに応じて、CPU311によるソフトウェア処理のみで上記のテーブルパラメータの作成処理および画像処理を実行してもよいことはもちろんである。
【0018】
以上説明した記録システムにおいて、複数種類のインクを用いて画像を記録する場合の、複数のノズル間の吐出特性のばらつきに起因して生じる色むらを低減するための実施形態を以下に説明する。
【0019】
図3(a)〜(c)は、従来のヘッドシェーディングを行った状態で、2色のインクの重ね合わせ(混色)により表現されるブルー画像を記録した際に発生する色むらを説明する図である。図3(a)において、102は第1のインクとしてのシアンインクを吐出する記録ヘッド、103は第1のインクとは異なる色の第2のインクとしてのマゼンタインクを吐出する記録ヘッドをそれぞれ示している。同図では、説明および図示の簡略化のため、それぞれの記録ヘッドにおける複数のノズルのうち8つのノズルのみが示されている。また、シアンおよびマゼンタインクによってブルーを記録する場合の色むらを説明するため、シアンとマゼンタの2つの記録ヘッドのみが示されている。
【0020】
シアンインクの記録ヘッド102の8つのノズル10211、10221は、総て標準的な量のインクを標準的な方向に吐出可能であり、記録媒体には同じ大きさのドットが一定の間隔で記録される。一方、マゼンタの記録ヘッド103の8つのノズルについても、吐出方向は全て標準であるが、図中左側の4つのノズル10311は標準の吐出量、右側の4つのノズル10321は標準よりも多い吐出量とする。よって、図中左側の領域(第1ノズルエリア)では、シアンドットと等しい大きさのマゼンタドットが記録されるが、右側の領域(第2ノズルエリア)では、シアンドットよりも大きいマゼンタドットが、シアンドットと等しい一定の間隔で記録される。なお、図3(a)に示すマゼンタインクの記録ヘッド103における右側の4つのノズルを左側より大きいサイズで示してあるが、これは吐出量の違いを分かり易くするためであり、実際のノズルサイズの関係を示しているわけでない。
【0021】
このような吐出量特性を有する記録ヘッドを用いる場合に、従来のヘッドシェーディングによって画像データの補正を行うと、マゼンタノズル10321に対応する画像データは、その値が減少する方向に補正される。その結果、最終的にマゼンタノズル10321が記録するドットの数が、マゼンタノズル10311が記録するドットの数よりも少なく抑えられるように、ドットの記録(1)或いは非記録(0)を定めるドットデータ(2値データ)が生成される。
【0022】
図3(b)は、シアンインクの記録ヘッド102のノズルに対応したシアンドット10611、10621、およびマゼンタインクの記録ヘッド103のノズルに対応したマゼンタドット10612、10622を示している。このうち、マゼンタインクの吐出量が多い4つのノズル10321に対応した領域のドット10622は、ヘッドシェーディングによって、上記対応した領域の画像データが補正された結果、ドットの数が減少したものとなる。図に示す例は、吐出量が多いマゼンタインクのノズル10321から吐出されるインクによって形成されるドットの面積が標準の吐出量のときのドット面積の2倍である例を示している。この場合、ヘッドシェーディングによる補正によって、ドットの数が1/2(4ドット→2ドット)とされる。なお、ドット面積が2倍となるときにドットの数を1/2とするのは説明を簡潔にするためである。実際は、吐出量のばらつきによってドット面積が増す(減少する)ことによる濃度の増加(減少)を抑制して標準の濃度となるようにドットデータの数を定めることはもちろんである。
【0023】
図3(c)は、以上のようにして得られたドットデータに基づき、それぞれの記録ヘッドから記録用紙106上にシアンおよびマゼンタのインクを吐出してブルーの画像を記録した例を示している。図3(c)において、記録用紙106における図中左側の領域には、シアンインクとマゼンタインクが重なって形成される、標準のサイズのブルーのドット10613が記録される。一方、図中右側のマゼンタの吐出量が多い4つのノズル10321に対応する領域には、標準のサイズのシアンドット10623と、シアンインクとマゼンタインクが重なって形成されるブルーのエリア10624とその周囲のマゼンタのエリア10625からなるドットが記録される。
【0024】
このように、図中右側の吐出量が多いマゼンタのノズル10321に対応する、ブルー(のベタ画像)を記録する領域は、次の3種類のドットないしエリアによって構成されることになる。
【0025】
2つの標準サイズのシアンエリア(ドット)10623
標準よりも大きなマゼンタドット中に形成された標準サイズのシアンドットによる、2つのブルーエリア10624
標準サイズのブルーエリア10624の廻りに存在する、2つのマゼンタエリア10625
ここで、上述したように従来のヘッドシェーディングでは、シアンおよびマゼンタの画像データがそれぞれ個別に補正されることによりそれぞれのドットの数が調整される。その結果、2つのシアンエリア(ドット)10623の面積=2つのブルーエリア10624の面積=2つのマゼンタエリア10625の面積となっている。この場合仮に、シアンエリア10623の光吸収特性とマゼンタエリア10625の光吸収特性によって全体として観察される色が、ブルーエリア10624の光吸収特性によって観察される色と同じであれば、この領域全体はブルーエリア10624と同じ色となる。
【0026】
しかしながら、ブルーエリア10624のように、異なる色の複数のインクが重ねて形成される場合、そのエリアの光吸収特性によって観察される色は、複数のインクそれぞれのエリアの光吸収特性を合せて全体として観察される色と異なることが多い。その結果、その領域全体は目標とする標準の色からの色ずれを生じ、結果として、記録用紙106において図中左側半分の領域のブルー画像と、右側半分の領域のブルー画像は異なる色に見えることになる。
【0027】
なお、例えば、大、中、小の3段階のドットによって記録を行う4値の記録装置など、ドットの大きさを変更できる多値の記録装置でも、ノズル間の吐出量のばらつきによってそれぞれのサイズのドットの大きさにばらつきを生じることがある。この場合も、従来のヘッドシェーディングによる補正を施しても、上述と同様の理由によって色むらを生じることがある。従って、2値の記録装置に限らず3値以上の多値記録装置にも本発明を適用することができる。
【0028】
本発明の実施形態は、量子化前の、画像データの各画素の値を規定する色信号に対する補正処理によって、記録画像の色むらを低減する。
【0029】
[第1の実施形態]
図4(a)は、本発明の第一の実施形態にかかる、インクジェットプリンタにおける画像処理部の構成を示すブロック図である。すなわち、本実施形態は、図2に示したプリンタ100の制御、処理のための各要素によって画像処理部を構成する。なお、本発明の適用はこの形態に限られないことはもちろんである。例えば、図2に示したPC300において画像処理部が構成されてもよく、あるいは画像処理部の一部がPC300において構成され、その他の部分がプリンタ100において構成されてもよい。
【0030】
図4(a)に示すように、入力部401はホストPC300から送信された画像データを入力し、画像処理部402へ渡す。この画像処理部402は、入力色変換処理部403、MCS(Multi Color Shading)処理部404、インク色変換処理部405、HS(Head Shading)処理部406、TRC(Tone Reproduction Curve)処理部407および量子化処理部408を有する。
【0031】
画像処理部402において、先ず、入力色変換処理部403は、入力部401からの入力画像データを、プリンタの色再現域に対応した画像データに変換する。入力する画像データは、本実施形態では、モニタの表現色であるsRGB等の色空間座標中の色座標(R,G,B)を示すデータである。入力色変換処理部403は、この各8ビットの入力画像データR,G,Bを、マトリクス演算処理や三次元ルックアップテーブルを用いた処理等、既知の手法によって、3要素から構成される色信号である、プリンタの色再現域の画像データ(R’,G’,B’)に変換する。本実施形態では、三次元ルックアップテーブルを用い、これに補間演算を併用して変換処理を行う。なお、画像処理部402において扱われる8ビットの画像データの解像度は600dpiであり、量子化処理部408の量子化によって得られる2値データの解像度は後述のように1200dpiである。
【0032】
MCS処理部404は、入力色変換処理部403によって変換された画像データに対して色補正処理をする。この処理も後述するように、三次元LUTからなる補正テーブル(変換テーブル)を用いて行う。三次元LUTは、複数のインクをそれぞれ吐出する複数のノズル列における記録媒体の同一領域への記録に用いられる所定数のノズル毎に割り当てられた複数のテーブルパラメータを有する。これら複数のテーブルパラメータのうち、画像データの各画素の色信号であるRGB信号に対応するノズルに割り当てられたテーブルパラメータを用いて当該RGB信号に色補正処理をする。この補正処理によって、出力部409における記録ヘッドのノズル間で吐出特性にばらつきがあっても、それによる上述した色むらを低減することができる。このMCS処理部404の具体的なテーブルの内容およびそれを用いた補正処理については後述する。なお、本実施形態においては、MCS処理部404はRGB信号値を入力し、三次元LUTで補正されたRGB信号値を出力する構成で以下に説明を行っていく。ただし、次に説明するインク色変換処理部405の入力信号値をCMYKとした場合、MCS処理部404でRGB信号値を入力してCMYK信号値を出力とする系も構成することができる。この場合、MCS処理部404ではRGB信号値をCMYK信号値に変換する三次元LUTを保持することになる。また、前記の入力色変換処理部403でCMYK信号値を出力できる場合は、MCS処理部404でCMYK信号値の四次元LUTを保持し、CMYK信号値を入力してCMYK信号値を出力してもよい。
【0033】
インク色変換処理部405は、MCS処理部404によって処理されたR、G、B各8ビットの信号で構成される画像データをプリンタで用いるインクの色信号データで構成される画像データに変換する。本実施形態のプリンタ100はブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを用いることから、RGB信号の画像データは、K、C、M、Yの各8ビットの色信号からなる画像データに変換される。この色変換も、上述の入力色変換処理部403と同様、三次元LUTに補間演算を併用して行う。なお、他の変換の手法として、上述と同様、マトリクス演算処理等の手法を用いることもできる。
【0034】
HS処理部406は、インク色信号の画像データを入力して、インク色ごとにそれぞれ8ビットデータを、記録ヘッドを構成する各ノズルの吐出量に応じたインク色信号の画像データに変換する処理を行う。すなわち、HS処理部406は、従来のヘッドシェーディング処理と同様の処理を行う。本実施形態では、一次元LUTを用いて本HS処理を行う。
【0035】
TRC処理部407は、HS処理された各8ビットのインク色信号からなる画像データに対して、インク色毎に、出力部409で記録されるドットの数を調整するための補正を行う。一般に、記録媒体に記録されるドットの数と、その数のドットによって記録媒体で実現される光学濃度は線形関係にない。よって、TRC処理部407は、この関係を線形にすべく各8ビットの画像データを補正して記録媒体に記録されるドットの数を調整する。
【0036】
量子化処理部408は、TRC処理部407で処理された各8ビット256値のインク色の画像データに対して、量子化処理を行い、1ビットの2値データを得る処理である。この際、本実施形態では、先ず、「0」〜「4」の3ビット5値のインク色ごとのインデックスデータに変換する。このインデックスデータ「0」〜「4」は、0〜4個のドットを1200dpiの解像度の2画素×2画素に配置するパターンに対応している。なお、本発明を適用する上で、量子化408の形態はこの例に限られないことはもちろんである。例えば、8ビットの画像データを、2値化し直接2値データ(ドットデータ)を得る形態でもよい。また、量子化処理方法として、本実施形態は誤差拡散法を用いるが、ディザ法など他の疑似中間調処理を用いてもよい。
【0037】
出力部409は、量子化によって得られたドットデータに基づいて、記録ヘッドを駆動し記録媒体に各色のインクを吐出して記録を行う。出力部409は、具体的には、図1に示した、記録ヘッド101〜104を備えた記録機構によって構成される。
【0038】
図5は、図4(a)に示したMCS処理部404で用いるテーブルのパラメータを生成する処理と、記録データを生成する際の画像処理における、上記テーブルを用いたMCS処理部404の処理を示すフローチャートである。
【0039】
図5において、ステップS501〜S507は、MCS処理部404で用いる三次元ルックアップテーブルのパラメータを生成する処理である。具体的には、S501は、入力部401で入力する画像データを作成する工程である。S502は、入力色変換処理部403〜出力部409を経てプリンタで記録を行う工程である。S503は、ホストPC300でキーボードやマウスを使って色むらの発生領域を指定する工程である。S504は、S503で指定した領域を基に、入力部401で入力する画像データを作成する工程である。S505は、S502同様プリンタで記録を行う工程である。S506は、ホストPC300でキーボードやマウスを使って画像処理を指定する工程である。S507は、MCS処理部404で用いる三次元LUTのパラメータを生成する工程である。本実施形態において、このようなパラメータ生成処理は、プリンタの製造時やプリンタを所定期間使用したとき、あるいは所定量の記録を行ったときに、強制的あるいは選択的に実行される。また、例えば、記録を行うたびに、その動作前に実行するようにしてもよい。すなわち、当該処理はいわゆるキャリブレーションとして行うことができ、これにより、LUTの内容であるテーブルパラメータが更新される。
【0040】
ステップS508は、プリンタで記録を行う際にその記録データ生成のために、画像処理アクセレータ316が、図4(a)に示した画像処理部402の画像処理の一環として実行する工程である。
【0041】
本実施形態においては、MCS処理部404のテーブルパラメータは、HS処理部406のテーブルパラメータが作成されていることを前提に、作成される。このため、本処理が起動されるステップS501の時点では、既にHS処理部406のテーブルパラメータは既知の方法によって生成(更新)されている。HS処理部のテーブルパラメータの生成では、インク色ごとに、記録媒体で表現される濃度のばらつきを抑える。このため、例えば吐出量の比較的大きいノズルは吐出回数を抑えるように、吐出量の比較的少ないノズルは吐出回数を増やすように、パラメータが作成される。よって、例えば図3(a)に示すマゼンタヘッド103のノズル10321については、図3(b)に示すように、ドット数が約半数に抑えられるようなパラメータが作成される。また、シアンヘッド102については、図3(b)に示すように、ドット数が変更されないようなパラメータが作成される。以上のように、本実施形態では、MCS処理部404のテーブルパラメータを生成又は更新するときは、その前にHS処理部406のテーブルパラメータを完成させておく。これにより、MCS処理部404のパラメータ生成のときに、ノズル間の吐出特性のばらつきによる色むらを、MCS処理部404とHS処理部406との双方の処理によって適切に低減することができる。
【0042】
また、本実施形態では、上述したように、MCS処理部404がRGB信号値を入力し、RGB信号値を出力する系として説明される。これに対し、テーブルパラメータを求める処理では、後述されるように、記録媒体に記録される色を扱う処理が存在する。その際に、RGB信号値をL*a*b*値、あるいはCMYK値に変換するLUTなど、標準的な吐出量のときの記録媒体上の色を再現できるパラメータを記録媒体毎に持つことが望ましい。あるいは、RGB信号値を記録媒体上でL*a*b*値に変換する変換式を保持しておいてもよい。これにより、本実施形態において記録媒体上で所望の色を表現するための、入力値の変換値を推定することが可能となる。特に、後述するステップS504の処理において、記録媒体上の色を基準に色変換処理をすることができる。このため、図5に示す処理の前に、記録媒体毎のプリンタプロファイル、もしくはインク色変換処理部405で使用されるLUTを、MCS処理部404で保持しておくことが望ましい。
【0043】
そこで、図5に示す処理の前に、ホストPC300からMCS処理のテーブルパラメータを生成する際に用いる記録媒体を指定する。そして、それに応じてプリンタ本体100のROM313から記録媒体ごとのプリンタプロファイル、もしくはインク色変換処理部405で使用されるLUTを、ホストPC300のRAM302にコピーしておく。記録媒体の指定は、予め用意された記録媒体のリストの中からユーザが手動で選択してもよいし、プリンタ本体100で記録媒体を自動検知し、その結果をホストPC300に転送してもよい。
【0044】
ホストPC300は、S501において、2次色を含む複数色の測定用色画像(パッチ)をレイアウトした画像を作成する。この際、例えば256階調で1677万色のパッチを作成すると膨大なコストがかかる。このため、R、G、Bそれぞれについて、信号値0〜255を、例えば17等分し、17×17×17通りの全ての組合せ(格子点)についてパッチを記録してもよい。もしくは、色むらが気になる色相をユーザが選択して、その色相に含まれるパッチをレイアウトする方法で作成してもよい。つまり、メモリ及び作業時間を縮小するため、上記格子点のうち、吐出特性によって色むらが特に大きく変化しやすい格子点を選択し、これらの格子点に対応するR、G、Bの組についてのみ、パッチを記録するのである。そして、この格子点の1つには、例えば、図3にて説明したブルー画像に対応した、(R、G、B)=(0、0、255)が含まれていればよい。測定用色画像を記録する色(格子点)の選択は、例えば、吐出量に応じて色むらが所定以上大きくなるR、G、Bの組を定め、演算負荷やメモリ容量に応じて、パッチの種類(色信号の組)や数を定めればよい。また、RGB格子点ではなく、上述したプリンタプロファイルやインク色変換処理部405で使用されるLUTを用いて、均等色空間内でパッチが等間隔になるよう画像を作成してもよい。
【0045】
一方、パッチの近傍にノズル位置情報が分かる識別子をパッチに関係付けて付加する。識別子として例えば数字や目盛りを付加するなど、既知の手法を用いてよい。こうして作成された画像を、第1の画像データとする。
【0046】
S502では、S501で作成された第1の画像データをプリントする(第1の出力手段)。これを第1のテストプリントと呼ぶ。この第1のテストプリントのレイアウトの一例を図6に示す。プリント処理が開始されると、図1に示した各記録ヘッドの総てのノズルからインクを吐出して記録媒体にパッチを記録する。パッチを記録する際、選択された数組の画像データ(R、G、B)は、入力色変換処理部403の処理を施された画像データ(以下、デバイス色画像データD[X]という)として、MCS処理部404の処理を経ずに、インク色変換処理部405に入力する。このような経路は、図4(a)においてバイパス経路として破線410で示されている。バイパス経路による処理は、例えば入力値=出力値となるようなテーブルを用意し、デバイス色画像データD[X]はMCS処理部404に入力されるが、Xによらず入力値のまま出力されるような処理が行われてもよい。その後、HS処理部406、TRC処理部407、量子化処理部408にて、通常データと同様の処理を施し、出力部409で記録用紙106に測定用色画像を記録する。この過程で、(R、G、B)で表される測定用色画像の画像データは、インク色変換処理部405によってインクの色信号による画像データ(C、M、Y、K)に変換される。この際、例えば測定用色画像の画像データのひとつに(R、G、B)=(0、0、255)が含まれていれば、その信号値は、(K、C、M、Y)=(0、255、255、0)、すなわち、シアンおよびマゼンタが100%ずつ記録されるデータに変換される。その後、HS処理部406およびそれ以降の処理によって、(K、C、M、Y)=(0、255、255、0)の画像データは、図3(b)に示すドットデータとなって記録される。以下の説明では、説明を簡略化するため、このブルーの測定用色画像の画像データを示す格子点に対応したテーブルパラメータのみについてその作成処理を説明する。ここで、Xとは、図1で示した記録ヘッド101〜104において、x方向における各色のノズルの位置を4つのノズル毎に示す情報である。本実施形態のMCS処理では、このように所定数(4つ)のノズルからなるノズル単位毎に処理を施し、ノズル単位で画像データを補正する。そして、デバイス色画像データD[X]とは、各インク色のXのエリアに配置された4ノズルで記録するべき画像データである。図10(a)および(b)は、上記ステップS502における測定用色画像の記録状態を説明するための図である。図10(a)および(b)において、図3(a)〜(c)に示した要素と同様の要素には同じ符号を付してその説明は省略する。
【0047】
図10(a)は、図3(a)と同様、マゼンタの記録ヘッド103のノズルのうち第2エリアに相当する4つのノズルが標準より多い吐出量である場合を示している。よって、ブルーを示す画像データ(K、C、M、Y)=(0、255、255、0)に、HS処理が施されることによって、図10(b)に示すようなブルーの測定用色画像が記録される。すなわち、吐出量が標準より多いノズルを含む第2エリアに色むらが生じ、第1エリアの標準的なブルーとは異なる発色のパッチが記録される。
【0048】
ユーザはこの記録状態を目視することで、第1のテストプリントから何色の、どのノズル位置に色むらが発生するかを識別することができる。例えば、図6においては、「色2」の「ノズル位置3〜4」に色むらが発生していると識別することができる。
【0049】
ただし、本処理を行う前にMCS処理部404で予めテーブルパラメータが作成されていれば、画像データはMCS処理部404の処理を経て、インク色変換処理部405に入力される。ここで、MCS処理部404で使用されるテーブルパラメータは、本処理に入る前に色むらが発見された時点において更新されたテーブルパラメータである。その場合、上記では図4(a)においてバイパス経路として破線410を使用していたが、MCS処理部404を通ればよい。
【0050】
次に、S503では、ユーザが第1のテストプリントで色むらを確認した色とノズル位置(発生領域)を、アプリケーション上で指定する。すなわち、色むらの発生したパッチと、そのパッチにおける色むら発生領域(色補正処理をすべき色補正領域)を指定する。ホストPC300は、表示手段としてのディスプレイ306に各パッチを表示させる。色むらの発生したパッチと発生領域は、たとえば、マウスや、キーボード等の入力装置を用いて指定可能になっている。第1の受信手段としてのホストPC300は、この指定操作に関する情報を受信し、色補正処理をすべきパッチとその色補正領域を認識する。
【0051】
この処理を行うアプリケーションのユーザインターフェイスを図7に示す。図6に示した第1のテストプリントで「色2」の「ノズル位置3〜4」に色むらの発生領域Pを検出した場合、図7において色むらの該当領域を指定する。その指定方法は、例えば図7で表示された「色2」のパッチ上で、色むらの両端位置(ノズル位置3、4)をカーソルCで指定すればよい。また、色むら発生領域内(色補正領域内)に濃度勾配がある場合は、色むらが最も強く現れる位置、すなわち色むら強度の最大値位置(特徴点)を図7のパッチ上で選択させる手段も設けてもよい。この場合の処理として、S504で行う色補正処理を、最大値位置に近いほど処理度合いを大きく、色むらの両端位置に近いほど処理度合いを小さくする。こうすることで、色むらの中に濃度勾配があっても、色補正処理をノズル位置に応じて変えていくことができる。一方、色むらの色とノズル位置を指定する際に、図7のようなカーソルではなく、色とノズル位置に番号を振り、その番号で色とノズル位置を指定するという方法でもよい。
【0052】
続いて、S504において、S503で指定された色とノズル位置に対して色補正処理を行う。S503で指定された色のみで構成され、指定されたノズル位置に対して複数の異なる色補正処理を施した色補正画像(色補正パッチ)を作成し、これらの色補正パッチをレイアウトした画像データを作成する。色補正パッチの近傍にノズル位置情報が分かる識別子をパッチに関係付けて付加する。これを第2の画像データとする。この際、複数の異なる色補正処理は、第1のテストプリントの色から色空間内で任意の距離だけ離れた点を複数個作成すればよい。この画像データをプリントしたものが図8となる。
【0053】
このステップS504の詳細を説明すると、デバイス色画像データD[X]が(R、G、B)=(0、0、255)である格子点のブルーの測定用色画像は、図1に示したシアンおよびマゼンタの記録ヘッド102および103によって記録される。以下、第nエリアをX=nとする。S503において色むらの傾向が大きく変化する色として指定された色(すなわち格子点)について、指定されたノズルに対応した位置(すなわちエリア[X])ごとにテーブルパラメータを求める。そして、上記指定された格子点以外の他の格子点のテーブルパラメータについては、上記指定された格子点の間の補間によって求める。この補間によって求める方法は公知の方法を用いることができ、その説明は省略する。ここで、各エリア[X]は1200dpiの4ノズル分の領域に対応している一方、画像処理における画素の解像度は600dpiであるので、各エリアXには、x方向に2つずつの画素が対応することになる。
【0054】
S503で指定されたエリア[X]のX値をnとする。このエリア[n]に対応したテーブルは、その格子点の画像データ(R、G、B)からRGB方向それぞれに値を変化させたm個の色補正値Zi[n]をそれぞれデバイス色画像データD[n]に加算して作成する。ここで、添え字iは、異なる複数の色補正処理を行う場合の色補正番号である。例えば、図7で指定された「色2」のR、G、Bがブルー(0、0、255)であった場合、上述したようにしてエリア[n]に対応するブルー(0、0、255)の1つ目の色補正値Z1[n]を(10、0、0)とする。次に、2つ目の色補正値としてZ2[n]を(0、10、0)とする。さらに、3つ目の色補正値としてZ3[n]を(0、0、10)とする。そして、指定された格子点RGBに対して、下記式に従って色補正値Zi[n]を加算し、色補正後のデバイス色画像データDi[X](第2の色信号)を得る。すなわち、第1の色信号D[X]と第2の色信号Di[X]の関係は以下のようになる。
【0055】
色補正後のデバイス色画像データDi[n]=D[n]+Zi[n]
【0056】
本例の場合、色むらとしては指定されていない第1エリアについては、色補正処理は行わない。従って、D[1]は変わらない。つまり、MCS処理における色補正処理は施されないことになる。一方、色むらとして指定された第nエリアについてはZi[n]≠0であり、従って、MCS処理において、Di[n]はD[n]とは色が異なる補正が施される。
【0057】
このようにして作成されたm個のパッチを画像中に並列にレイアウトして、画像データを作成する。上記例はRGB値を基準に色補正を行ったが、例えば均等色空間(L*、a*、b*)に変換して、その中で等間隔になるようm個の色補正されたパッチを作成してもよい。つまり、上述したプリンタプロファイルやインク色変換処理部405で使用されるLUTを用いて、第1の色信号D[X]や第2の色信号Di[X]や色補正値Zi[n]をL*a*b*値やCMYK値に変換して処理を行う。その工程は、まず第1の色信号D[X]のRGB値をプリンタプロファイルでL*a*b*値に変換する。次に、L*a*b*値で表された色補正値Zi[n]を加算し、第2の色信号Di[X]を得る。最後に、プリンタプロファイルを用いて逆演算による補間処理を行えば、L*a*b*値に基づいた色補正ができる。
【0058】
また、色空間の位置に応じて、色補正値Zi[n]の大きさを変えてもよい。例えば、人間の視覚では、グレー近辺においては色の違いを高精度に識別できるので、色補正値Zi[n]の大きさを小さくする。こうすることで、微小な色補正処理を行うことができる。一方、人間の視覚では、明度の低い領域や彩度の高い領域などは色むらをグレー近辺に比べて高精度に識別できないので、色補正値Zi[n]の大きさを大きくしてもよい。
【0059】
すなわち、デバイス色画像データD[X]の色空間座標とは無関係に、RGB空間において予め静的に設定した固定値を加算して色画像データDi[n]を作成してテストプリントした場合には、以下の課題を有する。
【0060】
(1) 色むらが発生している近傍のパッチ数(以下候補色数と称す)が多すぎると最適なパッチを短時間で選択することが困難であり、画像処理装置のダウンタイムが増大する。
【0061】
(2) 候補色数が多すぎるとテストプリントに要する用紙が増加し、相対的に成果物のコストアップにつながる。
【0062】
そこで、本実施形態では、人間の視覚特性に適合した最適な数の色画像データDi[n](以下補正候補と称す)を作成する。
【0063】
図16は、補正候補作成の動作手順を示すフローチャートである。
補正値Zi[n]のR成分加算値をAr、G成分加算値をAg、B成分加算値をAbとするとき、先ず、ステップS1601で初期化を行い、Ar=Ag=Ab=0とする。次に、ステップS1602で、加算値Ar、Ag、Abについて、補正される格子点の色D[n]からの補正値Zi[n]の距離を小さい値から順に変化するように設定し、設定された加算値Ar、Ag、Abを格子点の色D[n]のR、G、B成分に対して加算する。具体的には、変化させる加算値Ar、Ag、Abのステップ数を1とする。すなわち、加算値Ar、Ag、Abを+1、−1、+2、−2、+3、−3、…と変化させる。このとき、格子点の色D[n]からの距離は、1、√2、√3、…と変化する。
【0064】
この場合、ステップS1602では、最初に上記距離が1の場合について、(Ar、Ag、Ab)=(1、0、0)の値が加算される。その後、後述するステップS1603〜S1605の処理を経てステップS1602に戻るときは、(Ar、Ag、Ab)=(0、1、0)の値が加算される。その後、同様にステップS1602に戻るときは、順次(Ar、Ag、Ab)=(0、0、1)、(−1、0、0)、(0、−1、0)、(0、0、−1)が加(減)算される。そして、次に、ステップS1602に戻るときは、上記距離が√2となる補正値であり、戻るごとに順次(Ar、Ag、Ab)=(1、1、0)、(0、1、1)、(1、0、1)、(−1、1、0)、(0、−1、1)、(−1、0、1)、(1、−1、0)、(0、1、−1)、(1、0、−1)、(−1、−1、0)、(0、−1、−1)、(−1、0、−1)の値が加(減)算される。以降、同様にステップS1602に戻るときは、上記距離√((Ar^2)+(Ag^2)+(Ab^2))が小さい値から順次大きい値に変化するよう、加算値Ar、Ag、Abを+2、−2、+3、−3、…と変化させて加算値を設定する。
【0065】
なお、加算値Ar、Ag、Abを変化させる順序は、上例では、Ar、Ag、Abの順序であるがこれに限られないことはもちろんである。格子点の色D[n]からの距離が1の組合せについて総て終了してから次の距離√2の組合せの処理に移るという規則が遵守されれば、どのような順序であってもよい。
【0066】
次に、ステップS1603では、上記のように求めた加算値を成分として有する補正値Zi[Ar、Ag、Ab]によって補正対象である格子点の色D[n]を補正した結果である候補色信号である、Di[n]=D[n]+Zi[Ar、Ag、Ab]を均等色空間(L*、a*、b*)に変換する。なお、RGB空間からL*、a*、b*空間への変換は公知の技術であるためその説明は省略する。
【0067】
次に、ステップSS1604で、D[n]とDi[n]の均等色空間上での差分値(ΔE)を算出する。ここで、差値ΔEは、√(ΔL^2)+(Δa^2)+(Δb^2)と表すことができ、また、Di[n]のLab値を(L1,a1,b1)、D[n]のLab値を(L2,a2,b2)とするとき、
ΔL=L1−L2
Δa=a1−a2
Δb=b1−b2
である。
【0068】
そして、ステップS1605で、上記のように求めたΔEが予め設定した閾値TH1よりも小さいか否かを判断する。ここ閾値TH1は、色差を識別できるか否かを示す閾値であり、人間の視覚特性に基づいて設定する。例えば、特開2000−301807号公報の記載によれば、JISや様々な団体での規定では、0.8〜1.6で「隣接比較で色差を感じられる」とされていることから、本実施形態では閾値TH1を1.6とする。
【0069】
ステップS1605で色差ΔEが閾値よりも小さいと判断された場合は、人間の視覚には同一色として視認されるため、その色差に対応する補正値で補正する意味が無いとして補正候補値とせずにステップS1602に戻る。そして、上述したように、加算値Ar、Ag、Abを変化させてステップS1602〜1605の処理を繰り返す。一方、ステップS1605で、色差ΔEが閾値TH1以上であると判断されたときは、異なる色に視認されることから、ステップS1606で、その色差に対応する補正値を補正候補値とし、この補正値で補正したDi[n]を候補パッチ(候補色)のデータとして登録する。
【0070】
最後に、ステップS1607では、iの値を予め設定した候補色数mと比較し、iの値がmとなるまでステップS1602〜S1606の処理を繰返す。
【0071】
なお、上述のΔEの算出はCIE1976色差モデルを前提に説明したが、修正したCIE1994色差モデルや、より視覚特性に忠実なCIE2000色差モデルで算出するようにしてもよい。
【0072】
このように、本実施形態では、測定用色パッチの色信号に対して均等色空間上で所定の閾値よりも大きい色差をもつ補正候補値のみを生成する。すなわち、測定用パッチの色信号であるDi[n]と、Di[n]から所定距離だけ離れ、かつ、RGBの値を変化させたDi[n]との均等色空間上における色差を算出し、色差ΔEが所定の閾値を越えるDi[n]を補正候補値とする。また、補正候補値の数が、所定数mに達するまで各要素であるRGBの値を変化させ、所定数mに達しない場合には、D[n]とDi[n]との距離を増加させて、RGBの値を変化させる。
【0073】
さらには、プリンタのノズル位置に応じて、色補正値Zi[n]の大きさを変えてもよい。プリンタのヘッド内で位置によって色むらの出方が異なる場合がある。例えば、複数のチップでヘッドが構成されている場合、チップとチップのつなぎ目位置に色むらが過度に発生してしまうことがある。その場合、チップとチップのつなぎ目位置における色補正値Zi[n]の大きさを通常より大きくすれば、強度の大きい色むらにも対応することができる。
【0074】
複数の異なる色補正パッチの中に、第1のテストプリントで用いた色補正処理なしのパッチを同時に配置してもよい。こうすれば、ユーザは色補正処理されたパッチを色補正処理なしパッチと比べることで、その効果を確認することができる。また、S506で複数のパッチの中から少なくとも1つのパッチを選択するが、色むらの強度と色補正値Zi[n]の大きさによっては、色補正処理なしのパッチが最も色むらが目立たないこともありうる。その場合の選択肢として、色補正処理なしのパッチをレイアウトしておけば、より誤差を小さく抑える選択を行うことができる。さらには、プリント試行差を排除するという効果もある。例えば、前述の第1のテストプリントの色補正処理なしのパッチを用いて、複数の色補正処理を行ったパッチと比較することもできるが、プリント試行や用紙が異なるとパッチの色が異なってしまう場合がある。その課題を解決する方法として、色補正処理なしのパッチを同時にプリントする方法が有効になる。
【0075】
S505においては、S504で作成された第2の画像データを、記録媒体にプリントする(第2の出力手段)。これを第2のテストプリントと呼ぶ。この第2のテストプリントは図8のようになり、ユーザはS503で指定した位置の色むらの色が、複数の色補正処理によって変化していることを確認することができる。
【0076】
S506においては、第2のテストプリントの複数あるパッチの中から最も色むらが低減されたものをユーザが目視で判断し、その色補正番号を少なくとも1つ指定する。これを行うアプリケーションのユーザインターフェイスを図9に示す。ホストPC300は、ディスプレイ306に各色補正パッチを表示させる。例えば、m個ある色補正パッチの中から、i番目の色補正が最も色むらが低減できた場合、図7で指定したノズル位置において「補正i」を指定する。図8においては、「補正3」が色むらが低減されているため、図9において「補正3」の「ノズル位置3〜4」をカーソルで選択すればよい。もしくは、図9のようなカーソルではなく、S503と同様に色補正と位置に番号を振り、その番号で指定してもよい。また、色むらの低減度合いが同程度のものが2つあれば、それら2つを指定してもよい。第2の受信手段としてのホストPC300は、選択された色補正処理の情報を受信し、これを認識する。
【0077】
一方、どの色補正パッチも色むらが低減できなかった場合は、色補正パッチの中から最も効果があったものを少なくとも1つ選択する。そして、そのパッチを基準に第2のテストプリントを再度行う。すなわち、S504に戻って、再度第2の画像データを作成する。これを第3の画像データとし、このプリントを第3のテストプリントと呼ぶ。
【0078】
このとき選択された色補正パッチは、他の色補正パッチに比べて色むらが少なくとも低減されていることになる。言い換えれば、選択されなかった他の色補正パッチは、色補正値Zi[n]の大きさが大き過ぎたことになる。そこで、第3の画像データを作成する際は、第2の画像データに比べて色補正値Zi[n]の大きさを小さくすればよい。例えば、第2の画像データで作成された色補正値Zi[n]の大きさを半分にする。こうすることで、第3の画像データの中で、色むら低減を選択する範囲を狭めていく。すなわち、本処理を収束させて、色むらが低減できる色補正パッチを絞っていくことができる。
【0079】
また、第3のテストプリントでも色むらが低減できなかった場合は、上記処理フローを繰り返して、第4以降のテストプリントを行っていけばよい。
【0080】
ところで、上記では第2のテストプリントで色補正値Zi[n]の大きさが大きいために、色むらが低減できなかった場合の処理フローを記載した。しかし、発生した色むらの強度が大きいために、第2のテストプリントの色補正値Zi[n]の大きさが小さくて色むらが補正できないという場合もある。その場合は、逆に第3のテストプリントで色補正値Zi[n]の大きさを大きくしないといけない。その際、第3のテストプリントを行うときにユーザインターフェイス上で色補正値Zi[n]の大きさを指定させればよい。この値を元に第3のテストプリントの画像を作成することで、効率的に色むらを低減させる色補正パッチを作ることができる。
【0081】
S507においては、S506で選択された色補正処理に基づいて、MCS処理部404に用いる変換テーブルの複数のテーブルパラメータのうち、ノズル位置Xに対応するテーブルパラメータを変更する。これにより、ノズルのインク吐出特性に応じて色むらを低減できるテーブルパラメータを作成することができる。S506の第2のテストプリントで複数の色補正パッチが指定された場合は、例えばそれらの平均を取った色補正処理を施せばよい。詳しくは、複数指定された色補正パッチのうち、1つ目の色補正パッチはRGB値を(0、0、10)だけ色補正する処理であり、2つ目の色補正パッチはRGB値を(0、10、0)だけ色補正する処理だったとする。その場合、最終的に決定する色補正処理は、RGB値を平均化した(0、5、5)としてもよいし、これら2つのベクトルを取って(0、10、10)としてもよい。図8のような有限数の色補正パッチで色むらを正確に低減するためには、このように複数の色補正パッチを同時に指定する加算的な方法を行うことが有効となる。新しく作成されたテーブルパラメータは、MSC処理部404にセットされる。各格子点のテーブルパラメータは、ノズル位置毎にその格子点に対応させてメモリに記憶される。この時格納されるメモリは、本実施形態ではホストPCのHDD303とするが、プリンタ本体に用意された不揮発性のメモリであってもよい。いずれにしても、作成したテーブルパラメータが、電源OFFしたタイミング等で失われたりしないように取り扱われるのが好ましい。
【0082】
S508においては、新しいテーブルパラメータがセットされたMSC処理部404を用いて、任意の画像データをプリントする。本工程は、通常の記録動作の際に、図4(a)に示す一連の画像処理に従って画像処理アクセレータ316が行う工程である。
【0083】
最初に、画像処理アクセレータ316は、デバイス色画像データD[X](第1の色信号)に対し、新たに作成したテーブルパラメータを用いて、色補正処理をする。続いて、画像処理アクセレータ316は、得られたデバイス色画像データDi[X](第2の色信号)に対し、インク色変換処理部405、HS処理部406、TRC処理部407、量子化処理部408による、処理を施す。そして得られた2値データに従って、出力部409によって記録用紙106にインクドットを記録する。
【0084】
図11(a)および(b)は、図5のS508で記録された画像例を説明する図である。図11(a)は、図10(a)と同様、シアンおよびマゼンタの記録ヘッド102、103におけるノズルの吐出量特性を示す。一方、図11(b)は、本実施形態のMCS処理を行った結果得られるドットの記録状態を、図10(b)で示したHS処理のみを行った結果得られる記録状態と比較して説明するための図である。HS処理のみを行った図10(b)の状態でシアンの色身が強いと判断された第nエリアについては、D[n]よりもシアンの色味が削減されたDi[n]が生成されるようなMCS処理が行われる。その結果、図10(b)で示したHS処理のみを行った結果の記録状態よりも、シアンドット10624の数が低減されている。吐出量のばらつきなどに起因して、どうしてもある程度の色むらは発生するが、色むらが出ない色に十分近い色となる。
【0085】
以上説明したように、本実施形態は、色むら傾向が大きく変化する色(R、G、Bの組)について記録媒体に測定用色画像(パッチ)を記録し、ユーザが目視で色むらが発生する色とノズル位置を指定し、その結果に基づいてテーブルパラメータを求める。一般に、色むら傾向とは、(1)記録する色そのもの、および(2)記録媒体に対する各色インクの記録特性、の両方に依存する。(1)については、例えば、同じように吐出量のばらつきがあっても、レッドよりもブルーの色むらの方が目立ちやすい、というようなことである。また、(2)については、吐出量のほか、吐出方向、ドットの形状、浸透率、記録媒体の種類等のように、ドットの大きさや濃度、また重複されたドットにおける各インク色の発色など、に影響を与える要素のことを示す。
【0086】
なお、色むら量は、その色を記録するのに用いられるインク色の記録特性の組み合わせに依存するものであって、用いられないインク色の記録特性には依存しないことは明らかである。つまり、関連するインク色の種類と数は画素毎に異なり、画素によっては1つのインク色しか関連せず、色むら量が発生しない場合も有り得る。
【0087】
また、以上では、同一のエリアに含まれるマゼンタの4つのノズルが総て標準より大きな吐出量である場合を例に説明したが、1つのエリアの中で各ノズルの吐出特性がまちまちであることは十分あり得る。このような場合であっても、同一エリアにおける平均の色むら量を取得し、この色むらを4つのノズルの全てによって補正するような処理を行えば、上述した効果を得ることが出来る。
【0088】
記録装置で用いる各インク色の単色で表現できるデータについては、既にHS処理によって濃度が調整されているので、色むらは発生しない。よって、当該色については、MCS処理部404による補正が必要なくなる。このような状態を、測定色空間とデバイス色空間が完全に一致していた場合を例に、以下に具体的に説明する。
【0089】
測定色空間とデバイス色空間が完全に一致していた場合、色信号(R、G、B)=(0、255、255)は、インク色変換処理部において(C、M、Y、K)=(255、0、0、0)に変換される。シアン単色(C信号)についてはHS処理の一次変換によってすでに適切な濃度調整が行われているので、HS処理で調整された以上にシアンデータを変化させたり、他色データを追加したりしないほうがよい。すなわち、このようなデータを有する場合には、指定された色むらエリアに対する補正値は、(0、0、0)とするのがよい。マゼンタ100%データ(R、G、B)=(255、0、255)についても、同様である。これに対し、ブルー100%(R、G、B)=(0、0、255)については、記録装置で用いる単色インクで表現できるデータではなく、シアンインクとマゼンタインクの組み合わせによって表現される。よって、図3を用いて既に説明したとおり、HS処理を行っても色むらが発生する可能性はある。このため、図10(b)に示す例では、
Zi[n]≠(0、0、0)
となり、MCS処理によって適切な補正が行なわれる。
【0090】
このように、RGBの三次元空間においては、MCS処理が必要とされる格子点や、必要とされない格子点が存在し、補正の程度も信号値(格子点の位置)によって様々である。従って、色空間の全域で色むらを抑制したい場合には、全てのRGB値について、MCS処理の補正信号値を用意することが望まれる。しかしながら、全てのRGBの組み合わせでパッチを記録したり測色を行ったり、補正値の算出を行なったり、得られた補正値を記録する領域を用意したりすると、処理の負荷が増大し、メモリの大容量化や処理時間の増大化が招致される。よって、本実施形態のように、RGB空間において特に色むらの補正が必要とされるいくつかの色を選択し、当該色に相当する信号値で測定用色画像(パッチ)を記録し、それぞれの等価補正値を取得してテーブルを作成するのが好ましい。ただし、特に色むらの傾向が大きい色が限定されないような場合には、例えば図12に示すように、RGB空間において等間隔に座標を取った27個の格子点それぞれについて、補正値を求める形態であってもよい。いずれにしても、幾つかの特定色信号についてパッチを記録し、そのパッチから得られる補正値をもとにテーブルパラメータを作成すればよい。このようにすれば、実際に画像を記録する際には、複数の飛び飛びのパラメータ情報から補間処理を行って所望の信号値に対応するパラメータを用意することが出来る。
【0091】
上記一連のアプリケーション処理は、図2のホストPC300で行うことを前提に説明を行ったが、例えばS501〜S507の処理はホストPC300以外の外部PCで行ってもよい。
【0092】
上述したように、本発明はMCS処理部404においてRGB信号値で入出力を行ってきた。RGB信号値で制御を行うことによるインクジェットプリンタ固有のメリットが3つあり、以下にそれらを説明する。
【0093】
1つ目のメリットは、データ容量を縮小できる点である。インク色信号で処理を行った場合、少なくともCMYKの4つの信号値が必要になる。一般的にインクジェットプリンタではその他にCより薄いライトシアン(Lc)、Mより薄いライトマゼンタ(Lm)などがある。これだけで6色のインク、すなわち6つの信号値が必要になる。さらには、インクジェットプリンタによってはグレー(Gr)、レッド(R)、グリーン(G)などのインクがあり、これらを合わせると全部で9色のインクが存在することになる。上述したとおり、MCS処理部404ではLUTで処理を行っているため、インク色信号で処理を行うとその組み合わせ、すなわちデータ容量が膨大に増えてしまう。インクジェットプリンタはインクの浸透によって発色が異なるので、その発色特性は非線形となる。そのため、三次元LUTの格子点間隔も細かくする必要があり、その結果格子点数が増えてしまう。上記のように、色数(次数)が増えると、格子点数(すなわちデータ容量)が指数関数的に増えてしまうことになる。加えて、MCS処理部404ではノズルエリア毎にテーブルパラメータを保持するため、システム負荷がさらに増えてしまう。例えば、8bit(1Byte)信号値のLUTを考える。1色に対して17格子点を用意した場合、RGBのLUTは17の3乗で4913点の格子点が必要になるため、1Byte×3信号値×4913点=約15kByteのLUTとなる。ところが、CMYKの4色だと、LUTは17の4乗で83521点の格子点が必要となり、1Byte×4信号値×83512点=約334kByteが必要となってしまう。つまり、色数が1つ増えるだけで、上記の例では約22倍もデータ容量が増えてしまうことになる。ちなみに、もし仮にノズルエリアが100個あれば、CMYKの4次元LUTは最終的に約33MByteのデータ容量となる。本発明はインクの吐出制御を行う技術であり、インク色信号を直接制御することが考えられるが、本実施形態においては、データ容量を縮小するというメリットを考慮して、MCS処理部404をRGBの3つの信号値で行った。
【0094】
2つ目のメリットは、インク量飽和による不測の事態を回避できる点である。インク色信号のLUTを本処理で変更してしまうと、記録媒体に対するインクの浸透に影響が及んでしまう。インクジェットプリンタは、記録媒体に応じてインクの打ち込み量が決まっている。しかし、S505で第2のテストプリントを行う場合など、パッチによってはインク色信号値が従来値より大きく変更されてしまい、インク量が記録媒体の飽和量をオーバーしてしまうことがある。その結果、プリントされた記録媒体上のインクが通常よりも乾燥せずにプリンタから出力されてしまうことになる。このことにより、ユーザの手を汚すことになったり、インクジェットプリンタ本体の内部部品を汚してセンサーが正常に作動しなくなったり、ひいてはプリンタの故障にもつながってしまう。そのため、インクの吐出量を制御するCMYK信号値よりも、それとは独立したRGB信号値を制御することで、こうした課題を回避することができる。本実施形態においては、誤って上記のような事態を起こさないよう、MCS処理部404をRGBの3つの信号で行った。
【0095】
3つ目のメリットは、記録される画像の粒状感を低減できる点である。一例として、シアンの色相における濃度値0からシアン濃度最大値へのグラデーション(薄いシアンから濃いシアン)のインク使用量を考える。図13において、Lcインクの打ち込み曲線を「Lcインク曲線1」、Cインクの打ち込み曲線を「Cインク曲線」とする。濃度が0の状態からLcインクの打ち込み始まり、その量を徐々に増やしていく。続いて、Lcインクの打ち込み量を減らしていき、その分Cインクの打ち込み量を増やしていく。こうして、シアンのグラデーションを再現することができる。このとき、Lcインクの打ち込み量が打ち込み限界(飽和量)に達した状態、すなわちLcインクでシアン色を濃くした状態でCインクを打ち込めば、粒状感を低減することができる。こうしたインクジェットプリンタの特性から、Lcインク使用量を多くするほど粒状感の低減に効果がある。ここで、本発明では、S505の第2のテストプリントで、S503で指定された色のパッチに対して、濃度を変化させたパッチをプリントする。しかしその際、S503で指定された色のパッチが図13の点Aだと、それより濃度の高いパッチをCMYK信号値で作成するには、Lcインク打ち込み量を「Lcインク曲線1」から「Lcインク曲線2」に上げなければならない。そして、この時点で打ち込み限界を超えてしまうことになる。逆に、インクの打ち込み量を変動させつつ、打ち込み量の飽和を防ぐためには、Lcインク打ち込み量は予め下げておかなければならない。すなわち、「Lcインク曲線3」にしなくてはならない。ところが「Lcインク曲線3」はLcインク使用量が少なく、粒状感が目立ってしまうことになる。ここで本発明のメリットとして、粒状感低減のメリットを考慮して、CMYK値ではなくRGB信号値で、「Lcインク曲線1」を用いて第2のテストプリントを作成する。色補正パッチを作成する際に、例えば点Aを点Bに変換することで、インク打ち込み条件を変えることなく第2のテストプリントを作成することができる。
【0096】
(変形例1)
図4(b)は、本実施形態に係る、インクジェットプリンタにおける画像処理部の構成の別例を示すブロック図である。図4(b)において、符号401、405〜409で示す各部は、図4(a)において同じ符号で示すそれぞれの部と同じであるためそれらの説明を省略する。本変形例が、図4(a)に示す構成と異なる点は、入力色変換処理部とMCS処理部による処理を一体の処理部として構成した点である。すなわち、本変形例の入力色変換処理&MCS処理部411は、入力色変換処理とMCS処理の機能を併せ持つ処理部である。
【0097】
具体的には、入力色変換処理&MCS処理部411は、入力色変換処理部のテーブルとMCS処理部のテーブルを合成した1つのテーブルを用いる。すなわち、このテーブルは、sRGB色空間の色信号に対して色補正処理をするとともに、sRGB色空間とは異なるRGB色空間の色信号に変換するのに用いられる。これにより、入力部401からの入力画像データに対して、直接色むらの補正処理を行い、色むらを低減したデバイス色画像データを出力することができる。
【0098】
図14は、入力色変換処理&MCS処理部411で用いるテーブルのパラメータを生成する処理と、記録データを生成する際の画像処理における、上記テーブルを用いたMCS処理をそれぞれ示すフローチャートである。
【0099】
図14は、CPU311が実行する、三次元LUTのパラメータを生成する処理である。図5のフローチャートと異なる点は、ステップS1402およびステップS1405およびステップS1407の処理である。
【0100】
ステップS1402では、入力色変換処理で用いられるLUTをMCS処理部411で用いられるLUTと合算させている。このようにして第1の実施形態と同様に、インク色変換処理部405、HS処理部406、TRC処理部407、量子化処理部408を経て出力部409で、測定用色画像として記録用紙106に記録される。
【0101】
ステップS1405、S1406も同様に、入力色変換処理で用いられるLUTをMCS処理部411で用いられるLUTと合算させている。
【0102】
以上説明した変形例1によれば、入力色変換処理&MCS処理部411で合算したLUTを用いて第1の実施形態と同じ処理を行うので、第1の実施形態と同様に色むらを低減することができる。そして、1つのLUTで一括して変換しているので、第1の実施形態よりもLUTのために用意する領域を削減したり、処理速度を向上させたりすることが可能となる。
【0103】
(変形例2)
図4(c)は、本実施形態の変形例2に係る画像処理部の構成を示すブロック図である。
【0104】
本変形例のMCS処理部のテーブルパラメータの生成およびMCS処理部の処理は、図5と同じであり、異なるのはMCS処理部404の処理を、入力色変換処理部403の処理の前に実施することである。このことにより、モジュールの独立性が向上する。例えば、MCS処理部を非搭載の画像処理部に対する拡張機能として提供できるようになる。また、ホストPC側に処理を移すことも可能となる。
【0105】
(変形例3)
図4(d)は、変形例3に係る画像処理部の構成を示すブロック図である。同図に示すように、本変形例は、図4(a)〜(c)では用意したHS処理部406を省いた形態になっている。
【0106】
本変形例のMCS処理部のテーブルパラメータの生成およびMCS処理部の処理は、図5と同じであり、異なるのはHS処理部におけるヘッドシェーディングを実施しない点である。すなわち、本変形例では、MCS処理部のテーブルパラメータは、上記実施形態や変形例のように、HS処理後のデータを基に作成されるものではない。本変形例においては、図5で示したフローチャートに従って、MCS処理部のテーブルのパラメータを生成したり、画像処理を行ったりすることが出来る。
【0107】
図15(a)および(b)は、本変形例における測定用色画像の記録状態を説明するための図である。図15(a)は、図3(a)に示した例と同様、マゼンタの記録ヘッド103のノズルのうち第2エリアに相当する4つのノズルが標準より多い吐出量となっている例を示している。本変形例では、ブルーを示す画像データ(K、C、M、Y)=(0、255、255、0)に、HS処理が施されていないので、図15(b)に示すようなブルーの測定用色画像が記録される。すなわち、吐出量が標準より多いノズルを含む第2エリアであっても、マゼンタドットとシアンドットは同じ数だけ記録される。結果、第2エリアにおいて、マゼンタよりの色ずれが生じる。
【0108】
このようなパッチを測色した結果、本変形例のMCS処理部404のテーブルパラメータは、マゼンタ色を減少させるような補正値が生成される。このような補正を行うことにより、HS処理部を含まない本変形例においても、ブルーデータを記録する際に、図11(b)に示すような記録状態を得ることが可能となり、色ずれを低減することが可能となる。
【0109】
また、HS処理部を設けない本変形例においては、HS処理用のテーブルを用意する必要がなくなり、HS処理のための「パターン記録」、「測色」、「補正パラメータ演算」などの処理が必要なくなる。その結果、メモリを低減しHS処理に係るタイムコストを低減することが可能となる。
【0110】
なお、これまで第1の実施形態およびその第1〜第3変形例を説明してきたが、それぞれの処理内容についてはあくまで一例であり、本発明の効果である色むらの低減が実現できる構成であれば、どのような構成をも用いることができる。例えば、エリア間の相対的な色むらを低減することが出来れば、本発明が課題とするような色むらは目立たなくなるので、必ずしも全ての色むらを、周囲の色むらでない領域に近づけるような補正を行わなくても良い。例えば、パッチ内の全領域を任意の目標色になるよう補正しても良い。
【0111】
また、以上の実施形態では、4つのノズルによって規定される領域を1つのエリアとし、MCS処理を行う最小単位として設定したが、無論本発明はこのような単位に限定されるものではない。より多くのノズルで規定される領域を一単位としてもよいし、1ノズルずつMCS補正が行なわれるようにしても構わない。更に、個々のエリアに含まれるノズル数は必ずしも同数でなくても良く、個々のエリアに含まれるノズル数をデバイスの特性に応じて適宜設定してもよい。
【0112】
更に、上記実施形態では、RGB形式で入力された画像データに対しMCS処理などを行った後、記録装置で用いるインク色に対応したCMYK形式の画像データに変換する例で説明したが、無論本発明はこのような形式限定されるものではない。MCS処理の対象となる画像データは、RGB形式のほか、L*a*b*、Luv、LCbCr、LCHなど、いずれの形式であっても構わない。
【0113】
[第2の実施形態]
図17は、第2の実施形態に係る複数の補正候補値の決定処理の手順を示すフローチャートであり、第1実施形態に係る図16に示す補正候補値を決定する処理と同様の処理を示している。
【0114】
本実施形態の図16に示す処理と異なる点は、ステップS1705の判断で用いる閾値を、色むらが生じている色に応じて異ならせる点である。すなわち、本処理で用いるCIELab色空間は均等色空間であるが、視覚特性上は色の弁別域に偏りがある。この点に関する、MacAdamの偏差楕円やNickersonの色差式は、例えば、「新編 色彩ハンドブック、第二版(日本色彩学会編:東京大学出版会)」において知られているところである。
【0115】
図17のステップS1705に示すように、色むらが発生している色D[n]に応じて等色と知覚される弁別閾値TH1[D[n]]が設定される。すなわち、ステップS1705において、算出したΔEを予め設定した閾値TH1と比較するのではなく、色D[n]に応じた閾値TH1[D[n]]と比較して等色に見える範囲か否かを判断する。
【0116】
すなわち、本実施形態では、閾値TH1をパッチの色に応じて変化させて、パッチの色が無彩色近傍領域においては、複数の補正候補値の間の距離が相対的に小さくなるように、高彩度部領域においては、無彩色近傍領域に比べて相対的に大きくなるように、複数の補正候補値を生成する。
【0117】
本実施形態によれば、実験的に色ごとの閾値を設定できるので、視覚的に色差に敏感となる無彩色近辺を細かく設定し、鈍感となる高彩度部を粗く設定することができる。なお、このTH1[D[n]]は、予めLUT(ルックアップテーブル)として設定しておく。すなわち、無彩色近傍領域においては、複数の補正候補値の間の距離が相対的に小さくなるように、高彩度部領域においては、無彩色近傍領域に比べて相対的に大きくなるように、複数の補正候補値を生成する。
【0118】
[第3の実施形態]
図18は、第3の実施形態に係る複数の補正候補値の決定処理の手順を示すフローチャートであり、第1の実施形態に係る図16に示す補正候補値を決定する処理と同様の処理を示している。
【0119】
本実施形態が図16に示す処理と異なる点は、ステップS1804の補正候補値による候補色の色差を求める処理である。図16に示す実施形態では、補正対象の色D[n]と、人間の視覚特性に基づく所定の閾値以上の色差がある色を候補色として設定した。これに対し、本実施形態は、候補色同士の色差も所定値以上離れた色を候補色として設定する。すなわち、ステップS1804では、Di[n]とD[n]の差分、すなわち、ステップS1602で求めた補正候補値Zi、および、この補正候補値で補正された候補色Di[n]と既に登録された各候補色との差分を各々算出する。そして、その中から差分(色差)の最小の色差(ΔEmin)を決定する。そして、次のS1805では、ΔEminとTH1とを比較して等色内か否かを判断する。すなわち、本実施形態では、Di[n]とD[n]との間の均等色空間上の色差が所定の閾値を越え、かつ、複数のDi[n]間の均等色空間上での色差が所定の閾値を越えるように、Di[n]を生成する。
【0120】
図16に示す処理では、補正対象である色むらが生じている色とは異なる候補色を設定するが、候補色同士を比較するとそれぞれが等色内の色であることがある。すなわち、似た色が候補色として存在しているため、ユーザが選択に迷うことも考えられる。本実施形態では、候補色総てが相互に所定の色差を有して登録されているために、より効率的な候補色の設定が可能になる。
【0121】
[第4の実施形態]
図19は、第4の実施形態に係る複数の補正候補値の決定処理の手順を示すフローチャートであり、第1の実施形態に係る図16に示す補正候補値を決定する処理と同様の処理を示している。
【0122】
本実施形態が図16に示す処理と異なる点は、ステップS1907の処理である。すなわち、図16に示す処理では、所定数の候補色が登録されると処理を終了していたが、本実施形態では、候補色の数で判断するのではなく、予め設定していた候補色の範囲をカバーできたか否かによって判断する。
【0123】
図19のステップS1907では、色むらの生じている色D[n]および登録した候補色Di[n]をそれぞれ中心とした半径TH1の球体の体積を算出し、総てを加算(但し重なり部は除去)した総体積が所定値以上か否かを判断する。この総体積は、使用者が候補色の中から選択可能な色の領域に相当する。ある一定以上の体積を占めた場合には補正可能と判定して本処理を終了する。
【0124】
[第5の実施形態]
図20は、第5の実施形態に係る複数の補正候補値の決定処理の手順を示すフローチャートであり、第1の実施形態に係る図16に示す補正候補値を決定する処理と同様の処理を示している。
【0125】
本実施形態が図16に示す処理と異なる点は、ステップS2005の処理である。本実施形態は、補正する位置ごとに発生している色むらの乖離度合いの強弱を指定できる例に関するものである。
【0126】
図20のステップS2005では、補正候補値に係るΔEと閾値との比較をするが、本実施形態では、この閾値TH1[H]を指定された色むらの強弱(程度)に応じて異ならせる。すなわち、視覚的な弁別閾値に基づいてΔEが所定値以内の候補色(候補パッチ)を数多く増加させることは効率的ではない。色むらの強弱において、例えば「強」と指定された色むらに関してΔEが1.6前後の「かすかな違い」に相当する候補色を多数記録しても非効率である。この点から、「強」と指定された色むらに関してはTH1[H]を3.0程度に大きくすることにより、先ず粗い間隔で候補色の出力が可能になる。
【0127】
また、乖離度合いを使用者が登録する方式も有効である。すなわち、乖離度合いは感覚量であるため、ユーザごとに異なることが多い。画像処理装置を使用するユーザが常に同一者であれば乖離度合いをカスタマイズして設定しておくことが有効である。
【0128】
[その他の実施形態]
以上述べた実施形態およびその変形例では、Ar、Ag、Abを絶対値の小さい順に加減算してΔEを算出するものとしたが、本発明はこの方法以外にも適用できることはもちろんである。
【0129】
例えば、Lab空間上でD[n]から所定の距離を設定し、所定座標に位置する値(仮に、L1、a1、b1とおく)をRGB空間の値に変換して、変換値に最も近いRGB値を探索していく方法も有効である。この方法では、所定座標の取り方に自由度を持たせることができる。すなわち、前述した実施形態では視覚特性に基づき候補色(パッチの色)と補正対象の色とのΔEを閾値と比較をすることにより候補色として設定するか否かを判断するものである。すなわち、色空間において上記補正対象の色D[n]からの距離が一定の球内に含まれるか否かで判断するものである。これに対し、本変形例では、D[n]からの距離を、D[n]に依存して自由に設定できるために非球体にすることが可能となる。
【0130】
すなわち、人間の知覚特性として、Lab空間でLの変化量がabの変化量に比べて敏感である。すなわち、ΔEが1.6以内であってもΔLが0.4以上であれば視覚的に色むらとして知覚されることがある。本変形例では、自由に座標を設定できることから、L軸方向の間隔を狭く設定し、a軸、b軸の間隔をL軸に比較して粗く設定しておくことも可能となる。すなわち、L軸方向である明度方向において、複数の補正候補値の間の距離が相対的に小さく、a軸、b軸で規定される色相彩度方向においては、明度方向に比べて、相対的に大きくなるように、補正候補値を生成することができる。
【符号の説明】
【0131】
403 入力色変換処理部
404 MCS処理部
405 インク色変換処理部
406 HS処理部
407 TRC処理部
408 量子化処理部
409 出力部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に記録すべき画像データの各画素が有する所定の色空間の複数の要素からなる色信号に対して色補正処理をする画像処理装置であって、
第1のインクと当該第1のインクとは異なる色の第2のインクとを含む複数のインクをそれぞれ吐出する複数のノズル列における前記記録媒体の同一領域への記録に用いられる所定数のノズル毎に割り当てられた複数のテーブルパラメータを有する変換テーブルを記憶する記憶手段と、
前記複数のテーブルパラメータのうち、前記各画素の色信号に対応するノズルに割り当てられたテーブルパラメータを用いて当該色信号に色補正処理をする補正手段と、
前記複数のノズル列から前記記録媒体の同一領域に少なくとも前記第1および第2のインクをそれぞれ吐出させて、測定用色画像を記録するための信号を出力する第1の出力手段と、
前記第1の出力手段により出力された前記測定用色画像の出力の結果に基づく、前記測定用色画像における色補正処理をすべき色補正領域に関する情報を受ける第1の受信手段と、
前記測定用色画像の色信号のうち、前記色補正領域に対応する色信号に色補正処理をするための複数の補正候補値を生成する生成手段と、
前記複数の補正候補値を用いて複数の異なる色補正処理した複数の異なる色補正画像を前記記録媒体に記録するための信号を出力する第2の出力手段と、
前記第2の出力手段により出力された前記複数の異なる色補正画像の出力の結果に基づく、前記複数の異なる色補正画像の中から選択された色補正画像に関する情報を受ける第2の受信手段と、
前記選択された色補正画像に対応する色補正処理に基づいて、前記複数のテーブルパラメータの中の、前記色補正領域に対応するノズルに割り当てられたテーブルパラメータを形成する手段と、を有し、
前記生成手段は、前記測定用色画像の色信号に対して均等色空間上で所定の閾値よりも大きい色差をもつ補正候補値のみを生成する、ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記生成手段は、前記測定用色画像の色信号と、当該色信号から所定距離だけ離れ、かつ、前記要素の値を変化させた候補色信号との均等色空間上における色差を算出し、当該色差が所定の閾値を越える候補色信号を前記色補正処理の補正候補値とする、ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記生成手段は、前記色補正処理の補正候補値の数が、所定数に達するまで前記各要素の値を変化させ、所定数に達しない場合には、前記候補色信号の前記測定用色画像の色信号からの距離を増加させて、前記要素の値を変化させる、ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記生成手段は、明度方向において、前記複数の補正候補値の間の距離が相対的に小さく、色相彩度方向においては、前記明度方向に比べて、前記複数の補正候補値の間の距離が相対的に大きくなるように、前記補正候補値を生成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記生成手段は、前記測定用色画像の色が無彩色近傍領域においては、前記複数の補正候補値の間の距離が相対的に小さくなるように、高彩度部領域においては、前記無彩色近傍領域に比べて相対的に大きくなるように、前記複数の補正候補値を生成することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記生成手段は、前記所定の閾値を、前記測定用色画像の色に応じて変化させる、ことを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記生成手段は、前記測定用色画像の色信号と前記補正候補値との間の均等色空間上の色差が所定の閾値を越え、かつ、複数の前記補正候補値の間の均等色空間上での色差が所定の閾値を越えるように、前記補正候補値を生成する、ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記生成手段は、前記測定用色画像の色信号から所定距離だけ離れ、かつ、前記要素の値を変化させた候補色信号と当該測定用色画像の色信号との間の色差と、前記候補色信号と既に前記補正候補値とされた候補色信号との間の色差のうち、最小の色差が前記所定の閾値を越える場合に、当該候補色信号を前記補正候補値とする、ことを特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記色補正領域に発生する色むらの程度に応じて、前記所定の閾値を異ならせる手段を有する、請求項1ないし3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記色補正領域は、少なくとも前記第1および第2のインクの混色により形成される色において、ノズルのインク吐出特性のばらつきに起因して前記記録媒体における発色が異なる領域を含むことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記補正手段は、前記変換テーブルを用いて、前記所定の色空間の第1の色信号を同じ色空間の第2の色信号に変換し、
前記第2の色信号を、前記複数のインクに対応した色信号に変換する変換手段、をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項12】
記録媒体に記録すべき画像データの各画素が有する所定の色空間の色信号に対して色補正処理をする画像処理方法であって、
第1のインクと当該第1のインクとは異なる色の第2のインクとを含む複数のインクをそれぞれ吐出する複数のノズル列における前記記録媒体の同一領域への記録に用いられる所定数のノズル毎に割り当てられた複数のテーブルパラメータのうち、前記各画素の色信号に対応するノズルに割り当てられたテーブルパラメータを用いて当該色信号に色補正処理をするステップと、
前記複数のノズル列から前記記録媒体の同一領域に少なくとも前記第1および第2のインクをそれぞれ吐出させて、測定用色画像を記録するための信号を出力するステップと、
前記測定用色画像の出力の結果に基づく、前記測定用色画像における色補正処理をすべき色補正領域に関する情報を受けるステップと、
前記測定用色画像の色信号のうち、前記色補正領域に対応する色信号に色補正処理をするための複数の補正候補値を生成するステップと、
前記複数の補正候補値を用いて複数の異なる色補正処理した複数の色補正画像を前記記録媒体に記録するための信号を出力するステップと、
前記複数の異なる色補正画像の出力の結果に基づく、前記複数の異なる色補正画像の中から選択された色補正画像に関する情報を受けるステップと、
前記選択された色補正画像に対応する色補正処理に基づいて、前記複数のテーブルパラメータの中の、前記色補正領域に対応するノズルに割り当てられたテーブルパラメータを形成するステップと、を有し、
前記生成ステップは、前記測定用色画像の色信号に対して均等色空間上で所定の閾値よりも大きい色差をもつ補正候補値のみを生成する、ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項13】
第1のインクと、当該第1のインクとは異なる色の第2のインクを含む複数のインクをそれぞれ吐出する複数のノズル列を備える記録ヘッドを用いて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置であって、
前記複数のノズル列における前記記録媒体の同一領域への記録に用いられる所定数のノズル毎に割り当てられた複数のテーブルパラメータのうち、前記各画素の色信号に対応するノズルに割り当てられたテーブルパラメータを用いて当該色信号に色補正処理をする補正手段と、
前記複数のノズル列から前記記録媒体の同一領域に少なくとも前記第1および第2のインクをそれぞれ吐出させて、測定用色画像を記録するための信号を出力する第1の出力手段と、
前記第1の出力手段により出力された前記測定用色画像の出力の結果に基づく、前記測定用色画像における色補正処理をすべき色補正領域に関する情報を受ける第1の受信手段と、
前記測定用色画像の色信号のうち、前記色補正領域に対応する色信号に色補正処理をするための複数の補正候補値を生成する生成手段と、
前記複数の補正候補値を用いて複数の異なる色補正処理した複数の異なる色補正画像を前記記録媒体に記録するための信号を出力する第2の出力手段と、
前記第2の出力手段により出力された前記複数の異なる色補正画像の出力の結果に基づく、前記複数の異なる色補正画像の中から選択された色補正画像に関する情報を受ける第2の受信手段と、
前記選択された色補正画像に対応する色補正処理に基づいて、前記複数のテーブルパラメータの中の、前記色補正領域に対応するノズルに割り当てられたテーブルパラメータを形成する手段と、を有し、
前記生成手段は、前記測定用色画像の色信号に対して均等色空間上で所定の閾値よりも大きい色差をもつ補正候補値のみを生成する、ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項1】
記録媒体に記録すべき画像データの各画素が有する所定の色空間の複数の要素からなる色信号に対して色補正処理をする画像処理装置であって、
第1のインクと当該第1のインクとは異なる色の第2のインクとを含む複数のインクをそれぞれ吐出する複数のノズル列における前記記録媒体の同一領域への記録に用いられる所定数のノズル毎に割り当てられた複数のテーブルパラメータを有する変換テーブルを記憶する記憶手段と、
前記複数のテーブルパラメータのうち、前記各画素の色信号に対応するノズルに割り当てられたテーブルパラメータを用いて当該色信号に色補正処理をする補正手段と、
前記複数のノズル列から前記記録媒体の同一領域に少なくとも前記第1および第2のインクをそれぞれ吐出させて、測定用色画像を記録するための信号を出力する第1の出力手段と、
前記第1の出力手段により出力された前記測定用色画像の出力の結果に基づく、前記測定用色画像における色補正処理をすべき色補正領域に関する情報を受ける第1の受信手段と、
前記測定用色画像の色信号のうち、前記色補正領域に対応する色信号に色補正処理をするための複数の補正候補値を生成する生成手段と、
前記複数の補正候補値を用いて複数の異なる色補正処理した複数の異なる色補正画像を前記記録媒体に記録するための信号を出力する第2の出力手段と、
前記第2の出力手段により出力された前記複数の異なる色補正画像の出力の結果に基づく、前記複数の異なる色補正画像の中から選択された色補正画像に関する情報を受ける第2の受信手段と、
前記選択された色補正画像に対応する色補正処理に基づいて、前記複数のテーブルパラメータの中の、前記色補正領域に対応するノズルに割り当てられたテーブルパラメータを形成する手段と、を有し、
前記生成手段は、前記測定用色画像の色信号に対して均等色空間上で所定の閾値よりも大きい色差をもつ補正候補値のみを生成する、ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記生成手段は、前記測定用色画像の色信号と、当該色信号から所定距離だけ離れ、かつ、前記要素の値を変化させた候補色信号との均等色空間上における色差を算出し、当該色差が所定の閾値を越える候補色信号を前記色補正処理の補正候補値とする、ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記生成手段は、前記色補正処理の補正候補値の数が、所定数に達するまで前記各要素の値を変化させ、所定数に達しない場合には、前記候補色信号の前記測定用色画像の色信号からの距離を増加させて、前記要素の値を変化させる、ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記生成手段は、明度方向において、前記複数の補正候補値の間の距離が相対的に小さく、色相彩度方向においては、前記明度方向に比べて、前記複数の補正候補値の間の距離が相対的に大きくなるように、前記補正候補値を生成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記生成手段は、前記測定用色画像の色が無彩色近傍領域においては、前記複数の補正候補値の間の距離が相対的に小さくなるように、高彩度部領域においては、前記無彩色近傍領域に比べて相対的に大きくなるように、前記複数の補正候補値を生成することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記生成手段は、前記所定の閾値を、前記測定用色画像の色に応じて変化させる、ことを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記生成手段は、前記測定用色画像の色信号と前記補正候補値との間の均等色空間上の色差が所定の閾値を越え、かつ、複数の前記補正候補値の間の均等色空間上での色差が所定の閾値を越えるように、前記補正候補値を生成する、ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記生成手段は、前記測定用色画像の色信号から所定距離だけ離れ、かつ、前記要素の値を変化させた候補色信号と当該測定用色画像の色信号との間の色差と、前記候補色信号と既に前記補正候補値とされた候補色信号との間の色差のうち、最小の色差が前記所定の閾値を越える場合に、当該候補色信号を前記補正候補値とする、ことを特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記色補正領域に発生する色むらの程度に応じて、前記所定の閾値を異ならせる手段を有する、請求項1ないし3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記色補正領域は、少なくとも前記第1および第2のインクの混色により形成される色において、ノズルのインク吐出特性のばらつきに起因して前記記録媒体における発色が異なる領域を含むことを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記補正手段は、前記変換テーブルを用いて、前記所定の色空間の第1の色信号を同じ色空間の第2の色信号に変換し、
前記第2の色信号を、前記複数のインクに対応した色信号に変換する変換手段、をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項12】
記録媒体に記録すべき画像データの各画素が有する所定の色空間の色信号に対して色補正処理をする画像処理方法であって、
第1のインクと当該第1のインクとは異なる色の第2のインクとを含む複数のインクをそれぞれ吐出する複数のノズル列における前記記録媒体の同一領域への記録に用いられる所定数のノズル毎に割り当てられた複数のテーブルパラメータのうち、前記各画素の色信号に対応するノズルに割り当てられたテーブルパラメータを用いて当該色信号に色補正処理をするステップと、
前記複数のノズル列から前記記録媒体の同一領域に少なくとも前記第1および第2のインクをそれぞれ吐出させて、測定用色画像を記録するための信号を出力するステップと、
前記測定用色画像の出力の結果に基づく、前記測定用色画像における色補正処理をすべき色補正領域に関する情報を受けるステップと、
前記測定用色画像の色信号のうち、前記色補正領域に対応する色信号に色補正処理をするための複数の補正候補値を生成するステップと、
前記複数の補正候補値を用いて複数の異なる色補正処理した複数の色補正画像を前記記録媒体に記録するための信号を出力するステップと、
前記複数の異なる色補正画像の出力の結果に基づく、前記複数の異なる色補正画像の中から選択された色補正画像に関する情報を受けるステップと、
前記選択された色補正画像に対応する色補正処理に基づいて、前記複数のテーブルパラメータの中の、前記色補正領域に対応するノズルに割り当てられたテーブルパラメータを形成するステップと、を有し、
前記生成ステップは、前記測定用色画像の色信号に対して均等色空間上で所定の閾値よりも大きい色差をもつ補正候補値のみを生成する、ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項13】
第1のインクと、当該第1のインクとは異なる色の第2のインクを含む複数のインクをそれぞれ吐出する複数のノズル列を備える記録ヘッドを用いて記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置であって、
前記複数のノズル列における前記記録媒体の同一領域への記録に用いられる所定数のノズル毎に割り当てられた複数のテーブルパラメータのうち、前記各画素の色信号に対応するノズルに割り当てられたテーブルパラメータを用いて当該色信号に色補正処理をする補正手段と、
前記複数のノズル列から前記記録媒体の同一領域に少なくとも前記第1および第2のインクをそれぞれ吐出させて、測定用色画像を記録するための信号を出力する第1の出力手段と、
前記第1の出力手段により出力された前記測定用色画像の出力の結果に基づく、前記測定用色画像における色補正処理をすべき色補正領域に関する情報を受ける第1の受信手段と、
前記測定用色画像の色信号のうち、前記色補正領域に対応する色信号に色補正処理をするための複数の補正候補値を生成する生成手段と、
前記複数の補正候補値を用いて複数の異なる色補正処理した複数の異なる色補正画像を前記記録媒体に記録するための信号を出力する第2の出力手段と、
前記第2の出力手段により出力された前記複数の異なる色補正画像の出力の結果に基づく、前記複数の異なる色補正画像の中から選択された色補正画像に関する情報を受ける第2の受信手段と、
前記選択された色補正画像に対応する色補正処理に基づいて、前記複数のテーブルパラメータの中の、前記色補正領域に対応するノズルに割り当てられたテーブルパラメータを形成する手段と、を有し、
前記生成手段は、前記測定用色画像の色信号に対して均等色空間上で所定の閾値よりも大きい色差をもつ補正候補値のみを生成する、ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
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【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−80450(P2012−80450A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225746(P2010−225746)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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