説明

画像処理装置、X線CT装置、及び画像処理方法

【課題】X線CT装置において、血管内腔の評価に適した画像を提供すること。
【解決手段】X線CT装置1は、造影領域と、造影領域の周辺に存在する石灰化領域とを検出する血管・石灰化領域検出部52と、造影データの造影領域に対応する、単純データにおける推定造影領域を推定する血管領域推定部53と、単純データを基に、推定造影領域の周辺に存在する石灰化領域を検出する石灰化領域検出部54と、造影データのCT値プロファイルを基に造影データの石灰化領域に含まれるコア領域を演算すると共に、単純データのCT値プロファイルを基に単純データの石灰化領域に含まれるコア領域を演算する石灰化コア領域演算部55と、造影データと単純データとのコア領域を基に造影データと単純データとを位置合わせして、単純データに、造影データの石灰化領域を合成して合成データを生成する合成処理部58と、合成データを表示する表示装置46と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、CTデータを画像処理する画像処理装置、CT(computed tomography)装置、及び画像処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線CT装置は、被検体を透過したX線の強度に基づいて、被検体についての情報を画像により提供するものであり、疾病の診断・治療や手術計画等を初めとする多くの医療行為において重要な役割を果たしている。
【0003】
X線CT装置によって取得される診断画像としてのCT画像に、ハレーションを伴う高CT値の画素群(高CT値領域)、例えば石灰化領域やステント(金属)領域が存在する場合がある。高CT領域を含むCT画像では血管内腔を正確に評価できない。血管内腔を正確に評価するためのアプローチの1つとして、診断画像から高CT値領域を削除することを目的として、サブトラクション処理を行なうことで診断画像としてのサブトラクション画像を生成する方法がある。X線CT装置によって高CT値領域を含む単純CT画像と、高CT値領域を含む造影CT画像とを取得することで、両画像間でサブトラクション処理を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−225979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術によると、単純CT画像及び造影CT画像にそれぞれ現れる高CT値領域は、心臓の動き及び心位相の違い(呼吸性の移動)による位置ずれに起因して、ぶれ(Burring)が生じている。また、一般的に、単純CT画像には位置合わせに使われる基準情報がない(形状特徴を示すCT値分布が造影CT画像に対し非常に少ない)ので、単純CT画像及び造影CT画像による正規化相互情報量(NMI:normalized mutual information)を類似度として用いる手法や解剖情報ベースの非線形の位置合わせの精度は悪くなる。
【0006】
よって、従来技術に従って単純CT画像と造影CT画像とでサブトラクション処理を行なうと、サブトラクション画像上に、ずれに起因する高CT値領域の偽像が残ってしまうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の画像処理装置は、上述した課題を解決するために、造影後に取得される造影データを基に、造影領域と、前記造影領域の周辺に存在する高CT値領域とを取得する造影側取得手段と、前記造影データと、位置合わせされた、非造影で取得される単純データとを基に、前記造影領域に対応する、前記単純データにおける推定造影領域を推定する推定手段と、前記単純データを基に、前記推定造影領域の周辺に存在する高CT値領域を取得する単純側取得手段と、前記造影データのCT値のプロファイルを基に、前記造影データの高CT値領域に含まれるコア領域を演算すると共に、前記単純データのCT値のプロファイルを基に、前記単純データの高CT値領域に含まれるコア領域を演算するコア領域演算手段と、前記造影データのコア領域と前記単純データのコア領域とを基に前記造影データと前記単純データとを位置合わせして、前記単純データに、前記造影データの高CT値領域を合成して合成データを生成する合成手段と、を有する。
【0008】
また、本実施形態の画像処理装置は、上述した課題を解決するために、非造影画像データと、造影画像データとを記憶する記憶手段と、前記非造影画像データの血管領域に基づいて、対象物質が存在する対象物質領域を抽出する抽出手段と、前記非造影画像データの前記対象物質領域に基づいて、前記造影画像データにおける、前記対象物質領域の対応領域の画素値又はそれらの補正値を推定する推定手段と、前記非造影画像データと前記造影画像データとの差分処理を行なうことで差分画像データを生成するものであり、かつ、前記差分画像データにおける、前記対応領域に対応する領域の画素値については、前記推定された対応領域の画素値又は補正値を用いて求める差分手段と、を有する。
【0009】
本実施形態のX線CT装置は、上述した課題を解決するために、X線源及びX線検出器によって構成され、非造影で取得される単純データと、造影後に取得される造影データとを生成するスキャン手段と、前記造影データを基に、造影領域と、前記造影領域の周辺に存在する高CT値領域とを取得する造影側取得手段と、前記造影データと、位置合わせされた前記単純データとを基に、前記造影領域に対応する、前記単純データにおける推定造影領域を推定する推定手段と、前記単純データを基に、前記推定造影領域の周辺に存在する高CT値領域を取得する単純側取得手段と、前記造影データのCT値のプロファイルを基に、前記造影データの高CT値領域に含まれるコア領域を演算すると共に、前記単純データのCT値のプロファイルを基に、前記単純データの高CT値領域に含まれるコア領域を演算するコア領域演算手段と、前記造影データのコア領域と前記単純データのコア領域とを基に前記造影データと前記単純データとを位置合わせして、前記単純データに、前記造影データの前記高CT値領域を合成して合成データを生成する合成手段と、を有する。
【0010】
本実施形態の画像処理方法は、上述した課題を解決するために、造影後に取得される造影データを基に、造影領域と、前記造影領域の周辺に存在する高CT値領域とを取得し、前記造影データと、位置合わせされた、非造影で取得される単純データとを基に、前記造影領域に対応する、前記単純データにおける推定造影領域を推定し、前記単純データを基に、前記推定造影領域の周辺に存在する高CT値領域を取得し、前記造影データのCT値のプロファイルを基に、前記造影データの高CT値領域に含まれるコア領域を演算すると共に、前記単純データのCT値のプロファイルを基に、前記単純データの高CT値領域に含まれるコア領域を演算し、前記造影データのコア領域と前記単純データのコア領域とを基に前記造影データと前記単純データとを位置合わせして、前記単純データに、前記造影データの高CT値領域を合成して合成データを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態のX線CT装置を示すハードウェア構成図。
【図2】本実施形態のX線CT装置の機能を示すブロック図。
【図3】造影ボリュームデータの所要断面に相当する造影CT画像データによって形成される造影CT画像(部分画像)を示す図。
【図4】図3に示す造影CT画像(部分画像)上に検出される血管領域を示す図。
【図5】図3に示す造影CT画像(部分画像)と、検出される石灰化領域とを示す図。
【図6】単純ボリュームデータの所要断面に相当する単純CT画像データによって形成される単純CT画像(部分画像)と、推定される石灰化領域とを示す図。
【図7】造影ボリュームデータに基づくCT値のプロファイルをグラフとして示す図。
【図8】石灰化領域と、石灰化領域の石灰化コア領域との関係を示す図。
【図9】合成処理前の単純ボリュームデータに基づく単純CT画像(部分画像)を示す図。
【図10】合成処理後の合成ボリュームデータに基づく合成CT画像(部分画像)を示す図。
【図11】図2に示す本実施形態のX線CT装置の機能の変形例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態の画像処理装置、X線CT装置、及び画像処理方法について、添付図面を参照して説明する。
【0013】
本実施形態のX線CT装置には、X線源とX線検出器とが一体として被検体の周囲を回転する回転/回転(ROTATE/ROTATE)タイプと、リング状に多数の検出素子がアレイされ、X線源のみが被検体の周囲を回転する固定/回転(STATIONARY/ROTATE)タイプ等様々なタイプがあり、いずれのタイプでも本発明を適用可能である。ここでは、現在、主流を占めている回転/回転タイプとして説明する。
【0014】
また、入射X線を電荷に変換するメカニズムは、シンチレータ等の蛍光体でX線を光に変換し更にその光をフォトダイオード等の光電変換素子で電荷に変換する間接変換形と、X線による半導体内の電子正孔対の生成及びその電極への移動すなわち光導電現象を利用した直接変換形とが主流である。
【0015】
加えて、近年では、X線源とX線検出器との複数のペアを回転リングに搭載したいわゆる多管球型のX線CT装置の製品化が進み、その周辺技術の開発が進んでいる。本実施形態のX線CT装置では、従来からの一管球型のX線CT装置であっても、多管球型のX線CT装置であってもいずれにも適用可能である。ここでは、一管球型のX線CT装置として説明する。
【0016】
図1は、本実施形態のX線CT装置を示すハードウェア構成図である。
【0017】
図1は、本実施形態のX線CT装置1を示す。X線CT装置1は、大きくは、スキャナ装置11及び画像処理装置12によって構成される。X線CT装置1のスキャナ装置11は、通常は検査室に設置され、患者(被検体)Oの、拍動を伴う部位(血管、冠動脈、頚動脈、及び大動脈等)に関するX線の透過データを生成するために構成される。一方、画像処理装置12は、通常は検査室に隣接する制御室に設置され、透過データを基に投影データを生成して再構成画像の生成・表示を行なうために構成される。
【0018】
X線CT装置1のスキャナ装置11は、X線管(X線源)21、絞り22、X線検出器23、DAS(data acquisition system)24、回転部25、高電圧電源26、絞り駆動装置27、回転駆動装置28、インジェクタ(造影剤注入装置)29、天板30、天板駆動装置31、及びコントローラ32を設ける。
【0019】
X線管21は、高電圧電源26から供給された管電圧に応じて金属製のターゲットに電子線を衝突させることでX線を発生させ、X線検出器23に向かって照射する。X線管21から照射されるX線によって、ファンビームX線やコーンビームX線が形成される。X線管21は、高電圧電源26を介したコントローラ32による制御によって、X線の照射に必要な電力が供給される。
【0020】
絞り22は、絞り駆動装置27によって、X線管21から照射されるX線のスライス方向の照射範囲を調整する。すなわち、絞り駆動装置27によって絞り22の開口を調整することによって、スライス方向のX線照射範囲を変更できる。
【0021】
X線検出器23は、マトリクス状、すなわち、チャンネル方向に複数チャンネル、スライス方向に複数列のX線検出素子を有する2次元アレイ型のX線検出器23(マルチスライス型検出器ともいう。)である。X線検出器23のX線検出素子は、X線管21から照射されたX線を検出する。
【0022】
DAS24は、X線検出器23の各X線検出素子が検出する透過データの信号を増幅してデジタル信号に変換する。DAS24の出力データは、スキャナ装置11のコントローラ32を介して画像処理装置12に供給される。
【0023】
回転部25は、X線管21、絞り22、X線検出器23、及びDAS24を一体として保持する。回転部25は、X線管21とX線検出器23とを対向させた状態で、X線管21、絞り22、X線検出器23、及びDAS24を一体として患者Oの周りに回転できるように構成されている。なお、回転部25の回転中心軸と平行な方向をz軸方向、そのz軸方向に直交する平面をx軸方向、y軸方向で定義する。
【0024】
高電圧電源26は、コントローラ32による制御によって、X線の照射に必要な電力をX線管21に供給する。
【0025】
絞り駆動装置27は、コントローラ32による制御によって、絞り22におけるX線のスライス方向の照射範囲を調整する機構を有する。
【0026】
回転駆動装置28は、コントローラ32による制御によって、回転部25がその位置関係を維持した状態で空洞部の周りを回転するように回転部25を回転させる機構を有する。
【0027】
インジェクタ29は、コントローラ32による制御によって、患者Oの患部に挿入されたカテーテル(カテーテルチューブ、図示しない)に対して造影剤を注入する装置である。
【0028】
天板30は、患者Oを載置可能である。
【0029】
天板駆動装置31は、コントローラ32による制御によって、天板30をy軸方向に沿って昇降動させると共に、z軸方向に沿って進入/退避動させる機構を有する。回転部25の中央部分は開口を有し、その開口部の天板30に載置された患者Oが挿入される。
【0030】
コントローラ32は、CPU(central processing unit)、及びメモリによって構成される。コントローラ32は、X線検出器23、DAS24、高電圧電源26、絞り駆動装置27、回転駆動装置28、インジェクタ29、及び天板駆動装置31等の制御を行なってスキャンを実行させる。
【0031】
X線CT装置1の画像処理装置12は、コンピュータをベースとして構成されており、病院基幹のLAN(local area network)等のネットワークNと相互通信可能である。画像処理装置12は、大きくは、CPU41、メインメモリ42、画像メモリ43、HDD(hard disc drive)44、入力装置45及び表示装置46等の基本的なハードウェアから構成される。CPU41は、共通信号伝送路としてのバスを介して、画像処理装置12を構成する各ハードウェア構成要素に相互接続されている。なお、画像処理装置12は、記憶媒体ドライブ47を具備する場合もある。
【0032】
CPU41は、半導体で構成された電子回路が複数の端子を持つパッケージに封入されている集積回路(LSI)の構成をもつ制御装置である。医師等のオペレータによって入力装置45が操作等されることにより指令が入力されると、CPU41は、メインメモリ42に記憶しているプログラムを実行する。又は、CPU41は、HDD44に記憶しているプログラム、ネットワークNから転送されてHDD44にインストールされたプログラム、又は記憶媒体ドライブ47に装着された記憶媒体から読み出されてHDD44にインストールされたプログラムを、メインメモリ42にロードして実行する。
【0033】
メインメモリ42は、ROM(read only memory)及びRAM(random access memory)等の要素を兼ね備える構成をもつ記憶装置である。メインメモリ42は、IPL(initial program loading)、BIOS(basic input/output system)及びデータを記憶したり、CPU41のワークメモリやデータの一時的な記憶に用いられたりする。
【0034】
画像メモリ43は、生成された造影ボリュームデータと、単純ボリュームデータとを記憶する記憶装置である。
【0035】
HDD44は、磁性体を塗布又は蒸着した金属のディスクが着脱不能で内蔵されている構成をもつ記憶装置である。HDD44は、画像処理装置12にインストールされたプログラム(アプリケーションプログラムの他、OS(operating system)等も含まれる)や、データを記憶する記憶装置である。また、OSに、オペレータに対する情報の表示にグラフィックを多用し、基礎的な操作を入力装置45によって行なうことができるGUI(graphical user interface)を提供させることもできる。
【0036】
入力装置45は、オペレータによって操作が可能なポインティングデバイスであり、操作に従った入力信号がCPU41に送られる。
【0037】
表示装置46は、図示しない画像合成回路、VRAM(video random access memory)、及びディスプレイ等を含んでいる。画像合成回路は、画像データに種々のパラメータの文字データ等を合成した合成データを生成する。VRAMは、合成データを、ディスプレイに表示する表示画像データとして展開する。ディスプレイは、液晶ディスプレイやCRT(cathode ray tube)等によって構成され、表示画像データを表示画像として順次表示する。
【0038】
記憶媒体ドライブ47は、記憶媒体の着脱が可能となっており、記憶媒体に記録されたデータ(プログラムを含む)を読み出して、バス上に出力し、また、バスを介して供給されるデータを記憶媒体に書き込む。このような記憶媒体は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することができる。
【0039】
画像処理装置12は、スキャナ装置11のDAS24から入力された生データに対して対数変換処理や、感度補正等の補正処理(前処理)を行なって投影データを生成する。また、画像処理装置12は、前処理された投影データに対して散乱線の除去処理を行なう。画像処理装置12は、X線曝射範囲内の投影データの値に基づいて散乱線の除去を行なうものであり、散乱線補正を行なう対象の投影データ又はその隣接投影データの値の大きさから推定された散乱線を、対象となる投影データから減じて散乱線補正を行なう。画像処理装置12は、補正された投影データを再構成することで造影CT画像データと、単純CT画像データとをそれぞれ生成して記憶する。
【0040】
図2は、本実施形態のX線CT装置1の機能を示すブロック図である。なお、本実施形態では、ハレーションを伴う高CT値の画素群(高CT値領域)として、石灰化領域を例にとって説明する。
【0041】
画像処理装置12のCPU41がプログラムを実行することによって、X線CT装置1は、図2に示すように、ボリュームデータ生成部51、血管領域検出部52、血管領域推定部53、石灰化領域検出部54、石灰化コア領域演算部55、対応付け処理部56、位置合わせ処理部57、合成処理部58、インターフェース部59、及び差分(サブトラクション)処理部60として機能する。なお、X線CT装置1の構成要素51乃至60の全部又は一部は、X線CT装置1にハードウェアとして備えられるものであってもよい。
【0042】
ボリュームデータ生成部51は、コントローラ32を介してスキャナ装置11の動作を制御して、造影剤の注入前のスキャンで取得される患者Oの拍動を伴う部位の投影データを基に単純CT画像データを生成し、複数断面に相当する単純CT画像データを基に単純ボリュームデータを生成する機能を有する。また、ボリュームデータ生成部51は、コントローラ32を介してスキャナ装置11の動作を制御して、造影剤の注入後のスキャンで取得される患者Oの拍動を伴う部位の投影データを基に造影CT画像データを生成し、複数断面に相当する造影CT画像データを基に造影ボリュームデータを生成する機能を有する。生成された単純ボリュームデータ及び造影ボリュームデータは、画像メモリ43に記憶される。
【0043】
血管領域検出部52は、画像メモリ43から取得される造影ボリュームデータを基に血管領域(造影剤領域)Bを検出する機能を有する。血管領域検出部52は、造影ボリュームデータを基に、血管領域のセグメンテーション及び血管走行追跡を基に血管領域Bを検出する。
【0044】
図3は、造影ボリュームデータの所要断面に相当する造影CT画像データによって形成される造影CT画像(部分画像)を示す図である。図4は、図3に示す造影CT画像(部分画像)上に検出される血管領域を示す図である。
【0045】
図3は、造影ボリュームデータによって形成される造影ボリュームと、造影ボリュームデータの所要断面に相当する造影CT画像データによって形成される造影CT画像(部分画像)とを示している。図4は、図3に示す造影ボリュームと、造影CT画像(部分画像)と、造影CT画像上の血管領域Bとを示している。
【0046】
図2に示す血管領域推定部53は、血管領域検出部52によって血管領域及び石灰化領域が検出された造影ボリュームデータと、画像メモリ43から取得される、血管領域検出部52によって血管領域が検出された造影ボリュームデータと心位相が同等の単純ボリュームデータとの全体、及び臓器全体の位置合わせを実行する機能と、造影ボリュームデータの血管領域Bから単純ボリュームデータの推定血管領域bを推定する機能とを有する。血管領域推定部53は、造影ボリュームデータと単純ボリュームデータとの位置合わせを大まかに行なうことによって、造影ボリュームデータの血管領域Bに対応する単純ボリュームデータの部分を推定血管領域bとする。
【0047】
石灰化領域検出部54は、画像メモリ43から取得される造影ボリュームデータを基に、石灰化領域Cを検出する機能を有する。例えば、石灰化領域検出部54は、造影ボリュームデータを基に、血管領域検出部52によって検出された血管領域Bの周辺に存在する石灰化領域C、すなわち、血管領域Bから所定範囲内に現れる石灰化領域Cを検出する機能を有する。
【0048】
また、石灰化領域検出部54は、単純ボリュームデータを基に、石灰化領域cを検出する機能を有する。例えば、石灰化領域検出部54は、画像メモリ43から取得される単純ボリュームデータを基に、血管領域推定部53によって推定された推定血管領域bの周辺に存在する石灰化領域c、すなわち、推定血管領域bから所定範囲内に現れる石灰化領域cを検出する機能を有する。石灰化領域検出部54は、血管領域B及び推定血管領域bの周辺に現れる石灰化領域C,cを、固定値、又は領域内の最大値に対してその値に応じた係数を掛けた値等を閾値とする閾値処理に基づいて検出する。図3に示す造影CT画像(部分画像)を基に検出される石灰化領域Cを、図5に示す。単純ボリュームデータの所要断面に相当する単純CT画像データによって形成される単純CT画像(部分画像)を基に推定される石灰化領域cとを、図6に示す。石灰化領域検出部54は、単純ボリュームデータに、位置合わせに使われる情報としての石灰化領域cを与える。
【0049】
ここで、造影ボリュームデータの石灰化領域Cと単純ボリュームデータの石灰化領域cには、心臓の動き及び心拍位相の違い(呼吸性の移動)に起因して、ぶれ(blurring)が生じている。そこで、以下の処理において、造影ボリュームデータのCT値のプロファイルと単純ボリュームデータのCT値のプロファイルとを基に、石灰化領域Cの中の石灰化コア領域C0と石灰化領域cの中の石灰化コア領域c0とをそれぞれ演算する。そして、造影ボリュームデータの石灰化コア領域C0と単純ボリュームデータの石灰化コア領域c0とを用いて位置合わせして、造影ボリュームデータと単純ボリュームデータとを合成処理する。
【0050】
石灰化コア領域演算部55は、石灰化領域検出部54によって検出された石灰化領域Cを基に石灰化コア領域C0を演算する機能を有する。また、石灰化コア領域演算部55は、石灰化領域検出部54によって検出された石灰化領域cを基に石灰化コア領域c0を演算する機能を有する。石灰化コア領域演算部55は、石灰化領域Cの石灰化コア領域C0の補正関数(CT値のプロファイル上の裾野の広がり)を、石灰化領域Cに該当する画素のCT値の平均値及び標準偏差からそれぞれ求めてもよいし、ガンマ関数又は既知の再構成フィルタのMTF(modulation transfer function)を使ってデコンボリューションして求めてもよい。石灰化コア領域演算部55は、第n(n=1,2,…,N)の石灰化領域C[n]について、第m(m=1,2,…,M)の石灰化コア領域C0[n,m]を演算する。石灰化領域cの石灰化コア領域c0についても石灰化領域Cと同様である。
【0051】
図7は、造影ボリュームデータに基づくCT値のプロファイルをグラフとして示す図である。
【0052】
図7に示す縦軸は、造影ボリュームデータのCT値を示し、横軸は、右上画像中の直線上の座標を示す。
【0053】
図7は、造影ボリュームデータのCT値のプロファイルと、第1の石灰化領域C[1]と、第1の石灰化領域C[1]の第1の石灰化コア領域C0[1,1]及び第2の石灰化コア領域C0[1,2]とを1次元的に示したものである。また、図7は、造影ボリュームデータのCT値のプロファイルに基づく、血管領域Bの補正関数Pと、石灰化コア領域C0[1,1]の補正関数Q1と、石灰化コア領域C0[1,2]の補正関数Q2とを示す。
【0054】
図8は、石灰化領域C[n]と、石灰化領域C[n]の石灰化コア領域C0[n,m]との関係を示す図である。
【0055】
図8(a)は、造影ボリュームデータに基づく造影CT画像(部分画像)を示している。図8(b)は、図8(a)から検出される石灰化領域C[1]を示している。図8(c)は、造影ボリュームデータに基づく造影CT画像(部分画像)の中の石灰化コア領域を示している。図8(d)は、図8(a)から演算される、石灰化領域C[1]の中の石灰化コア領域C0[1,1]と石灰化コア領域C0[1,2]とを示している。図8(e)は、図8(b)に示す石灰化領域C[1]と、図8(d)に示す石灰化コア領域C0[1,1],C0[1,2]とを合成した図である。
【0056】
図2に示す対応付け処理部56は、石灰化コア領域演算部55によって演算された造影ボリュームデータの石灰化コア領域C0と、単純ボリュームデータの石灰化コア領域c0との対応付け処理を行なう機能を有する。対応付け処理部56は、補正造影ボリュームデータの血管領域B(単純ボリュームデータの推定血管領域b)の起始部側の石灰化コア領域C0(石灰化コア領域c0)から末梢部側の石灰化コア領域C0(石灰化コア領域c0)に向けて順に番号を付して対応させる。
【0057】
位置合わせ処理部57は、対応付け処理部56による対応付け処理を基に、造影ボリュームデータと単純ボリュームデータとについて線形・非線形の位置合わせ処理を行なう機能を有する。例えば、位置合わせ処理部57は、正規化相互情報量を類似度として用いる手法や解剖情報を用いる手法等により線形・非線形の位置合わせを行なう。位置合わせ処理部57は、ボリュームデータ全体、又は指定された対象構造物のみを位置合わせできる。例えば、位置合わせ処理部57は、造影ボリュームデータと単純ボリュームデータとの一部分のみを対象とすることができる。
【0058】
合成処理部58は、位置合わせ処理部57によって位置合わせされた造影ボリュームデータと単純ボリュームデータとを基に、単純ボリュームデータに、石灰化領域Cを合成して合成ボリュームデータを生成する機能を有する。合成処理前の単純ボリュームデータに基づく単純CT画像(部分画像)を、図9に示す。合成処理後の合成ボリュームデータに基づく合成CT画像(部分画像)を、図10に示す。
【0059】
インターフェース部59は、表示装置46を介して表示された合成CT画像の表示画面上で、合成された石灰化領域Cを、入力装置45を介して変更可能なユーザインターフェースである。
【0060】
差分処理部60は、造影ボリュームデータと合成処理部58によって生成された合成ボリュームデータとの差分処理を行なうことで、差分ボリュームデータを生成する機能を有する。差分ボリュームデータは、表示装置46を介して表示される。
【0061】
図11は、図2に示す本実施形態のX線CT装置1の機能の変形例を示すブロック図である。
【0062】
画像処理装置12のCPU41がプログラムを実行することによって、X線CT装置1は、図11に示すように、ボリュームデータ生成部51、血管領域検出部52、血管領域推定部53、石灰化領域検出部54A、石灰化コア領域演算部55A、石灰化領域推定部61、石灰化コア領域演算部55B、対応付け処理部56、位置合わせ処理部57、合成処理部58、インターフェース部59、及び差分処理部60として機能する。なお、X線CT装置1の構成要素51乃至61の全部又は一部は、X線CT装置1にハードウェアとして備えられるものであってもよい。
【0063】
石灰化領域検出部54Aは、石灰化領域検出部54の一部の機能と同様に、血管領域推定部53によって推定された推定血管領域bの周辺に存在する石灰化領域c、すなわち、推定血管領域bから所定範囲内に現れる石灰化領域cを検出する機能を有する。
【0064】
石灰化コア領域演算部55Aは、石灰化コア領域演算部55の一部の機能と同様に、石灰化領域検出部54Aによって検出された石灰化領域cを基に石灰化コア領域c0を演算する機能を有する。
【0065】
石灰化領域推定部61は、血管領域検出部52によって血管領域が検出された造影ボリュームデータと、石灰化コア領域演算部55Aによって石灰化コア領域c0が演算された単純ボリュームデータとの全体、及び臓器全体の位置合わせを実行する機能と、石灰化コア領域c0から造影ボリュームデータの石灰化領域Cを推定する機能とを有する。
【0066】
患者Oに注入される造影剤が高濃度の場合、単純ボリュームデータの石灰化領域cと比較して、造影ボリュームデータの石灰化領域Cのぶれ(Burring)が大きい。造影ボリュームデータの石灰化領域Cのぶれ(Burring)は、造影剤のぶれ(Burring)の影響に起因している。そこで、石灰化領域推定部61は、石灰化コア領域演算部55Aによって演算された単純ボリュームデータの石灰化コア領域c0を基に、造影ボリュームデータの石灰化領域Cを推定するものである。
【0067】
石灰化コア領域演算部55Bは、石灰化コア領域演算部55の一部の機能と同様に、石灰化領域推定部61によって推定された石灰化領域Cを基に石灰化コア領域C0を演算する機能を有する。
【0068】
対応付け処理部56は、石灰化コア領域演算部55Bによって演算された造影ボリュームデータの石灰化コア領域C0と、石灰化コア領域演算部55Aによって演算された単純ボリュームデータの石灰化コア領域c0との対応付け処理を行なう機能を有する。
【0069】
なお、図11において、図2と同一機能には同一符号を付して説明を省略する。
【0070】
石灰化領域推定部61は、非造影ボリュームデータの石灰化領域cに基づいて、造影ボリュームデータにおける、石灰化領域cの対応領域としての石灰化領域Cの画素値又はそれらの補正値(以下、「画素値等」という。)を推定してもよい。石灰化領域推定部61は、石灰化領域Cの画素値を直接求めてもよいし、差分処理後の偽像を低減するような補正値を求めて、直接求められた石灰化領域Cの画素値を補正するようにしてもよい。その場合、差分処理部60は、非造影ボリュームデータと造影ボリュームデータとの差分処理を行なうことで差分ボリュームデータを生成する際、差分ボリュームデータにおける、石灰化領域Cに対応する領域の画素値については、推定された石灰化領域Cの画素値等を用いて求める。
【0071】
本実施形態のX線CT装置1によると、造影ボリュームデータと単純ボリュームデータとを石灰化コア領域C0,c0を基に位置合わせして、単純ボリュームデータに、石灰化領域Cを合成して合成ボリュームデータを生成し、合成ボリュームデータを基に表示を行なうことで、石灰化領域Cがぶれを発生するものであるかを視認できる。
【0072】
また、本実施形態のX線CT装置1によると、造影ボリュームデータと単純ボリュームデータとを石灰化コア領域C0,c0を基に位置合わせして、単純ボリュームデータに、石灰化領域Cを合成して合成ボリュームデータを生成し、造影ボリュームデータと合成ボリュームデータの差分処理を行なうことで差分ボリュームデータを生成することで、高CT値である石灰化領域Cをキャンセルできるので、血管内腔の評価に適した画像を提供できる。
【0073】
なお、本実施形態のX線CT装置1は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、本実施形態のX線CT装置1に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0074】
1 X線CT装置
11 スキャナ装置
12 画像処理装置
29 インジェクタ
32 コントローラ
41 CPU
51 ボリュームデータ生成部
52 血管領域検出部
53 血管領域推定部
54,54A 石灰化領域検出部
55,55A,55B 石灰化コア領域演算部
56 対応付け処理部
57 位置合わせ処理部
58 合成処理部
59 インターフェース部
60 差分処理部
61 石灰化領域推定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造影後に取得される造影データを基に、造影領域と、前記造影領域の周辺に存在する高CT(computed tomography)値領域とを取得する造影側取得手段と、
前記造影データと、位置合わせされた、非造影で取得される単純データとを基に、前記造影領域に対応する、前記単純データにおける推定造影領域を推定する推定手段と、
前記単純データを基に、前記推定造影領域の周辺に存在する高CT値領域を取得する単純側取得手段と、
前記造影データのCT値のプロファイルを基に、前記造影データの高CT値領域に含まれるコア領域を演算すると共に、前記単純データのCT値のプロファイルを基に、前記単純データの高CT値領域に含まれるコア領域を演算するコア領域演算手段と、
前記造影データのコア領域と前記単純データのコア領域とを基に前記造影データと前記単純データとを位置合わせして、前記単純データに、前記造影データの高CT値領域を合成して合成データを生成する合成手段と、
を有する画像処理装置。
【請求項2】
前記造影データと前記合成データとの差分処理を行なうことで差分データを生成する差分手段をさらに有する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記合成データを表示する表示手段と、
前記合成データの表示画面上で、前記合成する高CT値領域を変更可能な変更手段と、をさらに有する請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記コア領域演算手段は、前記高CT値領域に対してガンマ関数又は再構成フィルタのMTF(modulation transfer function)を伝達関数として逆畳み込み演算し、前記プロファイルとの差を最小とする補正関数を用いて前記コア領域を演算する請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記合成手段は、前記造影データの前記コア領域と前記単純データの前記コア領域とを部分的に位置合わせすることで、部分的な合成データを生成する請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記合成手段は、前記造影データと前記単純データとについて線形・非線形の位置合わせを行なう請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記造影データの複数の前記コア領域のうち所要のコア領域と、前記単純データの複数の前記コア領域のうち所要のコア領域とを対応付けする対応付け手段をさらに有する請求項1乃至6のうちいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記合成手段は、前記対向付け手段によって対応付けされた前記所要のコア領域と前記所要のコア領域とを位置合わせする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記造影側取得手段は、前記コア領域演算手段によって演算された前記単純データのコア領域を基に、前記造影データの高CT値領域を取得する請求項1乃至8のうちいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
非造影画像データと、造影画像データとを記憶する記憶手段と、
前記非造影画像データの血管領域に基づいて、対象物質が存在する対象物質領域を抽出する抽出手段と、
前記非造影画像データの前記対象物質領域に基づいて、前記造影画像データにおける、前記対象物質領域の対応領域の画素値又はそれらの補正値を推定する推定手段と、
前記非造影画像データと前記造影画像データとの差分処理を行なうことで差分画像データを生成するものであり、かつ、前記差分画像データにおける、前記対応領域に対応する領域の画素値については、前記推定された対応領域の画素値又は補正値を用いて求める差分手段と、
を有する画像処理装置。
【請求項11】
前記非造影画像データに基づいて、前記抽出された対象物質領域のうちコア領域を求める第1コア領域演算手段と、
前記造影画像データに基づいて、前記推定された対応領域のうちコア領域を求める第2コア領域演算手段と、
前記第1及び前記第2コア領域演算手段によって求められた前記第1及び第2コア領域に基づいて、前記非造影画像データと前記造影画像データとの位置合わせを行なう位置合せ手段と、をさらに有し、
前記差分手段は、前記位置合せ手段の位置合せ結果に基づいて、前記差分画像データを生成する請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
X線源及びX線検出器によって構成され、非造影で取得される単純データと、造影後に取得される造影データとを生成するスキャン手段と、
前記造影データを基に、造影領域と、前記造影領域の周辺に存在する高CT値領域とを取得する造影側取得手段と、
前記造影データと、位置合わせされた前記単純データとを基に、前記造影領域に対応する、前記単純データにおける推定造影領域を推定する推定手段と、
前記単純データを基に、前記推定造影領域の周辺に存在する高CT値領域を取得する単純側取得手段と、
前記造影データのCT値のプロファイルを基に、前記造影データの高CT値領域に含まれるコア領域を演算すると共に、前記単純データのCT値のプロファイルを基に、前記単純データの高CT値領域に含まれるコア領域を演算するコア領域演算手段と、
前記造影データのコア領域と前記単純データのコア領域とを基に前記造影データと前記単純データとを位置合わせして、前記単純データに、前記造影データの前記高CT値領域を合成して合成データを生成する合成手段と、
を有するX線CT装置。
【請求項13】
前記造影データと前記合成データとの差分処理を行なうことで差分データを生成する差分手段をさらに有する請求項12に記載のX線CT装置。
【請求項14】
造影後に取得される造影データを基に、造影領域と、前記造影領域の周辺に存在する高CT値領域とを取得し、
前記造影データと、位置合わせされた、非造影で取得される単純データとを基に、前記造影領域に対応する、前記単純データにおける推定造影領域を推定し、
前記単純データを基に、前記推定造影領域の周辺に存在する高CT値領域を取得し、
前記造影データのCT値のプロファイルを基に、前記造影データの高CT値領域に含まれるコア領域を演算すると共に、前記単純データのCT値のプロファイルを基に、前記単純データの高CT値領域に含まれるコア領域を演算し、
前記造影データのコア領域と前記単純データのコア領域とを基に前記造影データと前記単純データとを位置合わせして、前記単純データに、前記造影データの高CT値領域を合成して合成データを生成する画像処理方法。
【請求項15】
前記造影データと前記合成データとの差分処理を行なうことで差分データを生成する請求項14に記載の画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図11】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−200285(P2012−200285A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64813(P2011−64813)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】