説明

画像処理装置および画像処理方法

【課題】印刷品質を高めるための画像処理と多値擬似階調処理による擬似輪郭防止のためのノイズ付加とを行なう場合において、それぞれの効果を十分得る。
【解決手段】RGB形式の画像データを入力して、CMYK形式の画像データを生成する画像処理方法であって、RGB形式の画像データを、輝度データを含む色表現形式の画像データに変換するステップと、輝度データの少なくとも一部の領域に対して、平滑化処理を行うステップと、輝度データに対して、下地除去処理を行うステップと、輝度データを含む色表現形式の画像データをCMYK形式の画像データに変換するステップと、CMYK形式の画像データを用いて多値擬似階調処理を行なう多値擬似階調ステップと、を有することを特徴とする画像処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に係り、特に、RGB形式の画像データをCMYK形式に変換し、多値擬似階調処理を施して出力する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式等のカラー印刷装置では、各インク色についてドットのオンオフの2値で擬似的な中間調表現を行なっており、この際に階調性を高めるために2値の誤差拡散処理やディザ法が広く用いられてきた。2値の誤差拡散処理では、2値の出力のみで自然な中間調を表現するために、1つのドットを処理する度に元の値と処理後の値の誤差を未処理の周りのドットの処理に反映させ、誤差を拡散しながらドットの2値化処理を行なう。
【0003】
近年では、ドットを複数のサイズで打ち分けたり、同一インク色について濃度の高いインクと低いインクとを用いたりすることで、ドットを3位置以上の多値で表現できるようになっており、より印刷品質が高められている。
【0004】
ドットを多値で表現する場合には、多値誤差拡散処理や多値ディザ法などの多値の擬似階調処理を施すことで擬似中間調表現が行なわれる。例えば、特許文献1に記載されているように、多値誤差拡散処理では量子化値付近の濃度を出力する際に、擬似輪郭が発生するという問題があり、擬似輪郭を防止するために、画像データや量子化閾値にノイズを付加することが行なわれている。
【特許文献1】特開2000−270210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
擬似輪郭を防止するために、画像データにノイズを付加する際には、例えば、印刷用の画像データを構成するCMYKのそれぞれに対してノイズを付加することも考えられるが、リソースを削減するために、画像データから輝度成分を抽出して、輝度成分に対してノイズを付加することが行なわれている。
【0006】
ところで、読み取った原稿を複写印刷する際には、印刷品質を高めるために読み取った画像データに対して平滑化処理、エッジ強調処理、下地除去処理等が行なわれている。ここで、平滑化処理は、複写された原稿の写真領域にモアレが発生することを防ぐために行ない、エッジ強調処理は、複写された原稿の文字部分を認識しやすくするために行ない、下地除去処理は、原稿が新聞、再生紙、色付き用紙等の下地濃度が比較的濃い場合に、複写された原稿の文字をはっきりと読みやすくしたり、インクの消費量を削減したりするために行なう処理である。
【0007】
これらの処理は画像処理であるため、擬似輪郭を防止するためのノイズを付加するタイミングを考慮しなければ、ノイズ付加の効果が薄れたり、画像処理に悪影響を与えたりして、期待通りの印刷結果が得られないことになる。
【0008】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、印刷品質を高めるための画像処理と多値擬似階調処理による擬似輪郭発生防止のためのノイズ付加とを行なう場合において、それぞれの効果を十分得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様である画像処理装置は、RGB形式の画像データを入力して、CMYK形式の画像データを出力する画像処理装置であって、前記RGB形式の画像データを、輝度データを含む色表現形式の画像データに変換する第1色変換部と、前記輝度データに対して、下地除去処理を行う下地除去処理部と、下地除去処理後の輝度データに対してノイズ成分を付加するノイズ付加部と、ノイズ成分を付加された輝度データを含む色表現形式の画像データをCMYK形式の画像データに変換する第2色変換部と、前記第2色変換部によって変換されたCMYK形式の画像データを用いて多値擬似階調処理を行なう多値擬似階調処理部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本態様では、下地処理後の輝度データに対してノイズ成分を付加するため、ノイズ付加によって下地処理における下地濃度の精度が低下してしまうことを防ぐことができる。このため、印刷品質を高めるための下地処理と、多値擬似階調による擬似輪郭発生防止のためのノイズ付加の効果を十分得ることが可能となる。なお、多値擬似階調処理は、多値擬似拡散処理、多値ディザ処理等とすることができる。
【0011】
この場合、前記ノイズ付加部は、輝度データが取り得る最大値および最小値に対してはノイズを付加しないことが望ましい。これにより、ノイズ付加により下地が再発生してしまうことを防ぐことができる。
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の第2の態様である画像処理装置は、RGB形式の画像データを入力して、CMYK形式の画像データを出力する画像処理装置であって、前記RGB形式の画像データを、輝度データを含む色表現形式の画像データに変換する第1色変換部と、前記輝度データの少なくとも一部の領域に対して、平滑化処理を行う平滑化処理部と、平滑化処理後の輝度データに対してノイズ成分を付加するノイズ付加部と、ノイズ成分を付加された輝度データを含む色表現形式の画像データをCMYK形式の画像データに変換する第2色変換部と、前記第2色変換部によって変換されたCMYK形式の画像データを用いて多値擬似階調処理を行なう多値擬似階調処理部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
本態様では、平滑化処理後の輝度データに対してノイズ成分を付加するため、ノイズ付加の効果が平滑化処理によって失われてしまうことを防ぐことができる。このため、印刷品質を高めるための平滑化処理と、多値擬似階調処理による擬似輪郭発生防止のためのノイズ付加の効果を十分得ることが可能となる。なお、多値擬似階調処理は、多値擬似拡散処理、多値ディザ処理等とすることができる。
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の第3の態様である画像処理方法は、RGB形式の画像データを入力して、CMYK形式の画像データを生成する画像処理方法であって、前記RGB形式の画像データを、輝度データを含む色表現形式の画像データに変換する第1色変換ステップと、前記輝度データに対して、下地除去処理を行う下地除去ステップと、前記下地除去処理後の輝度データに対してノイズ成分を付加するノイズ付加ステップと、ノイズ成分を付加された輝度データを含む色表現形式の画像データをCMYK形式の画像データに変換する第2色変換ステップと、前記第2色変換ステップにおいて変換されたCMYK形式の画像データを用いて多値擬似階調処理を行なう多値擬似階調ステップと、を有することを特徴とする。
【0015】
本態様では、下地処理後の輝度データに対してノイズ成分を付加するため、ノイズ付加によって下地処理における下地濃度の精度が低下してしまうことを防ぐことができる。このため、印刷品質を高めるための下地処理と多値擬似階調処理による擬似輪郭発生防止のためのノイズ付加の効果を十分得ることが可能となる。なお、多値擬似階調処理は、多値擬似拡散処理、多値ディザ処理等とすることができる。
【0016】
この場合、前記ノイズ付加部は、輝度データが取り得る最大値および最小値に対してはノイズを付加しないことが望ましい。これにより、ノイズ付加により下地が再発生してしまうことを防ぐことができる。
【0017】
上記課題を解決するため、本発明の第4の態様である画像処理方法は、RGB形式の画像データを入力して、CMYK形式の画像データを生成する画像処理方法であって、前記RGB形式の画像データを、輝度データを含む色表現形式の画像データに変換する第1色変換ステップと、前記輝度データの少なくとも一部の領域に対して、平滑化処理を行う平滑化ステップと、前記平滑化処理後の輝度データに対してノイズ成分を付加するノイズ付加ステップと、ノイズ成分を付加された輝度データを含む色表現形式の画像データをCMYK形式の画像データに変換する第2色変換ステップと、前記第2色変換ステップにおいて変換されたCMYK形式の画像データを用いて多値擬似階調処理を行なう多値擬似階調ステップと、を有することを特徴とする。
【0018】
本態様では、平滑化処理後の輝度データに対してノイズ成分を付加するため、ノイズ付加の効果が平滑化処理によって失われてしまうことを防ぐことができる。このため、印刷品質を高めるための平滑化処理と、多値擬似階調処理による擬似輪郭発生防止のためのノイズ付加の効果を十分得ることが可能となる。なお、多値擬似階調処理は、多値擬似拡散処理、多値ディザ処理等とすることができる。
【0019】
上記課題を解決するため、本発明の第5の態様である画像処理方法は、RGB形式の画像データを入力して、CMYK形式の画像データを生成する画像処理方法であって、前記RGB形式の画像データを、輝度データを含む色表現形式の画像データに変換する第1色変換ステップと、前記輝度データの少なくとも一部の領域に対して、平滑化処理を行う平滑化ステップと、前記平滑化処理後の輝度データに対して、下地除去処理を行う下地除去ステップと、前記下地除去処理後の輝度データに対してノイズ成分を付加するノイズ付加ステップと、ノイズ成分を付加された輝度データを含む色表現形式の画像データをCMYK形式の画像データに変換する第2色変換ステップと、前記第2色変換ステップにおいて変換されたCMYK形式の画像データを用いて多値擬似階調処理を行なう多値擬似階調ステップと、を有することを特徴とする。
【0020】
本態様では、下地処理後および平滑化処理後の輝度データに対してノイズ成分を付加するため、ノイズ付加によって下地処理における下地濃度の精度が低下してしまうことおよびノイズ付加の効果が平滑化処理によって失われてしまうことを防ぐことができる。このため、印刷品質を高めるための下地処理および平滑化処理と、多値擬似階調処理による擬似輪郭発生防止のためのノイズ付加の効果を十分得ることが可能となる。なお、多値擬似階調処理は、多値擬似拡散処理、多値ディザ処理等とすることができる。
【0021】
前記画像データの写真領域を判別する写真領域判別ステップをさらに有し、前記平滑化ステップにおける平滑化処理は、写真領域と判別された領域に対して行なうようにしてもよい。この場合、前記画像データの文字領域を判別する文字領域判別ステップと、文字領域と判別された領域に対してエッジ強調処理を行なうエッジ強調ステップとをさらに有するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、印刷品質を高めるための画像処理と多値擬似拡散処理による擬似輪郭防止のためのノイズ付加とを行なう場合において、それぞれの効果を十分得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、多値擬似階調処理として多値誤差拡散処理を用いた場合を例に説明する。図1は、本発明に係る画像処理装置を含む複写システムの構成を示すブロック図である。本図に示すように、複写システムは、原稿の画像を読み込んでRGB形式の画像データを出力する画像読取装置10と、RGB形式の画像信号を入力して、CMYK形式の画像データを出力する画像処理装置20と、CMYK形式の画像データに基づいて印刷を実行するインクジェット印刷装置30とを備えている。複写システムは、画像読取装置10で読み取った原稿の画像に基づいてインクジェット印刷装置30で印刷を行なうことにより原稿の複写を行なうことができる。本発明の画像処理装置20は、本複写システムのように、原稿を読み取って得られた画像データに対する画像処理を行なう場合に特に効果的に適用することができるが、例えば、PC等の情報処理装置で生成された画像データに対して画像処理を行なう場合にも適用することができる。
【0024】
画像読取装置10は、受光素子であるCCD、光源、原稿台、原稿台カバー、CCDを走査させる駆動モータ、CCDの出力信号をデジタル信号に変換するADコンバータ等を備えており、原稿台に載置された原稿に光を照射し、その反射光をCCDで読み取ることにより、原稿の画像データを取得する。本実施形態において、出力する画像データは、各色8ビット(256階調)のRGB形式であるとする。ただし、画像読取装置10が出力する画像データの階調は各色8ビットに限られない。
【0025】
画像処理装置20は、画像読取装置10と所定のプロトコルで通信を行なってRGB形式の画像データを受信する入力インタフェース21と、CPU、RAM、ROM等を備えたコントローラ22と、インクジェット印刷装置30と所定のプロトコルで通信を行なって、CMYK形式の画像データを出力する出力インタフェース23とを備えている。
【0026】
インクジェット印刷装置30は、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインクを用いており、多数のノズルを備えた印字ヘッドから印刷用紙に対してインク滴を吐出することによって印刷を行なうカラー印刷装置である。インクジェット印刷装置30は、吐出するインク滴の大きさを制御可能で、各インク色について1ドット当たり3値以上の多値を表現できる。本実施形態では、大ドット出力、中ドット出力、小ドット出力、出力なしの4階調で表現できるものとする。このため、画像処理装置20からインクジェット印刷装置30に出力される画像データは、各インク色の各ドットについて4階調の値を示したものである。
【0027】
図2は、画像処理装置20の機能構成を示すブロック図である。本図に示すように画像処理装置20は、RGBデータ入力部210、RGB→YCbCr変換部211、画像補正部212、変倍処理部213、下地除去部214、ノイズ付加部215、YCbCr→RGB変換部216、ガンマ変換部217、RGB→CMYK変換部218、多値誤差拡散部219、CMYKデータ出力部220を備えている。これらの機能部は、図1に示した入力インタフェース21、コントローラ22、出力インタフェース23の各部が、単体で、もしくは協同的に処理を行なうことで、ソフトウェア的あるいはハードウェア的に実現することができる。なお、YCbCr形式は、色をY(輝度)とCbCr(色差)で表現する形式である。
【0028】
RGBデータ入力部210は、画像読取装置10が出力する各色8ビットRGB形式の画像データを入力するための処理を行なう。また、RGBデータ入力部210は、図示しないPC等の情報処理装置、デジタルカメラ等から画像データを入力するようにしてもよい。
【0029】
RGB→YCbCr変換部211は、RGB形式の画像データをYCbCr形式に変換する処理を行ない、輝度(Y)データと色差(CbCr)データとに分離する。なお、RGB形式からYCbCr形式への変換は、例えば、「数1」に従って行なうことができる。ただし、他の方法を用いてYCbCr形式に変換してもよい。また、Y(輝度)が取得できれば他の色表現形式であってもよい。
【数1】


画像補正部212は、読み取った画像データを複写印刷する際の印刷結果を向上させるための画像補正処理を行なう。画像補正処理は、輝度(Y)データに対して行なう。具体的には、入力した画像データから文字領域と写真領域とを判定し、写真領域に含まれる輝度データに対してモアレの発生を防ぐために平滑化処理を行ない、文字領域に含まれる輝度データに対して文字を認識しやすくするためにエッジ強調処理を行なう。このため、画像補正部212は、文字領域/写真領域判定部221、平滑化部222、エッジ強調部223を備えている。
【0030】
文字領域/写真領域判定部221は、輝度データに基づいて、原稿の画像データにおける文字領域と写真領域とを判定する。文字領域と写真領域との判定アルゴリズムは従来の技術を用いることができる。例えば、濃度差が大きく、縦棒、横棒等の文字構成要素が多く含まれる領域を文字領域と判定し、濃度変化が滑らかで大きい領域を写真領域と判定することができる。平滑化部222は、写真領域と判定された領域の輝度データを平滑化する。平滑化は従来の技術を用いることができ、例えば、各画素の輝度値について周辺画素との加重平均を算出することにより行なうことができる。エッジ強調部223は、文字領域と判定された領域の輝度データのエッジ強調を行なう。エッジ強調は従来の技術を用いることができ、例えば、ラプラシアンフィルタを用いることで行なうことができる。ただし、原稿の種類等に応じて、領域の判定を行なわずに、一律に平滑化処理、エッジ強調処理等を行なうようにしてもよい。
【0031】
変倍処理部213は、ユーザから変倍複写の指示を受け付けることができ、変倍複写が指示された場合に指定された倍率で変倍処理を行なう。変倍処理は、例えば、画像補整後下地除去前に行なう場合には、一旦RGB形式に変換して、RGBデータを用いて変倍を行ない、変倍後の画像データを再度YCbCr形式に変換する。ただし、変倍処理は他のタイミングで行なうようにしてもよい。
【0032】
下地除去部214は、輝度データに基づいて原稿の下地色を除去する処理を行なう。下地除去処理は、原稿が新聞、再生紙、色付き用紙等の下地濃度が比較的濃い場合に、複写された原稿の文字をはっきりと読みやすくしたり、インクの消費量を削減したりするために広く行なわれている処理である。下地除去処理は従来の技術を用いて行なうことができる。例えば、輝度データに基づいてヒストグラムを作成し、その形状から下地濃度を推定し、下地濃度に対応する輝度データ領域を除去することで行なうことができる。
【0033】
ノイズ付加部215は、輝度データに対してノイズを付加する処理を行なう。輝度データに対してノイズを付加することによって、多値誤差拡散処理による擬似輪郭の発生を防ぐことができる。ノイズの付加は、例えば、所定値内でランダムに発生する正負のノイズ値を輝度データに加えることで行なうことができる。
【0034】
本実施形態では、輝度データに対してノイズを付加することにより、CMYKデータそれぞれに対してノイズを付加する場合と比較して画像処理装置20のリソース使用量を削減することができる。さらに、本実施形態では、ノイズ付加後に下地除去処理を行なうのではなく、下地除去後の輝度データに対してノイズを付加するようにしている。これにより、ノイズ付加によって下地除去処理における下地推定が不正確になることを防いでいる。また、平滑化処理後の輝度データに対してノイズを付加することで、平滑化処理によってノイズ付加の効果が失われることを防いでいる。
【0035】
なお、下地除去処理後の輝度データに対してノイズを付加する際には、付加されたノイズによる下地色の再発生等を防ぐために輝度値255および輝度値0のデータに対してはノイズ付加を行なわないようにする。
【0036】
YCbCr→RGB変換部218は、YCbCr形式の画像データをRGB形式に変換する処理を行なう。この際、画像補正部212により画像補正が施され、下地除去部214により下地が除去され、ノイズ付加部215によりノイズが付加された輝度データを用いてRGB形式に変換する。なお、YCbCr形式からRGB形式への変換は、例えば、「数2」に従って行なうことができる。ただし、他の方法を用いてRGB形式に変換してもよい。
【数2】


ガンマ変換部217は、RGB形式の画像データをインクジェット印刷装置30の出力特性等に合わせたガンマ変換処理を行なう。
【0037】
RGB→CMYK変換部218は、RGB形式の画像データを各色8ビットのCMYK形式の画像データに変換する処理を行なう。RGB形式からCMYK形式への変換は、例えば、あらかじめRGBの代表値とCMYK値との対応関係が記録されたルックアップテーブルを用いて行なうことができる。
【0038】
多値誤差拡散部219は、各色8ビットで表現されたCMYK形式の画像データを、各色について大ドット出力、中ドット出力、小ドット出力、出力なしの4階調で中間調を擬似的に表現するために、多値誤差拡散処理を行なう。多値誤差拡散処理は、従来の技術を用いることができる。概要を説明すると、4階調の多値誤差拡散処理では、ドット出力として大ドット出力、中ドット出力、小ドット出力、出力なしを区分する4つの量子化値を定め(例えば、大ドットは255、中ドットは170、小ドットは85、出力なしは0など)、3つの区間に量子化閾値をそれぞれ定める(量子化閾値は、例えば、各区間の中間値とすることができる)。そして、最初の注目画素の各CMYK値に基づいてドット出力の割り当てを定める(例えば、注目画素のCMYK値が大ドットと中ドットの区間にある場合、その区間の量子化閾値と比較し、大ドットか中ドットかが決定される)。その後、この画素のCMYK値と決定された量子化値との誤差を周辺画素のCMYK値に重みをつけて拡散させて次の注目画素のドット出力の割り当てを定めるという処理を、画素をずらして繰り返すことで多値誤差拡散処理を行なうことができる。
【0039】
CMYKデータ出力部220は、多値誤差拡散処理が施されドットごとにCMYKの多値で表わされた画像データをインクジェット印刷装置30に出力するための処理を行なう。また、CMYKデータ出力部220は、画像データをファイルに保存したり、インクジェット印刷装置30以外の装置に出力したりしてもよい。
【0040】
次に、本実施形態における画像処理装置20の動作について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0041】
画像処理装置20は、まず、画像読取装置10で読み取られたRGB形式の画像データをRGBデータ入力部210が入力する(S101)。そして、入力したRGB形式の画像データをRGB→YCbCr変換部211が輝度(Y)データと色差(CbCr)データとに分離する(S102)。
【0042】
次いで、分離された輝度データを用いて、文字領域/写真領域判定部221が画像データ中の文字領域と、写真領域とを判定する(S103)。写真領域と判定された領域に対しては、平滑化部222が輝度データに対して平滑化処理を行ない(S104)、文字領域と判定された領域に対してはエッジ強調部223が輝度データに対してエッジ強調処理を行なう(S105)。
【0043】
平滑化、エッジ強調が施された輝度データを用いて下地処理部214が下地除去処理を行なう(S106)。下地除去処理は、例えば、図4のフローチャートに示す手順に従って行なうことができる。すなわち、輝度データを用いて、輝度値の分布を示すヒストグラムを作成する(S1061)。そして、所定の基準にしたがって、下地濃度を推定する(S1062)。下地濃度の推定は従来技術を用いることができる。例えば、簡易な手法では、ヒストグラムの最も輝度が高い側の極大値を下地濃度として推定することができる。下地濃度が推定されると、推定された下地濃度以下の輝度値を有する画素を最高輝度値に変換することで、下地の画素を除去することができる(S1063)。
【0044】
下地除去処理(S106)を終えると、ノイズ付加部215が、輝度データに対してノイズを付加する(S107)。このように、本実施形態では、下地除去後の輝度データに対してノイズを付加するようにしている。なお、上述のように、付加されたノイズによる下地色の再発生等を防ぐために、輝度データの取り得る最大値および最小値である輝度値255および輝度値0のデータに対してはノイズ付加を行なわないようにする。
【0045】
そして、YCbCr→RGB変換部216が、ノイズが付加された輝度(Y)データと、YCbCr変換処理(S102)で分離された色差(CbCr)データとを用いてRGB変換を行なう(S108)。
【0046】
なお、ユーザによって変倍が指示されている場合には、例えば、図5に示すように、下地除去処理(S106)とノイズ付加処理(S107)の間に変倍処理を行なうことができる。すなわち、下地除去処理(S106)後の輝度データと、YCbCr変換処理(S102)で分離された色差(CbCr)データとを用いてRGB変換を行ない(S201)、RGB形式の画像データに対して、指示された倍率の変倍処理を行なう(S202)。その後、RGB形式の画像データを再度YCbCr形式に変換し(S203)、輝度データに対してノイズ付加を行なう(S107)。そして、YCbCr→RGB変換部216が、ノイズが付加された輝度(Y)データと、YCbCr変換処理(S203)で分離された色差(CbCr)データとを用いてRGB変換を行なう(S108)ようにすればよい。
【0047】
RGB変換を行なうと、ガンマ変換部217が、RGB形式に変換された画像データに対して、インクジェット印刷装置30の出力特性等に合わせたガンマ変換処理を施す(S109)。次いで、ガンマ変換処理後の各色8ビットのRGB形式の画像データをRGB→CMYK変換部218が各色8ビットのCMYK形式に変換する(S110)。
【0048】
そして、多値誤差拡散部219が、各色8ビットのCMYK形式の画像データを、CMYK各色4階調で中間調表示するために、多値誤差拡散処理を行なう(S111)。本実施形態において、各色8ビットのCMYK形式の画像データは、処理S107で輝度データに対してノイズが付加されているため、多値誤差拡散処理による擬似輪郭の発生を防ぐことができる。
【0049】
多値誤差拡散処理により、各ドットがインク色ごとに4階調で表わされたCMYKデータをCMYKデータ出力部220がインクジェット印刷装置30に出力することで(S112)、画像読取装置10で読み取った原稿の複写印刷が行なわれる。
【0050】
なお、上記の実施形態は、ドットサイズを複数の大きさに制御することにより多値表現を行なっていたが、本発明は、同一色について濃度の高いインクと低いインクとを用いることで多値表現を行なうシステムにおいて多値誤差拡散処理を行なう場合にも適用することができる。この場合も、平滑化処理、下地処理の後であって、多値誤差拡散処理の前に輝度データに対してノイズを付加すればよい。
また、上記の実施形態では、多値擬似階調処理として多値誤差拡散処理を用いた場合を例に説明したが、本発明は、多値のディザ法処理を用いた場合についても同様に適用することができる。多値のディザ法処理(例えば、FMスクリーンの多値ディザ処理等)では、ディザマトリックスと呼ばれる閾値テーブルが複数存在し、グラデーション入力画像に対して、多値のディザ法処理を施すと、多値誤差拡散処理と同様に閾値付近で同じ値を示す領域が疑似輪郭として発生する。このような場合にも、本発明は効果的に適用することができる。この場合、図2における多値誤差拡散部219に代えて多値ディザ処理部を設け、図3における処理(S111)の多値誤差拡散ステップを、多値のディザ処理ステップに置き換えればよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】画像処理装置を含む複写システムの構成を示すブロック図である。
【図2】画像処理装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】画像処理装置の動作について説明するフローチャートである。
【図4】下地除去処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】変倍処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
10…画像読取装置
20…画像処理装置
21…入力インタフェース
22…コントローラ
23…出力インタフェース
30…インクジェット印刷装置
210…RGBデータ入力部
211…RGB→YCbCr変換部
212…画像補正部
213…変倍処理部
214…下地処理部
214…下地除去部
215…ノイズ付加部
216…YCbCr→RGB変換部
217…ガンマ変換部
218…RGB→CMYK変換部
219…多値誤差拡散部
220…CMYKデータ出力部
221…写真領域判定部
222…平滑化部
223…エッジ強調部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RGB形式の画像データを入力して、CMYK形式の画像データを出力する画像処理装置であって、
前記RGB形式の画像データを、輝度データを含む色表現形式の画像データに変換する第1色変換部と、
前記輝度データに対して、下地除去処理を行う下地除去処理部と、
下地除去処理後の輝度データに対してノイズ成分を付加するノイズ付加部と、
ノイズ成分を付加された輝度データを含む色表現形式の画像データをCMYK形式の画像データに変換する第2色変換部と、
前記第2色変換部によって変換されたCMYK形式の画像データを用いて多値擬似階調処理を行なう多値擬似階調処理部と、を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
RGB形式の画像データを入力して、CMYK形式の画像データを出力する画像処理装置であって、
前記RGB形式の画像データを、輝度データを含む色表現形式の画像データに変換する第1色変換部と、
前記輝度データの少なくとも一部の領域に対して、平滑化処理を行う平滑化処理部と、
平滑化処理後の輝度データに対してノイズ成分を付加するノイズ付加部と、
ノイズ成分を付加された輝度データを含む色表現形式の画像データをCMYK形式の画像データに変換する第2色変換部と、
前記第2色変換部によって変換されたCMYK形式の画像データを用いて多値擬似階調処理を行なう多値擬似階調処理部と、を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像処理装置であって、
前記多値擬似階調処理部が行なう多値擬似階調処理は、多値誤差拡散処理あるいは多値ディザ処理のいずれかであることを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の画像処理装置であって、
前記ノイズ付加部は、輝度データが取り得る最大値および最小値に対してはノイズを付加しないことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
RGB形式の画像データを入力して、CMYK形式の画像データを生成する画像処理方法であって、
前記RGB形式の画像データを、輝度データを含む色表現形式の画像データに変換する第1色変換ステップと、
前記輝度データに対して、下地除去処理を行う下地除去ステップと、
前記下地除去処理後の輝度データに対してノイズ成分を付加するノイズ付加ステップと、
ノイズ成分を付加された輝度データを含む色表現形式の画像データをCMYK形式の画像データに変換する第2色変換ステップと、
前記第2色変換ステップにおいて変換されたCMYK形式の画像データを用いて多値擬似階調処理を行なう多値擬似階調ステップと、を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項6】
RGB形式の画像データを入力して、CMYK形式の画像データを生成する画像処理方法であって、
前記RGB形式の画像データを、輝度データを含む色表現形式の画像データに変換する第1色変換ステップと、
前記輝度データの少なくとも一部の領域に対して、平滑化処理を行う平滑化ステップと、
前記平滑化処理後の輝度データに対してノイズ成分を付加するノイズ付加ステップと、
ノイズ成分を付加された輝度データを含む色表現形式の画像データをCMYK形式の画像データに変換する第2色変換ステップと、
前記第2色変換ステップにおいて変換されたCMYK形式の画像データを用いて多値擬似階調処理を行なう多値擬似階調ステップと、を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
RGB形式の画像データを入力して、CMYK形式の画像データを生成する画像処理方法であって、
前記RGB形式の画像データを、輝度データを含む色表現形式の画像データに変換する第1色変換ステップと、
前記輝度データの少なくとも一部の領域に対して、平滑化処理を行う平滑化ステップと、
前記平滑化処理後の輝度データに対して、下地除去処理を行う下地除去ステップと、
前記下地除去処理後の輝度データに対してノイズ成分を付加するノイズ付加ステップと、
ノイズ成分を付加された輝度データを含む色表現形式の画像データをCMYK形式の画像データに変換する第2色変換ステップと、
前記第2色変換ステップにおいて変換されたCMYK形式の画像データを用いて多値擬似階調処理を行なう多値擬似階調ステップと、を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の画像処理方法であって、
前記多値擬似階調ステップにおける多値擬似階調処理は、多値誤差拡散処理あるいは多値ディザ処理のいずれかであることを特徴とする画像処理方法。
【請求項9】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の画像処理方法であって、
前記ノイズ付加ステップでは、前記輝度データが取り得る最大値および最小値に対してはノイズを付加しないことを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−141518(P2010−141518A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314739(P2008−314739)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】