説明

画像処理装置および画像処理方法

【課題】読み取り品質の低下を回避しつつ効率よく特定画像を認識することができる画像処理装置および画像処理方法を提供すること。
【解決手段】複写機100は,判定部60にて,画像データに特定画像が含まれているか否かの判定を,簡易判定処理と詳細判定処理との2種類行う。詳細判定処理は,簡易判定処理によって特定画像が含まれると判定された場合に,その画像データについて行う。また,簡易判定処理によって特定画像が含まれると判定された場合には,画像読取部20の読み取り動作を継続した状態で,変換部30へのデータ入力と変換部30からのデータ出力との少なくとも一方を停止する。そして,詳細判定処理にて特定画像が含まれないと判定された場合には,上記の停止を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,画像の読取機能を有する画像処理装置および画像処理方法に関する。さらに詳細には,読み取った画像のうち,特定画像の出力を中断する画像処理装置および画像処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,複写機等の画像処理装置においては,複製が禁止されている画像(例えば,紙幣や有価証券)の出力を防止する技術がある。このような特定画像の出力を防止する技術としては,例えば特許文献1に,特定画像が含まれるか否かの認識処理を行う画像処理装置が開示されている。この画像処理装置では,始めに画像データが一定の条件を満たすか否かの予備認識処理を行い,一定の条件を満たす場合に,特定画像が含まれるか否かの認識処理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−313819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,前記した従来の画像処理装置には,次のような問題があった。すなわち,認識処理には,高い認識精度が要求されることから,処理が完了するまでに時間がかかる。そのため,認識処理が終了しないうちに画像が出力されてしまわないように,認識処理を行う際には画像の読み取りを一時停止させることがある。この一時停止は,認識処理において特定画像を含まないと判定されると解除され,この一時停止の解除を契機に読み取り動作が再開することになる。この読み取りの停止および再開によって生じる読み取り速度の変動は,読み取り品質の低下を招くおそれがある。
【0005】
本発明は,前記した従来の複写機が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,読み取り品質の低下を回避しつつ効率よく特定画像を認識することができる画像処理装置および画像処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題の解決を目的としてなされた画像処理装置は,原稿の画像を読み取る読取部と,読取部で読み取った画像データを記憶する第1記憶部と,第1記憶部に記憶された画像データを取り出して出力データに変換する変換部と,変換部で変換された出力データを記憶する第2記憶部と,第2記憶部に記憶された出力データを取り出して出力処理を行う出力部と,画像データに特定画像が含まれているか否かを判定する簡易判定処理を行い,簡易判定処理にて特定画像が含まれると判定された場合に,その簡易判定の判定対象となった画像データに特定画像が含まれているか否かを簡易判定処理よりも詳細に判定する詳細判定処理を行う判定部と,簡易判定処理にて特定画像が含まれると判定されたことを契機に,読取部の読み取り動作を継続した状態で,変換部へのデータ入力と変換部からのデータ出力との少なくとも一方を停止し,詳細判定処理にて特定画像が含まれないと判定された場合に上記停止を解除し,詳細判定処理にて特定画像が含まれると判定された場合に,出力処理を中断する中断処理を実行する制御部とを備えることを特徴としている。
【0007】
本発明の画像処理装置は,読取部で読み取った原稿の画像データを第1記憶部に記憶し,変換部によってその画像データを出力データに変換する。さらに,変換後の出力デー
タを第2記憶部に記憶し,出力部によって出力データを出力処理する。出力データには,例えば,印刷データが該当し,その場合,出力部によって印刷処理が行われる。
【0008】
また,本発明の画像処理装置は,画像データに特定画像が含まれているか否かの判定を行う処理として,簡易な判定である簡易判定処理と厳密な判定である詳細判定処理とが実行可能である。このうち詳細判定処理は,簡易判定処理によって特定画像が含まれると判定された場合に,その画像データについて行う。すなわち,画像データ全体で詳細判定処理を行うのではなく,簡易判定処理によって特定画像が含まれる可能性が高い部分を抽出し,その部分についてのみ詳細判定処理を行う構成になっている。さらに,簡易判定処理によって特定画像が含まれると判定された場合には,読取部の読み取り動作を継続した状態で,変換部へのデータ入力と変換部からのデータ出力との少なくとも一方を停止する。そして,詳細判定処理にて特定画像が含まれないと判定された場合には,上記の停止を解除する。一方,詳細判定処理にて特定画像が含まれると判定された場合には,出力処理を中断する中断処理を実行する。中断処理は,変換部によって変換された出力データをそのまま出力する行為を中断することを指しており,中断処理には,公知の偽造対策処理(例えば,印刷停止,読取停止,黒塗り印刷)が適用可能である。
【0009】
すなわち,本発明の画像処理装置は,詳細判定処理中,変換部への入力あるいは出力あるいはその両方を停止して,詳細判定処理の対象データ(すなわち,特定画像を含むか否か未確定のデータ)の出力を防止する。一方で,画像の読み取りは継続する。つまり,本発明の画像処理装置では,判定結果が得られるまでに長時間がかかる詳細判定処理中であっても,読み取り動作は継続する。そのため,読み取り速度の変動が発生する可能性は低い。
【0010】
また,本発明の画像処理装置は,未判定分のデータが閾値以下となるように変換部から第2記憶部へのデータの書き込みを制限する制限部を備えるとよい。この構成により,判定が完了しないうちに特定画像が出力されてしまうリスクを低減できる。なお,未判定分のデータとしては,画像データであってもよいし,出力データであってもよい。
【0011】
また,本発明の画像処理装置の出力部は,制御部によって変換部へのデータ入力と変換部からのデータ出力との少なくとも一方を停止した際,第2記憶部に記憶されている出力データの量が出力許可量を下回ったことを条件に,出力処理を停止するとよい。詳細判定処理中は出力処理も継続する方が望ましい。
【0012】
また,本発明の画像処理装置の簡易判定処理には,第1記憶部に記憶されている画像データを用いる。この構成により,判定材料が早期に入手できるので判定結果も早期に得られる。
【0013】
また,本発明は,別の形態として,原稿の画像を読み取る読取部と,読取部で読み取った画像データを記憶する第1記憶部と,第1記憶部に記憶された画像データを取り出して出力データに変換する変換部と,変換部で変換された出力データを記憶する第2記憶部と,第2記憶部に記憶された出力データを取り出して出力処理を行う出力部とを備える画像処理装置の画像処理方法であって,画像データに特定画像が含まれているか否かを判定する簡易判定処理を行う簡易判定ステップと,簡易判定処理にて特定画像が含まれると判定された場合に,その簡易判定の判定対象となった画像データに特定画像が含まれているか否かを簡易判定処理よりも詳細に判定する詳細判定処理を行う詳細判定ステップと,簡易判定処理にて特定画像が含まれると判定されたことを契機に,読取部の読み取り動作を継続した状態で,変換部へのデータ入力と変換部からのデータ出力との少なくとも一方を停止する停止ステップと,詳細判定処理にて特定画像が含まれないと判定された場合に,上記停止を解除する解除ステップと,詳細判定処理にて特定画像が含まれると判定された
場合に,出力処理を中断する中断処理を実行する中断ステップとを含むことを特徴とする画像処理方法を含んでいる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば,読み取り品質の低下を回避しつつ効率よく特定画像を認識することができる画像処理装置および画像処理方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態にかかる複写機の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示した複写機の概略機能構成を示すブロック図である。
【図3】複写機の読取処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】複写機の防止処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】第2メモリの概略構成を示す図である。
【図6】複写機の印刷処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】コピー動作におけるデータの流れを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下,本発明にかかる画像処理装置を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,原稿の読み取り機能と画像の印刷機能とを有する複写機に本発明を適用したものである。
【0017】
[複写機の全体構成]
実施の形態の複写機100は,図1に示すように,用紙に画像を形成する画像形成部10(出力部の一例)と,原稿の画像を読み取る画像読取部20(読取部の一例)とを備えている。また,画像読取部20の前面側には,液晶ディスプレイからなる表示部や,スタートキー,ストップキー,テンキー等から構成されるボタン群から構成される操作部40が設けられ,この操作部40により動作状況の表示やユーザによる入力操作が可能になっている。
【0018】
[複写機の機能構成]
続いて,複写機100の機能構成について説明する。複写機100は,図2に示すように,画像形成部10(出力部の一例)と,画像読取部20(読取部の一例)と,画像読取部20が読み取った原稿の画像データを記憶する第1メモリ21(第1記憶部の一例)と,画像データを印刷用の印刷データに変換する変換部30(変換部の一例)と,印刷データを記憶する第2メモリ11(第2記憶部の一例)と,特定画像が含まれているか否かを判定する判定部60(判定部の一例)と,変換部30へのデータの入出力を制御する制御部50(制御部の一例)とを備えている。画像形成部10,画像読取部20,変換部30,判定部60,および制御部50は,それぞれが独立して動作する。
【0019】
画像読取部20は,CIS(Contact Image Sensor)方式のイメージセンサ(不図示)を有している。イメージセンサ25で読み取られた原稿の画像データは,R(レッド),B(ブルー),G(グリーン)の3色のRGBアナログデータとして出力され,さらにA/D変換器(不図示)によってRGBデジタルデータに変換される。このRGBデジタルデータは,第1メモリ21に格納される。以下,第1メモリ21に格納されたRGBデジタルデータを「画像データ」とする。
【0020】
変換部30は,第1メモリ21から画像データを読み出し,RGBデジタルデータである画像データを,画像形成部10での印刷に利用可能なC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),K(ブラック)の4色のCMYKデータに変換する。このCMYKデータは,第2メモリ11に格納される。以下,第2メモリ11に格納されたCMYKデータを「印刷データ」とする。
【0021】
画像形成部10は,第2メモリ11から印刷データを読み出し,インクジェット方式によって用紙に画像を印刷する。なお,画像形成部10で扱われるデータは,1ページよりも小さい単位であればよく,ドット単位,数ドット単位,ライン単位,数ライン単位のいずれであってもよい。本形態では,ライン単位で印刷データを扱うものとする。
【0022】
判定部60は,第1メモリ21から数ライン単位で画像データを読み出し,その画像に特定画像が含まれるか否かを判定する。特定画像には,例えば,複製が禁止されている画像(例えば,紙幣や有価証券)が該当する。判定部60と変換部30とは,互いに独立して処理を行うことから,判定部60による判定処理と変換部30による変換処理とは並行して動作する。
【0023】
また,判定部60は,簡易判定と詳細判定との2つの判定処理を実施する。簡易判定は,特定画像が含まれているとの判定をするための処理のうち,一部分の処理を実施する処理である。一方,詳細判定は,特定画像が含まれているとの判定をするための処理のうち,少なくとも簡易判定が行っていない部分の処理を実施する処理である。
【0024】
例えば,簡易判定は,パターンマッチング等によって,特定画像が含まれる可能性がある箇所を高速に抽出する。この簡易判定は,特定画像の疑いがあるものを広く抽出する処理であり,特定画像を含まないものも多く抽出される。詳細判定は,簡易判定によって抽出された箇所について,特定画像が含まれるか否かを高精度に判定する。詳細判定は,簡易判定よりも判定内容が複雑であり,結果が得られるまでに時間を要する。
【0025】
制御部50は,判定部60の判定結果に基づいて,変換部30へのデータの入出力を制御する。具体的に本形態では,簡易判定にて特定画像が含まれると判定された場合に,変換部30からの印刷データの出力を停止する。そして,詳細判定にて特定画像が含まれないと判定された場合には,上記の停止を解除する。一方,詳細判定にて特定画像が含まれると判定された場合には,画像読取部20による原稿の読み取りおよび画像形成部10による印刷を中断する。
【0026】
[複写機のコピー動作]
続いて,本形態の複写機100のコピー動作について説明する。前述したように,本形態の複写機100は,特定画像の複写を防止する機能を有している。そのため,複写機100は,コピー動作において,原稿の読み取りや画像の印刷を行いつつ,特定画像の判定を行う。
【0027】
以下のコピー動作の説明では,コピー動作を,読取処理と,防止処理と,印刷処理とに分けて説明する。なお,これらの処理と並行して,画像データを印刷データに変換する変換処理が独立して実行される。この変換処理については説明を省略する。
【0028】
[読取処理]
始めに,原稿の読取処理について,図3のフローチャートを参照しつつ説明する。まず,コピー開始の指示を受け付け,さらに原稿が所定の位置にあることを検知したことを契機に,画像読取部20にて原稿の読み取りを開始する(S001)。読み取った画像データは,第1メモリ21に格納される。なお,第1メモリ21に格納された画像データは,変換処理によって印刷データに変換され,変換後の印刷データが第2メモリ11に格納される。
【0029】
次に,中止要求があったか否かを判断する(S002)。中止要求は,ユーザからのキャンセル指示の他,後述する特定画像複写防止処理において偽造対策処理を実行した際にも出力される。中止要求があった場合には(S002:YES),原稿の読み取りを停止し(S005),読取処理を終了する。
【0030】
中止要求がなかった場合には(S002:NO),第1メモリ21に所定容量以上の空きがあるか否かを判断する(S003)。メモリの空きがある場合には(S003:YES),原稿の読み取りが完了したか否かを判断する(S004)。読み取りが完了していなければ(S004:NO),S002に戻って読み取りを継続する。読み取りが完了している場合(S004:YES),あるいはメモリの空きがない場合には(S003:NO),原稿の読み取りを停止し(S005),読取処理を終了する。
【0031】
[防止処理]
続いて,特定画像の複写を防止する防止処理について,図4のフローチャートを参照しつつ説明する。防止処理は,原稿の読み取り開始を契機に実行される。
【0032】
まず,原稿の読み取りが終了したか否かを判断する(S101)。原稿の読み取りが終了している場合には(S101:YES),防止処理を終了する。原稿の読み取りを継続している場合には(S101:NO),第1メモリ21から未判定の画像データを数ライン分読み出す(S102)。
【0033】
次に,第2メモリ11に格納されている印刷データのうち,特定画像の判定が未完了のデータ(以下,「未判定データ」とする)のライン数(以下,「未判定ライン数」とする)が第1閾値以上であるか否かを判断する(S103)。
【0034】
図5は,コピー動作中の,第2メモリ11内の状態の概要を示している。第2メモリ11には,防止処理とは別に動作している変換処理によって,変換部30から出力された印刷データが格納される。画像形成部10での印刷が完了すると,印刷データは印刷済みのデータとなって印刷データとして扱われなくなる。
【0035】
また,第2メモリ11に格納されている印刷データは,特定画像か否かの判定が完了したデータ(以下,「判定済データ」とする)と,未判定データとが混在する。制御部50は,第2メモリ11に格納されている判定済データのライン数と印刷データのライン数とを保有しており,印刷データのライン数と判定済データのライン数との差から未判定ライン数が求められる。
【0036】
画像形成部10は,印刷データが判定済データであるか否かにかかわらず,第2メモリ11に印刷データが蓄積されているならば印刷を継続する。そのため,判定部60での処理が遅延すると,未判定データが多く印刷されることになる。その結果,特定画像が印刷される可能性が高くなる。
【0037】
そこで,第2メモリ11内に未判定データが第1閾値以上に蓄積した場合には(S103:YES),変換部30から第2メモリ11への印刷データの出力を停止する(S104)。これにより,第2メモリ11への印刷データの投入が一時的に停止し,第2メモリ11内に格納される未判定データが増え続けることが抑制される。その結果,特定画像の出力が抑制される。
【0038】
第2メモリ11への出力を停止した後,あるいは第2メモリ11内に未判定データが第1閾値以上に蓄積していない場合には(S103:NO),判定部60による簡易判定を行う(S105)。そして,簡易判定の結果に基づいて,特定画像が含まれるか否かを判断する(S106)。簡易判定は,後述の詳細判定よりも簡易な判定であり,特定画像に含まれる特定のパターンを有する画像部位を抽出する。つまり,特定画像が含まれる可能性が高い画像部位を抽出する。そして,特定画像が含まれる可能性が高い画像部位を抽出した場合にのみ,その部位の詳細判定を行う。
【0039】
次に,簡易判定によって特定画像を含まないと判定された場合には(S106:NO),S104による第2メモリ11へのデータ出力停止中であるか否かを判断する(S121)。出力停止中でなければ(S121:NO),S101に戻り,防止処理を継続する。
【0040】
出力停止中であれば(S121:YES),第2メモリ11中の未判定ライン数が第2閾値よりも少ないか否かを判断する(S122)。第2閾値は,第2メモリ11へのデータ出力を再開するための閾値であり,第1閾値よりも小さい。未判定ライン数が第2閾値よりも少ない場合には(S122:YES),第2メモリ11へのデータ出力の停止を解除し(S123),S101に戻って防止処理を継続する。一方,未判定ライン数が第2閾値以上の場合には(S122:NO),第2メモリ11へのデータ出力の停止を継続し,S101に戻って防止処理を継続する。
【0041】
一方,簡易判定によって特定画像を含むと判定された場合には(S106:YES),S104と同様に,変換部30から第2メモリ11への印刷データの出力を停止する(S107)。これにより,この時点で第2メモリ11に格納されている印刷データは印刷されるが,それ以上の印刷は停止が解除されるまで行われないことになる。また,S107では,変換部30から第2メモリ11への印刷データの出力を停止しているが,画像読取部20の原稿の読み取り動作は停止していない。そのため,画像読取部20は,原稿の読み取りを継続している。このことは,S104も同様である。
【0042】
S107の後,判定部60による詳細判定を行う(S108)。そして,詳細判定の結果に基づいて,特定画像が含まれるか否かを判断する(S109)。詳細判定では,簡易判定によって抽出された画像部位に特定画像が含まれるか否かを,簡易判定よりも厳密に判定する。
【0043】
詳細判定によって特定画像を含まないと判定された場合には(S109:NO),S123に移行して,第2メモリ11への印刷データの出力停止を解除し,S101に戻って防止処理を継続する。すなわち,特定画像を含まないことが判ったため,データの流れを元に戻してコピー動作を継続する。
【0044】
一方,詳細判定によって特定画像を含むと判定された場合には(S109:YES),特定画像の出力を防止するための偽造対策処理を行う(S110)。偽造対策処理(中断処理の一例)としては,公知の偽造対策処理が適用可能であり,本形態では,画像読取部20に中止要求を出力し,画像読取部20による原稿の読み取りを中断する。S110の後は,防止処理を終了する。
【0045】
なお,本形態の防止処理では,変換部30からの出力停止中に画像読取部20の読み取りを継続しているが,詳細判定に時間がかかると第1メモリ21あるいは変換部30のバッファが容量不足になりえる。その場合は,画像読取部20の読み取り動作を中断し,エラー発生を回避する。
【0046】
[印刷処理]
続いて,画像の印刷処理について,図6のフローチャートを参照しつつ説明する。まず,原稿の読み取り開始後,第2メモリ11に印刷データがあることを検知したことを契機に,画像形成部10にて印刷データの印刷を開始する(S201)。
【0047】
次に,第2メモリ11に未印刷の印刷データが残っているか否かを判断する(S202)。未印刷の印刷データがなければ(S202:NO),印刷を停止し(S205),印刷処理を終了する。
【0048】
未印刷の印刷データがあれば(S202:YES),第2メモリ11への印刷データの出力停止中であるか否かを判断する(S203)。印刷データの出力停止中でなければ(S203:NO),S202に戻って印刷を継続する。
【0049】
印刷データの出力停止中であれば(S203:YES),未印刷の印刷データのライン数が所定の印刷許可数より少ないか否かを判断する(S204)。未印刷の印刷データのライン数が所定の印刷許可数以上の場合は(S204:NO),S202に戻って印刷を継続する。一方,未印刷の印刷データのライン数が所定の印刷許可数よりも少ない場合は(S204:YES),印刷を停止し(S205),印刷処理を終了する。
【0050】
図7は,コピー動作におけるデータの流れを示している。図7中,(A)は画像読取部20から第1メモリ21への流れを,(B)は第1メモリ21から変換部30への流れを,(C)は変換部30から第2メモリ11への流れを,(D)は第2メモリ11から画像形成部10への流れを,それぞれ示している。
【0051】
図7に示すように,コピー動作時には,画像読取部20によって読み取られた画像データが,第1メモリ21,変換部30,第2メモリ11,画像形成部10の順に流れ,画像形成部10の印刷によって出力される。そして,そのデータの流れとは別に,画像データに特定画像が含まれるか否かの判定処理を行い,簡易判定によって画像データに特定画像が含まれると判定された場合には,画像読取部20の読み取り動作を継続した状態で,変換部30からの印刷データの出力を停止する。すなわち,少なくとも(A)の流れを止めずに,(C)のみ流れを止める。その後,詳細判定にて特定画像が含まれないと判定された場合には,上記(C)の流れの停止を解除する。一方,詳細判定にて特定画像が含まれると判定された場合には,データの流れを止めたまま,偽造防止処理を実行する。
【0052】
以上詳細に説明したように本形態の複写機100では,詳細判定中,変換部30からの出力を停止し,詳細判定の対象データ(すなわち,特定画像を含むか否か未確定のデータ)の印刷を防止している。一方で,画像の読み取りは継続している。つまり,複写機100は,判定結果が得られるまでに長時間がかかる詳細判定中であっても,変換部30からの出力(図7中の(C)の流れ)を停止するのみであって,読み取り動作(図7中の(A)の流れ)は継続させる。その後,特定画像を含まないと判定されたことを契機に,変換部30からの出力を再開することで,原稿の読み取りを停止することなく,コピー動作を続行できる。そのため,特定画像の判定に伴う読み取り速度の変動を低減できる。よって,読み取り品質の低下を回避することが期待できる。
【0053】
また,印刷処理においても,第2メモリ11への印刷データの出力停止中(つまり,判定処理中),残りライン数が印刷許可数より少なくなるまでは印刷動作(図7中の(D)の流れ)を継続している。そして,残りライン数が印刷許可数より少なくなるまでに詳細判定が完了し,特定画像がないと判定された場合には,変換部30から第2メモリ11への出力が再開されることから,印刷を停止することなく,コピー動作を続行できる。一方で,印刷処理は,印刷データがなくなれば終了する。つまり,特定画像があると判定された場合には,第2メモリ11への印刷データの出力停止後の印刷データは格納されないことから,特定画像を印刷することなく印刷処理を終了できる。
【0054】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,複写機に限らず,原稿の読取機能と読み取った画像の出力機能とを備えるものであれば適用可能である。そのため,例えば,複合機であってもよい。
【0055】
また,実施の形態では,読み取った画像データを印刷出力しているが,出力機能も印刷機能に限るものではなく,例えば,USBメモリへの画像データの出力処理であってもよい。
【0056】
また,実施の形態では,第1メモリ21に格納された画像データを用いて特定画像の有無を判定しているが,第2メモリ11に格納された印刷データを用いてもよい。なお,実施の形態のように,第1メモリ21に格納されている画像データを用いる方が,判定材料を早期に入手でき,さらに判定結果を早期に得られる。その結果として,第2メモリ11内の未判定の印刷データの量を少なくすることが期待できる。
【0057】
また,実施の形態では,簡易判定にて特定画像が含まれると判定された場合に,変換部30からの印刷データの出力(図7中の(C)の流れ)を停止しているが,必ずしも印刷データの出力に限るものではない。例えば,変換部30への画像データの入力(図7中の(B)の流れ)を停止してもよい。また,変換部30からの印刷データの出力と変換部30への画像データの入力との両方を停止してもよい。すなわち,変換部30に対する画像データの入力と印刷データの出力との少なくとも一方を停止すればよい。
【0058】
また,実施の形態では,詳細判定にて特定画像が含まれると判定された場合に,偽造対策処理として,画像読取部20による原稿の読み取りおよび画像形成部10による印刷を中断しているが,これに限るものではない。例えば,特定画像に該当する箇所を,黒塗りや白抜きにした画像を出力してもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 画像形成部
11 第2メモリ
20 画像読取部
21 第1メモリ
30 変換部
50 制御部
60 判定部
100 複写機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿の画像を読み取る読取部と,
前記読取部で読み取った画像データを記憶する第1記憶部と,
前記第1記憶部に記憶された画像データを取り出して出力データに変換する変換部と,
前記変換部で変換された出力データを記憶する第2記憶部と,
前記第2記憶部に記憶された出力データを取り出して出力処理を行う出力部と,
前記画像データに特定画像が含まれているか否かを判定する簡易判定処理を行い,前記簡易判定処理にて特定画像が含まれると判定された場合に,その簡易判定の判定対象となった画像データに特定画像が含まれているか否かを前記簡易判定処理よりも詳細に判定する詳細判定処理を行う判定部と,
前記簡易判定処理にて特定画像が含まれると判定されたことを契機に,前記読取部の読み取り動作を継続した状態で,前記変換部へのデータ入力と前記変換部からのデータ出力との少なくとも一方を停止し,前記詳細判定処理にて特定画像が含まれないと判定された場合に上記停止を解除し,前記詳細判定処理にて特定画像が含まれると判定された場合に,前記出力処理を中断する中断処理を実行する制御部と,
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載する画像処理装置において,
未判定分のデータが閾値以下となるように前記変換部から前記第2記憶部へのデータの書き込みを制限する制限部を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する画像処理装置において,
前記出力部は,前記制御部によって前記変換部へのデータ入力と前記変換部からのデータ出力との少なくとも一方を停止した際,前記第2記憶部に記憶されている出力データの量が出力許可量を下回ったことを条件に,出力処理を停止することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載する画像処理装置において,
前記簡易判定処理には,前記第1記憶部に記憶されている画像データを用いることを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載する画像処理装置において,
前記変換部は,画像データを印刷データに変換するものであり,
前記出力処理は,印刷データを印刷する印刷処理であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
原稿の画像を読み取る読取部と,
前記読取部で読み取った画像データを記憶する第1記憶部と,
前記第1記憶部に記憶された画像データを取り出して出力データに変換する変換部と,
前記変換部で変換された出力データを記憶する第2記憶部と,
前記第2記憶部に記憶された出力データを取り出して出力処理を行う出力部と,
を備える画像処理装置の画像処理方法において,
前記画像データに特定画像が含まれているか否かを判定する簡易判定処理を行う簡易判定ステップと,
前記簡易判定処理にて特定画像が含まれると判定された場合に,その簡易判定の判定対象となった画像データに特定画像が含まれているか否かを前記簡易判定処理よりも詳細に判定する詳細判定処理を行う詳細判定ステップと,
前記簡易判定処理にて特定画像が含まれると判定されたことを契機に,前記読取部の読み取り動作を継続した状態で,前記変換部へのデータ入力と前記変換部からのデータ出力との少なくとも一方を停止する停止ステップと,
前記詳細判定処理にて特定画像が含まれないと判定された場合に,上記停止を解除する解除ステップと,
前記詳細判定処理にて特定画像が含まれると判定された場合に,前記出力処理を中断する中断処理を実行する中断ステップと,
を含むことを特徴とする画像処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−249882(P2011−249882A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117752(P2010−117752)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】