説明

画像処理装置および画像処理方法

【課題】記録媒体に対応させてパッチ記録後の色安定時間を設けてキャリブレーションを行う構成において、登録されていない記録媒体についても高精度なキャリブレーションを実行することを可能とする。
【解決手段】記録終了後から記録された画像の色変化が安定するまでに必要な待機時間(色安定時間)を検知する(S201)。次に、対象となる記録メディアの目標濃度値となるターゲット値を設定する。(S202)。そして、その記録メディアと対応づけた色安定時間情報、ターゲット値情報をキャリブレーション対応メディア情報として格納する(S203)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像処理方法に関し、詳しくは、記録する画像の濃度ないし色についてキャリブレーションを実行する際に記録されたパッチの色安定のための待機時間を設定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタなど多くの記録装置では、装置の個体差や環境の変化、長期的な使用による経時変化などの要因によって、出力する画像の濃度や色が変化することがある。このような現象の対策としてキャリブレーションが行われる。キャリブレーションは、一般に、プリンタでパッチを記録し、これを分光測色計、スキャナなどの測定器を用いて測色し、それから求められる本来出力されるべき目標の色や濃度との差に応じて、テーブルなどの画像処理パラメータを作成ないし更新するものである。このようなキャリブレーションによって、その対象であるプリンタの経時変化にかかわらず記録される画像を目標の色や濃度に近づけることができる。あるいは、このようなキャリブレーションを複数の記録装置間で実行することにより、装置間で同じ濃度ないし色の記録が可能となる。
【0003】
ところで、このキャリブレーションにおいて、パッチを記録したときにその濃度ないし色が安定するまでに一定の長い時間を要することがある。このため、パッチを記録した後直ちに測色を行うと、その測色結果がそのときの記録装置の実際の記録特性を表しておらず、結果としてキャリブレーションによって更新された画像処理パラメータが適切でないものとなることがある。そして、濃度ないし色が安定するまでの時間は、記録媒体の種類に応じて比較的大きく異なることも知られている。このため、パッチを記録する記録媒体(以下、記録メディアとも言う)の種類に応じて、パッチを記録した後測色するまでに一定の待機時間を設定することが行われている。
【0004】
特許文献1には、記録メディアの種類と待機時間が対応付けられた情報を予めメモリに保持しておき、キャリブレーションを実行する際に、パッチ記録に用いる記録メディアの種類に応じて、パッチの記録終了後から測色までの待機時間を設定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−255910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている方法では、予め登録されていない記録メディアについては、その記録メディアに適切な待機時間を設定することができず、結果として高精度なキャリブレーションができないという課題がある。
【0007】
本発明は、記録媒体に対応させてパッチ記録後の色安定時間を設けるキャリブレーションにおいて、登録されていない記録媒体についても高精度なキャリブレーションを実行することが可能な画像処理装置および画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのために本発明では、記録装置において記録媒体にパッチを記録させ、該記録したパッチの測定値に基づいて画像処理パラメータを作成または更新する、キャリブレーションを実行する画像処理装置であって、パッチを記録するために用いる記録媒体と同じ種類の記録媒体に測定用画像を記録し、該記録した測定用画像について測定される濃度の変化が所定値以下となる時間を、前記パッチを記録するために用いる記録媒体にパッチを記録してからそのパッチを測定するまでの待機時間として決定する、色安定時間検知手段、を具えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上の構成によれば、記録媒体に対応させてパッチ記録後の色安定時間を設けるキャリブレーションにおいて、登録されていない記録媒体についても高精度なキャリブレーションを実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る記録システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すプリンタ200の機械的構成の概略を示す斜視図である。
【図3】図1に示すプリンタ200の制御構成を示すブロック図である。
【図4】図1〜図3にて上述した本実施形態の記録システムにおける記録データを生成するための画像処理の構成を示すブロック図である。
【図5】(a)は、図4に示した構成による画像処理の手順を示すフローチャートであり、(b)は、キャリブレーション処理の手順を示すフローチャートであり、(c)は、本発明の第2の実施形態における環境変化を考慮したキャリブレーション実施工程を示すフローチャートである。
【図6】(a)は、本発明の第1の実施形態に係る、登録されていない記録メディアをキャリブレーションに対応させるための処理を示すフローチャートであり、(b)は、図6(a)に示す色安定時間検知処理の詳細を示すフローチャートであり、(c)は、図6(a)に示すターゲット設定処理の詳細を示すフローチャートである。
【図7】(a)および(b)は、第1実施形態で使用するパッチを説明する図である。
【図8】時間経過による濃度変化を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0012】
[記録システム構成の概要]
図1は、本発明の一実施形態に係る記録システムの構成を示すブロック図である。図1において、情報処理装置としてのホスト装置100は、パーソナルコンピュータなど、プリンタ(記録装置)200に接続される装置である。このホスト装置100は、CPU10と、メモリ11と、記憶部13と、キーボードやマウス等の入力部12と、プリンタ200との間の通信のためのインターフェース14とを備えている。CPU10は、メモリ11に格納されたプログラムに従い、以下で説明される処理など種々の処理を実行するものである。
【0013】
ホスト100とプリンタ200は、インターフェースを介して接続されており、後述する画像処理における、R′、G′、B′で表される画像データや、キャリブレーションに関連するパラメータ情報などの受け渡しが行われる。
【0014】
[記録装置の概要]
プリンタ(記録装置)200は、送信された画像処理情報に基づいて、特に、後述の色処理、2値化処理や、本発明の実施形態に関する記録特性の補正処理などの画像処理を実行する。また、画像処理によって得られる記録データに基づいて記録を行う。
【0015】
図2は、上述したプリンタ200の機械的構成の概略を示す斜視図である。インクタンク205〜208は、4つのインク(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー:K、C、M、Y)をそれぞれ収容しており、これら4種類のインクを対応するそれぞれの記録ヘッド201〜204に対して供給する。
【0016】
搬送ローラ209、210は、補助ローラ211、212とともに記録メディア(記録媒体)214を挟持しながら回転して搬送(副走査)するとともに、保持する役割も担っている。キャリッジ213は、インクタンク205〜208および記録ヘッド201〜204、濃度センサ215を搭載しており、図中X方向に沿って往復移動(主走査)可能に構成されている。このキャリッジ213の往復移動中に記録ヘッドからインクが吐出され、これにより記録媒体に画像が記録される。主走査方向の記録走査の後、搬送ローラ209、210が回転して、主走査方向と交差する副走査方向(Y方向)へと記録媒体が搬送(副走査)される。このような記録ヘッドの記録走査と記録メディアの搬送とを繰り返すことにより記録メディア214に対する画像の記録が完成する。
【0017】
また、キャリッジ213の往復移動中に、濃度センサ215を用いて記録メディアに記録されたパッチ等の濃度測定を行うことができる。この主走査による濃度測定走査と、搬送ローラによる記録メディアの搬送によって、記録メディア上に記録されたパッチなどの濃度測定を行うことができる。
【0018】
[制御系の概要]
図3は、上述したプリンタ200の制御構成を示すブロック図である。この制御系の制御部20は、マイクロプロセッサ等のCPU20a、ROM20cおよびRAM20b等をメモリとして備えている。ROM20cは、CPU20aの制御プログラムや記録動作に必要なパラメータなどの各種データを格納している。RAM20bは、CPU20aのワークエリアとして使用されると共に、ホスト装置から受信した画像データや生成した記録データなどの各種データの一時保管等を行う。また、RAM20bには、図5、図6で後述される画像処理やキャリブレーションに係る処理プログラムや、キャリブレーションに用いられるターゲット値などのパラメータや、パッチを記録するためのパッチデータが格納されている。
【0019】
制御部20は、インタフェース21を介してホスト装置100との間で画像データ等の記録に用いられるデータ、パラメータを入出力する処理や、操作パネル22から各種情報(例えば文字ピッチ、文字種類等)を入力する処理を行う。また、制御部20は、インタフェース21を介して各モータ23〜26を駆動させるためのON、OFF信号を出力する。さらに、吐出信号等をドライバ28に出力して記録ヘッドにおけるインク吐出のための駆動を制御する。
【0020】
また、この制御系は、操作パネル22、ドライバ27、28、29を有している。ドライバ27は、CPU20aからの指示に従ってキャリッジ駆動用のモータ23、搬送ローラ駆動用のモータ25を駆動し、ドライバ28は記録ヘッド5を駆動する。ドライバ29は濃度センサ215を駆動する。
【0021】
図4は、図1〜図3にて上述した本実施形態の記録システムにおける記録データを生成するための画像処理の構成を示すブロック図である。本実施形態の画像処理は、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)各色8ビット(それぞれ256階調)の画像データ(輝度データ)を入力とする。そして、最終的にC、M、Y、Kの記録ヘッドが吐出する1ビットのビットイメージデータ(記録データ)を出力とする処理を行う。なお、色の種類や、色の階調はこの値に限るものではないことはもちろんである。
【0022】
先ず、ホスト装置100において、3次元のLUT401を用いてR、G、B各色8ビットの輝度信号で表現される画像データを、各色8ビットまたは10ビットのR′、G′、B′のデータに変換する。この色空間変換処理(前段色処理とも称する)は、記録対象におけるR、G、Bの画像データが表わす色空間と、プリンタ200で再現可能な色空間との間の差を補正するために行なわれる。
【0023】
前段色処理が施されたR′、G′、B′各色のデータは、プリンタ200に送信される。プリンタ200は、3次元LUT402を用いて、この前段色処理を施されたR′、G′、B′各色のデータをC、M、Y、K各色10ビットのデータに変換する。この色変換処理(後段処理とも称する)は、輝度信号で表現される入力系のRGB系画像データを、プリンタ200で用いるC、M、Y、Kの画像データに色変換するものである。
【0024】
次に、後段色処理が施されたC、M、Y、K各色10ビットのデータに対して、それぞれの色の1次元LUT403を用いて出力γ補正を行う。通常、記録メディアの単位面積当たりに記録されるドットの数と、記録された画像を測定して得られる反射濃度などの記録特性は、線形関係にならない。そのため、C、M、Y、K各10ビットの入力階調レベルとそれによって記録される画像の濃度レベルが線形関係となるように、C、M、Y、K各10ビットの入力階調レベルを補正する出力γ補正処理を行う。
【0025】
次に、本実施形態では、出力γ補正が施されたC、M、Y、K各色10ビットのデータに対して、それぞれの色の色ずれ補正用1次元LUT404を用いて色ずれ補正の出力γ補正を行う。例えば、記録装置で用いる、インクを吐出する記録ヘッドにおける個々のノズルからの吐出量、つまり記録されるドットの大きさには個体差がある。このため、上記1次元LUT403を用いた出力γ補正で記録するドット数を調整しても、得られる光学濃度の違いによって色ずれを生じることがある。このため、本実施形態では、C、M、Y、Kそれぞれの色の色ずれ補正用1次元LUT404によって色ずれ補正出力γ補正を行う。この色ずれ補正用1次元LUTは、後述する各実施形態で説明されるキャリブレーションによって、作成または更新の対象となる画像処理パラメータである。
【0026】
図5(a)は、以上図4を参照して説明した構成による画像処理の手順を示すフローチャートである。入力された画像データは、ホスト装置100において、色空間変換処理が行われる(S501)。その後、プリンタ200に転送された、色空間変換が行われた画像データに対して、色変換処理が行われ(S502)、その後出力γ処理(S503)、色ずれ補正処理が順次行われる(S504)。その後、2値化処理(量子化処理)(S505)によって、C、M、Y、K各色10ビットのデータをC、M、Y、K各色1ビットの2値データに変換する。
【0027】
次に、本実施形態におけるキャリブレーションについて説明する。ホスト装置100の入力部12を介したユーザの入力あるいはCPU10による処理の一環として、キャリブレーション開始命令が入力されることによってキャリブレーションが実行される。または、プリンタ200の操作パネル22を介したユーザの入力あるいはCPU20aによる処理の一環として、キャリブレーション開始命令が入力されることによってキャリブレーションが実行される。
【0028】
図5(b)は、キャリブレーション処理の手順を示すフローチャートである。まず、記録メディアにキャリブレーション用パッチを記録する(S401)。
【0029】
図7(b)は、このキャリブレーション用パッチを示す概略図である。パッチC1〜C8はCインク、パッチM1〜M8はMインク、パッチY1〜Y8はYインク、パッチK1〜K8はKインクで記録される。図においてパッチを識別する1〜8の数字は、記録するパッチの濃度階調(単位面積当たりに記録するインク量)に対応しており、1が最も低階調のパッチであり、数値が大きくなるに従って高階調になり、8が最も高階調のパッチである。なお、本実施形態では各色8階調であるが、これに限るものではない。また、本実施形態では濃度階調の順にパッチが配置されているが、これに限るものではないことはもちろんである。
【0030】
記録されたパッチの記録直後は、上述したように、記録メディアに対する色材の定着、インク中の水分の蒸発の進み具合に応じて、時間の経過につれた色の変化が大きい。従って、キャリブレーションに適さない。そのため、パッチの記録終了後から、色変化が安定するまで待機した後(S402)、パッチを濃度センサ215で測定し、測定された濃度値をメモリに保存する。そして、測定された各パッチの濃度値と、ターゲット値と称する予め定められている所定の目標濃度値とを比較し、記録したときのパッチの濃度がターゲット値に近づくように色ずれ補正用1次元LUTを校正する(S404)。このターゲット値は、色ごとに、また、パッチ(を特定する階調値)ごとに定められており、例えば、上述したように、記録ヘッドの各ノズルの吐出量(ドットの大きさ)の基準となるものに対応した濃度を実現できる階調値(濃度値)として規定されたものである。以上のとおり校正された色ずれ補正用1次元LUTは記録メディア種ごとに作成し、色ずれ補正用1次元LUTは記録装置本体のメモリに保存される。
【0031】
以下では、以上説明した一実施形態に係る画像処理構成による、登録されていない記録媒体を用いる場合の、キャリブレーションにおける色安定時間の設定処理のいくつかの実施形態を説明する。
【0032】
(第1実施形態)
上述したように、キャリブレーション用のパッチの記録直後は、色材の定着挙動や水分蒸発の影響により経時的な色変化が大きく、色変化が安定するまで待機時間を設けてから濃度の測定をする必要がある。図8は、記録後からの経過時間に応じたパッチの濃度値変化を示すグラフである。記録媒体Aと記録媒体Bを比較すると、記録後、測定される光学濃度が安定する(実質的に変化しなくなる)までの時間は記録媒体Bの方が長い。したがって、記録媒体Bでキャリブレーションを実施する場合は、記録媒体Aで実施する場合に比べ、長い待機時間を設ける必要がある。
【0033】
本実施形態は、登録されていない記録メディアでキャリブレーションを実施する場合に、必要な待機時間を検知し、設定するものである。
【0034】
図6(a)は、登録されていない記録メディアをキャリブレーションに対応させるための処理を示すフローチャートである。この処理は、上述したキャリブレーションの開始と同様、ホスト装置100のまたはプリンタ200によって、キャリブレーション対応メディア追加処理が指示されることによって実行される。なお、このキャリブレーション対応メディア追加処理は、例えば、プリンタのユーザが選択する、記録に用いる記録媒体の設定処理と併せて行う処理とすることができる。すなわち、新たに用いる記録媒体の種類を設定する際に、併せて行う処理とすることができる。
【0035】
先ず、記録終了後から記録された画像の色変化が安定するまでに必要な待機時間(色安定時間)を検知する(S201)。次に、対象となる記録メディアの目標濃度値となるターゲット値を設定する。(S202)。そして、その記録メディアと対応づけた色安定時間情報、ターゲット値情報をキャリブレーション対応メディア情報として格納する(S203)。
【0036】
キャリブレーション対応メディア情報は、プリンタからインターフェースを介してホスト装置100に送信することができる。また、ホスト装置100からプリンタにキャリブレーション対応メディア情報を送信し、プリンタのメモリに記録されている情報を更新することも可能である。従って、この場合は、特定の1台のプリンタにより作成されたキャリブレーション対応メディア情報は、同種類の複数台のプリンタに対応させることができる。これにより、登録されていない記録メディアを用いて高精度なキャリブレーションを実施することが可能となり、プリンタの個体差などによる色変化を防止することが可能となる。
【0037】
図6(b)は、上述した色安定時間検知処理(S201)の詳細を示すフローチャートである。
【0038】
先ず、記録メディアに色安定時間検知のためのパッチを記録する(S101)。図7(a)は、色安定時間検知用のパッチのチャートを示す模式図である。図7(a)において、この測定用画像である、パッチCt1、Ct2はCインク、パッチMt1、Mt2はMインク、パッチYt1、Yt2はYインク、パッチKt1、Kt2はKインクでそれぞれ記録される。1、2の数字はパッチの濃度階調(単位面積当たりに記録するインク量)に対応している。ここで、パッチCt1は、図7(b)に示すキャリブレーション用パッチのうち、パッチC6と、パッチCt2はパッチC8と、それぞれ同じ階調値である。M、Y、Kについても同様である。時間の経過に伴う色変化は、インクの乾燥、定着の進行具合の影響が大きいため、低濃度部よりも高濃度部(高階調部)が大きいことが多い。ただし、単位面積当たりに記録するインク量が過剰に多い場合、濃度値の変動が小さくなる場合もある。従って、色安定時間検出用チャートは、最大階調値であるパッチCt2(パッチC8と同階調)と、パッチCt2よりもやや低めの階調値であるパッチCt1(パッチC6と同階調)の2階調としている。M、Y、Kについても同様である。以上のように、色安定時間検知用パッチはキャリブレーション用パッチと比較し、高階調部のみのパッチとし、また、階調数を少なくすることができる。すなわち、記録量は少なくなる。したがって、使用するインク量や記録メディアの量を削減でき、また、測定に必要な時間も短縮することができる。なお、本実施形態では各色2階調で説明したが、これに限るものではない。階調数と濃度階調値は記録メディアの種類とインクの特性に合わせて最適化することが好ましい。例えば、普通紙を用いる場合は、画像設計上単位面積あたりに記録するインク量は比較的少ないため、最大階調値は小さくなり、階調数も少なくできる。それに対して光沢紙を用いる場合は、画像設計上単位面積あたりに記録するインク量は比較的多いため、最大階調値は大きくし、パッチ数も多くすることが望ましい。
【0039】
再び図6(b)を参照すると、パッチ記録(S101)の後、このパッチの記録が完了した時点から、色安定時間検知のためのタイマーカウントを開始し(S102)、パッチを濃度センサ215で測定する(S103)。全パッチの濃度測定には1秒の時間を要する。測定値D(T,P)は、タイマーのカウント時間(T)、パッチ種(P)ごとに保存する。その後、9秒待機した後(S104)、再度、パッチを濃度センサで測定する(S105)。前回の濃度測定との時間間隔は、9秒の待機と濃度センサ215による測定時間1秒を加算した10秒である。
【0040】
次に、色変化が安定したか否かの判定を行う(S106)。パッチを記録した記録媒体の種類ごとに、測定した濃度値D(T,P)と前回の測定に係る濃度値D(T−10,P)の差分を計算し、濃度変化量を算出する。そして、算出された全パッチの濃度変化量が設定された閾値0.005未満(所定値未満)であるときは、色変化が安定したと判断し、そのときのタイマーカウント値Tを色安定時間Taと決定する。濃度変化量が閾値0.005以上であるパッチがあった場合は、色変化は安定していないと判断し、再度9秒待機した後(S104)、パッチの測定を行い(S105)、前回の測定値との差分が閾値0.005未満であるかどうか判定する(S106)。以降、前回の測定値との差分が閾値0.005未満となるまで同様の処理を繰り返し、色安定時間を算出する。算出された色安定時間は記録媒体の種類と対応づけて、メモリに保存する。
【0041】
なお、判定に用いる閾値や、測定間の時間間隔は本実施形態に記載の数値に限るものではない。例えば、色安定をより精度高く検知したい場合は、閾値をより小さな値とし、測定間の時間間隔を広げることで実現できる。
【0042】
図6(c)は、図6(a)にて上述したターゲット設定処理(S202)の詳細を示すフローチャートである。
【0043】
先ず、記録メディアにターゲット設定用パッチを記録する(S301)。ターゲット設定用パッチは、キャリブレーション実行時の目標値とされるため、図7(b)で説明したキャリブレーション用パッチとパッチ数、階調値とも同じである。
【0044】
次に、記録終了後から、上述した色安定時間検知(S201)で求めた色安定時間Taの間、待機する(S302)。その後、濃度センサ215によりパッチを測定し(S303)、この測定結果に基づいて、その測定値をターゲット値として記録メディア種と対応づけてメモリに保存する(S304)。
【0045】
以上のように、記録終了後から色安定に必要な待機時間を設けた後に、ターゲット設定用パッチを測定することで、安定した色をターゲット値として設定することが可能となる。このターゲット値は、上述したように、例えば、新たな種類の記録媒体を設定するときに設定されるものであり、以後は、その設定した記録媒体に対応したキャリブレーションが行われるときに、ターゲット値として用いられる。
【0046】
以上、説明した予め登録されていない記録メディアをキャリブレーションに対応させる処理によって取得されたキャリブレーション対応メディア情報(記録メディアの種類、色安定時間、ターゲット値)を用いて、その記録メディアについてキャリブレーションが実行可能となる。図5(b)で説明したキャリブレーション処理のうち色安定時間待機(S402)は、上述した方法により検知された色安定時間が設定されることにより、色安定後の濃度値を測定可能になる。そして、色安定後の測定値とターゲット値とを比較し、最適な色ずれ補正用1次元LUTが作成(S404)され、画像処理時に適用されることにより、目標とする色の出力可能であり、高精度なキャリブレーションが実施可能となる。
【0047】
(第2実施形態)
上述した第1実施形態では、登録されていない記録メディアを用いて高精度なキャリブレーションを実行可能とする処理について説明したが、本発明の適用はこの形態に限るものではない。本発明の第2の実施形態は、予めキャリブレーションが実施可能なメディアを用いた場合に適用するものであり、温度、湿度等の環境の変化により、記録終了後から色変化が安定するまでの時間が変化する場合においても、高精度なキャリブレーションを実現する処理に関する。
【0048】
図5(c)は、本実施形態における環境変化を考慮したキャリブレーション実施工程を示すフローチャートである。先ず、ステップS602で示す、第1実施形態の図5(a)で説明したキャリブレーション実施工程S401〜S404の前に、ステップS601で、図6(b)を用いて説明した色安定時間検知工程を実施する。このように、キャリブレーション実施前にプリンタの置かれた環境おいての色安定時間を検知することにより、キャリブレーション用パッチの記録後から測定開始までに必要な待機時間をより精度高く設定することが可能になり、結果として精度の高いキャリブレーションが実現可能となる。
【0049】
(その他の実施形態)
上述の実施形態は、特に、キャリブレーション対応メディア追加処理を記録装置において実行するものとして説明した。この点で、上記各実施形態の記録装置は画像処理装置を構成する。また、上記キャリブレーション対応メディア追加処理は、ホスト装置において実行してもよく、その場合にこのホスト装置が画像処理装置を構成する。
【0050】
また、上記実施形態では、パッチの測定を濃度センサを行うものとしたが、本発明の適用はこれに限るものではなく、色変化を測定できるものであればいかなるものを用いてもよい。例えば、分光測色計を用いてL***値を測定し、色変化量をΔEに換算し、色変化の安定を判定してもよい。
【符号の説明】
【0051】
20 制御部
100 ホスト装置
200 記録装置(プリンタ)
201〜204 記録ヘッド
215 濃度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録装置において記録媒体にパッチを記録させ、該記録したパッチの測定値に基づいて画像処理パラメータを作成または更新する、キャリブレーションを実行する画像処理装置であって、
パッチを記録するために用いる記録媒体と同じ種類の記録媒体に測定用画像を記録し、該記録した測定用画像について測定される濃度の変化が所定値未満となる時間を、前記パッチを記録するために用いる記録媒体にパッチを記録してからそのパッチを測定するまでの待機時間として決定する、色安定時間検知手段、
を具えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記パッチを記録するために用いる記録媒体にパッチを記録し、前記色安定時間検知手段が決定した待機時間だけ待機した後、前記記録したパッチを測定し、該測定の結果に基づいて、前記作成または更新する画像処理パラメータの目標値となるターゲット値を設定するターゲット設定手段、
をさらに具えたことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
記録装置において記録媒体にパッチを記録させ、該記録したパッチの測定値に基づいて画像処理パラメータを作成または更新する、キャリブレーションを実行するための画像処理方法であって、
パッチを記録するために用いる記録媒体と同じ種類の記録媒体に測定用画像を記録し、該記録した測定用画像について測定される濃度の変化が所定値未満となる時間を、前記パッチを記録するために用いる記録媒体にパッチを記録してからそのパッチを測定するまでの待機時間として決定する、色安定時間検知工程、
を有したことを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−56468(P2013−56468A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196061(P2011−196061)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】