説明

画像処理装置及びその方法、スキャナ装置

【課題】 写真や文字等が混在する原稿画像に対して平滑化処理とエッジ強調処理とを切り替えて適用する場合に、エッジの誤認識、エッジの未検出をバランス良く抑制して、出力画像の画質を向上させることを目的とする。
【解決手段】 入力画像に対して重み付き平均化処理を施して加工画像を生成する重み付き平均化手段と、前記加工画像に対してエッジ判定を行う判定手段と、前記入力画像又は前記加工画像に対して平滑化処理を行う平滑化手段と、前記入力画像又は前記加工画像に対してエッジ強調処理を行うエッジ強調手段と、前記入力画像の各画素について、前記判定手段の判定結果に基づいて前記平滑化手段又は前記エッジ強調手段のいずれかの処理結果を選択し、該画素の処理結果として出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像の特性に応じて画質を向上させる画像処理技術に関わり、特に、原稿特性に応じてスキャンモードを指定できるスキャナ装置に好適な画像処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スキャナ等の装置では、原稿画像の特性に応じて種々の画像処理を施す機能を備えている場合が多い。例えば、写真画像や網点画像に対しては、モアレの発生等を防止すべく平滑化処理を施したり、文字画像に対しては、鮮明なエッジを形成すべくエッジ強調処理を施すことが行われる。更に、写真や文字が混在する原稿画像に対して、エッジ領域の判定を行った上で、その判定結果に応じて平滑化処理とエッジ強調処理とを切り替える方式も提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−307603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
写真や文字が混在する原稿画像に対して、エッジ領域の判定結果に基づいて平滑化処理とエッジ強調処理とを切り替えて適用する方式では、原稿画像がノイズを多く含んでいると、その影響によってエッジを誤認識する(ノイズをエッジと誤って判定する)可能性が高くなるため、適切な処理結果が得られないおそれがある。
【0004】
かかるノイズに起因するエッジの誤認識という問題は、ノイズを除去してからエッジ領域の判定を行うことで回避することは可能である。しかし、単純な平均化フィルターによってノイズ除去を行う場合、偽エッジ(ノイズ)を除去できる一方で、真のエッジも鈍ってしまう(エッジ強度が低くなる)ため、今度はエッジ未検出(真のエッジを検出できない)という問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、写真や文字等が混在する原稿画像に対して平滑化処理とエッジ強調処理とを切り替えて適用する場合に、エッジの誤認識、エッジの未検出をバランス良く抑制して、出力画像の画質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像処理装置は、入力画像に対して重み付き平均化処理を施して加工画像を生成する重み付き平均化手段と、前記加工画像に対してエッジ判定を行う判定手段と、前記入力画像又は前記加工画像に対して平滑化処理を行う平滑化手段と、前記入力画像又は前記加工画像に対してエッジ強調処理を行うエッジ強調手段と、前記入力画像の各画素について、前記判定手段の判定結果に基づいて前記平滑化手段又は前記エッジ強調手段のいずれかの処理結果を選択し、該画素の処理結果として出力する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
かかる構成によれば、平均化の作用によってノイズを除去してエッジ誤認識を抑制しつつ、重みの作用によって真のエッジについての鈍りを抑制することでエッジ未検出をも抑制することができ、エッジ判定精度を向上させることができる。その結果、写真や文字等が混在する原稿画像に対して、写真等の領域(非エッジ領域)については平滑化処理の処理結果を、文字等の領域(エッジ領域)についてはエッジ強調処理の処理結果を正確に採用して、出力画像の画質を大きく向上させることができる。
【0008】
好適には、更に、入力画像のモードとして、平滑化優先モード又はエッジ強調優先モードのいずれかを記憶する記憶手段を備え、前記重み付き平均化手段は、入力画像のモードが平滑化優先モードである場合、エッジ強調優先モードである場合に比較して、重み付き平均化処理における着目画素の重みを小さくすることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、平滑化優先モードでは、ノイズを確実に排除してエッジ誤認識を抑制することができる結果、例えば写真中の文字領域など、真のエッジ領域に対してのみエッジ強調の処理結果を採用して、鮮明な画像を得ることが可能となる。一方、エッジ強調優先モードでは、エッジ誤認識及びエッジ未検出の双方をバランスよく抑制することができる結果、テキスト画像の大半を占める文字領域等について、誤ることなくエッジ領域と判定でき、エッジ強調の処理結果を採用して鮮明な画像を得ることが可能となる。
【0010】
また、いずれのモードにおいても、エッジと判定されない領域(写真領域など)については、重み付き平均化処理と平滑化処理とによって二重にスムージングが適用されることとなり、より滑らかな画像を得ることができる。
【0011】
好適には、前記エッジ強調手段は、入力画像のモードが平滑化優先モードである場合、エッジ強調優先モードである場合に比較して、エッジ強調の程度を抑制することを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、エッジ領域が多く、従ってエッジ領域における画質が重要なテキスト原稿等を読み取った画像において、より鮮明な画像を得ることができる。
【0013】
本発明のスキャナ装置は、本発明の画像処理装置を備え、前記入力画像はスキャナにより読み取った画像であることを特徴とする。
【0014】
好適には、前記画像処理装置は、ユーザが写真原稿の読み取りに適したスキャンモードを指定した場合に、前記記憶手段に入力画像のモードとして平滑化優先モードを記憶し、ユーザがテキスト原稿の読み取りに適したスキャンモードを指定した場合に、前記記憶手段に入力画像のモードとしてエッジ強調優先モードを記憶することを特徴とする。
【0015】
本発明のプリンタシステムは、本発明の画像処理装置を備え、前記出力手段の出力結果に基づき印刷処理を実行することを特徴とする。
【0016】
本発明の画像処理方法は、入力画像に対して重み付き平均化処理を施して加工画像を生成する重み付き平均化工程と、前記加工画像に対してエッジ判定を行う判定工程と、前記入力画像又は前記加工画像に対して平滑化処理を行う平滑化工程と、前記入力画像又は前記加工画像に対してエッジ強調処理を行うエッジ強調工程と、前記入力画像の各画素について、前記判定工程の判定結果に基づいて前記平滑化工程又は前記エッジ強調工程のいずれかの処理結果を選択し、該画素の処理結果として出力する出力工程と、を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の画像処理方法は、専用ハードウェアとして実装できる他、スキャナ装置やプリンタ装置が備えるCPUにより実施することもできるが、そのためのコンピュータプログラムは、CD−ROM、磁気ディスク、半導体メモリ及び通信ネットワークなどの各種の媒体を通じてスキャナ装置等にインストールまたはロードすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、写真や文字等が混在する原稿画像に対して平滑化処理とエッジ強調処理とを切り替えて適用する場合に、エッジの誤認識、エッジの未検出をバランス良く抑制して、出力画像の画質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図面を参照して本発明の第1の実施の形態を説明する。図1は、本実施形態のプリンタスキャナシステム1の構成を表すブロック図である。図1に示すように、プリンタスキャナシステム1は、スキャナ装置10、外部ボード13、プリンタコントローラ20、外部ボード23、プリンタ装置(画像形成装置)30等のハードウェアを備えて構成される。
【0020】
(スキャナ装置10)
スキャナ装置10は、スキャナ制御手段11、スキャナエンジン12、外部ボード13を接続するためのインタフェース(図示せず)などを備えている。
【0021】
スキャナ制御手段11は、例えば、ユーザ等からスキャンモードの指定を受け付けてRAM等に記憶し、該スキャンモードに基づいて読み取り動作に関わる種々の設定を行う機能、ユーザやプリンタコントローラ20からの指示に基づいて、スキャナエンジン12を制御して読み取り動作を実行する機能、画像データを外部へ出力する機能(例えば、外部ボード10を介してプリンタコントローラ20へ出力する機能)など、通常のスキャナ制御装置が備える構成を備える。
【0022】
スキャンモードは設計に応じて種々の態様を考えることができるが、本実施形態では、写真原稿タイプ、テキスト原稿タイプなどの、原稿タイプ別に読み取りに適したスキャンモードを指定できるものとする。
【0023】
なお、スキャナ制御手段11の各機能は、スキャナ装置10内のROMやRAM、外部の記憶媒体等に格納されるプログラムをCPUが実行することにより機能的に実現される。
【0024】
スキャナエンジン12は、例えば、入力走査ヘッド、走査機構、光源等を含んで構成され、スキャナ制御手段11の制御に従って、原稿媒体の濃淡を光学的に読み取り、画像データを生成する。スキャナエンジン12としては、ドラムスキャナ、フラットベッドスキャナ、CCDスキャナなど各種スキャナエンジンを用いることができる。
【0025】
外部ボード13は、RAM14、画像処理モジュール15、スキャナ装置10やプリンタコントローラ20に接続するためのインタフェース(図示せず)などを備えた外部ハードウェアユニットである。
【0026】
RAM14は、スキャナエンジン12により読み取られた画像データや、画像処理を施した画像データが格納されるメモリであり、例えば高速にバースト転送を行うことができるSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)を用いて構成することができる。
【0027】
画像処理モジュール15は、RAM14上の画像データに対して平滑化やエッジ強調などの画像処理を実行する専用モジュールであり、例えばASICなどを用いて構成することができる。
【0028】
図2に画像処理モジュール15の機能構成を示す。図に示すように、画像処理モジュール15は、スキャナエンジン12により読み取られた画像データ(以下、「入力画像データ」という)に対して重み付き平均化処理を施して加工画像データを生成する重み付き平均化モジュール、前記加工画像データに対してエッジ判定処理を行うエッジ判定モジュール、前記加工画像データに対して平滑化処理を行う平滑化モジュール、前記加工画像データに対してエッジ強調処理を行うエッジ強調モジュール、前記入力画像データの各画素について、前記判定機能の判定結果に基づいて平滑化処理又はエッジ強調処理のいずれかの処理結果を選択し、該画素の処理結果として出力する出力モジュール等を備えている。画像処理モジュール15において実行される画像処理の詳細については後述する。
【0029】
(プリンタコントローラ20)
プリンタコントローラ20は、従来においてプリンタ装置の内部に配置されていた(プリンタ装置が備えるCPU等によって実現されていた)コントローラと同様の機能構成であり、例えば、ホスト装置やユーザからの指示に基づいて、プリンタ装置30(印刷エンジン32)に対して制御信号を送信し、種々の動作を実行させる機能(印刷制御手段21)、プリンタ装置30(印刷エンジン32)からの同期信号に従って画像信号を送信する機能(データ転送制御手段22)などを備える。
【0030】
ただし、プリンタコントローラ20は、外部ボード23を接続するためのインタフェース(図示せず)を備えており、プリンタ装置30(印刷エンジン32)に対して、外部ボード23を介して間接的に制御信号や画像信号を送信する構成となっている点で、従来のコントローラとは異なっている。
【0031】
なお、プリンタコントローラ20の各機能は、プリンタコントローラ20内のROMやRAM、外部の記憶媒体等に格納されるプログラムをCPUが実行することにより機能的に実現される。
【0032】
外部ボード23は、RAM24、画像処理モジュール25、PWM(Pulse Width Modulation)モジュール26、ビデオインタフェース27、プリンタコントローラ20やスキャナ装置10に接続するためのインタフェース(図示せず)などを備えた外部ハードウェアユニットである。
【0033】
RAM24は、スキャナ装置10により読み取られ画像処理が施された画像データが格納されるメモリであり、例えば高速にバースト転送を行うことができるSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)を用いて構成することができる。
【0034】
画像処理モジュール25は、RAM24上の画像データに対して、プリンタ装置30(印刷エンジン32)の同期信号に従ってリアルタイムにハーフトーン処理や色変換処理などの一連の画像処理を実行して、印刷イメージを生成する専用ハードウェアであり、例えばASICなどを用いて構成することができる。
【0035】
PWMモジュール26は、印刷イメージをパルス幅変調方式(PWM)により変調して画像信号を生成する専用ハードウェアであり、従来のレーザプリンタ等で用いられている一般的なPWMモジュールを用いて構成することができる。
【0036】
ビデオインタフェース27は、外部ボード23とプリンタ装置30(印刷エンジン32)との間の伝送形式に基づくインタフェースであり、外部ボード23からプリンタ装置30(印刷エンジン32)へ制御信号を送信するためのUART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)回路や、外部ボード23からプリンタ装置30(印刷エンジン32)へ画像信号を送信するための差動インタフェース方式に基づく回路(例えばLVDS回路)などを含んで構成される。なお、上記の伝送形式として、従来においてプリンタ装置の内部に配置されていたコントローラと印刷エンジンとの間のデータ転送に使用されていた伝送形式を採用することが望ましい。USB(Universal Serial Bus)規格等では印刷エンジンの同期信号に遅れることなくリアルタイムに画像信号を送信することは困難だからである。
【0037】
(プリンタ装置30)
プリンタ装置30は、ビデオインタフェース31、印刷エンジン32などを備えている。
【0038】
ビデオインタフェース31は、ビデオインタフェース27と同じである。両者の間は専用ケーブルによって接続される。
【0039】
印刷エンジン32は、例えば電子写真方式の通常の印刷エンジンであり、エンジンドライバ33、エンジン機構部34(レーザダイオード、感光体、転写ベルト等とそれらの駆動部)などを備えている。印刷エンジンのタイプとしては、4サイクル方式、タンデム方式のいずれであってもよい。
【0040】
エンジンドライバ33、エンジン機構部34は、通常のエンジンドライバ、エンジン機構部と同様の機能構成である。例えば、エンジンドライバ33は、ビデオインタフェース31を介して受信した制御信号やエンジン機構部34からのセンサ信号などに基づき、プリンタ装置30のステータスを更新する機能、エンジン機構部34に対して制御信号(モータ駆動信号やトナー制御信号など)を出力する機能、ビデオインタフェース31を介してステータスや同期信号を送信する機能などを備える。
【0041】
(画像処理モジュール15における画像処理)
次に、図3に示すフローチャートを参照して、画像処理モジュール15における画像処理を説明する。なお、各工程(符号が付与されていない部分的な工程を含む)は処理内容に矛盾を生じない範囲で任意に順番を変更して又は並列に実行することができる。例えば、フローチャート上ではS103〜S106の各工程をシーケンシャルに記載しているが、平滑化モジュール、エッジ強調モジュール、エッジ判定モジュールをそれぞれ独立に動作させることができる場合は、各モジュールの工程を並列に実行することでスループットを向上させることができる。
【0042】
画像処理モジュール15は、スキャナ装置10からスキャンモードの情報を受け付け(又は、スキャナ装置10のRAM等からスキャンモードの情報を読み出し)、該スキャンモードの情報に基づいて入力画像データに対する処理モードを設定する(S100)。具体的には、写真原稿タイプの読み取りに適したスキャンモードの場合は、処理モードとして平滑化優先モードを設定する。一方、テキスト原稿タイプの読み取りに適したスキャンモードの場合は、処理モードとしてエッジ強調優先モードを設定する。なお、スキャンモードと処理モードとが1対1に対応している場合は、スキャンモードの情報をそのまま処理モードとして記憶すればよい。
【0043】
次に、画像処理モジュール15の重み付き平均化モジュールは、前記設定した処理モードに応じて、重み付き平均化処理における着目画素の重みパラメータkを設定し(S101)、DMA等によりRAM14から読み出した入力画像データに対し、前記設定した重み付きパラメータkに基づいて重み付き平均化処理を施して加工画像データを生成し、DMA等によりRAM14の所定領域に格納する(S102)。
【0044】
ここで、本実施形態では、(1)式に示すように、着目画素を中心とする周囲9画素に基づいて重み付き平均化処理を構成するものとする。図4(a)に、この場合のフィルターの構成を示す。
【0045】
K(i、j)=(V(i−1、j−1)+V(i−1、j)+V(i−1、j+1)
+V(i、j−1)+V(i、j)+V(i、j+1)
+V(i+1、j−1)+V(i+1、j)+V(i+1、j+1)
+k×V(i、j))/(9+k) (1)
なお、K(i、j)は加工画像データにおける着目画素の画素値、V(i、j)は入力画像データにおける着目画素の画素値である。
【0046】
また、重みパラメータkは、例えば図5に示すように、平滑化優先モードに対応するkの値(図においてk=0)が、エッジ強調優先モードに対応するkの値(図においてk=7)よりも小さくなるように設定するものとする。
【0047】
このように重みパラメータkを設定する理由を以下に説明する。すなわち、写真原稿等を読み取った画像の場合、もともとエッジがあまり存在しないため、エッジ未検出の影響はそれほど大きくないと考えられる。そこで、写真原稿等に対応するモードでは、エッジ誤認識のリスクをより抑制すべく、重み付け平均化処理の重みパラメータkを小さくすることで“平均化”の作用を相対的に高めている。一方、テキスト原稿等を読み取った画像の場合、もともとエッジが多く存在するため、エッジ未検出の影響が大きいと考えられる。そこで、テキスト原稿等に対応するモードでは、エッジ未検出のリスクとエッジ誤認識のリスクの双方をバランスよく抑制すべく、重み付け平均化処理の重みパラメータkを大きくすることで“重み付け”の作用と“平均化”の作用の双方を確保している。
【0048】
次に、画像処理モジュール15の平滑化モジュールは、DMA等によりRAM14から読み出した加工画像データに対し、平滑化処理を施して平滑化画像データを生成し、RAM14の当該モジュールに対応する領域(FIFOメモリ等)に格納する(S103)。
【0049】
ここで、本実施形態では、(2)式に示すように、着目画素を中心とする周囲9画素に基づいて平滑化処理を構成するものとする。図4(b)に、この場合のフィルターの構成を示す。
【0050】
H(i、j)=(K(i−1、j−1)+K(i−1、j)+K(i−1、j+1)
+K(i、j−1)+K(i、j)+K(i、j+1)
+K(i+1、j−1)+K(i+1、j)+K(i+1、j+1))/9 (2)
なお、H(i、j)は平滑化画像データにおける着目画素の画素値である。
【0051】
一方、画像処理モジュール15のエッジ強調モジュールは、前記設定した処理モードに応じて、エッジ強調処理における強調パラメータrを設定し(S104)、DMA等によりRAM14から読み出した加工画像データに対し、前記設定した強調パラメータrに基づいてエッジ強調処理を施してエッジ強調画像データを生成し、RAM14の当該モジュールに対応する領域(FIFOメモリ等)に格納する(S105)。
【0052】
ここで、本実施形態では、(3)式に示すように、着目画素を中心とする周囲9画素に基づいて、エッジ強調処理を構成するものとする。
【0053】
E(i、j)=r×K(i、j)−(r−1)×H(i、j) (3)
なお、E(i、j)は平滑化画像データにおける着目画素の画素値である。また、(3)式中のH(i、j)は、平滑化モジュールの処理結果を参照するように構成してもよいし、エッジ強調モジュールにおいて別途(2)式に基づいて求めるように構成してもよい。
【0054】
また、強調パラメータrは、例えば図5に示すように、平滑化優先モードに対応するrの値(図においてr=2)が、エッジ強調優先モードに対応するrの値(図においてr=4)よりも小さくなるように、すなわちエッジ強調の程度を抑制するように設定するものとする。このように設定することで、エッジ領域が多く、従ってエッジ領域における画質が重要なテキスト原稿等を読み取った画像において、より鮮明な画像を得ることができる。
【0055】
また一方、画像処理モジュール15のエッジ判定モジュールは、DMA等によりRAM14から読み出した加工画像データに対し、エッジ判定処理を施して属性画像データを生成し、RAM14の当該モジュールに対応する領域(FIFOメモリ等)に格納する(S106)。
【0056】
具体的には、(4)式に示すようにソーベルフィルタに基づいて着目画素のエッジ強度Sを求め、該エッジ強度Sが所定の閾値(例えば、画素値が0〜255である場合、520程度)を超える場合にエッジであると判定して、属性画像データにおける着目画素の画素値を“エッジ”を示す値とし、所定の閾値以下の場合にエッジでないと判定して、属性画像データにおける着目画素の画素値を“非エッジ”を示す値とする。
【0057】
S(i、j)=max{P、Q} (4)
なお、P=絶対値((K(i−1、j−1)+2K(i−1、j)+K(i−1、j+1))−(K(i+1、j−1)+2K(i+1、j)+K(i+1、j+1)))、Q=絶対値((K(i−1、j−1)+2K(i、j−1)+K(i+1、j−1))−(K(i−1、j+1)+2K(i、j+1)+K(i+1、j+1)))である。
【0058】
次に、画像処理モジュール15の出力モジュールは、入力画像データの各画素について、属性画像データ(エッジ判定モジュールの判定結果)の画素値が“非エッジ”を示す場合、平滑化画像データの画素値H(i、j)(平滑化モジュールの処理結果)を該画素の処理結果として選択し、属性画像データ(エッジ判定モジュールの判定結果)の画素値が“エッジ”を示す場合、エッジ強調画像データの画素値E(i、j)(エッジ強調モジュールの処理結果)を該画素の処理結果として選択して、処理結果画像データ(出力画像データ)を生成し、外部へ出力する(本実施形態の場合、プリンタコントローラ20へ出力する)(S107)。なお、出力画像データは、属性画像データの情報を含むように構成してもよい。
【0059】
このように本実施形態では、入力画像データではなく、重み付き平均化処理によって生成される加工画像データに対してエッジ判定処理を施す構成としているため、平均化の作用によってノイズを除去してエッジ誤認識を抑制しつつ、重みの作用によって真のエッジについての鈍りを抑制することでエッジ未検出をも抑制することができ、エッジ判定精度を向上させることができる。その結果、写真や文字等が混在する原稿画像に対して、写真等の領域(非エッジ領域)については平滑化処理の処理結果を、文字等の領域(エッジ領域)についてはエッジ強調処理の処理結果を正確に採用して、出力画像の画質を大きく向上させることができる。
【0060】
また、本実施形態では、重み付き平均化処理において、入力画像の処理モードに応じて着目画素の重みパラメータkを設定するように、具体的には、平滑化優先モード(写真原稿の読み取りに適したスキャンモード)に対応するkの値が、エッジ強調優先モード(テキスト原稿の読み取りに適したスキャンモード)に対応するkの値よりも小さくなるように設定している。
【0061】
このように、平滑化優先モードでは、重みパラメータkを小さくすることでノイズ除去の作用を相対的に高めているため、擬似エッジ(ノイズ)を確実に排除して、エッジ誤認識を抑制することができる。その結果、例えば写真中の文字領域など、真のエッジ領域に対してのみエッジ強調の処理結果を採用して鮮明な画像を得ることが可能となる。
【0062】
一方、エッジ強調優先モードでは、重みパラメータkを大きくすることでノイズ除去及びエッジの鈍り抑制の双方の作用を確保しているため、エッジ誤認識及びエッジ未検出の双方をバランスよく抑制することができる。その結果、テキスト画像の大半を占める文字領域について、誤ることなくエッジ領域と判定でき、エッジ強調の処理結果を採用して鮮明な画像を得ることが可能となる。
【0063】
また、いずれのモードにおいても、エッジと判定されない領域(写真領域など)については、重み付き平均化処理と平滑化処理とによって二重にスムージングが適用されることとなり、より滑らかな画像を得ることができる。
【0064】
(その他)
本発明は上記実施形態に限定されることなく、種々に変形して適用することが可能である。例えば、重み付き平均化処理、平滑化処理、エッジ強調処理、エッジ判定処理に関して、上記実施形態において説明した各式はいずれも例示であり、他の式を用いて各処理を実現する構成としてもよい。
【0065】
また、本発明はカラー画像、白黒画像にかかわらず適用することができ、例えばRGBカラー画像の場合であれば、RGBの各プレーンに対してS102〜S107を実行することができる。
【0066】
また、上記実施形態では、エッジ判定処理のみならず、平滑化処理、エッジ強調処理についても加工画像を対象として処理を実行する構成としているが、平滑化処理、エッジ強調処理については入力画像を対象として処理を実行する構成としてもよい。特に、エッジ強調処理は、入力画像を対象として処理を実行することで、重み付き平均化処理によるエッジの鈍りの影響を回避して、より鮮明な画像を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施形態における、プリンタスキャナシステム1の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態における、画像処理モジュールの機能構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施形態における、画像処理モジュールにおいて実行する画像処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態における、重み付き平均化処理、平滑化処理において採用するフィルターの構成を説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態における、入力画像の処理モードと、重みパラメータk、強調パラメータrの対応関係を説明するための図である。
【符号の説明】
【0068】
1 プリンタスキャナシステム、10 スキャナ装置、11 スキャナ制御手段、12 スキャナエンジン、13 外部ボード、14 RAM、15 画像処理モジュール、20 プリンタコントローラ、21 印刷制御手段、22 データ転送制御手段、23 外部ボード、24 RAM、25 画像処理モジュール、26 PWMモジュール、27 ビデオインタフェース、30 プリンタ装置、31 ビデオインタフェース、32 印刷エンジン、33 エンジンドライバ、34 エンジン機構部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像に対して重み付き平均化処理を施して加工画像を生成する重み付き平均化手段と、
前記加工画像に対してエッジ判定を行う判定手段と、
前記入力画像又は前記加工画像に対して平滑化処理を行う平滑化手段と、
前記入力画像又は前記加工画像に対してエッジ強調処理を行うエッジ強調手段と、
前記入力画像の各画素について、前記判定手段の判定結果に基づいて前記平滑化手段又は前記エッジ強調手段のいずれかの処理結果を選択し、該画素の処理結果として出力する出力手段と、を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
更に、入力画像のモードとして、平滑化優先モード又はエッジ強調優先モードのいずれかを記憶する記憶手段を備え、
前記重み付き平均化手段は、入力画像のモードが平滑化優先モードである場合、エッジ強調優先モードである場合に比較して、重み付き平均化処理における着目画素の重みを小さくすることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記エッジ強調手段は、入力画像のモードが平滑化優先モードである場合、エッジ強調優先モードである場合に比較して、エッジ強調の程度を抑制することを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理装置を備え、前記入力画像はスキャナにより読み取った画像であることを特徴とする、スキャナ装置。
【請求項5】
前記画像処理装置は、ユーザが写真原稿の読み取りに適したスキャンモードを指定した場合に、前記記憶手段に入力画像のモードとして平滑化優先モードを記憶し、ユーザがテキスト原稿の読み取りに適したスキャンモードを指定した場合に、前記記憶手段に入力画像のモードとしてエッジ強調優先モードを記憶することを特徴とする、請求項4記載のスキャナ装置。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理装置を備え、前記出力手段の出力結果に基づき印刷処理を実行することを特徴とする、プリンタシステム。
【請求項7】
入力画像に対して重み付き平均化処理を施して加工画像を生成する重み付き平均化工程と、
前記加工画像に対してエッジ判定を行う判定工程と、
前記入力画像又は前記加工画像に対して平滑化処理を行う平滑化工程と、
前記入力画像又は前記加工画像に対してエッジ強調処理を行うエッジ強調工程と、
前記入力画像の各画素について、前記判定工程の判定結果に基づいて前記平滑化工程又は前記エッジ強調工程のいずれかの処理結果を選択し、該画素の処理結果として出力する出力工程と、を備えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
請求項7記載の画像処理方法をコンピュータで実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−41813(P2006−41813A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217444(P2004−217444)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】