説明

画像処理装置

【課題】一の矩形領域内の画像データに対し、演算処理して算出した演算結果を他の矩形領域内の画像データに対して用いることで、FIFO/RAMを削減し得る画像処理装置を提供する。
【解決手段】全ライン分の画像データを複数のm行n列の矩形領域に分割し、分割した矩形領域ごとに画像処理する画像処理部20において、複数の矩形領域のうち、一の矩形領域における画像データに対して演算処理を施して演算結果を算出する演算部20eと、算出された演算結果を記憶する第1記憶部20g及び第1記憶部20gよりも低速な第2記憶部20hと、を備え、演算部20eは、一の矩形領域の演算結果の一部を前記第2記憶手段に出力して記憶させるとともに、当該演算結果の一部を他の矩形領域における画像データの演算処理に用いる画像処理部20とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像データを取得し、取得した画像データを画像形成し得る画像形成装置が普及している。
【0003】
画像形成装置は、主として取得部、画像処理部、出力部を備えて構成される。
取得部は画像データを取得し、画像処理部は取得された画像データに各種画像処理を施す。そして、出力部は画像処理が施された画像データを用紙上に画像形成して出力する。
【0004】
通常、取得部は画像データをライン単位で取得する。ライン単位とは、主走査方向(横方向)を1ラインとする単位である。取得部は、1ライン取得するごとに副走査方向(縦方向)を切り替えて取得するラインを変更し、これを複数回行うことで全ての画像データを取得する。
【0005】
また、出力部もライン単位で画像データを出力し、これを複数回行うことで全ライン分の画像データを用紙上に画像形成して出力する。従って、一連の画像形成処理の中で中間的処理を行う画像処理部もライン単位で画像処理する構成が一般的にとられている。
【0006】
ここで、画像処理部は、画像処理の一つである近傍処理を行う場合に複数ラインの画像データを一時的に記憶しておく必要があり、そのための記憶部を備える。近傍処理には、例えば文字強調処理、モアレ除去処理等がある。
【0007】
高速に近傍処理するためには、記憶部は高速転送が可能であり、かつ、十分な記憶容量を備えるものが好ましい。具体的にはFIFO(First In First Out)機能を有するRAM(Random Access Memory、以下「FIFO/RAM」という)を用いることで、高速に近傍処理を行うことができる。また、一般的には、このFIFO/RAMをASIC(Application Specific Integrated Circuit)内に備える構成とするのが一般的である。つまり、ソフト的に処理するのではなく、ハード的な処理を行う構成とする方が処理速度の観点から好ましい。
【0008】
FIFO/RAMをASIC内に配置した場合、上述してきたように近傍処理を高速に行うことができる反面、画像処理部の生産コストや開発コストに多大な費用が必要となる。一般に、FIFO/RAMは性能が良いため高価だからである。
こうした問題点を解消すべく、矩形領域ごとに画像処理する画像処理部が特許文献1〜3に開示されている。
【0009】
特許文献1〜3に記載の画像処理部は、画像処理を矩形領域ごとに行う。
矩形領域ごとの画像処理において、画像処理部はまず、取得部が取得した全ライン分の画像データを複数のm行n列の矩形領域に分割する。そして、分割した矩形領域ごとに画像処理を行う。なお、矩形領域内での画像処理は、通常のライン単位での処理と同様に、1ラインごとに各種画像処理が行われる。
【0010】
画像処理部は、矩形領域ごとに画像データを近傍処理する際、記憶しておく必要があるのは矩形領域内の複数ラインであって、取得部が取得した画像データの複数ラインを記憶しておく必要はない。つまり、近傍処理の際に記憶すべき画像データの容量を抑えることができるため、画像処理部は大容量の記憶部を備えずに済む。
【特許文献1】特開2000−354168号公報
【特許文献2】特開2000−351242号公報
【特許文献3】特許第3510997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここで、特許文献1〜3の画像処理装置では、m行n列のタイル内の画像データについて近傍処理を施す場合、矩形領域外の画像データを必要とする場合がある。例えば、一の矩形領域と他の矩形領域との境界部分の画像データについて近傍処理する場合である。
【0012】
このような場合、FIFO/RAMが記憶すべき画像データはm行n列に留まらず、例えばm+1行目の1ライン分の画像データについて記憶する必要がある。また、近傍処理を施すことにより算出したm+1行目の1ライン分の演算結果をFIFO/RAMに記憶する必要がある。
【0013】
従って、画像処理部は、矩形領域1つ分以上の画像データを余分に記憶するためのFIFO/RAMが必要となる。結果、FIFO/RAMの記憶容量は低減可能となるが、用いるFIFO/RAMの数は低減できていない。
【0014】
本発明の目的は、一の矩形領域内の画像データに対し、演算処理して算出した演算結果を他の矩形領域内の画像データに対して用いることで、FIFO/RAMを削減し得る画像処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、
全ライン分の画像データを複数のm行n列の矩形領域に分割し、当該分割した矩形領域ごとに画像処理する画像処理装置において、
前記複数の矩形領域のうち、一の矩形領域における画像データに対して演算処理を施して演算結果を算出する演算手段と、
前記算出された演算結果を記憶する、第1記憶手段及び第1記憶手段より低速な第2記憶手段と、を備え、
前記演算手段は、前記一の矩形領域の演算結果の一部を前記第2記憶手段に出力して記憶させるとともに、当該演算結果の一部を他の矩形領域における画像データの演算処理に用いる画像処理装置が提供される。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明において、
前記演算手段は、前記一の矩形領域における画像データに対して1行ごとに演算処理してm行分の演算結果を算出し、当該算出したm行分の演算結果のうち、m行目の演算結果を前記他の矩形領域における1行目の画像データに対して用いることにより、当該他の矩形領域における1行目の画像データに対して演算処理を施す画像処理装置が提供される。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明において、
前記他の矩形領域の1行目の画像データは、前記一の矩形領域のm行目の画像データと副走査方向に隣り合う画像処理装置が提供される。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3の何れか一項に記載の発明において、
前記演算手段は、前記矩形領域において算出した前記演算結果のうち、1行目からm−1行目までの演算結果を前記第1記憶手段に、又最終ラインのm行目の演算結果を前記第2記憶手段に、それぞれ出力し、
前記第1記憶手段及び前記第2記憶手段は、前記演算手段から出力される前記演算結果を記憶する画像処理装置が提供される。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明において、
前記演算手段は、前記矩形領域のm行目の演算結果を算出した後、次に処理する矩形領域のm行目の演算結果を算出し始めるまでに、前記矩形領域のm行目の演算結果を前記第2記憶手段に出力する画像処理装置が提供される。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、請求項4又は5の何れか一項に記載の発明において、
前記第2記憶手段は、前記演算手段が前記矩形領域の1行目の演算結果を算出してから、次に処理する矩形領域の1行目の演算結果を算出し始めるまでに、当該次に処理する矩形領域の1行目に用いる演算結果を前記演算手段に出力する画像処理装置が提供される。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、請求項1〜6の何れか一項に記載の発明において、
前記演算手段は、前記矩形領域における画像データに対して誤差拡散処理を施して演算結果を算出し、当該算出した演算結果を前記他の矩形領域における画像データの誤差拡散処理に用いる画像処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、矩形領域ごとに画像処理する画像処理装置において、一の矩形領域内の画像処理により得られた境界部分の演算結果を他の矩形領域での画像処理に用いることができる。つまり、他の矩形領域の境界部分の演算結果を高価な記憶部で記憶する必要がなくなる。よって、処理速度を維持しつつも、画像処理部の生産コストや開発コストの削減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本実施形態における画像処理装置の最適な構成及び動作について、図面を用いて詳細に説明する。
【0024】
まず、図1を参照して、本実施形態に係る画像形成装置100について説明する。
画像形成装置100は、取得部10、画像処理部20、出力部30、操作部40、表示部50、制御部60を備えて構成されている。
【0025】
また、外部PC(Personal Computer)200は画像形成装置100と接続されている。外部PC200はPDL(Page Description Language)形式のデータを画像形成装置100に出力する。画像形成装置100は、PDL形式のデータを受信して画像データに変換し、これを画像処理して印刷処理することになる。
以下、画像形成装置100の各部について説明する。
【0026】
取得部10は、コントローラ10a及びスキャナ部10bを備えて構成される。
コントローラ10aは、PDL形式に変換されたドキュメントデータをラスタライズして画像データを生成する。
【0027】
コントローラ10aは、生成した画像データを画像処理部20に出力する。
なお、コントローラ10aが出力する画像データは、C(シアン色)、M(マゼンダ色)、Y(黄色)、K(黒色)の4色の複数色から構成される印刷用の画像データである。
【0028】
一方、スキャナ部10bは、まずスキャナ部10bが備える光学系により原稿を読み取り、アナログの画像データを生成する。
【0029】
次に、スキャナ部10bは、生成したアナログの画像データをA/D変換してR(赤色)、G(緑色)、B(青色)の3色から構成される画像データに変換する。そして、これを画像処理部20に出力する。なお、スキャナ部10bが出力するR、G、Bからなる画像データは表示用として用いられる。よって、画像処理部20は、必要に応じてR、G、BをY、M、C、Kからなる画像データに変換する。
【0030】
画像処理部20は、取得部10から出力された画像データに対して、各種画像処理を施す。各種画像処理には、例えば文字強調処理、モアレ除去処理等の近傍処理がある。また、誤差拡散処理も近傍処理の一つであり、本実施形態ではこの誤差拡散処理について画像処理部20とともに詳細に後述する。
【0031】
出力部30は、画像処理部20から画像処理が施された画像データを受信して、制御部60からの制御信号に従い印刷処理する。
以下、印刷処理について説明する。
【0032】
出力部30は、電子写真方式による印刷処理を行い、例えばプリント用紙を収容する給紙部、感光ドラムを有する露光部、トナーを付着させる現像部、トナーを定着させる定着部等からなる(図示省略)。
【0033】
出力部30は、プリントすべき画像データに基づいて、露光部において感光ドラム上にレーザ光等を照射して静電潜像を形成し、現像部がトナーを付着させる。そして、感光ドラム上に形成されたトナー像を給紙部から給紙されたプリント用紙に転写させ、この転写されたトナー像を定着部において定着させる。定着させた後、排紙トレイ等にプリント用紙を排紙させる。
以上が印刷処理の一連の流れである。
【0034】
制御部60は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えて構成される。
CPUは、ROMに記憶されているシステムプログラムや各種制御プログラムを読み出して、RAMに展開する。そして、展開した各種プログラムとの協働により、画像形成装置100の各部を集中制御する。
【0035】
操作部40は、ユーザの操作指示を入力するためのものであり、各種キーや表示部50と一体に構成されるタッチパネル等を備える。操作部40は、操作に応じた操作信号を生成し、生成した操作信号を制御部60に出力する。
【0036】
表示部50は、LCD(Liquid Crystal Display)等を備えて構成される。
表示部50は制御部60から出力される制御信号を受信し、受信した制御信号に従って、LCD上に各種設定情報や動作状況等を表示する。
【0037】
次に、図2を参照して、画像処理部20について説明する。
画像処理部20は、ライン/タイル変換部20a、圧縮部20b、書込/読取部20c、伸張部20d、演算部20e、タイル/ライン変換部20f、第1記憶部20g、第2記憶部20hを備えて構成される。
【0038】
ライン/タイル変換部20aは、取得部10がライン単位で取得した画像データを複数の矩形領域(以下、「タイル」という)に分割する処理を行う。タイルの大きさ、つまりタイルを構成する画素数は予め定められており、ライン/タイル変換部20aは予め定められている大きさに従って、複数のタイルに分割する。本実施形態では、タイルを8×8画素のタイルに分割するものとして説明する。
【0039】
圧縮部20bは、タイルの圧縮処理を行う。
圧縮部20bは、圧縮した複数のタイルを書込/読取部20cに出力する。
【0040】
書込/読取部20cは、圧縮部20bからタイル単位で出力される画像データを第2記憶部20hに書き込む処理を行う。
また、書込/読取部20cは、画像処理対象となる画像データを第2記憶部20hからタイル単位で読み出し、読み出した画像データをタイル単位で伸張部20dに出力する。
【0041】
なお、画像データをタイル単位で書き込むとは、8×8画素の画像データを1つの単位として第2記憶部20hに書き込むことをいう。また、同様に、画像データをタイル単位で読み出すとは、8×8画素の画像データを1つの単位として読み出すことをいう。
【0042】
伸張部20dは、書込/読取部20cから出力されたタイル単位の画像データを画像処理に供するために伸張し、伸張した画像データを演算部20eに出力する。
【0043】
演算部20eは、伸張部20dからタイル単位で出力される画像データに対し、予め定められた画像処理を施す。予め定められた画像処理とは、例えば文字強調処理、モアレ除去処理等があり、演算部20eは各処理に応じた演算回路を備えて構成される。
【0044】
また、演算部20eは、上述した文字強調処理等の他に、誤差拡散処理を施す演算回路を備える。誤差拡散処理を施す演算回路では、第1記憶部20g等を備えて構成される。本実施形態では、演算部20eが行う誤差拡散処理について図3を参照して詳細に後述する。
【0045】
演算部20eは、画像データに対して各種画像処理を施した後、画像データをタイル単位でタイル/ライン変換部20fに出力する。
【0046】
タイル/ライン変換部20fは、演算部20eからタイル単位で出力される画像データをライン単位に変換し、変換したライン単位の画像データを出力部30に出力する。
【0047】
第1記憶部20gは、演算部20eが備える演算回路において、ASIC上に配置される記憶部である。また、第1記憶部20gは、高速転送可能なRAMで構成される。RAMは、FIFO動作による画像データの書き込み及び読み出しを行う。
【0048】
第2記憶部20hは、外付けのDRAM(Dynamic RAM)を備えて構成される。
第2記憶部20hは、タイル変換された画像データをタイル単位で記憶し、また、演算部20eが演算処理して算出した演算結果を記憶する。さらに、第2記憶部20hは、演算部20eに必要な演算結果を出力する。
【0049】
次に、図3を参照して、誤差拡散処理を行う演算部20eについて説明する。
誤差拡散処理を行う演算部20eは、加算部201、出力処理部202、DRAM書込/読取部203、第1記憶部20gを演算回路上に備えて構成される。また、DRAM書込/読取部203は、第2記憶部20hと接続されている。なお、演算部20eは、第1記憶部20gを除いた上述の各部を備えて構成されるとしてもよい。この場合、第1記憶部20gは外付けで加算部201及び出力処理部202と接続される。
【0050】
加算部201は、伸張部20dからタイル単位で出力される画像データに対し、1ラインごとに演算結果(誤差データ)を加算する加算処理を行う。
【0051】
加算処理は、タイル内の1ラインにおける全ての画素にそれぞれの誤差データが加算される。また、誤差データは、第1記憶部20gから出力され、又はDRAM書込/読取部203を介して第2記憶部20hから出力される。加算部201はこれらの誤差データを取得する。なお、誤差データについては後述する。
加算部201は、加算処理を施した画像データを出力処理部202に出力する。
【0052】
出力処理部202は、予め定められた複数の画素値を基準値とし、入力される画像データの画素値を各基準値のうち何れかの基準値に変換する変換処理を行う。
【0053】
上述の変換処理について詳細に説明する。
まず、出力処理部202は、加算部201からタイル単位で出力される画像データを1ラインごとに取得する。そして、取得した1ラインの画像データのうち、各画素の画素値と予め定められた複数の基準値とを比較する。出力処理部202は、比較した結果、複数の基準値のうち最も近い基準値を決定する。そして、決定した基準値を画素値として置き換える。
以上が変換処理の一連の流れである。
【0054】
変換処理について具体的数値を用いて更に説明すると、基準値が「0、85、170、255」であって、入力される画像データにおける各画素値が「0、40、80、120、…」である場合、出力処理部202は、入力される画素値を「0、0、85、85、…」に変換する。
【0055】
また、出力処理部202は、変換処理前の画像データと変換処理後の画像データとを画素ごとに比較して、両者の画素値の差を算出する。本実施形態において、ここで算出された差を誤差データということにする。
【0056】
上述の具体例を用いて説明すると、出力処理部202は変換処理前の画像データ「0、40、80、120、…」と変換処理後の画像データ「0、0、85、85、…」とを比較して、誤差データ「0、40、−5、35、…」を算出する。
【0057】
出力処理部202は、算出した誤差データを第1記憶部20gに記憶させ、又はDRAM書込/読取部203を介して第2記憶部20hに出力して記憶させる。
【0058】
第1記憶部20gは、出力処理部202から出力される誤差データを取得して記憶する。なお、第1記憶部20gが記憶する誤差データは、タイル内の画像データのうち、1行目からm−1行目の誤差データである。
【0059】
第2記憶部20hは、DRAM書込/読取部203を介して、出力処理部202から出力される誤差データを取得して記憶する。なお、第2記憶部20hが記憶する誤差データは、タイル内の画像データのうち、m行目の誤差データである。
【0060】
DRAM書込/読取部203は、出力処理部202から出力されるm行目の誤差データを第2記憶部20hに書き込む。また、DRAM書込/読取部203は、第2記憶部20hからm行目の誤差データを読み取り、読み取ったm行目の誤差データを加算部201に出力する。
以上が演算部20eの行う誤差拡散処理の一連の流れである。
【0061】
次に、図4を参照して、上述してきた誤差拡散処理の概念図を示す。
なお、図4に示す画像データは、タイル内における1ライン分の画像データである。
【0062】
加算部201は、入力画像データD1及び誤差データD2を有する。この両者を加算して算出した画像データD3を出力処理部202に出力する。
【0063】
出力処理部202は、加算された画像データD3における画素値を基準値S1と比較する。比較した結果、2値データD4及び誤差データD5を算出する。
出力処理部202は、2値データD4をタイル/ライン変換部20fに出力し、誤差データD5を第1記憶部20g又は第2記憶部20hに出力する。
【0064】
ここで、出力処理部202は、タイル内の1行目からm行目における誤差データのうち、1行目からm−1行目の誤差データを第1記憶部20gに出力する。また、出力処理部202は、m行目の誤差データを第2記憶部20hに出力する。
【0065】
1行目からm−1行目の誤差データは、第1記憶部20gに記憶された後、次の入力画像データが加算部201に入力されるまでに加算部201に出力される。加算部201は、上述したように、入力画像データD1と誤差データD2とを加算する処理を行う。
つまり、同一タイル内の1つのラインで算出された誤差データは、次のラインの処理で用いられることとなる。
【0066】
一方、m行目の誤差データは、第2記憶部20hに記憶された後、副走査方向に隣り合う他のタイルの1行目の処理において用いられることとなる。
以下、m行目の誤差データを用いる処理について、図5、6を参照して説明する。
【0067】
まず、図5を参照して、全画像データとタイルとの関係について説明する。
上述してきたように、画像処理部20は、取得部10が取得した全画像データD10を複数のm行n列のタイルD11に分割し、分割したタイルD11ごとに画像処理を行う。
【0068】
本実施形態において、全画像データD10は8000×8000画素から構成され、タイルD11は、8行8列(8×8画素)から構成されるものとして説明する。
【0069】
画像処理部20は、主走査方向に「タイル1」、「タイル2」と処理していき、「タイル1000」まで画像処理を施した後、副走査方向に+1だけインクリメントする。そして、「タイル1001」から再度主走査方向に画像処理を行う。これを繰り返すことで、画像処理部20は、全画像データD10の画像処理を行う。
【0070】
次に、図6を参照して、m行目の誤差データの処理について説明する。
タイル内の番号は、タイル番号と行番号を示す。例えば、「T1−1行目」は、タイル番号が1の1行目であることを表している。
【0071】
演算部20eは、タイル単位で入力される画像データをライン単位で演算処理する。例えば、T1−1行目の画像データを演算処理した場合、2値データD4及び誤差データD5を算出する。演算部20eは、このうち、誤差データD5をT1−2行目の画像データの演算処理に用いる。
【0072】
m行目の演算処理により算出した誤差データD5の処理について説明する。
演算部20eは、m行目の演算処理、例えばT1−8行目の演算処理により算出した誤差データD5を第2記憶部20hに記憶させる。T1−8行目の誤差データDを記憶させる処理に際して、演算部20eは、次に処理するタイルのm行目、つまりT2−8行目の誤差データD5を第2記憶部20hに記憶するまでに行えばよい。
【0073】
演算部20eは、T1001−1行目の画像データに演算処理を施す際、第2記憶部20hからT1−8行目の演算処理により算出した誤差データD5を読み出す。読み出す処理は、T1001−1行目の画像データに対して演算処理を開始するまでに読み出しておけばよい。
【0074】
演算部20eは、読み出したT1−8行目の誤差データD5をT1001−1行目の画像データに加算し、加算後の画像データと基準値とを比較して、上述したように、2値データD4及び誤差データD5を算出する。
【0075】
以上のように、本実施形態によれば、一のタイル内の画像データに対して演算処理を施して算出した演算結果を第1記憶部20gと第2記憶部20hとに分けて出力することができる。つまり、第1記憶部20gの数を削減し、削減した分の記憶すべき必要な演算結果を第2記憶部20hに記憶させることができる。第1記憶部20gは高速転送可能なFIFO/RAMで構成される記憶部であり、第2記憶部20hは第1記憶部20gよりも低速転送のDRAMで構成される記憶部である。よって、画像処理部20の生産コストや開発コストの低減を図ることができる。更に、第2記憶部20hに記憶させた演算結果を他のタイル内の画像データに対して用いることができる。
【0076】
また、他のタイル内の画像データに対して用いる演算結果は、タイル内のm行目の演算結果とする。本実施形態によれば、T1−8行目やT2−8行目、T1001−8行目等の演算結果を他のタイルの演算処理に用いることができる。
【0077】
また、タイル内のm行目の演算結果を用いる他のタイルの画像データは、m行目の画像データと副走査方向に隣り合うタイルの1行目の画像データとする。本実施形態によれば、T1−8行目の演算結果をT1001−1行目の画像データの演算処理に用いることができる。
【0078】
また、1つのタイル内で算出した演算結果のうち、1行目からm−1行目までの演算結果とm行目の演算結果とを異なる記憶部に記憶させることができる。本実施形態によれば、T1−1行目からT1−7行目までの演算結果を第1記憶部20gに記憶させ、T1−8行目の演算結果を第2記憶部20hに記憶させることができる。
【0079】
また、第2記憶部20hの書込速度は、タイル内の1行目からm−1行目までの演算処理が完了するまでに直近で処理したタイルのm行目の演算結果を書き込める程度であればよい。本実施形態によれば、第2記憶部20hは、演算部20eがT2−1行目からT2−7行目までを演算処理し終えるまでに、T1−8行目の演算結果を記憶しておけばよい。
【0080】
また、第2記憶部20hが備える出力速度は、1行目の演算処理を終えた後、2行目からm行目までの演算処理が完了するまでに次に処理するタイルの1行目の演算結果を出力できる程度であればよい。本実施形態によれば、第2記憶部20hは、演算部20eがT1―2行目からT1−8行目までを演算処理し終えるまでに、T2−1行目の演算結果を出力しておけばよい。
【0081】
また、演算部20eは、本実施形態のように誤差拡散処理を行うことができ、一のタイル内で算出した誤差データを他のタイルの誤差拡散処理に用いることができる。
【0082】
なお、本実施形態では、画像処理部20は演算部20eを備え、演算部20eは誤差拡散処理を行うこととしたが、本発明はこれに限らず、例えば演算処理を行わずに単にライン調整を可能とする画像処理部とすることも可能である。
以下、他の実施形態における画像処理部について説明する。
【0083】
図7に、他の実施形態における画像処理部21を示す。
図7に示す画像処理部21は、図2の画像処理部20に3つの周辺回路を更に備えて構成されるものである。また、図7の画像処理部21は、演算部20eを備えずに構成される。
【0084】
3つの周辺回路とは、文字用画像処理回路21a、写真用画像処理回路21b、写真/文字判別回路21cである。
以下、これら周辺回路を含む画像処理部21の処理について説明する。
【0085】
文字用画像処理回路21aは、文字の輪郭を強調する処理を行う。フィルタのサイズは7×7(画素)のフィルタサイズを用い、対象画素を出力するために入力画素を3ライン分遅延させる処理を行う。
【0086】
図8に、7×7のフィルタサイズを用いた文字用画像処理の概念図を示す。
図8に示すように、文字用画像処理回路21aは、対象画素P1を出力するため、対象画素P1のライン以降の画像データ(3ライン分)を遅延させる処理を行う。
【0087】
写真用画像処理回路21bは、平均化処理を行う。フィルタのサイズは9×9のフィルタサイズを用い、対象画素を出力するために入力画素を4ライン分遅延させる処理を行う。
【0088】
図9に、9×9のフィルタサイズを用いた写真用画像処理の概念図を示す。
図9に示すように、写真用画像処理回路21bは、対象画素P2を出力するため、対象画素P2のライン以降の画像データ(4ライン分)を遅延させる処理を行う。
【0089】
写真/文字判別回路21cは、中間調レベルの画素数をカウントする処理を行う。フィルタのサイズは9×9のフィルタサイズを用い、対象画素を出力するために入力画素を4ライン分遅延させる処理を行う。
4ライン分遅延させる際の写真/文字判別処理の概念図は、図9と同様である。
【0090】
このように、それぞれの回路においてフィルタサイズが異なる場合、遅延させる画像データのライン数も異なってくる。
そこで、画像処理部21は、文字用画像処理回路21aから出力される画像データを1ライン分遅延させる遅延処理を行う。なお、遅延処理については、演算部20eによる演算処理が行われない点を除いて、図2に示した画像処理部20の処理と同様である。
【0091】
以上のように、他の実施例によれば、遅延させる画像データのライン数の整合性を図るべく、文字用画像処理回路21aから出力された画像データを1ライン分遅延させる遅延処理を行うことができる。つまり、本願発明は演算処理(誤差拡散処理)に限らず、遅延調整回路として適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】画像形成装置の機能ブロック図である。
【図2】画像処理部の機能ブロック図である。
【図3】演算部の機能ブロック図である。
【図4】誤差拡散処理の概念図である。
【図5】タイルの概念図である。
【図6】タイル及び誤差拡散処理の概念図である。
【図7】他の実施形態における画像処理部の機能ブロック図である。
【図8】7×7のフィルタサイズを用いた画像処理の概念図である。
【図9】9×9のフィルタサイズを用いた画像処理の概念図である。
【符号の説明】
【0093】
100 画像形成装置
10 取得部
20 画像処理部
30 出力部
40 操作部
50 表示部
60 制御部
20a ライン/タイル変換部
20b 圧縮部
20c 書込/読取部
20d 伸張部
20e 演算部
20f タイル/ライン変換部
20g 第1記憶部
20h 第2記憶部
201 加算部
202 出力処理部
203 DRAM書込/読取部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全ライン分の画像データを複数のm行n列の矩形領域に分割し、当該分割した矩形領域ごとに画像処理する画像処理装置において、
前記複数の矩形領域のうち、一の矩形領域における画像データに対して演算処理を施して演算結果を算出する演算手段と、
前記算出された演算結果を記憶する、第1記憶手段及び第1記憶手段より低速な第2記憶手段と、を備え、
前記演算手段は、前記一の矩形領域の演算結果の一部を前記第2記憶手段に出力して記憶させるとともに、当該演算結果の一部を他の矩形領域における画像データの演算処理に用いる画像処理装置。
【請求項2】
前記演算手段は、前記一の矩形領域における画像データに対して1行ごとに演算処理してm行分の演算結果を算出し、当該算出したm行分の演算結果のうち、m行目の演算結果を前記他の矩形領域における1行目の画像データに対して用いることにより、当該他の矩形領域における1行目の画像データに対して演算処理を施す請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記他の矩形領域の1行目の画像データは、前記一の矩形領域のm行目の画像データと副走査方向に隣り合う請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記演算手段は、前記矩形領域において算出した前記演算結果のうち、1行目からm−1行目までの演算結果を前記第1記憶手段に、又最終ラインのm行目の演算結果を前記第2記憶手段に、それぞれ出力し、
前記第1記憶手段及び前記第2記憶手段は、前記演算手段から出力される前記演算結果を記憶する請求項1〜3の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記演算手段は、前記矩形領域のm行目の演算結果を算出した後、次に処理する矩形領域のm行目の演算結果を算出し始めるまでに、前記矩形領域のm行目の演算結果を前記第2記憶手段に出力する請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第2記憶手段は、前記演算手段が前記矩形領域の1行目の演算結果を算出してから、次に処理する矩形領域の1行目の演算結果を算出し始めるまでに、当該次に処理する矩形領域の1行目に用いる演算結果を前記演算手段に出力する請求項4又は5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記演算手段は、前記矩形領域における画像データに対して誤差拡散処理を施して演算結果を算出し、当該算出した演算結果を前記他の矩形領域における画像データの誤差拡散処理に用いる請求項1〜6の何れか一項に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−217584(P2009−217584A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61009(P2008−61009)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】