説明

画像処理装置

【課題】簡単な構成で、テストチャートを使用することなく表裏画質の合わせ込みを行う画像処理装置を提供する。
【解決手段】画像処理装置は、第1読取部と第2読取部とを備え、原稿の両面を同時に読み取ることができる画像読取部と、原稿が片面か両面かを検知する原稿種検知部と、原稿の搬送路を切り替える原稿搬送路切替部と、原稿搬送ローラの回転方向を切り替える原稿搬送ローラ回転切替部と、第1読取部と第2読取部とで読み取った画像の画像特性に基づいて、第1又は第2読取部の画像を補正する画像補正部と、を有する。そして、第1読取部と第2読取部は、原稿搬送路の切り替えと原稿搬送ローラの回転方向切り替えとにより、原稿が両面原稿である場合には原稿表面を第1読取部にて、原稿裏面を第2読取部にて読み取り、原稿が片面原稿の場合は、原稿表面を第1読取部にて、原稿表面を第2読取部にて読み取るように原稿搬送路周辺に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿の両面を同時に読み取ることができる画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンタやスキャナ等の複数の機能を備えたMFP(Multi Function Peripheral)の処理速度が高速化され、両面原稿の表裏を同時に読み取ることができるMFPも出現した。しかし、両面原稿の表裏を読み取る手段の装置構成や電気的構成の違いから、表裏画質の差異が生じてしまうという問題があった。
【0003】
上記問題を解決して画質の表裏統一性を図るために、テストチャートを表面側の読み取り手段によって読み込ませた画像と、裏面側の読み取り手段で読み込ませた画像とを比較することによって、その差異を補正し画質の合わせ込みを図る技術が開示されている。具体的には、表面と裏面の色差を補正する目的で、特定色が描画された差異補正チャートを生成し、その差異補正チャートを表面読み取り手段と裏面読み取り手段とで読み取ることで補正処理する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1記載の発明では、表裏画質の差異を補正することができるものの、本来の画像入出力作業とは別にユーザがテストチャートを定期的に読み込ませることが必要となり、ユーザのとっては操作が煩雑であるという課題があった。特に、原稿両面を同時に読み取ることができる装置では、テストチャートの表面と裏面とを読み込ませる必要があるため、操作の煩雑さが増してしまう。
【0005】
また、上記特許文献1記載の発明では、テストチャート作成のためのコストが発生し、さらには、テストチャートの劣化を防ぐよう維持管理をしなければならいため手間がかかってしまうという課題があった。
【0006】
本発明はこのような実情を鑑みてなされたものであり、上記課題を解決し、簡単な構成で、テストチャートを使用することなく表裏画質の合わせ込みを行うことができる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の画像処理装置は、第1の読取手段と第2の読取手段とを備え、原稿の両面を同時に読み取ることができる画像読取手段と、読み込む原稿が片面原稿か両面原稿かを検知する原稿種検知手段と、原稿種検知手段の検知結果に基づいて、原稿の搬送路を切り替える原稿搬送路切替手段と、原稿種検知手段の検知結果に基づいて、原稿搬送ローラの回転方向を切り替える原稿搬送ローラ回転切替手段と、第1の読取手段と第2の読取手段とで読み取った画像の画像特性に基づいて、第1の読取手段又は第2の読取手段の画像を補正する画像補正手段と、を有し、画像読取手段は、原稿搬送路の切り替えと原稿搬送ローラの回転方向切り替えとにより、原稿が両面原稿である場合には原稿表面を第1の読取手段にて読み取り、原稿裏面を第2の読取手段にて読み取り、原稿が片面原稿の場合は、原稿表面を第1の読取手段にて読み取り、原稿表面を第2の読取手段にて読み取るように、第1の読取手段と第2の読取手段とを原稿搬送路周辺に配置したことを特徴とする
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、テストチャートを使用せずに表裏の画質の合わせ込みを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る画像処理装置が備える画像読取装置の概略構成例を示す図である。
【図2】本実施形態に係る画像処理装置が備える画像読取装置の両面原稿読み取り時の原稿搬送路例を示す図である。
【図3】本実施形態に係る画像処理装置が備える画像読取装置の片面原稿読み取り時の原稿搬送路例を示す図である。
【図4】本実施形態に係る画像処理装置が備える画像読取装置における原稿種検知処理を説明するための図である。
【図5】原稿種検知デバイスを2組搭載した場合を説明するための図である。
【図6】原稿カバーの構成例を示す図である。
【図7】片面原稿が搬送される原稿搬送路例を示す図である。
【図8】両面原稿が搬送される原稿搬送路例を示す図である。
【図9】本実施形態に係る画像処理装置の概略機能構成例を示すブロック図である。
【図10】原稿全面画像を矩形領域に分割した例を示す図である。
【図11】濃度変換曲線例を示す図である。
【図12】入力データとCCD及びCISの出力データとの関係例を示すグラフである。
【図13】本実施形態に係る画像処理装置の特定色検知部が検知する色の例を示す図である。
【図14】画像処理の流れの例を示すブロック図である。
【図15】CIS画像データ処理とCCD画像データ処理の関係例を説明するための図である。
【図16】CIS画像データ処理とCCD画像データ処理の関係例を説明するための図である。
【図17】本実施形態に係る画像処理装置における分割領域内偏差検知処理、平均値演算処理及び記憶部格納処理の流れの例を示すフローチャートである。
【図18】分割領域例を示す図である。
【図19】分割領域信号を生成する分割領域信号生成部の概略構成例を示す図である。
【図20】フレーム信号、ライン同期信号及び画素クロック信号の関係例を示す図である。
【図21】Scnt信号及びMcnt信号の流れの例を示す図である。
【図22】片面原稿の例を示す図である。
【図23】図22に示す片面原稿と分割領域信号とを重ね合わせた例を示す図である。
【図24】領域内全域に均一性のある画像のみを検知した場合の例を示す図である。
【図25】本実施形態に係る画像処理装置における画像濃度平均値及び分割領域アドレス格納処理例の流れを示すフローチャートである。
【図26】本実施形態に係る画像処理装置における補正パラメータ生成処理例の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施形態の例について、図面を用いて詳細に説明する。尚、以下の実施形態では画像処理装置としてMFPを例に挙げて説明するが、これに限定されるものではない。また、画像を読み取る読取手段としてCCDとCISとを備える例を挙げて説明するが、読取手段の位置や種類については特に限定されない。
【0011】
(画像読取装置)
図1は、本実施形態に係る画像処理装置が備える画像読取装置の概略構成例を示す。図1に示すように、本実施形態に係る画像処理装置が備える画像読取装置は、オートドキュメントフィーダ装置(以下ADF)101、原稿台102、原稿排紙台103、開閉カバー104、スキャナ装置105等を備えている。
【0012】
ADF101は、原稿画像を読み取るために原稿を搬送する。原稿台102は、読み取るべき原稿を置く台である。本実施形態では、原稿台102に原稿の表面が上を向くように原稿をセットする場合を例に挙げて説明するが、これに限定されるものではない。原稿排紙台103は、読み取られた原稿が排紙される台である。開閉カバー104は、原稿がジャムした場合等に原稿を取り出すために設けられている。スキャナ装置105は、原稿を読み取る。スキャナ装置105は、光源である照射ランプ107、反射ミラー108、CCD(Charge Coupled Device)109、結像レンズ110、電子基板111等を備えている。
【0013】
ADF101は、原稿台102に置かれた複数の原稿を1枚ずつ引き込み、原稿搬送路を搬送させ原稿排紙台103に排出する。この間にスキャナ装置105によって原稿画像が読み込まれる。スキャナ装置105は、図1中の前記ADF101の下側に設けられ、ADF101により搬送された原稿を固定位置で順次読み取り、デジタル画像データとして読み込む。
【0014】
ここで、スキャナ装置105の動作について説明する。スキャナ装置105は、まずADF101によって搬送されてきた原稿に対して照射ランプ107により白色光を照射する。次に、複数の反射ミラー108は、照射ランプ107から照射された白色光が原稿に当たり反射した反射光をCCD109に誘導する。CCD109は原稿の反射光を光電変換する撮像素子であり、反射ミラー109によって誘導された反射光に基づいて、原稿データをデジタル画像に変換する。結増レンズ110は、原稿の反射光の光路上でCCD109の手前にあり、CCD109に画像データを結像するために設けられている。また、電子基板111は、CCD109を固定する基板であり、CCD109を制御してデジタル画像に変換する周辺回路が搭載されている。このように、原稿画像は、スキャナ装置105によって、例えば8ビットのRGBデジタル画像データに変換される。尚、スキャナ装置105はスリットガラス106を通して、ADF101で搬送される原稿を読み込むことができる。
【0015】
また、本実施形態において、ADF101は、片面原稿だけでなく、両面原稿を搬送することができる。原稿が搬送される原稿搬送路を図1中に太線で示す。図1では、原稿搬送路の周辺に、原稿給紙ローラ112、原稿搬送対ローラ113、114、加圧ローラ115、原稿排紙ローラ116、CIS(Contact Image Sensor)117、原稿種検知デバイス118、原稿カバー119、原稿搬送路切替板120、121、122、123等が設けられている例を示している。
【0016】
原稿給紙ローラ112は、原稿台に置かれた原稿を画像読取装置に1枚ずつ給紙する。各原稿搬送路に設置されている搬送ローラ対113、114は、原稿搬送路に沿って原稿を搬送する。加圧ローラ115は、原稿とスリットガラス106との位置関係を固定する。原稿排紙ローラ116は、搬送されてきた原稿を原稿排紙台103へ排出する。CIS117は、搬送されてきた原稿をデジタル画像データに変換する撮像デバイスである。
【0017】
原稿種検知デバイス118は、原稿台102に置かれた原稿が片面原稿か両面原稿かを検知する。図1に示すように、原稿種検知デバイス118は、原稿の表面側と裏面側とに対になるように搭載されている。本実施形態では、原稿種検知デバイス118が、原稿の副走査先端部と副走査中央部との二箇所搭載されている例を示しているが、これに限定されるものではない。原稿種検知デバイス118は、例えば、低解像度のCISで構成することができ、原稿表面や裏面に画像データが有るか否かを検知することができる。原稿の副走査先端部と副走査中央部との二箇所に原稿種検知デバイス118を搭載した場合の動作の詳細については後述する。
【0018】
原稿カバー119には、原稿の表面(上面)に画像データが有るか否かを検知する原稿種検知デバイス118が配置されている。この原稿カバー119は、原稿セット時に開閉できるように構成されている。また、原稿搬送路切替板120〜123は、原稿の搬送路を切り替えることができる。具体的には、原稿搬送路切替板120〜123の上下により原稿を上側の搬送路に搬送するか、下側の搬送路に搬送するかを制御することができる。この原稿搬送路切替板120〜123の具体的な構成については、既存技術同等の方式で実現できるためここでは説明は省略する。
【0019】
(両面原稿読取)
図2は、本実施形態に係る画像処理装置が備える画像読取装置の両面原稿読み取り時の原稿搬送路例を示している。例えば、原稿読取手段を2つ設けた場合、両面原稿を読み取る際には、1つの原稿読取手段で原稿表面を読み取り、他方の原稿読取手段で原稿裏面を読み取る。本実施形態では、図2のようにCCD109で原稿表面を読み取り、CIS117で原稿裏面を読み取ることができる。
【0020】
画像読取装置は、CCD109とCIS117とにそれぞれ原稿の表面と裏面とを読み込ませるために、原稿搬送路切替板120〜123の制御を行う。尚、図2では、原稿搬送路切替板を4つ備える例を示しているが、原稿搬送路切替板の数及び設ける位置等は限定されるものではなく、適宜変更可能である。本実施形態では、図2中の実線が原稿両面読み取り時の原稿搬送路である。図2に示す例では、両面原稿の両面を読み取る場合、原稿搬送路切替板120を上側の搬送路に原稿を誘導するよう制御する。このような制御を行うことにより、原稿は順次搬送路を搬送され原稿の表面が図2に示された矢印の位置でCCD109によって読み込まれる。
【0021】
次に、画像読取装置は、原稿搬送路切替板121を画像読取装置対して上側に制御、原稿搬送路切替板123を下側に制御することによって、原稿搬送路切替板122が設けられている側の原稿搬送路に原稿を誘導し、CIS117が設置されている搬送路に原稿を導く。CIS117は、原稿搬送路を通過する原稿裏面の有効画像域のタイミングで、有効画像の読み込みを行う。そして、CIS117を通過した原稿は、原稿搬送路切替板122によって図中上側の原稿排紙ローラ116側に誘導され、原稿排紙台103に排出される。
【0022】
尚、CCD109の画像読み込み位置とCIS117の画像読み込み位置のタイミングに関しては、CCD109とCIS117の副走査のライン間隔が決まっているため、その分CCD109に対してCIS117の読み込みを遅らせることによって正確に原稿裏面を読み込むことができる。
【0023】
(片面原稿読取)
図3は、本実施形態に係る画像処理装置が備える画像読取装置の片面原稿読み取り時の原稿搬送路例を示している。以下に、片面原稿の表面を読み込む場合について、図3を用いて説明する。尚、図3中の実線が片面原稿の表面読み取り時の原稿搬送路例を示している。
【0024】
片面原稿の表面を読み込む場合、原稿搬送路切替板120を下側の搬送路に原稿を誘導するようにし、原稿搬送路切替板122を原稿読取装置上側移動させるように制御する。この制御により、原稿は順次搬送路を搬送され、原稿の表面がCIS117によって読み込まれる。この時、原稿搬送ローラ114は、上記図2で説明した両面読み取り時と回転方向が逆なるように制御される。次に、原稿搬送路切替板123によって原稿は原稿読取装置において上側の原稿搬送路に誘導される。この制御により、原稿は順次搬送路を搬送され原稿の表面が、図3に示された矢印の位置でさらにCCD109で読み込まれるよう搬送される。CCD109は、上面を通過する原稿の表面の有効画像域のタイミングで、有効画像の読み込みを行う。そして、原稿搬送路切替板121を下側に移動するように制御することによって、CCD109を通過した原稿は、図3に示される搬送路のうち下側の搬送路に搬送され、図中下側の原稿排紙ローラ116側に誘導され、原稿排紙台103に排出される。
【0025】
尚、CIS117の画像読み込み位置とCCD109の読み込み位置のタイミングに関しては、CCD109とCIS117の副走査のライン間隔が決まっているため、その分CIS117に対してCCD109の読み込みを遅らせることによって正確に原稿表面を読み込むことができる。また、図2及び図3における原稿搬送路切替板を上下する制御方法については、既存の技術を適用することが可能であり、ここでは詳細説明は省略する。
【0026】
(原稿種検知)
図4は、本実施形態に係る画像処理装置が備える画像読取装置における原稿種検知処理を説明するための図である。以下、図4を用いて原稿カバー119と原稿カバー119に組み付けられている原稿表面(上面)用の原稿種検知デバイス118−1、原稿台102と原稿台102に組み付けられている原稿裏面(下面)用の原稿種検知デバイス118−2について説明する。
【0027】
図4に示されたの実線は、原稿台102に置かれた原稿が原稿給紙ローラ112によって読取装置内に引っ張り込まれた際に原稿が搬送される原稿搬送路を示している。図4では、原稿搬送路切替板120の箇所で原稿搬送路が上側下側に分かれている場合を例として示しているが、これに限定されるものではない。図4に示すような構成とする場合、原稿搬送路切替板120上下の制御によって、上述したように原稿を搬総する原稿搬送路を変更することができる。
【0028】
上記したような原稿搬送路を決定するために、原稿種検知デバイス118−1、118−2が搭載されている。具体的には、原稿種検知デバイス118−1及び118−2は、原稿面に画像データが描画されているか否かを検知することによって、原稿が両面原稿か片面原稿かを検知する。
【0029】
図4に示す例では、原稿の表面(上面)の画像を検知するために原稿カバー119に原稿種検知デバイス118−1が搭載されている。他方、原稿の裏面(下面)の画像を検知するために原稿台102に原稿種検知デバイス118−2が搭載されている。これらの原稿種検知デバイス118の検知結果に基づいて、搬送路の切替え制御を行う。例えば、原稿種検知デバイス118が両面原稿であると検知した場合は、原稿搬送路切替板120の制御により図4に示す上側の搬送路に原稿を誘導し、図2を用いて説明したように、原稿表面をCCD109で読み取り、原稿裏面をCIS117で読み取る処理を行う。他方、原稿種検知デバイス118が片面原稿であると検知した場合は、原稿搬送路切替板120の制御により下側の搬送路に原稿を誘導し、図3を用いて説明したように、原稿表面をCCD109とCIS117との両方で読み取る処理を行う。
【0030】
図5は、原稿種検知デバイスを2組搭載した場合を説明するための図である。以下に、図5を用いて、原稿種検知デバイスが上下対のものを2組搭載した場合の有利な点について説明する。
【0031】
図5では、原稿台102に置かれた原稿の先端側の原稿種検知デバイス118−3から原稿搬送路切替板120までの長さをa、先端側の原稿種検知デバイス118−3から原稿中央の原稿種検知デバイス118−4までの長さをb、原稿中央の原稿種検知デバイス118−4と原稿後端までの長さをcとすると、a>b、a>cかつ原稿副走査幅=b+cとなるような関係で原稿種検知デバイスが設けられている例を示している。
【0032】
ここで、原稿搬送路切替板120によって原稿の搬送路を切り替える場合に、この原稿搬送路切替板120に原稿先端が到達する前に2組の対となった原稿種検知デバイス118で両面原稿か片面原稿かを判断する必要がある。このとき、図5のaの長さがあまり長くなると原稿台102が原稿排紙台103を覆うようになり、ユーザにとって排紙原稿の取り出し等の操作がし難い場合がある。そこで、本実施形態では、2組の原稿種検知デバイス118を用いることで、原稿面を半分ずつ同時に検知し、原稿台102を短くすることで、操作性の低下を防止している。尚、ここでは、原稿種検知デバイス118を2組搭載する例を挙げて説明したが、これに限定されるこのではなく、原稿種検知デバイスの数や搭載位置は適宜変更することが可能である。
【0033】
また、図6に示すように原稿カバー119を上下に開閉できるように設けることで、ユーザが原稿をセットする時に原稿カバー119を持ち上げ、簡単に原稿をセットできるようにしている。さらに、原稿カバー119が原稿を押さえる機能も有しているので、複数の原稿のばらつきによって引き起こされる原稿給紙時のジャムの発生を軽減することもできる。
【0034】
上記のような構成において、原稿種検知デバイス118が両面原稿であると検知した場合は、原稿搬送路切替板120の切り替えにより、図7の太線で示すような上側の搬送路に原稿が搬送されるように制御される。他方、上記のような構成において、原稿種検知デバイス118が片面原稿であると検知した場合には、原稿搬送路切替板120の切り替えにより、図8の太線で示すような下側の搬送路に原稿が搬送されるように制御される。
【0035】
(画像処理装置)
図9は、本実施形態に係る画像処理装置の概略機能構成例を示している。より詳細には、図9は、上述したような画像読取装置を搭載した画像処理装置において、原稿の表面を読み取るCCD109の画像濃度と同じ濃度になるように、原稿の裏面を読み取るCIS117の読取画像データを補正する機能を有する画像処理装置の概略構成例を示している。
【0036】
まず、本実施形態に係る画像処理装置の処理概要を説明する。本実施形態に係る画像処理装置では、上述したように、片面原稿読取時には、片面(表面)の原稿画像データをCCD109とCIS117との両方で読み取り、それぞれの画像データの差異を比較してCIS117の画像データをCCD109の画像データと同じに読み込めるようにCIS117の画像データを補正機能により補正する。その後、両面原稿を読み取る際には、CIS117から読み込まれた裏面画像を前記補正機能で補正処理することで、CCD109から読み込まれた画像とCIS117から読み込まれた画像濃度を同じにすることができる。つまり、本実施形態に係る画像処理装置における表裏画質合わせ込み処理には、片面原稿を読み取る際にCCD109の読み取り画像とCIS117の読み取り画像とを比較し、CIS117の補正パラメータを生成する工程と、両面原稿を読み取る際に、その補正パラメータを使用してCIS117が読み取った裏面画像を補正する工程とがある。これにより、特に表裏画質補正モードに入ることなく、ユーザの普段の読み取り作業に平行して補正処理を実施することができる。
【0037】
次に、本実施形態に係る画像処理装置が備える機能について、図9を用いて説明する。中央処理装置であるCPU(Central Processing Unit)901は、画像処理装置全体を制御する。CPU901の周辺には、処理動作をプログラムしたソフトウエアの格納場所、ワーキング領域、不揮発な蓄積手段等が設けられるが、本実施形態に関しては既存のCPUを適用することができるため、CPU周辺装置の説明は省略する。
【0038】
データバス902は、CPU901とその他の画像処理モジュールとを接続し、コマンドの送受信、画像データの送受信を行わせることができる。CPU901は、データバス902を介して、各画像処理モジュールや画像データの流れを制御することができる。表面センサ903は、上記したように、原稿の表面に画像データが有るか否かを検知するための原稿種検知デバイスである。裏面センサ904は、上記表面センサ903と同様に、原稿の裏面に画像データが有るか否かを検知するための原稿種検知デバイスである。図9では省略しているが、図1で示すように、裏表向き合うように設けられた表面センサと裏面センサは、例えば2組設けることができ、これにより、原稿種検知の検知速度を高めることができる。表面センサ903や裏面センサ904によって検知された情報はデータバス902を介してCPU901に通知される。
【0039】
表面センサ903及び裏面センサ904によって片面原稿であると検知されると、CPU901は原稿搬送路制御部909にコマンドを送信する。そして、原稿搬送路制御部909が上述したように原稿搬送路切替板を制御することで、図3で示すような原稿搬送経路とし、原稿の表面をCCD109とCIS117の両方で読み込めるようにする。
【0040】
第2読取部905は、CIS(Contact Image Sensor)により原稿の画像データを読み取る。第2補正部906は、このCIS独自の電気的な特性、或いは画像フォーマットを画像処理装置内部で扱えるような形に変換するデバイス補正部である。また、第2補正部906は、複数のセグメントから構成される読み取り装置の各CISの特性を補正するための画像処理手段も備えている。
【0041】
第1読取部907は、CCDにより原稿の画像データを読み取る。第1補正部908は、このCCD独自の電気的な特性、或いは画像フォーマットを画像処理装置内部で扱えるような形に変換するデバイス補正部である。また、第1補正部908は、ランプのばらつきやCCD光電素子のばらつきを補正するためのシェーディング補正のような画像処理手段も備えている。
【0042】
分割領域生成部910は、図10で示すような原稿画像を複数の矩形領域で分割する手段である。図10では、原稿全面画像を256ドット×256ドットの矩形領域に分割した例を示している。尚、本実施形態では、256ドット×256ドットの矩形領域をひとつの分割領域とし、その領域の位置を示すために主走査方向をMcnt、副走査方向をScntとし、(Scnt、Mcnt)で分割領域を表している。この表し方では、左上の領域を(0、0)で表すことができる。この左上の(0、0)を基準として、副走査方向にはScntが1ずつ増加し、主走査方向ではMcntが1ずつ増加して分割領域を表している。また、分割領域信号生成部910は、上記のような分割領域信号をCIS側の処理部に出力し、さらにCCD側の原稿先端にタイミングを合わせてCCD側の処理部へも出力している。
【0043】
画像均一性検知部911は、CIS(裏面)側の画像処理モジュールで画像の均一性を検知する。画像均一性検知部911は、分割領域信号生成部910で生成された分割領域の中で画像データの偏差を求め、その偏差がある特定偏差以内に収まっているか収まっていないかを検知し、収まっていない領域は画像の均一性がないと判断し、後の画像処理工程にてこの領域を処理対象としないと判断する。他方、偏差がある特定偏差以内に収まっていると検知した分割領域は、後の画像処理工程における処理対象の候補であると判断する。
【0044】
第2領域内画像平均部912は、CIS側の画像データの領域内画像平均部である。第2領域内画像平均部912は、画像均一性検知部911で均一性があると判断された領域の内部の平均値を演算する手段である。第2記憶部913は、第2領域内画像平均部912で平均化された値をその分割領域の位置情報(Scnt、Mcnt)と共に格納する。第1領域内画像平均部914は、CCD側の画像データの領域内画像平均部である。第1領域内画像平均部914にも分割領域信号生成部910からの領域信号が入力される。第1領域内画像平均部914は、CIS側の画像データの読み込み時に第2記憶部913に格納された領域の位置アドレスを読み出し、CCD側のその位置アドレスに相当する領域のCCD側の平均値を演算し、第1記憶部915に演算結果を順次格納していく。これらの処理を原稿画像全面で実施し、この処理が完了した時点で、原稿画像で均一な領域のCIS側の平均値データとCCD側の平均値データがそれぞれ記憶部に格納された状態となる。
【0045】
特定色検知部916は、第2記憶部913や第1記憶部915に格納された領域毎のCIS側の平均値データとCCD側の平均値データとがそれぞれ予め規定された特定色であるかどうかを検知する手段である。特定色であるかの検知方法としては、特定色とCIS側の平均値データ、特定色とCCD側の平均値データの色差を演算し、それぞれの色差がある特定色差よりも小さければ特定色と検知し、特定色差よりも大きければ特定色でないと検知する方法が挙げられる。ここでは、後の工程での画像補正手段が制御できる適正な色であるか否かを判定している。つまり、どのような色からでも色補正パラメータを生成するのではなく、ある特定の制御点上の色データだけを扱い、その他の部分は、その複数ある制御点上の色データの補正パラメータを滑らかに補間することで生成し、演算時間を短縮している。図11は、限られた複数の制御点から濃度変換曲線を生成した場合の濃度変換曲線を示す。図11に示す例では、17個の制御点から、それらを数学的に滑らかに繋ぐことによって、濃度変換曲線を生成している。
【0046】
CCD/CIS画像濃度比較部917は、特定色検知部916で特定の色であると検知されたCIS側の平均値データとCCD側の平均値データに対して、その両者の色差がある特定色差よりも小さければ同等色と検知し、特定色差よりも大きければ同等色でないと検知する。これはCIS側の平均値データとCCD側の平均値データの差が無いような場合を検知して、差が無いようであれば後段の補正処理は実施しないように制御するためである。これにより、無駄な演算の実施を回避することができる。
【0047】
CIS画像LUT生成部918は、CCD/CIS画像濃度比較部917の比較結果を受けて、CISの画像濃度がCCDの画像濃度と同等になるようにCIS側画像データ用のLUT(ルックアップテーブル)変換を生成する。簡単な例として、図12に示すようにCIS画像とCCD画像の特性が異なる場合、原稿データ(入力データ)Aに対して、CCDで読み込んだ出力データはA'、CISで読み込んだ出力データがA"となってしまうことがある。このように、同じ原稿データを読み込んだ際であっても出力データが異なってしまうような場合のために、CIS側の画像データで原稿画像Aを読み込んだ際の出力データをA"からA'に変換するようなルックアップテーブルを生成しておく。これにより、原稿データAに対して、CIS画像がA"からA'に変換されるので、CIS画像データをCCD画像データと同じA'の濃度に合わせあることができる。
【0048】
また、図13は、特定色検知部916で検知する色の例を示している。補正テーブル(LUT)を比較的簡単に生成するために、図13に示すようなR、G、B毎に17個のそれぞれ濃度を変えた色を予めデータとして保持しておき、これらの特定色の何れかに近い色データが原稿データで検知された際に、CIS画像に対してCCD画像と同等になるような補正処理を施している。例えば、原稿データに特定色(R)系の色が検知された場合は、R(レッド)のLUT補正テーブルの生成に利用し、特定色(G)系の色が検知された場合は、G(グリーン)のLUT補正テーブルの生成に利用し、特定色(B)系の色が検知された場合は、B(ブルー)のLUT補正テーブルの生成に利用する。図13では、合計51の色を予めデータとして保持しておく例を示しているが、これに限定されるものではない。尚、図13に示す色の例はモノクロで示されているが、Rはレッド、Gはグリーン、Bはブルーを示しているものとする。
【0049】
ここで、本実施形態では、RGB各8ビットの読み取り手段を想定している。この8ビットのLUTは、最初は予めデフォルト値としてCIS画像の変換テーブルが設定されているが、ユーザが片面原稿を読み込ませる通常作業の中で順次前記特定色を検知し、その特定色を使用して補正パラメータを演算し、LUTへストアできるようにする。このような構成とすることで、ユーザに特別な操作を行わせることなく、CIS画像とCCD画像の色合わせ処理を行うことができる。また、RGB各8ビットの読み取り手段以外にも本実施形態を適用することはもちろん可能である。
【0050】
このようにして生成されたLUTパラメータは、CIS画像LUT記憶部919に格納される。このLUTの入力はCISの読み込み画像の濃度データ、出力はCISの読み込み画像の濃度を補正した補正画像データとなる。RGB各1つのLUTを持ち、RGB画像データ毎に独立に変換処理を行う。
【0051】
CIS画像LUT変換部920は、読み込まれたCISの画像データをCIS画像LUT記憶部919の入力データとし、その出力データを変換後のCIS画像データとして次工程へ受け渡す。色材濃度変換部921は、読み込まれたCCD画像データとCCD画像データ同等の濃度に補正されたCIS画像データを、出力手段である印刷部923の色材濃度に変換する手段である。例えば、印刷部923がKCMYトナーを使用した印刷装置である場合、RGBからKCMYへの変換を行う。このRGBからKCMYへの変換は、従来技術と同等の方法を適用することができる。
【0052】
上述したような画像処理ブロックの流れを図14に示す。デバイス補正部922は、本実施形態で生成した画像データを印刷部923特有な電気的特性や画像データフォーマットに変換する手段である。例えば、印刷部923を別の画像出力手段に置き換えたとしても、その印刷部に見合ったデバイス補正部も一緒に置き換えることで、印刷部に対して適切な画像データを送出することができる。
【0053】
次に、図15及び図16を用いてCIS画像データの処理とCCD画像データの処理の関係について説明する。図15に示すように、CIS117が設置されている位置(A)とCCD109が読み取り位置(B)とを参照すると、片面読取の場合、原稿がCIS設置位置(A)を通過してから、CCD読取位置(B)を通過するまでには、処理的にかなりの距離がある。この間にCIS117から読み込んだ画像データに何らかの処理を施し、その結果をCCD109から読み込んだ画像データの処理に反映することで、CIS側の処理とCCD側の処理の両方で同じ回路を必ずしも備える必要がなくなる。例えば、CIS側の処理のみに回路を備え、その結果をCCD側の処理に通知して利用することで、CCD側の処理の回路規模を小さくすることができる。
【0054】
本実施形態では、図16に示すように、まず、画像均一性検知部911がCIS画像データの画像均一性を検知した結果と、第2領域内画像平均部912が領域内の画像平均値を求めた結果とを第2記憶部に記憶させておく。そして、第1領域内画像平均部914においてCCD画像データの領域内画像平均値を求める場合に、矢印2401で示す信号により第2記憶部から受信した画像均一性情報を再利用する。これにより、第1領域内画像平均部914は、画像の均一性のある分割領域だけの平均値を演算して第1記憶部に格納することができるので、CCD側の処理で画像均一性検知のための回路を必ずしも備える必要がなくなる。さらに、CCD側の処理時間も短縮することができる。
【0055】
図17は、本実施形態に係る画像処理装置における分割領域内偏差検知処理、平均値演算処理及び記憶部格納処理の流れの例を示す。以下に、図17に示すフローチャートを用いて、上述した分割領域内の偏差の検知、平均値の演算及び記憶部へ格納までの処理例について説明する。
【0056】
ここで、上述した処理は分割領域の生成が前提となるので、はじめに、分割領域生成について説明しておく。
【0057】
図18は、分割領域の領域を点線で示した図である。この領域は規則正しい矩形で分割されており、原稿の画像データと重ね合わせた場合に、この一つの矩形で囲まれる原稿画像が領域内の画像となる。また、図18に示すように分割領域は、主走査方向及び副走査方向に沿ってアドレスが割り振られ、画像処理装置はそのアドレスを用いて領域を管理する。図18に示す例では、主走査方向のアドレスをMcntとし、主走査先端から0、1、2、・・・とアドレス番号が振られる。他方、副走査方向はScntとし、こちらも副走査先端から0、1、2、・・・とアドレス番号が振られる。分割領域のアドレスは、(Scnt、Mcnt)で表され、括弧内のScnt、Mcntのアドレス番号の交わるところの分割領域を示す。
【0058】
より具体的には、図10に示すように、Data(0)、Data(1)、Data(2)、Data(3)、・・・が画像データの一画素をそれぞれ示している。また、(Scnt、Mcnt)で示している箇所が各分割領域である。例えば、図10中の一番左上の分割領域が(Scnt=0、Mcnt=0)となる。
【0059】
次に、分割領域信号生成部910が、分割領域信号を生成するための回路について、図19を用いて説明する。図19には、主走査方向のカウンタ回路と副走査方向のカウンタ回路とが示されている。図19の上側のカウンタ1601、1602は、主走査方向の領域の区切りを生成する回路である。カウンタ1601は、クロックに画素クロック、リセットにライン同期信号を入力し、出力8ビットがAND回路に送信されている。カウンタ1602は、クロックに画素クロック、リセットにライン同期信号、イネーブルにカウンタ1601からのカウンタ出力の8ビットAND回路からの信号が送信されている。これにより、カウンタ1601で256画素毎にパルスを発生させ、それをカウンタ1602のイネーブルに入力し、結果としてMcntは、主走査先端カウンタ0で始まり256画素毎に1つずつカウントアップしていくMcntカウンタとなる。
【0060】
同様に、図19の下側のカウンタ1603、1604は、副走査方向の領域の区切りを生成する回路である。カウンタ1603は、クロックにライン同期信号、リセットにフレーム信号を入力し、出力8ビットがAND回路に送信されている。カウンタ1604は、クロックに画素クロック、リセットにフレーム信号、イネーブルにカウンタ1603からのカウンタ出力の8ビットAND回路からの信号が送信されている。これにより、カウンタ1603で256ライン毎にパルスを発生させ、それをカウンタ1604のイネーブルに入力し、結果としてScntは、副走査先端カウンタ0で始まり256ライン毎に1つずつカウントアップしていくScntカウンタとなる。このScnt、Mcntのカウンタ値により上記図10や図18のような分割領域信号が生成される。
【0061】
図20は、図19で示したような処理時のフレーム信号、ライン同期信号、画素クロック信号の関係を示している。フレーム信号は、副走査の有効画素領域を示す信号であり、Lレベル時には画像が有効であることを表している。ライン同期信号は、主走査先端を明示する信号であり、主走査先端数画素分Lレベルとなり、その後Hレベルとなる。つまり、ライン同期信号は、主走査先端の起点を示す。画素クロックは、画像1画素に立上がり立下りのある基本となる画素レート信号である。
【0062】
図21は、上記したようなScnt信号及びMcnt信号が分割領域信号生成部910より生成され、画像データと共に画像均一性検知部911に送信されていることを示している。これにより、入力された画像データを送信されたScnt及びMcntで示される分割領域信号で分割することができる。
【0063】
ここで、画像データの分割について、さらに詳細に説明する。図23は、図22に示すような片面原稿を読み取る場合に、原稿と分割領域信号とを重ね合わせた例を示している。尚、ここで図22及び図23に示す原稿はモノクロで示されているが、複数の画素色から構成されるカラー画像原稿であるものとする。
【0064】
図23を参照すると、分割領域内において原稿画像の均一性がある領域とない領域とがあることがわかる。図24には、分割領域毎に画像処理を行い、分割領域内全域に均一性のある画像になっている画像データのみを検知した例を示す概念図である。つまり、図24には、分割領域内において画像データに均一性がある領域だけを抜き出した場合の例を示している。本実施形態では、この図24で示される領域のみを有効データとして扱うことになる。
【0065】
以下、図17に示すフローチャートを用いて、本実施形態に係る画像処理装置における分割領域内偏差検知処理、平均値演算処理及び記憶部格納処理の流れの例について詳細に説明する。
【0066】
尚、図17に示すフローチャートに記載されたScntとMcntという変数は、上記図21の分割領域信号生成部内のScntカウンタとMcntカウンタで生成した信号であり、図10のように各画素(Data)に対して一意に決まっている領域信号である。図17では、Scnt及びMcntのインクリメントは記述していないが、画素変数dotのインクリメントに応じた領域信号(Scnt、Mcnt)がカウンタ回路(ハードウエア)により自動で送信されているとする。図17に示す処理は、CIS画像、CCD画像の両方に対して実施するものとする。また、図17に示す処理は、画像読み取り時にASIC(Application Specified IC)等のハードウエアでリアルタイムに実施する処理で実現している。
【0067】
まず、分割領域内の画像濃度の平均値を演算するために用いられる領域内の画像濃度の合計を記憶しておくための配列であるSUMのアロケート領域をゼロクリアする。分割領域毎に画像濃度の合計を演算するので、配列は、分割領域数分必要である。また、分割領域内の濃度の最大値と最小値を求めるために、その比較用の変数として、最大値を入れる配列MAX、最小値を入れる配列MINをアロケートし、配列MAXはゼロクリア、配列MINは最大値である0Xff(8ビット)をストアする。さらに、画像の画素位置を示すdotをゼロクリアする(ステップS1701)。dotは、画素クロック毎にインクリメントする。つまり、図17示される「dot=dot+1」とは、次の画素を指し示している。
【0068】
画像処理装置では、dotで示された画素の濃度Data(dot)が、このdotを含有する分割領域の最大値MAX(Scnt、Mcnt)よりも大きいか否かを比較する(ステップS1702)。Data(dot)の方がMAX(Scnt、Mcnt)よりも大きい場合(ステップS1702/YES)、MAX(Scnt、Mcnt)にData(dot)を代入する(ステップS1703)。他方、上記ステップS1702において、Data(dot)がMAX(Scnt、Mcnt)同等以下であると判断された場合(ステップS1702/NO)、何も処理を行わずに、次の処理に移行する。
【0069】
dotで示された画素の濃度Data(dot)が、このdotを含有する分割領域の最小値MIN(Scnt、Mcnt)よりも小さいか否かを比較する(ステップS1704)。Data(dot)の方がMIN(Scnt、Mcnt)よりも小さい場合(ステップS1704/YES)、MIN(Scnt、Mcnt)にData(dot)を代入する(ステップS1705)。他方、上記ステップS1704において、Data(dot)がMIN(Scnt、Mcnt)同等以上であると判断された場合(ステップS1704/NO)には、何も処理を行わずに、次の処理に移行する。
【0070】
次に、領域内画像平均部は、分割領域毎の濃度の合計を演算する(ステップS1706)。分割領域毎に変数SUMを設けており、dotが示している画素データData(dot)をSUMに加算する。そして、次の画素を指定するためのdotのインクリメント(+1)を行う(ステップS1707)。上記ステップS1707におけるインクリメントによっても、dotがいまだ有効画像領域内である場合(ステップS1708/NO)、各条件に基づいて、上記ステップS1702の処理に移行し、上述したような処理を繰り返し行う。他方、dotが有効画像領域外となった場合(ステップS1708/YES)、原稿データの有効領域の演算は全て実施したことになる。そこで、有効領域の画像濃度の合計、最大値、最小値を分割領域毎にアロケートメモリに格納して(ステップS1709)、動作を終了する。
【0071】
次に、図17に示した処理の後に実施される処理について、図25に示すフローチャートを用いて説明する。画像処理装置では、上述したようにアロケートメモリに格納された分割領域毎の画像濃度の合計、最大値、最小値を使用して、以下に示すような画像濃度が均一である分割領域の画像濃度平均値と分割領域アドレス(Scnt、Mcnt)とを記憶部に格納する処理を実施する。
【0072】
図25のフローチャートが示す格納処理は、CIS画像及びCCD画像の両方に対して実施するものである。また、上記図17に示す処理では、画素(dot)に対する分割領域アドレスScnt、Mcntがハードウエア(カウンタ)で自動的に入力されたのに対して、図25に示す処理では、原稿画像がリアルタイムに入力される工程は行わずに、メモリに格納された分割領域データ(画像濃度の合計、最大値、最小値)を順次、Scnt、Mcntをインクリメントしていくことでアクセスし処理を行う。
【0073】
まず、分割領域を識別するScnt、Mcntをゼロクリアする(ステップS2501)。これは、有効領域左上の先頭分割領域から処理を始めるためである。次に、領域内画像平均部等によって、分割領域内の画像濃度のばらつき(DIF)と分割領域内の平均値(AVE)を演算する(ステップS2502)。DIFは、分割領域内の最大値(MAX)と最小値(MIN)の差分を示している。AVEは、分割領域内の画像濃度値の合計を分割領域内の画素数(DOTCNT)で割った平均値を示している。また、DOTCNTは、ハードウエア(カウンタ)で分割領域を固定サイズとしているため一意に決まり固定値である。
【0074】
次に、画像均一性検知部911は、分割領域内の画像濃度のばらつき(DIF)がある特定値(DIFCNST)以下であるか否かを判定する(ステップS2503)。上記ステップS2503の判定により、分割領域内の画像濃度に均一性があるか否かを判断できる。DIFCNSTは、色彩光学的に人間の目には差異が認められない色差から予め求められた固定値である。つまり、DIFCNSTよりも色の濃度差がある場合には、人間は違う色と判断し、濃度差がDIFCNST以内の場合には同じ色と判断する。ここで、分割領域内の画像濃度のばらつき(DIF)がDIFCNST以下である場合(ステップS2503/YES)には、上記ステップ2502で演算した分割領域内の平均値(AVE)を、AVE(Scnt、Mcnt)として記憶部に格納する(ステップS2504)。(Scnt、Mcnt)を付加した理由としては、どの分割領域の平均値(AVE)であるかを明確にするためである。また、分割領域内の画像濃度のばらつき(DIF)がDIFCNSTよりも大きい場合(ステップS2503/NO)には、その分割領域には均一的な画像が存在しないと判定し、その分割領域の領域データ(画像濃度の合計、最大値、最小値)を以下の処理で扱うことができないので、記憶部には格納しない。
【0075】
上記ステップS2502から上記ステップS2504までの処理を、上記図17に示す処理で格納した全分割領域に対して実施する。つまり、上記ステップS2504の処理の後に、主走査方向の分割領域アドレス(Mcnt)のインクリメントを行い、次の分割領域を指定する(ステップS2505)。そして、主走査方向の分割領域終了していない場合(ステップS2506/NO)には、上記ステップS2502の処理に移行する。他方、主走査方向の分割領域が終了した場合(ステップS2506/YES)、Mcntをゼロに戻し、副走査方向の分割領域アドレスScntをインクリメントし、次の行の分割領域を指定する(ステップS2507)。ここで、副走査方向の分割領域が終了していない場合(ステップS2508/NO)には、再度上記ステップS2502の処理に移行し、上述した処理を上記ステップS2507において指定された分割領域に対して実施する。他方、副走査方向の分割領域が終了したと判断された場合(ステップS2508/YES)には、動作を終了する。上述した処理により、領域内の画像濃度が均一である分割領域の画像濃度平均値は、分割領域アドレス(Scnt、Mcnt)と共に記憶部に格納される。
【0076】
本実施形態に係る画像処理装置の補正パラメータ生成処理について、図26に示すフローチャートを用いて説明する。図26に示す処理は、CIS画像及びCCD画像の両方に対して実施するものである。図26に示す処理は、上記図17や図25に示した処理の後に実施される処理である。図25に示す格納処理の終了後、記憶部には領域内が均一データである各分割領域の平均値が分割領域アドレスと共に格納された状態となる。図26に示す補正パラメータ生成処理では、この記憶部内に格納された情報を使用して処理を行う。
【0077】
まず、分割領域を識別するScntとMcntを初期化する(ステップS2601)。上記ステップS2601において、ScntとMcntに(−1)を代入しているのは、以下の処理であるステップS2602において(+1)を加算することでScntとMcntがゼロとなるようにし、このステップS2302からループ処理を開始するためである。
【0078】
図25に示すステップS2503〜2504の処理では、有効なAVE(Scnt、Mcnt)のみを記憶部にAVEデータとして格納した。ここで、この記憶部内にある有効AVE(Scnt、Mcnt)であるかどうかを検知する(ステップS2603)。つまり、Scnt、Mcntが指し示すAVEデータが有効でないと検知した場合(ステップS2603/NO)、上記ステップS2602の処理に移行し、次の領域について処理を始める。他方、Scnt、Mcntが指し示すAVEデータが有効であると検知された場合(ステップS2603/YES)、特定色検知部は、有効なAVE(Scnt、Mcnt)が予め規定している特定色であるか否かを検知する(ステップS2604)。
【0079】
特定色検知部が特定色でないと検知した場合(ステップS2604/NO)、上記ステップS2602の処理に移行し、次の領域について処理を始める。ここでいう特定色とは、後段の画像補正に適した色データであることを意味している。後段で画像補正パラメータを生成する時に、そのアルゴリズムに必要な色データのみを使用することになる。例えば、図13で示した色データが特定色の一例である。これらの色データに対して、ある程度のばらつきを考慮した色差内に入っているAVEデータを特定色と判断する。
【0080】
上記ステップS2604において、特定色検知部によって特定色であると検知した場合(ステップS2604/YES)、前記特定色であると判定されたCIS画像のAVEデータとCCD画像のAVEデータを比較し、CIS画像の補正用パラメータを生成する(ステップS2605)。つまり、同じ原稿画像の同じ領域内の特定色の均一画像を互いに読み込み、それらを比較し、CIS画像データをCCD画像データの読み取り値と同じになるように、CIS画像の読み取りデータを補正する補正パラメータを生成する。補正パラメータの生成方法としては、上記図12で示した方法を適用することができるが、これに限定されるものではない。
【0081】
次に、上記ステップS2605で生成した画像補正パラメータをCIS画像変換用のLUT(ルックアップテーブル)に格納する(ステップS2606)。上述したような処理により、今後、両面原稿を読み込む時に、このLUTによりCIS(裏面)側の読み取り画像を補正することによって、CIS画像の読み取り画像がCCD画像の読み取り画像と同等の色合いになるように変換することができる。本実施形態では、図14に示すように、CIS読取画像は、CIS画像変換用LUTを介してから、CCD読取画像と同等の処理を行うようにしている。
【0082】
本実施形態により、セットされた原稿が片面原稿か両面原稿かを検知し、両面原稿の場合には、表面をCCD、裏面をCISで読み取り、片面原稿の場合は、原稿給紙部に反転ローラ、スイッチバック制御を用いることなく、表面をCCD及びCISで読み込めるレイアウト構成とするので、片面原稿の場合にCCD及びCISから読み込んだ同一画像の特定色の読み取り値を比較し、画質の補正を行うことが可能となる。つまり、簡単な構成で、テストチャートを使用することなく表裏画質の合わせ込みを行うことが可能となる。これにより、同じ原稿を表面と裏面を別々に読み込ませなければならないといった手間や、わざわざ色合わせのための両面原稿のチャートを作成しなければならないといった手間を省くことができるので、ユーザの操作性を向上させることが可能となる。
【0083】
また、ある画像処理手段の処理回路で実行した結果を他の画像処理手段でも利用することで、他の画像処理手段の回路規模を小さくすることが可能となる。また、他の画像処理手段の処理時間を短くすることができ、システム全体としての処理時間も短縮することが可能となる。
【0084】
また、画像データとして安定したデータに基づいて補正パラメータ等を演算するため、より正確な画像補正処理を行うことが可能となる。また、原稿の表面を読み取る手段と裏面を読み取る手段の画質が同じになるように合わせ込み処理を行うため、表面の読取特性と裏面の読取特性を同じにすることが可能となる。さらに、また、表面と裏面で元々同じ特性で読み込める色に関しては、色合わせの補正処理を省くことができ、補正処理時間の短縮を図ることが可能となる。
【0085】
尚、各図のフローチャートに示す処理を、CPUが実行するためのプログラムは本発明によるプログラムを構成する。このプログラムを記録するコンピュータ読み取り可能な記録媒体としては、半導体記憶部や光学的及び/又は磁気的な記憶部等を用いることができる。このようなプログラム及び記録媒体を、前述した各実施形態とは異なる構成のシステム等で用い、該システムのCPUで上記プログラムを実行させることにより、本発明と実質的に同じ効果を得ることができる。
【0086】
以上好適な実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上述した画像処理装置に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0087】
101 ADF
102 原稿台
103 原稿排紙台
104 開閉カバー
105 スキャナ装置
107 照射ランプ
108 反射ミラー
109 CCD
110 結像レンズ
111 電子基板
112 原稿給紙ローラ
113 原稿搬送対ローラ
114 原稿搬送対ローラ
115 加圧ローラ
116 原稿排紙ローラ
117 CIS
118 原稿種検知デバイス
119 原稿カバー
120 原稿搬送路切替板
121 原稿搬送路切替板
122 原稿搬送路切替板
123 原稿搬送路切替板
901 CPU
902 バス
903 表面センサ
904 裏面センサ
905 第2読取部
906 第2デバイス補正部
907 第1読取部
908 第1デバイス補正部
910 分割領域信号生成部
911 画像均一性検知部
912 第2領域内画像平均部
913 第2記憶部
914 第1領域内画像平均部
915 第2記憶部
916 特定色検知部
917 画像濃度比較部
918 第2読取部画像LUT生成部
919 第2読取部画像LUT記憶部
920 第2読取部画像LUT変換部
921 色材濃度変換部
922 デバイス補正部
923 印刷部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0088】
【特許文献1】特開2008−187466号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の読取手段と第2の読取手段とを備え、原稿の両面を同時に読み取ることができる画像読取手段と、
読み込む原稿が片面原稿か両面原稿かを検知する原稿種検知手段と、
前記原稿種検知手段の検知結果に基づいて、原稿の搬送路を切り替える原稿搬送路切替手段と、
前記原稿種検知手段の検知結果に基づいて、原稿搬送ローラの回転方向を切り替える原稿搬送ローラ回転切替手段と、
前記第1の読取手段と前記第2の読取手段とで読み取った画像の画像特性に基づいて、前記第1の読取手段又は前記第2の読取手段の画像を補正する画像補正手段と、を有し、
前記画像読取手段は、前記原稿搬送路の切り替えと前記原稿搬送ローラの回転方向切り替えとにより、前記原稿が両面原稿である場合には原稿表面を前記第1の読取手段にて読み取り、原稿裏面を前記第2の読取手段にて読み取り、前記原稿が片面原稿の場合は、原稿表面を前記第1の読取手段にて読み取り、原稿表面を前記第2の読取手段にて読み取るように、前記第1の読取手段と前記第2の読取手段とを前記原稿搬送路周辺に配置したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
片面原稿を読み取る際に、前記第1の読取手段と前記第2の読取手段とで、読み取り開始が先になる方の読取手段で読み取った画像に処理を施す第1の画像処理手段と、
読み取り開始が後になる方の読取手段で読み取った画像に処理を施す第2の画像処理手段と、を有し、
前記第2の画像処理手段は、前記第1の画像処理手段の処理結果を利用して処理を施すことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
所定の偏差内に分布する画像データのみで構成され、且つ、所定面積以上を有した領域を検知する画像均一領域検知手段と、
前記画像均一領域検知手段で検知された領域内の画像データの代表値を演算する第1の領域内画像演算手段と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像均一領域検知手段によって検知された領域情報に基づいて、前記読み取り開始が後になる方の読取手段から読み込んだ画像データの代表値を演算する第2の領域内画像演算手段を有することを特徴とする請求項3記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記画像均一領域検知手段で検知された領域毎に、前記第1の領域内画像演算手段により演算された第1領域内代表値データと前記第2の領域内画像演算手段により演算された第2領域内代表値データとを比較するデータ比較手段、を有し、
前記画像補正手段は、前記データ比較手段の比較結果に基づいて、前記第2の読取手段で読み取った画像を、前記第1の読取手段で読み取った画像と同じ画像特性になるように補正することを特徴とする請求項4記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第1の領域内画像演算手段で演算された第1領域内代表値データと前記第2の領域内画像演算手段で演算された第2領域内代表値データとの差分が特定値以内か否かを判定する判定手段を有し、
前記画像補正手段は、前記差分が所定値以下である場合は補正処理を行わないことを特徴とする請求項4又は5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記第1領域内代表値データと前記第2領域内代表値データとが画像補正に適した画像データであるか否かを判定する補正画像判定手段を有し、
前記画像補正手段は、画像補正に適した画像データでない場合は補正処理を行わないことを特徴とする請求項4から6の何れか1項に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2011−109542(P2011−109542A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264288(P2009−264288)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】