画像処理装置
【課題】病巣領域の画像診断におけるユーザの手間の軽減を実現する画像処理装置の提供。
【解決手段】画像記憶部10は、複数の画像種に関する複数の形態画像のデータと複数の機能画像のデータとを記憶する。画像種テーブル記憶部12は、複数の画像種と複数の病名とを関連付けた画像種テーブルを記憶する。画像種特定部20は、複数の病名のうちのユーザにより入力された病名に画像種テーブル上で関連付けられた第1の画像種と第2の画像種とを特定する。画像処理部28は、特定された第1の画像種に関する形態画像と第2の画像種に関する機能画像とを画像記憶部10から読み出して画像処理を行い、第2の画像種に関する機能画像から病巣領域を抽出する。表示部32は、抽出された病巣領域と第1の画像種に関する形態画像とを重ねて表示する。
【解決手段】画像記憶部10は、複数の画像種に関する複数の形態画像のデータと複数の機能画像のデータとを記憶する。画像種テーブル記憶部12は、複数の画像種と複数の病名とを関連付けた画像種テーブルを記憶する。画像種特定部20は、複数の病名のうちのユーザにより入力された病名に画像種テーブル上で関連付けられた第1の画像種と第2の画像種とを特定する。画像処理部28は、特定された第1の画像種に関する形態画像と第2の画像種に関する機能画像とを画像記憶部10から読み出して画像処理を行い、第2の画像種に関する機能画像から病巣領域を抽出する。表示部32は、抽出された病巣領域と第1の画像種に関する形態画像とを重ねて表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病巣領域の画像診断を支援するための画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に示すように、病巣領域の画像診断を支援する画像処理装置がある。画像処理装置は、ユーザにより指定された形態画像と機能画像とに対して、ユーザにより指定された画像処理をすることで、病巣領域が強調された画像を生成して表示している。現在、画像処理のための臨床アプリケーションには、種々の画像処理機能が独立して実装されている。そのためユーザは、数ある種類の形態画像と機能画像との中から、病巣領域を抽出するための形態画像と機能画像との組み合わせを試行錯誤的に指定しなければならない。また、病巣領域を抽出するための画像処理の種類も多数あるため、これもユーザにより試行錯誤的に指定されている。従って、ユーザは、意図した画像を生成するまでに何回も画像種を選択したり、画像処理種を選択したりしなければならず、とても手間がかかっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003―126076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、病巣領域の画像診断におけるユーザの手間の軽減を実現する画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1局面に係る画像処理装置は、複数の画像種に関する複数の形態画像のデータと複数の機能画像のデータとを記憶する画像記憶部と、前記複数の画像種と複数の病名とを関連付けた第1テーブルを記憶する第1テーブル記憶部と、前記複数の病名のうちのユーザにより入力された病名に前記第1テーブル上で関連付けられた第1の画像種と第2の画像種とを複数の画像種の中から特定する第1特定部と、前記特定された第1の画像種に関する形態画像と第2の画像種に関する機能画像とを画像記憶部から読み出して画像処理を行い前記第2の画像種に関する機能画像から病巣領域を抽出する画像処理部と、前記抽出された病巣領域と前記第1の画像種に関する形態画像とを重ねて表示する表示部と、を具備する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、病巣領域の画像診断におけるユーザの手間の軽減を実現する画像処理装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態に係る画像処理装置の構成を示す図。
【図2】図1の画像種テーブル記憶部に記憶される画像種テーブルの一例を示す図。
【図3】図1の反転/非反転テーブル記憶部に記憶される反転/非反転テーブルの一例を示す図。
【図4】図1の画像間演算種テーブル記憶部に記憶される画像間演算種テーブルの一例を示す図。
【図5】図1の制御部の制御のもとに実行される画像処理の典型的な流れを示す図。
【図6】図5の流れの中で行なわれる画像処理の流れを画像とともに示す図。
【図7】図5のステップS4において実行される正規化処理を説明するための図であり、各画像の画素値範囲を示す図。
【図8】図5のステップS4における正規化スケールの算出手順を示す図。
【図9】図5のステップS4における正規化スケールの算出手順を示す他の図。
【図10】図5のステップS4における正規化スケールの算出手順を示す他の図。
【図11】図5のステップS8において実行される画像間演算について説明するための図。
【図12】図5のステップS14における病巣領域の輪郭強調表示の一例を示す図。
【図13】図5のステップS14における病巣領域の内部強調表示の一例を示す図。
【図14】図1の表示部により表示されるGUI画面例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係わる画像処理装置を説明する。本実施形態に係る画像処理装置は、ある検査部位に存在が疑われる病巣領域の画像診断を支援するコンピュータ装置である。本実施形態に係る検査部位は、特に限定されず如何なる部位にも適用可能である。しかしながら、以下の説明を具体的に行うため、検査部位は、脳であるものとする。
【0009】
図1は、本発明の画像処理装置の構成を示す図である。図1に示すように画像処理装置は、画像記憶部10、画像種テーブル記憶部12、反転/非反転テーブル記憶部14、画像間演算種テーブル記憶部16、入力部18、画像種特定部20、反転/非反転特定部22、画像間演算種特定部24、画像読み書き部26、画像処理部28、画像合成部30、表示部32、及び制御部34を備える。
【0010】
画像記憶部10は、複数の画像種に関する複数の形態画像のデータと複数の画像種に関する複数の機能画像のデータとを記憶する。形態画像と機能画像とのそれぞれは、X線診断装置、X線コンピュータ断層撮影装置、磁気共鳴イメージング装置、超音波診断装置、及び核医学診断装置のうちの1つのモダリティにより生成された画像である。また、形態画像と機能画像とのそれぞれは、ボリュームレンダリング等の3次元画像処理により生成された3次元画像であっても、画素値投影処理や多断面変換等により生成された2次元画像であってもよい。なお、以下の説明を具体的に行うため、形態画像と機能画像とのそれぞれは、磁気共鳴イメージング装置により生成されたものであるとする。また、形態画像と機能画像とのそれぞれは、2次元画像であるとする。
【0011】
画像種テーブル記憶部12は、複数の画像種と複数の病名とを関連付けたテーブル(以下、画像種テーブルと呼ぶことにする)を記憶する。図2は、画像種テーブルの一例を示す図である。図2に示すように、画像種テーブルは、画像の項目として形態画像項目と機能画像項目とを有している。形態画像項目は、脳の形態情報を観察するための形態画像の画像種が関連付けられている。機能画像項目は、病名に応じて細分されており、各病名に対応する病巣領域を観察するのに適した機能画像の画像種が関連付けられている。病名としては、脳梗塞、脳出血、脳腫瘍等がある。画像種としては、T1やT2、MRA(MR Angiography)、PWI(Perfusion Weighted Image)、DWI(Diffusion Weighted Image)、fMRI(functional MRI)等がある。形態画像と機能画像との組み合わせは、優先度に応じて順位付けされている。優先順位は、特定の病気に対する画像種の利用頻度に応じている。利用頻度が高ければ優先順位も高い。例えば、脳梗塞を診断したい場合、形態画像「T1」と機能画像「PWI」との組み合わせが最も優先順位が高い。その次は、形態画像「MRA」と機能画像「DWI」との組み合わせである。
【0012】
反転/非反転テーブル記憶部14は、複数の画像種と複数の病名と画素値の反転又は非反転を示すコードとを関連づけたテーブル(以下、反転/非反転テーブルと呼ぶことにする)を記憶する。図3は、反転/非反転テーブルの一例を示す図である。図3に示すように、反転/非反転テーブルは、形態画像や機能画像の画像種と病名との組み合わせに反転又は非反転を示すコードを関連付けている。反転は、病名に対応する病巣領域を抽出するために行われる画像処理の一つであり、形態画像や機能画像の画素値を反転させることであり、非反転は、画素値を反転させないことである。
【0013】
画像間演算種テーブル記憶部16は、形態画像の画像種と機能画像の画像種との組み合わせと、画像間演算種とを関連付けたテーブル(以下、画像間演算種テーブルと呼ぶことにする)を記憶する。図4は、画像間演算種テーブルの一例を示す図である。図4に示すように、画像間演算種テーブルは、形態画像の画像種と機能画像の画像種との組み合わせに画像間演算種を関連付けている。画像間演算は、病巣領域を抽出するために行われる画像処理の一つであり、形態画像と機能画像とに対して行われる論理演算や四則演算である。論理演算としては、例えば、論理和や論理積等があり、四則演算としては、例えば、加算や減算等がある。画像間演算種は、画像種毎に一般的に使用される画像間演算種に設定されている。
【0014】
入力部18は、キーボードやマウス等の入力デバイスである。入力部18は、ユーザからの種々の指示や情報を入力する。例えば、入力部18は、病名を入力したり、本実施形態に関わる画像処理の開始指示を入力したり、画像上の位置を指定したりする。
【0015】
画像種特定部20は、入力部18から入力された病名をキーワードとして画像種テーブルを検索し、このキーワードに画像種テーブルで関連付けられている形態画像の画像種と機能画像の画像種とをそれぞれ特定する。より詳細には、画像種特定部20は、キーワードに関連付けられた画像種のうち、画像記憶部10に記憶されている形態画像の画像種と機能画像の画像種とであって、優先度の高い画像種を特定する。
【0016】
反転/非反転特定部22は、画像種特定部20により特定された形態画像の画像種と入力部18から入力された病名との組み合わせをキーワードとして反転/非反転テーブルを検索し、このキーワードに反転/非反転テーブルで関連付けられている反転又は非反転を示すコードを特定する。同様にして反転/非反転特定部22は、画像種特定部20により特定された機能画像の画像種と入力部18から入力された病名との組み合わせをキーワードとして反転/非反転テーブルを検索し、このキーワードに反転/非反転テーブルで関連付けられている反転又は非反転を示すコードを特定する。
【0017】
画像間演算種特定部24は、画像種特定部20により特定された形態画像の画像種と機能画像の画像種との組み合わせをキーワードとして画像間演算種テーブルを検索し、このキーワードに画像間演算種テーブルで関連付けられている画像間演算種を特定する。
【0018】
画像読み書き部26は、画像種特定部20により特定された形態画像の画像種に対応する形態画像のデータを画像記憶部10から読み出す。また、画像読み書き部26は、画像種特定部20により特定された機能画像の画像種に対応する機能画像のデータを画像記憶部26から読み出す。また、画像読み書き部26は、画像合成部30により生成された合成画像のデータを画像記憶部10に書き込む。
【0019】
画像処理部28は、画像読み書き部26により読み出された形態画像と機能画像とに種々の画像処理をし、機能画像から病巣領域を抽出する。具体的には、画像処理部28は、正規化処理部281、反転処理部282、位置合わせ部283、画像間演算部284、閾値処理部285、及びマスク処理部286備える。正規化処理部281は、形態画像と機能画像との画素値範囲を同一範囲内に収めるために正規化処理をする。反転処理部282は、反転/非反転特定部22により特定されたコードに応じて形態画像の画素値を反転又は非反転する。同様に反転処理部282は、反転/非反転特定部22により特定されたコードに応じて機能画像の画素値を反転又は非反転する。位置合わせ部283は、形態画像と機能画像との解剖学的同一位置を位置合わせする。画像間演算部284は、画像間演算種特定部24により特定された画像間演算種に対応する画像間演算を形態画像と機能画像とに行ない、単一の出力画像(以下、演算画像と呼ぶことにする)のデータを生成する。閾値処理部285は、ユーザにより入力部18を介して演算画像上に指定された位置の画素値に基づいて閾値を決定し、決定された閾値で演算画像を閾値処理し、2値化画像のデータを生成する。マスク処理部286は、閾値処理部285により生成された2値化画像をマスクとして機能画像をマスク処理し、機能画像から病巣領域を抽出する。
【0020】
画像合成部30は、画像処理部28により抽出された病巣領域と形態画像とを合成し、合成画像のデータを生成する。
【0021】
表示部32は、画像合成部30により生成された合成画像を表示する。換言すれば、表示部32は、形態画像と機能画像から抽出された病巣領域とを重ね合わせて表示する。この際表示部32は、病巣領域を強調して表示する。
【0022】
制御部34は、画像処理装置の中枢として機能する。制御部34は、図示しないハードディスク等に記憶されている画像処理プログラムをメモリ上に展開し、この画像処理プログラムに従って各部を制御することにより、本実施形態に特有な画像処理を実行する。
【0023】
以下、制御部34の制御により実行される、本実施形態に係る画像処理の臨床応用例を説明する。図5は、制御部34の制御のもとに実行される画像処理の典型的な流れを示す図である。また、図6は、図5の流れの中で行なわれる画像処理の流れを画像とともに示す図である。
【0024】
制御部34は、ユーザにより入力部18を介して画像処理の開始指示がなされると、本実施形態に係る画像処理を開始する。まず制御部34は、入力部18を介して病名の候補が入力されるのを待機している(ステップS1)。病名は、入力部18を介して直接的に入力されるとしてもよいし、表示部32に表示される病名候補リスト上で選択されるとしてもよい。
【0025】
ユーザにより入力部18を介して病名が入力されると(ステップS1:YES)、制御部34は、画像種特定部20に画像種の特定処理を行なわせる(ステップS2)。ステップS2において画像種特定部20は、入力部18により入力された病名をキーワードとして画像種テーブルを検索し、このキーワードに画像種テーブル上で関連付けられている画像種を特定する(図2参照)。この際、画像種特定部20は、病名に関連付けられている形態画像の画像種と機能画像の画像種との組み合わせのうち、優先順位の高い画像種の組み合わせを特定する。特定された画像種の組み合わせに対応する形態画像と機能画像とが画像記憶部10に記憶されていない場合、より下位の優先順位の画像種の組み合わせであってその形態画像と機能画像との両方が画像記憶部10に記憶されているものが採用される。
【0026】
ステップS2が行なわれると制御部34は、画像読み書き部26に画像の読み出し処理を行なわせる(ステップS3)。ステップS3において画像読み書き部26は、ステップS2において特定された画像種に対応する形態画像のデータと機能画像のデータとを画像記憶部10からそれぞれ読み出す。形態画像と機能画像とは、例えば、DICOM(Digital Imaging and COmmunications in Medicine)規格に準拠して階層化されて画像記憶部10に管理されている。読み出される形態画像と機能画像とは、同一の検査や同一のシリーズに属するものである。例えば、ステップS3において、形態画像の画像種がT1強調画像であり機能画像の画像種がT2強調画像の場合、画像読み書き部26は、同一のシリーズに属するT1強調画像のデータとT2強調画像のデータとを読み出す。
【0027】
ステップS3が行なわれると制御部34は、画像処理部28の正規化処理部281に正規化処理を行なわせる(ステップS4)。ステップS4において正規化処理部281は、ステップS3において読み出された形態画像と機能画像との両方を正規化する。正規化は、形態画像と機能画像との画素値範囲を同一にするために行なわれる。
【0028】
図7は、正規化処理を説明するための図であり、各画像I1、I2、I3の画素値範囲を示す図である。画像I1、I2、及びI3は、同一のシリーズに属しているものとする。図7に示すように、画像が異なればその画素値範囲も異なってくる。例えば、画像I1の画素値範囲は、最小画素値I1min〜最大画素値I1maxである。また、画像I2の画素値範囲は、最小画素値I2min〜最大画素値I2maxであり、画像I3の画素値範囲は、最小画素値I3min〜最大画素値I3maxである。これら画像I1、I2、I3にそのまま画像間演算を実行しても、画素値範囲が異なるために病巣領域の抽出精度が悪い。そのために正規化処理が行なわれる。
【0029】
正規化処理においては、まず、図7に示すように、画像間演算の対象画像、すなわち形態画像と機能画像との画素値範囲をそれぞれ特定する。そして画素値範囲の中の最小画素値Sminと最大画素値Smaxとを特定する。換言すれば、同一シリーズに関する画像の画素値の中の最小画素値Sminと最大画素値Smaxとが特定される。
【0030】
正規化処理部281は、特定された最小画素値Sminと最大画素値Smaxと下記の(1)式と(2)式とに基づいて、形態画像と機能画像とをそれぞれ正規化する。
new_pixval=orig_pixval*fscale …(1)
fscale=65535/(2*max(|Smin|,|Smax|)) …(2)
new_pixval:正規化後の画素値
orig_pixval:正規化前の画素値
fscale:正規化スケール
以下に正規化スケールfscaleの算出手順を図8、図9、及び図10参照しながら説明する。なお図8のグラフ、図9のグラフ、及び図10の上のグラフの横軸の左端FLT_MINは、浮動小数点演算において取り得る画素値の最小値であり、右端FLT_MAXは、浮動小数点演算において取る得る画素値の最大値である。浮動小数点演算は、正規化前の画像のデータ型の一例である。まず、図8に示すように、最小画素値Sminと最大画素値Smaxとが特定されると、最小画素値Sminと最大画素値Smaxとのうちの絶対値が大きい方を特定する。この処理は(2)式のmax(|Smin|,|Smax|)に相当する。図8の場合、最小画素値Sminの方が最大画素値Smaxに比して絶対値が大きいので、最小画素値Sminが特定される。次に図9に示すように、特定された絶対値に2を乗じ、正規化範囲を算出する。正規化範囲は、正規化の対象範囲である。この処理は(2)式の2*max(|Smin|,|Smax|)に相当する。
【0031】
そして図10に示すように、算出された正規化範囲と正規化後のデータ型の画素値範囲とに基づいて、正規化スケールfscaleを算出する。図10の下のグラフの横軸の左端SHORT_MINは、短精度浮動小数点演算において取りうる画素値の最小値であり、右端SHORT_MAXは、短精度浮動小数点演算において取る得る画素値の最大値である。短精度浮動小数点演算は、正規化後の画像のデータ型の一例である。短精度浮動小数点演算が取りうる画素値範囲は、正規化後の画像が取りうる画素値範囲であり、65536である。正規化スケールは、正規化後の画像が取りうる画素値範囲65536を正規化範囲2*max(|Smin|,|Smax|)で除すことにより算出される。この処理は、(2)式の65535/(2*max(|Smin|,|Smax|))に相当する。
【0032】
ステップS4が行なわれると制御部34は、反転/非反転特定部22に反転/非反転の特定処理を行なわせる(ステップS5)。ステップS5において反転/非反転特定部22は、ステップS1において入力された病名とステップS2において特定された画像種との組み合わせをキーワードとして反転/非反転テーブルを検索し、このキーワードに反転/非反転テーブル上で関連付けられた反転又は非反転を示すコードを特定する(図3参照)。反転又は非反転は、形態画像と機能画像とのそれぞれについて特定される。反転又は非反転は、画像間演算種テーブルの画像演算種と密接に関連している。反転又は非反転の決定方法についてはステップS9において説明する。
【0033】
ステップS5が行なわれると制御部34は、画像処理部28の反転処理部282に反転処理を行なわせる(ステップS6)。ステップS6において反転処理部282は、ステップS5において特定されたコードに従って、正規化された形態画像と機能画像との画素値をそれぞれ反転又は非反転する。例えば、図6に示すように、形態画像はT1強調画像IM、機能画像はT2強調画像IFであるとする。T1強調画像IMとT2強調画像IFとのそれぞれには、脳腫瘍に由来する病巣領域が描出されている。よく知られているように、T1強調画像IMにおいて水は黒く描出され、T2強調画像IFにおいて水は白く描出される。従って水分を多く含む脳腫瘍は、T1強調画像IMにおいて黒く描出され、T2強調画像IFにおいて白く描出される。この場合、反転処理部282は、低画素値の病巣領域を高画素値にするためにT1強調画像IMの画素値を反転させることにより、低画素値の病巣領域を高画素値に反転させる。画素値が反転させられた形態画像IRにおいては、脳腫瘍に由来する病変領域が白く描出される。一方高画素値の病巣領域を有するT2強調画像IFについては、画素値を非反転させる、すなわち反転させない。
【0034】
ステップS6が行なわれると制御部34は、画像処理部28の位置合わせ部283に位置合わせ処理を行なわせる。(ステップS7)。ステップS7において位置合わせ部283は、反転又は非反転された形態画像と機能画像との解剖学上同一点を位置合わせする。この位置合わせは、後述の画像間演算(ステップS9)を精度良く行なうために行なわれる。位置合わせの方法としては、既存の如何なる方法を用いてもよい。例えば、画像撮影時にマーカ等を使用して画像上に標示された位置に基づく方法等がある。
【0035】
ステップS7が行なわれると制御部34は、画像間演算種特定部24に画像間演算種の特定処理を行なわせる(ステップS8)。ステップS8において画像間演算種特定部24は、ステップS2において特定された形態画像の画像種と機能画像の画像種との組み合わせをキーワードとして画像間演算種テーブルを検索し、このキーワードに画像間演算種テーブル上で関連付けられた画像間演算種を特定する(図4参照)。画像間演算は、形態画像と機能画像とを入力とし、高画素値の病巣領域を出力とするための演算子である。
【0036】
以下、図11を参照しながら画像間演算について説明する。図11に示すように、入力としてT1強調画像IMとT2強調画像IFとを例に挙げて考える。この画像IMと画像IFとは、図6の画像IMと画像IFとそれぞれ同様である。すなわち、画像IMと画像IFとのそれぞれには、脳腫瘍に関する病巣領域が描出されており、画像IM上の病巣領域は低画素値を有し、画像IF上の病巣領域は高画素値を有する。また、演算子“+”は、画像IMと画像IFとの加算である。演算子“−”は、画像IMと画像IFとの減算である。演算子“×”は、画像IMと画像IFとの積である。演算子“/”は、画像IMと画像IFとの除算である。演算子“OR”は、画像IMと画像IFとの論理和である。演算子“AND”は、画像IMと画像IFとの論理積である。図11に示すように、これら演算子のうち最も病巣領域を明瞭に強調できるのは演算子“−”(減算)である。従って、T1強調画像IMとT2強調画像IFとを減算すること、すなわち演算子“−”が最も脳腫瘍に関する病巣領域を抽出するのに適しているといえる。
【0037】
ここでT1強調画像の画素値を反転させた場合を考える。反転されたT1強調画像と反転されていないT2強調画像とを加算することは、反転されていないT1強調画像と反転されていないT2強調画像とを減算することに等しい。従って、反転されたT1強調画像と反転されていないT2強調画像とを加算すること、すなわち演算子“+”が最も脳腫瘍に関する病巣領域を抽出するのに適しているといえる。
【0038】
このように反転/非反転テーブルにおける反転/非反転と画像間演算種テーブルにおける画像間演算種は、画像間演算により病変領域が強調されるように相互に関連して決定される。ここで強調とは、他の領域に比して画素値が顕著に高い、又は低いことである。反転/非反転と画像間演算種とはユーザにより、試行錯誤的に決定され、入力部18を介して任意に更新可能である。
【0039】
ステップS8行なわれると制御部34は、画像処理部28の画像間演算部284に画像間演算処理を行なわせる(ステップS9)。ステップS9において画像間演算部284は、ステップS8において特定された種類の画像間演算を形態画像と機能画像とに実行し、単一の演算画像IOのデータを生成する。図6に示すように、演算画像IOには、他の正常領域に比して画素値が強調された病巣領域を含んでいる。このように画像間演算をすることで、高画素値の病巣領域がより高画素値になる。これにより、後段のステップS10における2値化により病巣領域が抽出されやすくなる。
【0040】
ステップS9が行なわれると制御部34は、画像処理部28の閾値処理部285に閾値処理を行なわせる(ステップS10)。閾値処理部285は、ステップS9において生成された演算画像IOを閾値処理し、演算画像IOから病巣領域を抽出する。具体的には、ユーザにより指定された初期位置の画素値を利用して閾値処理が行なわれる。初期位置としては、ユーザにより演算画像IO上に指定された最初の点や関心領域が用いられる。例えば、ユーザのマウス操作により、表示部32に表示された演算画像IO上の病巣領域の内部がクリックされる、あるいは関心領域が描かれるとその位置が初期位置に設定される。初期位置が設定されると、次に閾値が設定される。閾値は、例えば、演算画像IOのヒストグラムにおいて病巣領域(高画素値領域)とその他の領域(低画素値領域)とが分離される画素値に設定される。そして閾値以上の画素値を有する画素に対して画素値“1”を、閾値以下の画素値を有する画素に対して画素値“0”を割り付ける。また、設定された初期位置を含まない画素値“1”の画素領域は、病巣領域でないとして画素値“0”に割り付けられる。これにより演算画像IO上の病巣領域が画素値“1”に、それ以外の画素領域が画素値“0”に割り付ける。これにより、病巣領域が抽出された2値化画像IBのデータが生成される。
【0041】
ステップS10が行なわれると制御部34は、画像処理部28のマスク処理部286に形態画像へマスク処理を行なわせる(ステップS11)。ステップS11においてマスク処理部286は、ステップS10において生成された2値化画像IBをマスクとして、ステップS4において正規化された形態画像IMにマスク処理を行い、この形態画像から病巣領域を除去する。具体的には、2値化画像IB上の病巣領域の座標位置と同一座標位置にある形態画像IM上の領域を特定する。そしてマスク処理部286は、特定された領域の画素値を画素値“0”に割り付ける。これにより病巣領域が除去された形態画像INのデータが生成される。
【0042】
また、ステップS10が行なわれると制御部34は、画像処理部28のマスク処理部286に機能画像IFへマスク処理を行なわせる(ステップS12)。ステップS12においてマスク処理部286は、ステップS10において生成された2値化画像IBをマスクとして、ステップS4において正規化された機能画像IFにマスク処理を行い、この機能画像IFから病巣領域を抽出する。具体的には、2値化画像IB上の病巣領域の座標位置と同一座標位置にある機能画像IF上の領域を特定する。そしてマスク処理部286は、特定された領域以外の画素値を画素値“0”に割り付ける。これにより病巣領域以外の領域が除去された機能画像II、すなわち病巣領域のみを含む機能画像IIのデータが生成される。
【0043】
ステップS11とS12とが行なわれると制御部34は、画像合成部30に合成処理を行なわせる(ステップS13)。ステップS13において画像合成部30は、ステップS11において生成された形態画像INと、ステップS12において生成された機能画像IIとを合成し、合成画像IGのデータを生成する。生成された合成画像IGの病巣領域は、機能画像に由来し、病巣領域以外は形態画像に由来する。なお画像合成部30により生成された合成画像IGのデータは、画像読み書き部26により画像記憶部10に書き込まれる。
【0044】
ステップS13が行なわれると制御部34は、表示部32に表示処理を行なわせる(ステップS14)。ステップS14において表示部32は、ステップS13において生成された合成画像IGを表示する。換言すれば表示部32は、機能画像から抽出された病巣領域を形態画像上に重ね合わせて表示する。この際表示部32は、合成画像IG上の病巣領域を強調して表示する。例えば、表示部32は、図12に示すように、病巣領域の輪郭を色や輝度等で強調して表示する。また、色や輝度で強調する他に輪郭を点滅させることにより強調してもよい。また、表示部32は、図13に示すように、病巣領域の内部に赤等の色をつけて強調して表示してもよい。このようにして病巣領域を強調表示することにより、病巣領域とその周辺組織領域との境界をユーザに容易に識別させることができる。
【0045】
ステップS14が行なわれると本実施形態に係る画像処理が終了する。
【0046】
上記のように画像処理装置は、病名とその病名に対応する病巣領域を診断するのに適した画像種とを関連付けた画像種テーブルを保持している。この画像種テーブルを利用して画像処理装置は、ユーザにより入力部18を介して病名が入力されると、入力された病名に対応する病巣領域を診断するのに最も適した画像種の形態画像と機能画像とを自動的に読み出すことができる。従って、ユーザによる画像種の選択の手間を削減することができる。また、病名と画像種との関連をテーブルにして保存しておくことで、画像種の選択に関する経験的知識を保存しておくことができる。また、画像処理装置は、反転/非反転テーブルや画像間演算種テーブル等を保持している。この反転/非反転テーブルや画像間演算種テーブルを利用して画像処理装置は、病巣領域を抽出するのに最も適した画像間演算種を自動的に選択することができる。従って、ユーザによる画像間演算種の選択の手間を削減でき、また、画像間演算種の選択に関する経験的知識を保存しておくことができる。これら各種テーブルにより、病巣領域が強調された形態画像を簡便に生成して表示することができる。かくして本実施形態に係る画像処理装置は、病巣領域の画像診断におけるユーザの手間の軽減を実現することができる。
【0047】
なお、画像種や画像間演算種の自動選択がうまく機能しない場合や、ユーザ自身が選択したい場合もある。このような事態に備えて画像種や画像間演算種を手動で選択できる手段を有している方が実運用上望ましい。
【0048】
図14は、表示部32により表示される画像種や画像間演算種の手動選択のためのGUI(graphic user interface)画面の一例を示す図である。このGUI画面は、例えば、図5の画像処理の間、表示部32により表示されている。GUI画面は、検査部位/病名/画像種選択領域R1、画像選択領域R2、画像間演算種選択領域R3、及び合成画像表示領域R4を有している。
【0049】
検査部位/病名/画像種選択領域R1は、頭部や胸部、腹部等の検査部位を選択するための部位選択領域R5、脳梗塞や脳腫瘍、脳出血等の病名を選択するための病名選択領域R6、T1やT2、DWI、PWI等の画像種を選択するための画像種選択領域R7を有している。これら項目が入力部18を介して選択されことにより、検査部位や病名、画像種が選択される。
【0050】
画像選択領域R2は、各画像種に関する画像のサムネイルSが表示される。このサムネイルSが入力部18を介してユーザにより選択されることにより、選択されたサムネイルSに対応する形態画像のデータや機能画像のデータが画像記憶部10から読み出される。
【0051】
画像間演算種選択領域R3は、+や−、×、/、OR、AND等の画像間演算種を選択するための選択領域R8を有している。また、読み出された形態画像や機能画像は、各画像表示領域R9の何れかに表示される。また画像間演算における重みづけパラメータ等もパラメータ領域R10において入力部18を介して設定可能となっている。また、PreviewボタンB1が押されることで、設定された画像間演算種やパラメータにより生成される合成画像IGが合成画像表示領域R4に表示される。SaveボタンB2が押されることで、設定された画像間演算種が画像間演算種テーブルに設定される。
【0052】
また、画像間演算種の利用頻度に応じて画像間演算種テーブルの画像間演算種を変更してもよい。例えば画像間演算種テーブル記憶部16は、画像種ごとに画像間演算種の選択回数を記録しておき、この選択回数が最も多い画像間演算種を一定期間ごとに特定する。そして画像間演算種テーブル記憶部16は、特定された画像間演算種とその画像種とを画像間演算種テーブルに新たに関連付けることにより、画像間演算種テーブルを更新する。このような更新方法を採用することで画像処理装置は、利用頻度の多い画像間演算種を自動的に特定し、特定された種類の画像間演算を形態画像と機能画像とに実行させることができる。
【0053】
このようなGUI画面を表示することで、画像種や画像間演算種の自動選択がうまく機能しない場合や、ユーザ自身が選択したい場合といった事態にも備えることができる。また、手動で画像間演算種を選択して合成画像をシミュレートできるので、さらに適した画像間演算種を発見でき、画像間演算種テーブルの更新にも役立てることができる。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上本発明によれば、病巣領域の画像診断におけるユーザの手間の軽減を実現する画像処理装置の提供を実現することができる。
【符号の説明】
【0056】
10…画像記憶部、12…画像種テーブル記憶部、14…反転/非反転テーブル記憶部、16…画像間演算種テーブル記憶部、18…入力部、20…画像種特定部、22…反転/非反転特定部、24…画像間演算種特定部、26…画像読み書き部、28…画像処理部、281…正規化処理部、282…反転処理部、283…位置合わせ部、284…画像間演算部、285…閾値処理部、286…マスク処理部、30…画像合成部、32…表示部、34…制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、病巣領域の画像診断を支援するための画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に示すように、病巣領域の画像診断を支援する画像処理装置がある。画像処理装置は、ユーザにより指定された形態画像と機能画像とに対して、ユーザにより指定された画像処理をすることで、病巣領域が強調された画像を生成して表示している。現在、画像処理のための臨床アプリケーションには、種々の画像処理機能が独立して実装されている。そのためユーザは、数ある種類の形態画像と機能画像との中から、病巣領域を抽出するための形態画像と機能画像との組み合わせを試行錯誤的に指定しなければならない。また、病巣領域を抽出するための画像処理の種類も多数あるため、これもユーザにより試行錯誤的に指定されている。従って、ユーザは、意図した画像を生成するまでに何回も画像種を選択したり、画像処理種を選択したりしなければならず、とても手間がかかっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003―126076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、病巣領域の画像診断におけるユーザの手間の軽減を実現する画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1局面に係る画像処理装置は、複数の画像種に関する複数の形態画像のデータと複数の機能画像のデータとを記憶する画像記憶部と、前記複数の画像種と複数の病名とを関連付けた第1テーブルを記憶する第1テーブル記憶部と、前記複数の病名のうちのユーザにより入力された病名に前記第1テーブル上で関連付けられた第1の画像種と第2の画像種とを複数の画像種の中から特定する第1特定部と、前記特定された第1の画像種に関する形態画像と第2の画像種に関する機能画像とを画像記憶部から読み出して画像処理を行い前記第2の画像種に関する機能画像から病巣領域を抽出する画像処理部と、前記抽出された病巣領域と前記第1の画像種に関する形態画像とを重ねて表示する表示部と、を具備する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、病巣領域の画像診断におけるユーザの手間の軽減を実現する画像処理装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態に係る画像処理装置の構成を示す図。
【図2】図1の画像種テーブル記憶部に記憶される画像種テーブルの一例を示す図。
【図3】図1の反転/非反転テーブル記憶部に記憶される反転/非反転テーブルの一例を示す図。
【図4】図1の画像間演算種テーブル記憶部に記憶される画像間演算種テーブルの一例を示す図。
【図5】図1の制御部の制御のもとに実行される画像処理の典型的な流れを示す図。
【図6】図5の流れの中で行なわれる画像処理の流れを画像とともに示す図。
【図7】図5のステップS4において実行される正規化処理を説明するための図であり、各画像の画素値範囲を示す図。
【図8】図5のステップS4における正規化スケールの算出手順を示す図。
【図9】図5のステップS4における正規化スケールの算出手順を示す他の図。
【図10】図5のステップS4における正規化スケールの算出手順を示す他の図。
【図11】図5のステップS8において実行される画像間演算について説明するための図。
【図12】図5のステップS14における病巣領域の輪郭強調表示の一例を示す図。
【図13】図5のステップS14における病巣領域の内部強調表示の一例を示す図。
【図14】図1の表示部により表示されるGUI画面例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係わる画像処理装置を説明する。本実施形態に係る画像処理装置は、ある検査部位に存在が疑われる病巣領域の画像診断を支援するコンピュータ装置である。本実施形態に係る検査部位は、特に限定されず如何なる部位にも適用可能である。しかしながら、以下の説明を具体的に行うため、検査部位は、脳であるものとする。
【0009】
図1は、本発明の画像処理装置の構成を示す図である。図1に示すように画像処理装置は、画像記憶部10、画像種テーブル記憶部12、反転/非反転テーブル記憶部14、画像間演算種テーブル記憶部16、入力部18、画像種特定部20、反転/非反転特定部22、画像間演算種特定部24、画像読み書き部26、画像処理部28、画像合成部30、表示部32、及び制御部34を備える。
【0010】
画像記憶部10は、複数の画像種に関する複数の形態画像のデータと複数の画像種に関する複数の機能画像のデータとを記憶する。形態画像と機能画像とのそれぞれは、X線診断装置、X線コンピュータ断層撮影装置、磁気共鳴イメージング装置、超音波診断装置、及び核医学診断装置のうちの1つのモダリティにより生成された画像である。また、形態画像と機能画像とのそれぞれは、ボリュームレンダリング等の3次元画像処理により生成された3次元画像であっても、画素値投影処理や多断面変換等により生成された2次元画像であってもよい。なお、以下の説明を具体的に行うため、形態画像と機能画像とのそれぞれは、磁気共鳴イメージング装置により生成されたものであるとする。また、形態画像と機能画像とのそれぞれは、2次元画像であるとする。
【0011】
画像種テーブル記憶部12は、複数の画像種と複数の病名とを関連付けたテーブル(以下、画像種テーブルと呼ぶことにする)を記憶する。図2は、画像種テーブルの一例を示す図である。図2に示すように、画像種テーブルは、画像の項目として形態画像項目と機能画像項目とを有している。形態画像項目は、脳の形態情報を観察するための形態画像の画像種が関連付けられている。機能画像項目は、病名に応じて細分されており、各病名に対応する病巣領域を観察するのに適した機能画像の画像種が関連付けられている。病名としては、脳梗塞、脳出血、脳腫瘍等がある。画像種としては、T1やT2、MRA(MR Angiography)、PWI(Perfusion Weighted Image)、DWI(Diffusion Weighted Image)、fMRI(functional MRI)等がある。形態画像と機能画像との組み合わせは、優先度に応じて順位付けされている。優先順位は、特定の病気に対する画像種の利用頻度に応じている。利用頻度が高ければ優先順位も高い。例えば、脳梗塞を診断したい場合、形態画像「T1」と機能画像「PWI」との組み合わせが最も優先順位が高い。その次は、形態画像「MRA」と機能画像「DWI」との組み合わせである。
【0012】
反転/非反転テーブル記憶部14は、複数の画像種と複数の病名と画素値の反転又は非反転を示すコードとを関連づけたテーブル(以下、反転/非反転テーブルと呼ぶことにする)を記憶する。図3は、反転/非反転テーブルの一例を示す図である。図3に示すように、反転/非反転テーブルは、形態画像や機能画像の画像種と病名との組み合わせに反転又は非反転を示すコードを関連付けている。反転は、病名に対応する病巣領域を抽出するために行われる画像処理の一つであり、形態画像や機能画像の画素値を反転させることであり、非反転は、画素値を反転させないことである。
【0013】
画像間演算種テーブル記憶部16は、形態画像の画像種と機能画像の画像種との組み合わせと、画像間演算種とを関連付けたテーブル(以下、画像間演算種テーブルと呼ぶことにする)を記憶する。図4は、画像間演算種テーブルの一例を示す図である。図4に示すように、画像間演算種テーブルは、形態画像の画像種と機能画像の画像種との組み合わせに画像間演算種を関連付けている。画像間演算は、病巣領域を抽出するために行われる画像処理の一つであり、形態画像と機能画像とに対して行われる論理演算や四則演算である。論理演算としては、例えば、論理和や論理積等があり、四則演算としては、例えば、加算や減算等がある。画像間演算種は、画像種毎に一般的に使用される画像間演算種に設定されている。
【0014】
入力部18は、キーボードやマウス等の入力デバイスである。入力部18は、ユーザからの種々の指示や情報を入力する。例えば、入力部18は、病名を入力したり、本実施形態に関わる画像処理の開始指示を入力したり、画像上の位置を指定したりする。
【0015】
画像種特定部20は、入力部18から入力された病名をキーワードとして画像種テーブルを検索し、このキーワードに画像種テーブルで関連付けられている形態画像の画像種と機能画像の画像種とをそれぞれ特定する。より詳細には、画像種特定部20は、キーワードに関連付けられた画像種のうち、画像記憶部10に記憶されている形態画像の画像種と機能画像の画像種とであって、優先度の高い画像種を特定する。
【0016】
反転/非反転特定部22は、画像種特定部20により特定された形態画像の画像種と入力部18から入力された病名との組み合わせをキーワードとして反転/非反転テーブルを検索し、このキーワードに反転/非反転テーブルで関連付けられている反転又は非反転を示すコードを特定する。同様にして反転/非反転特定部22は、画像種特定部20により特定された機能画像の画像種と入力部18から入力された病名との組み合わせをキーワードとして反転/非反転テーブルを検索し、このキーワードに反転/非反転テーブルで関連付けられている反転又は非反転を示すコードを特定する。
【0017】
画像間演算種特定部24は、画像種特定部20により特定された形態画像の画像種と機能画像の画像種との組み合わせをキーワードとして画像間演算種テーブルを検索し、このキーワードに画像間演算種テーブルで関連付けられている画像間演算種を特定する。
【0018】
画像読み書き部26は、画像種特定部20により特定された形態画像の画像種に対応する形態画像のデータを画像記憶部10から読み出す。また、画像読み書き部26は、画像種特定部20により特定された機能画像の画像種に対応する機能画像のデータを画像記憶部26から読み出す。また、画像読み書き部26は、画像合成部30により生成された合成画像のデータを画像記憶部10に書き込む。
【0019】
画像処理部28は、画像読み書き部26により読み出された形態画像と機能画像とに種々の画像処理をし、機能画像から病巣領域を抽出する。具体的には、画像処理部28は、正規化処理部281、反転処理部282、位置合わせ部283、画像間演算部284、閾値処理部285、及びマスク処理部286備える。正規化処理部281は、形態画像と機能画像との画素値範囲を同一範囲内に収めるために正規化処理をする。反転処理部282は、反転/非反転特定部22により特定されたコードに応じて形態画像の画素値を反転又は非反転する。同様に反転処理部282は、反転/非反転特定部22により特定されたコードに応じて機能画像の画素値を反転又は非反転する。位置合わせ部283は、形態画像と機能画像との解剖学的同一位置を位置合わせする。画像間演算部284は、画像間演算種特定部24により特定された画像間演算種に対応する画像間演算を形態画像と機能画像とに行ない、単一の出力画像(以下、演算画像と呼ぶことにする)のデータを生成する。閾値処理部285は、ユーザにより入力部18を介して演算画像上に指定された位置の画素値に基づいて閾値を決定し、決定された閾値で演算画像を閾値処理し、2値化画像のデータを生成する。マスク処理部286は、閾値処理部285により生成された2値化画像をマスクとして機能画像をマスク処理し、機能画像から病巣領域を抽出する。
【0020】
画像合成部30は、画像処理部28により抽出された病巣領域と形態画像とを合成し、合成画像のデータを生成する。
【0021】
表示部32は、画像合成部30により生成された合成画像を表示する。換言すれば、表示部32は、形態画像と機能画像から抽出された病巣領域とを重ね合わせて表示する。この際表示部32は、病巣領域を強調して表示する。
【0022】
制御部34は、画像処理装置の中枢として機能する。制御部34は、図示しないハードディスク等に記憶されている画像処理プログラムをメモリ上に展開し、この画像処理プログラムに従って各部を制御することにより、本実施形態に特有な画像処理を実行する。
【0023】
以下、制御部34の制御により実行される、本実施形態に係る画像処理の臨床応用例を説明する。図5は、制御部34の制御のもとに実行される画像処理の典型的な流れを示す図である。また、図6は、図5の流れの中で行なわれる画像処理の流れを画像とともに示す図である。
【0024】
制御部34は、ユーザにより入力部18を介して画像処理の開始指示がなされると、本実施形態に係る画像処理を開始する。まず制御部34は、入力部18を介して病名の候補が入力されるのを待機している(ステップS1)。病名は、入力部18を介して直接的に入力されるとしてもよいし、表示部32に表示される病名候補リスト上で選択されるとしてもよい。
【0025】
ユーザにより入力部18を介して病名が入力されると(ステップS1:YES)、制御部34は、画像種特定部20に画像種の特定処理を行なわせる(ステップS2)。ステップS2において画像種特定部20は、入力部18により入力された病名をキーワードとして画像種テーブルを検索し、このキーワードに画像種テーブル上で関連付けられている画像種を特定する(図2参照)。この際、画像種特定部20は、病名に関連付けられている形態画像の画像種と機能画像の画像種との組み合わせのうち、優先順位の高い画像種の組み合わせを特定する。特定された画像種の組み合わせに対応する形態画像と機能画像とが画像記憶部10に記憶されていない場合、より下位の優先順位の画像種の組み合わせであってその形態画像と機能画像との両方が画像記憶部10に記憶されているものが採用される。
【0026】
ステップS2が行なわれると制御部34は、画像読み書き部26に画像の読み出し処理を行なわせる(ステップS3)。ステップS3において画像読み書き部26は、ステップS2において特定された画像種に対応する形態画像のデータと機能画像のデータとを画像記憶部10からそれぞれ読み出す。形態画像と機能画像とは、例えば、DICOM(Digital Imaging and COmmunications in Medicine)規格に準拠して階層化されて画像記憶部10に管理されている。読み出される形態画像と機能画像とは、同一の検査や同一のシリーズに属するものである。例えば、ステップS3において、形態画像の画像種がT1強調画像であり機能画像の画像種がT2強調画像の場合、画像読み書き部26は、同一のシリーズに属するT1強調画像のデータとT2強調画像のデータとを読み出す。
【0027】
ステップS3が行なわれると制御部34は、画像処理部28の正規化処理部281に正規化処理を行なわせる(ステップS4)。ステップS4において正規化処理部281は、ステップS3において読み出された形態画像と機能画像との両方を正規化する。正規化は、形態画像と機能画像との画素値範囲を同一にするために行なわれる。
【0028】
図7は、正規化処理を説明するための図であり、各画像I1、I2、I3の画素値範囲を示す図である。画像I1、I2、及びI3は、同一のシリーズに属しているものとする。図7に示すように、画像が異なればその画素値範囲も異なってくる。例えば、画像I1の画素値範囲は、最小画素値I1min〜最大画素値I1maxである。また、画像I2の画素値範囲は、最小画素値I2min〜最大画素値I2maxであり、画像I3の画素値範囲は、最小画素値I3min〜最大画素値I3maxである。これら画像I1、I2、I3にそのまま画像間演算を実行しても、画素値範囲が異なるために病巣領域の抽出精度が悪い。そのために正規化処理が行なわれる。
【0029】
正規化処理においては、まず、図7に示すように、画像間演算の対象画像、すなわち形態画像と機能画像との画素値範囲をそれぞれ特定する。そして画素値範囲の中の最小画素値Sminと最大画素値Smaxとを特定する。換言すれば、同一シリーズに関する画像の画素値の中の最小画素値Sminと最大画素値Smaxとが特定される。
【0030】
正規化処理部281は、特定された最小画素値Sminと最大画素値Smaxと下記の(1)式と(2)式とに基づいて、形態画像と機能画像とをそれぞれ正規化する。
new_pixval=orig_pixval*fscale …(1)
fscale=65535/(2*max(|Smin|,|Smax|)) …(2)
new_pixval:正規化後の画素値
orig_pixval:正規化前の画素値
fscale:正規化スケール
以下に正規化スケールfscaleの算出手順を図8、図9、及び図10参照しながら説明する。なお図8のグラフ、図9のグラフ、及び図10の上のグラフの横軸の左端FLT_MINは、浮動小数点演算において取り得る画素値の最小値であり、右端FLT_MAXは、浮動小数点演算において取る得る画素値の最大値である。浮動小数点演算は、正規化前の画像のデータ型の一例である。まず、図8に示すように、最小画素値Sminと最大画素値Smaxとが特定されると、最小画素値Sminと最大画素値Smaxとのうちの絶対値が大きい方を特定する。この処理は(2)式のmax(|Smin|,|Smax|)に相当する。図8の場合、最小画素値Sminの方が最大画素値Smaxに比して絶対値が大きいので、最小画素値Sminが特定される。次に図9に示すように、特定された絶対値に2を乗じ、正規化範囲を算出する。正規化範囲は、正規化の対象範囲である。この処理は(2)式の2*max(|Smin|,|Smax|)に相当する。
【0031】
そして図10に示すように、算出された正規化範囲と正規化後のデータ型の画素値範囲とに基づいて、正規化スケールfscaleを算出する。図10の下のグラフの横軸の左端SHORT_MINは、短精度浮動小数点演算において取りうる画素値の最小値であり、右端SHORT_MAXは、短精度浮動小数点演算において取る得る画素値の最大値である。短精度浮動小数点演算は、正規化後の画像のデータ型の一例である。短精度浮動小数点演算が取りうる画素値範囲は、正規化後の画像が取りうる画素値範囲であり、65536である。正規化スケールは、正規化後の画像が取りうる画素値範囲65536を正規化範囲2*max(|Smin|,|Smax|)で除すことにより算出される。この処理は、(2)式の65535/(2*max(|Smin|,|Smax|))に相当する。
【0032】
ステップS4が行なわれると制御部34は、反転/非反転特定部22に反転/非反転の特定処理を行なわせる(ステップS5)。ステップS5において反転/非反転特定部22は、ステップS1において入力された病名とステップS2において特定された画像種との組み合わせをキーワードとして反転/非反転テーブルを検索し、このキーワードに反転/非反転テーブル上で関連付けられた反転又は非反転を示すコードを特定する(図3参照)。反転又は非反転は、形態画像と機能画像とのそれぞれについて特定される。反転又は非反転は、画像間演算種テーブルの画像演算種と密接に関連している。反転又は非反転の決定方法についてはステップS9において説明する。
【0033】
ステップS5が行なわれると制御部34は、画像処理部28の反転処理部282に反転処理を行なわせる(ステップS6)。ステップS6において反転処理部282は、ステップS5において特定されたコードに従って、正規化された形態画像と機能画像との画素値をそれぞれ反転又は非反転する。例えば、図6に示すように、形態画像はT1強調画像IM、機能画像はT2強調画像IFであるとする。T1強調画像IMとT2強調画像IFとのそれぞれには、脳腫瘍に由来する病巣領域が描出されている。よく知られているように、T1強調画像IMにおいて水は黒く描出され、T2強調画像IFにおいて水は白く描出される。従って水分を多く含む脳腫瘍は、T1強調画像IMにおいて黒く描出され、T2強調画像IFにおいて白く描出される。この場合、反転処理部282は、低画素値の病巣領域を高画素値にするためにT1強調画像IMの画素値を反転させることにより、低画素値の病巣領域を高画素値に反転させる。画素値が反転させられた形態画像IRにおいては、脳腫瘍に由来する病変領域が白く描出される。一方高画素値の病巣領域を有するT2強調画像IFについては、画素値を非反転させる、すなわち反転させない。
【0034】
ステップS6が行なわれると制御部34は、画像処理部28の位置合わせ部283に位置合わせ処理を行なわせる。(ステップS7)。ステップS7において位置合わせ部283は、反転又は非反転された形態画像と機能画像との解剖学上同一点を位置合わせする。この位置合わせは、後述の画像間演算(ステップS9)を精度良く行なうために行なわれる。位置合わせの方法としては、既存の如何なる方法を用いてもよい。例えば、画像撮影時にマーカ等を使用して画像上に標示された位置に基づく方法等がある。
【0035】
ステップS7が行なわれると制御部34は、画像間演算種特定部24に画像間演算種の特定処理を行なわせる(ステップS8)。ステップS8において画像間演算種特定部24は、ステップS2において特定された形態画像の画像種と機能画像の画像種との組み合わせをキーワードとして画像間演算種テーブルを検索し、このキーワードに画像間演算種テーブル上で関連付けられた画像間演算種を特定する(図4参照)。画像間演算は、形態画像と機能画像とを入力とし、高画素値の病巣領域を出力とするための演算子である。
【0036】
以下、図11を参照しながら画像間演算について説明する。図11に示すように、入力としてT1強調画像IMとT2強調画像IFとを例に挙げて考える。この画像IMと画像IFとは、図6の画像IMと画像IFとそれぞれ同様である。すなわち、画像IMと画像IFとのそれぞれには、脳腫瘍に関する病巣領域が描出されており、画像IM上の病巣領域は低画素値を有し、画像IF上の病巣領域は高画素値を有する。また、演算子“+”は、画像IMと画像IFとの加算である。演算子“−”は、画像IMと画像IFとの減算である。演算子“×”は、画像IMと画像IFとの積である。演算子“/”は、画像IMと画像IFとの除算である。演算子“OR”は、画像IMと画像IFとの論理和である。演算子“AND”は、画像IMと画像IFとの論理積である。図11に示すように、これら演算子のうち最も病巣領域を明瞭に強調できるのは演算子“−”(減算)である。従って、T1強調画像IMとT2強調画像IFとを減算すること、すなわち演算子“−”が最も脳腫瘍に関する病巣領域を抽出するのに適しているといえる。
【0037】
ここでT1強調画像の画素値を反転させた場合を考える。反転されたT1強調画像と反転されていないT2強調画像とを加算することは、反転されていないT1強調画像と反転されていないT2強調画像とを減算することに等しい。従って、反転されたT1強調画像と反転されていないT2強調画像とを加算すること、すなわち演算子“+”が最も脳腫瘍に関する病巣領域を抽出するのに適しているといえる。
【0038】
このように反転/非反転テーブルにおける反転/非反転と画像間演算種テーブルにおける画像間演算種は、画像間演算により病変領域が強調されるように相互に関連して決定される。ここで強調とは、他の領域に比して画素値が顕著に高い、又は低いことである。反転/非反転と画像間演算種とはユーザにより、試行錯誤的に決定され、入力部18を介して任意に更新可能である。
【0039】
ステップS8行なわれると制御部34は、画像処理部28の画像間演算部284に画像間演算処理を行なわせる(ステップS9)。ステップS9において画像間演算部284は、ステップS8において特定された種類の画像間演算を形態画像と機能画像とに実行し、単一の演算画像IOのデータを生成する。図6に示すように、演算画像IOには、他の正常領域に比して画素値が強調された病巣領域を含んでいる。このように画像間演算をすることで、高画素値の病巣領域がより高画素値になる。これにより、後段のステップS10における2値化により病巣領域が抽出されやすくなる。
【0040】
ステップS9が行なわれると制御部34は、画像処理部28の閾値処理部285に閾値処理を行なわせる(ステップS10)。閾値処理部285は、ステップS9において生成された演算画像IOを閾値処理し、演算画像IOから病巣領域を抽出する。具体的には、ユーザにより指定された初期位置の画素値を利用して閾値処理が行なわれる。初期位置としては、ユーザにより演算画像IO上に指定された最初の点や関心領域が用いられる。例えば、ユーザのマウス操作により、表示部32に表示された演算画像IO上の病巣領域の内部がクリックされる、あるいは関心領域が描かれるとその位置が初期位置に設定される。初期位置が設定されると、次に閾値が設定される。閾値は、例えば、演算画像IOのヒストグラムにおいて病巣領域(高画素値領域)とその他の領域(低画素値領域)とが分離される画素値に設定される。そして閾値以上の画素値を有する画素に対して画素値“1”を、閾値以下の画素値を有する画素に対して画素値“0”を割り付ける。また、設定された初期位置を含まない画素値“1”の画素領域は、病巣領域でないとして画素値“0”に割り付けられる。これにより演算画像IO上の病巣領域が画素値“1”に、それ以外の画素領域が画素値“0”に割り付ける。これにより、病巣領域が抽出された2値化画像IBのデータが生成される。
【0041】
ステップS10が行なわれると制御部34は、画像処理部28のマスク処理部286に形態画像へマスク処理を行なわせる(ステップS11)。ステップS11においてマスク処理部286は、ステップS10において生成された2値化画像IBをマスクとして、ステップS4において正規化された形態画像IMにマスク処理を行い、この形態画像から病巣領域を除去する。具体的には、2値化画像IB上の病巣領域の座標位置と同一座標位置にある形態画像IM上の領域を特定する。そしてマスク処理部286は、特定された領域の画素値を画素値“0”に割り付ける。これにより病巣領域が除去された形態画像INのデータが生成される。
【0042】
また、ステップS10が行なわれると制御部34は、画像処理部28のマスク処理部286に機能画像IFへマスク処理を行なわせる(ステップS12)。ステップS12においてマスク処理部286は、ステップS10において生成された2値化画像IBをマスクとして、ステップS4において正規化された機能画像IFにマスク処理を行い、この機能画像IFから病巣領域を抽出する。具体的には、2値化画像IB上の病巣領域の座標位置と同一座標位置にある機能画像IF上の領域を特定する。そしてマスク処理部286は、特定された領域以外の画素値を画素値“0”に割り付ける。これにより病巣領域以外の領域が除去された機能画像II、すなわち病巣領域のみを含む機能画像IIのデータが生成される。
【0043】
ステップS11とS12とが行なわれると制御部34は、画像合成部30に合成処理を行なわせる(ステップS13)。ステップS13において画像合成部30は、ステップS11において生成された形態画像INと、ステップS12において生成された機能画像IIとを合成し、合成画像IGのデータを生成する。生成された合成画像IGの病巣領域は、機能画像に由来し、病巣領域以外は形態画像に由来する。なお画像合成部30により生成された合成画像IGのデータは、画像読み書き部26により画像記憶部10に書き込まれる。
【0044】
ステップS13が行なわれると制御部34は、表示部32に表示処理を行なわせる(ステップS14)。ステップS14において表示部32は、ステップS13において生成された合成画像IGを表示する。換言すれば表示部32は、機能画像から抽出された病巣領域を形態画像上に重ね合わせて表示する。この際表示部32は、合成画像IG上の病巣領域を強調して表示する。例えば、表示部32は、図12に示すように、病巣領域の輪郭を色や輝度等で強調して表示する。また、色や輝度で強調する他に輪郭を点滅させることにより強調してもよい。また、表示部32は、図13に示すように、病巣領域の内部に赤等の色をつけて強調して表示してもよい。このようにして病巣領域を強調表示することにより、病巣領域とその周辺組織領域との境界をユーザに容易に識別させることができる。
【0045】
ステップS14が行なわれると本実施形態に係る画像処理が終了する。
【0046】
上記のように画像処理装置は、病名とその病名に対応する病巣領域を診断するのに適した画像種とを関連付けた画像種テーブルを保持している。この画像種テーブルを利用して画像処理装置は、ユーザにより入力部18を介して病名が入力されると、入力された病名に対応する病巣領域を診断するのに最も適した画像種の形態画像と機能画像とを自動的に読み出すことができる。従って、ユーザによる画像種の選択の手間を削減することができる。また、病名と画像種との関連をテーブルにして保存しておくことで、画像種の選択に関する経験的知識を保存しておくことができる。また、画像処理装置は、反転/非反転テーブルや画像間演算種テーブル等を保持している。この反転/非反転テーブルや画像間演算種テーブルを利用して画像処理装置は、病巣領域を抽出するのに最も適した画像間演算種を自動的に選択することができる。従って、ユーザによる画像間演算種の選択の手間を削減でき、また、画像間演算種の選択に関する経験的知識を保存しておくことができる。これら各種テーブルにより、病巣領域が強調された形態画像を簡便に生成して表示することができる。かくして本実施形態に係る画像処理装置は、病巣領域の画像診断におけるユーザの手間の軽減を実現することができる。
【0047】
なお、画像種や画像間演算種の自動選択がうまく機能しない場合や、ユーザ自身が選択したい場合もある。このような事態に備えて画像種や画像間演算種を手動で選択できる手段を有している方が実運用上望ましい。
【0048】
図14は、表示部32により表示される画像種や画像間演算種の手動選択のためのGUI(graphic user interface)画面の一例を示す図である。このGUI画面は、例えば、図5の画像処理の間、表示部32により表示されている。GUI画面は、検査部位/病名/画像種選択領域R1、画像選択領域R2、画像間演算種選択領域R3、及び合成画像表示領域R4を有している。
【0049】
検査部位/病名/画像種選択領域R1は、頭部や胸部、腹部等の検査部位を選択するための部位選択領域R5、脳梗塞や脳腫瘍、脳出血等の病名を選択するための病名選択領域R6、T1やT2、DWI、PWI等の画像種を選択するための画像種選択領域R7を有している。これら項目が入力部18を介して選択されことにより、検査部位や病名、画像種が選択される。
【0050】
画像選択領域R2は、各画像種に関する画像のサムネイルSが表示される。このサムネイルSが入力部18を介してユーザにより選択されることにより、選択されたサムネイルSに対応する形態画像のデータや機能画像のデータが画像記憶部10から読み出される。
【0051】
画像間演算種選択領域R3は、+や−、×、/、OR、AND等の画像間演算種を選択するための選択領域R8を有している。また、読み出された形態画像や機能画像は、各画像表示領域R9の何れかに表示される。また画像間演算における重みづけパラメータ等もパラメータ領域R10において入力部18を介して設定可能となっている。また、PreviewボタンB1が押されることで、設定された画像間演算種やパラメータにより生成される合成画像IGが合成画像表示領域R4に表示される。SaveボタンB2が押されることで、設定された画像間演算種が画像間演算種テーブルに設定される。
【0052】
また、画像間演算種の利用頻度に応じて画像間演算種テーブルの画像間演算種を変更してもよい。例えば画像間演算種テーブル記憶部16は、画像種ごとに画像間演算種の選択回数を記録しておき、この選択回数が最も多い画像間演算種を一定期間ごとに特定する。そして画像間演算種テーブル記憶部16は、特定された画像間演算種とその画像種とを画像間演算種テーブルに新たに関連付けることにより、画像間演算種テーブルを更新する。このような更新方法を採用することで画像処理装置は、利用頻度の多い画像間演算種を自動的に特定し、特定された種類の画像間演算を形態画像と機能画像とに実行させることができる。
【0053】
このようなGUI画面を表示することで、画像種や画像間演算種の自動選択がうまく機能しない場合や、ユーザ自身が選択したい場合といった事態にも備えることができる。また、手動で画像間演算種を選択して合成画像をシミュレートできるので、さらに適した画像間演算種を発見でき、画像間演算種テーブルの更新にも役立てることができる。
【0054】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上本発明によれば、病巣領域の画像診断におけるユーザの手間の軽減を実現する画像処理装置の提供を実現することができる。
【符号の説明】
【0056】
10…画像記憶部、12…画像種テーブル記憶部、14…反転/非反転テーブル記憶部、16…画像間演算種テーブル記憶部、18…入力部、20…画像種特定部、22…反転/非反転特定部、24…画像間演算種特定部、26…画像読み書き部、28…画像処理部、281…正規化処理部、282…反転処理部、283…位置合わせ部、284…画像間演算部、285…閾値処理部、286…マスク処理部、30…画像合成部、32…表示部、34…制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画像種に関する複数の形態画像のデータと複数の機能画像のデータとを記憶する画像記憶部と、
前記複数の画像種と複数の病名とを関連付けた第1テーブルを記憶する第1テーブル記憶部と、
前記複数の病名のうちのユーザにより入力された病名に前記第1テーブル上で関連付けられた第1の画像種と第2の画像種とを複数の画像種の中から特定する第1特定部と、
前記特定された第1の画像種に関する形態画像と第2の画像種に関する機能画像とを前記画像記憶部から読み出して画像処理を行い前記第2の画像種に関する機能画像から病巣領域を抽出する画像処理部と、
前記抽出された病巣領域と前記第1の画像種に関する形態画像とを重ねて表示する表示部と、
を具備する画像処理装置。
【請求項2】
前記複数の病名と前記複数の画像種と画素値の反転又は非反転を示すコードとを関連づけた第2テーブルを記憶する第2テーブル記憶部と、
前記ユーザにより入力された病名と前記第1の画像種との組み合わせに前記第2テーブル上で関連付けられた前記反転又は非反転を示す第1のコードを特定し、前記ユーザにより入力された病名と前記第2の画像種との組み合わせに前記第2テーブル上で関連付けられた前記反転又は非反転を示す第2のコードを特定する第2特定部と、をさらに備え、
前記画像処理部は、前記特定された第1のコードに応じて前記第1の画像種に関する形態画像を反転又は非反転し、前記特定された第2のコードに応じて前記第2の画像種に関する機能画像を反転又は非反転し、前記反転又は非反転された第1の画像種に関する形態画像と第2の画像種に関する機能画像とに特定の画像間演算をすることで、前記第2の画像種に関する機能画像から病巣領域を抽出する、
請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記複数の画像種と複数の画像間演算を示すコードとを関連づけた第3テーブルを記憶する第3テーブル記憶部と、
前記第1の画像種と前記第2の画像種との組み合わせに前記第3テーブル上で関連付けられた前記特定の画像間演算を示す第3のコードを前記複数の画像間演算を示すコードの中から特定する第3特定部と、をさらに備え、
前記画像処理部は、前記特定された第3のコードに対応する前記特定の画像間演算を前記反転又は非反転された第1の画像種に関する形態画像と第2の画像種に関する機能画像とにすることで、前記機能画像から前記病巣領域を抽出する、
請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記表示部は、前記病巣領域を強調して表示する、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記形態画像と前記機能画像とのそれぞれは、X線診断装置、X線コンピュータ断層撮影装置、磁気共鳴イメージング装置、超音波診断装置、及び核医学診断装置のうちの1つにより生成された画像である、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項1】
複数の画像種に関する複数の形態画像のデータと複数の機能画像のデータとを記憶する画像記憶部と、
前記複数の画像種と複数の病名とを関連付けた第1テーブルを記憶する第1テーブル記憶部と、
前記複数の病名のうちのユーザにより入力された病名に前記第1テーブル上で関連付けられた第1の画像種と第2の画像種とを複数の画像種の中から特定する第1特定部と、
前記特定された第1の画像種に関する形態画像と第2の画像種に関する機能画像とを前記画像記憶部から読み出して画像処理を行い前記第2の画像種に関する機能画像から病巣領域を抽出する画像処理部と、
前記抽出された病巣領域と前記第1の画像種に関する形態画像とを重ねて表示する表示部と、
を具備する画像処理装置。
【請求項2】
前記複数の病名と前記複数の画像種と画素値の反転又は非反転を示すコードとを関連づけた第2テーブルを記憶する第2テーブル記憶部と、
前記ユーザにより入力された病名と前記第1の画像種との組み合わせに前記第2テーブル上で関連付けられた前記反転又は非反転を示す第1のコードを特定し、前記ユーザにより入力された病名と前記第2の画像種との組み合わせに前記第2テーブル上で関連付けられた前記反転又は非反転を示す第2のコードを特定する第2特定部と、をさらに備え、
前記画像処理部は、前記特定された第1のコードに応じて前記第1の画像種に関する形態画像を反転又は非反転し、前記特定された第2のコードに応じて前記第2の画像種に関する機能画像を反転又は非反転し、前記反転又は非反転された第1の画像種に関する形態画像と第2の画像種に関する機能画像とに特定の画像間演算をすることで、前記第2の画像種に関する機能画像から病巣領域を抽出する、
請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記複数の画像種と複数の画像間演算を示すコードとを関連づけた第3テーブルを記憶する第3テーブル記憶部と、
前記第1の画像種と前記第2の画像種との組み合わせに前記第3テーブル上で関連付けられた前記特定の画像間演算を示す第3のコードを前記複数の画像間演算を示すコードの中から特定する第3特定部と、をさらに備え、
前記画像処理部は、前記特定された第3のコードに対応する前記特定の画像間演算を前記反転又は非反転された第1の画像種に関する形態画像と第2の画像種に関する機能画像とにすることで、前記機能画像から前記病巣領域を抽出する、
請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記表示部は、前記病巣領域を強調して表示する、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記形態画像と前記機能画像とのそれぞれは、X線診断装置、X線コンピュータ断層撮影装置、磁気共鳴イメージング装置、超音波診断装置、及び核医学診断装置のうちの1つにより生成された画像である、請求項1記載の画像処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−15848(P2011−15848A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162946(P2009−162946)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】
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