説明

画像処理装置

【課題】混色の影響を効果的に低減可能とする画像処理装置を提供すること。
【解決手段】実施形態によれば、画像処理装置は、混色補正部13を有する。混色補正部13は、固体撮像素子に配列された対象画素の信号レベルと、対象画素の周辺に位置する周辺画素の信号レベルとを参照する。混色補正部13は、周辺画素に対応するカラーフィルタを通過した入射光が対象画素へ進行することによる混色を補正する。混色補正部13は、周辺画素である赤色画素の信号レベルに応じて算出された補正量を、対象画素の信号レベルから減算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等の固体撮像素子は、汎用のP型シリコン基板を適用して単板式のセンサを構成する場合に、混色と呼ばれる現象が生じる場合がある。混色は、カラーフィルタを通過した光が、本来集光されるべき画素とは別の画素へ漏れ込むことに起因する。混色の発生は、色再現性の低下、解像度の低下等の影響を及ぼすこととなる。また、各色光用の画素を例えばベイヤー配列とする場合に、赤色画素と隣り合う緑色画素と、青色画素と隣り合う緑色画素とで、混色の影響による出力レベルの差が生じる場合がある。出力レベルの差が生じた画像信号は、デモザイク処理等の画像処理の際に、格子状のノイズを生じさせることにもなる。このような背景から、混色の影響を効果的に低減させることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−124282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一つの実施形態は、混色の影響を効果的に低減可能とする画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つの実施形態によれば、画像処理装置は、混色補正部を有する。前記混色補正部は、固体撮像素子に配列された対象画素の信号レベルと、前記対象画素の周辺に位置する周辺画素の信号レベルとを参照する。前記混色補正部は、前記周辺画素に対応するカラーフィルタを通過した入射光が前記対象画素へ進行することによる混色を補正する。前記混色補正部は、前記周辺画素である赤色画素の信号レベルに応じて算出された補正量を、前記対象画素の信号レベルから減算する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1の実施形態の画像処理装置を適用したカメラモジュールのブロック図。
【図2】混色補正部の構成を示すブロック図。
【図3】画素の配列について説明する図。
【図4】混色について説明する図。
【図5】第2の実施形態の画像処理装置に適用される混色補正部の構成を示すブロック図。
【図6】第3の実施形態の画像処理装置に適用される混色補正部及びローパスフィルタの構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる画像処理装置を詳細に説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の画像処理装置を適用したカメラモジュールのブロック図である。カメラモジュールは、画像処理装置1、撮像レンズ2、センサ部3及びAD変換部4を備える。撮像レンズ2は、被写体からの光を取り込み、センサ部3に被写体像を結像させる。
【0009】
センサ部3は、被写体からの光を信号電荷に変換することにより、被写体像を撮像する固体撮像素子である。センサ部3は、光電変換素子を含む画素セルのそれぞれに積層されたカラーフィルタを有する。R画素は、赤色(R)光を透過させるカラーフィルタが積層された画素とする。G画素は、緑色(G)光を透過させるカラーフィルタが積層された画素とする。B画素は、青色(B)光を透過させるカラーフィルタが積層された画素とする。Gr画素は、水平方向においてR画素と並列するG画素とする。Gb画素は、水平方向においてB画素と並列するG画素とする。
【0010】
センサ部3は、R、G、Bの感度レベルをベイヤー配列に対応する順序で取り込み、アナログ信号を生成する。ベイヤー配列は、Gr、R、Gb、Bの4画素を単位として構成されている。AD変換部4は、センサ部3からのアナログ信号をデジタル信号に変換する(AD変換)。
【0011】
画像処理装置1は、AD変換部4からのデジタル画像信号に対して、以下に説明する種々の画像処理を施す。キズ補正部11は、センサ部3において正常に機能していない画素によるデジタル画像信号の欠損部分(キズ)を補正するためのキズ補正を実施する。ノイズキャンセル部12は、ノイズを低減させるためのノイズキャンセル処理を実施する。
【0012】
混色補正部13は、混色補正を実施する。画素補間部16は、ベイヤー配列の順序で伝達されてくるデジタル画像信号に対して、補間処理(デモザイク処理)を実施し、不足色成分の信号レベルを生成する。カラーマトリクス部17は、色再現性を得るためのカラーマトリクス演算処理(色再現性処理)を実施する。
【0013】
ガンマ補正部20は、画像の階調を補正するためのガンマ補正を実施する。YUV変換部21は、R、G、Bの感度信号から輝度(Y)信号及び色差(UV)信号を生成することにより、画像信号をRGB形式からYUV形式(例えば、YUV422など)へ変換する。輪郭強調部23は、センサ部3による撮像条件及び各画素の位置に基づいて算出した補正係数を用いて、Y信号を対象とする輪郭強調処理を実施する。
【0014】
AWB/AE演算部18は、AWB(Auto White Balance)、AE(Auto Exposure)のための各係数を算出する。レンズシェーディング演算部19は、シェーディング補正のための係数を算出する。デジタルAMP係数回路14は、AWB/AE演算部18で算出された係数と、レンズシェーディング演算部19で算出された係数とを基にしてデジタルAMP係数を算出する。
【0015】
ラインメモリ10は、AD変換部4からのデジタル画像信号を一時的に貯える。キズ補正部11及びノイズキャンセル部12は、ラインメモリ10を共用する。ラインメモリ15は、デジタルAMP係数回路14からのデジタル画像信号を一時的に貯える。ラインメモリ22は、YUV変換部21からのY信号及びUV信号を一時的に貯える。
【0016】
図2は、混色補正部の構成を示すブロック図である。混色補正部13は、比較器(COMP)31、カウンタ調整部32及びセレクタ33を有する。混色補正部13は、対象画素の信号レベルと周辺画素の信号レベルとを参照し、周辺画素に対応するカラーフィルタを通過した入射光が対象画素へ進行することによる混色を補正する。対象画素は、混色補正の対象とする画素であって、この例ではGr画素とする。周辺画素は、対象画素の周辺に位置する画素であって、この例ではR画素とする。
【0017】
図3は、画素の配列について説明する図である。混色補正部13には、RAW画像データがラインごと(Gr/Rライン、Gb/Bライン)に入力される。本実施形態では、混色補正部13は、水平方向の3画素のうち中心となるGr画素を対象画素とし、対象画素の左右のR画素を周辺画素として、混色補正を実施する。混色補正部13は、センサ部3において対象画素と一次元方向に並列するR画素の信号レベルを参照する。
【0018】
フリップフロップ(FF)は、画素ごとの信号レベルを保持する。混色補正部13は、2つのFFによって2画素の信号を保持し、対象画素及び周辺画素についての信号を同時刻化する。COMP31は、周辺画素である2つのR画素の信号レベルの平均値AとR用閾値Bとを比較する。平均値Aは、例えば相加平均とする。R用閾値Bは、混色補正部13に予め設定されている。A>Bが成立する場合、COMP31は、例えば「1」を出力する。A>Bが成立しない場合、COMP31は、例えば「0」を出力する。
【0019】
カウンタ調整部32は、V/Hカウンタに応じて、3画素の中心がGr画素であるときに「1」、それ以外のときに「0」を出力する。セレクタ33は、A>Bが成立しかつ中心がGr画素である場合、補正係数と平均値Aとの乗算により得た補正量を選択する。補正係数は、混色補正部13に予め設定されている。混色補正部13は、セレクタ33で選択した補正量をGr画素の信号レベルから減算して、得られた値を出力する。このように、混色補正部13は、周辺画素であるR画素の信号レベルがR用閾値より大きい場合に、R画素の信号レベルに応じて算出された補正量を、対象画素であるGr画素の信号レベルから減算する。
【0020】
中心の画素がGr画素であってA>Bが成立しない場合、セレクタ33は、’d0を選択する。この場合、混色補正部13は、Gr画素の信号レベルをそのまま出力する。中心の画素がGr画素以外である場合も、混色補正部13は、セレクタ33で’d0を選択することにより、その画素の信号レベルをそのまま出力する。
【0021】
図4は、混色について説明する図である。単板式の固体撮像素子の場合、各色光のうち長波長である色光用の画素(例えばR画素)の信号が、他の色光用の画素(例えばG画素)に漏れこむ混色が生じる場合がある。R画素の信号がG画素の信号に漏れこむことにより、G画素の出力のうちR画素の出力と重なる裾部分は、破線で示す本来の出力よりも長波長側に拡張している。
【0022】
ベイヤー配列の場合は、R画素の隣に位置するGr画素とB画素の隣に位置するGb画素とで、混色による信号の漏れこみレベルが異なることによって、出力レベルに差が出る場合もある。このような出力レベルの差は、デモザイク処理等の画像処理によって格子状のノイズを生じさせる原因となる。
【0023】
混色補正部13は、R画素の信号レベルに応じてGr画素の補正量を可変とすることで、漏れこみレベルの差を精度良く補正することができる。画像処理装置1は、混色補正部13を適用することにより、混色の影響を効果的に低減することが可能となる。混色補正部13は、周辺画素であるR画素の信号レベルに対して線形特性を持たせた補正量を適用する場合に限られず、非線形特性を持たせた補正量を適用することとしても良い。
【0024】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態の画像処理装置に適用される混色補正部の構成を示すブロック図である。本実施形態の混色補正部40は、固体撮像素子において対象画素と二次元方向に並列するR画素の信号レベルを参照して、混色補正を実施する。
【0025】
混色補正部40は、3つのR演算部41、42、43、比較器(COMP)44、カウンタ調整部45、ラインメモリ46及びセレクタ47、48を有する。ラインメモリ46は、2ラインの信号を保持し、垂直方向の遅延(ライン遅延)を施す。本実施形態では、対象画素は、垂直方向に3画素、水平方向に3画素のマトリクスをなす9画素のうち、中心に位置する。周辺画素は、対象画素の周囲に位置する8画素とする。
【0026】
図3に示すように、Gr画素とR画素とは、水平方向へ交互に並列している。第1R演算部41は、対象画素であるGr画素と水平方向にて隣り合う2つのR画素の信号レベルの平均値を算出する。Gr画素とR画素とは、垂直方向へ交互に並列している。第2R演算部42は、対象画素であるGb画素と垂直方向にて隣り合う2つのR画素の信号レベルの平均値を算出する。
【0027】
B画素とR画素とは、水平方向及び垂直方向に対して斜めの方向へ交互に並列している。第3R演算部43は、対象画素であるB画素と斜向かいの4つのR画素の信号レベルの平均値を算出する。第1R演算部41、第2R演算部42、第3R演算部43は、平均値として例えば相加平均を算出する。
【0028】
カウンタ調整部45は、V/Hカウンタに応じて、9画素のマトリクスの中心の画素がいずれの色光用の画素であるかを識別する。セレクタ47は、カウンタ調整部45の出力に応じて、値を選択する。マトリクスの中心がGr画素であるとき、セレクタ47は、第1R演算部41で求めた平均値と補正係数1との乗算により得られた補正量を選択する。
【0029】
マトリクスの中心がGb画素であるとき、セレクタ47は、第2R演算部42で求めた平均値と補正係数2との乗算により得られた補正量を選択する。マトリクスの中心がB画素であるとき、セレクタ47は、第3R演算部43で求めた平均値と補正係数3との乗算により得られた補正量を選択する。マトリクスの中心がR画素であるとき、セレクタ47は、’d0を選択する。補正係数1、2、3は、混色補正部40に予め設定されている。補正係数1、2、3は、例えば、センサ部3の配線等の状態に応じて生じる色光ごとの漏れこみ量の差に応じて、適宜調整されている。
【0030】
COMP44は、セレクタ47で選択された補正量である出力値AとR用閾値Bとを比較する。R用閾値Bは、混色補正部40に予め設定されている。セレクタ48は、COMP44の比較結果に応じて、セレクタ47の出力値Aと’d0とのいずれかを選択する。A>Bが成立する場合、セレクタ48は、出力値Aを選択する。
【0031】
混色補正部40は、セレクタ48で選択した出力値Aを対象画素の信号レベルから減算して、得られた値を出力する。このように、混色補正部40は、周辺画素であるR画素の信号レベルがR用閾値より大きい場合に、R画素の信号レベルに応じて算出された補正量を、対象画素であるGr画素、Gb画素、B画素の信号レベルから減算する。
【0032】
A>Bが成立しない場合、セレクタ48は、’d0を選択する。この場合、混色補正部40は、対象画素の信号レベルをそのまま出力する。補正対象外であるR画素がマトリクスの中心であるとき、セレクタ48で’d0が選択され、混色補正部40はR画素の信号レベルをそのまま出力する。
【0033】
混色補正部40は、R画素の信号レベルに応じて対象画素の補正量を可変とすることで、漏れこみレベルの差を精度良く補正することができる。また、混色補正部40は、対象画素に対して二次元方向に並列したR画素の信号レベルを参照することにより、Gr画素、Gb画素、B画素を対象とする混色補正が可能となる。画像処理装置1は、混色補正部40を適用することにより、混色の影響を効果的に低減することが可能となる。
【0034】
なお、混色補正部40は、Gr画素、Gb画素及びB画素をいずれも対象とする混色補正を実施する場合に限られない。混色補正部40は、Gr画素、Gb画素及びB画素のうち少なくともいずれかを対象として混色補正を実施するものであれば良い。
【0035】
(第3の実施形態)
図6は、第3の実施形態の画像処理装置に適用される混色補正部及びローパスフィルタの構成を示すブロック図である。上記の実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。ローパスフィルタ(LPF)50は、混色補正部13による補正量の減算を経た信号を対象とする平坦化処理を実施する平坦化処理部として機能する。
【0036】
LPF50は、4つのFFによって4画素の信号を保持する。水平方向に並列する5画素から、対象画素とするGr画素と、その前後のGr画素とで信号レベルの平坦化処理を実施する。平坦化処理は、例えば、対象画素とするGr画素の信号レベルを2倍にし、前後のGr画素の信号レベルの値を加算して4分の1とする演算により行う。なお、平坦化処理はいずれの手法によるものであっても良く、適宜変形しても良い。
【0037】
セレクタ51は、混色補正部13のカウンタ調整部32からの出力に応じて、5画素の中心がGr画素であるか否かを識別し、値を選択する。中心の画素がGr画素である場合、LPF50は、平坦化処理を経た値をセレクタ51で選択し、出力する。中心の画素がGr画素ではない場合、セレクタ51は、その画素の信号レベルをセレクタ51で選択し、出力する。
【0038】
画像処理装置1は、混色補正部13での補正により生じる可能性がある誤差の影響を、LPF50の適用によって低減させることができる。画像処理装置1は、実施形態1の混色補正部13に平坦化処理部を適用する他、実施形態2の混色補正部40に平坦化処理部を適用しても良い。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1 画像処理装置、3 センサ部、13、40 混色補正部、50 LPF。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体撮像素子に配列された対象画素の信号レベルと、前記対象画素の周辺に位置する周辺画素の信号レベルとを参照し、前記周辺画素に対応するカラーフィルタを通過した入射光が前記対象画素へ進行することによる混色を補正する混色補正部を有し、
前記混色補正部は、前記周辺画素である赤色画素の信号レベルに応じて算出された補正量を、前記対象画素の信号レベルから減算することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記混色補正部は、前記赤色画素の信号レベルが所定の閾値より大きい場合に、前記補正量の減算を実施することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記混色補正部は、前記固体撮像素子において前記対象画素と一次元方向に並列する前記赤色画素の信号レベルを参照することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記混色補正部は、前記固体撮像素子において前記対象画素と二次元方向に並列する前記赤色画素の信号レベルを参照することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記混色補正部による前記補正量の減算を経た信号を対象とする平坦化処理を実施する平坦化処理部を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−60496(P2012−60496A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202945(P2010−202945)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】