説明

画像形成方法

【課題】状況から間引き処理に要求される処理スピードを判断して、間引き処理方法を切り替えることで、生産性を満たす処理スピードと、間引き性能の両立を可能にした画像処理方法を提供する。
【解決手段】感光体上で光ビームを主走査方向及び副走査方向に走査する画像形成方法であって、生産性に関係するパラメータを取得するパラメータ取得部(200)と、パラメータ取得部で得たパラメータに応じて、間引き処理(221、222)を切り替える間引き処理動作切替部(220)を持ち、間引き処理動作切替部で切り替わった間引き処理において間引き処理が施された画像情報に基づいて感光体上に画像を形成する画像形成工程と、感光体上の画像を転写媒体に転写する転写工程と、転写媒体上の画像を定着させる定着工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真技術を使用した画像形成装置、詳しくは上位装置から送られてくる印字データに基づく画像を所定の記録媒体上に印字出力するための画像形成方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来の画像形成装置である電子写真技術をプリンタに応用したレーザビームプリンタの概略構成を示す縦断側面図である。
【0003】
このレーザビームプリンタの動作を以下に説明する。
【0004】
図示しないホストコンピュータより送られた画像信号よりスキャナー701からレーザー光の強度を変調し、感光ドラム702上に静電潜像を形成する。一方、収納カセット703中の転写材は、給紙ローラ704によって1枚ずつ取り出され、レジストローラ705,706によって書き込みタイミングを調整される。そして、転写ローラ707によって感光ドラム702上のトナー像が転写材に転写される。その後、搬送ベルト708、定着ローラ709、加圧ローラ710を経て固着像となり、排紙ローラ711,712よりトレイ713上に積載される。
【0005】
このような通常のプリンタにおいては、主走査方向の直線を画像出力した場合、図8に示すように、転写材801上にトナーにより記録された線802の副走査方向の後端のトナーが飛び散って、画像を乱すという問題が発生していた。この問題は、通常のオフィス環境下で発生し、特に湿度が高いほど発生しやすいことが分かっている。
【0006】
これは図9に示す原因により生じている。転写材801中の水分が定着過程における急激な温度上昇及び上下ローラ(定着ローラ709及び加圧ローラ710)による圧迫により一気に蒸発し、トナー同士の場合、水蒸気が力の弱い後端から抜け出す。この際に同時にトナーも飛び散る。
【0007】
この現象は、副走査方向の直線幅が約100μm〜1000μmの時に発生しやすいことが経験的に知れている。
【0008】
この問題に対して、画像情報に含まれる画像パターンの大きさを判断して、判断に基づいて画像パターンの副走査方向後端部に相当する領域を所定の割合で間引き処理を施すものがある。間引いた箇所がトナーの飛び散りで埋まることにより、その他の場所に飛び散るトナーが出にくいようにしている。(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3754836号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した従来例は簡単な画像処理によって実現されており、大きい画像パターンを用いることで高いプリント速度を実現することもできる。しかしながら、画像パターンを大きくすることでパターンのマッチング精度が低くなり、画像情報によっては間引ける範囲が小さくなっていた。このように、固定の処理方法のため、処理スピードと画質のトレードオフになっていた。
【0011】
近年、プリンタの出力解像度の高解像度化、高速化が進んだため、これを満たすために画像パターンを大きく取り、パターンのマッチング精度を落とすか、処理が間に合うように生産性を少し落とさなければならなくなってきている。
【0012】
そこで本発明では、要求される処理スピードに応じて間引き処理方法を適用的に切り替えることで、処理スピードと画質の両面をサポートする画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る画像形成方法の構成は、感光体上で光ビームを主走査方向及び副走査方向に走査する画像形成方法であって、生産性に関係するパラメータを取得するパラメータ取得部(200)と、前記パラメータ取得部で得た前記パラメータに応じて、間引き処理(221、222、300)を切り替える間引き処理動作切替部(220)を持ち、前記間引き処理動作切替部で切り替わった前記間引き処理において間引き処理が施された画像情報に基づいて感光体上に画像を形成する画像形成工程と、前記感光体上の画像を転写媒体に転写する転写工程と、前記転写媒体上の画像を定着させる定着工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る画像形成方法によれば、要求される処理速度に応じて間引き方法を切り替えることで、処理時間が短い場合でもプリント速度の低下を起こさず間引きを行いトナーの飛び散りに対して大まかに対応することができる。また、十分な処理時間がある場合には、詳細に間引き処理を行うことでトナーの飛び散りへの効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】画像形成装置の画像処理部の構成を示すブロック図である。
【図3】画像形成装置における画像処理動作の流れを示すフローチャートである。
【図4】画像形成装置における間引きパターンを示す図である。
【図5】画像形成装置における間引き単位の概略を示す図である。
【図6】画像形成装置における画像処理エリアを示す図である。
【図7】画像形成装置であるレーザビームプリンタの概略構成を示す縦断面図である。
【図8】画像形成装置における尾引き現象を示す図である。
【図9】画像形成装置における尾引き現象発生メカニズムを示す簡略図である。
【図10】画像形成装置におけるPrint状況と要求間引き処理スピードの対応表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【0017】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1、図2、図10に基づき説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る画像形成装置であるレーザービームプリンタの構成を示すブロック図である。なお、図1に示す各処理部は画像処理装置内のCPUにより統括的に制御される。また、各処理部が行う処理内容を定義したプログラムは同じく画像処理装置内の記憶媒体(HDDやフラッシュメモリやCD−ROMやDVD)に記憶可能な状態で保存されている。従って、CPUは、この記憶媒体に記憶されているプログラムを順次読み出すことにより、各処理部の処理内容を統括的に制御する。
【0018】
図1において、10はレーザービームプリンタ(以下、プリンタと記述する)、20は画像情報と印刷設定の発生源であるホストコンピュータ(以下、ホストと記述する)、である。プリンタ10は、入出力I/F(インターフェース)30、CPU(中央演算処理装置)40、操作パネル41、メインメモリ42、ビットマップメモリ50、画像処理部60、プリンタエンジン70を有している。
【0019】
入出力I/F30は、ホスト20からの画像情報と印刷設定を受信すると共に、プリンタ10からのステータス情報をホストコンピュータ20に送信するものである。CPU(中央演算処理装置)40は、本プリンタ10全体の制御を司るものである。操作パネル41は、各種操作を行うための操作ボタン及び各種の情報を表示する表示部を有し、本プリンタ10を操作するためのパネルである。
【0020】
メインメモリ42は、CPU40の動作処理手順や文字パターン、間引きパターン等を記憶しているメモリである。ビットマップメモリ50は、印字する1ページ分のドットイメージを展開可能なメモリである。画像処理部60は、画像処理を施すもので、本発明の特徴的な構成であって、その詳細は後述する。プリンタエンジン70は、画像を転写材に印字するものである。
【0021】
図2は、画像処理部60の画像処理方法を示す図である。パラメータ取得部200は、生産性に関係するパラメータを取得する。ページ位置、PrintJOBのスケジューリング状況、レンダリング設定、出力解像度設定、用紙サイズ、用紙の向きなどがそれに当たる。
【0022】
間引きパフォーマンス算出部210は、これらのパラメータから間引き処理に要求される処理スピード/処理優先度を求める。図10は、いくつかのパラメータから間引きに要求される処理スピードを割り出した一例を示している。
【0023】
ユーザの指示を受けてホストが新たなPrintJOBを発行したときに、プリンタのPrintJOBが混雑している場合は、新たなPrintJOBのページ処理は急ぎである必要はなく間引きに対する処理スピード要求は低い。それに対して、他のPrintJOBがないTopJOBの場合、TopPageの処理であれば間引き処理に対する処理スピード要求は高い。出力解像度設定が1200dpi指定であるならば、処理画素数が多いのでなおさら処理スピードへの要求は高くなる。このように、設定や状況に対して間引きへの処理スピード要求は変化する。
【0024】
そして、間引きパフォーマンス算出部210で出された結果にもとづいて間引き処理動作切替部220で、処理スピードの異なる間引きモジュールを切替えて動作させる。間引き処理動作切替部220では、間引きモジュール221と間引きモジュール222など複数の間引きモジュールを持っており、それぞれ処理スピード、間引き性能が異なる。
【0025】
なお、ここでは間引きパフォーマンス算出部210の結果を用いていたが、操作パネル41に間引きに関して、スピード優先/画質優先の選択ボタンを用意し、その状態により利用する間引きモジュールを切り替えるとしても良いとする。
【0026】
以上より、要求される処理スピードに応じて間引き方法を切り替えることで、パフォーマンスと画質の両面をサポートする画像処理方法を提供する。
【0027】
<実施形態2>
実施形態2では、実施形態1からの差分のみ記載するものとする。
【0028】
実施形態1では、処理スピードの異なる間引きモジュールを切り替えて動作させるとしていた。これに対して、実施形態2では同一の間引きモジュールでパラメータによって間引き処理スピードを変化させることができる可変スピード間引きモジュール300を用いる。以下ではこの可変スピード間引きモジュール300について説明する。そして、間引き処理動作切替部220では、間引きパフォーマンス算出部210から算出した処理スピード/処理優先度に応じて、可変スピード間引きモジュール300の処理スピードに関わるパラメータを変更することとする。
【0029】
図3は、可変スピード間引きモジュール300のフローチャートである。簡単に説明すると図5に示したように間引きの処理単位の切替えることで実行コマンド数が変わり処理スピードを変化させることのできる間引きモジュールです。これについて図3を用いて詳細を説明する。
【0030】
310は、可変スピード間引きモジュール300に与える設定値である。間引きパターンM_Ptはメインメモリ42に記憶されおり、ここでは一例として図4(A)〜(D)を挙げる。主走査方向に大きめのパターンを記憶しているが、最小の繰り返しパターンだけを記憶しておき、利用時必要サイズ分だけ繰り返して展開しても良い。
【0031】
なお、間引きパターンは、図4に記載のようにパターンサイズと間引きをかける上限/下限のライン幅を示す値を一緒に保持しているものとする。
【0032】
間引き単位設定M_unitは、間引きを行う単位の主走査幅を示している。画像パターン判定単位設定P_unitは、間引き箇所を特定するためのパターン判定を行う単位の主走査幅を示している。
【0033】
320は、ビットマップメモリ50に展開された1ページ分の画像の用紙搬送方向に対する座標系を示している。D(X,Y)は座標位置(X,Y)におけるドット情報を表している。なお、以降ではX軸を主走査方向、Y軸を副走査方向と表現する場合もある。
【0034】
次にフローについて説明する。
【0035】
まず、S3001ではデータの初期化を行う。間引きを行う画像パターンを用紙搬送方向の下流側から行うように座標クリアする。また、黒のライン幅判定に用いる黒ラインカウンタをクリアする。また、310で設定されている間引きパターンに関連するパラメータの読込を行う。
【0036】
そして、S3002では、間引き単位設定に応じて間引きパターンのマスク処理を行う。具体的には、大きめに記憶されている間引きパターンの間引き単位を超える部分を黒ドットに塗り替える。
【0037】
次に、S3003では、現座標位置D(X,Y)の画像パターン判定単位P_unit分のドットが全黒かどうかの判断を行う。
【0038】
全黒と判断された場合はS3004に進み、黒ラインカウンタを+1する。全黒でないと判断された場合は、S3005に進み黒ラインカウンタのカウンタ値に応じて間引きを行う。間引きの方法については、後で図6を用いて説明するものとする。
【0039】
S3006では、現座標位置D(X,Y)の画像パターン判定単位P_unit分のドットが全白かどうかの判断を行う。全白と判断された場合はS3007に進み黒ラインカウンタをクリアする。全白でないと判断された場合は、S3008に進み黒ラインカウンタを間引きのライン幅の上限以上に変更する。これにより全白が来るまで間引き処理は行われなくなる。
【0040】
現座標位置D(X,Y)での画像パターンの判定が終わるとS3009に進み先頭ラインまで処理が終わったかどうかを判断する。終わっていない場合は、Y軸方向の座標位置を進めて画像パターンの判定を繰り返す。先頭ラインまで終わるとS3005に進み、現在の黒ラインカウンタの状態に応じて間引きを行う。
【0041】
次に、S3007では黒ラインカウンタのクリアを行う。
【0042】
S3010ではX軸方向に対して、未処理の部分が残っていないか判断している。間引き単位設定M_unit分の未処理部分が残っている場合はX軸方向に移動し、S3011でY軸の最後端ラインに移動する。未処理部分がない場合は終了となる。
【0043】
次に、図6を用いて図3の処理フローを通ると入力画像に対してどのように間引きがかかるのか説明する。600は、可変スピード間引きモジュール300の設定例を示しており、S3001に対応する。
【0044】
610は、間引きパターンPT01に対して、主走査方向が間引き単位設定外の部分を黒でマスクしていることを示している。これはS3002に対応している。
【0045】
620は、画像パターンの判定単位で入力画像を参照していき、黒ラインをカウントしていく例を示している。ここで示されている入力画像の場合、全白でカウントクリアされ(S3007対応)、黒ラインが3ライン続いた後に全黒以外が来ることから黒ライン幅は3ラインであると判定される。
【0046】
630は、620で決まった黒ライン幅が、600の設定にある下限/上限ライン幅内にあることから、黒ライン幅−1の範囲で入力画像とマスク後の間引きパターン画像とのAND処理が行い間引きを実現している状況を示している。この部分は図3では詳細説明されなかったS3005の内部動作を示している。
【0047】
以上より、可変な処理スピードを持つ間引き処理を実現することができる。これにより、要求される処理スピードに応じて動作切替することでパフォーマンスと画質の両面をサポートした間引き処理を実現することができる。
【0048】
<その他の実施例>
本発明の目的は、上述した各処理を実現するプログラムコードを記憶した記憶媒体から、システムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が、そのプログラムコードを読出し実行することによっても達成される。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が上述した実施形態の機能を実現することになる。そのため、このプログラムコード及びプログラムコードを格納したコンピュータ読取り可能な記憶媒体も本発明の一つを構成することになる。
【0049】
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、HDD、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。
【0050】
またコンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、その実行によって上述した実施形態の機能が実現される場合も本発明の一つを構成することになる。
【符号の説明】
【0051】
10 画像形成装置(レーザビームプリンタ)
20 ホストコンピュータ
30 入出力I/F(インターフェース)
40 CPU(中央演算装置)
41 操作パネル
42 メインメモリ
50 ビットマップメモリ
60 画像処理部
70 プリンタエンジン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体上で光ビームを主走査方向及び副走査方向に走査する画像形成方法であって、生産性に関係するパラメータを取得するパラメータ取得部(200)と、前記パラメータ取得部で得た前記パラメータに応じて、間引き処理(221、222、300)を切り替える間引き処理動作切替部(220)を持ち、前記間引き処理動作切替部で切り替わった前記間引き処理において間引き処理が施された画像情報に基づいて感光体上に画像を形成する画像形成工程と、前記感光体上の画像を転写媒体に転写する転写工程と、前記転写媒体上の画像を定着させる定着工程とを有することを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記間引き処理は、画像情報に含まれる画像パターンを判断する判断工程(620)と、前記判断工程の判断に基づいて前記画像パターンの副走査方向後端部に主走査方向に所定の割合を間引く間引き工程(630)からなることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記パラメータは、用紙サイズ/レイアウト設定/出力解像度設定の処理画素数(図10)に関わる情報であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記パラメータは、PrintJOBのスケジューリング状況、ページ位置の印刷までにかけられる時間を算出するのに必要な情報(図10)であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記パラメータは、画質優先/スピード優先を示す設定であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記間引き動作切替手段は、生産性を満足する中で最も画質効果の高い間引き処理動作(221、222、300)を選択することを特長とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記間引き動作切替手段は、複数の間引き処理モジュール(221、222)を切り替えて使うことを特長とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記間引き動作切替手段は、処理スピードが可変の間引き処理モジュール(300)のスピードに関係するパラメータを切り替えて使うことを特長とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記間引き処理は、前記判断工程において、前記画像パターンのサイズが可変であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成方法。
【請求項10】
前記間引き処理は、前記間引き工程において、前記判断工程の判断に基づいて前記画像パターンの副走査方向後端部に主走査方向に所定の割合を間引く際に、間引く単位を可変であることを特徴とする請求項2に記載の画像形成方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−220699(P2012−220699A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85906(P2011−85906)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】