説明

画像形成装置における現像装置

【課題】簡単な構成で低温・低湿環境におけるトナー帯電量上昇に起因する画像濃度低下、高温・高湿環境における帯電不足に起因するトナー飛散などの問題を起こさず、高温・高湿から低温・低湿にわたる、広い環境条件において長期に渡って高画質を保ちながら画像形成できるようにした、画像形成装置における現像装置を提供することが課題である。
【解決手段】水コンテナと攪拌ベルトとを用い、現像装置内の加湿を効率良く行えるようにして低温・低湿環境におけるトナー帯電量の上昇を防ぎ、高温・高湿環境における帯電不足に対しては、放電が起こりにくい球形磁性粉を用いてトナーを構成し、高温・高湿環境においても帯電不足になることを防止した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機などの画像形成装置における現像装置に係り、特に、磁性1成分トナーを用い、高温・高湿から低温・低湿にわたる広い環境条件においても、長期に渡って高画質を保ちながら画像形成できるようにした、画像形成装置における現像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した複写機、プリンタ、ファクシミリ、それらの複合機などの画像形成装置においては、まず、感光体表面を所定極性に一様に帯電し、所定の原稿情報に基づいて変調した光源からの光で感光体上を露光して静電潜像を形成する。そして、現像装置でこの静電潜像にトナーを付着させてトナー像とし、所定用紙に転写した後、定着装置に搬送して加熱及び加圧することでこのトナー像を用紙に定着し、画像形成が行われる。なお、トナー像を用紙に転写した後に感光体表面に残ったトナーは、クリーニングブレード等でクリーニングされて残トナーが除去され、さらに光照射等による除電が行われて次の画像形成に備えられる。
【0003】
このような画像形成装置に用いられる現像剤としては、トナーのみよりなる1成分現像剤と、トナーとキャリアとからなる2成分現像剤とがある。このうち、1成分現像剤を使う現像方式としては、例えば磁性1成分ジャンピング方式と呼ばれ、内部に磁石を配して回転する円筒スリーブ状の現像剤担持体に磁性1成分トナーを担持させ、そのトナー層厚を磁性ブレードにより規制すると共にトナーを帯電させて静電潜像に飛翔させ、現像する方式がある。
【0004】
このような現像方式においては、高画質の画像形成を行う上でトナーを適正に帯電させることが重要であり、一般的には、例えば温度20℃、湿度60%±10%の環境で最適な帯電量が得られるような設計がなされている。しかし、このような一般的な環境に対し、例えば温度10℃以下、湿度10%という低温、低湿環境下ではトナーが高抵抗化し、チャージアップが起こって画像濃度が低下するという不具合が発生する。
【0005】
そのため例えば特許文献1には、湿度が数%の低湿度環境下での画像形成で現像剤が高抵抗化し、現像能力が低下するのを防止するため、トナー貯蔵容器に水或いは吸水部材に水を浸したものを水室として準備し、自然に蒸発した水分が通気口を介して現像装置内を加湿して、低温時の低湿環境によって画像不具合が生じるのを防止する技術が開示されている。
【0006】
また、本願出願人の出願になる特許文献2には、特許文献1の低湿環境を防止する技術は通気口を通して自然に加湿するようにしていて、湿度の調整が自然作用によって行われて加湿調整時間に遅れを生じるという問題があるため、湿度センサと、低湿時に瞬時に加湿ができるように水の霧化ユニットを有する加湿機とを設け、湿度センサからの湿度情報によって霧化ユニットから霧を発生させ、加湿する技術が示されている。さらに特許文献3には、画像形成装置に湿度検出手段と加湿手段とを設け、装置内全体を加湿する手段が開示されている
【0007】
【特許文献1】特開昭59−42567号公報
【特許文献2】特開平4−204965号公報
【特許文献3】特開平4−349473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に示された低温時の低湿環境防止技術は、水室での水の界面が小さいために十分な調湿ができないという問題があり、また特許文献2の技術は、水を霧状として強制的に湿度を与えているため、現像装置内に浮遊しているトナーに水滴が付着し、それが通気口付近に付着するとトナーが固着して通気口が塞がれ、時間の経過によって湿度制御が不安定になるという問題がある。さらに特許文献3の技術は、現像装置が現像スリーブを除いてほぼ密閉状態となっているのに画像形成装置全体を加湿する手段であり、現像装置への調湿効果が現れるのは最後になって、現像装置内部に対する湿度の応答性を改善することができない。
【0009】
また、これは低温・低湿環境の場合であったが、例えば東南アジアのように、温度35℃、湿度90%という高温、高湿環境が日常的に存在する地域では、湿度によってトナーからの放電が起こりやすく、所定の帯電量が維持することが難しいためにトナー飛散が起こったりする。これは例えば8面体の磁性粉のように、鋭角部分が存在してその鋭角部から放電が起こりやすい磁性粉を使用したトナーにおいて顕著となる。
【0010】
そのため本発明においては、簡単な構成で低温・低湿環境におけるトナー帯電量上昇に起因する画像濃度低下、高温・高湿環境における帯電不足に起因するトナー飛散などの問題を起こさず、高温・高湿から低温・低湿にわたる、広い環境条件において長期に渡って高画質を保ちながら画像形成できるようにした、画像形成装置における現像装置を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため本願出願人は、片側が水に浸漬されて前記湿度測定手段の測定結果で周回するベルト状攪拌手段を用い、これら特許文献に示されている技術の問題点を解決して現像装置内の加湿を効率良く行えるようにし、低温・低湿環境におけるトナー帯電量の上昇を防ぐことを考えた。また、高温・高湿環境における帯電不足を起こさないよう、磁性粉として球形磁性粉を用いることを考えた。前記したように8面体の磁性粉は、鋭角部分が存在してその鋭角部から放電が起こりやすいが、逆に球形の磁性粉は、鋭角部分が存在しないために放電が起こりにくく、高温・高湿環境においても帯電不足になることが少ない。
【0012】
そのため本発明になる画像形成装置における現像装置は、
筒状回転スリーブ内部に固定磁石を有して電子写真方式で静電潜像が形成される感光体に対面し、現像剤を担持して前記静電潜像を現像する現像剤担持体と、前記現像剤を攪拌して前記現像剤担持体に搬送する攪拌手段と、湿度測定手段と、加湿手段と、を備えた画像形成装置における現像装置において、
前記加湿手段は、片側が水に浸漬されて前記湿度測定手段の測定結果で周回するベルト状攪拌手段を有し、上部の通気口を通して現像装置内への加湿を行うよう構成され、
前記現像剤は磁性1成分現像剤であり、配合された磁性粉が球形磁性粉であることを特徴とする。
【0013】
このように加湿手段として、片側が水に浸漬されて前記湿度測定手段の測定結果で周回するベルト状攪拌手段を設け、湿度測定手段の測定結果によりベルトを駆動したとき、水中を通ったベルトが空気中に出ることで付着した水滴の蒸発が起こり、それによって迅速に、かつ、水滴を飛ばしたりすることなく現像装置内を加湿することができるようにしてある。そのため前記特許文献1乃至3のものとは異なり、水室での水の界面が小さくて加湿効果が少なかったり現像装置内部に対する加湿の応答性が悪い、あるいは加湿するための水分によってトナーが通気口に固着する、といったことがなく、迅速に、的確に現像装置内を加湿することができるから、低温・低湿環境のトナーがチャージアップしやすい環境においても加湿手段によってそれを防止することができ、帯電量上昇に起因する画像濃度低下を防ぐことができる。
【0014】
また、トナーを構成する磁性粉として球形磁性粉を用いたが、球形磁性粉は前記したように鋭角部分が存在せず、放電が起こりにくくて高温・高湿環境においても帯電不足になることが少ない。そのため、例え東南アジアなどのように温度35℃、湿度90%、という高温・高湿環境となる地域においても帯電が不足してトナー飛散が生じるという問題が生ぜず、広い環境条件において、長期に渡って高画質を保ちながら画像形成できる、画像形成装置における現像装置を提供することができる。
【0015】
そして、前記加湿手段は、前記ベルト状攪拌手段におけるベルト部に当接し、搬送される水分を吸収しながら回転するスポンジローラを有していることで、水の蒸発する面積が大きく増え、それだけ現像装置内を効果的に加湿することができる。
【0016】
さらに、前記湿度測定手段は、前記現像剤攪拌手段で攪拌される現像剤の湿度を測定する位置に配されていることで、加湿せねばならない状態を正確に測定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ベルト状攪拌手段が湿度測定手段の測定結果によって駆動され、迅速に、かつ的確に、さらに水滴を飛ばしたりすることなく現像装置内を加湿することができるから、低温・低湿環境のトナーがチャージアップしやすい環境においても、加湿手段によってそれを防止することができ、帯電量上昇に起因する画像濃度低下を防ぐことができる。また、トナーを構成する磁性粉として鋭角部分が存在しない球形磁性粉を用いたことで、放電が起こりにくいから、例え東南アジアなどのように温度35℃、湿度90%、という高温・高湿環境となる地域においても帯電が不足してトナー飛散が生じるという問題が生ぜず、広い環境条件において、長期に渡って高画質を保ちながら画像形成できる、画像形成装置における現像装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0019】
図1は、本発明になる画像形成装置における現像装置の概略断面図で、この図1に示した本発明の現像装置を備えた画像形成装置は、磁性1成分現像剤を用いた画像形成装置である。図中、10は図示していない帯電装置で一様に帯電され、これも図示していない露光装置で露光されて静電潜像が形成される感光体である。20は本発明になる現像装置で、この現像装置20における現像装置筐体21の中には、回転可能な筒状回転スリーブ内部に固定磁石を有して感光体10に対面し、現像剤の磁気穂を担持して静電潜像を現像する現像剤担持体(現像ローラ)22、現像剤を攪拌しながら帯電させ、その現像剤担持体(現像ローラ)22に搬送する攪拌部材23、24、攪拌部材23、24を隔て、攪拌部材23、24の軸方向両端が現像装置筐体21に接しないよう短くされた仕切り板25、攪拌部材23、24で攪拌される現像剤の湿度を測定できる位置に配されている湿度センサ26などを有している。
【0020】
そしてこの現像装置筐体21の上部には、補充用トナーを収容してトナー補給ローラ28により、現像装置筐体21内にトナーを補給するためのトナーコンテナ27が設けられ、また、現像装置筐体21における感光体10の逆側には水コンテナ30が設けられている。その水コンテナ30の中には、駆動ローラ31と水35の中に配された従動ローラ32に張架され、片側が水に浸漬されて湿度測定手段の測定結果で周回するベルト状攪拌手段たる攪拌ベルト36、この攪拌ベルト36に当接し、搬送される水分を吸収しながら回転するスポンジローラ33が設けられ、現像装置筐体21内を加湿するため、攪拌部材24側の側壁には通気口34が設けられている。
【0021】
この現像装置20は、画像形成時開始時、及びトナーコンテナ27からトナー補給ローラ28により現像装置筐体21にトナーを補給する時、さらに湿度センサ26が、現像装置20内の湿度が例えば20%以下になったことを検出したとき、水コンテナ30内の攪拌ベルト36を回転させ、水中を通った攪拌ベルト36が空気中に出ることで付着した水滴の蒸発が起こり、水コンテナ30内の水と空気を攪拌して加湿に対する応答性をよくしながら加湿する。またこの加湿の際、攪拌ベルト36に上部で接しているスポンジローラ33がこの攪拌ベルト36が運ぶ水を吸収し、水の蒸発する面積を大きく増やしながら、現像装置20内を効果的に加湿することができるようになっている。
【0022】
そのため本発明になる画像形成装置における現像装置は、前記特許文献のもののように、水室での水の界面が小さくて加湿効果が少なかったり現像装置内部に対する加湿の応答性が悪い、あるいは加湿するための水分によりトナーが通気口を塞いで固着する、といったことがなく、迅速に、的確に現像装置内を加湿することができる。
【0023】
このように構成された本発明になる現像装置を有する画像形成装置は、前記したように画像形成時開始時、例えば水コンテナ30内の攪拌ベルト36を10秒間駆動して攪拌を行い、加湿を行った後、画像形成動作を行う。この画像形成動作は前記したように、まず、感光体10の表面を所定極性に一様に帯電し、所定の原稿情報に基づいて変調した図示していない光源からの光で感光体10上を露光して静電潜像を形成する。そして、以上説明してきた現像装置20における現像剤担持体(現像ローラ)22が担持している、1成分現像剤による磁気穂によってこの静電潜像にトナーを付着させ、トナー像として所定用紙に転写した後、図示していない定着装置でこのトナー像を用紙に定着する。なお、トナー像を用紙に転写した後に感光体10表面に残ったトナーは、これも図示していないクリーニングブレード等でクリーニングされて残トナーが除去され、さらに光照射等による除電が行われて次の画像形成に備えられる。
【0024】
この現像装置で使用する現像剤を構成するトナーは、結着樹脂中に着色剤などの種々のトナー配合剤を分散させることで作成される。結着樹脂の種類は特に制限されるものではないが、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合体、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等の熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
【0025】
この結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、50〜70℃であることが好ましく、このガラス転移点が上記範囲よりも低いと、得られたトナー同士が現像装置内で融着して保存安定性が低下してしまう。また、樹脂強度が低いため、感光体へのトナー付着が生じる傾向がある。逆にガラス転移点が上記範囲よりも高いと、トナーの定着性が低下してしまう。なお、結着樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、比熱の変化点から求めることができる。
【0026】
着色剤も、特に制限されるものではなく、又電荷制御剤は、帯電レベルや帯電立ち上がり特性(短時間で、一定の電荷レベルに帯電するかの指標)を著しく向上させ、耐久性や安定性に優れた特性等を得るために配合されるものである。即ち、トナーを正帯電させて現像に供する場合には正帯電性の電荷制御剤を添加し、負帯電させて現像に供する場合には負帯電性の電荷制御剤を添加することができる。又正帯電性或いは負帯電性の電荷制御剤は、トナーの全体量を100質量部としたとき、1.0〜7.0質量部の量でトナー中に含まれているのがよい。
【0027】
電荷制御剤の添加量が上記範囲よりも少量であると、所定極性にトナーを安定して帯電することが困難となる傾向があり、該トナーを用いて静電潜像の現像を行って画像形成を行ったとき、画像濃度が低くなったり画像濃度の耐久性が低下する傾向がある。また、電荷制御剤の分散不良が起こりやすく、いわゆるカブリの原因となったり感光体汚染が激しくなる等の傾向がある。一方、電荷制御剤が上記範囲よりも多量に使用されると、耐環境性、特に高温高湿下での帯電不良で画像不良となり、感光体汚染等の欠点が生じやすくなる傾向がある。
【0028】
定着性やオフセット性を向上させるために使用されるワックス類としては、特に制限されるものではないが、一般にトナー全体量を100質量部としたとき、1〜5質量部の量で配合されていることが好ましい。ワックス類の添加量が1質量部未満ではオフセット性や像スミアリング等を効率的に防止することができない傾向があり、一方、5質量部を超えるとトナー同士が融着してしまい、保存安定性が低下する傾向がある。
【0029】
そして、結着樹脂中には磁性粉を配合し、1成分現像剤とする。このような磁性粉としては、それ自体公知のもの、例えば、フェライト、マグネタイトを初めとする鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性を示す金属、もしくは合金またはこれらの元素を含む化合物、あるいは、強磁性元素を含まないが適当な熱処理を施すことによって強磁性を示すようになる合金、または二酸化クロム等を挙げることができる。
【0030】
これらの磁性粉は、平均粒子径が0.1〜1μm、特に0.1〜0.5μmの範囲内の球形微粉末で、上述した結着樹脂中に均一に分散される。また、磁性粉は、チタン系カップリング剤、シラン系カップリング剤などの表面処理剤で表面処理を施して使用することもできる。形状は球形であることが望ましく、一般に使用される八面体磁性粉等では、トナー表面に電荷のリークサイトが生じて高温・高湿下では電荷のリークが発生しすぎる。
【0031】
また磁性粉は、トナー中に30〜60質量部、特に40〜50質量部の量で含有されていることが好ましい。上記範囲よりも多量に磁性粉を用いると、画像濃度の耐久性が悪くなり、また、定着性が極度に低下する傾向があり、上記範囲よりも少量では、画像濃度耐久性におけるカブリが悪くなってしまう。
【0032】
本発明で用いるトナーは、前述した結着樹脂と電荷制御剤などの各種トナー配合剤を混合し、押出機等の混練機を用いて溶融混練した後、これを冷却し、粉砕及び分級することにより得られる。また、かかるトナーは、コロイダルシリカ、疎水性シリカ、アルミナ、酸化チタン等の微粒子(通常、平均粒径が1.0μm以下)を外添し、それ単独で1成分現像剤として感光体表面に形成された静電潜像の現像に使用される。
【0033】
尚、上記の微粒子外添剤は、トナーの表面処理によって流動性、保存安定性、クリーニング性等を向上させるために使用されるものであり、通常、トナー全体量を100質量部としたとき、0.2〜10.0質量部の量で使用される。また、これら微粒子の外添は、トナーと乾式で攪拌混合することにより行われるが、この攪拌混合は、微粒子がトナー中に埋め込まれないようにヘンシェルミキサーやナウターミキサーなどを用いて行うのがよい。
【0034】
図2、図3は、図1に示した本発明になる画像形成装置における現像装置を用い、温度5℃、湿度10%の低温・低湿環境(図2)、温度35℃、湿度90%の高温・高湿環境(図3)において、以上説明してきたトナーを用い、水コンテナ30を駆動させた場合や水コンテナ30を用いない場合など、条件を変えながら20万枚の画像形成をしたときの現像装置20内の湿度推移、トナーの帯電量推移、形成された画像の濃度推移を調べた結果を示した表である。
【0035】
この調査に用いた画像形成装置は、京セラミタ製プリンタLS−1800に水コンテナを設置できるよう改造を行った画像形成装置を用いた。そして使用したトナーは、まず結着樹脂であるスチレンアクリル樹脂を次のようにして製造した。温度計、撹拌機、窒素導入管のついた反応器中にキシレン300部を入れ、窒素気流下で、スチレン845部、アクリル酸n−ブチル155部の混合モノマーと、ジ−tert−ブチルペルオキサイド(重合開始剤)8.5部と、キシレン125部との混合溶液を用いて、170℃で3時間かけて滴下した。滴下後、170℃で1時間反応させ、重合を完了した。その後、脱溶剤して結着樹脂を得た。磁性粉としては、Fe(FeO・Fe)であるマグネタイトからなり、粒子形状が、球状、平均粒子径が0.20μmである磁性粉を用いた。
【0036】
そしてトナーは、このようにして製造した結着樹脂60質量部、上記球形磁性粉40質量部、ワックス(サゾール社製H1、)5質量部、CCA(オリエント化学工業社製N−10)3質量部を混合し、2軸押出機にて溶融混練し、冷却してハンマーミルにて粗粉砕した。その後機械式粉砕機にてさらに微粉砕したものを気流式分級機により分級し、体積平均粒径8.0μmのトナーを得た。そして得られたトナー粉体に、シリカ(日本アエロジル社製RA−200H)0.5質量部をヘンシェルミキサーにより外添し、トナー粉末の表面に付着させてトナーを調製した。
【0037】
(評価実施例1)
上記トナーをトナー補給コンテナ27に充填し、補給用トナーとした。そして評価実施例1は、上記のようにして作成したトナーを用い、現像装置20の稼働時、及びトナーコンテナ27からトナーを補給したとき、水コンテナ30内の攪拌ベルト36による攪拌を10秒間行い、また湿度センサの湿度検出結果が20%以下の場合、更に攪拌ベルト36を連続して稼動させた。
【0038】
(評価実施例2)
評価実施例2は、上記評価実施例1における条件のうち、トナーは同じものを用い、現像装置20の稼働時に水コンテナ30内の攪拌ベルト36による攪拌を10秒間行うことは同じだが、湿度センサ26の湿度検出結果が20%以下の場合でも攪拌ベルト36の連続稼動を実施せずに評価した。
【0039】
(比較例1)
比較例1は、評価実施例1における条件のうち、トナーは同じものを用いたが、水コンテナ30を設置せずに実施した。
(比較例2)
比較例2は、評価実施例1における条件のうち、トナーを構成する磁性粉を8面体磁性粉とし、現像装置20の稼働時、及びトナーコンテナ27からトナーを補給したとき、水コンテナ30内の攪拌ベルト36による攪拌を10秒間行い、また湿度センサの湿度検出結果が20%以下の場合、更に攪拌ベルト36を連続して稼動させた。
(比較例3)
比較例3は、比較例2において水コンテナ30を設置せずに実施した。
【0040】
そして評価は水コンテナ30を設置して、低温・低湿環境下の評価を行う場合は画像形成装置を評価時と同じ低温・低湿環境下に3日間放置し、調湿状態となった後実験を開始した。評価項目のうち、トナーの帯電量については現像装置内トナーの帯電量を、TREK社製帯電量測定装置(Q/M Meter210HS)を用いて測定した。画像特性は、温度5℃、湿度10%の低温・低湿環境(図2)、温度35℃、湿度90%の高温・高湿環境(図3)において、それぞれ初期時に前記ページプリンタで画像評価パターンを印字して初期画像とし、その後、20万枚の連続通紙を行い、10万枚ごとに再度画像評価パターンを印字して耐久後画像とした。画像評価パターンはそれぞれソリッド画像をマクベス反射濃度計(RD914)を用いて測定し、一定のベタ部の9ポイントの濃度測定を行なってその平均値(ID)を算出した。画像濃度は1.10以上をOKとした。
【0041】
まず図2に示した温度5℃、湿度10%の低温・低湿環境の場合であるが、水コンテナ30を設置し、前記のようにして作成したトナーを用い、現像装置20の稼働時、及びトナーコンテナ27からトナーを補給したとき、水コンテナ30内の攪拌ベルト36による攪拌を10秒間行い、また湿度センサの湿度検出結果が20%以下の場合、更に攪拌ベルト36を連続して稼動させた評価実施例1、トナーは評価実施例1と同じで、現像装置20の稼働時に水コンテナ30内の攪拌ベルト36による攪拌を10秒間行うことも同じだが、湿度センサ26の湿度検出結果が20%以下の場合でも攪拌ベルト36の連続稼動を実施せずに評価した評価実施例2、トナーを構成する磁性粉を8面体磁性粉とし、現像装置20の稼働時、及びトナーコンテナ27からトナーを補給したとき、水コンテナ30内の攪拌ベルト36による攪拌を10秒間行い、また湿度センサの湿度検出結果が20%以下の場合、更に攪拌ベルト36を連続して稼動させた比較例2は、画像濃度、帯電量共に初期時に対して大きな変化はなく、湿度も28〜36%と良好であった。
【0042】
それに対し、トナーは評価実施例1と同じものを用いたが、水コンテナ30を設置せずに実施した比較例1は初期から帯電量が高く、同時に画像濃度が低くなっていた。これは水コンテナ30を設置しなかったために湿度が低いままとなり、トナーがチャージアップした結果と考えられる。また、比較例2において水コンテナ30を設置せずに実施した比較例3は、初期より画像濃度が低めで帯電量が高めであり、画像形成枚数が多くなるとそれがより顕著になった。
【0043】
次に図3に示した温度35℃、湿度90%の高温・高湿環境の場合であるが、この場合も水コンテナ30を設置した評価実施例1、評価実施例2は、このような高温・高湿環境の場合でも問題が生じなかった。
【0044】
それに対し、トナーは評価実施例1と同じものを用いたが、水コンテナ30を設置せずに実施した比較例1は低温・低湿環境においてチャージアップが発生したため実施しなかったが、トナーを構成する磁性粉を8面体磁性粉として水コンテナ30を設置した比較例2、また、比較例2において水コンテナ30を設置せずに実施した比較例3は、10万枚の段階で帯電量が低下して画像濃度が低下し、20万枚では更に低下してトナー飛散が生じた。これは8面体磁性粉を用いたために高湿環境によって放電が進んだためと考えられる。
【0045】
このように、球形磁性粉を用いてトナーを構成すると共に水コンテナ30を設け、低温・低湿環境においては加湿を行うことでチャージアップを防止し、高温・高湿環境に対しては球形磁性粉が持つ放電しにくい特性を利用して帯電の低下を防ぐことで、高温・高湿環境においても帯電不足に起因するトナー飛散を起こさず、低温・低湿環境においてもトナー帯電量上昇に起因する画像濃度低下を起こさない、長期に渡って高画質を保ちながら画像形成できる画像形成装置における現像装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、低温・低湿環境、高温・高湿環境のいずれにおいても高画質を保った画像形成を行うことができ、温度35℃、湿度90%が日常的にある東南アジアなどにおいても国内と同様な画質の画像形成を行うことのできる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明になる画像形成装置における現像装置の概略断面図である。
【図2】本発明になる画像形成装置における現像装置の実施例1を用い、温度5℃、湿度10%の低温・低湿環境で条件を変えながら、20万枚の画像形成をしたときの画像濃度とトナーの帯電量を調べた結果を示す表である。
【図3】本発明になる画像形成装置における現像装置の実施例1を用い、温度35℃、湿度90%の高温・高湿環境で条件を変えながら、20万枚の画像形成をしたときの画像濃度とトナーの帯電量を調べた結果を示す表である。
【符号の説明】
【0048】
10 感光体
20 現像装置
21 現像装置筐体
22 現像剤担持体(現像ローラ)
23 攪拌部材
24 攪拌部材
25 仕切り板
26 湿度センサ
27 トナーコンテナ
28 トナー補給ローラ
30 水コンテナ
31 駆動ローラ
32 従動ローラ
33 スポンジローラ
34 通気口
35 水
36 攪拌ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状回転スリーブ内部に固定磁石を有して電子写真方式で静電潜像が形成される感光体に対面し、現像剤を担持して前記静電潜像を現像する現像剤担持体と、前記現像剤を攪拌して前記現像剤担持体に搬送する攪拌手段と、湿度測定手段と、加湿手段と、を備えた画像形成装置における現像装置において、
前記加湿手段は、片側が水に浸漬されて前記湿度測定手段の測定結果で周回するベルト状攪拌手段を有し、上部の通気口を通して現像装置内への加湿を行うよう構成され、
前記現像剤は磁性1成分現像剤であり、配合された磁性粉が球形磁性粉であることを特徴とする画像形成装置における現像装置。
【請求項2】
前記加湿手段は、前記ベルト状攪拌手段におけるベルト部に当接し、搬送される水分を吸収しながら回転するスポンジローラを有していることを特徴とする請求項1に記載した画像形成装置における現像装置。
【請求項3】
前記湿度測定手段は、前記現像剤攪拌手段で攪拌される現像剤の湿度を測定する位置に配されていることを特徴とする請求項1または2に記載した画像形成装置における現像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−58540(P2009−58540A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223044(P2007−223044)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】