説明

画像形成装置及び画像形成方法

【課題】複数色のトナーを用いて、トナー像を形成し、逐次中間転写媒体上にカラー画像を形成する画像形成装置において、転写効率の高い画像の形成が可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】潜像担持体上に静電潜像を形成し、黒あるいは複数色のトナーを用いて色重ねによりカラー画像を形成する画像形成装置において、少なくとも仕事関数が最も大きなトナーから中間転写媒体上に転写される画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものであり、とくに複数色のトナーを用いて像担持体上にトナーを画像を逐次形成し、転写電圧を印加して画像を中間転写媒体に転写した後に、紙等の記録材上に画像を転写する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カラー画像を形成する画像形成装置に各種のものが知られているが、潜像担持体上に複数色のトナーによって逐次可視化されたトナー像を形成し、中間転写媒体上に転写電圧を印加して色重ねされたカラー画像を形成した後に、紙等の記録材上に一括して転写を行い、加熱、加圧等によってトナーを軟化させて、記録材上にトナー像を定着することによってカラー画像を形成する画像形成装置が知られている。
【0003】
また、形成されるカラー画像を高精細度化し、トナーの使用量を減少させるために、粒径の小さなトナーを用いることが行われている。
ところが、トナーを小粒径化すると、トナーの流動性が低下することにより、現像ローラ表面や規制ブレードとの摩擦帯電が困難になる結果、充分な電荷を付与できなかった。その為に、トナーに帯電量分布が存在し、負帯電用トナーであっても正に帯電したトナーを含有することは避けきれず、その結果、像担持体上の非画像部にカブリを生じた。また、カブリを抑えるために、非磁性一成分現像においては、規制圧を高くすることが知られているが、トナーが過帯電になり、現像時のトナー濃度が低くなったり、転写効率が低くなる傾向にあった。そこで、現像ローラ上の規制後の付着トナー量を適正な範囲とすることが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、小粒径トナーを用い、帯電性と画質の粒状性の向上のため、各色トナーの被記録材に対する最大付着量を所定の大きさとすることが提案されている(例えば、特許文献2)。
しかしながら、これに記載の方法では、トナーを均一に熱定着をする低温定着性の向上には効果的であるが、トナーの転写効率については不十分なものであった。
また、感光体上に形成された潜像を、イエロー、マゼンタ、シアンのカラートナー、及び黒トナーで現像し、各トナー像を中間転写媒体に転写した後に、黒トナ一による現像像を中間転写体上に一次転写して重ね合わせてから、他の記録材へ二次転写するフルカラー画像形成方法が提案されている(例えば、特許文献3)。
【0005】
しかしながら、中間転写媒体が一次転写の繰り返しにより帯電することがなく、最後に現像および一次転写される黒トナーの転写効率が良くなることが記載されているが、トナーの転写効率については不十分なものであった。
また、最初に黒トナーを、次いでイエロー、マゼンタ、シアンのカラートナーで現像することで、黒トナーに他の色トナーが混色することなく、黒色トナーのみのリサイクルが可能なカラー画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献4)。しかしながら、この場合にも、トナーの紙への転写効率は不充分なものであった。
【0006】
また、中間転写媒体を介して記録材の両面にトナー像を形成するとともに、イエロー、マゼンタ、シアン、黒からなるカラートナー像の重ね合わせ順が、最初と最後がシアンと黒、その間がイエローとマゼンタとするカラー画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献5)が、トナーの転写効率は不充分なものであった。
【0007】
また、帯電量の小さいトナーから現像することが提案されており(例えば、特許文献6)、更に、転写効率を高める為に、トナーの色毎に転写電圧を高くすることが提案されている(例えば、特許文献7)。
また、最下層のトナーの転写効率が大きくなるように転写電圧を設定することが提案されており(例えば、特許文献8)、トナーの色を最初と最後がシアンと黒、その間がイエローとマゼンタとすることが提案されている(例えば、特許文献9)。
また、シアン、イエロー、マゼンタ、黒の順で現像することが提案されている(例えば、特許文献10)。
【0008】
また、複数色のトナーを使用して重ね画像を形成する場合には、2色目以降のトナーは、先に形成したトナー上にトナー像を形成することが必要であり、先に形成したトナー像上に安定したトナー像を形成することが求められていた。
【0009】
重ね形成されたトナー像が先に形成されたトナー上、あるいは中間調の場合には、先に形成されたトナーに隣接した位置に正確に形成されないと、所望の色調の画像形成が困難であったり、あるいはトナーの飛び散りが発生し、画像品質が低下があった。
また、形成されたトナー像を定電圧電源によって転写電圧を印加して中間転写媒体に転写しようとすると、すべてのトナー画像が正確に転写されなかったり、大きな転写電圧を印加することが必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−194943号公報
【特許文献2】特開2002−131973号公報
【特許文献3】特開平8−248779号公報
【特許文献4】特開20002−06755号公報
【特許文献5】特開20002−31933号公報
【特許文献6】特開平10−207164号公報
【特許文献7】特開平10−260563号公報
【特許文献8】特開平5−27548号公報
【特許文献9】特開平2002−231933号公報
【特許文献10】特開平5−307310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、潜像担持体上に形成された静電潜像を、黒トナーあるいは複数色のカラートナーを用いて、色重ねした画像を形成した後に、中間転写媒体または記録材に画像を転写して定着する画像形成装置において、黒トナーとその他のカラートナーとの機能の違いに着目すると共に、色重ねされるトナーが中間転写または記録材に対して転写される際に、定着工程を経てカラー画像を形成する画像形成装置において、転写されたトナー像がずれたりすることなく高い転写効率でカラー画像を転写することが可能であり、感光体上の転写残りトナー量が少なく、形成される画像特性が優れる画像形成装置を提供することを課題とするものである。
また、本発明は、感光体上に複数色のトナーを用いて、逐次トナー像を、中間転写媒体上に転写電圧を印加して色重ねしてカラー画像を形成させた後に、紙、合成樹脂フィルム等の記録材に一括して転写し、定着工程を経てカラー画像を形成する画像形成装置において、転写されたトナー像がずれたりすることなく高い転写効率でカラー画像を転写することが可能であり、感光体上の転写残りトナー量が少なく、形成される画像特性が優れる画像形成装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の課題は、潜像担持体上に静電潜像を形成し、黒あるいは複数色のトナーを用いて色重ねによりカラー画像を形成する画像形成装置において、少なくとも仕事関数が最も大きなトナーから中間転写媒体もしくは記録材上に転写される画像形成装置とすることによって解決するものである。
【0013】
また、中間転写媒体上に逐次トナー像を形成し、形成されたトナー像を一括して記録材上に転写した後に定着する前記の画像形成装置である。
複数色の現像器を仕事関数の大きいトナー順に現像するように配置して、画像を形成した後に、逐次、定電圧電源から供給される転写電圧によって、中間転写媒体に転写した前記の画像形成装置である。
潜像担持体上の転写残りトナーを除去するクリーナを備えていない前記の画像形成装置である。
【0014】
潜像担持体と同極性のトナーの平均帯電量の絶対値が16μC/g以下であり、現像後の潜像担持体上のトナーおよび記録材上に転写されたトナーに含まれる感光体上の静電潜像と逆極性のトナーの個数を5%以下とした前記の画像形成装置である。
このように、潜像担持体上に形成された静電潜像を仕事関数の大きなトナーから順に現像し、逐次定電圧電源から供給される転写電圧によって、トナー画像を中間転写媒体上に転写して、カラー画像を形成する画像形成装置によって、像担持体上に残留する転写残りトナーが少なく、また転写されるトナー画像は、先に転写されたトナー画像上に正確に画像形成され、優れたカラー画像を形成することができる。
したがって、本発明の画像形成装置は、潜像担持体上に残留するトナーが少ないので、潜像担持体上に残留するトナーを除去するクリーナーおよびクリーナーによって除去されたトナーを集めるための廃トナー収容手段を設ける必要がなく、装置の小型化を行うことができると共に保守も簡単なものとなる。
【0015】
画像形成される像担持体が有機感光体である前記の画像形成装置である。
負帯電トナー、および反転現像器を用いた前記の画像形成装置である。
潜像担持体上に現像されたトナー量が0.55mg/cm2以下に規制された非磁性一成分トナーを用いた前記の画像形成装置である。
このように、現像による潜像担持体上の付着トナー量を0.55mg/cm2以下とすることで、記録材への一次転写電圧を低く押さえることが可能となり、その結果、記録材と潜像担持体間の1次転写時の非画像部への放電を抑制することができ、転写トナー画像の飛び散りや飛散の防止が可能となる。この効果は、仕事関数の大きいトナーより順に現像することで1次転写電圧をより低くでき、高品質のカラートナー像を得ることができる。
潜像担持体と現像ローラの周速比が、少なくとも1.1ないし2.5である前記の画像形成装置である。
【0016】
また、潜像担持体上に静電潜像を形成し、黒あるいは複数色のトナーを用いて色重ねによりカラー画像を形成する画像形成装置に用いるトナーにおいて、少なくとも仕事関数が最も大きなトナーから中間転写媒体に転写されるとともに、少なくとも疎水性の二酸化ケイ素粒子と疎水性二酸化チタンを流動性改良剤として含有するトナーである。
複数色の現像器を仕事関数の大きいトナー順に現像するように配置して、画像を形成した後に、逐次、定電圧電源から供給される転写電圧によって、中間転写媒体に転写される前記のトナーである。
【0017】
トナーは、トナー粒子の投影像の測定によって求めたトナー粒子の投影像の周囲長(μm)L1と、トナー粒子の投影像の面積に等しい真円の周囲長(μm)L0との比、L0/L1で表される円形度が0.94以上である前記のトナーである。
個数基準の平均粒子径が4.5〜9μmであるトナーである前記のトナーである。
トナーは重合性有機化合物のモノマー、オリゴマーの少なくともいずれかを、着色剤を含有させて重合をすることによって形成したものである前記のトナーである。
【0018】
本発明の画像形成装置では各色トナーの転写効率が上がる結果、潜像担持体上の転写残りトナーが激減する。その結果、クリーニング負荷低減による潜像担持体の磨耗減少とクリーニングトナー量が減少することによるクリーニングトナーを収容する容器の容量を従来より極端に小さくできたので、画像形成装置自体の小型化が可能となる。
【0019】
本発明においては、定電圧転写によって、中間転写媒体上に複数色のトナーを色重ねした後に、紙等の記録材に転写する画像形成装置において、複数色のトナーを仕事関数が大きな順に重ねて、中間転写媒体上に現像、転写を逐次行うことによって、色重ねされたトナーは確実に重なりあうので、色再現性に優れた高画質の画像形成が可能となるとともに転写効率が向上する。
その結果、感光体上に残留する転写残りトナーの量を減少あるいは実質的に無視できる量とすることができるので、潜像担持体から転写残りトナーとして回収されるトナー量を減少させ、廃トナー容器をより小さくしたり、あるいはクリーニング手段および廃トナー容器を不要とすることができるので、画像形成装置の小型化も可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】黒トナーとその他の複数色のトナーによる画像形成を説明する図である。
【図2】本発明の画像形成装置を説明する図である。
【図3】本発明の画像形成装置を説明する図である。
【図4】本発明の他の例の画像形成装置を説明する図である。
【図5】本発明の他の例の画像形成装置を説明する図である。
【図6】本発明の他の例の画像形成装置を説明する図である。
【図7】仕事関数の測定に使用する試料測定セルを説明する図である。
【図8】仕事関数の測定方法を説明する図である。
【図9】本発明の中間転写媒体上に重ね合わされたトナーを説明する図である。
【図10】かぶりトナーと逆転写トナーの発生原因となる正帯電トナーの挙動を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、像担持体上の静電潜像を黒トナーあるいは複数色のカラートナーとの色重ねによって画像に形成して、記録材上に画像を転写する画像形成装置において、少なくとも仕事関数が最も大きいトナーから中間転写媒体に転写することによって、転写効率の大きな画像の形成が可能な画像形成装置を得ることができることを見出したものである。
また、本発明は、像担持体上の静電潜像を複数色のトナーによって、逐次現像して、定電圧転写電圧によって、中間転写媒体に転写する画像形成装置において、複数色のトナーの現像順序を、先に現像されたトナーの仕事関数よりも、仕事関数が小さなトナーとすることによって、転写効率の大きな画像の形成が可能な画像形成装置を得ることができることを見出したものである。
【0022】
本発明におけるトナー、潜像担持体の仕事関数について説明する。
物質の仕事関数(Φ)は、その物質から電子を取り出すために必要なエネルギーとして知られており、仕事関数が小さいほど電子を放出しやすく、大きい程電子を出しにくい。そのため、仕事関数の小さい物質と大きい物質を接触させると、仕事関数の小さい物質は正に、仕事関数の大きい物質は負に帯電する。
仕事関数は下記の測定方法により測定されるものであり、その物質から電子を取り出すためのエネルギー(eV)として数値化され、種々の物質からなるトナーと画像形成装置における種々の部材との接触による帯電性を評価しうるものである。
【0023】
仕事関数(Φ)は、表面分析装置(理研計器製 AC−2、低エネルギー電子計数方式)を使用して測定される。本発明にあっては、該装置において、重水素ランプを使用し、照射光量500nWに設定し、分光器により単色光を選択し、照射面積を4mm角とし、エネルギー走査範囲3.4〜6.2eV、測定時間10sec/1個所で試料に照射する。そして、試料表面から放出される光電子を検出して求めたものであり、仕事関数に関しては、繰り返し精度(標準偏差)0.02eVで測定されるものである。なお、データ再現性を確保するための測定環境としては、使用温湿度25℃、55%RHの条件下で、24時間放置品を測定試料とした。
【0024】
図1は、黒トナーとその他の複数色のトナーによる画像形成を説明する図である。
黒トナーBkによって画像形成が行われる場合には、図1(A)に示すように、複数色のトナーの加色によって黒色を形成する場合に、更に黒トナーBkを色重ねする場合、あるいは図1(B)、図1(C)、図1(D)、図1(E)等に示すように、他の色のトナーによって形成された画像上に黒トナーBkを色重ねしてコントラストの向上等を行う場合がある。
【0025】
また、図1(F)に示すように、文字情報を主とした画像の場合には、他の複数色のトナーを使用することなく、黒トナーBkのみで画像を形成する場合がある。
このように、黒トナーBkは、他の複数色のトナー画像とは使用形態が異なり、複数色の色重ねを行う場合にも、黒トナーは色重ねに使用されない場合も数多く存在している。
黒トナーとその他の複数色のカラートナーを使用して色重ねを行って画像形成を行う場合には、少なくとも仕事関数が最も大きなトナーから画像形成して記録材上に転写することによって、先に転写されたトナー画像上に正確に画像形成され、優れたカラー画像を形成することができることを見出したものである。
【0026】
図2は、本発明の画像形成装置を説明する図である。
図2は、本発明のトナーを用いた画像形成装置における接触現像方式の一例を示すものであるが、感光体1は直径24〜86mmで表面速度60〜300mm/sで回転する感光体ドラムで、コロナ帯電器2によりその表面が均一に負帯電された後、記録すべき情報に応じた露光3が行われることにより、静電潜像が形成される。
【0027】
現像器10は、一成分現像装置であり、有機感光体上に一成分非磁性トナーTを供給することで有機感光体における静電潜像を反転現像し、可視像化するものである。現像手段には、一成分非磁性トナーTが収納されており、図示のごとく反時計方向で回転するトナー供給ローラ7によりトナーを現像ローラ9に供給する。現像ローラ9は反時計方向に回転し、トナー供給ローラ7により搬送されたトナーTをその表面に保持した状態で有機感光体との接触部に搬送し、有機感光体1上の静電潜像を可視像化する。
【0028】
現像ローラ9は、例えば直径16〜24mmで、金属製管にめっきやブラスト処理したローラ、あるいは中心軸周面にブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等からなる体積抵抗値104〜108Ω・cm、硬度が40〜70°(アスカーA硬度)の導電性弾性体層が形成されたもので、この管の軸等を介して図示しない電源より現像バイアス電圧が印加される。また、現像ローラ9、トナー供給ローラ7、トナー規制ブレード8からなる現像器10は、図示しないばね等の付勢手段により有機感光体に押圧力19.6〜98.1N/m、好ましくは24.5〜68.6N/mで、ニップが幅1〜3mmとなるように圧接されるとよい。
【0029】
規制ブレード8としてはステンレス、リン青銅、ゴム板、金属薄板にゴムチップの貼り合わせたもの等が使用されるが、現像ローラに対して図示しないばね等の付勢手段により、あるいは弾性体としての反発力を利用して線圧245〜490mN/cmで押圧され、現像ローラ上のトナー層厚を略1層から2層とすると良い。
接触現像方式にあっては、感光体の暗電位としては−500〜−700V、明電位としては−50〜−150V、図示していないが現像バイアス電圧としては−100〜−400Vとすると良く、現像ローラとトナー供給ローラとは同電位とすると良い。
接触現像方式にあっては、反時計方向に回転する現像ローラの周速を、時計方向に回転する有機感光体に対して1.1〜2.5、好ましくは1.2〜2.2の周速比とするとよく、これにより、小粒径のトナー粒子であっても、有機感光体との接触摩擦帯電を確実にできる。
【0030】
また、規制ブレード、現像ローラにおけるそれぞれの仕事関数と、トナーの仕事関数との関係に格別の制限はないが、好ましくは規制ブレード、現像ローラにおけるそれぞれの仕事関数をトナーの仕事関数より小さくして、規制ブレードと接触するトナーを負に接触帯電させておくことにより、より均一な負帯電トナーとできる。また、規制ブレード8に電圧を印加してブレードに接触するトナーへ電荷注入してトナー帯電量を制御してもよい。
【0031】
次に、本発明の画像形成装置における中間転写媒体について説明する。図2において、中間転写媒体4は、感光体1とバックアップローラ6との間に送られ、電圧が印加されることにより、感光体1上の可視像が中間転写媒体上に転写され、中間転写媒体上にトナー画像が形成される。感光体上に残留するトナーは、クリーニングブレード5により除去され、感光体上の静電荷は消去ランプにより消去され、感光体は再使用に供せられる。
本発明の画像形成装置にあっては逆帯電トナーを抑制できるので、感光体上に残留するトナー量を少なくでき、クリーニングトナー容器を小さくできる。
更には、所定の条件のもとでは、クリーニングを必要としないので、クリーニングブレード5あるいはクリーニングトナー容器が不要ないわゆるクリーナーレスの画像形成装置を提供することができる。
【0032】
中間転写媒体を転写ドラムや転写ベルトとする場合には、その導電性層に一次転写電圧として+250〜+600Vの電圧が印加され、また、紙等の記録材への二次転写に際しては、二次転写電圧として+400〜+2800Vの電圧が印加されるとよい。
中間転写媒体として、転写ベルトまたは転写ドラムを用いることができる。
転写ベルトとしては、合成樹脂製の基体からなるフィルムやシート上に転写層を設けるものであり、他方は弾性体の基層上に表層である転写層を設けるものである。また、転写ドラムとしては、感光体が剛性のあるドラム、例えばアルミニウム製のドラム上に有機感光層を設けた場合には、転写媒体としてはアルミニウム等の剛性のあるドラム基体上に弾性の表層である転写層を設けるものである。また、感光体の支持体がベルト状、あるいはゴム等の弾性支持体上に感光層を設けたいわゆる弾性感光体である場合には、転写媒体としてはアルミニウム等の剛性のあるドラム基体上に直接あるいは導電性中間層を介して転写層を設けるとよい。
【0033】
基体としては、導電性あるいは絶縁性基体が使用可能である。転写ベルトの場合には、体積抵抗104〜1012Ω・cm、好ましくは106〜1011Ω・cmの範囲が好ましい。
フィルムおよびシートに適する材質と作製方法としては、変性ポリイミド、熱硬化ポリイミド、ポリカーボネート、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ナイロンアロイ等のエンジニアリングプラスチックに導電性カーボンブラック、導電性酸化チタン、導電性酸化スズ、導電性シリカ等の導電材料を分散した厚さ50〜500μmの半導電性フィルム基体を押し出し、あるいは成形でシームレス基体とし、その外側にさらに表面エネルギーを下げ、トナーのフィルミングを防止する表面保護層として厚さ5〜50μmのフッ素樹脂被覆を行ったシームレスベルトである。
【0034】
表面保護層の形成方法としては、浸漬コーティング法、リングコーティング法、スプレーコーティング法等を用いることができる。なお、転写ベルトの両端部には転写ベルトの端部での亀裂や伸び、および蛇行防止のために、膜厚80μmのポリエチレンテレフタレートフイルム等のテープやウレタンゴム等のリブを貼り付けて使用する。
フィルムまたはシートで基体を作製する場合には、ベルト状とするために端面を超音波溶着を行うことで、ベルトを作製することができ、具体的にはシート、またはフィルム上に導電性層並びに表面層を設けてから、超音波溶着を行うことにより所望の物性を有する転写ベルトを作製することができる。より具体的には基体に厚さ60〜150μmのポリエチレンテレフタレートを絶縁性基体として用いた場合には、その表面にアルミニウム等を蒸着し、あるいはさらにカーボンブラック等の導電材料と樹脂からなる中間導電性層を塗工し、その上にそれより高い表面抵抗を有するウレタン樹脂、フッ素樹脂、導電性材料からなる半導電性表面層を設けて転写ベルトとすることができる。塗工後の乾燥時に熱をさほど必要としない抵抗層を設けることができる場合には、先にアルミニウム蒸着フィルムを超音波溶着させてから上記の抵抗層を設け、転写ベルトを作製することも可能である。
【0035】
ゴム等の弾性基体に適する材質と作製方法としては、シリコーンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム等に上記の導電材料を分散した厚さ0.8〜2.0mmの半導電性ゴムベルトを押出し成形で作製後、表面をサンドペーパーやポリシャー等の研磨材により所望の表面粗さに制御する。このときの弾性層をこのままで使用してもよいが、さらに上記と同じようにして表面保護層を設けることができる。
転写ドラムの場合には、体積抵抗104〜1012Ω・cm、好ましくは107〜1011Ω・cmの範囲が好ましい。転写ドラムはアルミニウム等の金属円筒上に必要により弾性体の導電性中間層を設けて導電性弾性基体とし、さらにその上に表面エネルギーを下げ、トナーのフィルミングを防止する表面保護層として半導電性の厚さ5〜50μmの、例えばフッ素樹脂被覆を形成して作製することができる。
【0036】
導電性弾性基体としては、例えばシリコンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム等のゴム材料に、カーボンブラック、導電性酸化チタン、導電性酸化スズ、導電性シリカ等の導電材料を配合、混練、分散した導電性ゴム素材を、直径が90〜180mmのアルミニウム円筒に密着成形して、研磨後の厚さが0.8〜6mmで、体積抵抗が104〜1010Ω・cmとするとよい。次いでウレタン樹脂、フッ素樹脂、導電材料、フッ素系樹脂微粒子からなる半導電性の表面層を膜厚約15〜40μm設けて、所望の体積抵抗107〜1011Ω・cmを有する転写ドラムとすることができる。このときの表面粗さは1μm(Ra)以下が好ましい。また、別の例としては上記のように作製した導電性弾性基体の上にフッ素樹脂等の半導電性のチューブを被せて、加熱により収縮させて所望の表面層と電気抵抗を有する転写ドラムを作製することも可能である。
【0037】
次に、図3は、本発明のトナーを使用した画像形成装置における非接触現像方式の一例を示すものである。この方式にあっては、現像ローラ9と感光体1とを現像ギャップdを介して対向させるものである。現像ギャップとしては100〜350μmとすると良く、また、図示しないが直流電圧の現像バイアスとしては−200〜−500Vであり、これに重畳する交流電圧としては1.5〜3.5kHz、P−P電圧1000〜1800Vの条件とすると良い。また、非接触現像方式にあって、反時計方向に回転する現像ローラの周速としては、時計方向に回転する有機感光体に対して1.1〜2.5、好ましくは1.2〜2.2の周速比とするとよい。
【0038】
現像ローラ9は図示のごとく反時計方向に回転し、トナー供給ローラ7により搬送されたトナーTをその表面に吸着した状態で有機感光体との対向部にトナーTを搬送するが、有機感光体と現像ローラとの対向部において、交流電圧を重畳して印加することにより、トナーTは現像ローラ表面と有機感光体表面との間で振動することにより現像される。本発明にあっては、交流電圧の印加により現像ローラ表面と有機感光体表面との間でトナーTが振動する間にトナー粒子と感光体とを接触させることができるので、小粒径の正帯電トナーを負に帯電させることができ、カブリを減少させることができるものと考えられる。
【0039】
また、中間転写媒体は、可視像化された感光体1とバックアップローラ6との間に送られるが、バックアップローラ6による感光体1への押圧力を、接触現像方式に比して3割程度高くして24.5〜58.8mN/m、好ましくは34.3〜49N/mとすると良い。
これにより、トナー粒子と感光体との接触を確実なものとすることができ、トナー粒子をより負帯電化して転写効率を向上できる。
なお、非接触現像方式における上記以外の事項は、上述した接触現像方式と同様であり、本発明の画像形成装置においては、クリーナーブレード5を有しないものとすることができる。
図2、図3で示す現像プロセスをイエローY、シアンC、マゼンタM、ブラックKからなる4色のトナー(現像剤)による現像器と感光体を組み合わせればフルカラー画像を形成することのできる装置となる。
【0040】
次に、本発明の負帯電乾式トナーが適用される画像形成装置について説明する。
図4は4サイクル方式のフルカラープリンターの一例を説明する図である。
図4において、100は像担持体ユニットが組み込まれた像担持体カートリッジである。この例では、感光体カートリッジとして構成されていて、感光体と現像部ユニットが個別に装着できるようになっており、電子写真感光体(潜像担持体)140が図示しない適宜の駆動手段によって図示矢印方向に回転駆動される。感光体140の周りにはその回転方向に沿って、帯電手段として帯電ローラ160、現像手段としての現像器10Y、10M、10C、10K、中間転写装置30、およびクリーニング手段170が配置される。
なお、本発明においては、クリーニング手段170を取り除いたクリーナーレス方式の画像形成装置とすることができる。
【0041】
帯電ローラ160は、感光体140の外周面に当接してその外周面を一様に帯電させる。一様に帯電した感光体140の外周面には露光ユニット40によって所望の画像情報に応じた選択的な露光L1がなされ、この露光L1によって感光体140上に静電潜像が形成される。この静電潜像は現像器10によって現像剤が付与されて現像される。
現像器としてイエロー用の現像器10Y、マゼンタ用の現像器10M、シアン用の現像器10C、およびブラック用の現像器10Kが設けられている。これら現像器10Y、10C、10M、10Kはそれぞれ揺動可能に構成されており、選択的に一つの現像器の現像ローラ9のみが感光体140に圧接されるように構成されている。これらの現像器10は、負帯電トナーを現像ローラ上に保持しているものであり、これらの現像器10はイエローY、マゼンタM、シアンC、ブラックKのうちのいずれかのトナーを感光体140の表面に付与して感光体140上の静電潜像を現像する。現像ローラ9は硬質のローラ、例えば表面を粗面化した金属ローラで構成されている。現像されたトナー像は、中間転写装置30の中間転写ベルト36上に転写される。クリーニング手段170は、上記転写後に感光体140の外周面に付着しているトナーを掻き落とすクリーナブレードと、このクリーナブレードによって掻き落とされたトナーを受けるクリーニングトナー回収部とを備えている。
【0042】
中間転写装置30は、駆動ローラ31と、4本の従動ローラ32、33、34、35と、これら各ローラの周りに張架された無端状の中間転写ベルト36とを有している。駆動ローラ31は、その端部に固定された図示しない歯車が感光体140の駆動用歯車とかみ合っていることによって感光体140とほぼ同一の周速で回転駆動され、したがって中間転写ベルト36が感光体140とほぼ同一の周速で図示矢印方向に循環駆動されるようになっている。
【0043】
従動ローラ35は駆動ローラ31との間で中間転写ベルト36がそれ自身の張力によって感光体140に圧接される位置に配置されており、感光体140と中間転写ベルト36との圧接部において、一次転写部T1が形成されている。従動ローラ35は、中間転写ベルトの循環方向上流側において一次転写部T1の近くに配置されている。
駆動ローラ31には中間転写ベルト36を介して図示しない電極ローラが配置されており、この電極ローラを介して中間転写ベルト36の導電性層に一次転写電圧が印加される。従動ローラ32は、テンションローラであり、図示しない付勢手段によって中間転写ベルト36をその張り方向に付勢している。従動ローラ33は二次転写部T2を形成するバックアップローラである。このバックアップローラ33には中間転写ベルト36を介して二次転写ローラ38が対向配置されている。二次転写ローラには二次転写電圧が印加され、図示しない間隔調整機構により中間転写ベルト36に対して間隔が調整可能に構成されている。従動ローラ34はベルトクリーナ39のためのバックアップローラである。ベルトクリーナ39は図示しない間隔調整機構により中間転写ベルト36に対して間隔調整可能に構成されている。
【0044】
中間転写ベルト36は、導電層とこの導電層上に形成され、感光体140に圧接される抵抗層とを有する複層ベルトで構成されている。導電層は合成樹脂からなる絶縁性基体の上に形成されており、この導電層に前述した電極ローラを介して一次転写電圧が印加される。なお、ベルト側縁部において、抵抗層が帯状に除去されることによって導電層が帯状に露出し、この露出部に電極ローラが接触するようになっている。
中間転写ベルト36が循環駆動される過程で、一次転写部T1において、感光体140上のトナー像が中間転写ベルト36上に転写され、中間転写ベルト36上に転写されたトナー像は、二次転写部T2において、二次転写ローラ38との間に供給される用紙等の記録材Sに転写される。記録材Sは、給紙装置50から給送され、ゲートローラ対Gによって所定のタイミングで二次転写部T2に供給される。51は給紙カセット、52はピックアップローラである。
【0045】
定着装置60でトナー像が定着され、排紙経路70を通って装置本体の筐体80上に形成されたシート受け部81上に排出される。なお、この画像形成装置は、排紙経路70として互いに独立した2つの排紙経路71、72を有しており、定着装置60を通ったシートはいずれかの排紙経路71又は72を通って排出される。また、この排紙経路71、72はスイッチバック経路をも構成しており、シートの両側に画像を形成する場合には排紙経路71又は72に一旦、進入したシートが、返送ローラ73を通って再び二次転写部T2に向けて給紙されるようになっている。
【0046】
以上のような画像形成装置全体の作動の概要は次の通りである。
(1)図示しないパーソナルコンピュータ等から画像情報が画像形成装置の制御部90に送信されると、感光体140、現像器10の各ローラ9、および中間転写ベルト36が回転駆動される。
(2)感光体140の外周面が帯電ローラ160によって一様に帯電される。(3)一様に帯電した感光体140の外周面に、露光ユニット40によって第1色目(例えばイエロー)の画像情報に応じた選択的な露光L1がなされ、イエロー用の静電潜像が形成される。
【0047】
(4)感光体140には、第1色目の例えばイエロー用の現像器10Yの現像ローラのみが接触し、これによって上記静電潜像が現像され、第1色目のイエローのトナー像が感光体140上に形成される。
(5)中間転写ベルト36には、上記トナーの帯電極性と逆極性の一次転写電圧が印加され、感光体140上に形成されたトナー像が一次転写部T1において中間転写ベルト36上に転写される。このとき、二次転写ローラ38およびベルトクリーナ39は中間転写ベルト36から離間している。
【0048】
(6)感光体140上に残留しているトナーがクリーニング手段170によって除去された後、除去手段41から除電光L2によって感光体140が除電される。
(7)上記(2)〜(6)の動作に必要に応じて繰り返される。すなわち、上記印字指令信号に応じて第2色目、第3色目、第4色目と繰り返され、上記印字指令信号の内容に応じたトナー像が中間転写ベルト36上において重ね合わされて形成される。
【0049】
(8)所定のタイミングで給紙装置50から記録材Sが給送され、記録材Sの先端が二次転写部T2に達する直前あるいは達した後に、すなわち記録材S上の所望の位置に、中間転写ベルト36上のトナー像が転写されるタイミングで、二次転写ローラ38が中間転写ベルト36上のトナー像、すなわち4色のトナー像が重ね合わせられたフルカラー画像が記録材S上に転写される。また、ベルトクリーナ39が中間転写ベルト36に当接し、二次転写後に中間転写ベルト36上に残留しているトナーが除去される。
(9)記録材Sが定着装置60を通過することによって記録材S上のトナー像が定着し、その後、記録材Sが所定の位置に向け(両面印刷でない場合にはシート受け部81に向け、両面印刷の場合にはスイッチバック経路としての作用も有する排紙経路71または72を経て返送ローラ73に向け)搬送される。
本発明に係る画像形成装置では、感光体140には現像ローラ9、中間転写媒体36を当接状態としてもよく、また、現像を非接触方式としてもよい。
【0050】
同様に、本発明に使用するタンデム方式のフルカラープリンターの概略正面図を図5に示す。この場合には、感光体と現像部ユニットが同一のユニットすなわち、プロセスカートリッジとして装着できるように構成されており、現像は接触方式の例であるが、非接触方式も採用できる。
【0051】
この画像形成装置は、駆動ローラ11、従動ローラ12の2本のローラのみ張架されて図示矢印方向(反時計方向)に循環駆動される中間転写ベルト30と、この中間転写ベルト30に対して配置された4個の単色トナー像形成手段20Y、20C、20M、20Kとを備え、中間転写ベルト30に対して複数個の単色トナー像形成手段20によるトナー像が個別の転写手段13、14、15、16で順次一次転写されるように構成される。それぞれの一次転写部をT1Y、T1C、T1M、T1Kで示す。
【0052】
単色トナー像形成手段は、イエロー用のもの20Yと、マゼンタ用のもの20Mと、シアン用のもの20Cと、ブラック用のもの20Kとが配置されている。これらの単色トナー像形成手段20Y、20C、20M、20Kはそれぞれ外周面に感光層を有する感光体21と、この感光体21の外周面を一様に帯電させる帯電手段としての帯電ローラ22と、この帯電ローラ22より一様に帯電させられた外周面を選択的に露光して静電潜像を形成する露光手段23と、この露光手段23により形成された静電潜像に現像剤あるトナーを付与して可視像(トナー像)とする現像手段としての現像ローラ24と、この現像ローラ24により現像されたトナー像が一次転写対象である中間転写ベルト30に転写された後に感光体21の表面に残留しているトナーを除去するクリーニング手段としてのクリーニングブレード25とを有している。
【0053】
これら単色トナー像形成手段20Y、20C、20M、20Kは中間転写ベルト30の弛み側に配置されている。中間転写ベルト30に順次一次転写され、中間転写ベルト30上で順次重ね合わされてフルカラーとなったトナー像は、二次転写部T2において用紙等の記録材の記録材Sに二次転写され、定着ローラ対61を通ることで記録材の記録材S上に定着され、排紙ローラ対62によって所定の場所、すなわち図示しない排紙トレイ上等へ排出される。51は記録材の記録材Sが積層保持されている給紙カセット、52は給紙カセット51から記録材Sを一枚ずつ給送するピックアップローラ、Gは二次転写部T2へのシートSの給紙タイミングを規定するゲートローラ対である。
【0054】
また、63は中間転写ベルト30との間で二次転写部T2を形成する二次転写手段としての二次転写ローラ、64は二次転写後に中間転写ベルト30の表面に残留しているトナーを除去するクリーニング手段としてのクリーニングブレードである。二次転写後のクリーニングブレード64は、従動ローラ12にではなく駆動ローラ11への中間転写ベルト30の巻きかけ部において中間転写ベルト30に当接している。
【0055】
同様に、本発明のタンデム方式の他のフルカラープリンターの概略正面図を図6に示す。
図6に示す本実施形態の画像形成装置201は、クリーニング手段を有さないものであり、ハウジング202と、ハウジング202の上部に形成された排紙トレイ203と、ハウジング202の前面に開閉自在に装着された扉体204を有し、ハウジング202内には、制御ユニット205、電源ユニット206、露光ユニット207、画像形成ユニット208、排気ファン209、転写ユニット210、給紙ユニット211が配設され、扉体204内には紙搬送ユニット212が配設されている。各ユニットは、本体に対して着脱可能な構成であり、メンテナンス時等には一体的に取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
【0056】
転写ユニット210は、ハウジング202の下方に配設され図示しない駆動源により回転駆動される駆動ローラ213と、駆動ローラ213の斜め上方に配設される従動ローラ214と、この2本のローラのみで間に張架されて図示矢印方向(反時計方向)へ循環駆動される中間転写ベルト215を備え、従動ローラ214および中間転写ベルト215が駆動ローラ213に対して図で左側に傾斜する方向に配設されている。これにより中間転写ベルト215の駆動時のベルト張り側(駆動ローラ213により引っ張られる側)217が下方に位置し、ベルト弛み側218が上方に位置するようにされている。
【0057】
駆動ローラ213は、後述する2次転写ローラ219のバックアップローラを兼ねている。駆動ローラ213の周面には、厚さ3mm程度、体積抵抗率が1×105Ω・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、2次転写ローラ219を介して供給される2次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ローラ213に高摩擦かつ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、2次転写部へ記録材が進入する際の衝撃が中間転写ベルト215に伝達しにくく、画質の劣化を防止することができる。
【0058】
また、本発明においては、駆動ローラ213の径を従動ローラ214の径より小さくしている。これにより、2次転写後の記録紙が記録紙自身の弾性力で剥離し易くすることができる。
また、中間転写ベルト215の裏面には、後述する画像形成ユニット208を構成する各色毎の単色画像形成ユニットY,M,C,Kの画像担持体220に対向して1次転写部材221が当接され、1次転写部材221には転写バイアスが印加されている。
【0059】
画像形成ユニット208は、複数(本実施形態では4つ)の異なる色の画像を形成する単色画像形成ユニットY(イエロー用),M(マゼンタ用),C(シアン用),K(ブラック用)を備え、各単色画像形成ユニットY,M,C,Kにはそれぞれ、有機感光層、無機感光層を形成した感光体からなる画像担持体220と、画像担持体220の周囲に配設された、コロナ帯電器または帯電ローラからなる帯電手段222および現像手段223を有している。
各単色画像形成ユニットY,M,C,Kの画像担持体220が中間転写ベルト215のベルト張り側217に当接されるようにされ、その結果、各単色画像形成ユニットY,M,C,Kも駆動ローラ213に対して図で左側に傾斜する方向に配設される。画像担持体220は、図示矢印に示すように、中間転写ベルト215と逆方向に回転駆動される。
【0060】
露光ユニット207は、画像形成ユニット208の斜め下方に配設され、内部にポリゴンミラーモータ224、ポリゴンミラー225、f−θレンズ226、反射ミラー227、折り返しミラー228を有し、ポリゴンミラー225から各色に対応した画像信号が共通のデータクロック周波数に基づいて変調形成されて射出され、f−θレンズ226、反射ミラー227、折り返しミラー228を経て、各単色画像形成ユニットY,M,C,Kの画像担持体220に照射され、潜像を形成する。なお、各単色画像形成ユニットY,M,C,Kの画像担持体220への光路長は折り返しミラー228の作用によって実質的に同一の長さにされている。
【0061】
次に、現像手段223について、単色画像形成ユニットYを代表して説明する。本実施態様においては、各単色画像形成ユニットY,M,C,Kが図で左側に傾斜する方向に配設されているので、トナー収納容器229が斜め下方に傾斜して配置されている。
すなわち、現像手段223は、トナーを収納するトナー収納容器229と、このトナー収納容器229内に形成されたトナー貯蔵部230(図のハッチング部)と、トナー貯蔵部230内に配設されたトナー撹拌部材231と、トナー貯蔵部230の上部に区画形成された仕切部材232と、仕切部材232の上方に配設されたトナー供給ローラ233と、仕切部材232に設けられトナー供給ローラ233に当接される帯電ブレード234と、トナー供給ローラ233および画像担持体220に近接するように配設される現像ローラ235と、現像ローラ235に当接される規制ブレード236とから構成されている。
【0062】
現像ローラ235およびトナー供給ローラ233は、図示矢印に示すように、画像担持体220の回転方向とは逆方向に回転駆動され、一方、撹拌部材231は供給ローラ233の回転方向とは逆方向に回転駆動される。トナー貯蔵部230において撹拌部材231により撹拌、運び上げられたトナーは、仕切部材232の上面に沿ってトナー供給ローラ233に供給され、供給されたトナーは可撓性材料によって作製された帯電ブレード234と摺擦して供給ローラ233の表面の凹凸部への機械的付着力と摩擦帯電力による付着力によって、現像ローラ235の表面に供給される。
【0063】
現像ローラ235に供給されたトナーは規制ブレード236により所定厚さに薄層化規制される。薄層化したトナー層は、画像担持体220へと搬送されて現像ローラ235と画像担持体220が近接する現像領域で画像担持体220の静電潜像を現像する。
また、画像形成時には、給紙ユニット211は、記録材Sの複数枚が積層保持されている給紙カセット238と、給紙カセット238から記録材Sを一枚ずつ給送するピックアップローラ239を備えている。
【0064】
紙搬送ユニット212は、二次転写部への記録材Sの給紙タイミングを規定するゲートローラ対240(一方のローラはハウジング202側に設けられている)と、駆動ローラ213および中間転写ベルト215に圧接される二次転写手段としての二次転写ローラ219と、主記録材搬送路241と、定着手段242と、排紙ローラ対243と、両面プリント用搬送路244を備えている。定着手段242は、少なくも一方にハロゲンヒータ等の発熱体を内蔵した回転自在な定着ローラ対245と、この定着ローラ対245の少なくも一方側のローラを他方側に押圧付勢してシート材に2次転写された2次画像を記録材Sに押圧する押圧手段を有し、記録材に2次転写された2次画像は、定着ローラ対245の形成するニップ部で所定の温度で記録材に定着される。
【0065】
本発明においては、中間転写ベルト215が駆動ローラ213に対して図で左側に傾斜する方向に配設されているため、右側に広い空間が生じその空間に定着手段242を配設することができ、画像形成装置の小型化を実現することができると共に、定着手段242で発生する熱が、左側に位置する露光ユニット207、中間転写ベルト215および各単色画像形成ユニットY,M,C,Kへ悪影響をおよぼすことを防止することができる。
【0066】
次に、トナーの仕事関数の測定に使用する測定セルについて説明する。
図7は、仕事関数測定用の試料測定セルを説明する図を示す。
図7(A)に平面図を示し、図7(B)に側面図を示すように、試料測定セルC1は、直径13mm、高さ5mmのステンレス製円盤の中央に直径10mmで深さ1mmのトナー収容用凹部C2を有する形状を有する。セルの凹部内にトナーを秤量スプーンを使用して突き固めないで入れた後、ナイフエッジを使用して表面を平らにした状態で測定に供する。
トナーを充填した測定セルを試料台の規定位置上に固定した後に、照射光量500nWに設定し、照射面積4mm角とし、エネルギー走査範囲4.2〜6.2eVの条件で測定される。
また、トナーの仕事関数測定時の規格化電子収率が測定光量500nWで8以上である。
【0067】
図8は、他の形状の試料の仕事関数の測定方法を説明する図である。
中間転写媒体、潜像担持体のように、円筒形状の部材を試料とする場合には、円筒形状の部材を1〜1.5cmの幅で切断し、ついで稜線に沿って横方向に切断して図8(A)に形状を示すように、測定用試料片C3を得た後、図8(B)に示すように、試料台C4の規定位置上に、測定光C5が照射される方向に対して照射面が平行になるように固定する。これにより、放出される光電子C6が検知器C7、すなわち光電子倍像管により効率よく検知される。
【0068】
本発明のトナーとしては、粉砕法および重合法により得られるトナーのいずれでも良いが、円形度が良好な重合法トナーが好ましい。
粉砕法トナーとしては、樹脂バインダーに少なくとも顔料を含有し、離型剤、荷電制御剤等を添加し、ヘンシェルミキサー等で均一混合した後、2軸押し出し機で溶融混練され、冷却後、粗粉砕−微粉砕工程を経て、分級処理され、さらに、外添粒子が付着されてトナー粒子とされる。
【0069】
バインダー樹脂としてはトナー用樹脂として使用されている合成樹脂が使用可能であり、例えばポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体等のスチレン系樹脂でスチレン又はスチレン置換体を含む単重合体又は共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン変成エポキシ樹脂、シリコーン変成エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂等が単独又は複合して使用できる。
【0070】
特に本発明においては、スチレン−アクリル酸エステル系樹脂、スチレン−メタクリル酸エステル系樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。バインダー樹脂としてはガラス転移温度が50〜75℃、フロー軟化温度が100〜150℃の範囲が好ましい。
【0071】
着色剤としては、トナー用着色剤が使用可能である。例えばカーボンブラック、ランプブラック、マグネタイト、チタンブラック、クロムイエロー、群青、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG、ローダミン6G、カルコオイルブルー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、マラカイトグリーンレーキ、キノリンイエロー、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド184、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ソルベント・イエロー162、C.I.ピグメント・ブルー5:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等の染料および顔料を単独あるいは複合して使用できる。
【0072】
離型剤としては、トナー用離型剤が使用可能である。例えばパラフィンワックス、マイクロワックス、マイクロクリスタリンワックス、キャデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、モンタンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化型ポリエチレンワックス、酸化型ポリプロピレンワックス等が挙げられる。中でもポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナバワックス、エステルワックス等を使用することが好ましい。
【0073】
荷電調整剤としては、トナー用荷電調整剤が使用可能である。例えば、オイルブラック、オイルブラックBY、ボントロンS−22およびS−34(オリエント化学工業製)、サリチル酸金属錯体E−81、E−84(オリエント化学工業製)、チオインジゴ系顔料、銅フタロシアニンのスルホニルアミン誘導体、スピロンブラックTRH(保土ヶ谷化学工業製)、カリックスアレン系化合物、有機ホウ素化合物、含フッ素4級アンモニウム塩系化合物、モノアゾ金属錯体、芳香族ヒドロキシルカルボン酸系金属錯体、芳香族ジカルボン酸系金属錯体、多糖類等が挙げられる。なかでもカラートナー用には無色ないしは白色のものが好ましい。
【0074】
粉砕法トナーにおける成分比としては、バインダー樹脂100重量部に対して、着色剤は0.5〜15重量部、好ましくは1〜10重量部であり、また、離型剤は1〜10重量部、好ましくは2.5〜8重量部であり、また、荷電制御剤は0.1〜7重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。
本発明の粉砕法トナーにあっては、転写効率の向上を目的とした場合、球形化処理されるとよく、そのためには、粉砕工程で、比較的丸い球状で粉砕可能な装置、例えば機械式粉砕機として知られるターボミル(ターボ工業製)を使用すれば円形度は0.93まで高めることができる。または、粉砕したトナーを熱風球形化装置(日本ニューマチック工業製)を使用することによって円形度を1.00まで高めることができる。
なお、本発明において、トナー粒子の平均粒径と円形度は、粒子像分析装置(シスメックス製 FPIA2100)で測定した値である。
【0075】
また、重合法トナーとしては、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法等により得られるトナーが挙げられる。懸濁重合法においては、重合性単量体、着色顔料、離型剤とを必要により更に、染料、重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤、その他の添加剤を添加した複合物を溶解又は分散させた単量体組成物を、懸濁安定剤(水溶性高分子、難水溶性無機物質)を含む水相中に攪拌しながら添加して造粒し、重合させて所望の粒子サイズを有する着色重合トナー粒子を形成することができる。
【0076】
乳化重合法においては、単量体と離型剤を必要により更に重合開始剤、乳化剤(界面活性剤)などを水中に分散させて重合を行い、次いで凝集過程で着色剤、荷電制御剤と凝集剤(電解質)等を添加することによって所望の粒子サイズを有する着色トナー粒子を形成することができる。
【0077】
重合法トナー作製に用いられる材料において、着色剤、離型剤、荷電制御剤、に関しては、上述した粉砕トナーと同様の材料が使用できる。
重合性単量体成分としては、公知のビニル系モノマーが使用可能であり、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、ジビニルベンゼン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ケイ皮酸、エチレングリコール、プロピレングリコール、無水マレイン酸、無水フタル酸、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、酢酸ビニル、プロピレン酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリルニトリル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルナフタレン等が挙げられる。なお、フッ素含有モノマーとしては例えば2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、フッ化ビニリデン、三フッ化エチレン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロプロピレンなどはフッ素原子が負荷電制御に有効であるので使用が可能である。
【0078】
乳化剤(界面活性剤)としては、例えばドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル等がある。
【0079】
重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、4,4’−アゾビスシアノ吉草酸、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル等がある。
【0080】
凝集剤(電解質)としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウム、硫酸鉄等が挙げられる。
【0081】
重合法トナーの円形度の調節法としては、乳化重合法は2次粒子の凝集過程で温度と時間を制御することで、円形度を自由に変えることができ、その範囲は0.94〜1.00である。また、懸濁重合法では、真球のトナーが可能であるため、円形度は0.98〜1.00の範囲となる。また、円形度を調節するためにトナーのTg温度以上で加熱変形させることで、円形度を0.94〜0.98まで自由に調節することが可能となる。
【0082】
また、トナーの個数平均粒径は、9μm以下であることが好ましく、8μm〜4.5μmであることがより好ましい。9μmよりも大きなトナーでは、1200dpi以上の高解像度で潜像を形成しても、その解像度の再現性が小粒子径のトナーに比べて低下し、また4.5μm以下になると、トナーによる隠蔽性が低下するとともに、流動性を高めるために外添剤の使用量が増大し、その結果、定着性能が低下する傾向があるので好ましくない。
【0083】
次に、外添剤について説明する。本発明のトナー粒子には、外添剤として、シリカ粒子と、シリカの表面をチタン、スズ、ジルコニウムおよびアルミニウムから選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物、水酸化物によって修飾した表面修飾シリカ粒子を含み、シリカ粒子に対して表面修飾シリカ粒子が重量比で1.5倍以下の比で含有されている。
【0084】
また、その他の外添剤としては、各種の無機および有機のトナー用流動性改良剤が使用可能である。例えば、正帯電性シリカ、二酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、フッ化マグネシウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム、酸化ジルコニウム、マグネタイト、二硫化モリブデン、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム等のチタン酸金属塩、ケイ素金属塩の各微粒子を使用することができる。これらの微粒子は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイル等で疎水化処理して使用することが好ましい。その他の樹脂微粒子の例としては、アクリル樹脂、スチレン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。流動性改良剤は単独あるいは混合して使用でき、その使用量はトナー100重量部に対して0.1ないし5重量部、より好ましくは0.5ないし4.0重量部であることが好ましい。
【0085】
シリカ粒子としては、ケイ素のハロゲン化物等から乾式で作製した粒子、およびケイ素化合物から液中で析出した湿式法によるもののいずれをも用いることができる。
そして、シリカ粒子の一次粒子の平均粒子径は、7nm〜40nmとすることが好ましく、10nm〜30nmとすることがより好ましい。また、シリカ粒子の一次粒子の平均粒子径が7nmより小さいと、トナーの母粒子に埋没しやすくなり、また、負に過帯電しやすくなる。そして、40nmを超えるとトナー母粒子の流動性付与効果が悪化し、トナーを均一に負に帯電させることが困難になる結果、逆帯電である正に帯電したトナー量が増加する傾向となる。
【0086】
本発明においては、シリカ粒子として、個数平均粒径分布が異なるシリカを混合して用いることが好ましく、粒径が大きな外添剤を含有することによって、トナー粒子中に外添剤が埋まってしまうことを防止し、小径のシリカ粒子によって好ましい流動性を得ることができる。
具体的には、一方のシリカの個数平均一次粒子径が5nm〜20nmであることが好ましく、7〜16nmであることがより好ましい。また、他方のシリカの個数平均一次粒子径が30nm〜50nmであることが好ましく、30〜40nmである粒子を併用することがより好ましい。
なお、本発明における外添剤の粒径は、電子顕微鏡像によって観察して測定したものであり、個数平均粒子径を平均粒子径としている。
【0087】
本発明において外添剤として使用するシリカ粒子は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイル等で疎水化処理して使用することが好ましく、例えばジメチルジクロルシラン、オクチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、シリコーンオイル、オクチル−トリクロルシラン、デシル−トリクロルシラン、ノニル−トリクロルシラン、(4−iso−プロピルフェニル)−トリクロルシラン、(4−t−ブチルフェニル)−トリクロルシラン、ジペンチル−ジクロルシラン、ジヘキシル−ジクロルシラン、ジオクチル−ジクロルシラン、ジノニル−ジクロルシラン、ジデシル−ジクロルシラン、ジドデシル−ジクロルシラン、(4−t−ブチルフェニル)−オクチル−ジクロルシラン、ジデセニル−ジクロルシラン、ジノネニル−ジクロルシラン、ジ−2−エチルヘキシル−ジクロルシラン、ジ−3,3−ジメチルペンチル−ジクロルシラン、トリヘキシル−クロルシラン、トリオクチル−クロルシラン、トリデシル−クロルシラン、ジオクチル−メチル−クロルシラン、オクチル−ジメチル−クロルシラン、(4−iso−プロピルフェニル)−ジエチル−クロルシラン等が例示される。
【0088】
また、シリカ粒子と、金属化合物によって表面を修飾したシリカをシリカ粒子に対して所定の量を併用することが好ましい。表面修飾シリカとしては、50〜400m2/gの比表面積を有するシリカ粒子を、チタン、スズ、ジルコニウムおよびアルミニウムから選ばれる少なくとも一種の水酸化物あるいは酸化物で被覆したものである。
これらの配合量は、シリカ粒子100重量部に対し、1〜30重量部のこれらの水酸化物、酸化物で被覆したスラリーとし、引き続いてスラリー中の固形分に対し、アルコキシシランを3〜50重量部を被覆した後、アルカリで中和し、ろ過、洗浄、乾燥及び粉砕を行うことによって得ることができる。表面修飾シリカに使用するシリカ微粒子は、湿式法あるいは気相法で製造されたいずれの粒子を使用することができる。
【0089】
また、シリカ粒子の表面修飾は、チタン、スズ、ジルコニウム、アルミニウムを少なくとも一種を含有する水系の溶液を使用することができ、例えば、硫酸チタン、四塩化チタン、塩化スズ、硫酸第一スズ、オキシ塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム等を挙げることができる。
シリカ粒子をこれらの金属酸化物、水酸化物での表面修飾は、これらの金属化合物の水系溶液によってシリカ粒子のスラリーを処理することによっておこなうことができる。処理温度は、20〜90℃とすることが好ましい。
【0090】
次いで、アルコキシシランによって被覆することによって、疎水化処理を行う。疎水化処理は、スラリーのpHを2〜6、好ましくはpH3〜6に調整した後、少なくとも一種のアルコキシシランをシリカ微粒子100重量部に対して30ないし50重量部を添加し、スラリーの温度を20〜100℃、好ましくは30〜70℃に調整し、加水分解及び縮合反応を行うことによって実現することができる。
【0091】
また、アルコキシシランを添加した後には、スラリーを攪拌した後、pH4〜9、好ましくは5〜7とpHの調整を行って縮合反応を促進することが好ましい。pHの調整は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア水、アンモニアガス等を使用することができる。この様な処理を行うことで、均一に疎水化処理された安定な微粒子が得られる。
次いで、スラリーをろ過、水洗後に乾燥を行うことによって表面修飾されたシリカ微粒子を得ることができる。
乾燥は、100〜190℃、好ましくは110〜170℃である。100℃未満だと乾燥効率が悪く疎水化度が低くなるので好ましくない。また、190℃を超えると、炭化水素基の熱分解により変色と疎水化度の低下が起こるので好ましくない。
【0092】
疎水化処理は、表面修飾シリカ粒子にアルコキシシランを添加した後にヘンシェルミキサー等を用いて被覆することもできる。
本発明において、これらの外添剤は、トナー母粒子100重量部に対して0.05〜2重量部とすることが好ましい。
0.05重量部よりも少ない場合には、流動性付与、および過帯電防止に効果がなく、逆に2重量部を超えると、負帯電の電荷量が低下すると同時に、逆極性である正帯電のトナー量が増加し、カブリや逆転写トナー量を増加する結果となる。
【0093】
本発明におけるトナーの現像順序による転写効率の違いは以下のように考えられる。
図9は、本発明の中間転写媒体上に重ね合わされたトナーを説明する図である。
図9(A)に示すように、複数色のトナーを色重ねした際の画像の転写例を示したものである。トナーは、仕事関数の大きい順に中間転写媒体へ転写され、中間転写媒体上に静電的に付着している。
矢印の方向に電子(電荷)が移動し、最上部のトナーの電荷が小さくなるので、定電圧転写において電子(電荷)の流れと転写の向きが同一になるために転写効率が高くなるものと考えられる。
また、図9(B)は中間調画像の転写例を示したので、トナー同士が隣りあう場合の例である。トナーの仕事関数が大きい順より現像および転写が行われ、中間転写ベルト上に静電的に付着している。やはり、矢印の方向に電子(電荷)が移動し、最上部のトナーの電荷が小さなるので、定電圧転写において電子(電荷)の流れと転写の向きが同一になるため、転写効率が高くなるものと考えられる。
【0094】
また、図9(C)単色の線画像の例を示したもので、トナーが中間転写媒体上に静電的に付着している。中間転写媒体から電子(電荷)がトナーに移動し、トナーの電荷を負にさせる。負の電荷が増えることはあっても、正になることはないので、逆転写トナーの防止につながるものと考えられる。
【0095】
図10は、かぶりトナーと逆転写トナーの発生原因となる正帯電トナーの挙動を説明する図である。
潜像担持体の表面電位:非画像部暗電位−600V、画像部明電位−80V、現像部材のバイアス電位:−300Vに設定時した場合を例にして説明する。
図10(A)の潜像担持体上のカブリ及び反転現像されたトナーの帯電極性の状態を示す図において、現像部材上のトナーの挙動は、トナー層中に潜像担持体の電位極性と逆極性である+トナーは非画像部に付着し、いわゆるかぶりトナーとなり、同極性である−トナーは画像部に反転現像されてトナー画像を形成する。この時、強く負帯電したAトナーと弱く正帯電したBトナーが対となって画像部に反転現像される場合がある。
図中矢印でトナーが現像時に潜像担持体上の画像領域と非画像領域に移行する様子を示す。この図で、潜像担持体上に移行したBトナーが図10(B)、(C)で示すように、逆転写トナーの発生原因となる。
図10(B)に示すように、潜像担持体の画像領域に反転現像されたトナーすなわち、負に帯電したトナーは逆極性のバイアス電圧を印加されて、中間転写媒体上に転写される。その様子を矢印で示す。この時に前述の強く負帯電したAトナーと弱く正帯電したBトナーも対となって転写される。
【0096】
また、図10(C)に示すように、次工程の中間転写媒体上に転写されたトナーにおいて、トナー対として転写されたBトナーは正帯電しているため、次工程の潜像担持体の非画像領域の−600Vの電圧に静電引力で引きつけられる。その結果、トナーの混色が生じる逆転写トナーになる。
クリーニング手段を設けた画像形成装置においては、中間転写媒体上のクリーニング手段により除去されるが、クリーニング手段を有さない装置においては、このような形態のトナーが生成することを防止することが不可欠となる。
以下に、実施例を示し本発明を説明する。
【実施例1】
【0097】
(トナー1の製造例)
スチレンモノマー80重量部、アクリル酸ブチル20重量部、およびアクリル酸5重量部からなるモノマー混合物を、水105重量部、ノニオン乳化剤(第一工業製薬製エマルゲン950)1重量部、アニオン乳化剤(第一工業製薬製ネオゲンR)1.5重量部、および過硫酸カリウム0.55重量部の水溶液混合物に添加し、窒素気流中下で攪拌を行いながら70℃で8時間重合を行った。重合反応後冷却し、乳白色の粒径0.25μmの樹脂エマルジョンを得た。
【0098】
次に、この樹脂エマルジョン200重量部、ポリエチレンワックスエマルジョン(三洋化成工業製)20重量部およびフタロシアニンブルー7重量部を界面活性剤のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.2重量部を含んだ水中へ分散し、ジエチルアミンを添加してpHを5.5に調整後攪拌しながら硫酸アルミニウム0.3重量部を電解質として加え、次いで攪拌装置(特殊機化工業製TKホモミキサー)で高速攪拌して分散を行った。
【0099】
更に、スチレンモノマー40重量部、アクリル酸ブチル10重量部、サリチル酸亜鉛5重量部を水40重量部と共に追加し、窒素気流下で攪拌しながら同様にして、90℃に加熱し、過酸化水素水を加えて5時間重合し、粒子を成長させた。重合停止後会合粒子の結合強度を上げるため、pHを5以上に調整しながら95℃に昇温し、5時間保持した。
その後得られた粒子を水洗し、45℃で真空乾燥を10時間行った。平均粒径6.8μmの円形度0.98のシアントナーを得た。
【0100】
なお、本実施例において円形度の測定は、フロー式粒子像解析装置(シスメックス株式会社製FPIA2100)を用いて行い、下記式(1)で表現した。
R=L0/L1…(1)
ただし、L1は、測定対象のトナー粒子の投影像の周囲長(μm)である。
0は、測定対象のトナー粒子の投影像の面積に等しい真円の周囲長(μm)である。
【0101】
得られたトナー100重量部に対して、流動性改良剤である平均一次粒子径が12nmの疎水性シリカを1重量部、平均一次粒子径が40nmの疎水性シリカを0.7重量部添加混合し、次いで平均一次粒子径が20nmの疎水性酸化チタンを0.5重量部と平均一次粒子径が30nmの疎水性のシリカをアミノシランで表面処理した正帯電性疎水性シリカを0.4重量部添加混合しトナー1を得た。このトナー1をシアントナー1とも称す。
【0102】
なお、平均粒径は、電気抵抗法粒度分布測定装置(ベックマン・コールター社製マルチサイザーIII)で測定した体積分布D50で示した。
また、得られたトナーの仕事関数は、5.54eVであった。なお、本実施例において仕事関数は、表面分析装置(理研計器製 AC−2型)によって、照射光量500nWで測定した値である。
【0103】
(トナー2の製造例)
トナー1の製造例において、顔料のフタロシアニンブルーに代えてキナクリドンを用いた点を除き、トナーの製造例1と同様にして、二次粒子の会合と造膜結合強度を上げる温度を90℃において行い、トナー2を作製した。得られたマゼンタトナーの円形度は0.972で仕事関数は5.63eVであった。このトナーの個数基準の平均粒径は6.9μmであった。このトナー2をマゼンタトナー2とも称す。
【0104】
(トナー3、4の製造例)
トナー2の製造例において、顔料をピグメントイエロー180に変えた点を除き、トナー2の製造例と同様にして重合を行い、流動性改良剤を添加し、円形度0.972、仕事関数5.58eV、平均粒径7.0μmのトナー3を作製した。このトナー3をイエロートナー3とも称す。
また、トナー2の製造例において、顔料をカーボンブラックに変えた以外はトナー2の製造例と同様にして重合を行い、流動性改良剤を添加し、円形度0.973、仕事関数5.48eV、平均粒径6.9μmのトナー4を作製した。このトナー4をブラックトナー4とも称す。
【0105】
(トナー5の製造例)
芳香族ジカルボン酸とアルキレンエーテル化ビスフェノールAとの重縮合ポリエステルと該重合ポリエステルの多価金属化合物による一部架橋物の50:50(重量比)混合物(三洋化成工業製)100重量部、シアン顔料のピグメントブルー15:1を5重量部、離型剤として融点が152℃、重量平均分子量が4000のポリプロピレン1重量部、および荷電制御剤としてのサリチル酸金属錯体(オリエント化学工業製 E−81)4重量部をヘンシェルミキサーを用い、均一混合した後、内部温度130℃の二軸押し出し機で混練し、冷却した。
冷却物を2mm角以下に粗粉砕し、次いでジェットミルで微粉砕し、ローター回転による分級装置により分級し、平均粒径6.2μm、円形度0.905の分級トナーを得た。
【0106】
分級したトナー100重量部に対し、0.2重量部の疎水性シリカ(平均一次粒子径7nm、比表面積250m2/g)を加え表面処理を行った後、熱風球形化装置(日本ニューマチック工業製 SFS−3型)を使用し、熱処理温度200℃において、部分的に球形化処理を行った後、同様にして再度分級し平均粒径6.3μm、円形度0.940のシアントナー5の母粒子を得た。
このトナー母粒子に対し、トナー1と同様にして流動性改良剤を添加混合し、トナー5を作製した。得られたトナーの仕事関数を同様に測定したところ5.48eVであった。
このトナー5をシアントナー5とも称す。
【0107】
(トナー6、7、8の製造例)
トナー5の製造例において、顔料をナフトールAS系の6Bに変えた以外はトナー5と同様にして粉砕、分級、熱処理、再分級および表面処理を行い、平均粒径6.5μmで円形度0.942のトナー6を製造した。このトナー6の仕事関数を測定したところ、5.53eVであった。このトナー6をマゼンタトナー6とも称す。
【0108】
また、同様にして、顔料としてピグメントイエロー93を使用して、イエロートナーであるトナー7を製造した。このトナー7をイエロートナー7とも称す。
また、顔料としてカーボンブラックを使用して、ブラックトナーであるトナー8を作製した。このトナー8をブラックトナー8とも称す。
得られたトナーの平均粒径と円形度は、トナー6と同じ値を示し、またそれぞれのトナーの仕事関数は、5.57eV(イエロートナー)および5.63eV(ブラックトナー)であった。
【0109】
(トナー11、12、13、14の製造例)
トナー1の製造例において、流動性改良剤として添加した、平均一次粒子径が20nmの疎水性酸化チタンの量を0.7重量部に変えると共に、平均一次粒子径が30nmの疎水性のシリカをアミノシランで表面処理した正帯電性疎水性シリカの量を0.45重量部に変えてトナー11を製造した。このトナー11をシアントナー11とも称す。得られたシアントナー11(記号C11)の仕事関数は、5.55eVであった。
【0110】
同様に、トナー2の製造例において、流動性改良剤として添加した、平均一次粒子径が20nmの疎水性酸化チタンの量を0.7重量部に変えると共に、平均一次粒子径が30nmの疎水性のシリカをアミノシランで表面処理した正帯電性疎水性シリカの量を0.45重量部に変えてトナー12を製造した。このトナー12をマゼンタトナー12とも称す。
得られたマゼンタトナー12(記号M12)の仕事関数は、5.64eVであった。
【0111】
同様に、トナー3の製造例において、流動性改良剤として添加した、平均一次粒子径が20nmの疎水性酸化チタンの量を0.7重量部に変えると共に、平均一次粒子径が30nmの疎水性のシリカをアミノシランで表面処理した正帯電性疎水性シリカの量を0.45重量部に変えてトナー13を製造した。このトナー13をイエロートナー13とも称す。
得られたイエロートナー13(記号Y13)の仕事関数は、5.59eVであった。
【0112】
同様に、トナー4の製造例において、流動性改良剤として添加した、平均一次粒子径が20nmの疎水性酸化チタンの量を0.7重量部に変えると共に、平均一次粒子径が30nmの疎水性のシリカをアミノシランで表面処理した正帯電性疎水性シリカの量を0.45重量部に変えてトナー14を製造した。このトナー14をブラックトナー14とも称す。
得られたブラックトナー14(記号BK14)の仕事関数は、5.49eVであった。
【0113】
(有機感光体(OPC1)の製造例)
直径85.5mmのアルミニウム製管の導電性支持体に、下引き層として、アルコール可溶性ナイロン(東レ製 CM8000)の6重量部とアミノシラン処理された酸化チタン微粒子4重量部をメタノール100重量部に溶解、分散させてなる塗工液を、リングコーティング法で塗工し、温度100℃で40分間乾燥させ、膜厚1.5〜2μmの下引き層を形成した。
【0114】
この下引き層上に、電荷発生剤のオキシチタニルフタロシアニン1重量部とブチラール樹脂(積水化学製 BX−1)1重量部とジクロルエタン100重量部とを、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルで8時間分散させた。
得られた顔料の分散液を、上記の支持体を用いて、リングコーティング法で塗工し、80℃で20分間乾燥させ、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0115】
この電荷発生層上に、下記構造式(1)のスチリル化合物の電荷輸送物質40重量部とポリカカーボネート樹脂(帝人化成製 パンライトTS)60重量部をトルエン400重量部に溶解させ、乾燥膜厚が22μmになるように浸漬コーティング法で塗工、乾燥させて電荷輸送層を形成し、2層からなる感光層を有する有機感光体(OPC1)を作製した。
得られた有機感光体の一部を切り欠いて試料片とし、その仕事関数を表面分析装置(理研計器製 AC−2型)を用い、照射光量500nWで測定したところ、5.47eVを示した。
【0116】
【化1】

【0117】
(有機感光体(OPC2)の製造例)
有機感光体(OPC1)において、導電性支持体としてアルミニウム製管の代わりに継ぎ目のない厚さ40μmで直径85.5mmのニッケル製電鋳管を用いるとともに、電荷発生剤としてチタニルフタロシアニン、電荷輸送物質に下記構造式(2)のジスチリル化合物に変えた点を除いて同様にして有機感光体(OPC2)を作製した。
この有機感光体の仕事関数を同様に測定したところ、5.50eVであった。
【0118】
【化2】

【0119】
(有機感光体(OPC3)の製造例)
有機感光体(OPC1)の製造例において、導電性支持体を直径30mmのアルミニウム製管を用いた点を除き、有機感光体(OPC1)と同様にして有機感光体(OPC3)を製造した。
【0120】
(現像ローラの作製)
直径18mmのアルミニウム管の表面に、厚さ10μmのニッケルメッキ層を施し、表面粗さ(Rz)4μmの表面を得た。この現像ローラ表面の仕事関数を測定したところ、4.58eVであった。
【0121】
(規制ブレードの作製)
厚さ80μmのステンレス板に厚さ1.5mmの導電性ウレタンチップを導電性接着剤で貼り付けて、ウレタン部の仕事関数を5eVとした。
【0122】
(中間転写ベルト1の製造例)
アルミニウムを蒸着した厚さ130μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム上に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体30重量部、導電性カーボンブラック10重量部およびメチルアルコール70重量部の均一分散液を、中間導電性層の厚さが20μmになるようにロールコーティング法にて塗工乾燥した。
【0123】
次いでその上に、ノニオン系水系ウレタン樹脂(固形分62%)55重量部、ポリテトラフルオロエチレンエマルジョン樹脂(固形分60%)11.6重量部、導電性酸化すず25重量部、ポリテトラフルオロエチレン微粒子(最大粒子径0.3μm以下)34重量部、ポリエチレンエマルジョン(固形分35%)5重量部およびイオン交換水20重量部を混合分散してなる塗工液を厚さ10μmとなるようにロールコーティング法にて同様に塗工乾燥した。
【0124】
この塗工シートを長さ540mmに断裁し、塗工面を上にして端部を合わせ、超音波溶着を行うことにより中間転写ベルトを作製した。得られた中間転写ベルトの体積抵抗は2.5×1010Ω・cmであった。また、仕事関数は5.37eV、規格化光電子収率6.90を示した。
【0125】
(中間転写ベルト2の製造例)
中間転写ベルト1と同様にして設けた中間導電性層上に、導電性酸化チタン2重量部、導電性酸化すず25重量部、ポリテトラフルオロエチレン微粒子37重量部を用いた点を除いて同様にして中間転写ベルトを作製した。
得られた中間転写ベルトの体積抵抗は1.1×1010Ω・cmであり、仕事関数は5.52、規格化光電子収率は7.25を示した。
【0126】
(中聞転写ベルト3の製造例)
ポリブチレンテレフタレート85重量部、ポリカーボネート15重量部およびアセチレンブラック15重量部を、窒素雰囲気下でミキサーにより予備混合し、得られた混合物を引き続き窒素雰囲気下で二軸押出し機により混練し、ペレットを得た。
【0127】
このペレットを、環状ダイスを有する1軸押出し機により260℃にて外径170mm、厚さ160μmのチューブ状フィルムに押出した。次に押出した溶融チューブを、環状ダイスと同じ軸線上に支持している冷却インサイドマンドレルにより内径を規制し、冷却固化させてシームレスチューブを作製した。規定寸法に切断し、外径172mm、幅342mm、厚さ150μmのシームレスベルトを得た。
得られた中間転写ベルトの体積抵抗は3.2×108Ω・cmであり、仕事関数は5.19、規格化光電子収率10.88を示した。
【0128】
(作像試験と評価)
有機感光体(OPC1)を用い、前述の現像ローラと規制ブレードを装着した図4に示す中間転写媒体方式の4サイクルカラープリンターを用いて、前述したトナー1〜トナー4の入った各現像カートリッジを装着し、前述の転写ベルト1と組合わせて、非接触1成分現像方式による作像試験を行った。
作像条件は、有機感光体の周速を180mm/s、現像ローラの周速は有機感光体に対して周速比1.6とし、また、有機感光体と中間転写媒体である転写ベルトとの周速差を転写ベルトが3%早くなるように設定した。3%を超えると、転写画像に散りの発生が生じることがあるので、3%とした。また、トナー規制ブレードの規制条件を調整して現像ローラ上のトナー搬送量を0.4mg/cm2となるように設定した。
【0129】
作像条件は現像ローラと感光体のギャップを210μmとなるように隙間を調整し、直流の現像バイアス−200Vに重畳する交流電流の周波数を2.5kHz、ピーク−ピーク電圧1400Vの設定で、現像ローラと供給ローラは同電位とした。
次に、図4のプリンターの作像条件を、各色トナーのベタ印字画像の有機感光体上の現像付着トナー量を0.5mg/cm2〜0.53mg/cm2となるように設定した。そして、ベタ画像印字のデータを与え、3色のトナー像を感光体上に形成させた後、一次転写電圧を変化させながら、中間転写ベルトに転写されるトナーの転写効率を求めた。
【0130】
(転写効率の測定方法)
1.トナーの現像付着量
感光体上に形成された各色のベタ印字画像のトナーの現像付着量を粘着テープに転写して、テープの貼り付け前後のテープ質量を求め、その差をトナー質量(mg/cm2)として求めるテープ転写法によって測定した。
複数色のトナーを色重ねした時の現像付着量も同様にテープ転写法で求め、各色の現像付着量を合わせた時の総質量が、4色のトナーを色重ねした時の質量に誤差の範囲で一致することを確認する。
【0131】
2.トナーの転写効率の測定
一次転写の電圧を変化させた時の有機感光体上の転写残りトナー重量を光学顕微鏡にて画像データとして読み取り、画像データの処理によって単位面積あたりの転写残りトナーの面積、トナー個数を求め、この値から求めた個数、各トナーの体積とトナーの真密度から単位面積当たりの転写残り質量を求め、現像付着量との比によって転写効率を求めた。
【0132】
一次転写電圧を変化させた時の現像、転写順における転写効率を求めた実験結果を表1に示す。
ただし、表1において、シアントナー1(記号C1、仕事関数:5.54eV)、マゼンタトナー2(記号M2、仕事関数:5.63eV)、イエロートナー3(記号Y3、仕事関数:5.58eV)およびブラックトナー4(記号BK4、仕事関数:5.48eV)である。
【0133】
(表1)
一次転写電圧
現像、転写順 +400V +500V +600V
実施例1-1(M2-Y3-C1) 97.29% 99.47% 99.72%
実施例1-2(Y3-C1-BK4) 97.93% 99.78% 99.88%
比較例1-1(M2-C1-Y3) 92.22% 98.31% 99.11%
比較例1-2(Y3-C1-M2) 91.36% 97.86% 99.06%
比較例1-3(C1-M2-Y3) 92.78% 98.90% 99.39%
比較例1-4(BK4-Y3-C1) 92.55% 98.73% 99.08%
比較例1-5(C1-Y3-BK4) 92.80% 98.93% 99.40%
【0134】
表1の結果から、本発明のように仕事関数の大きいトナーより順に現像と転写を行うことで、高い転写効率を得ることが示された。この特性は、転写電圧が低い領域において特に転写効率の差が明瞭となったが、転写電圧を上げることは、画像のデューティが低い場合、および線画像の細線再現性において、トナーの飛び散りや転写メモリーの原因となるため、できるだけ低い転写電圧が望ましい。その意味でも、トナーの仕事関数の大きな順に現像と転写を行うことによって転写効率を高めることができるので好ましい。
【実施例2】
【0135】
(作像試験と評価)
有機感光体(OPC2)を用い、実施例1と同様の現像ローラと規制ブレードを装着した図4に示す中間転写媒体方式の4サイクルカラープリンターを用いて、前述のトナー1〜トナー4の入った各現像カートリッジを装着し、転写ベルト2と組合わせて、接触一成分現像方式による作像試験を行った。
なお、作像に際しては、実施例1と同様の条件で行ったが、感光体の暗電位を−600V、明電位を−60V、標準現像バイアスを−200Vとし、現像ローラと供給ローラは同電位とした。そして、前述のトナー規制ブレードの規制条件を変えて現像ローラ上のトナー搬送量を0.4mg/cm2〜0.43mg/cm2となるように設定した。
【0136】
次に、プリンターの作像条件を、各色トナーのベタ印字画像の有機感光体上の現像付着トナー量が0.5mg/cm2〜0.54mg/cm2の範囲になる作像条件(1)と0.58mg/cm2〜0.6mg/cm2の範囲になる作像条件(2)となる場合に分けて、実施例1と同様にして、転写実験を行った。そして、一次転写電圧を変化させた時の現像、転写順における転写効率を求めた実験結果を表2と表3に示す。
【0137】
(表2)
作像条件(1)…現像付着量:0.5mg/cm2〜0.54mg/cm2
一次転写電圧
現像、転写順 +300V +400V +500V
実施例2-1(M2-Y3-C1) 95.11% 99.26% 99.92%
比較例2-1(Y3-C1-M2) 91.40% 97.92% 99.08%
比較例2-2(C1-M2-Y3) 92.28% 98.53% 99.13%
比較例2-3(Y3-M2-C1) 92.90% 98.91% 99.40%
【0138】
(表3)
作像条件(2)現像付着量:0.58mg/cm2〜0.6mg/cm2
一次転写電圧
現像、転写順 +300V +400V +500V
実施例2-2(M2-Y3-C1) 93.29% 98.91% 99.70%
比較例2-4(Y3-C1-M2) 90.01% 96.29% 98.01%
比較例2-5(C1-M2-Y3) 91.16% 97.11% 98.35%
比較例2-6(Y3-M2-C1) 91.33% 97.33% 99.05%
【0139】
表2と表3の結果から、本発明のように仕事関数の大きいトナーより順に現像と転写を行うことで、高い転写効率を得ることが示されたが、有機感光体上の現像された付着トナー量が作像条件(2)の0.6mg/cm2近くになると、定電圧方式の一次転写電圧では現像付着量の少ない作像条件(1)に比し転写効率が低下する傾向にある。この特性は、転写電界強度が不利になるためであり、1色当たりの現像付着トナー量は0.55mg/cm2以下が好ましいと判断できる。
【実施例3】
【0140】
(作像試験と評価)
前述のトナー5〜8を、図5に示すタンデム方式の感光体一体型のプロセスカートリッジを有するフルカラープリンターの各色の現像部に装填し、非接触一成分現像方式による画像形成を行った。使用するトナーは、シアントナー5(仕事関数:5.48eV)、マゼンタトナー6(仕事関数:5.53eV)、イエロートナー7(仕事関数:5.57eV)、およびブラックトナー8(仕事関数:5.63eV)である。
【0141】
現像、転写順は、仕事関数の大きい順に、ブラックトナー8、イエロートナー7、マゼンタトナー6そしてシアントナー5となるように、各プロセスカートリッジを装着した。
また、有機感光体としては直径30mmのアルミニウム管を導電性支持体に用い、有機感光体(OPC1)と同様にして感光体を製造した。電荷発生物質としてチタニルフタロシアニンを、電荷輸送物質には構造式(2)のジスチリル化合物を使用した。
また、現像ローラと規制ブレードの構成は実施例1と同様とし、また中間転写媒体は転写ベルト2の製造例によって製造した。各色トナーの搬送量が0.4mg/cm2〜0.43mg/cm2の範囲となるように規制ブレードの条件を設定した。
【0142】
画像形成は直流の現像バイアス−200Vに重畳する交流周波数2.5kHz、ピーク−ピーク電圧1400Vの条件で印加し、各色5%カラー原稿に相当する文字原稿を10000枚連続して画像形成を行い、その後4本の感光体と中間転写ベルトのクリーニングトナー量を合わせて計測したところ、40gであった。
この量は従来のクリーニングトナー回収容器に収容する量に対し、約1/3の量であった。
【実施例4】
【0143】
(作像試験と評価)
実施例1と同様にして、有機感光体(OPC1)を用い、実施例1と同様の現像ローラと規制ブレードを装着した図4に示す中間転写媒体方式の4サイクルカラープリンターを用いて、前述したトナー1〜トナー4の入った各現像カートリッジを装着し、前述の転写ベルト3と組合わせて、非接触1成分現像方式による画像形成試験を行った。
一次転写部は定電圧電源を用い、直流電圧を+370V印加し、二次転写部は定電流電源とし、16μAの定電流制御とした。
【0144】
なお、画像形成に際しては、有機感光体の周速を180mm/s、現像ローラの周速は有機感光体に対して周速比1.6とし、また、有機感光体と中間転写媒体である転写ベルトとの周速差を転写ベルトが3%早くなるように設定した。
なお、3%を超える場合には転写画像に画像の散りが発生するので3%を上限として行った。また、トナー規制ブレードの規制条件を変えて現像ローラ上のトナー搬送量を0.4mg/cm2となるように設定した。
使用するトナーはシアントナー1(仕事関数:5.54eV)、マゼンタトナー2(仕事関数:5.63eV)、イエロートナー3(仕事関数5.58eV)およびブラックトナー4(仕事関数:5.48eV)であり、現像と転写順はトナーの仕事関数の大きい順であるマゼンタトナー2、イエロートナー3、シアントナー1そしてブラックトナー4とした。
【0145】
画像形成条件は現像ローラと感光体の間隔を210μmに調整し、直流現像バイアス−200Vに重畳する交流周波数2.5kHrz、ピーク−ピーク電圧1400Vの設定で、現像ローラと供給ローラは同電位とし、各色5%カラー原稿に相当する文字原稿を10000枚連続して画像形成を行った。
その後、感光体と中間転写ベルトのクリーニングトナー量を合わせて計測したところ廃トナー量は15gであった。
この量は、従来の円形度0.91の粉砕法トナーを用い、現像、転写順を考慮しなかった場合のクリーニングトナー回収量に対し、1/13の量であった。
【実施例5】
【0146】
(作像試験と評価)
先の製造例で記載の有機感光体(OPC3)、現像ローラ、規制ブレード、および中間転写ベルト3を装着した図6に示す中間転写媒体を使用したクリーニング手段を有さないカラープリンタを用いた。
前述したシアントナー11を入れた現像カートリッジのみを装着し、非接触1成分現像方式による作像試験を行った。
【0147】
なお、作像に際しては、有機感光体の周速を105mm/s、現像ローラの周速は有機感光体に対して周速比1.6とし、また、有機感光体と中間転写媒体である転写ベルトとの周速差を転写ベルトが2.5%早くなるように設定した。
3%以上にすると、予備実験で転写画像にチリの発生を確認しているため2.5%とした。そして、前述のトナー規制ブレードの規制条件を変えて現像ローラ上のトナー搬送量を表1に示した。
【0148】
作像条件は、感光体の暗電位を−600V、明電位を−80V、現像バイアスを−200Vとし、現像ローラと感光体の空隙を210μmに調整し、直流の現像バイアス−200Vに重畳する交流は周波数2.5kHz、P−P電圧1400Vの設定で、現像ローラと供給ローラは同電位とした。なお、一次転写部の電源は定電圧とし、転写電圧は+650Vとした。二次転写部は定電流の直流電源とした。
そして、全面ベタ画像となるように印字、一次転写、二次転写と定着を行って、シアンのベタ画像を得た。ベタ画像の反射濃度は濃度計(X−Rite社製404型)を用いて測定した。
【0149】
また、トナーの搬送量を変化させ、ベタ画像を得た後の現像カートリッジから現像ローラを取り外し、現像ローラ上のトナーの帯電特性を帯電量分布測定器(ホソカワミクロン製 E−SPARTアナライザEST−3型)で測定した。その結果を表4に示す。
測定条件は、吸引流量を0.2L/分、集塵エアー流量を0.6L/分、電界電圧100V、X軸0.1mm/秒で、最大カウント数を3000と設定とした。
また、比較例5−3には、多層規制用で層形成を行っているカラープリンタ(セイコーエプソン社製 OffirioLP−1500C)用のシアントナーを用い同様に測定してその結果を示した。
【0150】
(表4)
搬送量(mg/cm2) ベタ画像OD値 平均帯電量(μC/g) +トナー個数(%)
実施例5-1 0.31 1.316 -16.00 3.1
実施例5-2 0.40 1.403 -11.48 4.2
比較例5-1 0.52 1.423 - 9.79 5.7
比較例5-2 0.55 1.433 - 8.14 9.0
比較例5-1 0.37 0.83 -19.31 1.2
【0151】
表4では、トナーの搬送量が少なくなると、平均帯電量が増大し、ベタ画像濃度は低下し、正帯電トナー個数%は減少する傾向を示し、また、トナーの搬送量が増えると、平均帯電量が減少し、ベタ画像濃度は増加し、正帯電トナー個数%は増大する傾向を示した。
【0152】
この結果、トナーの搬送量の良好域は0.5mg/cm2以下で、平均帯電量は、負で絶対値が16μC/g以下で好ましい結果が得られ、特に−16μC/g〜−10μC/gでは、+トナー個数%は5%以下の値を維持でき、良好なベタ画像を与えることが分かった。
しかし、比較例に示した多層規制用の非磁性重合法トナーでは薄層すなわち略1層にすると、+トナー個数%は減少するが、平均帯電量の絶対値が上昇し、結果としてベタ画像濃度を低下させてしまうことが示された。
【実施例6】
【0153】
(作像試験と評価)
有機感光体(OPC2)を用い、実施例4と同様に現像ローラと規制ブレードを装着した図4に示すカラープリンタを用いて、前述したトナー1〜トナー4の入った各現像カートリッジを装着し、中間転写ベルト1と組合わせて、接触1成分現像方式による作像試験を行った。
なお、作像に際しては、有機感光体の周速を180mm/s、現像ローラの周速は有機感光体に対して周速比1.6とし、また、有機感光体と中間転写媒体である転写ベルトとの周速差を転写ベルトが3%早くなるように設定している。3%以上にすると、転写画像にチリの発生が生じたので、3%を上限とした。
そして、トナー規制ブレードの規制条件を変えて現像ローラ上のトナー搬送量を0.35mg/cm2、0.4mg/cm2、5mg/cm2になるように設定した。
作像条件は、感光体の暗電位を−600V、明電位を−80V、現像バイアスを−200Vとし、現像ローラと供給ローラとは同電位とした。なお、一次転写部の電源は定電圧とし転写電圧は+500Vとした。なお、現像カートリッジにはトナーを150g充填した。
そして、各色5%カラー原稿に相当する文字原稿とJIS X 9201−1995準拠の標準画像データのN−2A「カフェテリア」の画像を用いて、図6に示したカラープリンタを用いて連続印字を行った。
【0154】
そして、その出力印字画像の初期品質からの画質の劣化状態を、5%カラー原稿と自然画像であるN−2Aのそれぞれの出力印字画像について評価をした。
なお、印字枚数は前者の原稿で10000枚、後者の原稿で5000枚を目標にした。また、比較のために、クリーニングブレードを取り付けた状態でも連続印字を行った。
【0155】
転写不良やかぶりと逆転写トナーによる混色による色ずれが明らかに生じた時点で、現像器内のトナーの寿命と判断した。その結果を表5に示す。
なお、転写効率が低い場合やかぶり、および逆転写トナー量が多いと、他色のトナーが次の現像器内のトナーに混入し、その結果混色が起こり純粋な色の再現が困難となる。
【0156】
使用したトナーは、シアントナー11(記号C11、仕事関数:5.55eV)、マゼンタトナー12(記号M12、仕事関数:5.64eV)、イエロートナー13(記号Y13、仕事関数:5.59eV)およびブラックトナー14(記号BK4、仕事関数:5.49eV)である。
なお、現像転写順を変更した場合には、その都度画像データ処理の順番を変更して連続印字を行った。
【0157】
(表5)
混色の色ずれ許容印字枚数
クリーニング部
トナー搬送量 取付け時 外し時
現像、転写順 (mg/cm2) 5%原稿 N2A原稿 5%原稿 N2A原稿
実施例6-1(M12-Y13-C11-BK14) 0.35 10000枚 5000枚 10000枚 5000枚
実施例6-2(M12-Y13-C11-BK14) 0.4 10000枚 5000枚 10000枚 4800枚
実施例6-3(M12-C11-Y13-BK14) 0.5 10000枚 5000枚 8200枚 3000枚
実施例6-4(M12-C11-Y13-BK14) 0.35 10000枚 5000枚 9900枚 4100枚
比較例6-1(Y13-C11-M12-BK14) 0.4 10000枚 5000枚 7200枚 3900枚
比較例6-2(Y13-C11-M12-BK14) 0.5 10000枚 5000枚 5900枚 2900枚
比較例6-3(BK14-Y13-C11-M12) 0.35 10000枚 5000枚 7100枚 2850枚
【0158】
表5の結果から、本発明のようにトナーの仕事関数より小さい中間転写ベルトを使用し、トナーの搬送量を0.5mg/cm2以下にすることにより、クリーニングブレードを取り外したいわゆるクリーナレスの画像形成装置の提供が可能であることがわかる。
また、現像と転写の順をトナーの仕事関数の大きい順に行うことで、より高い転写効率が実現でき、第1色目を仕事関数の大きいトナーとすることがクリーナレスを達成する上でも必要であることが分かった。
また、各トナーの搬送量が0.4mg/cm2の現像ローラ上のトナーの帯電特性を実施例5にしたがって求め、表6に示す。
【0159】
(表6)
トナー 平均帯電量(μC/g) +トナー個数%
シアントナー11 −11.48 4.2%
マゼシタトナー12 −15.39 3.1%
イエロートナー13 −14.11 4.5%
ブラックトナー14 −12.05 4.9%
【0160】
表6に示すように、本発明のトナーの平均帯電量はいずれにおいても負帯電したトナーの帯電量の絶対値は−16μC/cm2よりも小さく、また、+トナー個数%は5%以下であった。
なお、作像において、カラープリンタの1次転写部には、直流の定電圧電源を用い、二次転写部には定電流電源を用いているが、直流電源を定電圧電源として使用できることは、トナーの散りや飛散に有利であり、また、二次転写部で定電流の直流電源を使用することは、紙種を選ばずに安定した転写特性を得ることができるので有利である。また、二次転写部での転写電流は16μAの定電流を通電した。
【実施例7】
【0161】
(作像試験と評価)
先に作製した有機感光体(OPC3)、現像ローラ、規制ブレードを装着した図6に示すカラープリンタを用いて、前述のトナー11〜トナー14の入った各現像カートリッジを装着し、中間転写ベルト3と組合せて、非接触1成分現像方式による連続印字試験を行った。
【0162】
なお、作像に際しては、標準の作像条件を、感光体の暗電位は−600V、明電位は−80V、現像ローラと感光体の空隙を210μmに調整し、直流の現像バイアス−200Vに重畳する交流周波数2.5kHz、P−P電圧1400Vの設定で、現像ローラと供給ローラは同電位とした。そして、各色トナーのベタ印字時の感光体上の現像されたトナー付着量を最大0.53mg/cm2以下となるように制御しながら印字した。
【0163】
そして、トナー規制ブレードの規制条件を調整して現像ローラ上のトナー搬送量を0.35mg/cm2〜0.4mg/cm2となるように設定し、また、感光体上の現像量はトナー1色当たり0.5mg/cm2〜0.53mg/cm2になるように制御を行った。
実施例6と同様に各色5%カラー原稿に相当する文字原稿とJIS X 9201−1995準拠の標準画像データのN−2A「カフェテリア」の画像を用いて、図6に示したカラープリンタを用いて連続印字を行った。それぞれ10000枚と5000枚の連続印字した結果を表7に示す。
【0164】
なお、カラープリンタの1次転写部の電源には、直流の定電圧電源を、また、2次転写部の電源には直流の定電流電源を使用した。
そして、画像の作像は現像転写順をトナーの仕事関数の大きい順とし、その順序を変更した時には、その都度画像データ処理の順番を変えて印字した。
表7には初期の印字品質から明らかに色ずれが生じたと思われるその時の印字枚数を示した。
【0165】
(表7)
混色の色ずれ許容印字枚数
現像、転写順 5%原稿 N2A原稿
実施例7-1(M12-Y13-C11-BK14) 10000枚 5000枚
実施例7-2(M12-C11-Y13-BK14) 9960枚 4850枚
比較例7-1(BK14-Y13-C11-M12) 7300枚 3000枚
【0166】
表7に如く、本発明のようにトナーの搬送量を略1層とし、1色当たりの感光体(OPC)上の現像トナー量を0.5mg/cm2〜0.53mg/cm2に設定することでクリーナレスを達成できることが分かった。しかし、この時に感光体上の現像された1色のベタ画像の現像付着トナー量を最大0.6mg/cm2近くに設定すると、定電圧方式の一次転写電圧では電圧を、一般的な転写条件での上限値である+700V程度に上昇させても現像付着量の少ない作像条件に比し転写効率が低下する傾向にあり、その結果、混色の色ずれを許容できる印字枚数はそれぞれの原稿で5100枚と2100枚であり、クリーナレスにするために必要な感光体上のトナー量の上限を超えていることを示した。
【0167】
そして、1次転写部の転写電圧をこの+700Vに設定しても混色を防止できない特性は、転写電界強度が不利になるためであり、1色当たりの現像付着トナー量は0.55mg/cm2以下が好ましい。
また、本発明のように円形度が高く、トナーの仕事関数(ΦT)と中間転写媒体(ΦTM)の仕事関数を、ΦT≧ΦTMの関係を満足させることで、中問転写媒体上で転写されたトナーが正極性になるのを防止できるので、クリーナーレスが行えることが示された。これは、カラートナーとしての帯電特性が安定し、その結果、印字画像の品質低下を低減できたものと思われる。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明は、複数色のトナーを色重ねした後に、紙等の記録材に転写する画像形成装置において、複数色のトナーを仕事関数が大きな順に重ねて、中間転写媒体上に現像、転写を逐次行ったものである。
その結果、色重ねされたトナーは確実に重なりあうので、色再現性に優れた高画質の画像形成が可能となるとともに転写効率が向上し、潜像担持体上に残留する転写残りトナーの量を減少させることができるので、潜像担持体から転写残りトナーとして回収されるトナー量を減少させ、廃トナー容器を小さくした画像形成装置、あるいはクリーニング手段を有さない小型の画像形成装置提供することが可能である。
【符号の説明】
【0169】
1…感光体、2…コロナ帯電器、3…露光、4…中間転写媒体、5…クリーニングブレード、6…バックアップローラ、7…トナー供給ローラ、8…規制ブレード、9…現像ローラ、10…現像器、T…トナー、T1…一次転写部、T2…二次転写部、G…ゲートローラ対、S…シート、L1…露光、10Y,10M,10C,10K…現像器、11…駆動ローラ、12…従動ローラ、20Y,20C,20M,20K…単色トナー像形成手段、21…感光体、22…帯電ローラ、23…露光手段、24…現像ローラ、25…クリーニングブレード、30…中間転写装置、31…駆動ローラ、32,33,34,35…従動ローラ、36…中間転写ベルト、38…二次転写ローラ、39…ベルトクリーナ、40…露光ユニット、50…給紙装置、51…給紙カセット、52…ピックアップローラ、60…定着装置、61…定着ローラ対、62…排紙ローラ対、63…二次転写ローラ、64…クリーニングブレード、70,71,72…排紙経路、80…筐体、81…シート受け部、73…返送ローラ、80…筐体、81…シート受け部、90…制御部、100…像担持体カートリッジ、140…感光体、160…帯電ローラ、170…クリーニング手段、201…画像形成装置、202…ハウジング、203…排紙トレイ、204…扉体、205…制御ユニット、206…電源ユニット、207…露光ユニット、208…画像形成ユニット、209…排気ファン、210…転写ユニット、211…給紙ユニット、212…紙搬送ユニット、213…駆動ローラ、214…従動ローラ、215…中間転写ベルト、216…クリーニング手段、217…ベルト張り側、218…ベルト弛み側、219…2次転写ローラ、220…画像担持体、221…1次転写部材、222…帯電手段、223…現像手段、224…ポリゴンミラーモータ、225…ポリゴンミラー、226…f−θレンズ、227…反射ミラー、228…折り返しミラー、229…トナー収納容器、230…トナー貯蔵部、231…トナー撹拌部材、232…仕切部材、233…トナー供給ローラ、234…帯電ブレード、235…現像ローラ、236…規制ブレード、238…給紙カセット、239…ピックアップローラ、240…ゲートローラ対、241…主記録媒体搬送路、242…定着手段、243…排紙ローラ対、244…両面プリント用搬送路、245…定着ローラ対、C1…試料測定セル、C2…トナー収容用凹部、C3…測定用試料片、C4…試料台、C5…測定光、C6…光電子、C7…検知器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像担持体上に静電潜像を形成し、黒あるいは複数色のトナーを用いて色重ねによりカラー画像を形成する画像形成装置において、少なくとも仕事関数が最も大きなトナーから中間転写媒体上に転写されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
中間転写媒体上に逐次トナー像を形成し、形成されたトナー像を一括して記録材上に転写した後に定着することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
複数色の現像器を仕事関数の大きいトナー順に現像するように配置して、画像を形成した後に、逐次、定電圧電源から供給される転写電圧によって、中間転写媒体に転写したことを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
潜像担持体上の転写残りトナーを除去するクリーナを備えていないことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
潜像担持体と同極性のトナーの平均帯電量の絶対値が16μC/g以下であり、現像後の潜像担持体上のトナーおよび記録材上に転写されたトナーに含まれる感光体上の静電潜像と逆極性のトナーの個数を5%以下としたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
画像形成される像担持体が有機感光体であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
負帯電トナー、および反転現像器を用いたことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
潜像担持体上に現像されたトナー量が0.55mg/cm2以下に規制された非磁性一成分トナーを用いたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
潜像担持体と現像ローラの周速比が、少なくとも1.1ないし2.5であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
潜像担持体上に静電潜像を形成し、黒あるいは複数色のトナーを用いて色重ねによりカラー画像を形成する画像形成装置に用いるトナーにおいて、少なくとも仕事関数が最も大きなトナーから中間転写媒体に転写されるとともに、少なくとも疎水性の二酸化ケイ素粒子と疎水性二酸化チタンを流動性改良剤として含有することを特徴とするトナー。
【請求項11】
複数色の現像器を仕事関数の大きいトナー順に現像するように配置して、画像を形成した後に、逐次、定電圧電源から供給される転写電圧によって、中間転写媒体に転写されることを特徴とする請求項10記載のトナー。
【請求項12】
トナーは、トナー粒子の投影像の測定によって求めたトナー粒子の投影像の周囲長(μm)L1と、トナー粒子の投影像の面積に等しい真円の周囲長(μm)L0との比、L0/L1で表される円形度が0.94以上であることを特徴とする請求項10または11記載のトナー。
【請求項13】
個数基準の平均粒子径が4.5〜9μmであるトナーであることを特徴とする請求項10ないし12のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項14】
トナーは重合性有機化合物のモノマー、オリゴマーの少なくともいずれかを、着色剤を含有させて重合をすることによって形成したものであることを特徴とする請求項10ないし13のいずれか1項に記載のトナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−193088(P2009−193088A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134773(P2009−134773)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【分割の表示】特願2003−433363(P2003−433363)の分割
【原出願日】平成15年12月26日(2003.12.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】