説明

画像形成装置

【課題】 経時によるベルトのテンション低下を防止することで、ベルトの表面速度を均一に保ち、ベルトのテンション低下に伴うカラーレジ、画像傾き等の画像不良を抑制して、常に良好な画質を得ることを目的とする。
【解決手段】 長時間の使用によって弾性転写ベルト46に伸びが発生した場合、補正ロール48を、弾性転写ベルト46を押圧する方向に移動して、弾性転写ベルト46のテンションを上げる。このようにして、弾性転写ベルト46の伸び率を初期の状態に戻すことで、弾性転写ベルト46の表面速度を均一に保つことが可能となる。したがって、弾性転写ベルト46のしわや、転写不良によるカラーレジずれの発生を防ぐことができ、常に良好な画像を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタなどに適用される画像形成装置に関し、詳しくは、像担持体上に形成したトナー像を中間転写体に転写し、中間転写体上のトナー像を記録媒体上に転写する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法を用いた画像形成装置において、感光体ドラム上のトナー像を直接記録媒体へ転写せず、一旦、一次転写用の中間転写ベルト又は中間転写ドラムに一次転写した後、二次転写用の搬送ベルト表面に記録媒体を静電吸着させて、記録媒体へトナー像を転写する中間転写方式が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、搬送ベルトの周長は中間転写ベルト又は中間転写ドラムの周長よりも短いため、経時劣化が中間転写ベルトの場合と比較して早い時期に発生する。また、長時間の使用によって、搬送ベルトに永久伸びが発生してしまい、搬送ベルトのテンションが低下する。また、搬送ベルトが弾性層を有する場合は、長時間の使用によって永久伸びが顕著に発生してしまう。
【0004】
このようなベルトのテンションの低下は、搬送ベルトの表面速度が均一とならず、いわゆる速度ムラの発生の要因となる。これにより、搬送ベルトにしわが発生してカラーレジずれが発生したり、画像が傾いたりするなど、転写不良が発生する。
【特許文献1】特開2001−265128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、経時によるベルトのテンション低下を防止することで、ベルトの表面速度を均一に保ち、ベルトのテンション低下に伴うカラーレジ、画像傾き等の画像不良を抑制して、常に良好な画質を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明は、光ビームが照射されることにより潜像が形成され、トナーによってトナー像が現像される像担持体と、前記像担持体に形成され現像されたトナー像を中間転写体に転写する一次転写部材と、前記中間転写体上に転写されたトナー像を記録媒体に転写する二次転写部材と、を有する画像形成装置において、前記二次転写部材は、複数のロールと、前記ロールに張架され前記中間転写体に当接される搬送ベルトと、で構成され、前記搬送ベルトのテンションを変更するテンション変更手段を有することを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、長時間の使用によって搬送ベルトに伸びが発生した場合、テンション変更手段によって複数のロールに張架された二次転写部材の搬送ベルトのテンションを変更して、中間転写体上に転写されたトナー像を、記録媒体に転写する。
【0008】
これにより、搬送ベルトのテンションを元の状態に戻すことができるので、搬送ベルトの表面速度を均一に保つことが可能となる。したがって、搬送ベルトのしわや、転写不良によるカラーレジずれの発生を防ぐことができ、常に良好な画像を得ることができる。
【0009】
請求項2に記載の本発明は、前記テンション変更手段は、前記搬送ベルトの内側に配置され、内側から該搬送ベルトを押圧する押圧部材であることを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、搬送ベルトの裏面に押圧部材を当接させ、この押圧部材で搬送ベルトを内側から押圧することで、長時間の使用によって低下した搬送ベルトのテンションを上げることができる。
【0011】
請求項3に記載の本発明は、前記押圧部材は、前記ロール間に設けられた回転自在な押圧ロールと、該押圧ロールの位置を変位させ、前記搬送ベルトを伸張させる移動手段と、で構成されたことを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、移動手段によって回転自在な押圧ロールの位置を変位させることで、搬送ベルトとの間に生ずる摩擦力を低減し、且つ、長時間の使用によって低下した搬送ベルトのテンションを上げることができる。
【0013】
請求項4に記載の本発明は、前記移動手段は、前記押圧ロールの軸受けと当接し、回転することで前記押圧ロールを所定量変位させるカム部材であることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、押圧ロールの軸受けにカム部材を当接させる構成である。このカム部材を回転させることで、押圧ロールを所定量変位させる。これにより、搬送ベルトは押圧ロールに押圧されて、搬送ベルトのテンションが上がる。
【0015】
請求項5に記載の本発明は、前記移動手段は、前記押圧ロールを支持する支持部材と、該支持部材が取り付けられて回転可能とされた回転体と、で構成されたことを特徴としている。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、回転体に取り付けられた支持部材に押圧ロールが支持されており、回転体が回転することで支持部材が旋回して、押圧ロールの位置が変位する。つまり、押圧ロールを、回転体を中心とする円周上で移動させることで、押圧ロールによる搬送ベルトの押圧力を変更することができる。
【0017】
請求項6に記載の本発明は、前記回転体には、複数の前記支持部材が一定の角度でよって取り付けられ、該支持部材にはそれぞれ押圧ロールが支持されていることを特徴としている。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、複数の支持部材を設けることで、搬送ベルトを押圧している押圧ロールが摩耗した場合、回転体を回転させて別の押圧ロールを搬送ベルトに押圧させることができる。
【0019】
請求項7に記載の本発明は、前記押圧ロールの一方の端部と他方の端部とで、該押圧ロールの変位量を相違させることを特徴としている。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、押圧ロールの一方の端部と他方の端部とで変位量を相違させることで、長時間の使用によって低下した搬送ベルトのテンションを元の状態まで上昇させると同時に、搬送ベルトが蛇行した場合には、この蛇行を補正することができる。
【0021】
請求項8に記載の本発明は、前記搬送ベルトは、弾性層を有することを特徴としている。
【0022】
請求項8に記載の発明によれば、弾性層を有する搬送ベルトを用いることで、中間転写体と二次転写部材との間の二次転写領域内で十分なニップ幅を得ることができる。これにより、トナーの転写効率が落ちることなく、安定した画像が形成される。
【0023】
請求項9に記載の本発明は、前記二次転写部材が前記中間転写体と当接する位置に設けられた前記ロールは、該ロールの一方の端部と他方の端部とで変位量を相違させることで、該ロールの前記二次転写部材に対するニップ圧を該二次転写部材の一方の端部と他方の端部とで変えることを特徴としている。
【0024】
請求項9に記載の発明によれば、搬送ベルトのテンションを調整する際に、幅方向の一方の端部と他方の端部とで搬送ベルトの表面速度が異なる場合がある。そこで、二次転写部材が中間転写体と当接する位置に設けられたロールの一方の端部と他方の端部とで変位量を相違させ、二次転写領域内での一方の端部に対する他方の端部のニップ圧を変化させる。これにより、ロールが中間転写体を押圧する力、つまり、ロールが中間転写体に食い込む量が、ロールの一方の端部と他方の端部とで異なるので、記録媒体に一時転写部材から画像を転写する際に、幅方向の一方の端部と他方の端部とで画像ズレが生じることがない。
【発明の効果】
【0025】
本発明は上記構成としたので、経時によるベルトのテンション低下を防止することで、ベルトの表面速度を均一に保ち、ベルトのテンション低下に伴うカラーレジ、画像傾き等の画像不良を抑制して、常に良好な画質を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の第1実施形態について説明する。
【0027】
図1に示すように、画像形成装置10は、表面に感光体層を備えてドラム状とされた感光体ドラム12を備える。感光体ドラム12は、時計回り方向(矢印A方向)に回転する。
【0028】
感光体ドラム12の上方には、感光体ドラム12に対向して帯電器14が配設されている。この帯電器14によって、感光体ドラム12の表面12Aは、一様に負に帯電されるようになっている。なお、本実施形態では、感光体ドラム12に接触するタイプの帯電器14を用いたが、スコロトロンや固体放電器等のように、感光体ドラム12に接触しないタイプの帯電器を用いてもよい。
【0029】
帯電器14の下流側には、露光装置16が設けられている。露光装置16は、発光素子(LD)を備え、この発光素子(LD)のレーザ光を感光体ドラム12の回転方向とほぼ垂直に繰り返し走査可能とされている。発光素子(LD)が画像信号に基づいてON/OFFすることによって、回転駆動される感光体ドラム12の表面12Aに対して画像を書き込み、これにより、感光体ドラム12の表面12Aに潜像が形成されるようになっている。
【0030】
露光装置16の下流側には、現像装置18が設けられている。現像装置18は、感光体ドラム12の表面12Aに、イエロー色、マゼンタ色、シアン色、ブラック色の各トナーを付着させて各色のトナー画像を形成するために、Y画像形成部18Y、M画像形成部18M、C画像形成部18C、及びBK画像形成部18Bが、図1における反時計回り方向に沿って円周状に配設されている。現像装置18が、露光装置16で形成された潜像にトナーを付着させることで、感光体ドラム12の表面12Aにはトナー像(可視像)が形成されるようになっている。
【0031】
現像装置18の下流側には、一次転写装置20の無端状の中間転写ベルト30が、感光体ドラム12に当接するようにして設けられている。中間転写ベルト30としては、図示しないが、例えば、基体上に弾性層及び表面層を設けた種々の積層型ものを好ましく用いることができるが、これに限定されるわけではなく、例えば、基体と表面層との2層構成でもよいし、基体のみの単層構成でもよい。また、中間転写体としては、上記ベルト形状に限られるわけではなく、ドラム状のものであってもよい。
【0032】
中間転写ベルト30は、ロール24、25及びバックアップロール26によって内側から張架された状態で保持されると共に、反時計回り方向(矢印B方向)に駆動可能とされている。中間転写ベルト30の内側にあって、感光体ドラム12に対向する位置には、中間転写ベルト30を正に帯電させて中間転写ベルト30の外側の面に感光体ドラム12の表面12A上のトナーを転写させる一次転写ロール22が配設されている。一次転写ロール22は中間転写ベルト30に当接して回転し、感光体ドラム12の表面12Aに形成されたトナー像が中間転写ベルト30に転写される。
【0033】
中間転写ベルト30の近傍であって、ロール25とバックアップロール26の間には、トナー除去装置31が設けられている。このトナー除去装置31によって、二次転写装置40で用紙Pにトナー像を転写した後に中間転写ベルト30に残留したトナーが除去される。
【0034】
また、中間転写ベルト30と対向するように、二次転写装置40が配置されている。なお、二次転写装置40の構成については後述する。
【0035】
二次転写装置40の上流には、二次転写装置40に用紙Pを供給する記録紙供給装置32が設けられている。記録紙供給装置32は、1対の搬送ロール33を備えている。搬送ロール33によって記録紙供給装置32から用紙Pが取り出され、一次転写装置20の一次転写ロール22と二次転写装置40の二次転写ロール42のニップ部へ送り込まれる。そこで、中間転写ベルト30上のトナー像が用紙Pに転写される。
【0036】
一方、二次転写装置40による用紙Pの排出側には、用紙P上のトナー像を定着させる定着装置28が設けられている。定着装置28は、二次転写装置40によってトナー像が転写された用紙Pを加熱・押圧することにより、トナー像を定着させる1対の定着ロール28A、28Aを備えると共に、この定着ロール28A、28Aに向かって用紙Pを搬送する搬送コンベア28B、及び、定着ロール28A、28Aで定着された用紙Pを排出する一対の排出ロール28C、28Cを備える。なお、用紙Pは、記録紙供給装置32と定着装置28とにより、図1において矢印Cに示す方向に搬送されるようになっている。
【0037】
また、一次転写ロール22と感光体ドラム12とが中間転写ベルト30を挟持する位置から、感光体ドラム12の回転方向(矢印A方向)へ少し進んだ位置には、クリーニング装置34が配設されている。これにより、感光体ドラム12の表面12Aの転写残留の廃トナー等が除去されるようになっている。
【0038】
以上のような画像形成装置10において、次に、二次転写装置40について説明する。
【0039】
図2に示すように、二次転写装置40は、バックアップロール26に対向した位置に設けられた二次転写ロール42と、二次転写ロール42と略平行に設けられた張架ロール44を有しており、二次転写ロール42及び張架ロール44には無端状の弾性転写ベルト46が張架されている。また、二次転写ロール42と張架ロール44の間には、弾性転写ベルト46を内側から張架するようにして補正ロール48が配設されている。この補正ロール48は、弾性転写ベルト46の回転移動に伴って回転するようになっている。
【0040】
なお、弾性転写ベルト46としては、例えばクロロプレンにカーボンを配合し、その表面にフッ素樹脂をコートしたものが用いられる。このように、弾性層を有する弾性転写ベルト46を用いることで、バックアップロール26と二次転写ロール42との間の二次転写領域内で十分なニップ幅を得ることができる。これにより、トナーの転写効率が落ちることなく、安定した画像が形成される。
【0041】
また、図3に示すように、補正ロール48の軸48Aは、一方向から見て略U字状とされた軸受50に軸支されている。この軸受50の厚み方向の略中央部には溝部52が形成されており、この溝部52は、補正ロール48の両端に設けられた支持板54に形成された切欠56に、上下方向にスライド可能に係合されている。
【0042】
支持板54の上部には、小板58が切欠56を塞ぐようにして接着剤によって取り付けられている。小板58の底部には、コイルばね60の一端が係止されており、コイルばね60の他端は軸受50の上部に当接しており、軸受50は矢印D方向に付勢されている。
【0043】
また、軸受50の底部には、略楕円形状の偏心カム62が当接されている。偏心カム62の軸64にはギア66が取り付けられており、このギア66にパルスモータ68の軸70に取り付けられた駆動ギア72が噛合している。パルスモータ68は、制御部74に接続されており、制御部74によってパルスモータ68の回転が制御されるようになっている。
【0044】
これにより、後述する弾性転写ベルト46の表面速度から制御部74で弾性転写ベルト46の伸び率が算出されると、パルスモータ68が所定のパルスだけ駆動されて偏心カム62が回転し、図4(B)に示すように、コイルばね60に押圧されて偏心カム62が当接した軸受50が下方に移動する。 そして、軸受50の下方への移動によって、補正ロール48が弾性転写ベルト46を押圧することで、弾性転写ベルト46は伸び率が変化してテンションが上がる。
【0045】
一方、図5に示すように、弾性転写ベルト46には、幅方向の非画像形成領域である両端の2箇所に、金属テープ76が貼付されている。そして、弾性転写ベルト46の上方に幅方向に沿って設けられた周方向基準位置検出用センサ78の下を金属テープ76が通過することで、弾性転写ベルト46が1周する時間が検出され、制御部74に信号が送られる。制御部74では、弾性転写ベルト46が1周する時間から弾性転写ベルト46の表面速度を算出して、弾性転写ベルト46の伸び率を検出する。
【0046】
また、弾性転写ベルト46の端部には、フォトセンサ80が設置されている。ここで、フォトセンサ80の構成について説明する。
【0047】
図6(A)に示すように、フォトセンサ80は、光を出射する投光部80Aと、投光部80Aから出射された光を受光する受光部80Bで構成されており、複数の投光部80Aと受光部80Bで用紙Pの端部を挟むようにして設置されている。そして、図6(B)に示すように、投光部80Aから出射された光が弾性転写ベルト46によって遮られることにより、光を受光する受光部80Bの数から弾性転写ベルト46の端部の位置が検出されるようになっている。このようにして、弾性転写ベルト46の端部の位置を検出することで、弾性転写ベルト46の蛇行状態が検出される。
【0048】
図5に示すように、フォトセンサ80は制御部74に接続されており、フォトセンサ80で検出された用紙Pの端部の位置が制御部74へ送られる。そして、フォトセンサ80で検出された用紙Pの端部の位置が所定の閾値を超えると、弾性転写ベルト46が蛇行していると判断される。そして、制御部74からパルスモータ68へ信号が送られて、パルスモータ68が駆動回転して補正ロール48の一方の端部が下方(弾性転写ベルト46を押圧する方向)又は上方(弾性転写ベルト46から離間する方向)に移動する。
【0049】
これにより、補正ロール48は弾性転写ベルト46の搬送面に対して上下方向に傾いた状態になり、補正ロール48を傾けた状態で弾性転写ベルト46を回転移動させると、弾性転写ベルト46が補正ロール48に沿って移動するので、蛇行が補正される。
【0050】
次に、本発明の第1の実施形態の作用について説明する。
【0051】
図4(A)には、初期の状態の弾性転写ベルト46に対する補正ロール48の位置関係が示されている。初期の状態においては、弾性転写ベルト46が所定の伸び率となるように、補正ロール48が弾性転写ベルト46の裏面に当接している。
【0052】
長時間の使用により、弾性転写ベルト46のテンションが弱くなると、弾性転写ベルト46の表面速度が遅くなる。そして、弾性転写ベルト46の表面速度が所定値よりも遅くなると、制御部74からパルスモータ68へ信号が送られる。パルスモータ68によってギア66が駆動されて、ギア66に噛合された偏心カム62が回転すると、補正ロール48の軸48Aが軸支されている軸受50が略下方向(弾性転写ベルト46を押圧する方向)に移動する。これにより、弾性転写ベルト46が伸張してテンションが上がる。
【0053】
このようにして、長時間の使用によって伸びが発生した弾性転写ベルト46のテンションを上げて、弾性転写ベルト46の伸び率を初期の状態に戻すことで、弾性転写ベルト46の表面速度を均一に保つことが可能となる。したがって、弾性転写ベルト46のしわや、転写不良によるカラーレジずれの発生を防ぐことができ、常に良好な画像を得ることができる。また、弾性転写ベルト46の回転移動と共に補正ロール48が回転することで、弾性転写ベルト46との間に生ずる摩擦が低減する。
【0054】
さらに、補正ロール48の一方の端部と他方の端部とで変位量を相違させ、補正ロール48を弾性転写ベルト46の搬送面に対して傾斜させることで、長時間の使用によって低下した弾性転写ベルト46のテンションを元の状態まで上げると同時に、弾性転写ベルト46が蛇行した場合には、この蛇行を補正することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、二次転写ロール42と張架ロール44の間に設けた補正ロール48を移動させることで、弾性転写ベルト46のテンションを変化させる構成としたが、二次転写ロール42又は張架ロール44を移動させることで、弾性転写ベルト46のテンションを変化させてもよい。
【0056】
また、弾性転写ベルト46のテンションを調整する際に、幅方向の一方の端部と他方の端部とで、弾性転写ベルト46の表面速度が異なる場合がある。そこで、バックアップロール26に対向して設けられている二次転写ロール42を、一方の端部と他方の端部とで変位量を相違させて移動させる。つまり、二次転写ロール42をバックアップロール26に対して傾けて、一方の端部と他方の端部とでニップ圧を異ならせる。これにより、用紙Pに中間転写体から画像を転写する際に、幅方向の一方の端部と他方の端部とで画像ズレが生じることがない。
【0057】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同様の部分についての説明は割愛する。
【0058】
図7に示すように、補正ロール82の軸82Aの両端には、長尺状のアーム84の一端が設けられており、補正ロール82はアーム84に回動可能に支持されている。これにより、補正ロール82は、弾性転写ベルト46の移動に伴って、回転するようになっている。
【0059】
また、アーム84の他端は、弾性転写ベルト46の幅方向の両側に立設された支持板86に回動可能に支持されたシャフト88に固定されている。これにより、シャフト88が回動すると、アーム84がシャフト88の回動方向に移動して、補正ロール82がシャフト88を中心とした円周上を移動する構成となっている。
【0060】
シャフト88のアーム84の外側の一方の端部には、ギア90が取り付けられている。このギア90には、パルスモータ92に接続されたギア94が噛合している。パルスモータ92は制御部96に接続されており、制御部96によってパルスモータ92の回転が制御されるようになっている。
【0061】
これにより、弾性転写ベルト46の表面速度から制御部96で弾性転写ベルト46の伸び率が算出されると、パルスモータ92が所定のパルスだけ駆動されてギア94が矢印F方向に回転し、ギア94の回転によってギア90が回転することで、シャフト88が矢印E方向に回転する。そして、図8(B)に示すように、補正ロール82がアーム84と共に矢印E方向に移動して、弾性転写ベルト46を押圧する構成となっている。
【0062】
一方、支持板86の底部には、略楕円形状の偏心カム97が当接されている。偏心カム97の軸98にはギア99が取り付けられており、このギア99に図示しないパルスモータに接続された駆動ギアが噛合している。パルスモータは、制御部96に接続されており、制御部96によってパルスモータの回転が制御されるようになっている。
【0063】
弾性転写ベルト46の蛇行が検出されると、パルスモータが所定のパルスだけ駆動されて偏心カム97が回転し、支持板86が画像形成装置本体に設けられた図示しないガイドレールに沿って上下方向に移動する。この支持板86の移動量を変えることで、補正ロール82は弾性転写ベルト46の搬送面に対して上下方向に傾いた状態になり、補正ロール82を傾けた状態で弾性転写ベルト46を回転移動させると、弾性転写ベルト46が補正ロール82に沿って移動するので、蛇行が補正される。
【0064】
次に、本発明の第2の実施形態の作用について説明する。
【0065】
図8(A)には、初期の状態の弾性転写ベルト46に対する補正ロール82の位置関係が示されている。初期の状態においては、弾性転写ベルト46が所定の伸び率となるように、補正ロール82が弾性転写ベルト46の裏面に当接している。
【0066】
長時間の使用により、弾性転写ベルト46のテンションが弱くなると、弾性転写ベルト46の表面速度が遅くなる。そして、弾性転写ベルト46の表面速度が所定値よりも遅くなると、制御部96からパルスモータ92へ信号が送られる。パルスモータ92によってギア94が駆動されて、ギア94に噛合されたギア90が回転すると、シャフト88が矢印E方向に回動し、図8(B)に示すように、アーム84が旋回する。そして、補正ロール82がシャフト88を中心とする円周上で移動して、弾性転写ベルト46を押圧する。これにより、弾性転写ベルト46が伸張して、テンションが上がる。
【0067】
このようにして、長時間の使用によって伸びが発生した弾性転写ベルト46のテンションを上げて、弾性転写ベルト46の伸び率を初期の状態に戻すことで、弾性転写ベルト46の表面速度を均一に保つことが可能となる。したがって、弾性転写ベルト46のしわや、転写不良によるカラーレジずれの発生を防ぐことができ、常に良好な画像を得ることができる。
【0068】
なお、本実施形態の変形例として、図9に示すように、シャフト88に複数の補正ロールを取り付けて、弾性転写ベルト46の回転移動によって補正ロールが摩耗したら、シャフト88を回転させて新しい補正ロールを弾性転写ベルト46に当接させるようにしてもよい。
【0069】
<実施例1>
上記実施形態の作用を確認するため、以下のような評価試験を行った。
【0070】
図2に示す二次転写ロール42としては、直径28mm、単層発泡ウレタンゴム製、アスカー社のアスカーゴム硬度計C型(JIS K 7312、JIS S 6050)で35度のものを用いた。また、張架ロール44としては、直径16mmで金属製のものを用い、補正ロール48としては、直径12mmで金属製のものを用いた。
【0071】
そして、二次転写ロール42及び張架ロール44に弾性転写ベルト46を張架し、弾性転写ベルト46の内側に補正ロール48を当接させて、弾性転写ベルト46の伸張率が2.5%となるようにした。
【0072】
また、図5に示すように、弾性転写ベルト46の幅方向に等間隔で2箇所、5×5mmの金属テープ76を貼付し、弾性転写ベルト46を空回しして金属テープ76の位置を周方向基準位置検出用センサ78で読み取ることで、弾性転写ベルト46の1周の回転時間を検出した。そして、弾性転写ベルト46の表面速度を算出して、弾性転写ベルト46の伸び率を検出した。
【0073】
このときの弾性転写ベルト46の伸び率によって、補正ロール48を規定量移動させて、転写ベルト48の伸び率を2.5%に補正し、カラーレジの悪化の抑止効果を確認した。
<実施例2>
図7に示す装置において、補正ロール82としては、直径8mmで金属製のものを用いた。そして、実施例1と同様にして、弾性転写ベルト46の伸び率によって、補正ロール48を規定量移動させて、弾性転写ベルト46の伸び率を2.5%に補正し、カラーレジの悪化の抑止効果を確認した。
【0074】
上記実施例の結果を表1に示す。
【0075】
【表1】

この結果から、長時間の使用において弾性転写ベルト46の伸び率が上昇した場合、弾性転写ベルト46の伸び率を2.5%に補正することで、カラーレジの悪化が抑止できることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置に搭載された一次転写装置と二次転写装置の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置に搭載された二次転写装置の構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置に搭載された二次転写装置の構成を示す側面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置に搭載された二次転写装置の構成を示す上面図である。
【図6】(A)本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置に搭載されたフォトセンサの斜視図であり、(B)側面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る画像形成装置に搭載された二次転写装置の構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る画像形成装置に搭載された二次転写装置の構成を示す側面図である。
【図9】本発明のその他の形態の画像形成装置に搭載された二次転写装置の構成を示す側面図である。である。
【符号の説明】
【0077】
10 画像形成装置
12 感光体ドラム(像担持体)
20 一次転写装置(一次転写部材)
30 転写ベルト(一次転写部材)
40 二次転写装置(二次転写部材)
42 二次転写ロール(ロール)
44 張架ロール(ロール)
46 弾性転写ベルト(搬送ベルト)
48 補正ロール(テンション変更手段、押圧部材、押圧ロール)
48A ロール軸
62 偏心カム(移動手段)
84 アーム(支持部材)
88 シャフト(回転体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームが照射されることにより潜像が形成され、トナーによってトナー像が現像される像担持体と、
前記像担持体に形成され現像されたトナー像を中間転写体に転写する一次転写部材と、
前記中間転写体上に転写されたトナー像を記録媒体に転写する二次転写部材と、を有する画像形成装置において、
前記二次転写部材は、複数のロールと、前記ロールに張架され前記中間転写体に当接される搬送ベルトと、で構成され、前記搬送ベルトのテンションを変更するテンション変更手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記テンション変更手段は、前記搬送ベルトの内側に配置され、内側から該搬送ベルトを押圧する押圧部材であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記押圧部材は、前記ロール間に設けられた回転自在な押圧ロールと、該押圧ロールの位置を変位させ、前記搬送ベルトを伸張させる移動手段と、で構成されたことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記移動手段は、前記押圧ロールの軸受けと当接し、回転することで前記押圧ロールを所定量変位させるカム部材であることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記移動手段は、前記押圧ロールを支持する支持部材と、該支持部材が取り付けられて回転可能とされた回転体と、で構成されたことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記回転体には、複数の前記支持部材が一定の角度でよって取り付けられ、該支持部材にはそれぞれ押圧ロールが支持されていることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記移動手段は、前記押圧ロールの一方の端部と他方の端部とで、該押圧ロールの変位量を相違させることを特徴とする請求項3〜請求項6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記搬送ベルトは、弾性層を有することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記二次転写部材が前記中間転写体と当接する位置に設けられた前記ロールは、該ロールの一方の端部と他方の端部とで変位量を相違させることで、該ロールの前記二次転写部材に対するニップ圧を該二次転写部材の一方の端部と他方の端部とで変えることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−267487(P2006−267487A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−84874(P2005−84874)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】