説明

画像形成装置

【課題】 転写部におけるトナーの飛び散りを防止する。
【解決手段】 静電潜像の光が照射された部分に第1トナーを、静電潜像の光が照射されていない部分に、第1トナーとは逆極性で且つ光透過性の第2トナーを付着させ、転写の前に、少なくとも第2トナーが付着した部分に光を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真式方式にて画像を形成する画像形成装置に関する。特に電子写真感光体を像担持体として有し、この像担持体に対して、帯電、露光による画像書き込み、現像、転写電圧による転写、等の工程を含む画像形成工程にて、転写材に画像を形成する装置に関する。具体的な装置としては、複写機、プリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を利用したフルカラー画像形成装置として、中間転写方式を採用するタイプのものが増えつつある。
【0003】
中間転写方式とは、一次転写及び二次転写をする方式である。つまり像担持体(感光体)上に形成された現像剤像(トナー像)を、第二の像担持体として備えられている中間転写体に、特に複数色のトナー像が順次重なる様に一次転写をする。その後、その一次転写により積層されたトナー像を用紙(記録材)等の転写材に一括して二次転写するものである。
【0004】
この方式においては、感光体から直接転写材にトナー像を重ねる直接転写方式に比べて、以下の利点を有する。例えば、直接転写方式では、転写材を感光体との接触位置に搬送する転写材搬送体に転写材を固定したり、又は吸着したりすることで、接触位置へ転写材を搬送するものである。
【0005】
つまり中間転写方式は、感光体からトナー像を直接転写材に転写する画像形成装置と比較すると、転写材になんら加工、制御(例えば、転写材をグリッパに把持する、転写材を吸着する、転写材に曲率をもたせる等)を必要としない。
【0006】
従って、中間転写体からトナー像が転写されるため、薄い紙(40g/m紙)から、封筒、ハガキ、ラベル紙等の厚い紙(200g/m紙)まで、又、幅の広狭、長さの長短によらず、転写材を多種多様に選択することができる。
【0007】
又、中間転写体をベルト形状とすることで、中間転写ドラムのような剛体のシリンダを用いる場合と比較して、画像形成装置内部に配置する際の自由度が増して、スペースの有効利用による装置本体の小型化やコストダウンを行うことができるメリットもある。
【0008】
そこで複数色の現像剤を使用し、中間転写方式を採用したカラー画像形成装置、特に中間転写ベルトを使用したものとしては、主に以下の2つのタイプのものが知られている。
【0009】
その1つは、第1タイプ(いわゆる4サイクルタイプ)の装置である(特許文献1参照)。つまり1つの感光体を備えた画像形成部において、色の違う現像剤を収容した現像装置を複数備え、1つの感光体に電子写真プロセスにより画像情報に応じた複数色のトナー像を、感光体を回転させながら、1色ずつ順次に形成する。その際、その各色のトナー像が形成される毎に、感光体に接触する中間転写ベルトに順次重ね合わせるように一次転写し、その中間転写ベルト上の多重トナー像を転写材に一括して最終転写するものである。
【0010】
この画像形成装置としては、1つの感光体を備えた画像形成部が1つだけ存在する。そして感光体に対するトナー像作成に引き続いて中間転写ベルトへの一次転写を色数分繰り返して中間転写ベルトに複数色の複合トナー像を形成し、それを一括して転写材に二次転写する構成である。
【0011】
もう1つは、第2タイプ(いわゆるタンデムタイプ)の装置である(特許文献2参照)。つまり1つの感光体を備えた画像形成部が複数存在し、その各画像形成部における感光体毎に電子写真プロセスにより画像情報に応じた色のトナー像をそれぞれ形成する。そして、その複数の画像形成部における感光体に接触して周回する中間転写ベルトに順次重ね合わせるように一次転写し、その中間転写ベルト上の多重トナー像を転写材に一括して最終転写するものである。
【0012】
この画像形成装置としては、複数の画像形成部それぞれにおいて感光体を有し、中間転写ベルトが各画像形成部を通過する過程において、複数のトナー像が一次転写されて複合トナー像が形成され、その後、それを一括して転写材に二次転写する構成である。
【0013】
そして、上記のような2つのタイプの画像形成装置はいずれも、感光体と中間転写ベルトとの接触部(転写部)において中間転写ベルトの裏面側から当接する一次転写ローラ等の転写部材が設けられている。そしてこの転写部材に現像剤(トナー)帯電極性と逆極性の転写電圧(転写バイアス)を印加して、その感光体上のトナー像を中間転写ベルトの外周面に静電的に転写させている。
【特許文献1】特開平11−24425号公報
【特許文献2】特開2002−72602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところが、このような画像形成装置にあっては、中間転写ベルトに一次転写された直後のトナー像を構成する現像剤(トナー)、特にトナー像の角部を形成するトナーの一部がそのトナー像の周囲に飛び散ってしまい、画像品質を低下させるという問題があった。
【0015】
このトナー飛び散り現象の原因の一つは、以下の理由による。
【0016】
反転現像系では、感光体上に形成された画像部(露光部)としてのトナーが載る画像領域に比べて、トナーの載らない非画像部(非露光部)は、感光体電位が一次帯電された帯電電位のままで高い状態にある。またトナー層が無いため感光体と転写部材との間の誘電体層の厚さが薄いものとなり、非画像部は静電容量が大きくなる。この状態で感光体から中間転写ベルトにトナー像を転写する工程を実行すると、非画像部の領域では画像部の領域よりも多くの電荷が中間転写ベルトに注入される。その結果、中間転写ベルトの電荷分布は、図9に示すように、トナーの無い非画像部が、トナーの有る画像部に比べて、プラスの電荷密度が高くなる。
【0017】
この注入電荷はトナーの帯電極性と逆であるため、この電荷分布により中間転写ベルト上のトナーには飛び散るような力が働き、転写部通過後の中間転写ベルト上において、トナー像のトナーが飛び散ってしまう。
【0018】
このトナーの飛び散り現象は、特に、2色目以降のトナー像の転写直後に発生しやすい傾向にある。又、現像剤が、球形に近い形状の粒子である、いわゆる球形トナーを含む場合にも発生しやすい傾向にある。
【0019】
非画像部に対応する中間転写ベルトに注入される電荷を減らすため、転写前に感光体の長手方向全域を露光する方法(転写前露光)が特開平5−165383号に記載されている。しかしこの方法では、感光体上でのトナー拘束力が減少してしまい、転写前にトナーが飛び散ってしまう問題があった。
【0020】
また特開2002−72602号には、露光部分と未露光部分との境界付近の未露光部分に逆極性のトナーを付着させ、その後、除電ランプによって感光ドラムの表面に光を照射することが記載されている。これにより、特開2002−72602号は、逆極性トナーが露光部分と未露光部分との境界付近における未露光部分の露光を阻止することができ、その結果、露光部分に付着しているトナーをこの境界付近の下がり切らない電位によって束縛するものである。しかし、この境界付近の下がり切らない電位によってベルトの非画像部には多くの電荷が注入されることになり、転写部でのトナー飛散を適切に防止できるものではなかった。
【0021】
尚、特開平11−24425号には、体積抵抗率を特定するとともに耐候付与剤を含有させた最外層を設けた中間転写ベルトが記載されている。また特開2003−57963号には、転写部材により転写電圧を印加した後に、中間転写ベルトの裏面から転写電圧と逆極性の電圧を印加することが記載されている。しかしながら、いずれも、非画像部に対応する中間転写ベルトの領域に転写バイアスと同極性の電荷が注入されてしまうことを防止するものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するため、本発明は、感光体と、帯電された前記感光体に光を照射することで形成される静電潜像の光が照射された部分に第1トナーを付着させる現像手段と、前記第1トナー像を転写媒体に転写する転写手段と、を有する画像形成装置において、前記静電潜像の光が照射されていない部分に、前記第1トナーとは逆極性で且つ光透過性の第2トナーを付着させる付着手段と、前記静電潜像に前記第1トナーと前記第2トナーが付着された後で且つ前記転写手段による転写の前に、少なくとも前記第2トナーが付着した部分に光を照射する光照射手段と、を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
以上説明した様に本発明によれば、非画像部の電位を下げ、非画像部と画像部との電位差を小さくすることで、トナーの飛び散りを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0025】
図1に、本発明が適用できる、電子写真方式を採用した画像形成装置の概略構成図を示す。
【0026】
この画像形成装置は、矢印方向に回転する像担持体としての感光ドラム1を1つ備える。その周囲には、一次帯電を行う帯電手段2、第1現像手段として、複数の現像器5Y、5M、5C、5Bkを搭載した回転現像装置5、転写手段3が設けられている。感光ドラム1の図上方には、画像書き込み手段であるレーザビームスキャナ4が配置されている。これら感光ドラム1、帯電手段2、回転現像装置5、転写手段3、レーザビームスキャナ4等は画像形成手段である。
【0027】
そしてこれらの画像形成手段によって画像形成部が構成される。この画像形成装置は、中間転写方式を採用し、転写装置3には、感光ドラム1と接触する位置に転写媒体(中間転写体)としての中間転写ベルト3aが備えられる。そして、画像形成部において、回転現像装置5が、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック色の現像剤(トナー)を収容した現像器5Y、5M、5C、5Bkを、順次感光ドラム1に対向させてそれぞれの色のトナー像が感光ドラムに順次形成される。そしてこのトナー像は順次中間転写ベルト3aに重ねられながら一次転写され、積層された4色のトナー像は一括して転写材Pに二次転写される。
【0028】
画像形成部では、感光体である感光ドラム1を一様帯電する一次帯電工程を実施するために、帯電装置2として導電性ゴムにて構成される帯電ローラ(帯電部材)を用いた接触帯電ローラ方式を採用した。帯電バイアスとして直流電圧(−600V)に交流電圧(正弦波、920Hz、1100μA)を重畳したものを用いた結果、約−600Vの均一な帯電電位を得ることができた。
【0029】
画像形成装置には、外部から画像情報を得るために、CCD等の光電変換素子を有する原稿読み取り装置(不図示)が備えられ、原稿の画像情報に対応する画像信号がそこから出力される。帯電された感光ドラムを露光する画像用露光手段であるレーザビームスキャナ4に内蔵された半導体レーザは、この画像信号に対応して制御されたレーザビームLを、感光ドラム1表面に出射し、感光ドラム上には静電潜像が形成される。尚、電子計算機からの出力信号もプリントアウトすることができる。
【0030】
本実施例で用いた感光ドラム1は、負帯電のOPC感光体であり、外径80mmのアルミニウム製のドラム基体上に下記の第1〜第4の4層の機能層を下から順に設けたものである。
【0031】
第1層は下引き層であり、アルミニウムドラム基体(アルミ基体)の欠陥等をならすため、又、レーザビームスキャナ4によるレーザ露光の反射によるモアレの発生を防止するために設けられている厚さ約20μmの導電層である。
【0032】
第2層は正電荷注入防止層であり、アルミ基体から注入された正電荷が感光ドラム1表面に帯電された負電荷を打ち消すのを防止する役割を果たす。この層は、ポリアミド樹脂とメトキシメチル化ナイロンによって10Ω・cm程度に、抵抗調整された厚さ約1μmの中抵抗層である。
【0033】
第3層は電荷発生層であり、ジスアゾ系の顔料を樹脂に分散した厚さ約0.3μmの層であり、レーザ露光を受けることによって正負の電荷対を発生する。
【0034】
第4層は電荷輸送層であり、ポリカーボネイト樹脂にヒドラゾンを分散したものであり、P型半導体である。従って、感光ドラム1表面に帯電された負電荷はこの層を移動することはできず、電荷発生層で発生した正電荷のみを感光ドラム1表面に輸送することができる。
【0035】
感光ドラム1は、矢示の時計方向に200mm/secのプロセススピード(周速度)で回転する。
【0036】
この画像形成装置全体のシーケンスは、まず感光ドラム1が、帯電装置2によって一様に帯電される(一次帯電)。
【0037】
次に画像信号により変調されたレーザ光Lにより走査露光が行われ、感光ドラム1上に静電潜像が形成され、回転現像装置5によってこの静電潜像は反転現像される。つまり静電潜像の光が照射された部分に第1トナー(イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナー)が付着される。
【0038】
本画像形成装置は、回転現像装置5が回転することによって、4種類の現像装置である現像器5Y、5M、5C、5Bkが順次感光ドラム1に対向して、静電潜像の現像動作を行い、現像剤像(トナー像)が形成される。トナー像は、現像動作によってトナーが載る画像部とトナーが載らない非画像部で構成される。尚、本実施例の現像器は二成分接触現像器である。
【0039】
本実施例の画像形成装置では、現像されたトナー像は、感光ドラム1が回転することによって、一次転写ローラ3cと感光ドラム1が対向している一次転写部T1に移動する。そして、現像装置5内の現像剤(トナー)と逆極性の一次転写バイアスが電源9より一次転写ローラ3cに印加されることで、トナー像は中間転写ベルト3aに順次転写され、重ね合わされる。中間転写ベルト3a上で4色重ねられたトナー像は、二次転写ローラ3fとバックアップローラ3eに挟まれている二次転写部T2にて、給紙カセット6から取り出され、給紙ローラ6a、給紙ガイド6bを経由して進行した紙等の転写材(記録材)Pに転写される。
【0040】
本実施例の転写装置3に用いた転写部材である、一次転写ローラ3c、二次転写ローラ3fは、それぞれ、芯金と、その外周面に形成された円筒状の導電性発泡ゴムとを有する。一次転写ローラ3cの直径は、24mmで、二次転写ローラ3fの直径は28mmであり、体積抵抗は、一次、二次転写ローラ3c、3f共に10〜10Ω・cmであった。
【0041】
又、二次転写部T2にて中間転写ベルト3aを挟んで二次転写ローラ3fに当接する、中間転写ベルト3aの巻架ローラであるバックアップローラ3eは、金属ローラ表面に体積抵抗10〜10Ω・cmの導電性ゴムをコートしたものを用いた。
【0042】
一次転写ローラ3cは、両端部が軸受部材にて回転自在に軸支されると共に、感光ドラム1の母線に平行に配置され、スプリング等の押圧手段で転写ベルト3aを介して感光ドラム1に一定の力で押し当てられている。転写電圧印加は、端部軸受けに導電性樹脂を使用することで行っている。
【0043】
中間転写ベルト3aは、ポリイミド等の基材に導電性材料を含有させ、体積抵抗10〜1012Ω・cmに調整した無端状のものを用いた。中間転写ベルト3aは、中間転写ベルト3aの移動方向で一次転写部T1上流側の駆動ローラ3bにより感光ドラム1の周速と同じ200mm/secで回転駆動される。
【0044】
4色重ねられたトナー像が転写材Pに転写された後に中間転写ベルト3a上に残った転写残トナーは、中間転写ベルト3a表面に当接、離間が自在に取り付けられた中間転写ベルト清掃部材3dにより除去される。中間転写ベルト清掃部材3dは一次転写中は中間転写ベルト3a表面から離間しており、二次転写前のトナー像を乱さないようにしている。
【0045】
転写されずに感光ドラム1表面に残ったトナー、及び、詳しくは後述する逆極性で中間転写ベルト3aに転写されない飛び散り防止トナーは、クリーニング装置7のブレード状のクリーニング部材71により感光ドラム1表面から除去される。転写残トナーが除去された感光ドラム1は繰り返して画像形成に供される。
【0046】
トナーが転写された転写材Pは定着器(熱ローラ定着器)8へと送られ、画像の定着が行われる。
【0047】
上記のような中間転写方式の画像形成装置において、本実施例では、従来課題であった中間転写ベルト3aからのトナー飛び散り対策を施している。
【0048】
第1に、上記回転現像装置5による現像工程に使用される画像形成用の第1の現像剤(トナー)とは逆極帯電性のトナーを第2の現像剤(第2トナー)である「飛び散り防止トナー」として第2現像装置(以下、「飛散防止現像装置」と称す。)に収容した。そして帯電装置2の一次帯電工程から中間転写ベルト3aへの一次転写工程までの間に、この飛び散り防止トナーにて現像動作を行う工程(以下、「飛散防止現像工程」と称す。)を設け、感光ドラム1上の非画像部の電位の絶対値を下げて、画像部と非画像部との電位差を低くする制御を施した。
【0049】
本実施例では、図1に示すように、各色において非画像部に逆極性の飛び散り防止トナーを現像する飛散防止現像装置10が、回転現像器5と一次転写位置T1との間で感光ドラム1に対向して設けられている。この現像装置10には、感光ドラム1との対向部に表面を露出して、回転することによって、内部のトナーを感光ドラム1表面に搬送する飛び散り防止トナー担持体である飛散防止用現像スリーブ10aが備えられている。この現像スリーブ10aには、トナーを感光ドラム1へと飛翔させ得るための現像バイアスが印加される。ここで、画像を形成するトナーを剥ぎ取らないために現像スリーブ10aは感光ドラム1とは非接触となっている。そして、逆極性の飛び散り防止トナーとしては、仮に転写されても画像に影響しないように、透明のトナーを用いた。つまり現像装置10は、静電潜像の光が照射されていない部分に、第1トナーとは逆極性で且つ光透過性の第2トナーを付着させる付着手段である。
【0050】
そして、第2に、上記飛散防止現像動作により、画像形成トナーと逆極性のトナーを載せておき、転写前に全面露光(転写前露光)する。つまり、非画像部の電位の絶対値を下げて、転写バイアス印加時に非画像部に対応する中間転写ベルト3aに注入する電荷量を少なくする。それにより、中間転写ベルト3a上でのトナー飛び散りを防止する対策を実行した。
【0051】
本実施例では、感光ドラム1の回転方向で飛散防止現像装置10の下流側に感光ドラム1の長手全域を露光する転写前露光装置(以下、「プレ露光装置」と称す。)11としてLEDを設けた。
【0052】
尚、このときは、画像部においては既にトナーが載っているので、画像部には光が透過せず、画像部における電位が変化することはない。つまり転写前露光装置は、静電潜像に第1トナーと第2トナーが付着された後で且つ転写手段による転写の前に、少なくとも第2トナーが付着した部分に光を照射する光照射手段である。
【0053】
以下に、図2を参照して、作像条件の詳細を述べる。
(1)一次帯電工程において、帯電部材2により、感光ドラム1が一様に約−600Vに帯電される。
(2)電位が一様に−600Vとなった感光ドラム1表面に対して、送信されてくる画像情報に基づいて、レーザビームスキャナ4により画像露光が行われる。画像露光が実施された領域であるトナー像の画像部における感光ドラム1の表面電位は約−100Vに減衰する。画像露光が行われない非画像部は−600Vのままである。
(3)回転現像装置5に搭載され、感光ドラム1と対向する、例えば二成分接触現像器5Yに、−300Vの直流電圧に交流電圧が重畳された現像バイアスを印加する。これにより、第1トナーが感光ドラム1の表面電位が約−100Vの部分に付着し、静電潜像が現像され、トナー像となる。
(4)その後、飛散防止現像装置10に備えられた現像スリーブ10aに−350Vの直流電圧を印加することで、第2トナーが感光ドラム1の表面電位が約−600Vの部分に付着し、非画像部の現像が行われる。
【0054】
(1)〜(4)の画像形成動作によって、図3に示す様に、画像用トナーが現像された領域の表面電位は約−260Vに、飛び散り防止トナーが現像された領域の表面電位は約−370Vとなった。飛び散り防止トナーは画像トナーと同じ厚さ(約12μm)に現像された。
【0055】
そして、本実施例では、更に、プレ露光装置11によって、感光ドラム長手方向(軸方向)全域をプレ露光して、図4に示す様に、非画像部の電位を下げる。
【0056】
尚、このときは、画像部においては既にトナーが載っているので、画像部には光が透過せず、画像部における電位が変化することはない。これに対し、非画像部にて現像されているトナーは透明であるため、光が透過し、電位は下がる。
【0057】
ここで、比較例として飛び散り防止トナーを用いない場合、また上記(1)〜(4)の工程を行い、サンプルNo.0として、プレ露光をしない場合について検討した。またサンプルNo.1、No.2、No.3として、プレ露光の光量を3段階に変えて行った場合について検討した。検討項目は、飛び散り防止トナーを現像した領域の電位と画像用トナー部の電位と、そのときの中間転写ベルト3a上での飛び散りレベルについてである。その結果を表1に示す。
【0058】
表1における飛び散りレベルの記号は、×:飛び散り有り、△:少し飛び散り有り、○:飛び散り無し、を表す。
【0059】
【表1】

【0060】
飛び散り防止トナーによる現像動作を行わない比較例では、感光ドラムの非画像部の電位は、感光ドラムが帯電部材により一次帯電された時の帯電電位(−600V)と等しいため、転写電圧との電位差が大きくなる。又その上に、トナー層が無いため静電容量が大きくなり、同じ電圧でも多くの電荷が中間転写ベルトに注入される。そのため、転写後に中間転写ベルトの非画像部に注入された電荷によるトナー飛び散りが発生してしまう。
【0061】
飛び散り防止トナーを現像しただけのサンプルNo.0においては、感光ドラムの非画像部に逆極性のトナーが現像されているために、比較例よりも非画像部電位が低くなる。そのため、比較例よりも飛び散りレベルが改善されている。飛散防止現像動作を行うことによって、飛び散り防止効果が向上することが分かる。
【0062】
更に、プレ露光の光量を変えたサンプルNo.1、2、3を比較することにより、次のことがわかる。つまり感光ドラム1の画像部の電位よりも非画像部の電位を低くすることで、転写電圧印加時に非画像部に対応する中間転写ベルト3aに流れ込む電荷の量が少なくなり、飛び散りが改善されている。
【0063】
一般的には、透明トナー等の飛び散り防止トナーを現像しない状態でプレ露光を行い、画像部の電位よりも非画像部の電位を低くすると、感光ドラム上でのトナー拘束力が減少しトナーが飛び散ってしまう。しかし、本実施例では飛び散り防止トナーが画像トナーの横に、好ましくは図3で説明した様に画像トナーと同じ高さで現像されているため、プレ露光による飛び散りは発生しない。
【0064】
尚、飛び散り防止トナーは画像トナーと逆極性に帯電しているため、転写電圧により中間転写ベルト3aには転写されないため、画像に影響は無い。例え、少量転写されたとしても、透明であるために画像に与える影響はほとんどない。
【0065】
このように、本実施例では、逆極性のトナーにより非画像部を現像し、非画像部と画像部との電位差を小さくすることで、トナーの飛び散り防止効果を得ることができる。更に、転写前に例えば全面を露光することにより、非画像部の電位をより低減することで、飛び散り防止効果を更に向上することができる。
【0066】
次に本発明の他の実施例について説明する。
【0067】
図5に、本実施例の電子写真方式画像形成装置の概略構成図を示す。図1の実施例においては、画像トナー、飛び散り防止トナーの順番で現像を行ったが、本実施例では、その逆の順番で行った。
【0068】
図1の実施例では、飛散防止現像装置10が、感光ドラム1の回転方向で回転現像装置5の下流側にあったのに対し、本実施例では、飛散防止現像装置10が、感光ドラム1の回転方向で回転現像装置5の上流側に備えられている。その他の構成は、前述の実施例に説明したものと同様である。
【0069】
以下に、図6を参照して、本実施例による作像条件の詳細を述べる。
(1)一次帯電工程において、帯電装置2により、感光ドラム1が一様に約−800Vに帯電される。
(2)電位が一様に−800Vとなった感光ドラム1に対して、送信されてくる情報に基づいて、レーザビームスキャナ4により画像露光が行われる。画像露光が実施された領域である画像部における感光ドラム1表面電位は約−100Vに減衰する。非画像部は−800Vのままである。
(3)次に飛散防止現像装置10に備えられた現像スリーブ10aに、−550Vの直流電圧に交流電圧が重畳した現像バイアスを印加することで、非画像部に第2トナーを付着させ、現像を行う。
(4)続いて回転現像装置5に搭載され、感光ドラム1に非接触で対向する、例えば現像器5Yに、−300Vの直流電圧の現像バイアスを印加することで、第1トナーが感光ドラム1の表面電位が約−100Vの部分に付着し、静電潜像が画像トナーで現像される。
【0070】
上記(1)〜(4)の工程を実行した後、画像用トナーが現像された領域の表面電位は約−260Vに、飛び散り防止トナーが現像された領域の表面電位は約−570Vとなった。飛び散り防止トナーは画像トナーと同じ厚さ(約12μm)に現像された。
【0071】
そして、本実施例では、更に、プレ露光装置11によって、長手方向全域をプレ露光して、非画像部の電位を下げる。
【0072】
尚、このときは、画像部においては既にトナーが載っているので、画像部には光が透過せず、画像部における電位が変化することはない。これに対し、非画像部にて現像されているトナーは透明であるため、光が透過し、電位は下がる。
【0073】
そして、前述の実施例で行った表1におけるサンプルNo.3のプレ露光のレベル3の光量で全面露光を行ったところ、感光ドラム1の表面電位は、画像部が−250Vで非画像部が−50Vとなり、トナーの飛び散りを防止することができた。
【0074】
尚、本実施例のように、飛散防止用の現像動作を、通常画像の現像動作より先に行う場合、通常画像の現像動作を先に行う前述の実施例の場合(−600V)に比べて一次帯電電位を高電位(−800V)に帯電している。
【0075】
これは、通常画像の現像直流電圧と非画像部分の電位差を200V以上に保つことで、非画像部に画像用のトナーが無駄に現像されることを防ぐためである。つまり飛散防止用の現像を先に行うことで非画像部の表面電位が約200V下がるため、予め帯電電位を200V高くしておくのである。
【0076】
前述の実施例に比べて、感光ドラム1の回転方向で下流側の現像装置に上流側の現像装置に収容されたトナーが混入したとしても、本実施例では、上流側が透明トナーを収容する飛散防止現像装置10であるので、トナーの色に与える影響が少ない。特に、1つの感光ドラム周囲に複数色の現像装置を配置して、多色画像を形成する場合、画像トナー間の混色も防止することが可能となる。
【0077】
次に本発明の更に他の実施例について説明する。
【0078】
図7に本実施例による電子写真方式画像形成装置の概略構成図を示す。本実施例では、第1露光手段4により静電潜像を形成して、現像装置5によりトナー像を形成した後に、第2露光手段である第2の画像書き込み装置12により、トナー像の画像部及びその周辺を除いた領域、つまり画像近隣を除いた非画像部を露光する。これにより、飛び散り防止の効果を損なうことなく飛び散り防止トナーの消費を抑えた。
【0079】
前述の実施例と同様の構成の画像形成装置において、更に、感光ドラム1の周囲で回転現像装置5と飛散防止現像装置10との間に、第2の画像書き込み装置としてのレーザビームスキャナ12を設けた。レーザビームスキャナ12は、本実施例では、第1の画像書き込み装置であるレーザビームスキャナ4と同様の構成としたが、他の構成のものでも良い。
【0080】
第2の画像書き込み装置である本実施例のレーザビームスキャナ12には、パソコンからの画像情報、又は画像読み取り装置が読み取った画像情報を装置内の制御手段13にて変換し、画像部から周辺5mmの領域外を露光するように露光情報が送信される。つまり静電潜像は、第1トナーが付着された後で且つ第2トナーが付着される前に、静電潜像の光が照射されていない部分の一部が光照射される。
【0081】
以下に、図8を参照して、作像条件の詳細を述べる。
(1)一次帯電工程において、帯電部材2により、感光ドラム1が一様に約−600Vに帯電される。
(2)電位が一様に−600Vとなった感光ドラム1表面に対して、送信されてくる情報に基づいて、レーザビームスキャナ4により画像露光が行われる。画像露光が実施された領域である画像部における感光ドラム1の表面電位は約−100Vに減衰する。非画像部は−600Vのままである。
(3)回転現像装置5に搭載され、感光ドラム1と対向する、例えば二成分接触現像器5Yに、−300Vの直流電圧に交流電圧が重畳された現像バイアスを印加する。これにより、第1トナーが感光ドラム1の表面電位が約−100Vの部分に付着し、静電潜像が現像され、トナー像となる。
(4)レーザビームスキャナ12により、非画像部における画像部周辺5mmの領域外を露光することで、その部分の感光ドラム電位を約−100Vに下げる。このことによって、レーザビームスキャナ12に露光された部分の感光ドラム1の表面電位は−100vに下がるので、感光ドラム1の非画像部の表面電位は、図8に示すように、画像部の周辺5mmのみが一次帯電電位の−600vで高い状態となっている。
(5)その後、飛散防止現像装置10に備えられた現像スリーブ10aに−350vの直流電圧を印加することで、非画像部に第2トナーを付着させ、現像を行う。この時、図8に示すように、レーザビームスキャナ12に露光されていない、感光ドラム1の非画像部の表面電位が高いのは、画像部の周辺5mmのみであるので、その部分のみが現像される。つまり画像部周辺5mmの部分にのみ飛び散り防止トナーが付着する。
【0082】
(1)〜(5)の画像形成動作によって、画像用トナーが現像された領域の表面電位は約−260Vに、飛び散り防止トナーが現像された画像部周辺5mmの領域の表面電位は約−370Vとなる。このとき飛び散り防止トナーは画像トナーと同じ厚さ(約12μm)に現像された。そして、他の非画像部は−100Vとなった。
【0083】
その後に、前述の実施例におけるプレ露光レベル3で転写前に全面露光したところ、前述の実施例と同様にトナーの飛び散りを防止することができた。
【0084】
尚、このときは、画像部においては既にトナーが載っているので、画像部には光が透過せず、画像部における電位が変化することはない。これに対し、非画像部にて現像されているトナーは透明であるため、光が透過し、電位は下がる。
【0085】
つまり、第2の画像書き込み装置12を設けたことによって、非画像部全域にわたって、飛び散り防止現像動作を施す必要がなくなり、飛び散り防止トナーの消費を抑え、コスト削減の効果を得ることができた。
【0086】
尚、飛び散り対策としては、画像部周辺において生じるので、その部分にのみ飛散防止用現像を施すことで、上記のように、飛び散り防止が達成される。
【0087】
以上、説明したように、本発明においては、画像形成時と逆極性のトナーで非画像部の現像を行うことで、転写時に生じていたトナー飛び散りを抑え、更に、転写前に画像全面を露光することで、その効果を更に向上させた。
【0088】
尚、上記実施例では、中間転写方式の画像形成装置において、中間転写ベルトにおいて生じるトナー飛び散りについて説明した。しかしながら、感光ドラムから転写媒体としての転写材に直接トナー像が転写される直接転写方式の画像形成装置においても本発明は適用可能であり、転写材からのトナー飛び散り防止効果が得られる。
【0089】
又、前述の実施例では、第2トナーは透明トナーを使用したが、第2トナーは、必ずしも透明である必要は無く、光照射手段からの光のうち感光体の電位を下げることが可能な波長域の光を透過可能なトナーであれば良い。
【0090】
又、前述の実施例では、光照射手段からの光は感光体の全面に照射されたが、この光は画像部を除いた非画像部のみに照射されるものであっても良い。つまり光照射手段からの光は少なくとも第2トナーが付着した部分に光を照射するものであれば良い。
【0091】
又、感光ドラムをそれぞれに備えた画像形成部を複数有するタンデム方式の画像形成装置においても、それぞれの画像形成部において、飛散防止現像装置やプレ露光装置を設置することで、同様の効果が得られる。
【0092】
又、中間転写ベルトが中間転写ドラムであっても、画像書き込み装置が他のものであっても、本発明は適用できる。
【0093】
又、以上に説明した画像形成装置の構成部品の寸法、材質、形状、及びその相対位置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の実施例である画像形成装置の概略図。
【図2】感光体の表面電位を示す図。
【図3】感光体の表面電位と感光体上のトナーの状態を示す図。
【図4】転写前に露光した後の感光体の表面電位を示す図。
【図5】本発明の他の実施例である画像形成装置の概略図。
【図6】感光体の表面電位と感光体上のトナーの状態を示す図。
【図7】本発明の他の実施例である画像形成装置の概略図。
【図8】感光体の表面電位と感光体上のトナーの状態を示す図。
【図9】一次転写後の中間転写体表面におけるプラス電荷の密度分布を示す図。
【符号の説明】
【0095】
1 感光体
2 帯電手段
3 転写装置
4 レーザビームスキャナ
5 現像装置
10 トナー付着手段
11 露光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、帯電された前記感光体に光を照射することで形成される静電潜像の光が照射された部分に第1トナーを付着させる現像手段と、前記第1トナー像を転写媒体に転写する転写手段と、を有する画像形成装置において、
前記静電潜像の光が照射されていない部分に、前記第1トナーとは逆極性で且つ光透過性の第2トナーを付着させる付着手段と、前記静電潜像に前記第1トナーと前記第2トナーが付着された後で且つ前記転写手段による転写の前に、少なくとも前記第2トナーが付着した部分に光を照射する光照射手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記光照射手段は、前記感光体の全面に光を照射することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記静電潜像は、前記第1トナーが付着された後に、前記第2トナーが付着されることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2トナーは、前記光照射手段からの光のうち前記感光体の電位を下げることが可能な波長域の光を透過することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第2トナーは透明であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記静電潜像は、前記第1トナーが付着された後で且つ前記第2トナーが付着される前に、前記静電潜像の光が照射されていない部分の一部が光照射されることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記転写媒体は中間転写体であり、前記感光体上の第1トナーによる画像は前記中間転写体に転写され、前記中間転写体上の画像は転写材に転写されることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記転写媒体は転写材であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−72335(P2006−72335A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−216225(P2005−216225)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】